JP5432569B2 - 内視鏡湾曲管に用いる節輪、内視鏡湾曲管、および内視鏡装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、円筒状の節輪の軸方向の両端部に、回転可能にリベット止めするための連結部が設けられた節輪、およびこのような節輪の連結部をリベット止めして連結した内視鏡湾曲管が記載されている。
また、特許文献1の内視鏡湾曲管では、節輪にそれぞれ湾曲操作用のワイヤを挿通させるワイヤ受け部が固定されている。
特許文献1に記載の発明では、まず節輪本体にワイヤ受け部を配置して、レーザ溶着などによってワイヤ受け部と節輪本体とを固定する。そしてワイヤ受け部が固定された複数の節輪を互いに連結する。この連結工程では、連結する節輪の連結部を重ねて配置し、各連結部においてリベットを節輪内部から外側に挿通し、節輪内側でリベット頭を保持し、この状態で節輪の径方向にリベットを挟んでリベット打ちを行う。
このように節輪を組み立てて内視鏡湾曲管を製造する工程は、非常に煩雑な工程となるという問題がある。
この発明によれば、節輪本体部の一端に、弾性変形部が突設され、この弾性変形部の突設方向の先端に弾性変形により拡径可能な開口を有する雌型嵌合部が設けられ、節輪本体部の他端に、連結相手の節輪の雌型嵌合部の開口に挿入したときに、弾性変形により縮径可能な凸部および連結相手の節輪の雌型嵌合部の開口に連結方向に嵌合可能なくびれ部を有する雄型嵌合部とを備える。
そのため、1つの節輪の雄型嵌合部の凸部を隣接する他の節輪の雌型嵌合部の開口に挿通させて、凸部を開口から突出させることで、くびれ部を雌型嵌合部の開口に嵌合させることができる。これにより、例えばリベットなどの他の連結部材を用いることなく、一方向への連結方向に沿って雄型嵌合部と雌型嵌合部とを押圧するだけで、連結作業を行うことができる。
また、連結された節輪は、弾性変形部が外力によって変形することにより、各節輪の中心軸を相対回転させることができ、全体として湾曲変形が可能となる。
また、弾性変形部が中心軸に略沿う方向に延ばされた梁状部材からなるので、弾性変形部の形状が簡素になるため、製造が容易となる。
また、節輪本体部がワイヤ挿通孔を備えるので、節輪本体部にワイヤを挿通させる別部材を取り付ける必要がないため、組み立てが容易となる。
また、節輪には、ワイヤを雄型嵌合部の内部のワイヤ挿通孔および雌型嵌合部の開口に挿通させることができる。このため、ワイヤが複数の節輪を連結方向に沿ってガイドするガイド部材を兼ねることができ、互いに連結させる雄型嵌合部および雌型嵌合部の位置決めが容易となる。
ここで非晶質合金とは、複数の金属元素からなる金属原料の溶湯を、臨界冷却速度以上でガラス遷移温度以下になるまで急速冷却することにより形成される。非晶質合金は通常の結晶金属に見うけられるような結晶粒界を有さず、結晶粒界を起因とした粒界腐食(結晶粒界に沿って腐食が進行する現象)を生じないことから、耐食性に優れている。更に、結晶金属のような凝固収縮の発生が少ないことから、成形金型に対する高精度な転写性を有し、かつ熱に対して低膨張である。また、その物性として低ヤング率・高強度・高弾性であることが知られている。
(I)3種類以上の金属元素を含むこと。
(II)前記3種以上の金属元素が、12%以上異なる原子径を有すること。例えば、大、中、小の大きさの金属元素が互いに12%以上異なる原子径を有すること。
(III)各金属元素が化合物化しやすいこと。すなわち、それぞれの金属元素が互いに引きあう性質を有すること。
金属ガラスとしては、ジルコニウム(Zr)基合金、鉄(Fe)基合金、チタン(Ti)基合金、マグネシウム(Mg)基合金などが挙げられる。
この場合、Zr系合金は、温度幅20℃以上のガラス遷移領域を有する非晶質合金の中でも型転写性が良好となるので、節輪の形状精度を向上することができる。
この場合、弾性限界が1%以上の金属で製造するため、雄型嵌合部および雌型嵌合部が弾性変形して嵌合する形状を容易に形成することができる。
Rmin<Ra ・・・(1)
Ra<Rmax<(1+2・v/100)・Ra ・・・(2)
