JP5427357B2 - 耐熱性スチレン系樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、これら耐熱性を高めたスチレンとメタアクリル酸との共重合体(SMAA)、スチレンと無水マレイン酸との共重合体(SMA)、スチレンと無水マレイミドとの共重合体等の極性官能基を含有するスチレン系共重合体は、高温下に曝されると極性基の副反応により高分子鎖の架橋反応が起こるため、1)架橋反応に起因するゲル様物質が生成し、樹脂の品質の低下が生ずることがある、2)架橋反応により樹脂の高粘度化がおこり成形加工性の低下を伴うため、生産性が低下する、3)上述したような架橋反応のため、樹脂の成形加工時に樹脂が変性しやすく、樹脂のリサイクル化、リユース化が難しいということがある等の問題点を有する。
しかし、極性官能基含有のスチレン系共重合体では、ガラス転移温度が上昇した分に見合うだけ、分解開始温度が上昇しないため成形加工温度範囲が狭くなり、その結果、生産性、品質の低下を招くという問題がある。
しかし、スチレンとα−メチルスチレンとの工業的製法の代表例であるラジカル溶液重合法により共重合を試みた場合、1)スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体の高分子量化が困難である、2)α−メチルスチレンの共重合体中の含有量を多くすることができず目的の耐熱性を得ることができない、3)溶融時の熱安定性が悪く成形加工条件によっては共重合体の熱分解が起こり、単量体成分の発生や分子量の低下を引き起こしやすい等多くの問題点があり、未だに工業的に利用された例は知られていない。
また、特許文献2には、スチレン、α−メチルスチレン、アニオン共重合体の濃度が常に一定となる様な連続式の反応器を使って重合する方法である連続アニオンリビング重合法により、スチレンとα−メチルスチレンとの共重合体を製造する方法が開示されている。
連続アニオンリビング重合法は、1)高分子量化が可能である、2)反応系内の濃度を一定に保つことができるため、共重合体中のα−メチルスチレンの含有量を多くすることができる、3)共重合体の主鎖に頭−頭結合や尾−尾結合等の不安定な結合が少なく、溶融時の熱安定性が向上するという利点を有する。
例えば、特許文献3には、活性金属含有のリビング重合体を含む重合溶液に、水、炭酸ガス、次いでフェノール系酸化防止剤の順でこれらの添加剤を加えた後に150〜250℃の範囲の温度で処理して溶媒を脱溶媒する方法が開示されている。
また、特許文献4には、活性リビング重合体を含む重合体溶液に、有機酸、安定剤又は安定剤と水などの重合停止剤とを添加した後に重合体溶液から溶媒を除去する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、活性リビング重合体の溶液に、重合停止剤として水、アルコール、無機酸又は有機酸を添加して反応を停止させてから、安定剤、非イオン性界面活性剤の順に添加しスチームストリッピングする方法が開示されている。
またさらに、特許文献6には、アニオンリビング重合体の重合体溶液に、アルコールと非イオン性界面活性剤とを加えた後に、安定剤を添加し、次いでスチームストリッピングにより脱溶媒する方法が開示されている。
[1]
下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、
炭素数4〜20のアルコール及び/又は炭素数5〜20のカルボン酸を用いて前記アニオン重合反応を停止させる工程と、を含む耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[2]
有機アルカリ金属化合物をアニオン重合開始剤として前記アニオン重合反応を行う、前記[1]に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[3]
脱揮工程をさらに含む、前記[1]又は[2]に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[4]
下記aとbのモル比がa/b=1/10〜1/1である前記アルコール及び/又は前記カルボン酸を用いる、
a:重合反応開始時に使用したアニオン重合開始剤量
b:重合反応停止時に使用した炭素数4〜20のアルコール及び/又は炭素数5〜20のカルボン酸の合計使用量
前記[1]〜[3]のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[5]
前記アニオン重合反応を脂肪族炭化水素系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒から選択される重合溶媒中で行う、前記[1]〜[4]の何れかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[6]
