以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明に係る成膜方法の概念を説明する。図1は、本発明に係る成膜方法の概念を説明するための模式図である。
最初に、図1の(a)に示すように、カルボン酸と、得ようとする金属膜の金属を含む酸素含有金属化合物とを反応させてカルボン酸塩ガスを生成する。このようにすることにより、供給するカルボン酸の量を調節することによって生成するカルボン酸塩の量を調節することができ、安定的に制御性良く原料を供給することができる。
ここで、カルボン酸としては、蒸気圧が高く気化して反応させるのに適しているものが好ましく、このようなものとして蟻酸(HCOOH)、酢酸(CH3COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)、吉草酸(CH3(CH2)3COOH)、酪酸(CH3(CH2)2COOH)を挙げることができ、これら選択されたものを用いることが好ましい。中でも、最も蒸気圧が高い蟻酸が好ましい。また、蟻酸は、カルボキシル基以外の部分がHのみであり、副生成物として取り込まれる中途分解物が最小であると考えられ、このような点からも好ましい。
このようなカルボン酸と酸素含有金属化合物を反応させることにより金属膜を形成することができるが、酸素含有金属化合物としては、典型的には金属酸化物を挙げることができる。また金属水酸化物も用いることができる。金属水酸化物は金属酸化物よりも熱的に不安定であるため、反応温度をより低下することができるメリットを有する場合がある。
このような金属としては、銅(Cu)および銀(Ag)が好ましい。これらは、カルボン酸との間で、熱分解しやすいカルボン酸塩を形成することができ、抵抗が非常に低く、配線材料として適している。金属としてCu、Agを用いる場合には、酸素含有金属化合物としては、酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)、水酸化第二銅(Cu(OH)2)、酸化第一銀(Ag2O)、酸化第二銀(Ag2O2)を挙げることができる。反応性の観点からは、二価の酸化物である酸化第二銅(CuO)や酸化第二銀(Ag2O2)よりも、一価の酸化物である酸化第一銅(Cu2O)や酸化第一銀(Ag2O)のほうが好ましい。水酸化第二銅(Cu(OH)2)は熱的により不安定であるためカルボン酸塩を形成する温度を低下することができるが、保存安定性等が低いおそれがある。銀の場合にはAg(OH)が存在するが熱的に不安定過ぎて室温で分解してしまうため、適用が困難である。
次に、図1の(b)に示すように、基板1上に上記のようにして生成したカルボン酸塩ガスを供給する。カルボン酸塩として熱分解しやすいものを選択することにより、エネルギーを与えることによって容易に金属に分解させることができ、特にカルボン酸として上述のような蒸気圧の高いものを選択することにより、熱分解しやすいものとすることができ、容易に金属膜を形成することができる。カルボン酸塩第一蟻酸銅は不安定な物質であり、銅に分解されやすいことが知られており、本発明ではその性質を利用して銅膜を形成する。また、カルボン酸塩の酸化を極力抑制して所望の成分を維持するためには、カルボン酸塩の供給を真空中で行うことが好ましい。
次に、図1の(c)に示すように、カルボン酸塩を基板1に吸着させ、所定量堆積させて、金属膜の前駆体としてのカルボン酸塩膜2を成膜する。このとき、基板1の温度は−30〜50℃程度が好ましい。
次に、図1(d)に示すように、カルボン酸塩膜2が形成された基板にエネルギーを与え、反応を進行させ、カルボン酸塩を分解して金属膜3を成膜する。
このときエネルギーとしては典型的には熱エネルギーを用いる。熱エネルギーは通常の成膜装置に用いられている抵抗発熱体や加熱ランプ等により与えることができるので適用が容易である。
このような方法によれば、気相での熱分解なしに、原料ガスであるカルボン酸塩をガスの状態で基板表面に吸着させてから、エネルギーを与えて金属膜とするために、通常のCVDと同様にステップカバレッジを良好にすることができる。そのため、ULSI配線工程における微細パターンへの適用が可能である。また、MOCVDよりも安価な原料を使用することができるため低コストでの金属配線用の成膜が可能である。
ステップカバレッジを考慮すると、図1に示したように、カルボン酸塩を基板表面に吸着させた後、エネルギーを与えて金属膜とすることが好ましいが、図2に示すようにすることもできる。図2の(a)では図1の(a)と同様、カルボン酸塩を生成し、その後、図2の(b)に示すように、基板1に熱エネルギー等のエネルギーを与えた状態として、生成した第一蟻酸銅ガスを基板1上に供給してもよい。この場合には、図2の(c)に示すように、カルボン酸塩ガスが基板1上に到達すると即座に分解し、金属膜3が成膜されることとなる。このような方法では、図1の方法よりも多少ステップカバレッジが劣る傾向にあるが、図1に示したようなカルボン酸塩を基板表面に吸着させてからエネルギーを与えて金属膜を形成する場合よりも短時間で金属膜を形成することができるというメリットがある。
このようなカルボン酸塩と酸素含有金属化合物とを反応させて金属膜を形成する手法の最も好適な例としては、カルボン酸として蟻酸を用い、酸素含有金属化合物として酸化銅を用いて、これらの反応によりCu膜を形成することを挙げることができる。
以下、このようなCu膜の成膜方法について説明する。反応性が良好で必要な安定性を確保する観点からは、酸化銅として酸化第一銅を用いることが好ましいため、以下の説明では酸化第一銅を用いている。
最初に、図3の(a)に示すように、以下の(3)式に示す反応式にしたがって、蟻酸と酸化第一銅とを反応させて第一蟻酸銅(Cu(OCHO))ガスを生成する。この場合に酸化第一銅は固体状であり、蟻酸は気体または液体状である。
Cu2O+2HCOOH → 2Cu(OCHO)+H2O ……(3)
(固体)(気体または液体) (気体) (気体)
酸化第一銅と蟻酸との反応は、粉末状の酸化第一銅に蟻酸ガスまたは液体状の蟻酸を供給してもよいし、酸化第一銅からなる部材に蟻酸ガスまたは液体状の蟻酸を供給してもよい。
このように蟻酸と酸化第一銅とを反応させて第一蟻酸銅ガスを生成するので、供給する蟻酸の量を調節することによって、生成する蟻酸銅の量を調節することができ、安定的に、かつ調節可能な方法で原料を供給することができる。また、従来技術で用いられているような第二蟻酸銅を熱分解する方法に比べて原料の劣化が生じ難い。
