JP5440484B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
また、前記制御手段が、前記昇温制御時に前記第一気筒に供給される前記第一燃料量を、前記昇温制御の開始前に前記第一気筒に供給されている前記第一燃料量よりも増加させる第一制御手段を有する。なお、ここでいう「リッチ」とはストイキ(理論空燃比)よりも空燃比が小さい状態を意味し、「リーン」とはストイキ(理論空燃比)よりも空燃比が大きい状態を意味する。
例えば、前記第二制御手段が、前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させることが考えられる。前記第二燃料量の減少量は、前記第一燃料量の増加量未満の大きさであれば、トータルの空燃比が前記昇温制御の開始前よりもリッチになる。これにより、未燃液体成分(例えば、HC)や粒子状物質(PM)の排出量が抑制される。
また、前記第二制御手段が、前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前から変更しないことが考えられる。前記第一燃料量の増加分がそのままトータルの空燃比の変化に反映される。これにより、制御構成が簡素化される。
あるいは、前記第二制御手段が、前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも増加させることが考えられる。この場合、昇温制御に用いられる未燃液体成分(例えば、HC)の排出量が増大する。
(4)また、前記制御手段が、前記昇温制御時に前記第二気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させる第四制御手段を有することが好ましい。
ここでいう「ストイキよりもややリーン」の空燃比とは、理論空燃比以上の空燃比であって、例えば16以下の範囲の空燃比であることが好ましい。圧縮スライトリーン運転では、点火時期のリタード量を大きくすること可能となり、排気温度の昇温効率が高められる。一方、燃圧が低い状態では燃焼が不安定となりかねないため、燃圧が高い状態(例えば、燃圧が所定燃圧以上の状態)で圧縮スライトリーン運転を実施することが好ましい。
(7)あるいは、前記第二制御手段が、前記昇温制御時に前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させることが好ましい。この場合、前記第二燃料量の減少量を、前記第一燃料量の増加量未満の大きさとする。
本実施形態の制御装置は、図1に示す水冷式の多気筒エンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。ここでは、多気筒のエンジン10に設けられた各気筒(シリンダ)のうちの二つを示し、一方を第一気筒20A,他方を第二気筒20Bと呼ぶ。図1に示すように、第一気筒20A及び第二気筒20Bの構造は実質的に同一であり、ここではおもに第一気筒20Aを取り上げて詳述する。なお、図1中では第一気筒20A側に設けられた要素と同一の第二気筒20B側の要素に同一符号を用いている。
第一気筒20Aの周囲には、冷却水の流路となるウォータージャケット18が設けられる。冷却水は、エンジン10を冷却するための冷媒である。ウォータージャケット18には冷却水通路24が接続されており、冷却水はこれらのウォータージャケット18及び冷却水通路24の内部を循環している。
ラジエータ26は、冷却水と空気(例えば車両外部から導入される外気)との間で熱交換を行うことで冷却水を冷却する熱交換器である。エンジン10で発生した熱は、ウォータージャケット18内の冷却水に伝達され、ラジエータ26で放熱される。
これらのポート噴射インジェクタ1及び直噴インジェクタ2から噴射される燃料量及びその噴射タイミングは、ECU3で制御される。例えば、ECU3から各インジェクタ1,2に制御パルス信号が伝達され、その制御パルス信号の大きさに対応する期間だけ、各インジェクタ1,2の噴射口が開放される。この場合、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に応じた量となる。
高圧デリバリパイプ19Bには、直噴インジェクタ2に導入される燃圧PHIを検出する燃圧センサ6が設けられる。ここで検出された燃圧PHIの情報はECU3に伝達される。
[2−1.制御モード]
ECU3(Electronic Control Unit,電子制御装置)は、エンジン10の各気筒20A,20Bに対して供給される燃料噴射量,燃料供給手法及び点火タイミングを制御する電子制御装置であり、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。このECU3には、エンジン10の始動時に設定される運転モード(制御態様)として、「MPIモード」,「DIモード」,「圧縮S/Lモード」及び「リッチリーンモード」の四種類の運転モード(制御態様)が設定されており、ECU3は各モードに基づいて燃料噴射量,燃料供給手法及び点火タイミングを制御する。
このモードは、DIモードが設定されている状態でのみ、DIモードと重複して設定される。つまり、圧縮S/Lモードは、DIモードと同様に、直噴インジェクタ2への燃圧PHIが比較的高圧であることを条件としたモードであるといえる。本実施形態では、エンジン10の始動後、所定の時間が経過した時点ですでにDIモードが設定されている場合に、圧縮S/Lモードが設定される。
また、ある気筒をリーン化する場合、燃焼安定性を重視する場合には、ポート噴射インジェクタ1からの噴射量を減量することが好ましいと考えられる。一方、排気中に含まれる炭化水素量や粒子状物質量をより減少させることを重視する場合には、直噴インジェクタ2からの噴射量を減量することが好ましい。