この場合、雌型嵌合部の開口の最小内径Ra、前記雄型嵌合部の前記凸部の最大外径をRmax、前記雄型嵌合部の前記くびれ部の最小外径をRminが、上記式(1)、(2)の関係を満たすため、雌型嵌合部の径方向の変形量、雄型嵌合部の径方向の変形量を適宜分配することにより、雄型嵌合部の凸部および雌型嵌合部が弾性限界を超えない範囲で、変形して雄型嵌合部の凸部を雌型嵌合部の開口に挿通させることができる。例えば、Rmaxが式(2)の範囲でどんなに大きくなっても、凸部を弾性限界未満まで圧縮し、開口を弾性限界未満まで拡径することで、凸部を開口に挿通させることができる。
この発明によれば、本発明の節輪を備えるので、本発明の節輪と同様の作用効果を奏する。
この発明によれば、本発明の内視鏡湾曲管を備えるので、本発明の内視鏡湾曲管と同様の作用効果を奏する。
本発明の第1の実施形態の内視鏡湾曲管、それに用いる節輪について、それらを用いた内視鏡装置とともに説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡湾曲管を用いた内視鏡装置の概略構成を示す斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡湾曲管の中心軸に沿う断面図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡湾曲管に用いる節輪の正面図である。図3(b)は、図3(a)におけるA−A断面図である。図3(c)は、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡湾曲管に用いる節輪の裏面図である。図3(d)は、図3(a)におけるB−B断面図である。
挿入部2の先端側には、先端から照明光を照射し体内からの反射光を受光する先端部3、先端部3で受光した光を伝送する光ファイバーを収納するとともに湾曲動作可能とされた管状の湾曲部4が設けられ、湾曲部4と操作部7との間には、光ファイバーや湾曲部4の湾曲動作を制御する操作ワイヤなどを収容する可撓管部5が設けられている。
湾曲管10は、先端湾曲駒11、複数の節輪12を備え、後端側に可撓管部5と固定するめの後端湾曲駒(不図示)を備える。
以下、本明細書では簡単のため、筒状あるいは略筒状の部材、および環状あるいは略環状の部材に関して方向を参照する場合に、筒(環)の中心軸に沿う方向を軸方向、中心軸に直交する方向を径方向、中心軸に直交する平面内で筒面に沿う方向を周方向と称する場合がある。
先端湾曲駒11の概略構成は、円筒部11a、腕部15(弾性変形部)、および雌型嵌合部16からなる。
円筒部11aは、先端部3の端部に外嵌して、先端部3を固定する円筒状部材である。
円筒部11aの先端部3を外嵌する端部と反対側の端部の端面上には、径方向に対向する2つの腕部15が設けられ、これら腕部15の対向方向と直交する方向(図2の紙面垂直方向)の2箇所には、後述する操作ワイヤ17の先端を固定するため、他端面から軸方向内側に空けられた円穴からなるワイヤ固定部11bが設けられている。
腕部15の突設方向に直交する断面形状は、円筒部11aの外周面と同軸の幅w×厚さt2の円弧板状としているが、幅w×厚さt2の矩形状としてもよい。本実施形態では腕部15の幅wは、円筒部11aの外径より十分狭い寸法としているので、いずれの断面形状であっても、梁の撓み特性にあまり差はない。
本実施形態では、一例として、先端湾曲駒11の外径を8mmとし、腕部15に関しては、w=1.5(mm)、t2=0.05(mm)、L2=5(mm)のような寸法を採用している。
雌型嵌合部16は、開口16aの内周面から離間した径方向外側の位置で、開口16aの中心軸が円筒部11aの中心軸に沿うように腕部15の先端に固定されるとともに、全体として円筒部11aの外形に対して径方向内側に配置されている。
雌型嵌合部16の開口16aの中心の、円筒部11aに対する径方向の配置位置は、後述する節輪12の雄型嵌合部14の中心の配置位置と一致されている。
本実施形態では、一例として、D0=2(mm)、t0=0.4(mm)、d0=1.47(mm)の寸法を採用している。