次に、図3の(b)に示すように、基板1上に上記のようにして生成した第一蟻酸銅ガスを供給する。第一蟻酸銅は不安定な物質であり、銅に分解されやすいことが知られており、本発明ではその性質を利用して銅膜を形成する。また、第一蟻酸銅は真空中ではガスとして存在するが、大気雰囲気下では容易に酸化されて酸化第一銅となってしまうため、この第一蟻酸銅の供給は真空中で行う。この際に、第一蟻酸銅はガス状に保持されるように50〜150℃程度の温度にされる。本発明の第一蟻酸銅には、単量体のみならず多量体も含まれる。なお、第一蟻酸銅ガスを大量に生成し、生成した第一蟻酸銅の気相中での分解を抑制するために、蟻酸ガスの分圧条件はある程度高くする必要がある。ただし、圧力が高すぎると蟻酸の気化供給に不利となる。よって、第一蟻酸銅生成反応の際の蟻酸ガスの分圧は、133〜6650Pa(1〜50Torr)程度が望ましい。
次に、図3の(c)に示すように、第一蟻酸銅を基板1に吸着させ、所定量堆積させて、銅膜の前駆体としての第一蟻酸銅膜4を成膜する。このとき、基板1の温度は−30〜50℃程度が好ましい。
次に、図3の(d)に示すように、第一蟻酸銅膜4が形成された基板にエネルギーを与え、上記(2)式に示す反応式の反応を進行させ、第一蟻酸銅膜を分解して銅(Cu)膜5を成膜する。
このときエネルギーとしては典型的には熱エネルギーを用いる。熱エネルギーは通常の成膜装置に用いられている抵抗発熱体や加熱ランプ等により与えることができるので適用が容易である。上述したように第一蟻酸銅は不安定な物質であり、100〜250℃程度に加熱することにより、容易に銅に分解する。
このような方法によれば、気相での熱分解なしに、原料ガスである第一蟻酸銅をガスの状態で基板表面に吸着させてから、エネルギーを与えてCu膜とするために、通常のCVDと同様にステップカバレッジを良好にすることができる。そのため、ULSI配線工程における微細パターンへの適用が可能である。また、MOCVDよりも安価な原料を使用することができるため低コストでのCu配線用の成膜が可能である。さらに、原料としてCu以外にはCとOとHだけであるので不純物の少ない良質の膜を得ることができ、上述の特開2004−27352号公報に開示された技術のように塩素によるCu配線の腐食の問題もない。さらにまた、プラズマを使用しないため、基板下地へのプラズマダメージも発生しない。さらにまた、第一蟻酸銅膜4は、100℃程度の低温で容易に分解されるため、従来のMOCVDよりも各段に低温での成膜が可能であり、このプロセスを半導体装置に適用した場合に下地膜への熱的な劣化を与えるおそれがほとんどない。特に、層間絶縁膜として用いられるLow−k膜は熱に弱いので、このように低温で成膜可能なことは極めて有利である。さらにまた、蟻酸は蒸気圧が比較的高く、大量の蟻酸ガスを酸化銅表面に供給することが可能であるので、生成される第一蟻酸銅ガスの流量は、既存の有機銅化合物を使う方法よりも遥かに多くできる。そのため、短時間で大量の第一蟻酸銅を基板に堆積することが可能となり、成膜速度を高くすることができる。
図4は、上記図2に対応するものである。図4の(a)では図3の(a)と同様、第一蟻酸銅ガスを生成し、その後、図4の(b)に示すように、基板1に熱エネルギー等のエネルギーを与えた状態、例えば、基板1を100〜250℃程度に加熱した状態として、生成した第一蟻酸銅ガスを基板1上に供給する。この場合には、図4の(c)に示すように、第一蟻酸銅ガスが基板1上に堆積する前に上記(2)式に示す反応式の反応によって分解し、銅膜5が成膜されることとなる。このような方法では、図3の方法よりも多少ステップカバレッジが劣る傾向にあるが、図3に示したようなカルボン酸塩を基板表面に吸着させてからエネルギーを与えて金属膜を形成する場合よりも短時間で金属膜を形成することができるというメリットがある。
図3および4の例では、酸素含有銅化合物である酸化銅として酸化第一銅を用いた場合について示したが、酸化第二銅(CuO)を用いることもできる。酸化第二銅は反応性は酸化第一銅に劣るものの、酸化第二銅のほうが安定であることから、原料の加工形態としては、粉体以外に、ペレット、多結晶板等の多くの形市販されており、コストも低いというメリットがある。
酸素含有銅化合物として酸化銅の他に、水酸化第二銅(Cu(OH)2)を用いることもできる、水酸化銅は酸化銅よりも熱的に不安定であることから第一蟻酸銅の生成反応の温度を低下できる可能性もある。
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。以下の実施形態においては、カルボン酸と酸素含有金属化合物からカルボン酸塩を形成する典型例として、蟻酸と酸化第一銅を用いて第一蟻酸銅を形成する例を挙げ、これを基板としての半導体ウエハに供給し、エネルギーを与えて金属膜として銅膜を形成する場合について説明する。
[第1の実施形態]
図5は、第1の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
図5に示す成膜装置は、例えばアルミニウムなどにより円筒状あるいは箱状に成形されたチャンバ11を有しており、チャンバ11の内部には、被処理体である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを水平に支持するためのサセプタ12がその中央下部に設けられた円筒状の支持部材13により支持された状態で配置されている。サセプタ12にはヒーター14が埋め込まれており、このヒーター14はヒーター電源15から給電されることにより被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。なお、サセプタ12はセラミックス例えばAlNで構成することができる。
チャンバ11の天壁11aには、シャワーヘッド20が形成されている。シャワーヘッド20は、チャンバ11の天壁11a内に形成された水平に延材する扁平形状のガス拡散空間21と、その下方に設けられた多数のガス吐出孔23を有するシャワープレート22とを有している。シャワーヘッド20の内面にはヒーター20aが設けられている。
チャンバ11の側壁下部には排気口24が形成されており、この排気口24には排気管25が接続されている。この排気管25には真空ポンプを有する排気装置26が接続されている。そしてこの排気装置26を作動させることにより排気管25を介してチャンバ11内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。チャンバ11の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口27と、この搬入出口27を開閉するゲートバルブ28とが設けられている。
一方、チャンバ11の外部には、蟻酸(HCOOH)を貯留する蟻酸貯留容器31が配置されており、この蟻酸貯留容器31からは配管32が延びている。配管32にはバルブ33と流量制御のためのマスフローコントローラ(MFC)34が設けられている。チャンバ11の近傍には酸化第一銅粉末36を貯留した反応容器35が配置されており、上記配管32が反応容器35に挿入されている。反応容器35の周囲にはヒーター35aが設けられている。反応容器35の上部には配管37が接続されており、この配管37はチャンバ11の上方からシャワーヘッド20の内部のガス拡散空間21に臨む位置まで延びている。配管37の周囲にはヒーター37aが設けられている。
