JP5437833B2 - アトマイズ用ノズルおよび金属粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アトマイズ法により金属粉末を作製する際に用いるアトマイズ用ノズルに関し、特に、ガスアトマイズ法に好適なアトマイズ用ノズルに関する。また、該アトマイズ用ノズルを用いた金属粉末の製造方法に関する。
高融点金属を溶融噴霧する場合、熱衝撃に強く、かつ、不純物の混入を抑制することができるノズルを用いることが望ましい。
このようなノズルとして、特許文献1には、図12に示されるようなノズルが記載されている。このノズル100は、溶融金属収容器200に接合され、溶融金属を流出させるための貫通孔101を有するノズル本体102と、当該貫通孔101の孔壁を保護するスリーブ103とを備えている。そして、ノズル本体102は、貫通孔101の溶融金属の流入側となるノズル基部102aと、貫通孔101の溶融金属の流出側となるノズル先端部102bとからなる二段構造となっており、当該ノズル基部102aはマグネシアまたはジルコニアにより構成されるとともに、当該ノズル先端部102bは黒鉛または窒化ホウ素により構成されており、スリーブ103はマグネシアまたはジルコニアにより構成されている。
特開2006−110610号公報
しかしながら、特許文献1に記載のノズル100を用いても、ガスアトマイズを行っている最中に、ノズルからの溶融金属の流れ出しが停止して、金属粉末の作製作業を中止せざるを得なくなる事態が発生することがあった。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、アトマイズ実施時に溶融金属の流れ出しを中断させずに行わせ、金属粉末の作製作業を円滑に行うことを可能とするアトマイズ用ノズルおよび該アトマイズ用ノズルを用いた金属粉末の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、ノズルからの溶融金属の流れ出しが停止する原因を突き止めるべく、ガスアトマイズを行った後のノズルを多数調べたところ、ノズルからの溶融金属の流れ出しが停止したときには、ノズルが磨耗して長さが短くなっている傾向があることを見出した。
通常ガスアトマイズでは、ノズルからの溶融金属の流れに対して斜め下方にガスを全方向から吹き付けてアトマイズを行うが、この際、吹き付けられたガスの一部はノズルの先端部に当たり、ガスの進行が乱される。このため、斜め下方に吹き付けられたガス同士の衝突は緩和されている。
これに対して、ノズルが磨耗して長さが短くなっていると、吹き付けられたガスがノズルの先端部に当たることなく、ガス同士が直接衝突するため、上方への気流が発生し、この上方への気流により溶融金属が上方に押し上げられてしまい、溶融金属の流れ出しが停止してしまうのではないかと本発明者は考察した。
そこで、ノズルの磨耗を防げば、上方への気流の発生を抑制でき、ノズルからの溶融金属の流れ出しの停止を防止できるのではないかと本発明者は考究し、本発明をするに至った。
即ち、本発明に係るアトマイズ用ノズルの第一の態様は、溶融金属が流れ出る管状体を備え、該管状体の先端部にガスが吹き付けられてアトマイズを行うアトマイズ用ノズルにおいて、前記管状体の外周面に2本以上の溝が該管状体の長手方向に設けられ、かつ、該溝は該管状体の管厚方向に貫通していないことを特徴とするアトマイズ用ノズルであり、前記溝を設けることにより、前記ノズル中を流れる溶融金属から適切に熱を奪い、前記ノズルの先端に適切に固体の金属を形成させて、前記ノズルの先端の磨耗を抑制することができ、前記課題を解決することができる。
前記溝は、効率的に固体金属を前記ノズルの先端に付着させる点で、前記管状体の先端から設けられていることが好ましい。
また、前記溝は、前記ノズルの強度低下を抑えつつ、効率的に固体金属を前記ノズルの先端に付着させる点で、前記管状体の先端側ほど深くなっていることが好ましい。
また、前記溝は、前記ノズルの先端に付着させる金属の量を前記ノズルの先端の円周方向になるべく均一にする点で、前記管状体の外周面の円周方向に均等に設けられていることが好ましい。
前記溝の本数は、8本以下であることが好ましく、4本であることがより好ましい。
また、前記溝の幅の前記管状体の外径に対する比は、0.01〜0.15であることが好ましい。
また、前記溝の幅は、例えば0.1mm以上1.25mm以下とすることができる。
また、前記溝の幅を0.75mm以上1.25mm以下とし、前記溝の断面形状を略三角形としてもよい。
前記アトマイズ用ノズルは、前記管状体の内周面側に該管状体の内周面を保護するスリーブを備えさせることが好ましく、該スリーブには、ジルコニアが用いられていることが好ましい。また、前記管状体には、窒化ホウ素が用いられていることが好ましい。