例えば、先端湾曲駒11に好適な非晶質合金の一例としては、例えば、組成が、Zr55Cu30Al10Ni5のZr基合金(Zr系合金)を挙げることができる。このZr基合金は、結晶化温度、ガラス遷移温度、ガラス遷移領域の温度幅が、それぞれ、Tx=約490℃、Tg=約400℃、ΔTx=約90℃である。
そして、このZr基合金の弾性限界は2.0%であり、例えば、弾性限界0.5%のばね鋼や、弾性限界が略0%のアルミニウム合金などに比べて大きくなっている。
そして、円筒部11aに比べて薄肉に形成された腕部15や雌型嵌合部16は、より小さな力で、この弾性限界の範囲で弾性変形できるようになっている。
節輪本体部13の軸方向の他端側(図2の図示左側)の端面13a上には、連結相手である先端湾曲駒11や他の節輪12の雌型嵌合部16の開口16aに嵌合可能な軸状突起である複数の雄型嵌合部14が、節輪本体部13の肉厚方向の略中央位置に設けられている。
本実施形態では、2つの雄型嵌合部14が、それぞれの中心軸の軸間距離が先端湾曲駒11の2つの開口16aの中心間距離に一致するとともに、節輪本体部13の中心軸に対して軸対称となるように設けられている。
そして、雌型嵌合部16の開口16aの中心は、雄型嵌合部14の中心軸の線上に整列されている。
また、端面13aと端面13bとの間には、これら腕部15の対向方向と直交する方向の2箇所には、後述する操作ワイヤ17を軸方向に挿通させるため、操作ワイヤ17の外径よりわずかに大径の1対のワイヤ挿通孔13cが、節輪本体部13の中心軸Oに対称となる位置で、軸方向に貫通して設けられている。
ワイヤ挿通孔13cの内径Hは、本実施形態では、一例として、H=1.0(mm)としている。
ただし、突起先端14aの底面の外径D1は、雌型嵌合部16の開口16aの内径d0よりも大きく、かつ、突起先端14aを開口16aに挿入したときに、開口16aを弾性変形させて拡径させるとともに、突起先端14a自体が弾性変形して縮径することができるような寸法関係の範囲に設定する。例えば、開口16aが弾性限界の範囲で最大に拡径し、突起先端14aが弾性限界の範囲で最小に縮径するときに、突起先端14aが開口16aを挿通できればよい。
ここで、d0<D1だから、雄型嵌合部14、雌型嵌合部16のZr基合金の弾性限界をv(%)とすると、d0、D1が、少なくとも、次式(3)の関係を満足していれば、このような弾性変形の範囲での挿通が可能となる。径d0、d1、D1はそれぞれ上記式(1)、(2)のR0、Rmin、Rmaxに相当する。
本実施形態では、一例として、t1=0.5(mm)、D1=1.5(mm)、h1=1(mm)のような寸法を採用している。
操作ワイヤ17の材質としては、例えば、ステンレス線材などの金属線材を撚ってなる撚り線ワイヤを採用することができる。
操作ワイヤ17の線径としては、本実施形態では、一例として、φ0.8mm〜φ0.9mmのものを採用することができる。
図2に示すように、先端湾曲駒11と複数の節輪12とが軸方向に整列して隣接され、それぞれ、隣接された雌型嵌合部16と雄型嵌合部14とが軸方向に嵌合される。そして、軸方向に整列して隣接される各節輪12の間で同様にして、隣接された雌型嵌合部16と雄型嵌合部14とが軸方向に嵌合される。また、軸方向に整列された複数のワイヤ挿通孔13cには操作ワイヤ17が挿通され、その操作ワイヤ17の先端が先端湾曲駒11のワイヤ固定部11bに固定されている。
図4(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の第2の実施形態の節輪の雌型嵌合部と雄型嵌合部とを連結させる工程を順次説明する工程説明図である。
凝固が終了したら、脱型して成形品として取り出す。
このため、先端湾曲駒11、節輪12は、金属ガラスの特徴である高い弾性限界が付与される。上記Zr基合金では、弾性限界は2.0%となる。
例えば、節輪本体部13に設けられたワイヤ挿通孔13cは、金型形状を転写して節輪本体部13に一体に形成されるので、別部材を接合する場合に比べて部品点数を低減し、製造工程が簡素化される。
この連結工程について、図4(a)、(b)、(c)、(d)を参照して説明する。
まず、図4(a)に示すように、対向配置された雄型嵌合部14を軸方向に移動させ、開口16aに向けて挿入する。このとき、適宜の治具(不図示)によって雌型嵌合部16を径方向外側に変形可能に保持し、挿入力によって軸方向に移動しないようにしておく。
