JP5424109B2 - インク組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用インク組成物に関し、とりわけ捺染に用いられるインクジェット記録用インク組成物に関する。
従来、布帛に画像を印捺する方法として、スクリーン捺染法、ローラ捺染法、ロータリースクリーン捺染法、または転写捺染法等が用いられている。しかしながら、画像デザインの変更毎に、高価なスクリーン枠、彫刻ローラ、転写紙等を用意する必要があるため、多品種少量生産にはコスト的に不向きであり、ファッションの多様化に迅速に対応することが困難であった。
こうした従来の印捺方法の欠点を解消するために、スキャナーで見本を読み取り、コンピュータで画像処理を行い、その結果をインクジェット方式で印捺する技術が開発されている。インクジェット記録方式は、インク液滴をインクヘッドから記録媒体(例えば、紙や布帛)に向かって飛翔させ、その液滴を記録媒体に付着させる記録方式であり、その機構が比較的簡便で安価であること、かつ高精細で高品位な画像を形成できるものである。このようなインクジェット方式を印捺方法に適用すれば、従来の捺染方式で必要とされていた版を作製する必要がなく、手早く階調性に優れた画像を形成できることから、納期の短縮、多品種少量生産への対応等が可能になるといった利点が挙げられる。また、インクジェット方式によれば、画像形成時に必要量のインクのみを使用するため、従来のスクリーン捺染等に比較して、廃液が少ない等の環境的利点も有する。
しかしながら、インクジェット方式は上記のしたようにインクヘッドからインク液滴を吐出させて画像を形成するため、従来のスクリーン捺染等に用いられてきたインクをそのままインクジェット方式に適用することができず、インクジェット特性を確保するためには、インクの表面張力や粘度等の物理特性だけでなく、溶剤等の組成や色材の濃度等についても調整する必要がある。特に、布帛等に使用する染料インクにおいては、染着濃度を確保するために染着濃度を高く、通常高粘度のインクを用いるため、捺染用のインクをそのままインクジェット方式に適用することができず、インクヘッドの目詰まり等を防止するために、インク粘度をかなりの程度まで低くする必要があり、布帛の染着濃度を高くすることが困難であった。
上記の課題に対し、染着濃度を高めるため、特定の染料種を用いたり(特開2008−266537号公報:特許文献1)、布帛に前処理を行うことが提案されている(特開2008−247109号公報:特許文献2)。
特開2008−266537号公報 特開2008−247109号公報
本発明者らは、今般、反応性染料と所定数の水酸基を有するハロゲン化トリアジン誘導体とを併用することにより、良好な目詰まり性等のインクジェット特性を有し、かつ高い染着濃度を実現できるインクが得られる、との知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。
したがって、本発明の目的は、良好な目詰まり性等のインクジェット特性を有し、かつ高い染着濃度を実現できるインク組成物を提供することである。
そして、本発明によるインク組成物は、下記式(I):
Figure 0005424109
(式中、R、RおよびRのうち、いずれか1つは、F、Cl、BrまたはIであり、他の2つは、それぞれ独立して、水酸基、または、2以上の水酸基で置換された、アルキル基、アルキレン基、アルキン基、フェニル基およびベンジル基からなる群から選択される、炭素数が1〜3の炭化水素を表す。)
で表されるハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩と、色材として反応性染料と、水と、を少なくとも含んでなるものである。
本発明によれば、良好な目詰まり性等のインクジェット特性を有し、かつ高い染着濃度を有するインク組成物を実現することができる。
発明の具体的説明
本発明によるインク組成物は、必須成分として、色材として反応性染料と上記したハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩と水とを含む。本発明においては、反応性染料と上記したような所定数の水酸基を有するハロゲン化トリアジン誘導体とを併用して用いることにより、吐出安定性等のインクジェット特性と、布帛等の記録物の染着濃度とを両立することができる。すなわち、吐出安定性を維持できるような染着濃度とした場合、すなわちインク中の染料濃度がある程度低い場合であっても、十分な染着濃度を有する記録物を得ることができる。この理由は定かではないが、以下の理由によるものと考えられる。
本発明によるインク組成物を用いて綿等の布帛に印捺した場合に染着濃度が向上するのは、セルロース繊維構造中にある水酸基の数が増加することによるものと推定される。すなわち、繊維構造中の水酸基の、上記したハロゲン化トリアジン誘導体への求核付加反応により、繊維構造中にハロゲン化トリアジン誘導体が定着するため、繊維構造中の単位体積あたりの水酸基の数が増加し、その結果、反応性染料の染着量が増加することによるものと考えられる。