本発明に係るアトマイズ用ノズルの第二の態様は、溶融金属が流れ出る管状体を備え、該管状体の先端部にガスが吹き付けられてアトマイズを行うアトマイズ用ノズルにおいて、前記管状体の内周面側に該管状体の内周面を保護するスリーブを備え、更に、前記管状体の外周面に2本以上の溝が該管状体の長手方向に設けられ、かつ、該溝は該管状体の管厚方向に貫通していることを特徴とするアトマイズ用ノズルであり、前記溝を設けることにより、前記ノズル中を流れる溶融金属から適切に熱を奪い、前記ノズルの先端に適切に固体の金属を形成させて、前記ノズルの先端の磨耗を抑制することができ、前記課題を解決することができる。
本発明に係る金属粉末の製造方法は、前記いずれかのアトマイズ用ノズルを用いて、溶融金属に対してガスアトマイズを行うことを特徴とする金属粉末の製造方法であり、前記課題を解決することができる。
ここで、前記溶融金属がCrを20at%以上含むCo−Cr系合金であっても、前記金属粉末の製造方法を用いることができる。
本発明によれば、前記ノズル中を流れる溶融金属から適切に熱を奪い、前記ノズルの先端に適切に固体の金属を形成させて、前記ノズルの先端の磨耗を抑制することができる。このため、アトマイズ実施時に溶融金属の流れ出しを中断させずに行わせることができ、金属粉末の作製作業を円滑に行うことができる。
本発明の実施形態に係るアトマイズ用ノズル10が取り付けられたアトマイズ装置50を示す端面図 前記実施形態におけるアトマイズ用ノズル10を拡大して示す分解端面図 前記実施形態におけるノズル先端部14の縦端面図 図3のIV−IV線断面図 前記実施形態におけるノズル先端部14の溝14Cの形状の変形例を示す縦端面図 実施例1で用いたノズル10を拡大して示す分解端面図 実施例1で用いたノズル10のノズル先端部14の縦端面図 図7のVIII−VIII線断面図 図8のA部拡大図(溝14Cの拡大断面図) 実施例4における溝14Cの拡大断面図 実施例6における溝14Cの拡大断面図 特許文献1に記載の従来のノズルを備えた噴霧装置を示す概略断面図
以下図面に基づいて、本発明に係るアトマイズ用ノズルの好適な実施形態の例について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアトマイズ用ノズル10が取り付けられたアトマイズ装置50を示す端面図であり、図2は、アトマイズ用ノズル10を拡大して示す分解端面図であり、図3は、ノズル先端部14の縦端面図である。
アトマイズ装置50は、ルツボ40の底面部40Aの中央部の貫通孔40Bにノズル10が取り付けられて構成されている。ルツボ40は溶融した金属を収容する部位であり、その材質は耐熱性のあるセラミックス(例えば、マグネシアやジルコニア)である。
ノズル10は、ノズル基部12と、ノズル先端部14と、スリーブ16と、を備えてなり、ルツボ40に収容された溶融金属を下方に流れ出させる役割を有する。ノズル10から下方に流れ出した溶融金属にはアルゴンガス等の不活性ガスが吹き付けられてアトマイズがなされる。
ノズル基部12は、その後端側(図1および図2において上方側)の貫通孔12Aがルツボ40の底面部40Aの中央部の貫通孔40Bと一致するように、耐熱性のあるセラミックス系接着剤によりルツボ40の底面部40Aに取り付けられており、ノズル基部12の材質はルツボ40と同様に耐熱性のあるセラミックス(例えば、マグネシアやジルコニア)である。
ノズル先端部14は、貫通孔14Aを有する管状体の直管部14Bを先端側(図1〜図3において下方側)に備え、直管部14Bよりも径の大きい管状体の大径部14Eを後端側に備える。そして、ノズル先端部14は、貫通孔14Aがノズル基部12の先端側(図1および図2において下方側)の貫通孔12Cと一致するように、かつ、大径部14Eがノズル基部12の下端部12Bの外側を覆うように、耐熱性のあるセラミックス系接着剤によりノズル基部12に取り付けられている。ノズル先端部14はルツボ40よりも外側に突出して配置されているので、ルツボ40内に溶融金属を収容しても、溶融金属の熱が伝導されにくく、温度が上がりにくい。このため、アトマイズを行う際に溶融金属を流れ出させると、ノズル先端部14には熱衝撃が加わりやすいので、ノズル先端部14の材質は耐熱性だけでなく耐熱衝撃性にも優れた材質にすることが好ましく、例えば窒化ホウ素を用いることが好ましい。なお、ノズル基部12には特段の耐熱衝撃性は求められないので、ノズル基部12の材質はルツボ40の材質と同様でよい。
直管部14Bの先端部には、斜め下方にアルゴンガス等の不活性ガスが全方向から吹き付けられて、ノズル先端部14の先端14Dから下方に流れ出した溶融金属はアトマイズされる。
