JP5433839B2 - Cntセンサーによる過酸化物を電気的に測定する方法 - Google Patents

Cntセンサーによる過酸化物を電気的に測定する方法 Download PDF

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Description

本発明は、CNTセンサーを用いて過酸化物を電気的に測定する方法に関する。
過酸化水素−ペルオキシダーゼ系を用いた生化学検査は、臨床検査の基本的な手法の一つとなっている。たとえば、血糖や中性脂肪、低比重リポタンパク(LDL)コレステロール、高比重リポタンパク(HDL)コレステロール、脂肪酸、尿酸(痛風の原因物質)、クレアチニン(腎機能の指標)などの検査では、測定対象ごとに異なる第1工程において、測定対象に特異的な酵素を用いた反応により過酸化水素を生じさせ、共通する第2工程において、第1工程で生じた過酸化水素をペルオキシダーゼ系反応を用いた分光学的方法で測定する。また、免疫測定においても、過酸化水素−ペルオキシダーゼ系は、抗原抗体反応の生成物を評価する指標の一つとして用いられている。したがって、過酸化水素を定量することは、これらの検査にとって重要なプロセスである。
一方、過酸化水素の電気化学的測定法も報告されている。たとえば、過酸化水素の定量は、金や白金電極を作用電極とし、Ag/AgCl電極などを参照電極として、作用電極に一定電圧を印加するか、または電圧を走査するときに、作用電極に流れる酸化還元電流を測定することで行われる。
生体内における過酸化脂質は、酸化ストレスマーカーとして臨床的有用性が期待されている(非特許文献1,2参照)。したがって、過酸化脂質の定量手段が求められている。従来の過酸化脂質の測定方法としては、化学発光−HPLC法が知られている。しかし、化学発光−HPLC法は、大規模な装置を必要とする。また、他の過酸化脂質の測定方法として、チオバルビツール酸法も知られている。しかし、チオバルビツール酸法は、過酸化脂質以外のアルデヒド類を主に測定する非特異的方法である。また、チオバルビツール酸法は、煩雑な手技と分光学的測定装置を必要とする。
最近では、CNTセンサーと称される電気化学的な検査デバイスが提案されている。CNTセンサーは、更なる高感度化と、デバイスの小型化が図られている。様々な態様のCNTセンサーが提案されているが、一般的な態様の一つに、金属電極に接触するように、様々な形態のカーボンナノチューブ(CNT)またはグラファイトを重層した構造を有する作用電極を有するものがある(特許文献1〜3参照)。
国際公開第2006/103872号パンフレット 国際公開第2007/114140号パンフレット 特開2008−258594号公報
Hui SP, Murai T, Yoshimura T, Chiba H, Nagasaka H and Kurosawa T, "Improved HPLC Assay for Lipid Peroxides in Human Plasma Using the Internal Standard of Hydroperoxide", Lipids, Vol.40, No.5, pp.515-522. Hui SP, Chiba H, Sakurai T, Asakawa C, Nagasaka H, Murai T, Ide H and Kurosawa T, "An improved HPLC assay for phosphatidylcholinehydroperoxides (PCOOH) in human plasma with synthetic PCOOH as internal standard", Journal of Chromatography B, Vol.857, pp.158-163.
本発明は、過酸化物の濃度を簡便に測定すること、およびその手段を提供することを目的とする。さらには、本発明は、その測定手段を臨床検査に応用することを目的とする。
第一に、本発明は、従来の過酸化水素の測定手段である、ペルオキシダーゼ系を用いた分光学的測定手段に代わり、過酸化物の濃度を電気信号として検出するCNTセンサーを用いる電気化学的測定手段を提供する。従来の分光学的測定手段は、光源や検出器を必要とする。一方、CNTセンサーを用いる電気化学的測定手段は、測定装置の簡素化および小型化を実現して、POCTなどの臨床検査に多大な貢献をする。
第二に、本発明は、過酸化物の中でも脂質過酸化物を測定する手段を提供する。従来、脂質過酸化物は、比較的大規模な装置を必要とする化学発光−HPLC法で測定されていたため、POCTの検査対象にはなりにくかった。本発明によれば、広範な種類の脂質過酸化物の濃度を測定することができる。したがって、本発明は、臨床検査に多大な貢献をする。
本発明の第一は、以下に示す過酸化物を測定する方法に関する。
[1]絶縁基板に配置された作用電極と、前記作用電極に接触している、その表面に水酸基またはカルボキシル基を有する単層カーボンナノチューブと、カウンター電極と、参照電極とを具備するCNTセンサーを用意するステップと、前記単層カーボンナノチューブに接するように、過酸化物を含む溶液であるサンプルを前記CNTセンサーに提供するステップと、前記作用電極と前記カウンター電極との間に電位差を設けるステップと、を含む、前記サンプル中の過酸化物を測定する方法。