ここでリッチ化,リーン化される気筒数は任意である。例えば、六気筒エンジンであれば、六つの気筒のうちの一気筒又は二気筒をリッチ化するとともに、他の一気筒又は二気筒をリーン化してもよいし、三気筒ずつ二種類の気筒群を設定してそれぞれをリッチ化,リーン化してもよい。
ECU3には、上記の各モードでの制御を実施するためのソフトウェア又はハードウェアとして、モード判定部3a,MPI制御部3b,DI制御部3c,圧縮S/L制御部3d及びリッチリーン制御部3eが設けられる。ECU3の入力側には水温センサ4,クランク角度センサ5,燃圧センサ6及びアクセルペダルセンサ7が接続され、冷却水温W,回転角θCR(又は回転角θCRに基づいて演算されたエンジン回転数Ne),燃圧PHI,アクセルペダルの操作量θACの情報がそれぞれ入力される。また、ECU3の出力側には、ポート噴射インジェクタ1,直噴インジェクタ2のほか、点火プラグ13,フィードポンプ27,高圧ポンプ8,ウォーターポンプ25等が接続される。
(1)エンジン10の始動
・エンジン回転数Neが所定回転数Ne0以上になった
(2)通常モード
・エンジン始動後、所定の始動時間TENDが経過した
・アクセル操作がなされた
・冷却水温Wが所定温度W0よりも低い
(3)MPIモード
・クランキング中である
・燃圧PHIが所定圧PHI0未満である
・エンジン始動から所定時間TAの経過後でDIモードでない
(4)DIモード
・エンジン始動後、所定時間TA以内に、燃圧PHIが所定圧PHI0以上となった
(ただし、所定時間TA<所定の始動時間TEND)
(5)圧縮S/Lモード
・DIモードが設定された状態でエンジン始動後、所定時間TAが経過し、かつアクセル全閉
(6)リッチリーンモード
・圧縮S/Lモードの開始後、第二所定時間TBが経過した
(A)直噴インジェクタ2からの噴射量を減少させる
(B)直噴インジェクタ2からの噴射量を変更しない
(C)直噴インジェクタ2からの噴射量を増加させる
上記(B)の場合、リッチ気筒MPI制御部31での噴射量の増分がそのままトータルの空燃比の変化に反映される。これにより制御構成が簡素化され、空燃比の制御精度が向上する。また、上記(A)の場合と比較すると排気中に含まれる一酸化炭素量が増加する。
上記(C)の場合、トータルの空燃比をリッチにするためには、直噴インジェクタ2からの噴射量の増加量は任意である。この場合、排気中に含まれる一酸化炭素量が増加する。
なお、本実施形態のリッチ気筒DI制御部32は、上記(A)の制御を実施する。
本制御装置のECU3でエンジン10の始動時に実行される制御のフローチャートを図2に例示する。このフローは、ECU3の内部で繰り返し実施されている。このフローのうち、ステップA1〜A30はおもにエンジン10が始動してからの経過時間が所定時間TA以内であるときの制御内容に対応する。一方、ステップA41以降は所定時間TAを超えたときの制御内容に対応する。
このステップの条件成立時にはステップA2へ進み、非成立時にはステップA10へ進む。なお、エンジン10が始動するよりも前であっても、ステップA2へ進む。
ステップA5では、モード判定部3aにおいて、エンジン回転数Neが所定回転数Ne0以上であるか否かが判定される。つまりここでは、クランキング中のエンジン10が始動できたか否かが判定される。このステップの条件成立時にはステップA6へ進み、非成立時にはステップA7へ進む。
(高圧ポンプ8の圧送量FHI)=(フィードポンプ27の圧送量FLO)−(燃料噴射量)−α
ステップA8では、モード判定部3aにおいて、燃圧PHIが所定圧PHI0以上であるか否かが判定される。このステップの条件成立時にはステップA30へ進み、DIモードが設定される。この場合、MPI制御部3bによるポート噴射インジェクタ1の制御と並行して、DI制御部3cによる直噴インジェクタ2の制御が実施される。また、ステップA8の条件の非成立時にはステップA20へ進み、MPIモードが継続される。
この場合、リッチリーン制御部3eによりリッチ化及びリーン化のそれぞれの対象となる気筒が少なくとも一つずつ設定され、それらの気筒に設けられたポート噴射インジェクタ1及び直噴インジェクタ2に制御信号が出力される。
一方、ステップA51の条件が非成立の場合にはフローを終了する。これにより、第二所定時間TBは圧縮S/L制御が実施される時間として確保される。つまり、リッチリーン制御は圧縮S/L制御の継続時間が第二所定時間TBを超えた時点で実施される。
上記のエンジン10を搭載した車両において、エンジン10の始動時に上記のフローチャートに従って制御が実施された場合の運転モードの設定状態と、エンジン10に関する各種パラメータの経時変動とを図3に示す。
車両のイグニッションスイッチが時刻t0に操作されると、図示しないスタータによるエンジン10のクランキングが開始される。これにより、フィードポンプ27から吐出される燃料の圧力PLOがエンジン回転数Neに応じて脈動しつつ上昇し、ポート噴射インジェクタ1に導入される低圧デリバリパイプ19A内の燃圧PLOが確保される。
時刻t2から所定時間TAが経過した時刻t4には、モード判定部3aにおいて圧縮S/Lモードが設定され、各気筒の直噴インジェクタ2及び点火プラグ13が圧縮S/L制御部3dに制御される。すなわち、直噴インジェクタ2からの燃料噴射のタイミングが各気筒の圧縮行程内で完了するように変更されるとともに、点火時期が遅角方向に変更される。