蟻酸貯留容器31内の蟻酸は、加熱またはバブリング等の適宜の手段によりガス状とされ、この蟻酸ガスが配管32を通って反応容器35に導入される。反応容器35内では、ヒーター35aにより50〜150℃に保持された状態で、酸化第一銅粉末36と蟻酸ガスが反応し、上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスが生成される。なお、液体状の蟻酸を気化器に供給し、そこでガス状にしてもよいし、蟻酸を液体状のまま反応室に供給して上記反応を生じさせることもできる。
配管32のバルブ33およびマスフローコントローラ(MFC)34の間には配管32を不活性ガスでパージするためのガスライン16aが接続されている。ガスライン16aには上流側からバルブ17aおよびマスフローコントローラ(MFC)18aが設けられている。また、シャワーヘッド20のガス拡散空間21内には副生成物のパージおよび希釈ガスを供給するためのガスライン16bが接続されている。ガスライン16bには上流側からバルブ17bおよびマスフローコントローラ(MFC)18bが設けられている。
成膜装置を構成する各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ80に接続されて制御されるようになっている。また、プロセスコントローラ80には、工程管理者等が成膜装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース81が接続されている。さらに、プロセスコントローラ80には、成膜装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ80の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部82が接続されている。レシピはハードディスクや半導体メモリーに記憶されていてもよいし、CDROM、DVD等の可搬性の記憶媒体に収容された状態で記憶部82の所定位置にセットするようになっていてもよい。さらに、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース81からの指示等にて任意のレシピを記憶部82から呼び出してプロセスコントローラ80に実行させることで、プロセスコントローラ80の制御下で、成膜装置での所望の処理が行われる。
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行われる成膜処理について説明する。
まず、ゲートバルブ28を開にして、ウエハWを搬入出口27からチャンバ11内に搬入し、サセプタ12上に載置する。排気装置26により排気口24および排気管25を介してチャンバ11内を排気することによりチャンバ11内を所定の圧力にする。
この状態で、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32を介して反応容器35に導く。反応容器35はヒーター35aにより50〜150℃程度に加熱されており、これにより反応容器35内の酸化第一銅粉末36と蟻酸ガスとが上述した(3)式に示す反応式に従って反応して第一蟻酸銅ガスを生成する。この第一蟻酸銅ガスは配管37を経てシャワーヘッド20のガス拡散空間21に至り、シャワープレート22に形成された多数のガス吐出孔23からウエハWに向けて吐出される。この際に、配管37の外周に設けられたヒーター37aおよびシャワーヘッド20の内面に設けられたヒーター20aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給される。
第一蟻酸銅ガスは、常温〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である第一蟻酸銅膜を形成する。このときの第一蟻酸銅膜の膜厚は第一蟻酸銅ガスの供給時間とウエハ温度によって制御することができる。
このようにして前駆体である第一蟻酸銅の成膜を所定時間行って、所定の厚さになった時点で、第一蟻酸銅ガスの供給を停止し、引き続きヒーター14によりウエハWを100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
その後、ヒーター14の出力を停止し、ガスラインをパージガスライン16a,16bに切替え、N2やArなどの不活性ガスによって副生成ガスや余分な蟻酸ガスをパージする。次いで、チャンバ11内の圧力を外部の圧力に合わせた後、ゲートバルブ28を開いてウエハWを搬出する。
上記構成の装置によれば、ステップカバレッジが良好で良質のCu膜を安価に成膜することができる。また、蟻酸ガスを反応容器35に導入して第一蟻酸銅ガスを生成し、このようにして生成された第一蟻酸銅ガスをチャンバ内に導いてウエハWに第一蟻酸銅を吸着させ、その後加熱するといった、極めて簡便な手法で銅膜を成膜することができる。
上記構成の装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ヒーター14によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器35内で生成した第一蟻酸銅ガスをシャワーヘッド20によってウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、上記構成の装置によれば、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
この成膜装置は、第一蟻酸銅を供給する機構が第1の実施形態に係る図3と異なっており、その他の構成は基本的に図5の装置と同じであるので、同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、蟻酸ガスを供給する上記配管32をマスフローコントローラ34まで設け、マスフローコントローラ34の後には酸化第一銅をその内面に有する配管41をシャワーヘッド20のガス拡散空間21に臨む部分まで設けて、配管41内で第一蟻酸銅ガスを形成するようになっている。具体的には、配管41は、例えばステンレス鋼からなる本体42と、本体42の内側に被覆された酸化第一銅膜43とを有している。酸化第一銅膜43は、例えば特開2003−282897号公報にあるように酸化第二銅をなるべく少なくするような条件下で反応性スパッタリングを行うことで容易に緻密な膜として生成することができる。酸化第一銅膜43を設ける代わりに酸化第一銅からなる管材を設けてもよい。配管41の外側にはヒーター41aが設けられている。したがって、蟻酸ガスが配管41を通流している間、配管41内ではヒーター41aにより50〜150℃に保持された状態で、蟻酸ガスと酸化第一銅膜43とが反応し、上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスが生成される。