本発明においては、下記式(I)で表されるハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩を使用する。
Figure 0005424109
上記式(I)において、R、RおよびRのうち、いずれか1つは、F、Cl、BrまたはIから選択されるハロゲンを表すが、これらのなかでも、Clが好ましい。クロロ化トリアジン誘導体またはその塩を反応性染料と併用することにより、より染着濃度が向上する。
上記式(I)において、R、RおよびRのうち、他の2つは、それぞれ独立して、水酸基、または、2以上の水酸基で置換された、アルキル基、アルキレン基、アルキン基、フェニル基およびベンジル基からなる群から選択される、炭素数が1〜3の炭化水素を表すが、これらの中でも、水酸基、または、2以上の水酸基で置換された、炭素数が1〜3のアルキル基、アルキレン基もしくはアルキン基が好まし。また、R、RおよびRのうち、他の二つの置換基がいずれも水酸基であることがより好ましい。
上記したように、ハロゲン化トリアジン誘導体が繊維構造中の水酸基と結合する反応と、反応性染料の反応基が繊維構造中の水酸基と結合する反応とは、競合的に進行する。これら2つの反応速度(定着速度)を最適化することにより、反応性染料の染着濃度をより向上させることができる。ハロゲン化トリアジン誘導体と繊維構造中の水酸基との結合反応は、インク組成物のpH、ハロゲン化トリアジン誘導体の添加量、インク組成物の温度等に影響される。本発明においては、インク組成物のpH、ハロゲン化トリアジン誘導体の添加量を制御することにより、ハロゲン化トリアジン誘導体の反応速度を最適化し、その結果、より高いレベルの染着濃度を実現するものである。
本発明においては、インク組成物のpHが5〜8であることが好ましい。pHをこの範囲におくことにより、ハロゲン化トリアジン誘導体が塩の形態で存在する量やハロゲン化トリアジン誘導体の反応速度が最適化される。この場合、ハロゲン化トリアジン誘導体中の水酸基の一部は塩の形態となる。インク組成物のpHの調整は、後記するようなpH調整剤の種類やその添加量等により適宜調整することができるが、塩の対イオンとしては、Na、KまたはLiイオンが好ましく、これら対イオンを持つpH調整剤を好適に使用することができる。
また、本発明においては、ハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩と、前記反応性染料との添加量比が、質量基準において、1:5〜10:5であることが好ましく、より好ましい範囲は、3:5〜5:5である。両者の添加量比を上記の範囲とすることにより、ハロゲン化トリアジン誘導体の反応速度を最適化し、その結果、より高いレベルの染着濃度を実現することができる。
上記したハロゲン化トリアジン誘導体は、公知の方法で合成することができ、例えば特開2007−63165号公報や欧州特許出願公開EP0577559号公報等に記載の方法により合成することができる。具体的には、塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−1,3−トリアジン)に、ベンジル基やトリチル基等の適当な保護基をアルコール基に導入したハロゲン化合物を、グリニャール試薬を利用して導入し、その後に保護基を取り除くことにより得ることができる。また、上記式(I)中のR、RおよびRのうち、他の2つが同じアルコール鎖である場合、欧州特許出願公開EP0165608号公報に記載されているような合成方法、すなわち、フリーデルクラフツのアルキル化反応を利用することにより、合成することもできる。さらに、上記式(I)中のR、RおよびRのうちいずれかに水酸基を導入する場合には、上記した塩化シアヌルへのアルコール鎖の導入において、緩やかな条件で加水分解させた後、上記した合成経路を経ることにより所望のハロゲン化トリアジン誘導体を得ることができる。また、本発明においては、上記式(I)で表されるハロゲン化トリアジン誘導体として、市販されているものを使用してもよく、例えば、上記式(I)中のR、RおよびRのうち、いずれか1つが、F、Cl、BrまたはIであり、他の2つが水酸基またはその塩であるハロゲン化トリアジン誘導体は、テグサ社から入手することができる。
