以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図11は、本発明による半導体発光素子の実施の形態1を示す断面模式図である。図12は図11に示した半導体発光素子の斜視模式図である。図11および図12を参照して、本発明による半導体発光素子を説明する。なお、図11は半導体発光素子の断面構造を模式的に示したものであり、表面や側面に形成された凹凸構造は図示されていない。
図11および図12に示した半導体発光素子は、サファイア基板1と、バッファ層2、n−GaN層3、活性層4およびp−GaN層5からなる半導体層と、透光性電極6と、p型パッド電極7と、n型パッド電極8とから構成される。具体的には、サファイア基板1の主表面上にバッファ層2が形成されている。バッファ層2上にn−GaN層3が形成されている。n−GaN層3上に活性層4が形成されている。活性層4上にp−GaN層5が形成されている。p−GaN層5の上部表面を覆うように透光性電極6が形成されている。透光性電極6上にp型パッド電極7が形成されている。また、p−GaN層5、活性層4およびn−GaN層3が部分的に除去されることにより形成された凹部70の底壁において、露出するn−GaN層3に接触するようにn型パッド電極8が形成されている。
図11および図12に示すように、活性層4およびp−GaN層5の平面形状は、n−GaN層3の平面形状よりも小さくなっている。具体的には、n−GaN層3の平面形状はほぼ四角形状である。そして、このn−GaN層3の上部表面上に、メサ構造としてn−GaN層3の一部と活性層4とp−GaN層5とが積層されている。これらのp−GaN層5を含むメサ構造部の平面形状は、図12に示すように四角形状の一部が除去されたL字型(あるいは相対的に大きな四角と相対的に小さな四角とを接合した形状)となっており、n−GaN層3の上部表面のほぼ中央部に配置されている。n−GaN層3の上部表面は図11および図12に示すように部分的に露出している。そして、このn−GaN層3の上部表面には、図12に示すように表面凹凸C300が形成されている。また、n−GaN層3および上述したp−GaN層5を含むメサ構造部の側壁部には、側面凹凸400が形成されている。さらに、図12に一部を示すように、側面凹凸400の表面上には、側面凹凸400よりもさらに微細な表面凹凸B200が形成されている。また、p−GaN層5の上部表面には図12に示すように表面凹凸A100が形成されている。また、図12から判断し難いが、表面凹凸A100の表面上に、表面凹凸A100よりもさらに微細な表面凹凸C300が形成されている。このように、半導体発光素子の表面に凹凸構造(表面凹凸A100、側面凹凸400、表面凹凸B200、表面凹凸C300)が形成されているため、光の取出し効率を向上させることができる。
ここで、表面凹凸A100の形状としては、光取出効果のある任意の立体形状とすることができる。たとえば、表面凹凸A100の形状として、その断面形状が半円状、三角形状、四角形状、さらに、平面形状が円形状、三角形状、四角形状や角部が6個以上の多角形状、であってもよい。また、表面凹凸A100の形状として、平面形状が多角形状の柱状体や平面形状が多角形の角錐体、あるいは平面形状が円形状の円錐体などであってもよい。また、表面凹凸A100の立体形状は、凹形状であっても凸形状であってもよい。さらに、側面凹凸400は、図12にも示すようにn−GaN層3や上述したメサ構造部の端部側面に形成され、側面凹凸400の平面形状が凹凸状(突出部が三角形状)である。その表面は、図11に示すように、サファイア基板1の主表面に対してほぼ直角に交差する構造であってもよいが、サファイア基板1の主表面に対してやや傾斜した面であってもよい。側面凹凸400の表面がサファイア基板1の主表面に対して傾斜した構造である場合、その側面の表面と、サファイア基板の主表面とのなす角度であるテーパ角度は、70°以下であることが好ましく、65°以上70°以下であることがさらに好ましい。このように、半導体層の表面や側面に凹凸形状部を形成することで、半導体発光素子における光の取出し効率を向上させることができる。
また、上述した表面凹凸A100の表面には、さらにより小さなサイズの表面凹凸C300(図17参照)が形成される。また、側面凹凸400の表面にも、当該側面凹凸400のサイズよりも小さな表面凹凸B200(図17〜19参照)が形成される。
p−GaN層5の上部表面上には、上述の表面凹凸A100を覆うように透光性電極6が形成されている。この透光性電極6上に、平面形状が円形状のp型パッド電極7が形成されている。また、凹部70において露出しているn−GaN層3の表面にn型パッド電極8が形成されている。このp型パッド電極7およびn型パッド電極8の平面形状は、図12に示すように円形状としてもよいが、他の任意の形状としてもよい。たとえば、三角形状や四角形状、あるいは五角形状などの多角形状としてもよい。
図13は、図11および図12に示した半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。図14〜図19は、図13に示した半導体発光素子の製造方法を説明するための断面模式図である。より具体的には、図14は、実施の形態1における半導体発光素子の製造過程において、工程(S10)を行なった後の状態を示す概略図である。また、図15は、実施の形態1における半導体発光素子の製造過程において、工程(S30)および工程(S31)を行なった後の状態を示す概略図である。さらに、図16は、実施の形態1における半導体発光素子の製造過程において、工程(S60)を行なった後の状態を示す概略図である。また、図17は、実施の形態1における半導体発光素子の製造過程において、工程(S80)および工程(S81)を行なった後の状態を示す概略図である。さらに、図18は、実施の形態1における半導体発光素子の製造過程において、工程(S100)および工程(S101)を行なった後の状態を示す概略図である。最後に、図19は、実施の形態1における半導体発光素子の完成品の状態を示す概略図である。以上、図13〜図19を参照して、本発明による半導体装置の実施の形態1の製造方法を説明する。
図13に示した半導体発光素子の製造方法では、基板の主表面上に活性層を含む半導体層を形成する工程としての、半導体積層構造を形成する工程(S10)を実施する。具体的には、まず基板としてのサファイア基板1を準備する。そして、このサファイア基板1上に、窒化ガリウム(GaN)を主成分とするバッファ層2、n−GaN層3、活性層4、p−GaN層5を形成する。これらの層を形成する方法としては、たとえば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)を用いることができる。さらに、p−GaN層5の導電性不純物の活性化のためのアニール工程(熱処理工程)を実施する。このようにして、サファイア基板1上にバッファ層2、n−GaN層3、活性層4、およびp−GaN層5が積層された図14に示すような構造を得る。
