JP5425324B2 - 駆動装置 - Google Patents
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Description
ギアユニットは次の構成を有している。ギアユニットは、内歯部材とキャリアと複数のインプットシャフト(クランクシャフト)と被駆動部材(外歯歯車)を備えている。内歯部材は、内周に内歯歯車が形成されている。キャリアは、内歯歯車の軸線と同軸に配置されており、内歯部材に回転可能に支持されている。クランクシャフトは、内歯部材の軸線に沿って伸びているとともにキャリアに回転可能に支持されている。クランクシャフトには偏心体が固定されている。偏心体の回転軸線は、クランクシャフトの軸線からオフセットしている。被駆動部材の外歯(外歯歯車)は、内歯歯車と噛み合っている。外歯歯車の周方向には複数の貫通孔が形成されており、それらの貫通孔に夫々偏心体が嵌合している。そのため、外歯歯車は、クランクシャフトの回転に伴って内歯歯車の軸線周りを偏心回転する。このように偏心回転する外歯歯車とその外歯歯車に噛み合う内歯歯車によって減速比を得るギアユニットは、偏心揺動型のギアユニットと呼ばれることがある。
特許文献1の駆動装置では、複数のモータの夫々の回転軸が、クランクシャフトに係合されている。また、複数のモータの夫々のステータが、ギアユニットのキャリアに固定されている。複数のモータの回転軸が外歯歯車に係合している。夫々のモータが出力するトルクの合力によって被駆動部材(外歯歯車)が駆動される。
複数のモータを備える駆動装置では、出力が十分に大きいモータドライバを用意すれば、ひとつのモータドライバで複数のモータを制御することができる。ひとつのモータドライバで複数のモータを制御するには、複数のモータを電気的に並列、あるいは直列に接続すればよい。
ひとつのモータドライバで複数のモータを制御する場合、全てのモータに同位相の電流が流れる。他方、各モータのロータは、被駆動部材(外歯歯車)を介して連動して回転する。すなわち、夫々のモータの回転軸は、他のモータから独立して個別に回転することができない。ひとつのモータのロータ回転角が決まると、残りのモータのロータ回転角が決まる関係にある。すなわち、ひとつのモータのロータとステータの機械的な位相角が決まると、残りのモータのロータとステータの位相角が決まる関係にある。ロータとステータの機械的な位相角が揃っていない複数のモータに同位相の電流を流すと、モータの出力トルクに差が生じてしまう。その結果、夫々のモータの回転軸(出力軸)から外歯歯車に加えられるトルクに偏りが生じてしまう。
本発明は、上記の課題に対策するものであり、複数のモータを備えていながらひとつのモータドライバで制御するのに適している駆動装置を提供する。
本発明の駆動装置は、モータをギアユニットに取り付け、被駆動部材と複数のインプットシャフトの係合を維持しながら、各モータのロータとステータの位相角を個別に調整可能な調整機構を設ける。従来の駆動装置では、複数のモータをひとつのモータドライバで制御することがなかったため、各モータのロータとステータの位相角を個別に調整可能な調整機構を採用する必要がなかった。本発明の駆動装置は、従来は必要とされていなかった調整機構をあえて採用する。従来は採用されない構造をあえて採用することによって、複数のモータを備えていながらひとつのモータドライバで制御するのに適している駆動装置を実現する。
調整機構は、典型的には、2つの部材の相対的な回転を許容したり、禁止できる継ぎ手でよい。そのような継ぎ手を、インプットシャフトと回転軸の間、回転軸とロータの間、モータのケースとギアユニットの間、あるいは、モータのケースとステータの間に嵌挿すればよい。
さらに具体的には、調整機構は次のとおりである。モータの回転軸とロータが回転自由に嵌合している。回転軸とロータには、双方に跨る固定部材を取り付けることができる。固定部材なしでは、ロータは回転軸に対して回転自在となる。モータの回転軸がインプットシャフトに係合していても、ロータは自由に回転できるので、ロータとステータの位相角を自由に調整することができる。調整が終了したのちに、固定部材を固定すれば、ロータは回転軸に固定される。より具体的には、固定部材に、周方向に沿って伸びる長円形の貫通孔を設ける。固定部材をロータと回転軸のいずれか一方に回転不能に取り付け、固定部材の貫通孔にボルトを通して、固定部材と他方を固定する。ボルトを緩めれば、ロータあるいは回転軸は、貫通孔の周方向長さ分だけ回転することができる。このような調整機構は、モータケースとステータの間に設けても良い。調整機構には、様々な構成が考え得る。