前記重合溶媒がシクロヘキサン及び/又はエチルベンゼンである、前記[5]に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
[7]
下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物であって、
[8]
DSCにより測定したガラス転移温度(Tg)が105℃〜140℃である、前記[7]に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
[9]
重量平均分子量Mwが13〜30万である、前記[7]又は[8]に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
[10]
前記アルカリ金属元素がリチウム金属元素を主体とする、前記[7]〜[9]のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
[11]
前記アルコールがオクタノール及び/又は2−エチルヘキサノールである、前記[7]〜[10]のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
[12]
前記カルボン酸がオクタデカン酸である、前記[7]〜[11]のいずれかに記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
本実施の形態の耐熱性スチレン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という場合もある。)の製造方法は、下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体(以下、単に「共重合体」という場合もある。)を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、
本実施の形態において、共重合体を主体とする樹脂組成物とは、重合単位(A)及び重合単位(B)を含む共重合体の樹脂組成物における含有比率が50質量%以上である樹脂組成物であることを意味する。
本実施の形態において、重合単位(A)とは、式(A)で示される重合単位を意味し、重合単位(B)とは、式(B)で示される重合単位を意味する。
アニオン重合法における重合開始剤として、例えば、有機アルカリ金属化合物が用いられる。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、アルキルリチウム、アリールリチウム、アルキルナトリウム、アリールナトリウム等があげられる。具体的なアニオン重合開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物や、ナフタレンナトリウム等の有機ナトリウム化合物などが用いられる。この中で好ましいアニオン重合開始剤はn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物である。
また、共重合体を分岐させる目的で多官能重合開始剤を使用することもできる。多官能重合開始剤としては、例えば、有機ジリチウム金属化合物等があげられる。
重合溶媒は、前記脂肪族炭化水素系溶媒又は芳香族炭化水素系溶媒を主成分として用いることもでき、1種類の単独溶媒又は2種類以上の混合溶媒として用いてもよい。ここでいう重合溶媒の主成分とは、全重合溶媒量に対して、脂肪族炭化水素系溶媒又は芳香族系炭化水素系溶媒が50質量%以上を占める場合である。
共重合体中の重合単位(B)の含有比率を1.8〜60モル%の範囲内にすることできれば、原料溶液における単量体の比率は制限されるものではないが、例えば、スチレンとα−メチルスチレンとをスチレン/α−メチルスチレン=95/5〜5/95の比で用いることが好ましく、より好ましくはスチレン/α−メチルスチレン=90/10〜10/90である。
また、単量体と重合溶媒は、反応器の手前であらかじめ混合して反応器に導入してもよく、別々に反応器に導入し反応器内で混合してもよい。
反応器の内部構造も特に限定はされないが、混合性をよくするためにバッフルを備え付けていることが好ましい。反応器内に満たされる重合溶液量は、攪拌機による攪拌効果が発現する液量があればよく、反応器容積の5%〜100%の充填量が好ましい。
スチレン及びα−メチルスチレンと共重合する他の単量体としては、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン系単量体、ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等のアクリル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。
さらに、本実施の形態における樹脂組成物の性質を損なわない範囲で、末端に官能基を導入した共重合体を製造することができる。また、共重合体の末端をカップリングさせ分岐共重合体として製造することもできる。このような操作は、必要と目的に応じて、重合反応と同時に、重合反応後又は重合停止反応の前に行うこともでき、重合停止反応と同時に行うこともできる。