また、図3(ノズル先端部14の縦端面図)および図4(図3のIV−IV線断面図)に示すように、溝14Cが、ノズル先端部14の直管部14Bの外周面において直管部14Bの先端からその長手方向に、円周方向4箇所に90°間隔で設けられている。溝14Cは、アトマイズ時に吹き付けられるガスを溶融金属に距離的に近づけて、溶融金属から熱を適切に奪うために設けられた溝である。溶融金属は熱を奪われると固体となってノズル先端部14の先端14Dに付着し、ノズル先端部14の先端14Dが磨耗することを抑制する。溶融金属から熱を奪って効率的に固体金属を先端14Dに付着させるために、溝14Cは、ノズル先端部14の先端14Dから設けることが好ましい。
溝14Cは、スリーブ16を含むノズル10を管厚方向に貫通することなく設けられており、溝14Cの深さはノズル先端部14の直管部14Bの管厚より小さくしてもよいし、ノズル先端部14の直管部14Bの管厚と同じ(直管部14Bの管壁を管厚方向に貫通)にしてもよい。ノズル先端部14の直管部14Bの内側にはスリーブ16が配置されているので、直管部14Bの管壁を貫通するように溝14Cを直管部14Bに設けても、溝14Cはスリーブ16を含むノズル10を管厚方向に貫通することはなく、ノズル10内を流れる溶融金属にはアトマイズ用のガスが直接吹きかかることはない。仮に、溝14Cが、スリーブ16を含めてノズル10を管厚方向に貫通して設けられたとすると、ノズル10内を流れる溶融金属にアトマイズ用のガスが直接吹きかかり、ノズル10内を流れる溶融金属が急速に冷却されるので、アトマイズ時に不具合が生じるおそれがある。
また、図5に示すように、溝14Cは、ノズル10(直管部14B)の先端側ほど深くなっていることが好ましい。このようにすることにより、ノズル10の強度低下を抑えつつ溶融金属から効率的に熱を奪って、固体金属をノズル10の先端14Dに効率的に付着させることができる。この場合のノズル10の先端14Dにおける溝14Cの深さは、ノズル先端部14の直管部14Bの内径が3mm、管厚が2mm、長さが11mmの場合、例えば0.5mmである。
スリーブ16は、細長い円筒状の部材であり、ノズル基部12の先端側の貫通孔12Cおよびノズル先端部14の先端側の貫通孔14Aの内面に、耐熱性のあるセラミックス系接着剤により取り付けられており、貫通孔12Cおよび貫通孔14Aの孔壁(ノズル基部12およびノズル先端部14の内周面)を保護する役割を有する。スリーブ16の形状は、例えば内径が2mm、管厚が0.5mmである。スリーブ16の内側は溶融金属が流れ落ち、その際にスリーブ16の内面は溶融金属との間で摩擦が生じるので、スリーブ16の材質は耐熱性だけでなく耐摩耗性にも優れた材質であることが好ましく、例えばジルコニアを用いることが好ましい。
なお、スリーブ16は、溶融金属の組成やノズル先端部14の材質によっては必ずしも備えさせなくてもよい。
また、本実施形態に係るノズル10の大きさは特に限定されず、例えば、ノズル先端部14の直管部14Bの外径が7〜12mm、直管部14Bの管厚とスリーブ16の管厚の合計が2〜3mmであれば、ノズル10を用いてガスアトマイズを良好に行うことができる。
また、溝14Cの幅の直管部14Bの外径に対する比が0.01〜0.15であれば、より良好にガスアトマイズを行うことができる。
また、ノズル10を用いてガスアトマイズを行い得る金属は特に限定されず、例えばTi、Mn、Fe、B、Co、Cr、Cu、Pt、Pd、Ru等に対して適用可能であり、また、Co−Cr系合金、Pt系合金等の高融点金属やこれらの金属の合金系に対しても適用可能である。
次に、本実施形態の特徴部分であるノズル先端部14の溝14Cについて、さらに説明する。
溝14Cの断面形状(幅および深さ)、数、配置位置は、溶融金属の粘性、濡れ性、融点およびスリーブ16の内径・管厚、ノズル先端部14の直管部14Bの内径・管厚等を踏まえて、溶融金属から適切に熱を奪うように適宜設定する。本実施形態では、溝14Cの本数を4本としたが、溝14Cの本数は2〜8本であればよく、4本が最もよい。
ノズル10から流れ出す溶融金属の量に対して溝の数が少なすぎる場合や溝の形状が小さすぎる場合には、溶融金属から奪う熱の量が少なくなって、ノズル先端部14の先端14Dで溶融金属が固体となる量が少なくなり、ノズル先端部14の先端14Dが磨耗することを抑制する効果が小さくなり、ノズル先端部14の先端14Dの磨耗が進行してしまう。逆に、ノズル10から流れ出す溶融金属の量に対して溝の数が多すぎる場合や溝の形状が大きすぎる場合には、溶融金属から奪う熱の量が多くなって溶融金属が固体となる量が多くなりすぎ、ノズル先端部14の先端14Dに固体となった金属がつらら状に過大に成長してしまい、ガスアトマイズを適切に行いにくくなるおそれがある。なお、以下では、ノズル先端部14の先端14Dに固体となって付着した金属のことを「つらら」と記すことがある。