調整機構を設けることによって、上記の駆動装置は、ギアユニットにモータを取り付け、被駆動部材と複数のインプットシャフトの係合を維持しながら、ロータとステータの位相角を個別に調整して位相を揃えることができる。すなわち、調整機構によって、ロータとステータの位相角を個別に調整して位相を揃えることができる。
各モータのロータは、夫々クランクシャフトに係合している。各モータのステータは、キャリアに固定されている。なお、「ロータとクランクシャフトの係合」として、クランクシャフトがモータの回転軸を兼ねている形態、クランクシャフトにモータの回転軸が同軸に固定されている形態、あるいは、各モータの回転軸とクランクシャフトが歯車等を介して連動する形態等が挙げられる。
本発明の駆動装置は、複数のモータの全てが、ひとつのモータドライバで制御されるのに好適である。
この製造方法は、次の工程を備えている。
(1)ギアユニットと複数のモータを用意する第1工程
(2)各モータに同位相の電流を印加して、ロータとステータの位相角を揃える第2工程
(3)ギアユニットにモータを固定する第3工程
ここで、ギアユニットは、被駆動部材と、その被駆動部材に係合する複数のインプットシャフトを備えている。
上記第2工程において、各モータのステータとロータは、永久磁石と電磁石の相互作用によって相対的に回転する。ロータとステータの相対回転は磁力がバランスする位置で静止する。全てのモータに同じ位相の電流を印加しているので、全てのモータでロータとステータの位相が同じ位置で静止する。すなわち、全てのモータで位相角を揃えることができる。その状態で、ギアユニットにモータを固定する(第3工程)。
上記の製造方法では、磁力によってロータとステータの位相角を全てのモータで揃える。複数のモータのロータとステータの位相角を簡単に同時に揃えることができる。
・第2工程に先立って、モータのロータをインプットシャフトに回転自在に連結するとともに、モータのステータをギアユニットに固定する仮止め工程を実施する。このとき、第3工程では、モータのロータをインプットシャフトに係合すればよい。
・第2工程に先立って、モータのロータをインプットシャフトに係合するとともに、モータのステータをギアユニットに回転自在に連結する仮止め工程を実施する。このとき、第3工程では、モータのステータをギアユニットに固定すればよい。
いずれの工程によっても、ロータとステータの位相角を揃えた後の工程が簡単になる。
(第1特徴) 各モータは、同一のトルク特性を有しており、ひとつのモータドライバで制御される。
(第2特徴) 各モータのうち1つのモータにのみロータの回転角を検出するエンコーダが取り付けられる。他のモータにはエンコーダが連結されていない。
(第3特徴) 各モータのロータが、夫々クランクシャフトに同軸に直結しているとともに、各モータのステータがキャリアに固定されている。
(第4特徴) モータの回転軸とロータのいずれか一方に、回転軸に沿って伸びているピンが設けられており、他方に、周方向に沿って伸びており前記ピンに遊嵌している貫通孔が形成されている。その貫通孔は、周方向に沿って長い長円形である。貫通孔の周方向長さの範囲内で、モータの回転軸とステータの相対回転を禁止しながら、ロータとステータを相対回転させることができる。すなわち、ロータとステータの位相角を調整することができる。
(第5特徴) 仮止め工程では、インプットシャフトにロータを回転可能に取り付けるとともに、各モータのステータをキャリアに固定する。このとき、第3工程では、インプットシャフトにロータを固定する。
(第1実施例)
図1は、本実施例の駆動装置(減速装置ということもある)100の断面図を示している。図2は、図1のII−II線に沿った断面図を示している。図3は、減速装置100を、図1とは異なる方向から見たときの断面図を示している。図1の断面図は図2のI−I線に沿った断面に相当し、図3の断面図は図2のIII−III線に沿った断面に相当する。図4は、図1の破線で囲まれた領域61の拡大図を示している。なお、図面の明瞭化のため、図3では、図3の断面図に特有な箇所にのみ符号を付し、図1と実質的に同じ部品については符号を省略している。