[2]前記単層カーボンナノチューブは、酸および過酸化水素を含む溶液に分散されて処理されたカーボンナノチューブである、[1]に記載の方法。
[3]前記過酸化物は、生体成分に特異的な酵素を用いて前記生体成分を反応させることで生じた過酸化水素である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記生体成分は、グルコース、総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリド、リン脂質、LDLコレステロール、HDLコレステロール、遊離脂肪酸、尿酸、クレアチニン、クレアチン、ビリルビン、乳酸、ピルビン酸、クレアチニン、コリン、酵素からなる群から選ばれる、[3]に記載の方法。
[5]前記過酸化物は過酸化脂質である、[1]または[2]に記載の方法。
[6]前記過酸化脂質は、コレステロールエステル過酸化物、コレステロール過酸化物、リン脂質過酸化物、トリグリセリド過酸化物、糖脂質過酸化物である、[5]に記載の方法。
本発明の第二は、以下に示すセンサーに関する。
[7]絶縁基板に配置された作用電極と、前記作用電極に接触している、その表面に水酸基またはカルボキシル基を有する単層カーボンナノチューブと、カウンター電極と、参照電極とを具備し、前記単層カーボンナノチューブに接するように、過酸化物を測定するサンプル溶液が提供される、過酸化物測定用のセンサー。
[8]前記単層カーボンナノチューブが、酸および過酸化水素を含む溶液に分散されて処理されたカーボンナノチューブである、[7]に記載の過酸化物測定用のセンサー。
本発明によれば、過酸化物を高感度、かつ迅速に測定することができる。たとえば、本発明によれば、幅広い濃度の過酸化物を高感度、かつ迅速に測定することができる。したがって、これまでペルオキシダーゼ系反応を用いた分光学的方法で測定されてきた臨床検査対象物を本発明の方法で測定することができる。
さらに、本発明によれば、生体中の過酸化物(例えばタンパク質、核酸、脂質などの過酸化物、特に過酸化脂質)を測定することができる。過酸化脂質は、生活習慣病の指標となることが知られている。したがって、過酸化脂質の測定方法は、生活習慣病の診断、および生活習慣病の治療方法の開発に貢献する。
図1Aは、本発明の測定方法に用いられるCNTセンサーの例を示す平面図である。図1Bは、本発明の測定方法に用いられるCNTセンサーの例を示す断面図である。 実施例で用いたCNTセンサーの構造を示す斜視図である。 CNTセンサーを用いた電気化学的測定による過酸化水素の測定結果(黒四角、実線)と、分光学的測定による過酸化水素の測定結果(白丸、破線)を示すグラフである。 過酸化水素の電気化学的測定に対する、アスコルビン酸の存在の影響を示すグラフである。 過酸化水素の電気化学的測定に対する、ビリルビンの存在の影響を示すグラフである。 過酸化水素の電気化学的測定に対する、尿酸の存在の影響を示すグラフである。 過酸化水素の電気化学的測定に対する、ヒト血清アルブミンの存在の影響を示すグラフである。 過酸化水素の電気化学的測定に対する、フィルタリングをした血清(黒四角、実線)またはフィルタリングをしていない血清(白丸、破線)の存在の影響を示すグラフである。 乳酸の電気化学的測定による測定結果を示すグラフである。 コレステリエステルおよびコレステリルエステルの過酸化物の電気化学的測定による測定結果を示すグラフである。 共役ジエン法(黒丸)、TBARS法(黒三角)および本発明の方法(黒四角)で酸化LDLを測定した結果を示すグラフである。 本発明の方法で酸化LDL(実線)および未酸化LDL(破線)を測定した結果を示すグラフである。
1.CNTセンサー
本発明のCNTセンサーは、絶縁性基板と、前記絶縁基板上に配置された作用電極と、前記作用電極に接触したカーボンナノチューブと、カウンター電極と、参照電極とを具備する。図1Aおよび図1BにはCNTセンサーの例が示される。図1Aに示されるように、絶縁性基板110に、作用電極120と、作用電極120に接するカーボンナノチューブ130とが固定されている。絶縁性基板110に固定されたカーボンナノチューブ130には、試料であるサンプル溶液140が提供される。また、カウンター電極150および参照電極160は、サンプル溶液140に接触するように配置される(図1B参照)。カウンター電極150および参照電極160は、絶縁性基板110に固定される必要はなく、絶縁性基板110から取り外し可能に配置されていることが好ましい。
カウンター電極は、カーボンナノチューブに接触せずに配置されることが好ましい。カウンター電極がカーボンナノチューブに接触していると、作用電極とカウンター電極との間の電流が大きくなり、過酸化物の用量依存的な酸化還元電流の差が確認できないことがある。固定するカーボンナノチューブの量を調整すれば、カウンター電極をカーボンナノチューブに接触させて配置することもできるが、通常はカウンター電極をカーボンナノチューブに接触させずに配置する。