具体的には、例えば、Co−Cr系合金のような高融点金属を溶融噴霧する場合で、スリーブ16の内径が2mm、管厚が0.5mmで、ノズル先端部14の直管部14Bの内径が3mm、管厚が2mm、長さが11mmの場合には、溝14Cの断面形状を幅0.1〜1.25mm、深さ0.3〜2.0mmとして、溝14Cを先端14Dから所定の距離(例えば5〜11mm)までの範囲に2〜8本設ければ、過大に金属のつららを先端14Dに生じさせずに、ノズル先端部14の先端14Dの磨耗を抑制する効果を得ることができる。なお、前記幅は直管部14Bの外周面における幅であり、幅と深さが前記範囲に入っていれば、溝14Cの断面の形状そのものは特に限定されず、例えば略長方形でも、略三角形でもよい。溝を設ける際の加工性は略三角形の方が良好である。また、ノズル先端部14の先端14Dに付着させる金属の量を先端14Dの円周方向になるべく均一にするために、溝14Cは先端14Dの円周方向に均等に配置(例えば溝14Cが2本の場合には先端14Dの円周方向に180°間隔で配置し、3本の場合には円周方向に120°間隔で配置し、4本の場合には円周方向に90°間隔で配置する。)することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係るアトマイズ用ノズル10は、直管部(管状体)14Bの外周面に貫通しない溝14Cが複数設けられており、この複数の溝14Cを介してアトマイズ用のガスへと溶融金属から熱が適切に奪われるので、本実施形態に係るアトマイズ用ノズル10を用いてガスアトマイズを行うと、ノズル10の先端に固体の金属が適量付着して、ノズル10の先端がアトマイズ時に磨耗することが抑制される。このため、アトマイズ用のガスの一部は常にノズル10の先端部に当たってガスの進行が乱され、斜め下方に吹き付けられたガス同士の衝突は緩和されて、上方への気流の発生が抑制されるので、気流により溶融金属が上方に押し上げられることが抑制され、溶融金属の流れ出しが良好に進行する。
したがって、本実施形態に係るアトマイズ用ノズル10を用いてガスアトマイズを行うことにより、溶融金属はルツボ40からアトマイズ用ノズル10を通って下方へとスムーズに流れ出し、溶融金属の流れ出しは中断せず、金属粉末の作製作業を円滑に行うことが可能となる。
例えば、Crを多く(例えば20at%以上)含むCo−Cr系合金やCr単体の溶融金属に対して従来のノズルを用いてガスアトマイズを行うとノズル先端が多く磨耗するが、本実施形態に係るアトマイズ用ノズル10を用いれば、このような溶融金属に対してガスアトマイズを行っても、ノズル先端の磨耗が抑制され、良好にガスアトマイズを行うことができる。
なお、本実施形態のノズル先端部14の直管部14Bに溝14Cを設ける替わりに、直管部14Bの管厚を全体的に薄くして、溶融金属から熱を奪うことも考えられるが、この方法では、直管部14Bの強度が不足してしまい、ノズル10自体が折れてしまうおそれがある。
(実施例1)
図1に示すアトマイズ装置50および図2に示すノズル10を用いて、63Co−24Cr−13Pt合金の溶融金属に対してガスアトマイズを行ってアトマイズ合金粉の作製を行った。用いたアトマイズ装置50のルツボ40の内径は89mmで、内包高さは196mmである。また、ルツボ40の材質はマグネシアである。
用いたノズルの各部の具体的な寸法については、図6〜図9に示す。図6は、用いたノズル10を拡大して示す分解端面図であり、図7はノズル先端部14の縦端面図であり、図8は図7のVIII−VIII線断面図であり、図9は図8のA部拡大図(溝14Cの拡大断面図)である。図6〜図9に示すように、ノズル先端部14の直管部14Bについては内径を3mm、管厚を2mm、長さを11mmとし、溝14Cの断面形状については幅を0.35mm、深さを0.5mmとして略長方形とし、溝14Cを設けた範囲は直管部14Bの先端14Dから8mmまでの範囲とし、溝14Cの本数については4本とした。溝14Cの幅の直管部14Bの外径に対する比は、0.05である。スリーブ16については内径を2mm、管厚を0.5mmとした。なお、図6〜図9に示す構成において、図1〜図4に示す構成と同一または対応する部位については同一の符号を付している。
前記アトマイズ装置50のルツボ40内に、63Co−24Cr−13Pt合金16.5kgを投入し、高周波により1700℃まで加熱して溶融させて溶融金属とし、その溶融金属の全量をノズル先端部14から流れ出させ、直管部14Bの先端部に斜め下方にアルゴンガスを全方向から吹き付けてアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を行った。ルツボ40内はアルゴンガス雰囲気とし、その圧力は0.02MPaとした。