図1に示すように、減速装置100は、ギアユニット1とモータユニット59を備えている。モータユニット59は、複数のモータ57a〜57dを備えている。なお、図1にはモータ57aと57cのみを図示しており、他のモータ57b、57dの図示を省略している。
ギアユニット1は、内歯部材18と外歯歯車(被駆動部材の一例に相当する)20X、20Yと複数のクランクシャフト(インプットシャフトの一例に相当する)49とキャリアを備えている。後述するように、キャリアは、キャリア上部4Xとキャリアベース4Yから形成されている。以下の説明では、キャリア上部4Xとキャリアベース4Yを併せて、キャリア4と称することがある。また、後述するように、内歯部材18をギアユニット1の出力部を称することがある。内歯部材18を回転自在に支持する部分を固定部と称することがある。具体的には、キャリア4(キャリア上部4Xとキャリアベース4Y)が、ギアユニット1の固定部に相当する。なお、以下の説明では、複数個が存在する実質的に同一種類の部品に共通した事象を説明する場合には、アルファベットの添え字を省略することがある。
図2に示すように、内歯部材18はリング状であり、その内周に沿って多数の内歯が形成されている。内歯部材18は、外歯歯車20と異なる歯数を有している。内歯部材18の内周に沿って、多数の内歯ピン(内歯)22が配置された内歯歯車が形成されている。換言すると、内歯部材18自身が内歯歯車を構成しているということもできる。
外歯歯車20は、内歯部材18の内歯ピン22と噛み合いながら偏心回転する。すなわち、外歯歯車20は、内歯部材18の軸線18Mの周りを公転する。なお、軸線18Mは、内歯ピン22群によって形成される内歯歯車の軸線ということができるし、後述するキャリア4の軸線ということもできる。外歯歯車20の中心に第1貫通孔60が形成されており、第1貫通孔60内を円筒部材64が通過している(図1も参照)。外歯歯車20の第1貫通孔60の周囲に、複数の第2貫通孔68a〜68hが形成されている。夫々の第2貫通孔68は、同一円周上に形成されている。なお詳細は後述するが、第2貫通孔68a、68c、68e、68gにはクランクシャフト49の偏心部50が嵌合しており、第2貫通孔68b、68d、68f、68h内をキャリア4の柱状部5が通過している。
図1に示すように、キャリア4と内歯部材18の間に、一対のアンギュラ玉軸受16X、16Yが配置されている。アンギュラ玉軸受16X、16Yによって、内歯部材18はキャリア4に対して回転可能であるとともにスラスト方向に変位不能に支持されている。なお、キャリア4が内歯部材18に対して回転可能であるとともにスラスト方向に変位不能に支持されているということもできる。本実施例ではキャリア4と内歯部材18の間に一対のアンギュラ玉軸受16X、16Yを配置したが、アンギュラ玉軸受の代わりに円錐ころ軸受等を使用してもよい。
偏心部50は、針状ころ軸受46を介して第2貫通孔68a、68c、68e、68g(図2を参照)に嵌合している。なお、針状ころ軸受46において、符号44は転動体を示しており、符号42は、転動体44を保持する保持器を示している。
外歯歯車20Yの第2貫通孔68b、68d、68f、68hと柱状部5b、5d、5f、5hの間には、外歯歯車20Yが軸線18Mの周りを偏心回転することを許容する間隔が確保されている。同様に、外歯歯車20Xの第2貫通孔69と対応する柱状部5の間には、外歯歯車20Xが軸線18Mの周りを偏心回転することを許容する間隔が確保されている。
図1に示すように、偏心部50Xと円錐ころ軸受40Xの間に止め部材48が配置されており、偏心部50Yと円錐ころ軸受40Yの間に止め部材52が配置されている。止め部材48、52によって、偏心部50X、50Yが軸線54M方向に変位することを防止している。
ここで、ギアユニット1の「固定部」と「出力部」という用語について説明する。後述するように、減速装置100では、モータ57が、キャリアベース4Yに固定され、モータ57のロータ56が回転すると、内歯部材18がキャリア4とモータ57に対して回転する。本実施例では、キャリア4がギアユニット1の筐体に相当する。したがって、内歯部材18をギアユニット1の出力部と称することができ、キャリア4を、ギアユニット1の固定部と称することができる。
モータ57のロータ56が回転し、クランクシャフト49が軸線54Mの周りに回転すると、偏心部50が偏心回転する。換言すると、偏心部50の回転軸線が、軸線54Mの周りを公転する。偏心部50が偏心回転すると、外歯歯車20が内歯部材18の軸線18Mの周りを偏心回転する。換言すると、外歯歯車の中心が、内歯部材18の軸線18Mの周りを公転する。