絶縁性基板の材料は、無機物であっても有機物であってもよい。たとえば、絶縁性基板はガラス基板である。作用電極およびカウンター電極の材料は、通常は金属であり、金、白金、チタンなどが好ましい。作用電極は、絶縁性基板に成膜されて固定されていることが好ましい。絶縁性基板に成膜された電極は、二層電極であってもよい。たとえば、密着性の高いクロムを下地層として、導電性の高い金や白金を積層すればよい。カウンター電極は、例えば針状の金属である。参照電極は、特に限定されないが、例えば、Ag/AgCl電極である。
絶縁性基板に固定されたカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであることが好ましい。また、カーボンナノチューブは、酸および過酸化水素を含む溶液に分散されて処理されていると好ましい。当該処理をされたカーボンナノチューブの表面には、水酸基および/またはカルボキシル基が導入されていると考えられる。したがって、当該処理は、カーボンナノチューブの絶縁性基板への固定化にも効果がある。
一般的に、カーボンナノチューブの分散液を得るには界面活性剤を共存させる。しかしながら、センサーの性能への影響を抑制するため、界面活性剤は用いないことが好ましい。
[CNTセンサーの作製例]
まず、ガラス基板上に作用電極を形成する。たとえば、電極を形成する領域以外のガラス基板の表面を、レジスト膜でマスキングする。そして、電極を形成する領域に、金、白金、クロムなどの金属、ITOなどの導電性酸化物、または光透過性半導体を蒸着法により成膜すればよい。前記の通り、電極は二層電極であってもよい。
次に、作用電極と接触するようにカーボンナノチューブをガラス基板に固定する。ガラス基板のカーボンナノチューブが固定される領域は、親水性処理されていることが好ましい。たとえば、ガラス基板のカーボンナノチューブが固定される領域にアルカリ水溶液を接触させればよい。親水性処理により、カーボンナノチューブをガラス基板に固定しやすくなる。
カーボンナノチューブが固定される領域に、カーボンナノチューブの水分散液を滴下することによってカーボンナノチューブを固定する。カーボンナノチューブの水分散液中では、カーボンナノチューブが均一に分散していることが好ましい。カーボンナノチューブの水分散液は、酸および過酸化水素を含む水溶液にカーボンナノチューブを添加して得ることができる。酸は、硫酸と硝酸との混合酸であることが好ましい。硫酸と硝酸との比率は、特に限定されないが、体積比で硫酸:硝酸=3:1程度であればよい。酸および過酸化水素の量は、特に限定されないが、CNT0.5mgに対して、酸4mL、過酸化水素水溶液(濃度約30%)500μL程度でよい。
カーボンナノチューブを、酸および過酸化水素を含む水溶液に添加した後、超音波処理することが好ましい。超音波処理の時間は、1〜2時間程度でよい。超音波処理を過剰に長時間行った場合、カーボンナノチューブが断片化してしまうおそれがある。超音波処理後、カーボンナノチューブ含有水溶液を水で希釈し、透析により中性化することで、カーボンナノチューブ水分散液を得る。
得られたカーボンナノチューブ水分散液を、ガラス基板の所定の領域に少量ずつ提供することで、カーボンナノチューブをガラス基板に固定する。
前記の通り、参照電極およびカウンター電極は、絶縁性基板に固定されていなくてもよく、好ましくは絶縁性基板から取り外し可能に配置されている。
2.過酸化物の測定
本発明のCNTセンサーを用いて、過酸化物(特に、溶液中の過酸化物)を測定することができる。過酸化物の測定とは、過酸化物の定量および定性のいずれをも意味する。過酸化物を測定するには、まず、過酸化物を含む溶液を、絶縁性基板に固定されたカーボンナノチューブ上に提供する。提供された溶液と、カウンター電極および参照電極とを接触させる。
参照電極により作用電極を設定する。次に、作用電極とカウンター電極との間に電位差を設ける。そして、作用電極とカウンター電極との間に流れる電流値Idを測定する。通常は、サンプルに含まれる過酸化物の濃度が高まるほど、電流値Idが高まる。
過酸化物の濃度と電流値Idとの関係を示す検量線を予め求めておけば、サンプル中の過酸化物濃度を迅速に求めることができる。
本発明の測定方法は、種々の過酸化物、例えばタンパク質や核酸、脂質などの生体中の過酸化物を測定することができる。前述の通り、従来の生体成分の測定手法としては、ペルオキシダーゼ系反応を用いた分光学的方法がよく知られている。従来の分光学的方法では、酵素反応により生じた過酸化水素を測定することで、生体成分を間接的に測定していた。これに対し、本発明の測定方法は、従来の測定方法のように過酸化水素を発生させなくても、溶液サンプル中の有機化合物の過酸化物(例えば、過酸化脂質など)を直接測定することができる。
過酸化脂質は、臨床検査における酸化バイオマーカーとして期待されている。たとえば、過酸化脂質は、生活習慣病などの各種疾患(例えば、動脈硬化症や糖尿病、アルツハイマー病、血液透析合併症、老化など)の指標となりうる。過酸化脂質は、遊離脂肪酸過酸化物(FA−OOH)、トリグリセリド過酸化物(TG−OOH)、コレステロールリノレートヒドロペルオキシドなどのコレステロールエステル過酸化物(CE−OOH)、グリセロリン脂質とスフィンゴ脂質のヒドロペルオキシドなどのリン脂質過酸化物(PL−OOH)、コレステロール過酸化物、糖脂質過酸化物などに大別されうるが、本発明の測定方法は、いずれの過酸化脂質も直接測定することができる。