突起先端14aの最大外径D1は、開口16aの内径d1より大きいため、図4(b)に示すように、突起先端14aは、円錐面が開口16aの内側に当接される。
この状態から、さらに雄型嵌合部14を軸方向に沿って、雌型嵌合部16側に押し込むと突起先端14aの円錐面の傾斜に沿って、開口16aを押し開きつつ突起先端14aが徐々に挿入される。また、突起先端14aは、開口16aからの反作用で縮径されつつ挿入されていく。
そして、突起先端14aの円錐形の底面部が、開口16a内に挿入されると、図4(c)に示すように、雌型嵌合部16が(d0+Δd)に拡径するとともに、突起先端14aが外径D1から外径(d0+Δd)に縮径されて、開口16a内を進む。
このとき、本実施形態では、上記式(3)の右項は、(1+2・2/100)・1.47=1.5288(mm)となるので、D1=1.5(mm)は、上記式(3)の関係を満足しており、上記の変形は、弾性変形の範囲内で行われる。
これにより、雌型嵌合部16が、雄型嵌合部14の突起先端14aと突起台座14cとに挟持され、雄型嵌合部14の突起くびれ部14b内で軸方向に嵌合された状態となり、雄型嵌合部14と雌型嵌合部16とが連結される。
以上は、先端湾曲駒11と節輪12との連結工程を説明したが、連結された節輪12に、他の節輪12を連結する場合でも、雌型嵌合部16と雄型嵌合部34との連結工程は、上記とまったく同様に行うことができる。
このように連結することで、各節輪12のワイヤ挿通孔13cは、それぞれ直線上に整列される。そこで、湾曲管10の先端湾曲駒11と反対側の端部から、操作ワイヤ17をワイヤ挿通孔13cに挿入していき、先端を先端湾曲駒11のワイヤ固定部11bにおいて、例えば、カシメや半田付けすることによって固定する。
以上で、操作ワイヤ17を挿通した湾曲管10を作製することができる。
図5(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る内視鏡湾曲管の、湾曲前、湾曲後の隣接する節輪の様子を示す断面図である。
湾曲前の状態では、図5(a)に示すように、節輪12Aの端面13aと節輪12Bの端面13bとは平行で、各腕部15は、真直に伸ばされている。このため、節輪12Aの中心軸OAと節輪12Bの中心軸OBとは同軸に配置されている。
これにより、節輪12Aの端面13bと節輪12Bの端面13aとの間の間隔は、湾曲前に比べて操作ワイヤ17A側で近接され、操作ワイヤ17B側で離間される。また、これに伴って、腕部15が弾性変形して図示紙面内で時計回り方向に湾曲し、中心軸OAが、中心軸OBに対して時計回り方向に相対回転して傾斜される。
このように、各節輪12間での相対回転(傾斜)が積算されることで、湾曲管10が全体として円弧状に湾曲される。
反対方向に湾曲させるには、上記と逆に操作ワイヤ17Bを一定量だけ牽引して、操作ワイヤ17Aを一定量だけ牽引を緩めればよい。
このように、湾曲管10は、操作ワイヤ17が配置された平面内で、2方向に湾曲可能になっている。
また、節輪12を、射出成形法で作製するため、除去加工を行う工程を省略して製造工程を簡素化することができる。なお、除去加工とは、切削や研磨、ラッピング等、素材を除去する加工を示す。
また、節輪12を弾性限界が大きい金属ガラスで作製するため、弾性限界がより小さい金属を用いる場合に比べて、雄型嵌合部14の最大外径D1と、雌型嵌合部16の開口16aの内径d0との差を大きくとることができる。そのため、同一の加工精度であれば、弾性限界がより小さい金属に比べて、それぞれの径をより小さくすることができるので、湾曲管10の外径を小型化しやすくなる。
図6は、本発明の第1の実施形態の第1変形例の節輪の雌型嵌合部を示す斜視図である。
本変形例の節輪は、上記第1の実施形態の節輪12において、各雌型嵌合部16に代えて、それぞれ図6に示す雌型嵌合部16Aを備えるものである。以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