共重合可能な単量体や末端の官能基の共重合体における含有比率としては、重合後の共重合体に対して10質量%以下が好ましい。
炭素数4以上のアルコールを重合停止剤として用いる場合は、重合停止後の脱揮工程で、アルカリ金属アルコキサイドが、脱揮装置に付着しにくくなるため、脱揮装置の汚染を防止することができる。また、樹脂組成物を熱水又はスチームで処理した場合の樹脂組成物の白化現象を防ぐことができる。
炭素数20以下のアルコールを用いる場合は、アルコールの分子量が過大ではないため、適切な質量のアルコールで重合反応を停止させることができる。また、過剰のアルコールが樹脂内に残留しても樹脂組成物の強度、流動性等の物性に影響を与えることが少ない。
炭素数5以上のカルボン酸を重合停止剤として用いる場合は、重合停止後の脱揮工程で、カルボン酸のアルカリ金属塩が、脱揮装置に付着しにくくなるため、脱揮装置の汚染を防止することができる。また、樹脂組成物を熱水、又はスチームで処理する場合の樹脂組成物の白化現象を防ぐことができる。
炭素数20以下のカルボン酸を用いる場合は、カルボン酸の分子量が過大ではないため、適切な質量のカルボン酸で重合を停止させることができる。また、過剰のカルボン酸が樹脂内に残留して樹脂組成物の強度、流動性等の物性に影響を与えることが少ない。
重合停止剤の添加量がa/b=1/1以下であれば、アニオン重合反応の停止に十分な量であり、共重合体のリビング末端由来の着色を防止することができる。この結果、共重合体ひいては共重合体を主体とする樹脂組成物の著しい着色や、着色した共重合体に由来する装置の汚染等も防止することができる。
また、添加量がa/b=1/10以上の場合は、残存する重合停止剤の樹脂組成物の強度、流動性等の物性への影響は起こりにくい。
減圧加熱脱揮法として具体的には、例えば、減圧下のタンクにフラッシュさせる方法及び/又は押出機やニーダーを用いて減圧下のベント口から加熱蒸発脱揮させる方法等が好ましく利用できる。溶媒の揮発性にもよるが、一般には温度を180〜300℃、減圧度を0.1MPa以下に制御して残存する単量体や溶媒等の揮発性成分を脱揮除去させる。
また、減圧加熱脱揮装置を直列に接続し、2段以上に並べる方法も効果的である。また、1段目と2段目の間に水を添加して2段目の単量体及び溶媒の揮発能力を高める方法も利用できる。フラッシュタンクで揮発成分の除去後、残余の揮発成分を除去するため、さらにベント付き押出機又はニーダーを用いることもできる。単量体及び溶媒を除去された樹脂組成物は公知の方法でペレット状に仕上げることができる。
本実施の形態の耐熱性スチレン系樹脂組成物は、下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物であって、
重合単位(B)の含有比率(モル%)=重合単位(B)のモル数/[重合単位(A)のモル数+重合単位(B)のモル数]X100
具体的には、共重合体の1H−NMRを測定し、重合単位(B)のメチル基と重合単位(A)のメチレン、メチンのピーク面積比から計算でモル比を求めることができる。
また、共重合体の性質を損なわない範囲で、スチレン及びα−メチルスチレンと共重合可能な他の単量体を共重合させてもよく、共重合体末端に官能基を導入してもよい。共重合可能な単量体としては、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のスチレン系単量体、ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等のアクリル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等があげられる。共重合体の末端に導入できる官能基としては、水酸基、カルボキシル基、シリル基、カルボニル基等があげられる。
共重合可能な単量体や末端の官能基の含有比率としては、重合後の共重合体において10質量%以下であることが好ましい。
炭素数4以上のアルコールであれば、脱揮の汚染や樹脂組成物内への異物の混入が防止でき、また、熱水白化やスチーム白化の防止効果が十分に発揮される。炭素数20以下のアルコールであれば、樹脂組成物の強度、流動性等の物性へ与える影響を抑制できる。
炭素数5以上のカルボン酸であれば、脱揮の汚染や樹脂組成物内への異物の混入を防ぎ、また、熱水白化やスチーム白化を防止することができる。炭素数20以下のカルボン酸であれば、樹脂組成物の強度、流動性等の物性に与える影響を抑制できる。
本実施の形態における樹脂組成物中のアルコール及び/又はカルボン酸の含有量は、樹脂組成物に対して炭素数4〜20のアルコール及び/又は炭素数5〜20のカルボン酸の合計量として0.005〜2質量%である。好ましくは0.005〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.005〜0.6質量%である。樹脂組成物中の含有量が0.005質量%以上であれば、樹脂組成物を成形体とする際に成形体に悪影響を与えることが少なく、また、樹脂組成物中の含有量が2質量%以下であれば、樹脂組成物の流動性等の影響を抑制することができる。