外歯歯車20と内歯部材18は噛み合っているので、外歯歯車20が偏心回転すると、内歯部材18が外歯歯車20に対して回転する。上記したように、外歯歯車20は固定部(キャリア4)に対して自転が拘束されているため、内歯部材18は固定部(キャリア4)に対して回転する。内歯部材18が、減速装置100の出力部材に相当する。モータ57を駆動すると、内歯部材18が固定部(キャリア4)に対して回転する。モータ57の回転が、ギアユニット1によって減速されて内歯部材18に伝達される。換言すると、モータ57の出力トルクが、ギアユニット1によって増幅されて内歯部材18に伝達される。
図2に示すように、減速装置100では、外歯歯車20の歯数が51本であり、内歯部材18の歯数(内歯ピン22の数)が26本である。また、外歯歯車20の外歯は、1つおきに内歯ピン22と噛み合っている。そのため、外歯歯車20が軸線18Mの周りを52回(26×2)公転(偏心回転)すると、内歯部材18が軸線18Mの周りを1回回転(自転)する。また、図2から明らかなように、外歯歯車20の全ての外歯が内歯ピン22に接している。そのため、外歯歯車20と内歯部材18の間にバックラッシが発生しにくい構造を実現している。また、図1に示すように、外歯歯車20X、20Yの双方が1つの内歯ピン22と噛み合っている。そのため、外歯歯車20と内歯部材18の間によりバックラッシが発生しにくい。なお、内歯ピン22は内歯部材18に固定されていない。内歯ピン22は内歯部材18に形成された溝に嵌め込まれており、その溝内で自転することができる。
なお、外歯歯車20の歯数と内歯部材18の歯数(内歯ピン22の数)を調整することによって、減速装置100の減速比を適宜変更することができる。
モータユニット59は、モータ57a、57b、57c及び57dを備えている(モータ57b、57dは図示していない)。複数のモータ57の夫々は、ステータ58とロータ56を備えている。ロータ56の表面に、永久磁石55が形成されている。永久磁石55については後述する。ロータ56は、クランクシャフト49のシャフト54に係合している。上記したように、シャフト54はシャフト54aとシャフト54bを有している。そして、シャフト54bはモータ57の回転軸ということもできる。そのため、各モータ57の回転軸が、夫々のクランクシャフト49に同軸に直結しているということができる。ロータ56の軸線は、シャフト54の軸線54Mと等しい。ステータ58は、キャリアベース4Yから伸びているステータ固定部63に固定されている。換言すると、ステータ58は、キャリア4に固定されている。ステータ固定部63の外側に、モータケース65が配置されている。換言すると、モータケース65内に、ステータ固定部63に固定された複数のモータ57が収容されている。
他の3つのモータ57b、57c及び57dにエンコーダ26が連結されていないため、そのスペースを利用してブレーキ(図示省略)を連結することもできる。エンコーダ26が連結されていないモータ57にのみブレーキを連結すると、モータ57にエンコーダ26とブレーキの双方を連結する場合と比較すると、減速装置100の軸方向の長さを短くすることができる。なお、全てのモータ57にブレーキを連結しないで、モータ57のサーボロックをブレーキの代わりにしてもよい。
上記したように、モータ57はロータ56とステータ58を備えている。モータ57は3相モータであり、ステータ58には巻線80が巻きつけられており、ロータ56の表面には永久磁石55が形成されている。なお、永久磁石55はロータ56の表面に固着される場合もあれば、ロータ56内部に埋め込まれる場合もある。ステータ58は、ステータ固定部63に固定されている。ロータ56は、ステータ58の軸線周りを回転することができる。ロータ56とシャフト54bがスプラインリング(シャフト固定部材と呼ぶ場合もある)72によって固定されている。より正確にいうと、シャフト54bに形成されているスプライン70とスプラインリング72がスプライン結合しており、ボルト74によってスプラインリング72とロータ56が固定されている。シャフト54bとスプラインリング72は相対的に回転することが禁止されている。