過酸化脂質の一部は既に化学合成されている。本発明者も、コレステロールエステル過酸化物、リン脂質の一種のホスファチジルコリン過酸化物、トリグリセリド過酸化物などの化学合成を報告している(Hui SP, et al., Analytical Sciences, Vol.16, No.10, pp.1023-1028.; Hui SP, et al., Journal of Chromatography B, Vol.857, pp.158-163.; Hui SP, et al., Lipids, Vol.38, No.12, pp.1287-1292.)。これらの化学合成された過酸化物を用いて、過酸化物の濃度とCNTセンサーの電流値Idとの関係を検量線として取得しておけば、サンプル測定における電流値Idから、過酸化物濃度を求めることができる。
前記の通り、過酸化脂質の測定は、生活習慣病などの各種疾患の診断、治療、治療薬の開発などに貢献する。
もちろん、本発明の測定方法は、溶液サンプル中の過酸化水素の濃度も測定することができる。前述の通り、従来の生体成分の測定手法としては、ペルオキシダーゼ系反応を用いた分光学的方法がよく知られている。この方法では、生体成分に特異的な酵素を用いて生体成分を反応させて過酸化水素を発生させ、ペルオキシダーゼを触媒とする過酸化水素による酸化反応で色素を発色させ、この色素による吸収を分光学的方法で測定する。代表的な例としては、以下のコレステロールエステルの測定がある。
Figure 0005433839
本発明の測定方法を用いれば、第2段で発生する過酸化水素(生体成分の特異的酵素反応により発生した過酸化水素)を測定することができる。本発明の測定方法は、低濃度の過酸化水素であっても高感度に測定することができ、かつ溶液サンプル中に種々の生体成分が混在していても、適切な測定を実現することができる。たとえば、後述の実施例に示されるように、アスコルビン酸やビリルビン、尿酸、ヒト血清アルブミンなどが混在していても、過酸化水素の測定にはあまり影響がない。また、フィルタリング処理された血清であれば、やはり過酸化水素の測定への影響が十分に低減される。このように、本発明の測定方法により、上記のペルオキシダーゼ系反応を用いた分光学的方法に代わる、新しい生体成分の測定手法が提供される。
本発明の測定方法によれば、過酸化水素の測定を通して種々の生体成分の測定が可能である。生体成分の例には、グルコース、総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリド,リン脂質、LDLコレステロール、HDLコレステロール、遊離脂肪酸、尿酸、クレアチニン、ビリルビン、乳酸、ピルビン酸、コリンが含まれる。また、生体成分は酵素であってもよい。酵素の例には、コリンエステラーゼ、アミラーゼ、リパーゼなど、酵素活性測定系に過酸化水素生成反応が含まれる酵素が含まれる。
本発明の測定方法によれば、生体成分以外にも、過酸化水素生成反応を含む免疫学的測定系により測定される微量成分も測定されうる。そのような微量成分の例には、ホルモン、腫瘍マーカー、サイトカインのほか、薬物などの外因性物質などが含まれる。
1.CNTセンサーの作製
(1)基板の準備
リソグラフィ法を用いて、ガラス基板(20mm×20mm)の電極形成予定部位以外の領域をレジスト膜でマスキングした。電極形成予定部位に、蒸着法によってチタンと金を成膜して、二層構造の電極を形成した。その後、レジスト膜を除去した。
一方、硫酸3mLに、30%過酸化水素水溶液1mLを少量ずつ加えて硫酸/過酸化水素混合液を調製した。電極を形成したガラス基板を20mLビーカーに入れて、ビーカーごと氷冷しながら、硫酸/過酸化水素混合液を滴下した。軽く撹拌しながら室温で10分間インキュベートした。10分後、ガラス基板を脱イオン水で洗浄し、続けて純エタノールで洗浄した。
洗浄したガラス基板を表面(電極形成面)を上にして50mLファルコンチューブに入れた。このファルコンチューブを80℃に温めておいたヒーターの上に置いた。このとき、アルミホイルでファルコンチューブに傾斜をつけた。1.5mLマイクロチューブの蓋をはさみで切り取り、蓋の凹部にジクロロシランを注いだ。ジクロロシランを保持する蓋を50mLファルコンチューブ内に移し、ファルコンチューブの蓋を軽く閉めて、1分間静置した。50mLファルコンチューブからガラス基板を取り出し、ガラス基板をヒーター上に直接置いて80℃で30分間静置した。その後、ガラス基板を脱イオン水で洗浄した。
ガラス基板表面のカーボンナノチューブをマウントする部分に、2N水酸化ナトリウムを4μL提供し、10分間反応させて、親水性処理を行った。その後、ガラス基板を脱イオン水で洗浄した。
(2)単層カーボンナノチューブの酸処理
単層カーボンナノチューブ(SWCNT;Carbon Nanotechnologies Inc.)0.5mgを、硫酸および硝酸(共に関東化学)の混合酸で洗浄した。洗浄したSWCNTを、硫酸1.8mL、硝酸0.6mLおよび過酸化水素水(関東化学)0.2mLの混合液に懸濁させ、1時間超音波処理した。得られた黒色のSWCNT分散液を水で稀釈し、pHが中性になるまで透析し、1mg/mLのSWCNT水分散液を得た。
(3)単層カーボンナノチューブのマウント