次に、図13に示すように、p型表面凹凸のリソグラフィー工程(S20)を実施する。具体的には、p型層としてのp−GaN層5の上部表面が所定の凹凸形状となるよう、部分的にp−GaN層5の上部表面を除去するためのマスクパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。このマスクパターンについては、たとえばレジスト膜を予め形成し、当該レジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いて所定のパターンを形成することにより当該マスクパターンを形成してもよい。あるいは酸化シリコンなどの酸化膜をマスクとして用い、エッチングにより所定の平面形状とするように部分的に除去することにより、酸化膜からなるマスクパターンを形成してもよい。上述したフォトリソグラフィー法を用いることにより凹凸パターンを形成する。この凹凸パターンは、図12に示した表面凹凸A100を形成するためのものである。
次に、図13に示すように、エッチングにて表面凹凸Aを形成する工程(S30)およびエッチングにて表面凹凸Cを形成する工程(S31)を同時に実施する。具体的には、上述の工程(S20)において形成したマスクパターンを有するたとえばレジスト膜をマスクとして用いて、エッチングによりp−GaN層5の上部表面を部分的に除去する。このとき、エッチングされたp−GaN層5の表面には、上述したマスクの形状に沿って凹凸形状(表面凹凸形状部としての表面凹凸A100)が形成される(図12参照)。このとき、エッチングとしてはドライエッチングを用いる。そして、このドライエッチングのプロセス条件を調整することによって、エッチング後のp−GaN層5の表面が荒れるような条件を用いることにより、形成される表面凹凸A100の表面がさらに微細な凹凸を形成するようにエッチングされる。この結果、表面凹凸A100の表面に、より微細な凹凸である表面微細凹凸部としての表面凹凸C300が形成される。このようにして、上述した工程(S30)と工程(S31)とを同時に実施することができる。この結果、図15に示すような構造を得る。なお、図15〜図19においては、表面凹凸A100および表面凹凸C300を、断面形状が矩形状の凹部または凸部として簡略化して図示している。
なお、エッチングのプロセス条件を調整することによって、表面凹凸C300が同時に形成されないようにまず表面凹凸A100を形成し、別のエッチング条件を用いることにより、表面凹凸C300のみを後から形成させることもできる。この方法においても、表面凹凸C300は表面が荒れるような条件にて形成させてもよいが、後のエッチングの条件次第で、表面凹凸A100の表面上に、より規則性や周期性を有するさらに微細な表面凹凸C300を、形成させることもできる。特に、表面凹凸C300は、10nm以上1000nm以下のサイズの凹凸形状であることが好ましい。その結果、発光した光をさらに効率よく外部に取り出すことが可能な半導体発光素子を製造することが可能となる。
また、上述した工程(S20)と工程(S30)とに代えて、p−GaN層5の表面全体を荒らすようなドライエッチングを行ない、p−GaN層5の表面を不均一にエッチングすることにより、表面凹凸C300を形成してもよい。この場合、p−GaN層5の上部表面に表面微細凹凸部としての表面凹凸C300のみが形成される。
次に、図13に示すように、透光性電極の膜を形成する工程(S40)を実施する。具体的には、p−GaN層5の上部表面上に透光性電極6を形成するための薄膜を形成する。この透光性電極6の材料としては、たとえばITOやZnO、FTOなどの透明部材を用いることができる。また、たとえば厚みが1nm以上200nm以下である金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などからなる半透明金属膜などを、透光性電極6の材料として用いてもよい。このような透光性電極6をp−GaN層5の上部表面を覆うように形成する方法としては、たとえばリフトオフ法など任意の方法を用いることができる。
続いて、透光性電極のリソグラフィー工程(S50)を実施する。具体的には、先の工程(S40)にて形成した薄膜が、透光性電極としての機能を行なうに足る所定の凹凸形状となるよう、部分的に透光性電極の膜を除去するためのマスクパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。そして、透光性電極のエッチング工程(S60)を実施する。すなわち、上述の工程(S50)において形成したマスクパターンを有するたとえばレジスト膜や酸化膜をマスクとして用いて、エッチングにより透光性電極の薄膜の上部表面を部分的に除去する。以上の方法により、図16に示すような透光性電極6を形成することができる。
次に、図13に示すように、メサ構造のリソグラフィー工程(S70)を実施する。具体的には、この工程(S70)においては、p−GaN層5および、活性層4、n−GaN層3の一部を所定の平面形状にするよう、部分的に除去するためのマスクパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。
次に、図13に示すように、エッチングにてメサ構造の側面凹凸を形成する工程(S80)および、エッチングにてメサ構造の表面凹凸Bを形成する工程(S81)を同時に実施する。すなわち、上述の工程(S70)において形成したマスクパターンを有するたとえばレジスト膜をマスクとして用いて、エッチングによりp−GaN層5および、活性層4、n−GaN層3の一部の外周部の側面を部分的に除去する。このとき、エッチングされたp−GaN層5および、活性層4、n−GaN層3の一部の外周部の側面には、上述したマスクの形状に沿って凹凸形状(図17に示す側面凹凸形状部としての側面凹凸400)が形成される。また、この側面凹凸400の表面には、より微細な凹凸である微細凹凸部としての表面凹凸B200(図17参照)が同時に形成される。このような表面凹凸B200は、たとえばエッチング条件として半導体層の露出した表面を荒らすような条件によるドライエッチング条件を採用することで形成することができる。また、側面凹凸400は、サファイア基板1の主表面に対してその表面が傾斜した状態で形成される。これは、以下のような理由による。すなわち、上述のようなレジストや酸化シリコンなどの酸化膜を用いたマスクパターンの端部は、当該マスクパターンの中央部に比べて厚みが薄くなり、エッチングされやすい。そのため、エッチング工程において、マスクの端部はエッチングにより部分的に除去されて、p−GaN層5および、活性層4、n−GaN層3の一部の端部がエッチングされる。その結果、p−GaN層5および、活性層4、n−GaN層3の一部の端部側面にはテーパ部(側面凹凸400)が形成される。このテーパ部ができる過程においては、当該テーパ部の表面がエッチングに用いられたガス(エッチングガス)などに晒される。すなわち、テーパ部の表面もエッチングされることになる。このため、上述のようにエッチング条件として半導体層の表面を荒らすような条件を用いることで、側面凹凸400の表面に表面凹凸B200を形成することができる。なお、表面凹凸B200は、側面凹凸400の中でも、活性層4の側面上にも形成させることがさらに好ましい。このことにより、非常に光の取り出し効率が高い半導体発光素子を提供することが可能となる。