さらに好ましくは、リチウムオクトキシド、リチウム−2−エチルヘキソキシド、リチウムノノキシド、リチウムデコキシド、リチウムウンデコキシド、リチウムドデコキシド、リチウムトリデコキシド、リチウムテトラデコキシド、リチウムペンタデコキシド、リチウムヘキサデコキシド、リチウムヘプタデコキシド、リチウムオクタデコキシド、オクタン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ノナン酸リチウム、デカン酸リチウム、ウンデカン酸リチウム、ドデカン酸リチウム、トリデカン酸リチウム、テトラデカン酸リチウム、ペンタデカン酸リチウム、ヘキサデカン酸リチウム、ヘプタデカン酸リチウム、オクタデカン酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウムが、特に好ましくはリチウムオクトキシド、リチウム−2−エチルヘキソキシド、オクタデカン酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム等があげられる。
本実施の形態における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって求めた値のことである。
本実施の形態におけるMwが13万以上であれば構造材料として利用する場合の十分な強度を得ることができ、Mwが30万以下では樹脂組成物の成形時に必要な流動性を保つことができる。
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は好ましくは、Mw/Mnが1.8〜2.5、より好ましくは、Mw/Mnが1.9〜2.3である。
本実施の形態における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって求めた値のことである。
Mw/Mnが1.8以上であれば、樹脂組成物の流動性と機械物性のバランスを保つことができ、成形体として十分な性能を出すことができる。Mw/Mnが2.5以下であれば、樹脂組成物の成形時に必要な流動特性を得ることができる。
前記添加物としては、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、耐候剤、UV吸収剤などがあげられる。
具体的には、一次酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリストールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ3,5−ジ−t―ペンチルフェニル)]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,2H,3H)−トリオン、1,1,4−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等の2,4,5−又は2,4,6−3置換フェノール類があげられる。
また、二次酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などがあげられ、耐候剤としてはヒンダードアミン系安定剤などがあげられる。
また、その他、ミネラルオイル等の可塑剤、長鎖脂肪族カルボン酸及び/又はその金属塩等の滑剤、着色性改良としての有機染料、有機顔料を添加することも可能である。着色性改良用のアンスラキノン系の有機染料は、共重合体の熱安定性を損なうことが少ないためより好ましい。シリコーン系、フッ素系の離型剤、帯電防止剤などもスチレン系樹脂で利用されている公知の技術をそのまま応用して添加することができる。
これらの添加物は、重合が完結した後の共重合体溶液の中に添加して混合するか又は樹脂組成物を回収後、押出機を使って溶融混合することができる。
実施例、比較例で用いた分析方法及び評価方法は以下のとおりである。
(1)分子量(Mn、Mw、Mw/Mn)
カラム(TSKgel GMHXL、40℃)を2本接続し、RI検出器が取り付けてあるGPC装置(東ソー社製HLC−8020)で測定した。2%のエタノールを含有したクロロホルムを移動相に用いた。分子量の計算は、ポリスチレンスタンダード(東ソー社製)を使って検量線を作成し、ポリスチレン換算にて行った。
(2)ガラス転移温度(Tg)
0.1gの樹脂組成物を5gのトルエンに溶解し、その溶液を20mlのメタノール中に0.2ml/secの速度で滴下した。沈殿物をろ過して回収した。この操作を2回繰り返し、得られた樹脂組成物を風乾後、160℃、真空下で1時間乾燥した。得られた樹脂組成物のTgをパーキンエルマー社製のDSC−7を使って、JIS K7121に準拠して求めた。