なお、エンジン10が始動した時刻t2からの所定の始動時間TENDが経過した時刻t6になると、モード判定部3aにおいて通常モードが設定される。これにより、MPIモードやDIモード,圧縮S/Lモード,リッチリーンモードが終了し、通常のエンジン10の制御が実施される。
上記の制御装置では、例えばリッチリーン制御時に第一気筒20Aの空燃比をリッチにするにあたって、ポート噴射インジェクタ1Aから噴射される燃料量を増加させる制御が実施される。これにより、直噴インジェクタ2Aから噴射される燃料量を増加させることでリッチ化を図った場合と比較して、炭化水素や粒子状物質の排出量を抑制しつつ、一酸化炭素量を増加させることができる。一方、第二気筒20Bの空燃比はリーンに制御されるため、排気中の酸素を確保することができる。これらにより、排気成分を適正化することができ、エンジン10の排気性能を向上させることができる。また、触媒装置22での酸化反応性を向上させることができ、触媒温度を効率的に昇温でき、触媒の早期活性化を図ることができる。
なお、上記の(A)〜(C)の設定が随時選択可能であれば、第一気筒20Aからの排気中に含まれる成分の割合を調整することが可能となり、車両の運転状態に応じた柔軟な昇温制御が可能となる。したがって、エンジン10に関する各種パラメータに基づいて、リッチ気筒DI制御部32が上記の(A)〜(C)の何れかの設定を選択する構成としてもよい。この場合、リッチ気筒DI制御部32は、少なくともリッチ化される気筒について、その気筒に供給されるトータルの燃料量を増加させるように、その気筒に設けられた直噴インジェクタ2の噴射量を制御するものであればよい。
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の制御装置では、エンジン10の始動時の制御モードとして、通常モード,MPIモード,DIモード,圧縮S/Lモード等の各種モードを備えたECU3を例示したが、これらの制御モードは上述の制御装置に必須の要素ではない。
なお、上述の実施形態では、圧縮S/Lモードが設定されてから第二所定時間TBが経過した場合にリッチリーンモードが設定されているが、リッチリーンモード時に実施されるリッチリーン制御は、その制御単体で排気温度を昇温させることが可能であり、他の制御モードの設定に依存することなく独立して実施させてもよい。
2,2A,2B 直噴インジェクタ(第二燃料噴射手段)
3 ECU(制御手段)
3a モード判定部
3b MPI制御部
3c DI制御部
3d 圧縮S/L制御部
3e リッチリーン制御部
31 リッチ気筒MPI制御部(第一制御手段)
32 リッチ気筒DI制御部(第二制御手段)
33 リーン気筒MPI制御部(第三制御手段)
34 リーン気筒DI制御部(第四制御手段)
4 水温センサ
5 クランク角度センサ
6 燃圧センサ
7 アクセルペダルセンサ
10 エンジン
20A 第一気筒
20B 第二気筒
22 触媒装置
Claims (7)
- 多気筒エンジンの各気筒の吸気通路内に向けて第一燃料量の燃料を噴射する第一燃料噴射手段と、
前記各気筒内に向けて第二燃料量の燃料を噴射する第二燃料噴射手段と、
前記第一燃料量及び前記第二燃料量を制御して、前記多気筒エンジンの第一気筒の空燃比をリッチにすると同時に前記第一気筒とは異なる第二気筒の空燃比をリーンにする昇温制御を実施する制御手段と、を備え、
前記制御手段が、
前記昇温制御時に前記第一気筒に供給される前記第一燃料量を、前記昇温制御の開始前に前記第一気筒に供給されている前記第一燃料量よりも増加させる第一制御手段を有する
ことを特徴とする、エンジンの制御装置。 - 前記制御手段が、
前記昇温制御時に前記第一気筒に供給される前記第一燃料量及び前記第二燃料量を合計した燃料量から算出される空燃比が前記昇温制御の開始前よりもリッチになるように、前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を制御する第二制御手段を有する
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの制御装置。 - 前記制御手段が、
前記昇温制御時に前記第二気筒に供給される前記第一燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させる第三制御手段を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの制御装置。 - 前記制御手段が、
前記昇温制御時に前記第二気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させる第四制御手段を有する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。 - 前記制御手段が、各気筒の空燃比がストイキよりもややリーンとなる燃料量を圧縮行程で噴射する圧縮スライトリーン運転時に、前記昇温制御を実施する
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のエンジンの制御装置。 - 前記第二制御手段が、前記昇温制御を開始する前後で前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を維持する
ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンの制御装置。 - 前記第二制御手段が、前記昇温制御時に前記第一気筒に供給される前記第二燃料量を前記昇温制御の開始前よりも減少させる
ことを特徴とする、請求項2記載のエンジンの制御装置。
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