前記アトマイズ合金粉の作製を同様の条件で合計10回行った。ガスアトマイズを行った噴霧時間は3〜4分であり、また、いずれの回においても63Co−24Cr−13Pt合金の溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができた。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、0〜1.5mmの範囲に分布した結果となり、平均磨耗長さの全10回の平均値は0.8mmであり、ほとんど磨耗が生じておらず、直管部14Bの先端14Dの磨耗が良好に防止されていた。なお、平均磨耗長さは、ガスアトマイズ終了後の直管部14Bの最長部位の長さと最短部位の長さの平均値を、ガスアトマイズ実施前の直管部14Bの長さから減じた値である。また、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、過大なものではなかった。
(比較例1)
溝14Cの本数を0本とし、溝14Cをなくした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を行った。即ち、本比較例1で用いるノズルは外周面に溝のない従来のノズルである。
本比較例1ではアトマイズ合金粉の作製を同様の条件で合計21回行ったが、そのうち2回はアトマイズ実施中に溶融金属のノズルからの流れ出しが停止してしまい、適切にガスアトマイズを行うことができなかった。63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができたとき(19回)は、噴霧時間は約3〜5分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、アトマイズ実施中に溶融金属のノズルからの流れ出しが停止した2回の平均磨耗長さは2mm、4mmであり、その2回の平均磨耗長さの平均値は3mmであった。19回は適切にガスアトマイズを行うことができたが、その19回の平均磨耗長さは1.5〜3mmの範囲に分布した結果となり、その19回の平均磨耗長さの平均値は2.0mmであり、適切にガスアトマイズを行うことができたときでも、直管部14Bの先端14Dの磨耗が進んでいた。全21回の平均磨耗長さの平均値は2.1mmであった。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察される場合があったが、過大なものではなかった。
(比較例2)
溝14Cの本数を1本とした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を1回行った。
63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は約4分であった。
しかしながら、ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、2.0mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗が実施例1の場合よりも進んでいた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例2)
溝14Cの本数を2本とした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を1回行った。2本の溝14Cは向かい合うように(直管部14Bの円周方向に180°間隔で)配置した。
63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は約4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、1.0mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例3)
溝14Cの本数を3本とした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を1回行った。3本の溝14Cは直管部14Bの円周方向に120°間隔で配置した。
63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は約4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、1.0mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例4)
溝14Cの断面形状を図10に示すように、幅0.1mm、深さ2.0mmとした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を5回行った。溝14Cの幅の直管部14Bの外径に対する比は、0.014である。なお、図10に示す構成において、実施例1についての図9に示す構成と対応する部位については同一の符号を付している。