この場合、突起先端14aを挿入すると、離間部16bの離間距離が周方向に増大するように変形する点が異なるのみで、上記第1の実施形態と同様に、雄型嵌合部14の突起くびれ部14bに嵌合させることができる。
本変形例では、雌型嵌合部16Aの開口16aは曲げ変形によって拡径していくため、変形時の周方向の応力分布は不均一となる。したがって、雌型嵌合部16Aの形状は、変形時の応力解析などを行って、変形時の最大歪みが弾性限界内となるような形状に設定する。例えば、離間部16b側から、腕部15側に向かって、径方向の太さが拡大していくような形状を採用することができる。
この場合、本変形例の開口16aの内径d0は、雄型嵌合部14の外径D1に対して、必ずしも上記式(3)の関係を満たさなくてもよい。
図7(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第1の実施形態の第2、第3、第4変形例の弾性変形部を示す部分断面図である。
ジグザグばね40は、上記第1の実施形態の片状の腕部15を厚さ方向に直交する断面内で、突設方向に対してジグザグ状となるように折り曲げて形成されたばね部材である。
ジグザグばね40は、ジグザグ状の板面間の距離や位置関係が変化することで、突設方向への伸縮変形や、突設方向と交差する方向への屈曲変形を弾性的に行うことができる。
ジグザグばね41は、上記第1の実施形態の片状の腕部15を厚さ方向に直交する断面内で、突設方向に交差する径方向に対してジグザグ状となるように折り曲げて形成されたばね部材である。
ジグザグばね41は、ジグザグ状の板面間の距離や位置関係が変化することで、突設方向への伸縮変形や、突設方向と交差する方向への屈曲変形を弾性的に行うことができる。
湾曲板ばね42は、上記第1の実施形態の片状の腕部15を厚さ方向に直交する断面内で、径方向内側に湾曲させた曲がり梁状のばね部材である。
湾曲板ばね42は、径方向内側に湾曲されているので、突設方向への伸縮変形や、突設方向と交差する方向への屈曲変形を弾性的に行うことができる。
次に、本発明の第2の実施形態の内視鏡湾曲管、それに用いる節輪について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡湾曲管の中心軸に沿う断面図である。図9(a)は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡湾曲管に用いる節輪の正面図である。図9(b)は、図9(a)におけるC−C断面図である。図9(c)は、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡湾曲管に用いる節輪の裏面図である。図9(d)は、図9(a)におけるD−D断面図である。
先端湾曲駒31の外周面と後端側内周面31bとに挟まれた円筒部には、4本の操作ワイヤ17の先端を固定するため、周方向を4等分する位置に先端湾曲駒31の軸方向内側に空けられたワイヤ固定部11bと同様な円穴からなる4つのワイヤ固定部31cが設けられている。
また、ワイヤ固定部31cが設けられた先端湾曲駒31の端面上には、径方向に対向する2つのワイヤ固定部31cの近傍の径方向外側に、1対の腕部15および雌型嵌合部16が上記第1の実施形態と同様な配置位置、形状で設けられている。
そして、このZr基合金の弾性限界は2.2%である。
このため、互いに軸方向に対向するワイヤ挿通孔13cと開口16aとは、同軸に整列されている。
ここで、突起先端34aの基端側の外径D1は、雌型嵌合部16の開口16aの内径d0よりも大きく、かつ、突起先端34aを開口16aに挿入したときに、開口16aを弾性変形させて拡径させるとともに突起先端34a自体が弾性変形して縮径することができるような寸法関係の範囲に設定する。例えば、開口16aが弾性限界の範囲で最大に拡径し、突起先端34aが弾性限界の範囲で最小に縮径するときに、突起先端34aが開口16aを挿通できればよい。
したがって、本実施形態における金属ガラスの弾性限界をv(%)とすると、上記第1の実施形態と同様、d0、D1が、少なくとも、上記式(3)の関係を満足していれば、このような弾性変形の範囲での挿通が可能となる。