バス型超音波器で10分間超音波処理して、SWCNT水分散液中のSWCNTを分散させた。あらかじめ80℃に温めたヒーター上にガラス基板を置き、電極間隙部にSWCNT分散液(1mg/mL)を4μLずつ5回に分けて、合計20μL重層した。その後、安定化のため150℃で2時間静置した。
2.過酸化水素の測定
(1)電気化学的測定
30%過酸化水素水溶液を1×PBS(pH7.4)で希釈して、3μM、30μM、300μM、3mM、30mMの過酸化水素水溶液(サンプル)を調製した。CNTセンサーをプローバにセットして、バキュームポンプでガラス基板を固定した。作用電極およびカウンター電極のそれぞれに、電極プローブを接続した。さらに、ガラス基板との隙間がおよそ2mmとなるように、カウンター電極および参照電極をセットした(図2参照)。
ガラス基板のSWCNTマウント部と参照電極との間に1×PBSを20μL提供した(図2参照)。作用電極とカウンター電極との間に−50mVの電圧を印加し、2分間連続して電流値Idを測定した。20〜30秒間の測定電流値を平均化して、1×PBSの測定電流値(基準値)とした。
1×PBSを回収した後、サンプル(各濃度の過酸化水素水溶液)をSWCNTマウント部と参照電極との間に提供し、2分間連続して電流値Idを測定した。サンプルは、濃度が低い順に提供した。20〜30秒間の測定電流値を平均化して、各濃度の過酸化水素水溶液の測定電流値とした。
横軸を過酸化水素濃度(対数目盛)とし、縦軸を各濃度の過酸化水素水溶液の測定電流値と1×PBSの測定電流値(基準値)との差(対数目盛)として、検量線を作成した(図3参照;黒四角、実線)。
(2)分光学的測定(対照実験)
サンプルの調製は以下のように行った。終濃度の10倍濃度の過酸化水素水溶液20μL、10×PBS(pH7.4)20μL、15mM 4−アミノアンチピリン20μL、0.4%ジメチルアニリン20μL、400mMジメチルグルタレート20μL、脱イオン水99μLを混合した。過酸化水素の濃度は、3μM、30μM、300μM、3mM、30mMとした。上記混合液に5U/μLのペルオキシダーゼ(POD)を1μL加え、ウォーターバス中において37℃で10分間インキュベートした。10分後、反応液の吸光度(565nm)を測定した。
横軸を過酸化水素濃度(対数目盛)、縦軸を反応液の吸光度(対数目盛)として、検量線を作成した(図3参照;白丸、破線)。
(3)測定結果
図3に示されるように、電気化学的測定(黒四角、実線)では3μM〜30mMの濃度範囲で直線の検量線が得られたが、分光学的測定(白丸、破線)では3μM〜3mMの濃度範囲で直線の検量線が得られた。電気化学的測定の測定可能濃度領域は、分光学的測定に比べて、高濃度側で1桁広かった。また、電気化学的測定では、1サンプルあたりの測定が30秒間と短かった。一方、分光学的測定では10分間のインキュベーションが必要であった。電気化学的測定は、測定時間の短縮という観点においても分光学的測定よりも有用性が高いことがわかる。
3.過酸化水素の測定に対する阻害物質の影響の検討
(1)アスコルビン酸、ビリルビン、尿酸およびヒト血清アルブミンの影響の検討
サンプルとして、3mM過酸化水素水溶液と、3mMの過酸化水素水溶液に測定阻害物質(アスコルビン酸、ビリルビン、尿酸またはヒト血清アルブミン)を加えたものとを調製した。アスコルビン酸およびビリルビンの濃度は、0.5μM、5μM、50μM、500μMとした。尿酸の濃度は、30μM、300μM、3mMとした。ヒト血清アルブミン濃度は、0.05mM、0.5mM、2mM、5mMとした。各サンプルの溶媒は、1×PBSである。
前述のCNTセンサーを用いた電気化学的測定と同様の手順で、各サンプルの過酸化水素を測定した。3mM過酸化水素水溶液(測定阻害物質なし)の測定電流値を100%として、各サンプルの測定電流値の相対値を縦軸にプロットした(図4〜図7参照)。
(2)ヒト血清の影響の検討
ヒト血清は、空腹状態の健常者(24歳、男性)の血液を10mLプレーン採血管に採血し、1時間室温で静置した後、3500rpmで10分間遠心操作を行って血清を分離した。血清500μLを、分子量10万カットフィルター(amicon)でフィルタリング処理して、フィルターを通過した液体を得た。遠心操作は8000rpmで10分間行った。
サンプルとして、3mM過酸化水素水溶液と、3mMの過酸化水素水溶液にヒト血清(フィルタリング処理をしていないもの、またはフィルタリング処理をしたもの)を加えたものとを用意した。ヒト血清の終濃度は、1000倍希釈、100倍希釈、10倍希釈とした。各サンプルの溶媒は、1×PBSである。
前述のCNTセンサーを用いた電気化学的測定と同様の手順で、各サンプルの過酸化水素を測定した。3mM過酸化水素水溶液(血清なし)の測定電流値を100%として、各サンプルの測定電流値の相対値を縦軸にプロットした(図8参照)。
(3)測定結果
図4は、アスコルビン酸存在下での過酸化水素の測定結果を示すグラフである。アスコルビン酸の生体内の基準範囲は3〜10μMである。この結果から、健常人血清中のアスコルビン酸が測定に与える影響はおおよそ10%未満であることがわかる。
図5は、ビリルビン存在下での過酸化水素の測定結果を示すグラフである。ビリルビンの生体内の基準範囲は4〜24μMである。この結果から、健常人血清中のビリルビンが測定に与える影響はおおよそ5%未満であることがわかる。