上記したハロゲン化トリアジン誘導体と併用して用いられる反応性染料としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを使用することができるが、本発明においては、これら公知の反応性染料の中でも、C.I.リアクティブイエロー2,95、C.I.リアクティブオレンジ12,13,99、C.I.リアクティブレッド3:1,31C.I.リアクティブブルー15:1,49,176、C.I.リアクティブブラック8を好適に使用することができ、これら反応性染料の1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、染料の含有量は特に限定されるものではないが、インク組成物の全重量に対して、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜7質量%である。前記酸性染料の合計含有量を1質量%以上とすることにより、充分な印捺濃度を得ることができ、10質量%以下とすることにより、インクジェット用インク組成物に求められる吐出安定性を確保することができ、特に高温下での吐出不良を防止することができる。
本発明によるインク組成物には、インクジェットプリンタの記録ヘッドのノズルからの吐出安定性を向上させる観点から、保湿剤を含有させることが好ましい。保湿剤としては、通常のインクジェット捺染用インク組成物に保湿剤として使用されている化合物を用いることができ、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、またはペンタエリスリトール等のポリオール類、およびそのエーテルまたはエステル等の誘導体;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、またはε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、または1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、またはマルトース等の糖類等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。前記保湿剤の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは4〜40重量%である。
また、本発明によるインク組成物には、布帛への濡れ性を高めてインクの浸透性を高める観点から、浸透剤としても機能する水溶性有機溶剤を含有させることが好ましい。そのような浸透剤有機溶剤としては、通常のインクジェット捺染用インク組成物に浸透剤有機溶剤として使用されている化合物を用いることができ、例えば、エタノールまたはプロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルまたはジエチレングリコールモノエチルエーテル等のカルビトール類;エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、またはトリエチレングリコ−ル−n−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を用いることができる。前記水溶性有機溶剤(浸透剤)の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは2〜15重量%である。
さらに、同様の観点から、本発明によるインク組成物には、水溶性有機溶剤に加えて、浸透剤としても機能する界面活性剤をさらに加えても良い。そのような浸透剤界面活性剤としては、通常のインクジェット捺染用インク組成物に浸透剤界面活性剤として使用されている化合物を用いることができ、例えば、脂肪酸塩類;アルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性界面活性剤;サーフィノール61、82、104、440、465、485(何れも商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)等のアセチレングリコ−ル系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等を挙げることができ、これらの一種または二種以上を加えることができる。さらに加えても良い前記界面活性剤(浸透剤)の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.2〜2重量%である。
本発明によるインク組成物には、前記のように、前記色材を含有させ、必要に応じて、保湿剤および浸透剤を含有させ、さらにバランスとして水を含有させる。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
本発明によるインク組成物には、さらに必要に応じて、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン)、または溶解助剤等のように、インクジェット捺染用のインク組成物において通常用いることができる各種添加剤の一種または二種以上を含有させることができる。
本発明によるインク組成物は、上記した各成分を、分散/混合機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミル等)に供給し、分散させることにより調製されてよい。本発明の好ましい態様によれば、上記した分散/混合機により得られたインク原液をメンブランフィルターやメッシュフィルター等のフィルターを用いて濾過し、粗大粒子を除去することが好ましい。