ここで、スプラインリング72とロータ56の固定状態を説明する。図5に、図4の矢印A方向から観察したスプラインリング72を示している。図5に示すように、スプラインリング72には、周方向に沿って伸びている貫通孔71が形成されている。ボルト74は、貫通孔71を通過して、スプラインリング72とロータ56を固定している(図4も参照)。そのため、貫通孔71の周方向の長さの範囲内で、スプラインリング72に対するロータ56の相対回転角を調整することができる。換言すると、シャフト54b(インプットシャフト49の一部)に対するロータ56の相対回転角が調整可能である。また、スプラインリング72をシャフト54b(モータの回転軸ということもできる)の一部とみなし、ボルト74を回転軸54bに沿って伸びているピンとみなすこともできる。その場合、ロータ56に回転軸54bに沿って伸びているピン74が設けられており、回転軸54bに周方向に沿って伸びておりピン74に遊嵌している貫通孔71が形成されているということができる。
ロータ56は、スプラインリング72を介して、シャフト54bに固定されている。
図1に示すように、モータ57cもロータ56とシャフト54bがスプラインリング72によって固定されている。図示していないが、モータ57b、57dも同様である。すなわち、減速装置100には、夫々のモータ57a〜57dのロータ56とステータ58の位相角が個別に調整可能な調整機構が設けられている。
ボルト78によって、エンコーダ26の回転部90がロータ支持部材76に固定されている。そのため、回転部90は、ロータ支持部材76と一体に回転し、シャフト54bと一体に回転する。回転部90にはスリット板92が形成されている。エンコーダ26の受光素子94が、エンコーダ支持部98に固定されている。エンコーダ26の発光素子95が、ボルト96によってエンコーダ支持部98に固定されている。エンコーダ支持部98は、キャリアベース4Yから伸びているステータ保持部63に固定されている。すなわち、受光素子94と発光素子95は、キャリア4に固定されている。受光素子94と発光素子95の間に、スリット板92が配置されている。
エンコーダ26によって、シャフト54bの回転角を検出することができる。
図6に、図1のVI−VI線に沿った断面図を示している。なお、図面の明瞭化のため、図6ではステータ保持部63やモータケース65の図示を省略している。モータ57a〜57dは、内歯部材18の軸線18M(図1も参照)の周りに等間隔に配置されている。符号54Mは、ロータ56の軸線を示しており、符号90は、軸線18Mと軸線54Mを半径とする仮想円を示している。上記したように、モータ57a〜57dは同一の仕様である。なお、以下の説明では、モータ57a〜57dに共通の部品については、同じ符号を付すことにより説明を省略する。
モータ57aは、リング状のステータ58と、ステータ58内に配置されたロータ56を備えている。スタータ58は、9個のポールピース58a〜58iを備えている。ポールピース58a、58e及び58fには、巻線80Uが巻き付けられている。ポールピース58b、58c及び58gには、巻線80Wが巻き付けられている。ポールピース58d、58h及び58iには、巻線80Vが巻き付けられている。ロータ56には、8極の永久磁石N1〜N4、S1〜S4(図1の永久磁石55)が配置されている。永久磁石N1〜N4は、同一の磁極(N極)を外側に向けて配置されている。永久磁石S1〜S4は、S極を外側に向けて配置されている。永久磁石N1〜N4、S1〜S4の夫々は、外側に向いている磁極が周方向に交互になるように配置されている。モータユニット59では、ロータ56とステータ58の位相角が、全てのモータ57a〜57dで等しい。例えば、全てのモータ57a〜57dにおいて、巻線80Uが巻き付けられているポールピース58aと永久磁石N1の中間部が対向している。
(第1工程)
まず、前述したギアユニット1、すなわち、外歯歯車20Xに複数のクランクシャフト49が係合しているギアユニット1を用意する。ギアユニット1を製造する工程の詳細は説明を省略する。
シャフト54b(クランクシャフト49の一部)に、ロータ56を仮止めする。ここでいう「仮止め」とは、ロータ56がシャフト54bに対して自由に回転可能であることを意味する。換言すると、シャフト54bにロータ56を連結する。
次に、キャリア4から伸びているステータ固定部63にステータ58を固定する。換言すると、キャリア4にステータ58を固定する。大局的にいえば、ギアユニット1にステータ58を固定する。ステータ58の固定位置は、当然、ロータ56を囲む位置である。ロータ56と同軸に、ステータ58をギアユニット1に固定する。