図6は、尿酸存在下での過酸化水素の測定結果を示すグラフである。尿酸の生体内の基準範囲は150〜420μMである。この結果から、健常人血清中の尿酸が測定に与える影響はおおよそ5%未満であることがわかる。
図7は、ヒト血清アルブミン存在下での過酸化水素の測定結果を示すグラフである。ヒト血清アルブミンの生体内の基準範囲は0.59〜0.74μMである。この結果から、健常人血清中のヒト血清アルブミンが測定に与える影響はおおよそ10%未満であることがわかる。
図8は、ヒト血清存在下での過酸化水素の測定結果を示すグラフである。フィルタリング処理をしていない血清の存在は、大きな測定阻害を引き起こした(白丸、破線)。一方、血清をフィルタリング処理することで、測定阻害を軽減することができた(黒四角、実線)。分子量10万カットフィルターを用いてフィルタリング処理していることから、分子量が10万より大きな高分子(例えば、リポタンパク、グロブリンタンパク、一部除去されなかったアルブミンタンパク)が、測定を阻害したと考えられる。
4.乳酸の測定
乳酸水溶液を1×PBS(pH7.4)で希釈して、1μM、10μM、100μM、1mM、10mMの乳酸水溶液(サンプル)を調製した。前述のCNTセンサーを用いた電気化学的測定と同様の手順で、各サンプルの乳酸を測定した。
具体的には、ガラス基板のSWCNTマウント部と参照電極との間に、予めウォーターバス中において37℃で2分間インキュベートしたブランク試料20μL(1×PBS 19μL、乳酸オキシダーゼ(LOD、5mU/μL)1μL)を提供した。作用電極とカウンター電極との間に電圧を印加し、2分間連続して電流値Idを測定した。20〜30秒間の測定電流値を平均化して、ブランク試料の測定電流値(基準値)とした。
ブランク試料を回収した後、予めウォーターバス中において37℃で2分間インキュベートしたサンプル20μL(各濃度の乳酸水溶液19μL、LOD(5mU/μL)1μL)をSWCNTマウント部と参照電極との間に提供し、2分間連続して電流値Idを測定した。サンプルは、濃度が低い順に提供した。20〜30秒間の測定電流値を平均化して、各濃度の乳酸水溶液の測定電流値とした。
横軸を乳酸濃度(対数目盛)とし、縦軸を各濃度の乳酸水溶液(LOD含む)の測定電流値と1×PBS(LOD含む)の測定電流値(基準値)との差(対数目盛)として、検量線を作成した(図9参照)。
図9に示されるように、0.001mM〜1.0mMの範囲で、良好な検量線が得られた。ヒト血清中の乳酸の濃度は、数mMである。したがって、血清サンプルを10倍希釈または100倍希釈して測定することを考慮すると、CNTセンサーを用いた電気化学的測定の測定レンジは、良好であるといえる。
5.コレステリルエステル(コレステリルリノレート)の過酸化物の測定
コレステリルリノレート3.2mgを100%メタノール10mLに溶解し、50μMコレステリルリノレート溶液を調製した。コレステリルリノレート溶液を100%メタノールで希釈して、50nM、500nM、5μMのコレステリルリノレート溶液をそれぞれ200μLずつ調製した。各コレステリルリノレート溶液20μLに1×PBSを180μL加えて10倍希釈し、メタノールの終濃度が10%となるように調製した(コレステリルエステルの終濃度は5nM〜5μMとなる)。同時に、1×PBS 180μLに、100%メタノール20μL加えたものをネガティブコントロールとして調製した。
次に、コレステリルリノレートの過酸化物を調製した。まず、コレステロールとリノール酸とからコレステリルエステルを調製した。次いで、ヘマトポルフィリンを光増感剤として、光照射下、酸素を通して一重項酸素による過酸化反応を行った。NMR法、HPLC法、質量分析法などの各種分析方法を利用して、生成した過酸化物の構造を決定した。過酸化物の調製手順の詳細は、先行技術文献(Hui SP, et al., Analytical Sciences, Vol.16, No.10, pp.1023-1028.)に記載されている。
コレステリルリノレート過酸化物の溶液を100%メタノールで希釈して、50nM、500nM、5μM、50μMのコレステリルリノレート過酸化物溶液を調製した。各レステリルリノレート過酸化物溶液20μLに、1×PBSを180μL加えて10倍希釈し、メタノールの終濃度が10%となるように調製した(コレステリルエステル過酸化物の終濃度は5nM〜5μMとなる)。同時に、1×PBS 180μLに、100%メタノール20μL加えたものをネガティブコントロールとして調製した。
前述のCNTセンサーを用いた電気化学的測定と同様の手順で、各サンプルのコレステリルリノレートまたはコレステリルリノレート過酸化物を測定した。
具体的には、ガラス基板のSWCNTマウント部と参照電極との間に、ネガティブコントロールのサンプル20μLを提供した。作用電極とカウンター電極との間に−300mVの電圧を印加し、2分間連続して電流値Idを測定した。60〜120秒間の測定電流値を平均化して、ネガティブコントロールのサンプルの測定電流値(基準値)とした。
ネガティブコントロールのサンプルを回収した後、サンプル(コレステリルリノレート溶液またはコレステリルリノレート過酸化物溶液)20μLをSWCNTマウント部と参照電極との間に提供し、2分間連続して電流値Idを測定した。サンプルは、濃度が低い順に提供した。60〜120秒間の測定電流値を平均化して、各濃度のコレステリルリノレート溶液またはコレステリルリノレート過酸化物溶液の測定電流値とした。