なお、側面凹凸400の表面は、図11や図12に示すように、サファイア基板1の主表面に対してほぼ直角に交差する構造であってもよいが、たとえば図17に示すように、サファイア基板1の主表面に対してやや傾斜した面であってもよい。側面凹凸400の表面がサファイア基板1の主表面に対して傾斜した構造である場合、その側面の表面と、サファイア基板の主表面とのなす角度であるテーパ角度は、70°以下であることが好ましく、65°以上70°以下であることがさらに好ましい。このように、半導体層の表面や側面に凹凸形状部を形成することで、半導体発光素子における光の取出し効率を向上させることができる。
また、エッチングにてメサ構造の側面凹凸を形成する工程(S80)の過程で、エッチングされる最下面にあたるn−GaN層3の表面は、エッチングガスに晒されるため、先のエッチングにて表面凹凸Cを形成する工程(S31)と同様に作用される。この結果、n−GaN層3の表面には、表面凹凸C300のような微細凹凸が形成される。これがエッチングにてメサ構造の表面凹凸Bを形成する工程(S81)である。なお、上述した表面凹凸A100、表面凹凸B200および表面凹凸C300の形状として、平面形状が多角形状の柱状体や平面形状が多角形の角錐体、あるいは平面形状が円形状の円錐体などであってもよい。また、表面凹凸A100、表面凹凸B200および表面凹凸C300の立体形状は、凹形状であっても凸形状であってもよい。以上のようにして、図16に示すような構造を得る。
なお、ここでも、エッチングのプロセス条件を調整することによって、表面凹凸B200が同時に形成されないようにまず側面凹凸400を形成し、別のエッチング条件を用いることにより、表面凹凸B200のみを後から形成させることもできる。この方法においても、表面凹凸B200は表面が荒れるような条件にて形成させてもよいが、後のエッチングの条件次第で、側面凹凸400の表面上に、より規則性や周期性を有するさらに微細な表面凹凸B200を、形成させることもできる。特に、表面凹凸B200は、10nm以上1000nm以下のサイズの凹凸形状であることが好ましい。その結果、発光した光をさらに効率よく外部に取り出すことが可能な半導体発光素子を製造することが可能となる。
次に、図13に示すように、n型側面凹凸のリソグラフィー工程(S90)を実施する。具体的には、半導体発光素子を個々のチップに分割するためのダイシングまたはスクライブを行なう部分を規定する溝をn−GaN層3の表面上に形成するためのマスクパターンを、フォトリソグラフィー法により形成する。なお、上述したマスクパターンを形成する、たとえばレジスト膜において、n−GaN層3の上述したスクライブまたはダイシング用の側面となる部分には、平面形状が凹凸形状の側面凹凸400を形成するためのマスクパターンが形成されている。
次に、図13に示すように、エッチングにてn型の側面凹凸を形成する工程(S100)および、エッチングにてn型の表面凹凸Bを形成する工程(S101)を同時に実施する。具体的には、上述の工程(S90)において形成したマスクパターンを有するたとえばレジスト膜をマスクとして用いて、n−GaN層3を部分的にエッチングにより除去する。このとき上述した溝の側壁部分においては、n−GaN層3の断面に凹凸形状が形成され、側面凹凸400が図12や図18に示すように形成される。なお、上述したエッチングとしてはドライエッチングを用いる。そして、このドライエッチングのプロセス条件を調整することによって、エッチング後のn−GaN層3の表面が荒れるような条件を用いることにより、形成される側面凹凸400の表面がさらに微細な凹凸を形成するようにエッチングされる。この結果、側面凹凸400の表面に、より微細な凹凸である表面微細凹凸部としての表面凹凸B200が形成される。このようにして、上述した工程(S100)と工程(S101)とを同時に実施することができる。この結果、図18に示すような構造を得る。なお、ここでも上述した工程と同様に、エッチングのプロセス条件次第で、まず側面凹凸400を形成し、別のエッチング条件を用いることにより、表面凹凸B200のみを後から形成させてもよい。
なお、上述した工程(S100)において得られる側面凹凸400についても、その表面は、サファイア基板1の主表面に対してほぼ直角に交差する構造であってもよいが、たとえば図18に示すように、サファイア基板1の主表面に対してやや傾斜した面であってもよい。側面凹凸400の表面がサファイア基板1の主表面に対して傾斜した構造である場合、その側面の表面と、サファイア基板の主表面とのなす角度であるテーパ角度は、70°以下であることが好ましく、65°以上70°以下であることがさらに好ましい。このように、半導体層の表面や側面に凹凸形状部を形成することで、半導体発光素子における光の取出し効率を向上させることができる。
次に、図13に示すように、p型パッド電極のリソグラフィー工程(S110)を実施する。具体的には、予め透光性電極6などの上部表面に、p型パッド電極7(図19参照)を形成するべき領域に開口パターンを有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜は、たとえばフォトリソグラフィー法を用いて形成する。
次に、図13に示すように、p型パッド電極を形成する工程(S120)を実施する。具体的には、上述したレジスト膜上にp型パッド電極7となるべき金属膜を蒸着法などによって形成する。このとき、レジスト膜の開口パターンの内部においては、透光性電極6の上部表面上に密着するように金属膜が形成される。その後、たとえば剥離液などの薬液を用いてレジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜の開口部内に形成された金属膜の部分を残して他のレジスト膜上に形成された金属膜をレジストとともに除去する(リフトオフ)。このようにして、図19に示すp型パッド電極7を形成することができる。