アトマイズ合金粉の5回の作製のうち、いずれの回においても、63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は3〜4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、0〜1mmの範囲に分布した結果となり、平均磨耗長さの全5回の平均値は0.4mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例5)
溝14Cの本数を8本とした以外は実施例4と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を2回行った。
アトマイズ合金粉の2回の作製のうち、いずれの回においても、63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は2回とも4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、0mm、1mmであり、平均磨耗長さの全2回の平均値は0.5mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、やや大きな金属のつらら(実施例1〜7、比較例1、2の中では最大のつらら)の形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例6)
溝14Cの断面形状を図11に示すように、幅1.0mm、深さ0.5mmの略三角形とした以外は実施例1と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を合計10回行った。溝14Cの幅の直管部14Bの外径に対する比は、0.143である。なお、図11に示す構成において、実施例1についての図9に示す構成と対応する部位については同一の符号を付している。
アトマイズ合金粉の10回の作製のうち、いずれの回においても、63Co−24Cr−13Ptの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は3〜4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、0〜1.5mmの範囲に分布した結果となり、平均磨耗長さの全10回の平均値は0.7mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(実施例7)
63Co−24Cr−13Ptの溶融金属に代えて、77Co−23Crの溶融金属を用いた以外は実施例6と同様にしてガスアトマイズを行い、アトマイズ合金粉の作製を合計5回行った。
アトマイズ合金粉の5回の作製のうち、いずれの回においても、77Co−23Crの溶融金属の全量である16.5kgに対して適切にガスアトマイズを行うことができ、噴霧時間は3〜4分であった。
ガスアトマイズ終了後、直管部14Bの長さを測定して平均磨耗長さを求めたところ、0〜1mmの範囲に分布した結果となり、平均磨耗長さの全5回の平均値は0.6mmであり、直管部14Bの先端14Dの磨耗は比較例1、2よりも抑えられていた。
なお、ガスアトマイズの実施中、直管部14Bの先端14Dの観察を目視により行ったところ、小さな金属のつららの形成が観察されたが、アトマイズに支障を来たすほど過大なものではなかった。
(溝の加工誤差の影響)
溝14Cを設けた実施例1〜7および比較例2において、溝14Cを、直管部14Bの先端14Dから8mmまでの範囲に配置することを目標として加工を行ったが、加工誤差により、溝14Cの範囲は、直管部14Bの先端14Dから8mm±3mmまでの範囲にばらついてしまった。しかしながら、そのばらつきは、アトマイズ合金粉の作製回数が複数回である実施例1、4、5、6、7の結果から見て、磨耗長さおよびアトマイズの結果には影響を与えていなかった。
また、実施例6、7において、溝14Cの断面形状を幅1.0mm、深さ0.5mmの略三角形(図11参照)とすることを目標として加工を行ったが、加工誤差により、幅は1.0mm±0.25mmの範囲にばらついてしまった。しかしながら、そのばらつきは、アトマイズ合金粉の作製回数がそれぞれ10回、5回である実施例6、7の結果から見て、磨耗長さおよびアトマイズの結果には影響を与えていなかった。
(考察)
下記の表1は、実施例1〜7、比較例1、2についての実験結果を一覧にしたものである。
Figure 0005437833
実施例1〜7、比較例1、2のアトマイズの結果および平均磨耗長さの平均値からわかるように、ノズル先端部14の直管部14Bに溝を設けた方が、直管部14Bの平均磨耗長さの平均値が小さくなり、アトマイズの結果も良好になっている。ただし、溝が1本の比較例2では、平均磨耗長さの平均値が2.0mmとなっており、アトマイズの結果は1回中1回良好であったものの、直管部14Bの先端14Dの磨耗が進んでおり、アトマイズの実施回数を多くしていくと、不良が発生することがあると思われる。したがって、溝の本数は2本以上とするのがよいと考えられる。