全てのモータ57について、ロータ56の仮止めとステータ58の固定を実施する。ロータ56の仮止めとステータ58の固定はどちらが先でもよいし、同時でもよい。
この工程が終了すると、クランクシャフト49を回転することなく、ロータ56を回転することができる。すなわち、クランクシャフト49を回転することなく、ロータ56とステータ58の位相を調整することができる。全てのクランクシャフト49は、外歯歯車20Xに係合しているので、「クランクシャフト49を回転することなく」とは、「外歯歯車20Xと複数のクランクシャフト49の係合を維持したまま」を意味する。
この工程では、完全ではないが、モータ57がギアユニット1に取り付けられる。完全ではないという意味で、この工程はモータ57をギアユニット1に仮止めする工程と呼ぶことができる。
全てのモータ57に同位相の電流を印加する。ここで、「同位相の電流を印加する」とは、同一の相(例えばU相(巻線80U))に同じ電流(直流でよい)を印加することを意味する。ロータ56は、クランクシャフト49に対して自由に回転することができるので、ステータ58が発生する磁力により、電磁的に中立の位置で静止する。全てのモータ57に同位相の電流を印加しているので、全てのモータ57で、ステータ58とロータ56の相対回転角が一致する。すなわち、ロータ56とステータ58の位相角が全てのモータ57で一致する。クランクシャフト49が回転することなく、全てのモータ57でロータ56とステータ58の位相角が揃う。
この工程は、仮止めしてあったクランクシャフト49とロータ56を固定する。
まず、シャフト54bにスプラインリング72を固定する。このときに、スプラインリング72に形成されている貫通孔71(図5を参照)に、ロータ56のボルト孔(貫通孔71を通してロータ56とスプラインリング72を固定するための孔)が露出する位置関係でシャフト54bにスプラインリング72を固定する。シャフト54bとスプラインリング72は、スプライン結合するので、両者の相対角度は、離散的にしか決めることはできない。しかし、貫通孔71の周方向の長さがボルト74の軸部の直径よりも大きいので、貫通孔71にボルト孔が露出する位置で、シャフト54bにスプラインリング72を固定することができる。逆にいえば、貫通孔71の周方向の長さは、スプライン70の1ピッチ分だけボルト74が移動できる長さがあれば十分である。
最後に、全てのモータ57について、ロータ56をスプラインリング72にボルト締めする。すなわち、クランクシャフト49にロータ56を固定する。仮止め工程においてすでにステータ58がキャリア4(大局的にはギアユニット1)に固定されているので、クランクシャフト49にロータ56を固定することで、モータ57のギアユニット1への固定が完了する。換言すると、この第3工程は、ギアユニット1へモータ57を固定する工程ということができる。
この工程が終了すると、全てのモータ57でロータ56とステータ58の位相角が揃っている駆動装置100が完成する。
上記の製造方法は、ロータ56とステータ58の相対回転を個別に調整する余地を残しながら、モータ57a〜57dをギアユニット1に仮止めする。従って、ロータ56とステータ58の位相角を除いてギアユニット1に対してモータ57a〜57dを位置決めすることができる。モータ57a〜57dを位置決めした後に、磁力によって全てのモータ57a〜57dの位相を揃える。ギアユニット1とモータ57a〜57dの幾何学的な位置関係と、全てのモータ57のロータ56とステータ58の電磁力的な位相関係を正確に定めることができる。
また、仮止め工程を実施することで、ギアユニット1に全てのモータ57を取り付けた状態(モータ57がギアユニット1に完全に固定されていない状態)で、ロータ56とステータ58の位相角を揃えることができる。モータ57の位相角を揃えてから、モータ57をギアユニット1に取り付けるよりも、作業が簡単である。
また、第3工程を実施するときに、ロータ56とステータ58の位相角がずれないのは、ロータ56とステータ58の位相角が個別に調整可能な調整機構(スプラインリング72に形成されている貫通孔71)を備えているからである。
なお、仮止め工程においてステータ58を仮止めする場合には、第3工程はステータ58をキャリア4に固定する工程となる。