次に、図13に示すように、n型パッド電極のリソグラフィー工程(S111)を実施する。具体的には、予め凹部70内部などに、n型パッド電極8(図19参照)を形成するべき領域に開口パターンを有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜は、たとえばフォトリソグラフィー法を用いて形成する。その後、図13に示すように、n型パッド電極を形成する工程(S121)を実施する。具体的には、上述したレジスト膜上にn型パッド電極8となるべき金属膜を蒸着法などを用いて形成する。このとき、上述したレジスト膜の開口パターンの内部においては、凹部70の底壁において、n−GaN層3の表面に密着するように金属膜が形成される。(図19参照)その後、レジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜の開口部内に形成された金属膜の部分を残して他のレジスト膜上に形成された金属膜をレジストとともに除去する(リフトオフ)。このようにして、図19に示すn型パッド電極8を形成することができる。
なお、ここでp型パッド電極7およびn型パッド電極8を形成する工程を同時に行なってもよい。この場合には、n型パッド電極7とn型パッド電極8とをたとえばTi/Alなどのp−GaN層5と透光性電極6との両方にオーミックコンタクトを取ることが可能な材料により構成する。そして、上述したレジスト膜として、p型パッド電極7が形成されるべき領域とn型パッド電極8が形成されるべき領域との両方に開口パターンを有するレジスト膜を形成する。次に、当該レジスト膜の上から上述したような材料からなる膜を蒸着法などによって形成し、その後レジスト膜を除去する(リフトオフ)ことによってp型パッド電極7とn型パッド電極8とを同時に形成することができる。
その後、図13に示すように素子のチップ化を行なう工程(S130)を実施する。具体的には、上述した工程(S100)、工程(S101)において形成された溝において、レーザ、あるいはダイヤモンドペンでのスクライブもしくはブレードによるダイシングなど任意の方法を用いてサファイア基板1を溝(側面凹凸400が形成されたn−GaN層3の端部が側壁となる溝)に沿って切断することにより、半導体発光素子を個々のチップへと分割する。このようにして、図11および図12に示す、光の取出し効率が高められた半導体発光素子を得ることができる。
(実施の形態2)
図20は、本発明による半導体発光素子の実施の形態2を示す断面模式図である。図21は、図20に示した半導体発光素子の斜視模式図である。図20および図21を参照して、本発明による半導体発光素子の実施の形態2を説明する。なお、図20は半導体発光素子の断面構造を模式的に示しており、素子の表面や側面に形成された凹凸構造は図示されていない。
図20および図21に示した半導体発光素子は、支持基板14と、当該支持基板14上に積層して形成された半田層13、バリア金属層11、反射金属層10、pコンタクト金属層9と、p−GaN層5、活性層4、n−GaN層3、n型パッド電極8、および支持基板14の領域面側に形成された裏面電極15とから構成される。具体的には、支持基板14の上部表面上に半田層13が形成されている。半田層13上にバリア金属層11が形成されている。バリア金属層11上に反射金属層10が形成されている。反射金属層10上にpコンタクト金属層9が形成されている。pコンタクト金属層9上にp−GaN層5が形成されている。p−GaN層5上に活性層4が形成されている。活性層4上にn−GaN層3が形成されている。n−GaN層3の上部表面上にn型パッド電極8が形成されている。また、支持基板14の裏面側には、p型層側電極としての裏面電極15が形成されている。図20に示すように、半田層13上においては、バリア金属層11、反射金属層10、pコンタクト金属層9、p−GaN層5の一部を取囲むように誘電体層12が配置されている。
n−GaN層3の上部表面から誘電体層12に到達するまでの半導体層の外周部側面には側面凹凸400が形成されている。また、n−GaN層3の上部表面には、表面凹凸A100が形成されている。また、たとえば図21に一部を示すように側面凹凸400の表面には、側面凹凸400よりもさらに微細な表面凹凸B200が形成され、表面凹凸A100の表面には、表面凹凸A100よりもさらに微細な表面凹凸C300が形成されている。このように、半導体発光素子の表面に凹凸構造(表面凹凸A100、側面凹凸400、表面凹凸B200、表面凹凸C300)が形成されているため、光の取出し効率を向上させることができる。
図22は、図20および図21に示した半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。図23は、図22に示した半導体積層構造を形成する工程(S140)の内容を説明するためのフローチャートである。図24〜図29は、図22および図23に示した半導体発光素子の製造方法を説明するための断面模式図である。より具体的には、図24は、実施の形態2における半導体発光素子の製造過程において、工程(S140)のうちの工程(S141)を行なった後の状態を示す概略図である。また、図25は、実施の形態2における半導体発光素子の製造過程において、工程(S140)のうちの工程(S145)を行なった後の状態を示す概略図である。さらに、図26は、実施の形態2における半導体発光素子の製造過程において、工程(S140)を完了した後の状態を示す概略図である。また、図27は、実施の形態2における半導体発光素子の製造過程において、工程(S160)および工程(S161)を行なった後の状態を示す概略図である。さらに、図28は、実施の形態2における半導体発光素子の製造過程において、工程(S180)および工程(S181)を行なった後の状態を示す概略図である。最後に、図29は、実施の形態2における半導体発光素子の完成品の状態を示す概略図である。以上、図22〜図29を参照して、図20および図21に示した半導体発光素子の製造方法を説明する。
図20および図21に示した半導体装置の製造方法では、図22に示すように、まず半導体積層構造を形成する工程(S140)を実施する。この工程(S140)においては、具体的には図23に示すようにまず半導体層を成長させる工程(S141)を実施する。具体的にはサファイア基板1をまず準備する。そして、このサファイア基板1上に、窒化ガリウム(GaN)を主成分とするバッファ層2、n−GaN層3、活性層4、p−GaN層5を形成する。これらの層を形成する方法としては、たとえば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)を用いることができる。そして、金属層を成膜する工程(S142)を実施する。具体的には、p−GaN層5の上部表面上に図24に示すようにpコンタクト金属層9、反射金属層10、バリア金属層11を積層する。これらの金属層はたとえば蒸着法など任意の方法を用いて形成することができる。この結果、図24に示す構造を得る。ここで、pコンタクト金属層9としては、たとえば金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などの金属層を蒸着法により形成する。なお、このようなpコンタクト金属層9を蒸着した後、pコンタクト金属層9とp−GaN層5との密着性を向上させるためのアニール工程(熱処理工程)を行なう。また、反射金属層10としては、たとえばアルミニウム、銀、ニッケル、チタン、白金および金の中から選択される1つ以上の金属を含む層を形成する。また、バリア金属層11としては、上述した反射金属層10を保護するため、ニッケル、チタン、白金、モリブデン(Mo)、タングステン(W)からなる群から選択される少なくとも1つを含む層を形成する。