また、実施例5からわかるように、溝の本数を8本とすると、つららの大きさが他の実施例、比較例よりも大きくなって「中」となっていた。この「中」のつららの大きさは、アトマイズの実施に支障を来たす大きさではないものの、溝の本数を8本より多くすると、アトマイズの実施に支障を来たすほどのつららの成長が起こる可能性があると思われる。したがって、溝の本数は8本以下とするのが好ましいと考えられる。
溝の形状にもよるが、総じて、溝の本数を4本にすると、磨耗長さが短くなり、かつ、つららの成長も過大にならないようであり、溝の本数は4本が最適と思われる。
10…アトマイズ用ノズル
12…ノズル基部
12A、12C…貫通孔
12B…下端部
14…ノズル先端部
14A…貫通孔
14B…直管部(管状体)
14C…溝
14D…先端
14E…大径部
16…スリーブ
40…ルツボ
40A…底面部
40B…貫通孔

Claims (15)

  1. 溶融金属が流れ出る管状体を備え、該管状体の先端部にガスが吹き付けられてアトマイズを行うアトマイズ用ノズルにおいて、
    前記管状体の外周面に2本以上の溝が該管状体の長手方向に設けられ、かつ、該溝は該管状体の管厚方向に貫通していないことを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  2. 請求項1において、
    前記溝は、前記管状体の先端から設けられていることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  3. 請求項1または2において、
    前記溝は、前記管状体の先端側ほど深くなっていることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    前記溝は、前記管状体の外周面の円周方向に均等に設けられていることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    前記溝の本数が8本以下であることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  6. 請求項5において、
    前記溝の本数が4本であることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、
    前記溝の幅の前記管状体の外径に対する比が、0.01〜0.15であることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  8. 請求項1〜7のいずれかにおいて、
    前記溝の幅が0.1mm以上1.25mm以下であることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  9. 請求項8において、
    前記溝の幅が0.75mm以上1.25mm以下であり、前記溝の断面形状が略三角形であることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  10. 請求項1〜9のいずれかにおいて、
    前記アトマイズ用ノズルは、前記管状体の内周面側に該管状体の内周面を保護するスリーブを備えることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  11. 請求項10において、
    前記スリーブには、ジルコニアが用いられていることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  12. 請求項1〜11のいずれかにおいて、
    前記管状体には、窒化ホウ素が用いられていることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  13. 溶融金属が流れ出る管状体を備え、該管状体の先端部にガスが吹き付けられてアトマイズを行うアトマイズ用ノズルにおいて、
    前記管状体の内周面側に該管状体の内周面を保護するスリーブを備え、
    更に、前記管状体の外周面に2本以上の溝が該管状体の長手方向に設けられ、かつ、該溝は該管状体の管厚方向に貫通していることを特徴とするアトマイズ用ノズル。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のアトマイズ用ノズルを用いて、溶融金属に対してガスアトマイズを行うことを特徴とする金属粉末の製造方法。
  15. 請求項14において、
    前記溶融金属は、Crを20at%以上含むCo−Cr系合金であることを特徴とする金属粉末の製造方法。
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