このように構成された第2の実施形態の成膜装置においては、基本的に第1の実施形態と同様にチャンバ11内にウエハWを搬入してサセプタ12上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持し、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32に通流させる。そして、本実施形態では蟻酸ガスを配管32から配管41に導く。配管41はヒーター41aにより50〜150℃程度に加熱されており、このため蟻酸ガスが配管41を通流する過程で配管41の内側に被覆された酸化第一銅膜43と蟻酸ガスとが上述した(3)式に示す反応式に従って反応して第一蟻酸銅ガスを生成する。この第一蟻酸銅ガスは配管41を経てシャワーヘッド20のガス拡散空間21に至り、シャワープレート22に形成された多数のガス吐出孔23からウエハWに向けて吐出される。この際にも第1の実施形態と同様、第一蟻酸銅ガスは、ヒーター20aにより50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給される。そして、第1の実施形態と全く同様に、この第一蟻酸銅ガスは、常温〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。さらに第1の実施形態と全く同様に、ヒーター14によりウエハWを100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
本実施形態の装置によれば、上述のような蟻酸ガスが配管41を通流する間に酸化第一銅膜43と蟻酸ガスとが反応して第一蟻酸銅ガスを生成し、このようにして生成された第一蟻酸銅ガスをチャンバ内に導いてウエハWに第一蟻酸銅を吸着させ、その後加熱するといった、極めて簡便な手法で銅膜を成膜することができ、かつ上述のような効果を奏することができる。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ヒーター14によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、配管41内で生成した第一蟻酸銅ガスをシャワーヘッド20によってウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図7は、第3の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
この成膜装置は、サセプタ上のウエハを加熱する機構および排気経路が第1の実施形態に係る図5と異なっており、その他の構成は基本的に図5の装置と同じであるので、同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、サセプタ12の代わりにヒーターを有しないサセプタ12′が設けられており、その下方にランプ加熱ユニット50が設けられている。ランプ加熱ユニット50は、紫外線ランプからなる複数のランプヒーター51が配列され、これらランプヒーター51の上に石英等の熱線透過材料よりなる透過窓52が設けられて構成されており、透過窓52の上に上記サセプタ12′が載置されている。
また、チャンバ11の側壁のサセプタ12′に対応する高さ位置に排気口53が開口しており、この排気口53からチャンバ11の側壁を水平に延び途中で下方に延びてチャンバ11の底面に開口する排気流路54が形成され、この排気流路54に排気管55が接続されている。排気管55には真空ポンプを有する排気装置56が接続されている。そしてこの排気装置56を作動させることにより排気経路54および排気管55を介してチャンバ11内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。
この第3の実施形態も基本的に第1の実施形態と同様にウエハWを搬入してサセプタ12′上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持し、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸を配管32を介して反応容器35に導き、反応容器35内を、ヒーター35aにより50〜150℃に保持した状態でその中の酸化第一銅粉末36と蟻酸ガスとを反応させ、第一蟻酸銅ガスを生成させる。この第一蟻酸銅ガスは、第1の実施形態と同様、配管37を経てシャワーヘッド20に至り吐出孔23からウエハWに向けて吐出される。配管37の外周に設けられたヒーター37aおよびシャワーヘッド20の内面に設けられたヒーター20aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給される。ここで、ウエハWは、シャワーヘッド20から吐出された第一蟻酸銅ガスはウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。そして、所望の厚さの第一蟻酸銅膜が形成されたウエハを第1の実施形態と同様、100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
本実施形態ではランプ加熱ユニット50によりウエハWの加熱を行うため、第一蟻酸銅膜を形成した後の昇温速度が速い。よって迅速に上記(2)式に示す反応式を進行させることができ、極めて簡便な手法であることに加えて高スループットで銅膜を形成することができる。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器35内で生成した第一蟻酸銅ガスをシャワーヘッド20によってウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
なお、第3の実施形態においては、第一蟻酸銅の製造手法は、図6に示す第2の実施形態と同様のものであってもよい。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。
図8は、第4の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
この成膜装置は、蟻酸と酸化第一銅とのを反応させる手法およびその機構が第1の実施形態に係る図5と異なっており、その他の構成は基本的に図5の装置と同じであるので、同じ部材については同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、第1の実施形態におけるシャワーヘッド20の代わりにシャワーヘッド20′を設けている。このシャワーヘッド20′は、ガス拡散空間21′と、その下方に設けられ、チャンバ11と一体のベースプレート22aに着脱自在の酸化第一銅含有プレート22bが取り付けられた構造を有するシャワープレート22′とを有している。酸化第一銅含有プレート22bはその一部または全部が酸化第一銅で形成されている。具体的には、酸化第一銅含有プレート22bは、ステンレス鋼等の他の材料のベースの表面に酸化第一銅がコーティングされたものであってもよいし、銅製のプレートを熱酸化してその一部または全部を酸化第一銅としたものであってもよい。酸化第一銅のコーティング膜は、上述したように、酸化第二銅をなるべく少なくするような条件下で反応性スパッタリングを行うことで容易に緻密な膜として生成することができる。シャワープレート22′には、多数のガス吐出孔23′が形成されているとともに、プレートヒーター57がベースプレート22aに埋設されている。