次に、図23に示すように、金属層およびp型層のリソグラフィー工程(S143)を実施する。具体的には、個々のチップとなる半導体発光素子の個々のチップの外周部に溝状のパターンが形成されたマスクパターンを形成する。当該マスクパターンとしてはたとえばレジスト膜や酸化シリコンなどの酸化膜などを用いることができる。
次に、図23に示すように、エッチングにて金属層およびp型層を除去する工程(S144)を実施する。具体的には、上述の工程(S143)において形成したマスクパターンを有するレジスト膜をマスクとして用いて、エッチングによりバリア金属層11、反射金属層10およびpコンタクト金属層9を部分的に除去する。そして、当該エッチングによって形成された溝の底部において露出するp−GaN層5を上述したマスクパターンをマスクとしてさらにドライエッチングによって部分的に除去する。このドライエッチングによって、p−GaN層5の厚み方向の途中までp−GaN層5がエッチングされる。
次に、図23に示すように、誘電体層を堆積する工程(S145)を実施する。具体的には、上述したエッチングによって形成された溝の内部を充填するように誘電体層が堆積される。誘電体層としてはたとえば酸化シリコンや窒化シリコンなどを用いることができる。この後、レジスト膜を除去し、形成された溝の内部のみに誘電体層12(図25参照)が形成された状態とする。このようにして、図25に示すような構造を得る。
次に、図23に示すように、半導体層を基板に貼り合わせる工程(S146)を実施する。具体的には、バリア金属層11上に半田層13(図26参照)を形成する。そして、この半田層上に支持基板14(図26参照)を配置する。なお、この半田層13としては、たとえばアルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、インジウム(In)、金(Au)、金スズ合金(AuSn)、金シリコン合金(AuSi)の中から選択される1つ以上の金属または合金を含む金属層を用いる。なお、この半田層13は、上述のようにバリア金属層11上に成膜してもよいが、支持基板14の表面にこの半田層13を成膜してもよい。具体的には、支持基板14の表面にこのような半田層13を先に形成しておいてもよい。
なお、上述した半田層13を用いることなく、支持基板14をバリア金属層11の表面上に直接形成してもよい。この場合、支持基板14をたとえばめっき法で形成してもよい。このようにめっき法を用いて支持基板14を形成する場合、支持基板を構成する材料を成膜するためのシード層として、金(Au)や、めっきによって形成される支持基板を構成する材料に含まれる金属を、バリア金属層11の表面上に先に成膜しておくことが好ましい。また、このように支持基板14をめっき法で形成する場合、支持基板14の厚みとしてはたとえば100μm程度としてもよい。このときの支持基板14の厚さは、上述した半導体層を支持できる厚みを確保できればよいため、たとえば50μm以上250μm以下の厚みとすることが好ましい。
次に、サファイアを除去する工程(S147)を実施する。具体的には、上述のように支持基板14に貼り合わされた半導体層からサファイア基板1を除去する。このようにして、図26に示すような構造を得る。すなわち、支持基板14上に半田層13、バリア金属層11、反射金属層10、pコンタクト金属層9、p−GaN層5、活性層4、n−GaN層3が順次積層された構造を得ることができる。このような構造は、後述するように上下電極型(表裏面電極型)半導体発光素子を構成することになる。
図23に示した工程(S141)〜工程(S147)を実施することにより、図22に示した半導体積層構造を形成する工程(S140)が実施される。次に、図22に示すように、n型表面凹凸のリソグラフィー工程(S150)を実施する。具体的には、n型層としてのn−GaN層3の上部表面が所定の凹凸形状となるよう、n−GaN層3の表面を部分的に除去するためのマスクパターンをフォトリソグラフィー法により形成する。このマスクパターンとしては、たとえばレジスト膜を予め形成し、当該レジスト膜に対してフォトリソグラフィー法を用いて所定のパターンを形成することにより当該マスクパターンを形成してもよい。あるいは酸化シリコンなどの酸化膜を、レジスト膜などをマスクとして用いたエッチングにより所定の平面形状とするように部分的に除去してマスクパターンを形成してもよい。
次に、図22に示すように、エッチングにて表面凹凸Aを形成する工程(S160)およびエッチングにて表面凹凸Cを形成する工程(S161)を同時に実施する。具体的には、上述の工程(S150)において形成したマスクパターンを有するレジスト膜をマスクとして用いて、エッチングによりn−GaN層3の上部表面を部分的に除去する。このとき、エッチングされたn−GaN層3の表面には、上述したマスクの形状に沿って凹凸形状(表面凹凸A100(図27参照))が形成される。また、このとき、上述の実施の形態1と同様に、エッチングとしてはドライエッチングを用いるが、そのドライエッチングのプロセス条件を調整することにより、表面凹凸A100の表面に、さらに微細な表面凹凸C300(図27参照)を形成する。このようにして、上述した工程(S160)と工程(S161)を同時に実施することができ、図27に示すような構造を得る。なお、ここでも上述したとおり、まず表面凹凸A100を形成し、後から表面凹凸C300を形成させてもよい。
次に、図22に示すように、側面凹凸のリソグラフィー工程(S170)を実施する。具体的には、予め形成されている誘電体層12の上の領域(すなわち半導体発光素子を分離するための格子状に形成されるダイシング領域)において、半導体層の側面に側面凹凸400(図28参照)が形成されるとともに、誘電体層12の上部表面の一部が露出するような溝を形成するためのマスクパターンを形成する。