また、突起台座34cの外径は、開口16aの内径d0より大きな適宜寸法を採用することができる。
本実施形態では、t1、D1、h1は、上記第1の実施形態と同様の寸法を採用している。また、d4は、φ1.0mmとしている。
図8に示すように、先端湾曲駒31と複数の節輪32とが軸方向に整列して隣接され、それぞれ、隣接された雌型嵌合部16と雄型嵌合部14とが軸方向に嵌合される。そして、軸方向に整列して隣接される各節輪32の間で同様にして、隣接された雌型嵌合部16と雄型嵌合部14とが軸方向に嵌合される。
このため、複数の節輪32は、中心軸回りの配置位置が互いに90°ずらされている。そして、隣接する節輪32のワイヤ挿通孔13cとワイヤ挿通孔33cとが、それぞれ同軸に整列される。
このように、軸方向に整列された複数のワイヤ挿通孔13cおよびワイヤ挿通孔33cには、それぞれ操作ワイヤ17が挿通され、これら合計4本の操作ワイヤ17の先端が先端湾曲駒31のワイヤ固定部31bにそれぞれ固定されている。
図10(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の第2の実施形態の節輪の雌型嵌合部と雄型嵌合部とを連結させる工程を順次説明する工程説明図である。
そして、ガラス遷移温度Tg以下になるまで、例えば10℃/秒以上で急速冷却して凝固させる。これにより、Zr基合金の溶湯は温度幅20℃以上のガラス遷移領域を有する非晶質合金として凝固し、結晶化する場合に比べて凝固収縮が小さくなる。そのため、金型形状が高精度に転写された状態で固化される。
凝固が終了したら、脱型して成形品として取り出す。
このため、先端湾曲駒31、節輪32は、金属ガラスの特徴である高い弾性限界が付与される。上記Zr基合金では、弾性限界は2.2%となる。
このように、本実施形態では、ニアネットシェイプ成形法の一種である遠心鋳造法によって、先端湾曲駒31、節輪32を成形するので、機械加工や電気加工などの除去加工を行う場合に比べて製造工程を簡素化することができる。また、これにより製造コストを低減することができる。
この連結工程について、図10(a)、(b)、(c)、(d)を参照して説明する。
まず、先端湾曲駒31の各ワイヤ固定部31cに、それぞれ操作ワイヤ17の先端を固定する。固定方法は、上記第1の実施形態と同様、例えば、カシメや半田付けする方法を採用することができる。
次に、これらの操作ワイヤ17の他端を、先端湾曲駒31に連結する節輪32の各ワイヤ挿通孔13c、33cに端面13a側から、挿通させる。これにより、節輪32の雄型嵌合部34は、図10(a)に示すように、先端湾曲駒31の雌型嵌合部16に対向する位置に配置される。このように、本実施形態では、操作ワイヤ17を連結前にワイヤ挿通孔13c、33cに挿通しておくため、挿通の完了とともに、雌型嵌合部16と雄型嵌合部34との周方向の位置が位置決めされる。これにより、位置合わせ作業が簡素化されるため、組み立てが容易となり生産性が向上する。
そして、対向配置された雄型嵌合部34を軸方向に移動させ、開口16aに向けて挿入する。このとき、適宜の治具(不図示)によって雌型嵌合部16を径方向外側に変形可能に保持し、挿入力によって軸方向に移動しないようにしておく。
突起先端34aの最大外径D1は、開口16aの内径d1より大きいため、図10(b)に示すように、突起先端34aは、円錐面が開口16aの内側に当接される。
この状態から、さらに雄型嵌合部34を軸方向に沿って、雌型嵌合部16側に押し込むと突起先端34aの円錐面の傾斜に沿って、開口16aを押し開きつつ突起先端34aが徐々に挿入される。また、突起先端34aは、開口16aからの反作用で縮径されつつ挿入されていく。
そして、突起先端34aの円錐台形の底面部が、開口16a内に挿入されると、図10(c)に示すように、雌型嵌合部16が(d0+Δd)に拡径するとともに、突起先端34aが外径D1から外径(d0+Δd)に縮径されて、開口16a内を進む。
このとき、本実施形態では、上記式(3)の右項は、(1+2・1.8/100)・1.47=1.5229(mm)となるので、D1=1.5(mm)は、上記式(3)の関係を満足しており、上記の変形は、弾性変形の範囲内で行われる。