なお、図9に示すように、酸化第一銅含有プレート22bはベースプレート22aの内側に設けるようにしてもよい。
また、チャンバ11の外部に蟻酸貯留容器31が配置されており、この蟻酸貯留容器31から配管32が延びている点は図5の装置と同様であるが、配管32が直接シャワーヘッド20′に挿入されている点が図5の装置と異なっている。すなわち、シャワーヘッド20′のガス拡散空間21′には蟻酸ガスが反応することなく直接導入される。そして、シャワープレート22′がプレートヒーター57により50〜150℃に保持された状態で、ガス拡散空間21′に導入された蟻酸ガスがガス吐出孔23′を通過する際に蟻酸ガスと酸化第一銅含有プレート22bの酸化第一銅とが反応し、上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスとなってウエハWに向けて吐出される。
なお、蟻酸貯留容器31内の蟻酸は、第1の実施形態と同様、加熱またはバブリング等の適宜の手段によりガス状とされるが、液体状の蟻酸を気化器に供給し、そこでガス状にするように構成してもよい。
このように構成された第4の実施形態の成膜装置においては、基本的に第1の実施形態と同様にチャンバ11内にウエハWを搬入してサセプタ12上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持し、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32に通流させる。そして、配管32を介して蟻酸ガスをシャワーヘッド20′のガス拡散空間21′に直接導入する。このとき、シャワープレート22′がプレートヒーター57により50〜150℃と第一蟻酸銅の生成に適した温度とされ、ガス拡散空間21′に導入された蟻酸ガスがガス吐出孔23′を通過する際に蟻酸ガスと酸化第一銅含有プレート22bの酸化第一銅とが反応し、上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスとなってウエハWに向けて吐出される。そして、第1の実施形態と全く同様に、この第一蟻酸銅ガスは常温〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。さらに第1の実施形態と全く同様に、ヒーター14によりウエハWを100〜250℃まで加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
本実施形態の装置によれば、ステップカバレッジが良好であり良質のCu膜を安価に成膜することができるという基本的効果に加え、蟻酸ガスを直接シャワーヘッド20′に導入してガス吐出孔23′から吐出する際に、蟻酸と酸化第一銅含有プレート22bの酸化第一銅とが反応して第一蟻酸銅ガスを生成し、その後即座にウエハWに第一蟻酸銅を吸着させ、その後加熱するといった、極めて簡便な手法で銅膜を成膜することができ、しかも第一蟻酸銅ガスが生成してからウエハW表面へ輸送される経路長が非常に短いために、熱的に不安定な第一蟻酸銅ガスを分解させることなくウエハW表面へ均一に供給することを可能とする。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ヒーター14によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、蟻酸ガスと酸化第一銅含有プレート22bの酸化第一銅とを反応させて生成した第一蟻酸銅ガスをウエハWに向けて吐出してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
なお、サセプタの加熱手段としてヒーター14を設ける代わりに、第3の実施形態に係る図7に示すように加熱ランプユニット50を備えた構成とすることもできる。
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態について説明する。
図10は、第5の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
図10に示す成膜装置は、図5のチャンバ11と同様の材料で形成された扁平状のチャンバ61を有している。チャンバ61の底部にはウエハWを載置するサセプタ62が配置されている。サセプタ62はサセプタ12と同様の材料で構成され、温度制御用の冷媒流路19が設けられている。
チャンバ61の天壁部分には、図7に示す第3の実施形態と同様、複数のランプヒーター51と透過窓52とからなるランプ加熱ユニット50を有しており、透過窓52を下にして下方へ熱線が照射されるように配置されている。
チャンバ61の側壁にはガス導入口66が設けられており、このガス導入口66から第一蟻酸銅ガスが導入されるようになっている。また、第2の実施形態と同様、蟻酸貯留容器31から配管32をマスフローコントローラ34まで設け、マスフローコントローラ34からチャンバ61のガス導入口66までは、本体42と、本体42の内側に被覆された酸化第一銅膜43とを有する配管41を設けている。また、配管41の外側に設けられたヒーター41aにより配管41内を第一蟻酸銅ガスの生成に好適な50〜150℃に加熱するようになっている。したがって、配管41内では50〜150℃に保持された状態で、蟻酸ガスと酸化第一銅膜43とが反応し、上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスが生成され、ガス導入口66からチャンバ61内へ導入される。
チャンバ61の側壁のガス導入口66と反対側部分には、排気口63が形成されており、この排気口63には排気管64が接続されている。この排気管64には真空ポンプを有する排気装置65が接続されている。そしてこの排気装置65を作動させることにより排気管64を介してチャンバ61内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。