次に、図22に示すように、エッチングにて側面凹凸を形成する工程(S180)、およびエッチングにて表面凹凸Bを形成する工程(S181)を同時に実施する。すなわち、上述の工程(S170)において形成したマスクパターンをマスクとして用いて、n−GaN層3、活性層4、およびp−GaN層5を誘電体層12が露出するまで部分的にエッチングにより除去する。このとき、上述したフォトレジストや酸化シリコンなどからなるマスクの端部は当該マスクの中央部に比べて厚みが薄くエッチングされやすくなっている。そのため、上述したエッチング工程においては、当該マスクの端部からその厚みが薄くなり、結果的に端部側からマスクがエッチングによってなくなっていく。このようにエッチングによってマスクが部分的になくなった部分では、エッチングにより上述した半導体層が徐々に除去され、傾斜部(テーパ部)が形成される。このような傾斜部が、マスク層の端部の平面形状に応じた凹凸部を形成し、側面凹凸400が形成される。また、このとき、半導体層の表面(側面凹凸400の表面)は、エッチングに用いられたガス(エッチングガス)に晒されるため、当該側面凹凸400の表面もエッチング条件を調整することでより微細な表面凹凸B200(図28参照)が同時に形成されることになる。このような表面凹凸B200は、たとえばスパイク状の突起部として構成される。なお、上述した誘電体層12は、上記エッチング工程のエッチストップ層として作用する。このようにして、図28に示したような構造を得る。なお、ここでも上述したとおり、まず側面凹凸400を形成し、後から表面凹凸B200を形成させてもよい。また、ここでも表面凹凸B200は、側面凹凸400の中でも、活性層4の側面上にも形成させることがさらに好ましい。このことにより、非常に光の取り出し効率が高い半導体発光素子を提供することが可能となる。
次に、n型パッド電極のリソグラフィー工程(S190)を実施する。具体的には、予めn−GaN層3の上部表面上に、n型パッド電極8(図29参照)を形成するべき領域に開口パターンを有するレジスト膜を形成する。このレジスト膜は、たとえばフォトリソグラフィー法を用いて形成する。その後、図22に示すように、n型パッド電極を形成する工程(S200)を実施する。具体的には、上述したレジスト膜上に、n型パッド電極8となるべき金属膜を蒸着法などを用いて形成する。その後、レジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜の開口部内に形成された金属膜の部分を残して他のレジスト膜上に形成された金属膜をレジストとともに除去する(リフトオフ)。このようにして、図18に示すn型パッド電極8を形成することができる。
次に、裏面電極を形成する工程(S210)を実施する。具体的には、支持基板14の裏面側(半田層13が形成されていない側の表面)に、図29に示すような裏面電極15を形成する。この裏面電極15としては、支持基板14と良好な電気的接続が可能な金属であれば任意の金属を用いることができる。このようにして、図29に示すような構造を得る。
次に、素子のチップ化を行なう工程(S220)を実施する。具体的には、誘電体層12が底壁において露出している溝部分を、レーザ、あるいはダイヤモンドペンでのスクライブ、あるいはダイヤモンドブレードなどによるダイシングによって切断する。この結果、個々の半導体発光素子となるチップが分離される。このようにして、図20および図21に示すような半導体発光素子を得ることができる。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2において、上述しなかった構成や条件などは全て本発明の実施の形態1に準ずる。
(実施の形態3)
上述した実施の形態1および実施の形態2においては、側面凹凸400や表面凹凸A100などを形成するためのマスクパターンを、フォトリソグラフィー法を用いて形成したが、この発明の実施の形態3においては当該マスクパターンを形成する手法としてナノインプリントリソグラフィー法を用いる。ここで再度、ナノインプリントリソグラフィー法を簡単に説明する。
図30〜図34は、ナノインプリントリソグラフィー法を説明するための模式図である。具体的には、図30は、ナノインプリント法において、レジストパターンを形成するためのモールドの金型面(レジスト膜に転写するための表面形状が形成された面)を模式的に示す平面模式図である。図31は、ナノインプリント法に用いるモールドを、水平方向から見た模式図である。図32は、モールドの表面形状をレジスト膜に転写する工程を説明するための模式図である。図33は、ナノインプリント法で形成された図32のレジスト膜をマスクとして用いたエッチング後の半導体層の上部表面を示す平面模式図である。図34は、図33の線分XXXIV−XXXIVにおける断面模式図である。図30〜図34を用いて、ナノインプリントリソグラフィー法を簡単に説明する。
図30および図31に示すように、ナノインプリントリソグラフィー法では、レジスト膜16の表面に立体的なパターンを転写するためのモールド30を用いる。このモールド30の金型面には、レジスト膜16の表面に転写されるべきパターンが形成されている。具体的には、図30および図31に示したモールド30においては、側面凹凸400(図34参照)を形成するための側面凹凸用パターン50および、当該側面凹凸用パターン50の表面に側面凹凸400よりもさらに微細な凹凸である表面凹凸B200(図34参照)を形成するための表面凹凸B用パターン51が形成されている。側面凹凸用パターン50は、図30に示すように形成されるレジスト膜16の外周部の平面形状を凹凸が連続した形状(ジグザグ型の外周部を有する形状)としている。また、側面凹凸用パターン50は、図31に示すようにその断面が、モールド30の中央部側から外周部側に向けて、パターンの深さが徐々に小さくなるような表面形状(パターンの転写されるレジストの均一な厚みの中央部から外周部に向けて徐々に厚みが薄くなるテーパ状となるような表面形状)となっている。また、当該側面凹凸用パターン50の表面に、より微細な凹凸である表面凹凸B用パターン51が形成されている。表面凹凸B用パターン51の形状は、平面形状が円形状であってもよいが、他の任意の形状であってもよい。
そして、このようなモールド30を、半導体層20の表面上に塗布されたレジスト膜16に押し当てる。そして、その状態で熱あるいは光(あるいはその他の紫外線などの放射線)によってレジストを硬化させる。そして、レジスト膜16が硬化した後モールド30をレジストから取外すことにより、図32に示すようにモールド30の表面形状が転写されその表面に側面凹凸用レジストパターン60および表面凹凸B用レジストパターン61が形成されたレジスト膜16を得ることができる。そして、このナノインプリントリソグラフィー法においては、モールド30における表面形状を任意に調整することにより、図31などに示すように三次元構造の表面形状を有するマスクとしてのレジスト膜16を得ることができる。そして、このナノインプリントリソグラフィー法においては、従来のフォトリソグラフィー法よりも微細なパターンを作製することができる。たとえば、このナノインプリントリソグラフィー法においては、幅が50nm程度のパターンを形成することが可能であり、実際には10nm以上1000nm以下のサイズのパターンを形成することができる。
また、モールド30として、たとえばシート状のモールドを用いる場合には、当該シート状のモールドがある程度の可撓性を有するようにすることによって、このモールド自体に、半導体層20の上部表面上に存在していた塵などの異物を吸着させることができる。また、モールド30がある程度の可撓性を有することにより、半導体層20が形成された基板の反りや、当該半導体層20の表面に既に形成されているパターンの形状などに沿ってモールド(モールド型)を曲げることによって、これらのパターンや基板の反りなどに沿ってマスクとしてのレジスト膜16を形成することができる。