仮止め工程を省略しても、複数のモータ57に同位相の電流を流すことによってロータ56とステータ58の位相角を一度に揃えることができる。そして、位相角が揃っている複数のモータ57を、ギアユニット1に固定することができる。
図7は、第2工程を実施していない減速装置の100のVI−VI線に沿った断面図を示している。図7から明らかなように、ロータ56とステータ58の位相角が、全てのモータ57a〜57dで等しくなっていない。具体的にいうと、モータ57aでは、巻線80Uが巻き付けられているポールピース58aと永久磁石S1の中間部が対向している。モータ57bでは、ポールピース58aと永久磁石N1とS1の境界部が対向している。モータ57cでは、ポールピース58aと永久磁石S1の端部が対向している。モータ57dでは、ポールピース58aと永久磁石N1の中間部が対向している。
ロータ56とステータ58の位相角が全てのモータ57a〜57dで等しくない場合、被駆動部材(外歯歯車20)に加えられるトルクに偏りが生じたり、モータ57a〜57dの回転方向が所望する方向と反対になったり、モータ57a〜57dの回転を停止するときに遅れが生じたりしてしまう可能性がある。
図6に示すように、ロータ56とステータ58の位相角が全てのモータ57a〜57dで等しければ、上記した不具合が生じることを防止することができる。
ロータ56とステータ58の位相角が全てのモータ57a〜57dで等しくても、その状態を維持したままギアユニット1とモータ57a〜57dを固定しないと、ロータ56とステータ58の位相角が、全てのモータ57a〜57dで等しくならない。すなわち、スプラインリング72とロータ56の固定位置が調整可能でなければ、結果として、ロータ56とステータ58の位相角が全てのモータ57a〜57dで等しくならない。
(第2実施例)
図8に減速装置200の部分断面図を示す。減速装置200では、ボルト274によって、シャフト254bとロータ256が固定される。具体的にいうと、シャフト254aとシャフト254bの間に段差が形成されている。そのため、ボルト274を締め付けることによって、ロータ256がシャフト254aに当接する。シャフト254aとロータ256の間に生じる摩擦力によって、シャフト254bとロータ256が相対的に回転することと、ロータ256が軸線54M方向に変位することを防止している。シャフト254aとロータ256の間に摩擦板259が配置されており、シャフト254aとロータ256の間に生じる摩擦力を増大している。
なお、ボルト274の軸部は、ロータ256に形成されているボルト貫通孔256aを通過してシャフト254bに固定される。ボルト貫通孔256aの径は、ボルト274の軸部の径よりも大きく、ボルト274の頭部の径よりも小さい。ボルト274を緩めると、シャフト254bとロータ256が相対的に回転することができる。そのため、ロータ256とステータ58の位相角を全てのモータ57で揃えて(第2工程)、ロータ256をシャフト254bに固定する(第3工程)ことができる。ボルト274を緩めるとシャフト254bとロータ256が相対的に回転し、ボルト274を締め込むとシャフト254bとロータ256の相対的な回転が拘束される構造を、ロータ256とステータ58の位相角が個別に調整可能な調整機構ということもできる。
ロータ256に、固定部材276が固定されており、固定部材276にエンコーダ26の回転部90が固定されている。そのため、ロータ256とエンコーダ26の回転部90(換言すると、シャフト254bと回転部90)は一体に回転する。エンコーダ26によって、ロータ256の回転角(シャフト254bの回転角でもある)を検出することができる。エンコーダ26を取り付けないモータ257(図1も参照)では、固定部材276を省略することができる。
図9に減速装置300の部分断面図を示す。減速装置300では、ボルト374によって、シャフト354bとロータ356が固定される。シャフト354bには傾斜部373が形成されており、ロータ356には傾斜部356bが形成されている。そのため、ボルト374を締め付けると、シャフト354bとロータ356に摩擦力が生じる。その摩擦力によって、シャフト354bとロータ356が相対的に回転することと、ロータ356が軸線54M方向に変位することを防止している。ボルト374を緩めると、シャフト354bとロータ356が相対的に回転することができる。そのため、シャフト354bの傾斜部373とロータ356の傾斜部356bを、ロータ356とステータ58の位相角が個別に調整可能な調整機構ということもできる。