このように構成された成膜装置においては、まず、図示しないゲートバルブを開いてウエハWをチャンバ61内に搬入し、サセプタ62上に載置する。サセプタ62は予め冷媒流路19を流れる冷媒により−30〜50℃程度の温度に保持される。そして、排気装置65により排気口63および排気管64を介してチャンバ61内を排気することによりチャンバ61内を所定の圧力にする。次いで、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32に通流させる。そして、本実施形態では蟻酸ガスを配管32から配管41に導く。配管41はヒーター41aにより50〜150℃程度に加熱されており、このため蟻酸ガスが配管41を通流する過程で配管41の内側に被覆された酸化第一銅膜43と蟻酸ガスとが上述した(3)式に示す反応式に従って反応して第一蟻酸銅ガスを生成する。この第一蟻酸銅ガスは配管41からガス導入口66を経てチャンバ61に導入され、ウエハWの表面に沿って流れて排気口63に至る。この過程で第一蟻酸銅は−30〜50℃に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。その後、ランプ加熱ユニット50のランプヒーター51を照射することによりウエハWを100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
本実施形態の装置によれば、側壁からガスを導入して反対の側壁から排気するので、装置をコンパクト化できるとともに、ランプ光を直接第一蟻酸銅に当ててエネルギーを供給するので、ウエハやサセプタ裏面から加熱して、伝熱によりエネルギーを間接的に供給する方法と比べて著しく速く反応させることができる。また、エネルギーを上から直接与える方法では、ウエハWの裏に加熱機構を設ける必要がないため、サセプタ62のように冷却機構を設けることが可能となる。第一蟻酸銅ガスのウエハW表面への吸着量は温度が低ければ低いほど多いので、この方式では前述した第1から第4の実施形態と比べて有利となる。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ62上に載置してチャンバ61内を所定の圧力に調整した後、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、配管41内で生成した第一蟻酸銅ガスをガス導入口66からチャンバ61内のウエハW上に向けて導入してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
なお、第一蟻酸銅の形成方法は、第1の実施形態と同様、粉体の酸化第一銅を貯留した反応容器を用いてもよい。
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態について説明する。
図11は、第6の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
この成膜装置は、蟻酸貯留容器31から配管32を介して蟻酸を直接チャンバ61に供給しチャンバ61内で第一蟻酸銅を生成する他は、基本的に図10に示す第5の実施形態の装置と同じである。すなわち、配管32がチャンバのガス導入口66まで延び、チャンバ61内のガス導入口66の近傍に酸化第一銅含有部材67が配置されている。酸化第一銅含有部材67は、少なくともその表面が酸化第一銅で形成されている。具体的には、酸化第一銅含有部材67は、ステンレス鋼等の他の材料のベースの表面に酸化第一銅がコーティングされたものであってもよいし、銅製のプレートの少なくとも表面部分を熱酸化して酸化第一銅としたものであってもよい。酸化第一銅含有部材67の内部にヒーター68が埋設されており、これにより、酸化第一銅含有部材67を第一蟻酸銅の生成に適した50〜150℃に保持可能となっている。
このように構成された成膜装置においては、第5の実施形態と同様にウエハWをチャンバ61内に搬入してサセプタ62に載置し、所定の温度に保持するとともに、チャンバ61内を所定の圧力にする。次いで、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32を介してチャンバ61内に導入する。チャンバ61内に導入された蟻酸ガスは、ガス導入口66の近傍に設けられた酸化第一銅含有部材67に沿って流れるが、酸化第一銅含有部材67はヒーター68により50〜150℃程度に加熱されており、このため蟻酸ガスが酸化第一銅含有部材67の酸化第一銅と上述した(3)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅ガスを生成する。そして、この第一蟻酸銅ガスはウエハWの表面に沿って流れ、その過程で−30〜50℃に保持されたウエハWに吸着し、前駆体である固体状の第一蟻酸銅膜を形成する。その後、ランプ加熱ユニット50のランプヒーター51を照射することにより第5の実施形態と同様、ウエハWを100〜250℃に加熱、昇温し、その際の熱エネルギーにより上述した(2)式に示す反応式に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
本実施形態の装置によれば、第5の実施形態と同様の効果を奏する他、ウエハWの直前で第一蟻酸銅ガスを生成するので化学的に不安定な第一蟻酸銅ガスの劣化を少なくすることができる。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ62上に載置してチャンバ61内を所定の圧力に調整した後、ヒーター68によって酸化第一銅含有部材67を50〜150℃程度に加熱し、かつ、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、蟻酸ガスをガス導入口66からチャンバ61内に導入してもよい。これにより、蟻酸ガスと酸化第一銅含有部材67の酸化第一銅とが上述した(3)式に示す反応式に従って反応して生成された第一蟻酸銅を、ウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
[第7の実施形態]
次に、第7の実施形態について説明する。
図12は、第7の実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
図12に示す成膜装置は、第1の実施形態に係る図5の成膜装置において、サセプタ12にヒーターを設ける代わりにチャンバ11の上部にランプ加熱ユニット50を設け、シャワーヘッドを設ける代わりにチャンバ11の天壁にガス導入口71を設け、その内面にヒーター71aを設けている。その他の構成は基本的に図5と同じであり、図5と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
このように構成された第7の実施形態の成膜装置においては、基本的に第1の実施形態と同様にチャンバ11内にウエハWを搬入してサセプタ12上に載置し、チャンバ11内を所定の圧力に保持し、バルブ33を開いてマスフローコントローラ(MFC)34により所定流量に調整された蟻酸ガスを配管32を介して反応容器35に導く。反応容器35はヒーター35aにより50〜150℃程度に加熱されており、これにより反応容器35内の酸化第一銅粉末36と蟻酸ガスとが上述した(3)式に示す反応式に従って反応して第一蟻酸銅ガスを生成する。この第一蟻酸銅ガスは配管37およびガス導入口71を経てチャンバ11内に導入される。この際に、配管37のヒーター37aおよびガス導入口71のヒーター71aにより、第一蟻酸銅ガスは50〜150℃に保持されてガスの状態のままウエハWに供給されるが、−30〜50℃程度の温度に保持されたウエハWに接触して吸着する。したがって、所定時間第一蟻酸銅ガスを供給することにより、所定厚さの固体状の第一蟻酸銅膜が形成される。