具体的には、窒素下、10℃/minで室温から200℃まで昇温し、その後10℃/minで室温まで戻し、再び10℃/minで200℃まで昇温した。2度目の昇温過程で測定されるガラス転移温度をTgとした。
(3)共重合体中の重合単位(B)の含有比率
BRUKER社製のNMR(DPX−400)を使って求めた。共重合体の1H−NMRを測定し、メチル、メチレン、メチンのピーク面積比から計算で求めた。
(4)樹脂組成物中のリチウムの定量
樹脂組成物をH2SO4で処理し灰化した後、ICP−MSを用いて測定を行った。
(5)樹脂組成物中のアルコールの定量
島津製作所社製のGC−MSを使って以下の条件で測定した。
機器:GC−2010、MS−QP2010、ヘッドスペースサンプラー付き
カラム:Rtx−1、0.25mm、1.00μm、60m(島津ジーエルシー社製)
温度条件:60℃で2分保持後10℃/分で145℃まで昇温、その後3℃/分で160℃まで昇温した。
測定サンプルの作製:樹脂組成物0.4gを専用バイアル瓶に入れ、DMF10mlと内部標準(n−ノナン)の入ったクロロホルムを1ml加えて密栓して試料を溶解後測定した。
(6)樹脂組成物中のカルボン酸の定量
樹脂組成物を、所定量のトルエンに溶解後、所定量のメタノール中で再沈した。再沈したメタノール中のカルボン酸を液体クロマトグラフィーで定量した。
〈原料〉
スチレン(St:旭化成ケミカルズ社製)とα−メチルスチレン(αMeSt:三井化学社製)とエチルベンゼン(EB:丸善石油化学社製)をSt/αMeSt/EB=22.5/30/47.5(質量%)の比率で混合した溶液を貯蔵タンクに溜め、窒素バブリングした。その後、溶液を、活性アルミナ(住友化学社製KHD−24)を充填した5L容積の精製塔内を通過させて、重合禁止剤であるt−ブチルカテコールを除去した。
〈重合開始剤〉
n−ブチルリチウム(15質量%のn−ヘキサン溶液、和光純薬社製)を1/26倍にエチルベンゼンで希釈した。
〈重合停止剤〉
2−エチル−1−ヘキサノール(特級、和光純薬社製)を3質量%の濃度になる様にエチルベンゼンで希釈した溶液を作製した。
〈樹脂組成物の製造方法〉
重合反応器は、攪拌翼と原料導入ノズル、重合開始剤導入ノズルと重合溶液排出ノズルが付いたジャケット付11Lの反応器(R1)を用いた。重合反応器内の重合溶液の容量は、常に10Lとなる様に制御した。内温を反応器出口で75℃に制御した。攪拌翼の回転数は310rpmとした。重合反応器の原料導入ノズルと重合溶液排出ノズルにはギアポンプを取り付け、原料及び重合溶液を6.2L/Hrの一定流量で流せる様に制御した。また、重合開始剤の溶液は、0.196L/Hrで重合反応器内へ導入した。重合反応器から排出されたリビングポリマーの溶液は、さらにギアポンプで10mm径の配管を通じて重合停止剤の溶液の導入口まで導いた。反応器から重合停止剤混合点までの配管の長さは約2m、配管は80℃で保温した。重合停止剤溶液は、0.18kg/Hrでの流速で重合反応液内に導入し(a/b=1/4)、その後は、1.2L容量のスタティックミキサーを経て完全に重合反応を停止させた。次いで、樹脂組成物溶液は予熱器で260℃まで加熱し、その後50kPaの減圧下、設定260℃に加温した約70Lの1段目のフラッシュタンク内へフラッシングし、溶媒と未反応単量体を樹脂組成物から分離、回収した。この時点での樹脂組成物中の残存揮発分(未反応単量体のStとαMeSt及び重合溶媒のEB)は0.5〜2%であった。さらにこの樹脂組成物を0.5kPaの減圧下、設定260℃に加温した約70Lの2段目のフラッシュタンクへフラッシングし、樹脂組成物中の揮発分が300ppm未満になるまで、重合溶媒と未反応単量体を除去した。樹脂組成物のタンク内の滞留時間は、1基あたり約20〜30分であった。十分に揮発成分が除去された樹脂組成物は、その後、ストランド状に排出し水中下で冷却後、カッターでペレタイズ化し樹脂組成物を回収した。
得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。1H−NMRによる共重合体中の重合単位の組成は、重合単位(A)が54モル%、重合単位(B)が46モル%であった。
樹脂組成物中の2−エチルヘキサノールは0.10質量%、リチウム金属元素量は27ppmであった。
重合装置(重合反応器、フラッシュタンク)における運転は、前記条件で2週間おこなった。運転中、フラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓を確認したが、窓に曇り及び付着物等は確認できなかった。運転後フラッシュタンク内をオープンし、目視及びファイバースコープで内部を確認したところ、フラッシュタンク内に付着物は確認できなかった。
実施例1と同様の条件でアニオン重合反応を行い、重合反応を停止させた。その後、1段目のフラッシュタンクの圧力を130kPaに代えた以外は実施例1と同様の条件で溶媒と未反応単量体を樹脂組成物から分離・回収した。