これにより、雌型嵌合部16が、雄型嵌合部34の突起先端34aと突起台座34cとに挟持され、雄型嵌合部34の突起くびれ部34b内で軸方向に嵌合された状態となり、雄型嵌合部34と雌型嵌合部16とが連結される。
以上は、先端湾曲駒31と節輪32との連結工程を説明したが、連結された節輪32に、他の節輪32を連結する場合でも、雌型嵌合部16と雄型嵌合部34との連結工程は、上記とまったく同様に行うことができる。
なお、以上の説明では、隣接する先端湾曲駒31、節輪32、または隣接する節輪32同士の間に、順番に、操作ワイヤ17を挿通させてから連結工程を行うものとして説明したが、予め、湾曲管30を構成するすべての先端湾曲駒31、節輪32に、操作ワイヤ17を挿通させてから、隣接する雄型嵌合部34、雌型嵌合部16のそれぞれの連結工程を行うようにしてもよい。この連結工程では、一端側から順次、連結してもよいが、連結するための挿入方向が一方向なので、すべての雄型嵌合部34、雌型嵌合部16の連結作業を同時並行して行ってもよい。例えば、適宜の連結治具を用いて、各雌型嵌合部16を軸方向にスライド可能に保持し、終端側の節輪32を先端の先端湾曲駒31に向かって、加圧して、各連結工程を同時に行ってもよい。
図11(a)、(b)は、それぞれ本発明の第2の実施形態に係る内視鏡湾曲管の、湾曲前、湾曲後の隣接する節輪の様子を示す断面図である。
内視鏡装置1Aでは、これら4本の操作ワイヤ17の牽引量を操作部7によって制御することで、湾曲管30を2軸方向への湾曲させることができる。
湾曲前の状態では、図11(a)に示すように、節輪32Aの端面13aと節輪32Bの端面13bとは平行で、各腕部15は、真直に伸ばされている。このため、節輪32Aの中心軸OAと節輪32Bの中心軸OBとは同軸に配置されている。
これにより、節輪32Aの端面13bと節輪12Bの端面13aとの間の間隔は、湾曲前に比べて操作ワイヤ17C側で近接される。また、これに伴って、節輪32Aの各腕部15が弾性変形して図示紙面内で時計回り方向に湾曲し、中心軸OAが、中心軸OBに対して時計回り方向に相対回転して傾斜される。
また、特に図示しないが、先端方向(図示左側)で節輪32Aに隣接する他の節輪32、および後端方向(図示右側)で節輪32Bに隣接する他の節輪32では、操作ワイヤ17Aおよび不図示の紙面手前側の操作ワイヤに沿って延びる腕部15が、上記第1の実施形態の図5(b)に図示された腕部15と同様に、図示紙面内で時計回りに湾曲することで、隣接する節輪間で相対回転を起こす。
このように、各節輪32間での相対回転(傾斜)が積算されることで、湾曲管30が全体として円弧状に湾曲される。
反対方向に湾曲させるには、上記と逆に操作ワイヤ17Dを一定量だけ牽引して、操作ワイヤ17Aおよび不図示の紙面手前側の操作ワイヤをその約半分だけ牽引すればよい。
また、紙面垂直方向側に湾曲させるには、上記と同様に操作ワイヤ17Aおよび不図示の紙面手前側の操作ワイヤの牽引量に差をつければよい。
このように、湾曲管30は、各節輪32の中心軸を挟んで対向する2対の操作ワイヤ17の牽引量を制御することで、これらの互いに直交する2軸方向に湾曲可能になっている。
また、節輪32を、遠心鋳造法で作製するため、除去加工を行う工程を省略して製造工程を簡素化することができる。
また、節輪32を弾性限界が大きい金属ガラスで作製するため、弾性限界がより小さい金属を用いる場合に比べて、雄型嵌合部34の最大外径D1と、雌型嵌合部16の開口16aの内径d0との差を大きくとることができる。そのため、同一の加工精度であれば、弾性限界がより小さい金属に比べて、それぞれの径をより小さくすることができるので、湾曲管30の外径を小型化しやすくなる。
また、腕部15が節輪本体部13の中心軸にほぼ沿う方向に延ばされた梁状部材からなるので、腕部15の形状が簡素であり、製造が容易となる。
また、節輪本体部13に湾曲操作を行うためのワイヤを前記中心軸に沿う方向に挿通するワイヤ挿通孔13cが設けられているので、節輪本体にワイヤを挿通させる別部材を取り付ける必要がないため、組み立てが容易となる。