その後、ランプ加熱ユニット50によりウエハWを加熱し、その際の熱エネルギーにより(2)式に示す反応式の反応に従って第一蟻酸銅を分解し、所定厚さの銅膜を形成する。
このような構成によれば、シャワーヘッドを設けない分ガス供給の均一性が若干低下することが懸念されるものの、上方からのランプ加熱で第一蟻酸銅を分解するので、ランプ加熱ユニットをサセプタ12の下方に設けた図7の装置よりも迅速にウエハWを加熱することができ、スループットを一層向上させることができる。第5の実施形態と同じように、サセプタ12の中には加熱機構が設けられていないため、冷却機構を設けることが可能となる。第一蟻酸銅ガスのウエハW表面への吸着量は温度が低ければ低いほど多いので、この方式では前述した第1から第4の実施形態と比べて有利となる。
本実施形態の装置においては、ウエハWをサセプタ12上に載置してチャンバ11内を所定の圧力に調整した後、ランプ加熱ユニット50によってウエハWを100〜250℃に加熱しながら、反応容器35内で生成された第一蟻酸銅ガスをガス導入口71からウエハWに向けて供給してもよい。これにより、第一蟻酸銅をウエハW上に堆積させる前に上述した(2)式に示す反応式に従って分解させ、ウエハW上に所定厚さの銅膜を形成することができる。このため、本実施形態の装置によっても、銅膜の成膜時間の短縮化を図ることが可能となる。
なお、この実施形態において、第一蟻酸銅を形成する形態は、図6の装置のように配管の内部に酸化第一銅膜を形成して蟻酸と反応させるようにしてもよいし、チャンバ11内に酸化第一銅含有部材を配置してチャンバ11内に導入された蟻酸と反応させるようにしてもよい。
[第8の実施形態]
第1〜第7の実施形態では、一つのチャンバ内で酸化第一銅の吸着工程と、加熱による銅膜の形成工程の両方を行う例を示したが、本実施形態ではスループットおよび処理の自由度等の観点から、これらの工程を異なるチャンバで実施するようにし、装置をクラスター化した例を示す。
図13はこのようなクラスター化したシステムの概略構造を示す平面図である。このシステムは、ウエハWに第一蟻酸銅を吸着させる吸着処理ユニット101と、ウエハWをアニールしてウエハWに吸着された第一蟻酸銅に熱エネルギーを与えて分解し、銅膜を形成するアニールユニット102と、アニール後のウエハWを冷却する冷却ユニット103を備えており、これらは7角形のウエハ搬送室104の3つの辺に対応して設けられている。また、ウエハ搬送室104の他の2つの辺にはそれぞれロードロック室105、106が設けられている。これらロードロック室105、106のウエハ搬送室104と反対側にはウエハ搬入出室108が設けられており、ウエハ搬入出室108のロードロック室105、106と反対側にはウエハWを収容可能な3つのキャリアCを取り付けるポート109、110、111が設けられている。
吸着処理ユニット101、アニールユニット102、冷却ユニット103、およびロードロック室105,106は、同図に示すように、ウエハ搬送室104の各辺にゲートバルブGを介して接続され、これらは対応するゲートバルブGを開放することによりウエハ搬送室104と連通され、対応するゲートバルブGを閉じることによりウエハ搬送室104から遮断される。また、ロードロック室105,106のウエハ搬入出室108に接続される部分にもゲートバルブGが設けられており、ロードロック室105,106は、対応するゲートバルブGを開放することによりウエハ搬入出室108に連通され、対応するゲートバルブGを閉じることによりウエハ搬入出室108から遮断される。
ウエハ搬送室104内には、吸着処理ユニット101、アニールユニット102、冷却ユニット103、およびロードロック室105,106に対して、ウエハWの搬入出を行うウエハ搬送装置112が設けられている。このウエハ搬送装置112は、ウエハ搬送室104の略中央に配設されており、回転および伸縮可能な回転・伸縮部113の先端にウエハWを保持する2つのブレード114a,114bを有しており、これら2つのブレード114a,114bは互いに反対方向を向くように回転・伸縮部113に取り付けられている。なお、このウエハ搬送室104内は所定の真空度に保持されるようになっている。
ウエハ搬入出室108のキャリアC取り付け用の3つのポート109,110、111にはそれぞれ図示しないシャッタが設けられており、これらポートにウエハWを収容したまたは空のキャリアCが直接取り付けられるようになっている。また、ウエハ搬入出室108の側面にはアライメントチャンバ115が設けられており、そこでウエハWのアライメントが行われる。
ウエハ搬入出室108内には、キャリアCに対するウエハWの搬入出およびロードロック室105,106に対するウエハWの搬入出を行うウエハ搬送装置116が設けられている。このウエハ搬送装置116は、多関節アーム構造を有しており、キャリアCの配列方向に沿ってレール118上を走行可能となっており、その先端のハンド117上にウエハWを載せてその搬送を行う。ウエハ搬送装置112,116の動作等、システム全体の制御は制御部119によって行われる。この制御部119は、上記プロセスコントローラ80、ユーザーインターフェース81、記憶部82の機能を有する。
上記吸着処理ユニット101は、基本的に第1〜第7の実施形態の装置から加熱手段を除いた構成を有するものを用いることができる。
また、アニールユニット102としては、ウエハWを加熱することができるものであればよいが、図14に示すものを好適に用いることができる。このアニールユニット102は、図10に示した装置のチャンバ61と同様に扁平形状のチャンバ121を有し、チャンバ121の底部には第一蟻酸銅膜200が形成されたウエハWを載置するサセプタ122が配置されている。
チャンバ121の天壁部分には、複数の紫外線ランプからなるランプヒーター131と透過窓132とからなるランプ加熱ユニット130を有しており、透過窓132を下にして下方へ熱線が照射されるように配置されている。
チャンバ121の側壁にはガス導入口141が設けられており、このガス導入口141にはガス導入配管142が接続されている。ガス導入配管142には、N2ガス、Arガス、Heガス等の不活性ガスを供給するガス供給機構143が接続されている。
チャンバ121の側壁のガス導入口141と反対側部分には、排気口144が形成されており、この排気口144には排気管145が接続されている。この排気管145には真空ポンプを有する排気装置146が接続されている。そしてこの排気装置146を作動させることにより排気管145を介してチャンバ121内が所定の真空度まで減圧されるようになっている。