得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。1H−NMRによる共重合体中の重合単位の組成は、重合単位(A)が54モル%、重合単位(B)が46モル%であった。
樹脂組成物中の2−エチルヘキサノールは0.15質量%、リチウム金属元素量は27ppmであった。
フラッシュタンクの曇り度やフラッシュタンク内面は実施例1と同じように観察したが、曇り等は確認できなかった。
実施例1と同じ条件でアニオン重合反応を行い、重合停止剤をオクタデカン酸(a/b=1/4)に代えて、それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を停止させた。オクタデカン酸(特級、和光純薬社製)は1質量%の濃度になる様にエチルベンゼンで希釈した溶液を作製した。得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。1H−NMRによる共重合体中の重合単位の組成は、重合単位(A)が54モル%、重合単位(B)が46モル%であった。樹脂組成物中のオクタデカン酸は0.2質量%、リチウム金属元素量は27ppmであった。
フラッシュタンクの曇り度やフラッシュタンク内面は実施例1と同じように観察したが、曇り等は確認できなかった。
実施例1の樹脂組成物を射出成形機(東芝機械 IS−55EPN)にて板状の成形体(厚さ1mm/2mm/2.5mmの3段)に成形した。射出条件は、シリンダ温度はホッパー下から順に、210℃,230℃,250℃,250℃、金型温度60℃、射出圧47kg/cm2、保圧44kg/cm2、背圧10kg/cm2、成形サイクルは、充填1.2秒、保圧10秒、冷却15秒で行った。この成形体を蒸気滅菌器にいれ、120℃で60分処理した、処理後、成形体を目視で曇りがあるかどうか確認したところ、厚み2.5mmの部分において曇り、濁り等は確認できなかった。さらに成形体を背景紙の上に置き、背景紙の文字が明確に見えるかどうか目視で確認したところ厚み2.5mmの部分において背景紙の文字は明確に見えることを確認した。
実施例3の樹脂組成物を射出成形機(東芝機械 IS−55EPN)にて板状の成形体(厚さ1mm/2mm/2.5mmの3段)に成形した。射出条件は、シリンダ温度はホッパー下から順に、210℃,230℃,250℃,250℃、金型温度60℃、射出圧47kg/cm2、保圧44kg/cm2、背圧10kg/cm2、成形サイクルは、充填1.2秒、保圧10秒、冷却15秒で行った。この成形体を蒸気滅菌器にいれ、120℃で60分処理した、処理後、成形体を目視で曇りがあるかどうか確認したところ、厚み2.5mmの部分において曇り、濁り等は確認できなかった。さらに成形体を背景紙の上に置き、背景紙の文字が明確に見えるかどうか目視で確認したところ厚み2.5mmの部分において背景紙の文字は明確に見えることを確認した。
実施例1と同様の条件でアニオン重合反応を行い、重合停止剤をエタノールに代えて、それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を停止させた。エタノール(特級、和光純薬社製)は6質量%の濃度になる様にエチルベンゼンで希釈した溶液を用いた(a/b=1/20)。重合後の樹脂組成物液をフラッシュタンクにフラッシング直後からフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓が曇り始め、30分後にはフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓は完全に白色物に覆われフラッシュタンク内部の確認は不可能となった。得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。
1週間運転後フラッシュタンク内部を開け、目視で確認を行ったところ、フラッシュタンク上面及び側面全体に白色の異物が付着していることが確認できた。
実施例1と同様の条件でアニオン重合反応を行い、重合停止剤をイソプロパノールに代えて、それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を停止させた。イソプロパノール(特級、和光純薬社製)は6質量%の濃度になる様にエチルベンゼンで希釈した溶液を用いた(a/b=1/10)。重合後の樹脂組成物液をフラッシュタンクにフラッシング直後からフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓が曇り始め、30分後にはフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓は完全に白色物に覆われフラッシュタンク内部の確認は不可能となった。得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。