また雄型嵌合部34の内部のワイヤ貫通孔33cおよび雄型嵌合部34の開口にワイヤを挿通しているので、ワイヤが複数の節輪を連結方向に沿ってガイドするガイド部材を兼ねることができ、節輪間の位置決めが容易となる。
また、例えば、先端湾曲駒11、31の腕部15、雌型嵌合部16のみを金属ガラスとし、結晶質金属からなる節輪本体部13に腕部15を接合した異材質の複合体としてもよい。
したがって、弾性限界1%以上であることが好ましく、弾性限界が1%以上であれば、節輪の材質として、結晶質金属を用いてもよい。
このような高い弾性限界を有する結晶質金属としては、例えば、ニッケル(Ni)−チタン(Ti)合金(弾性限界:5%〜6%)や、Ti系合金(弾性限界:2.5%程度)などの金属材料を挙げることができる。
3 先端部
4、4A 湾曲部
7 操作部
10、10A、30 湾曲管
11、31 先端湾曲駒
12、12A、12B、32、32A、32B 節輪
13、33 節輪本体部
13a 端面
13b 端面
13c、33c ワイヤ挿通孔
14、34 雄型嵌合部
14a、34a 突起先端(凸部)
14b、34b 突起くびれ部(くびれ部)
14c、34c 突起台座
15 腕部(弾性変形部)
16、16A 雌型嵌合部
16a 開口
17、17A、17B、17C、17D 操作ワイヤ(ワイヤ)
D1 外径(雌型嵌合部の凸部の最大外径をRmax)
d0 内径(雌型嵌合部の開口の最小内径をRa)
d1、d4 直径(雄型嵌合部の前記くびれ部の最小外径をRmin)
O、OA、OB 中心軸
Tg ガラス遷移温度
v 弾性限界
Claims (8)
- 金属からなり、複数個を連結して内視鏡湾曲管に用いる節輪であって、
外周面と内周面とを有する円筒形状からなる略環状の節輪本体部と、
該節輪本体部の中心軸に沿う方向の一端における、前記外周面と前記内周面との間の端面から、前記中心軸に略沿う方向に突設された湾曲可能な弾性変形部と、
前記弾性変形部の突設方向の先端に、弾性変形により拡径可能な開口を有する雌型嵌合部と、
前記節輪本体部の中心軸に沿う方向の他端から前記中心軸に略沿う方向に突設され、連結相手の節輪の雌型嵌合部の開口に挿入したときに、弾性変形により縮径可能な凸部および前記連結相手の節輪の雌型嵌合部の開口に連結方向に嵌合可能なくびれ部を有する雄型嵌合部とを備え、
前記弾性変形部は、前記中心軸に略沿う方向に延ばされた梁状部材からなり、
前記節輪本体部は、湾曲操作を行うためのワイヤを前記中心軸に沿う方向に挿通するワイヤ挿通孔を備え、
前記ワイヤ挿通孔は、前記雄型嵌合部の内部に貫通されたことを特徴とする節輪。 - 前記弾性変形部および前記雌型嵌合部は、それぞれ前記中心軸に対して対称な位置に対をなして設けられ、
前記雄型嵌合部は、前記中心軸に対して対称な位置に対をなして設けられていることを特徴とする請求項1に記載の節輪。 - 前記金属は、温度幅20℃以上のガラス遷移領域を有する非晶質合金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の節輪。
- 前記非晶質合金は、ジルコニウム(Zr)系合金であることを特徴とする請求項3に記載の節輪。
- 前記金属は、弾性限界が1%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の節輪。
- 前記雌型嵌合部の前記開口の最小内径をRa、前記雄型嵌合部の前記凸部の最大外径をRmax、前記雄型嵌合部の前記くびれ部の最小外径をRmin、前記金属の弾性限界をv(%)とするとき、次式の関係を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の節輪。
Rmin<Ra ・・・(1)
Ra<Rmax<(1+2・v/100)・Ra ・・・(2) - 請求項1〜6のいずれかに記載の節輪が少なくとも2つ隣接して配置され、
1つの節輪の前記雄型嵌合部および隣接する他の節輪の前記雌型嵌合部、もしくは、1つの節輪の前記雌型嵌合部および隣接する他の節輪の前記雄型嵌合部が嵌合されることにより互いに連結されてなることを特徴とする内視鏡湾曲管。 - 請求項7に記載の内視鏡湾曲管を備える内視鏡装置。
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