横軸をコレステリルエステルまたはコレステリルエステル過酸化物の濃度(対数目盛)とし、縦軸を各濃度のサンプルの測定電流値とネガティブコントロールのサンプルの測定電流値(基準値)との差(対数目盛)として、グラフを作成した(図10参照)。
図10に示されるように、コレステリルリノレート過酸化物を含む溶液サンプルでは、濃度依存的なシグナルの増大が観察された(黒四角、実線)。一方で、(非過酸化)コレステリルリノレートを含む溶液サンプルでは、濃度依存的なシグナルの変化がみられなかった(白丸、破線)。このことから、過酸化物の構造である「−OOH」、すなわちヒドロペルオキシドをシグナルとしてとらえていることが示唆される。
以上の結果から、コレステリルエステル過酸化物に限らず、種々の過酸化脂質を同様に測定できると考えられる。
6.酸化LDLの測定(電流応答)
健常人より採取した血清から低比重リポタンパク(LDL)を定法(超遠心法)により分離した。得られたLDLと硫酸銅とをそれぞれ終濃度が83μg/mL、0.553μMとなるように1×PBS 2mL中で希釈混合し、室温でインキュベートして、LDLを酸化させた。LDLと硫酸銅とを混合した時を0分として、経時的に生成される酸化LDL(共役ジエン体)を以下の3種類の方法で測定した。
1)共役ジエン法
混合してから1分後、3分後および5〜180分(5分間隔)後に、混合液の吸光度(234nm)を測定した。
2)TBARS法
混合してから10分後、30分後、60分後、120分後および180分後に、混合液を25μLずつ採取した。各混合液(25μL)に5.3mg/mLチオバルビツール酸(TBA)酢酸Na溶液1mLを加え、100℃で1時間反応させた。反応後、反応液の吸光度(535nm)を測定した。
3)本発明の方法
混合してから1分後、3分後および5〜180分(5分間隔)後に、混合液を20μLずつ採取した。各混合液(25μL)を前述のCNTセンサーのSWCNTマウント部と参照電極との間に提供した。参照電極に対して作用電極の電位が−300mVとなるように電圧を印加して、2分間連続して電流値Idを測定した。
共役ジエン法(黒丸)、TBARS法(黒三角)および本発明の方法(黒四角)の測定結果を図11に示す。図11の横軸は、混合してからの経過時間を示し、縦軸は、右から共役ジエン法で測定した吸光度(234nm)、本発明の方法で測定した電流変化量、およびTBARS法で測定したチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)のマロンジアルデヒド(MDA)換算量を示す。
図11に示されるように、共役ジエン法、TBARS法および本発明の方法のいずれも時間の経過とともにシグナルの増大が観察された。特に、CNTセンサーを用いた本発明の方法では、シグナルの変化が反応初期から明確に認められ、脂質の過酸化を初期の段階で検出することができた。対照実験として、硫酸銅を添加せずに1×PBSで希釈したLDL溶液、および硫酸銅のみを含む1×PBSのそれぞれを測定対象とした場合には、電流値の増加は観察されなかった。
以上の結果から、本発明の方法は、共役ジエン法およびTBARS法よりも高感度かつ短時間で脂質の酸化状態を調べられることがわかる。
7.酸化LDLの測定(電位変化応答)
健常人より採取した血清からLDLを定法(超遠心法)により分離した。得られたLDLと硫酸銅とをそれぞれ終濃度が83μg/mL、0.553μMとなるように1×PBS 0.2mL中で希釈混合し、37℃でインキュベートして、LDLを酸化させた。LDLと硫酸銅とを混合した時を0分として、経時的に生成される酸化LDL(共役ジエン体)を上述の共役ジエン法で測定したところ、混合してから3時間後に吸光度の増加がほとんど見られなくなった。この混合してから3時間後のサンプルを、酸化LDL溶液とした。また、硫酸銅の代わりに1×PBSを加えて調製したサンプルを、未酸化LDL溶液とした。
前述のCNTセンサーのSWCNTマウント部と参照電極との間に緩衝溶液20μLを提供した後、参照電極に対する作用電極の電位を経時的に測定した。シグナルがほぼ安定化した後、緩衝溶液の一部(10μL)を吸い取った。次いで、SWCNTマウント部と参照電極との隙間に酸化LDL溶液または未酸化LDL溶液を10μL提供した後、参照電極に対する作用電極の電位を経時的に測定した。
酸化LDL溶液(実線)または未酸化LDL溶液(破線)を提供した後の、参照電極に対する作用電極の電位変化の測定結果を図12に示す。図12の横軸は、経過時間を示し、縦軸は、参照電極に対する作用電極の電位の変化を示す。また、グラフ中央の矢印は、酸化LDL溶液または未酸化LDL溶液を提供した時を示す。
図12に示されるように、酸化LDL溶液または未酸化LDL溶液を提供する前の0〜1000秒の間では、ベースラインのドリフト(右上がり)が観察された。酸化LDL溶液を提供した場合は、約30mVの電位変化が観察された。一方、未酸化LDL溶液を提供した場合は、5mV以下の電位変化しか観察されず、ドリフトとの区別が困難であった。また、未酸化のHDLを含む溶液を提供した場合、および硫酸銅のみを含む溶液を提供した場合も、電位変化は観察されなかった。