1週間運転後フラッシュタンク内部を開け、目視で確認を行ったところ、フラッシュタンク上面及び側面全体に白色の異物が付着していることが確認できた。
実施例1と同様の条件でアニオン重合反応を行い、重合停止剤をグリセリンに代えて、それ以外は実施例1と同様の条件で重合反応を停止させた。グリセリン(特級、和光純薬社製)は6質量%の濃度になる様にエチルベンゼンで希釈した溶液を用いた(a/b=1/4)。重合後の樹脂組成物液をフラッシュタンクにフラッシング直後からフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓が曇り始め、30分後にはフラッシュタンク側面のガラス製ののぞき窓は完全に白色物に覆われフラッシュタンク内部の確認は不可能となった。得られた樹脂組成物の重量平均分子量Mwは18.5万、Mw/Mnは2.0、Tgは130℃であった。
1週間運転後フラッシュタンク内部を開け、目視で確認を行ったところ、フラッシュタンク上面及び側面全体に白色の異物が付着していることが確認できた。
比較例1の樹脂組成物を実施例4と同様の条件で成形した。この成形体を蒸気滅菌器にいれ、120℃で60分処理した、処理後、成形体を目視で確認したところ、すべての厚みの部分で表面全体が白色に濁っていることが確認された。さらに成形体を背景紙の上に置き、背景紙の文字が明確に見えるかどうか目視で確認したところ、文字として読み取れはするものの、厚み1mmの部分においても濁りのため背景紙の文字は明確には見えなかった。
比較例2の樹脂組成物を実施例4と同様の条件で成形した。この成形体を蒸気滅菌器にいれ、120℃で60分処理した、処理後、成形体を目視で確認したところ、すべての厚みの部分で表面全体が白色に濁っていることが確認された。さらに成形体を背景紙の上に置き、背景紙の文字が明確に見えるかどうか目視で確認したところ、文字として読み取れはするものの、厚み1mmの部分においても濁りのため背景紙の文字は明確には見えなかった。
比較例3の樹脂組成物を実施例4と同様の条件で成形した。この成形体を蒸気滅菌器にいれ、120℃で60分処理した、処理後、成形体を目視で確認したところ、すべての厚みの部分で表面全体が白色に濁っていることが確認された。さらに成形体を背景紙の上に置き、背景紙の文字が明確に見えるかどうか目視で確認したところ、文字として読み取れはするものの、厚み1mmの部分においても濁りのため背景紙の文字は明確には見えなかった。
Claims (11)
- 下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法であって、
炭素数4〜20のアルコールを用いて前記アニオン重合反応を停止させる工程と、を含む耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。 - 有機アルカリ金属化合物をアニオン重合開始剤として前記アニオン重合反応を行う、請
求項1に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。 - 脱揮工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。
- 下記aとbのモル比がa/b=1/10〜1/1である前記アルコールを用いる、
a:重合反応開始時に使用したアニオン重合開始剤量
b:重合反応停止時に使用した炭素数4〜20のアルコールの合計使用量
請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。 - 前記アニオン重合反応を脂肪族炭化水素系溶媒及び芳香族炭化水素系溶媒から選択され
る重合溶媒中で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物
の製造方法。 - 前記重合溶媒がシクロヘキサン及び/又はエチルベンゼンである、請求項5に記載の耐
熱性スチレン系樹脂組成物の製造方法。 - 下記重合単位(A)及び重合単位(B)を含み、前記重合単位(B)の含有比率が1.8〜60モル%である共重合体を主体とする耐熱性スチレン系樹脂組成物であって、
- DSCにより測定したガラス転移温度(Tg)が105℃〜140℃である、請求項7
に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。 - 重量平均分子量Mwが13〜30万である、請求項7又は8に記載の耐熱性スチレン系
樹脂組成物。 - 前記アルカリ金属元素がリチウム金属元素を主体とする、請求項7〜9のいずれか一項
に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。 - 前記アルコールがオクタノール及び/又は2−エチルヘキサノールである、請求項7〜
10のいずれか一項に記載の耐熱性スチレン系樹脂組成物。
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