そして、このように形成されたレジスト膜16をマスクとして用いて、半導体層20をエッチングすることにより、図33および図34に示すような構造を得ることができる。このとき、エッチングの条件として、レジスト膜16もある程度同時にエッチングにより除去されるようなエッチング条件を用いることにより、レジスト膜16の厚さに応じて半導体層20のエッチング時間を局所的に変更することができる。このため、図33および図34に示すように半導体層20の表面に三次元構造を形成することができる。このようにして、半導体層20の端部においては側面凹凸400を形成し、また同時に当該側面凹凸400の表面に表面凹凸B200を形成することができる。
このようにして、側面凹凸400と、当該側面凹凸400の表面に形成された、側面凹凸400よりもさらに微細な表面凹凸である表面凹凸B200を同時に形成することができる。また、ここでも表面凹凸B200は、側面凹凸400の中でも、活性層4(後述の図41〜図43参照)の側面上にも形成させることがさらに好ましい。このことにより、非常に光の取り出し効率が高い半導体発光素子を提供することが可能となる。
図35〜図39は、上述したナノインプリントリソグラフィー法を用いて側面凹凸400、表面凹凸B200に加えて半導体層20の上部表面上に形成される表面凹凸A100(図39参照)を同時に形成する方法を説明するための模式図である。具体的には、図35は用いられるモールドのパターン形成面を示す平面模式図である。図36は、当該モールドを、水平方向から見た模式図である。図37は、当該モールドを用いて表面形状をレジスト膜に転写する工程を説明するための模式図である。図38は、図36に示したエッジをマスクとして用いたエッチングにより形成された半導体層20の表面を示す平面模式図である。図39は、図38の線分XXXIX−XXXIXにおける断面模式図である。図35〜図39を参照して、上述したナノインプリントリソグラフィー法を説明する。
まず、図35および図36に示すようなモールド30を準備する。このモールド30は、基本的には図30および図31に示したモールド30と同様の構造を備えるが、モールド30に形成された転写パターンの中央部に表面凹凸A100(図39参照)を形成するための表面凹凸A用パターン52が形成されている点が異なっている。そして、このようなモールド30を図32において説明した方法と同様にレジストに押し当て、熱または光によって当該レジストを硬化させることにより、図37に示すような表面パターンを有するレジスト膜16を得ることができる。この形成されたレジスト膜16は、図32に示したレジスト膜16と基本的には同様の構造を備えるが、その上部表面に表面凹凸A用レジストパターン62が形成されている点が異なる。
そして、このようにして得られたレジスト膜16をマスクパターンとして用いて、エッチングにより半導体層20を部分的に除去することにより、図38および図39に示すような構造を得ることができる。図38および図39に示した半導体層20の表面構造は、基本的には図33および図34に示した半導体層の表面構造と同様であるが、その上部表面に表面凹凸A100が形成されている点が異なる。
上述した本発明の実施の形態3におけるナノインプリントリソグラフィー法は、図32および図37に示すように形成するレジスト膜16の膜厚を高精度で制御できる点が特徴である。すなわち、このようにレジスト膜16の厚みを局所的に制御することによって、エッチング後の半導体層20の表面形状を三次元において高い精度で制御することができる。つまり、上記のような方法を用いることの1つ目の効果としては、上述のようにモールド30のパターンを立体的に作製することが可能であるため、マスクとして作用するレジスト膜16の端部の厚みを正確に制御することができるという点である。このようにマスクとしてのレジスト膜16の端部の厚みを正確に制御することにより、エッチング後の半導体層20の端部における端面(傾斜面)の基板主表面に対する角度(テーパ角度)を高い精度で自由に設定することができる。また、たとえば図39などに示すように当該端部のテーパ角度を非常に小さくし、穏やかな傾斜面を形成することも可能となる。
また、上述の方法の2つ目の効果として、上記インプリントリソグラフィー法においては、モールド30を押し当ててレジスト膜16のパターンを形成するため、レジスト膜16の局所的な厚みを部分的に大きく変更することが可能である。このため、通常はエッチングの妨げとなるため排除することが好ましいレジスト残りを敢えて発生させることによって、エッチング後の半導体層20におけるエッチング量を局所的に大きく変更することができる。このため、エッチング量が異なるパターンを半導体層20の表面に1回のエッチングによって形成することができる。このため、図35〜図39に示すように、側面凹凸400が形成されるべき部分のレジスト膜16の厚みは相対的に薄くし、エッチング工程においてすべてレジスト膜16が除去されるような厚みとし、レジスト膜16の中央部において表面凹凸A100(図39参照)が形成されるべき部分では、レジスト膜16がエッチング完了後も残存するような膜厚に設定しておけば、エッチング量が大きく異なる側面凹凸400とさらに当該側面凹凸400の表面に形成される表面凹凸B200、および表面凹凸A100とを1回のエッチングによって形成することができる。このため、半導体発光素子の製造プロセス工程を短縮することができ、製造コストを低減することが可能になる。
なお、前述したように、実際には、レジスト膜16と半導体層20とのエッチングされる速度が異なるため、エッチングにより形成される半導体層20のテーパ角度と、モールド30の角度とは必ずしも一致しない。しかし、その場合においても、半導体層20は、モールド30の形状に対応してエッチングされる。
次に、上述したナノインプリントリソグラフィー法を用いた本発明の半導体発光素子の製造方法を説明する。図40は、本発明による半導体発光素子の実施の形態3の製造方法を説明するためのフローチャートである。図41〜図43は、図40に示した半導体発光素子の製造方法を説明するための模式図である。より具体的には、図41は、実施の形態3における半導体発光素子の製造過程において、工程(S250)を行なった後の状態を示す概略図である。図42は、実施の形態3における半導体発光素子の製造過程において、工程(S260)を行なった後の状態を示す概略図である。図43は、実施の形態3における半導体発光素子の完成品の状態を示す概略図である。図40〜図43を参照して、本発明による半導体発光素子の製造方法を説明する。なお、図40〜図43において示された製造方法によって得られる半導体発光素子は基本的には図20および図21に示した本発明の実施の形態2による半導体発光素子と同様の構造を備えている。