このような装置では、ランプ加熱による急速加熱および不活性ガスによる急速冷却が可能であり、極めて迅速なアニール処理を行うことができ、スループットを高めることができる。また、このユニットは、アニール専用モジュールであるため、処理の自由度が高く、例えば、Cu成膜ウエハ温度よりも高温でアニール処理して膜中の炭素および酸素を低減することも容易である。
冷却ユニット103は、図示しないが、冷媒流路を備えた冷却ステージをチャンバ内に配した簡単な構成のものであり、アニール処理により高温になったウエハWを冷却するためのものである。
このように構成されるシステムにおいては、いずれかのキャリアCからウエハ搬送装置116によりウエハWを取り出してロードロック室105に搬入し、ウエハ搬送装置112によりロードロック室105から搬送室104に搬送する。そして、まず、ウエハWを吸着処理ユニット101に搬送して第一蟻酸銅の吸着処理を行う。吸着処理ユニット101において所定厚さの第一蟻酸銅膜が形成されたウエハWをウエハ搬送装置112により吸着処理ユニット101から取り出し、引き続きアニールユニット102に搬入する。アニールユニット102においては、酸化第一銅膜をランプ加熱することにより分解し、銅膜を形成する。その後、ウエハ搬送装置112により銅膜が形成されたウエハWをアニールユニット102から取り出し、引き続き冷却ユニット103に搬入する。冷却ユニット103ではウエハステージ上でウエハWを所定温度に冷却する。冷却ユニット103で冷却されたウエハWはウエハ搬送装置112によりロードロック室106に搬送され、ロードロック室106からウエハ搬送装置116により所定のキャリアCに搬入される。そして、このような一連の処理をキャリアCに収容されている枚数のウエハWについて連続的に行う。
このように各工程を異なる装置により行うようにして、これらをクラスター化することにより、各装置(ユニット)において処理を専用化することができ、一つの装置で全ての工程を行うよりもスループットを向上させることができる。
なお、本発明に係る銅膜の成膜処理を行うユニットと、スパッタリング等を行う他のユニットとを図13と同様にクラスター化してもよい。
次に、本発明に係る銅膜の成膜方法による効果を確認するための実験を行った。
図15は本発明に係る銅膜の成膜方法による効果を確認するための実験装置の概略図である。
実験装置は、図15に示すように、試料210を収容可能な容器201内に、試料210を載置して加熱するセラミックスヒーター202を設けて構成した。そして、容器201内に蟻酸ガスを供給するための配管203を容器201の側壁に接続し、容器201内にアルゴンガスを供給するための配管204を容器201の上壁に接続し、容器201内を排気するためのドライポンプ205を容器201の配管203が接続された側壁と対向する側壁に接続した。配管203,204にはそれぞれ、蟻酸ガスおよびアルゴンガスの流量を調整するマスフローコントローラ206,207を設けた。
試料210は、Siウエハ208上の一部に酸化第一銅(Cu2O)膜209を成膜して構成した。酸化第一銅膜209の成膜は、Siウエハ208上の一部をマスクしてスパッタ法によって行った。図16にSiウエハ208上に成膜された酸化第一銅膜209のSEM断面写真を示し、図17に酸化第一銅膜209のθ−2θ法によるX−Ray Diffraction pattern(XRD)を示し、図18に酸化第一銅膜209の深さ方向の組成をX−Ray Photoelectron Spectroscopy(XPS)によって分析したデータを示す。
図16に示すように、酸化第一銅膜209の膜厚は約1500nmであった。また、図17に示すように、XRDのピーク値から酸化第一銅膜209が確かに酸化第一銅からなることを読み取ることができ、図18に示すように、XPSによって分析したデータから銅と酸素との組成比がほぼ2:1、すなわち、酸化第一銅膜209が確かに酸化第一銅からなることを読み取ることができた。このような試料210を、酸化第一銅膜209が成膜された側が配管203に近接するようにセラミックスヒーター202に載置した状態で実験を行った。
実験では、まず、ドライポンプ205によって容器201内の圧力を300Paに保ち、かつ、アルゴンガスを200sccmの流量で容器201内に供給しつつ、セラミックスヒーター202の温度を200℃に設定して試料210を5分間加熱した。その後、アルゴンガスの供給を停止し、容器201内の圧力を300Pa、セラミックスヒーター202の温度を200℃に保った状態で、蟻酸ガスを200sccmの流量で容器201内に180分間供給した。これにより、蟻酸ガスと酸化第一銅膜209の酸化第一銅とを反応させて第一蟻酸銅を生成し、この第一蟻酸銅を熱分解させ、Siウエハ208上の酸化第一銅膜209が成膜されていない部分に銅膜を成膜した。図19(a)、(b)にそれぞれ、Siウエハ208上に成膜された銅膜のSEM俯瞰写真、SEM断面写真を示し、図20にSiウエハ208上に成膜された銅膜のXRDを示す。
図19に示すように、Siウエハ208上には、比較的大きな粒径を有する塊からなる、約2800nmの膜厚の薄膜が形成されていること、ならびにその成膜速度は約15nm/minであることが確認され、図20に示すように、XRDの回折ピークは、銅のもののみが読み取れ、酸化銅のものは読み取ることができないことから、この薄膜が銅膜であることが確認された。すなわち、Siウエハ208上に銅膜が成膜されていることを確認することができた。したがって、以上の実験結果から酸化第一銅と蟻酸とを原料として生成された第一蟻酸銅ガスがCVDによって銅膜を成膜するための原料ガスとして使用できることが分かった。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなくさらに種々の変形が可能である。例えば、第一蟻酸銅の生成手段および第一蟻酸銅膜の加熱手段等は一例に過ぎず、他のいかなる手段を用いてもよい。また、上記実施形態では、蟻酸と酸化銅等とを用いて第一蟻酸銅を生成し、これを基板に供給するとともにエネルギーを与えて分解しCu膜を形成する場合を例に説明したが、カルボン酸と酸素含有金属化合物とを用いてカルボン酸塩を生成し、これを分解して金属膜を生成するものであればよく、Cu膜に限定されない。異なる金属の場合、カルボン酸塩の生成温度、圧力、カルボン酸塩の分解温度はCuの場合と異なることがある。さらに、上記実施形態では基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、フラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等、他の基板であっても適用可能である。さらにまた、本発明の範囲を逸脱しない限り、上記実施の形態の構成要素を適宜組み合わせたもの、あるいは上記実施の形態の構成要素を一部取り除いたものも本発明の範囲内である。