なお、ボルト貫通孔356aの径は、ボルト374の軸部の径よりも大きく、ボルト374の頭部の径よりも小さい。ロータ356に、固定部材276が固定されており、固定部材にエンコーダ26の回転部90が固定されている。そのため、ロータ356とエンコーダ26の回転部90は一体に回転する。エンコーダ26によって、ロータ356の回転角(シャフト354bの回転角)を検出することができる。また、エンコーダ26を取り付けないモータ357では、固定部材376を省略することができる。
図10に減速装置400の部分断面図を示す。減速装置400では、シャフト454bに形成されているねじ部470とナット部材472によって、シャフト454bとロータ56が固定される。ナット部材472を締め付けると、ロータ56がシャフト454aに当接する。その結果、ロータ56がシャフト454aとナット部材472に挟持され、シャフト454bとロータ56が相対的に回転することと、ロータ56が軸線54M方向に変位することを防止している。ナット部材472を緩めるとシャフト454bとロータ56が相対的に回転し、ナット部材472を締め込むとシャフト454bとロータ56の相対回転が拘束される構造を、ロータ56とステータ58の位相角が個別に調整可能な調整機構ということもできる。
なお、減速装置400では、ボルト478によって、ナット部材472にエンコーダ26の回転部90が固定されている。そのため、ロータ56とエンコーダ26の回転部90は一体に回転する。
図11に減速装置500の部分断面図を示す。ここではモータ557にエンコーダが連結されていない例について説明する。
減速装置100では、ロータ支持部材76によって、ロータ56が軸線54M方向に変位することを禁止している(図1を参照)。そのため、エンコーダ26が取り付けられていないモータ57cにもロータ支持部材76aを取り付けている。
それに対して、減速装置500では、止め輪575によって、ロータ56が軸線54M方向に変位することを禁止している。減速装置100のロータ支持部材76aと比べて、簡単な構造でロータ56が軸線54M方向に変位することを禁止できる。
上記実施例では、モータのロータとインプットシャフトが直結している例について説明した。モータの回転軸(出力軸)が、歯車等を介して、インプットシャフトに係合していてもよい。
4:キャリア
18:内歯部材
20:被駆動部材(外歯歯車)
49:インプットシャフト(クランクシャフト)
54:シャフト(モータの回転軸)
56:ロータ
57:モータ
58:ステータ
72:調整機構(スプラインリング)
100:駆動装置(減速装置)
Claims (5)
- ギアユニットと複数のモータを備えている駆動装置であり、
ギアユニットは、
被駆動部材と、
被駆動部材に係合している複数のインプットシャフトを備えており、
夫々のモータのロータが、夫々インプットシャフトに係合しており、
被駆動部材と複数のインプットシャフトの係合を維持しながら、各モータのロータとステータの位相角を個別に機械的に調整可能な調整機構が設けられている駆動装置。 - インプットシャフトとロータの一方に、回転軸に沿って伸びているピンが設けられており、
インプットシャフトとロータの他方に、周方向に沿って伸びており前記ピンに遊嵌している貫通孔が形成されており、
前記ピンを周方向に移動させることにより、各モータのロータとステータの位相角を個別に機械的に調整する請求項1に記載の駆動装置。 - ロータとステータの位相角が全てのモータで等しい請求項1又は2に記載の駆動装置。
- 前記ギアユニットは、
内周に内歯歯車が形成されている内歯部材と、
内歯歯車の軸線と同軸に配置されているとともに、内歯部材に回転可能に支持されているキャリアと、
内歯歯車の軸線に沿って伸びているとともにキャリアに回転可能に支持されており、偏心体が固定されている複数のインプットシャフトと、
内歯歯車と噛み合っている外歯が形成されており、夫々前記偏心体が嵌合している複数の貫通孔が形成されている被駆動部材と、を備えており、
各モータのロータが、夫々インプットシャフトに係合しているとともに、各モータのステータがキャリアに固定されている請求項1から3のいずれか1項に記載の駆動装置。 - 複数のモータの全てが、ひとつのモータドライバで制御される請求項1から4のいずれか1項に記載の駆動装置。
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