図40に示すように、本発明による半導体発光素子の実施の形態3の製造方法では、まず半導体積層構造を形成する工程(S230)を実施する。この半導体積層構造を形成する工程(S230)は、基本的には図22に示した半導体積層構造を形成する工程(S140)と同様の工程を実施する。
次に、積層構造上にレジストを塗布する工程(S240)を実施する。この工程では、具体的にはn−GaN層3(図26参照)の上部表面上にレジストを塗布する。
次に、レジストをパターニングする工程(S250)を実施する。この工程においては、具体的には図35〜図37に示すナノインプリントリソグラフィー法を用いて、モールド30(図35、図36参照)に形成されたパターンをレジスト膜16に転写する工程を行なう。この結果、図41に示すように、側面凹凸用レジストパターン60、表面凹凸B用レジストパターン61、および表面凹凸A用レジストパターン62が表面に形成されたレジスト膜16がn−GaN層3の上部表面上に配置される。次に、図40に示すように、エッチングを行なう工程(S260)を実施する。具体的には、上述したレジスト膜16をマスクとして用いて、半導体層としてのn−GaN層3などをエッチングによって部分的に除去する。この結果、図42に示すように、側面凹凸400、表面凹凸B200およびn−GaN層3の上部表面上に形成される表面凹凸A100を同時に形成することができる。この後、n−GaN層3の上部表面に残存しているレジスト膜16を除去する。
次に、n型パッド電極のリソグラフィー工程(S270)を実施する。この工程(S270)は、基本的には図22の工程(S190)における工程と同様の処理を行なう。
次に、n型パッド電極を形成する工程(S280)を実施する。この工程(S280)においては、図22の工程(S200)と同様の処理を行なう。
次に、裏面電極を形成する工程(S290)を実施する。この工程(S290)においては、図22の工程(S210)と同様の処理を実施する。
最後に、素子にチップ化を行なう工程(S300)を実施する。この工程(S300)においては、図22の工程(S220)と同様の処理を実施する。このようにして、上述した実施の形態2に比べて少ない工程数により、図43に示すような半導体発光素子を得ることができる。
ここで、上述したナノインプリントリソグラフィー法の具体的なプロセス条件を例示すれば、たとえば半導体層の表面にレジストを膜状に塗布した後、当該レジストに、ピッチが100nm、高さが100nm、直径が100nmのホール形状を有する石英製のモールドを押し当てる。そして、その状態で紫外線をレジストに照射することによって当該レジストを硬化する。レジストが硬化した後、石英製のモールドをレジストから取外すことにより、半導体層の上部表面上に、周期が100nm、高さが100nm、直径が100nmの円柱形状の凹凸形状部を形成することができる。このような凹凸形状部は、たとえば図37の表面凹凸B用レジストパターン61や表面凹凸A用レジストパターン62に適用することができる。また、上述した凹凸形状部の形状は一例であって、周期が50nm以上1000nm以下、高さが50nm以上3000nm以下、直径が50nm以上1000nm以下の円形や平面形状が三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形状の凸部を形成してもよい。また、モールドとしては、石英などの透光性を有する材料以外の材料を用いてもよい。この場合、たとえば金属を用いてモールドを形成した場合には、熱硬化性のレジストを用いることができる。また、モールドに形成された表面形状を一旦他のシートに転写し、当該シートをモールド型としてレジストに押し当てるといった方法を用いてもよい。
なお、上述した工程では、側面凹凸400、表面凹凸B200および表面凹凸A100を1回のエッチングによって形成したが、エッチング条件を調整することにより、表面凹凸A100の表面にさらに微細な凹凸形状部が形成されるようにしてもよい。この場合、表面凹凸A100の表面に、表面凹凸A100より小さな表面凹凸である表面凹凸C300(図27参照)を同時に形成するようにしてもよい。
また、ナノインプリントリソグラフィー法を用いて形成させる凹凸形状は、モールド30に形成させるパターンの形状に対応したものであるため、モールドの形状に応じて、上述のさらに微細な凹凸形状を、均一な形状で周期的に形成させることが可能となる。前述したエッチング条件を調整することにより表面凹凸A100の表面により小さな表面凹凸である表面凹凸C300を同時に形成する場合において、微細な凹凸形状(たとえば表面凹凸B200、表面凹凸C300)は、ランダムに形成されたもので形状は不規則となる。しかし、以下の方法により表面凹凸C300を同時に形成することも可能である。すなわち、あらかじめ図35および図36に示すモールド30に、さらに表面凹凸C300を形成させるためのパターンを形成させておく。このようなモールド30を上述の図32において説明した方法と同様にレジスト膜16に押し当て、熱または光によって当該レジスト膜16を硬化させる。(図32、図37参照)すると、エッチングにより半導体層20を部分的に除去することにより、半導体20には表面凹凸A100、表面凹凸B200、表面凹凸C300および側面凹凸400の4種類の凹凸全てを同時に形成することができる。このため、半導体発光素子の製造プロセス工程をさらに短縮することができ、さらに製造コストを低減することが可能になる。
また、表面凹凸B200、表面凹凸C300をモールド30で形成することにより、エッチング条件で不規則に形成される凹凸形状よりさらに微細な形状(100nm以下)を、幾何学的に均一な形状となるよう、周期的に形成することが可能となる。このため、さらに発光した光の取り出し効率の高い発光素子を提供することができる。以上の点においてのみ、本発明の実施の形態1ないし2と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3において、上述しなかった構成や条件などは全て本発明の実施の形態1ないし2に準ずる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 サファイア基板、2 バッファ層、3 n−GaN層、4 活性層、5 p−GaN層、6 透光性電極、7 p型パッド電極、8 n型パッド電極、9 pコンタクト金属層、10 反射金属層、11 バリア金属層、12 誘電体層、13 半田層、14 支持基板、15 裏面電極、16 レジスト膜、20 半導体層、30 モールド、50 側面凹凸用パターン、51 表面凹凸B用パターン、52 表面凹凸A用パターン、60 側面凹凸用レジストパターン、61 表面凹凸B用レジストパターン、62 表面凹凸A用レジストパターン、70 凹部、100 表面凹凸A、200 表面凹凸B、300 表面凹凸C、400 側面凹凸。