本発明によるインク組成物は、印字品質とインクジェット捺染用インク組成物としての信頼性とのバランスの観点から、表面張力が25〜40mN/mであることが好ましく、28〜35mN/mであることがさらに好ましい。また、同様の観点から、本発明によるインク組成物の20℃における粘度は、1.5〜10mPa・sであることが好ましく、2〜8mPa・sであることがさらに好ましい。表面張力および粘度を前記範囲内とするには、前記染料の濃度を調整する方法、前記保湿剤の種類や添加量等を調整する手段等を用いることができる。
本発明のインク組成物を、セルロース系繊維等からなる布帛(例えば、織物、網物、または不織布)に対するインクジェット捺染に用いると、良好な保存安定性や吐出安定性を有し、かつ鮮明かつ高濃度、高精彩な発色を有する記録物を得ることができる。本発明のインク組成物を用いる場合には、通常のインクジェット捺染用のインク組成物と同様に、インクジェットプリンタのインクカートリッジにインク組成物を充填して使用する。前記インクジェットプリンタは特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェットプリンタが好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェットプリンタには、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があり、いずれの記録方法を採用することもできる。
本発明のインク組成物を用いて布帛に対してインクジェット捺染方法を実施する場合には、通常のインクジェット捺染と同様に、予め、前処理剤を用いて布帛を前処理しておくことが好ましい。布帛の前処理は、前処理剤中に布帛を浸積するか、前処理剤を布帛に塗布または噴霧する等の手段を用いて、布帛に前処理剤を付着させた後、布帛を乾燥することにより行われる。
布帛の前処理剤としては、水溶性高分子化合物等の糊剤を0.01〜20重量%の量とアルカリ発生剤を1〜5重量%の量とで含有させた水溶液を用いることができる。前記糊剤としては、例えば、トウモロコシ、または小麦等のデンプン物質;カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系物質;アルギン酸ナトリウム、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、トラントガム、グアーガム、またはタマリンド種子等の多糖類;ゼラチン、またはカゼイン等のタンパク質;タンニン;リグニン等の天然水溶性高分子や、ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系化合物、または無水マレイン酸系化合物等の合成水溶性高分子化合物を挙げることができる。上記のアルカリ発生剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。前処理剤には、必要に応じて、尿素、またはチオ尿素等の保湿剤、pH調整剤、還元防止剤、浸透剤、金属イオン封鎖剤、あるいは消泡剤等の各種添加剤を含有させることもできる。
本発明によるインク組成物は、上記したように反応性染料と上記式(I)で表されるハロゲン化トリアジン誘導体とを併用したものであるが、布帛の前処理剤中に上記式(I)で表されるハロゲン化トリアジン誘導体を添加しておき、布帛に予めハロゲン化トリアジン誘導体を塗布した後に、ハロゲン化トリアジン誘導体を含まない反応性染料インクを印捺しても、本願発明と同様の効果が得られることは言うまでもない。
また、本発明のインク組成物を用いて布帛に対してインクジェット捺染方法を実施する場合には、布帛に対してインク組成物を吐出し、文字および/または画像を印刷した後に、染料固着処理を行う。染料固着処理方法としては、従来の捺染方法における染料固着処理方法と同様の方法、例えば、常圧スチーム法、高圧スチーム法、またはサーモフィックス法等を挙げることができる。染料固着処理後は、常法通り、布帛を水洗し、乾燥する。必要に応じソーピング処理(未固着の染料を熱石鹸液等で洗い落とす処理)を実施してもよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものではない。
ハロゲン化トリアジン誘導体の準備