以上の結果から、酸化LDLに対してCNTセンサーが応答していることがわかる。
本出願は、2009年7月17日出願の特願2009−169126に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
CNTセンサーは、光源や検出器を用いることなく、反応を電気信号として取り出せる点、および大量生産が可能な点で有利である。したがって、CNTセンサーを用いる本発明の測定方法は、臨床検査に革命を起こせるといっても過言ではない。
まず、CNTセンサーは、検査室外での検査(POCT、SMBG、OTC)のプラットホームとして利用されうる。本発明の測定方法は、これまで脂質過酸化物の測定に実験室で用いられてきた化学発光−HPLC法に比べて、操作が格段に簡略化し、測定時間も短いため、これまでPOCTの対象になり難かった脂質過酸化物のPOCTも可能にする。
また、血液を持続的に採取する装置をCNTセンサーに接続したり、組織の間質液中に針を刺してCNTセンサーに接続したりすれば、運動選手のトレーニングの効果をリアルタイムにモニターして、手首や腰につけた小型の発信装置からPCにデータを送信することも可能となる。このような装置は、在宅医療や老人保健施設の患者のモニタリングにも応用可能である。
さらに、CNTセンサーは、病院の臨床検査室にも劇的な変化をもたらしうる。病院検査室で現在使用されている生化学分析装置は、大型かつ高額であり、キューベットおよびチューブの洗浄などのメンテナンスが必要である。生化学分析装置にもコストとスペースの節約が厳しく求められており、試薬使用量が少ない小型装置が好んで採用される。ところが、現在の分光学的分析装置のダウンサイジングは、限界に達している。
小型かつ低価格で使い捨て可能なCNTセンサーチップを利用することにより、現状では実現不可能なレベルまで分析装置が小型化されうる。また、試薬使用量も現在の10分の1以下となり、メンテナンス作業も不要な装置が開発されうる。そのような装置は、クリニック、手術室、救命救急室、救急車、検診車、老人保健施設、さらには街頭でのワンコイン健診などの様々な場面で多様な項目のリアルタイム検査を可能とする。
また、抗酸化食品や抗酸化薬物などのスクリーニングにおいて、CNTセンサーを利用することも可能である。たとえば、CNTセンサーで一定の酸化反応を行わせる系を作製しておけば、植物抽出物や薬物をそこに添加して、抗酸化活性を容易に測定しうる。CNTセンサーの可搬性のメリットを利用すれば、世界のどのような環境(例えば、ジャングルや山中など)においても天然の抗酸化物のスクリーニングが可能となり、食品業界および医薬品業界へも大きく貢献できる。
110 絶縁性基板
112 ガラス基板
120 作用電極
130 カーボンナノチューブ
140 サンプル溶液
150 カウンター電極
160 参照電極

Claims (8)

  1. 絶縁基板に配置された作用電極と、前記作用電極に接触している、その表面に水酸基またはカルボキシル基を有する単層カーボンナノチューブと、カウンター電極と、参照電極とを具備するCNTセンサーを用意するステップと、
    前記単層カーボンナノチューブに接するように、過酸化物を含む溶液であるサンプルを前記CNTセンサーに提供するステップと、
    前記作用電極と前記カウンター電極との間に電位差を設けるステップと、を含む、
    前記サンプル中の過酸化物を測定する方法。
  2. 前記単層カーボンナノチューブは、酸および過酸化水素を含む溶液に分散されて処理されたカーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記過酸化物は、生体成分に特異的な酵素を用いて前記生体成分を反応させることで生じた過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記生体成分は、グルコース、総コレステロール、遊離コレステロール、トリグリセリド、リン脂質、LDLコレステロール、HDLコレステロール、遊離脂肪酸、尿酸、ビリルビン、乳酸、ピルビン酸、クレアチニン、コリン、酵素からなる群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記過酸化物は過酸化脂質である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記過酸化脂質は、エステル型コレステロール過酸化物、コレステロール過酸化物、リン脂質過酸化物、トリグリセリド過酸化物、糖脂質過酸化物である、請求項5に記載の方法。
  7. 絶縁基板に配置された作用電極と、前記作用電極に接触している、その表面に水酸基またはカルボキシル基を有する単層カーボンナノチューブと、カウンター電極と、参照電極とを具備し、
    前記単層カーボンナノチューブに接するように、過酸化物を測定するサンプル溶液が提供される、過酸化物測定用のセンサー。
  8. 前記単層カーボンナノチューブが、酸および過酸化水素を含む溶液に分散されて処理されたカーボンナノチューブである、請求項7に記載の過酸化物測定用のセンサー。
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