上記した式(I)において、R、RおよびRのそれぞれが下記表1に示す置換基であるハロゲン化トリアジン誘導体を準備した。下記表1に示したハロゲン化トリアジン誘導体1〜4および18〜21はテグサ社から市販されているものを用いた。また、ハロゲン化トリアジン誘導体5〜8,11および13〜15については、特開2007−63165号公報や欧州特許出願公開EP0577559号公報等に記載の方法により合成したものを用いた。具体的には、塩化シアヌル(2,4,6−トリクロロ−1,3−トリアジン)に、ベンジル基を保護基としてアルコール基に導入した所定のハロゲン化合物を、グリニャール試薬を利用して導入し、その後に保護基を取り除くことにより、上記の各ハロゲン化トリアジン誘導体を得た。さらに、ハロゲン化トリアジン誘導体9,10,12,16,および17については、欧州特許出願公開EP0165608号公報に記載の方法により合成したものを用いた。具体的には、塩化シアヌルへの各アルコール鎖の導入において、フリーデルクラフツのアルキル化反応を利用することにより、上記の各ハロゲン化トリアジン誘導体を得た。
Figure 0005424109
インク組成物の調製
下記表2に示した組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、例1〜例34のインクを調製した。得られた例1〜6のインク組成物については、pHの測定を行った。pH測定結果も併せて表1に記載する。
Figure 0005424109
Figure 0005424109
Figure 0005424109
染着濃度の評価
下記前処理液を絹布帛に塗布し、マングルにてピックアップ率20%で絞って乾燥させた。この前処理を行った絹布帛を用いて、PM−A750プリンタ(セイコーエプソン社製)により、得られた各インクの印捺を行った。印捺した布を103℃×10分にてスチーミングして定着させた後、オルフィンE1010(日信化学社製)およびラッコールSTA(明成化学社製)0.2%水溶液を用いて、85℃で10分間洗浄し、乾燥させたものを試験片とした。得られた試験片に対して、分光光度計スペクトリノ(グレタグマクベス社製)を用いて光学密度Density Black(Db値)を測定した。
<前処理液>
アルギン酸ナトリウム 1.0重量%
グアガム 1.0重量%
硫酸アンモニウム 4.0重量%
尿素 10.0重量%
超純水 残量
上記で得られた各インクにおける測定Db値について、以下の基準により染着濃度の評価を行った。
1点:Db値が1.20未満
2点:Db値が1.20以上、1.25未満
3点:Db値が1.25以上、1.30未満
4点:Db値が1.30以上、1.35未満
5点:Db値が1.35以上、1.40未満
6点:Db値が1.40以上、1.45未満
7点:Db値が1.45以上、1.50未満
8点:Db値が1.50以上、1.55未満
9点:Db値が1.55以上、1.60未満
10点:Db値が1.60以上
評価結果は、下記の表3に示される通りであった。
Figure 0005424109

Claims (8)

  1. 下記式(I):
    Figure 0005424109
    (式中、R、RおよびRのうち、いずれか1つは、F、Cl、BrまたはIであり、他の2つは、それぞれ独立して、水酸基、または、2以上の水酸基で置換された、アルキル基、アルキレン基、アルキン基、フェニル基およびベンジル基からなる群から選択される、炭素数が1〜3の炭化水素を表す。)
    で表されるハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩と、色材として反応性染料と、水と、を少なくとも含んでなる、インク組成物。
  2. 前記式(I)において、R、RおよびRのうち、いずれか1つがClであり、他の2つが、それぞれ独立して、水酸基、または、2以上の水酸基で置換された、炭素数が1〜3のアルキル基、アルキレン基もしくはアルキン基を表す、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記式(I)において、R、RおよびRのうち、いずれか1つがClであり、他の2つが水酸基である、請求項1または2に記載のインク組成物。
  4. 前記水酸基の少なくとも一部が塩の形態にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
  5. 前記塩の対イオンが、Na、KまたはLiイオンである、請求項4のいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. pHが5〜8である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. 前記ハロゲン化トリアジン誘導体またはその塩と、前記反応性染料との添加量比が、質量基準において、1:5〜10:5である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインク組成物。
  8. インクジェット捺染に用いられる請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク組成物。
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