JP5423440B2 - 無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
地球環境の保全という観点から、近年におけるエネルギー多消費文明の弊害が問題視されている。無方向性電磁鋼板の使用される電気機器の分野でいえば、冷暖房機器のモータ、電気自動車用の駆動モータなどに、更なる消費電力の低減が求められている。また、モータ駆動の制御方式は、従来の電流ON−OFF制御でなく、インバータによる高調波が重畳されたPWM波形制御になってきている。このため、高周波特性に優れた電磁鋼板が求められるようになってきた。
従来、無方向性電磁鋼板の製造技術としては、高周波鉄損を改善する目的で、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)などを増加させて固有抵抗を増やすこと、また、製品板厚を極力薄くすることが行われてきた。しかしながら、Cr添加鋼の問題点は、炭素量にあった。製品中の炭素は、低温でFeC(セメンタイト)や(Fe,Cr)などとなって析出し磁性劣化するため、炭素量は0.006%以下、望むらくは0.003%以下であることが好ましい。しかしながら、Cr含有鋼では、製鋼段階での真空脱ガスで平衡論的に脱炭が困難であり、十分に脱炭しようとすれば長時間の真空脱ガス時間が必要となり、重大な生産性障害があった。
このため、従来より、製鋼以外の後工程で脱炭させる方法について、検討がなされてきた。無方向性電磁鋼板の高級品の一般的な後工程は、1000℃程度の連続熱延板焼鈍→冷間圧延→1000℃程度の連続再結晶焼鈍という工程である。
例えば、以下の特許文献1では、熱延板焼鈍または再結晶焼鈍での脱炭処理技術に関する開示がなされており、脱炭焼鈍に着眼した技術であるといえる。具体的には、この特許文献1には、860℃×3hrの熱延板焼鈍に先立ち750℃×2hr程度の熱延板での脱炭焼鈍を追加すること、または、1000℃×1minの仕上焼鈍(すなわち、再結晶焼鈍)に先立ち700〜800℃×1〜10minの脱炭焼鈍を追加することが開示されている。しかしながら、これらの脱炭焼鈍の追加は、通常の製造工程にプラスされることとなるため、コスト的な負担が大きいという問題があった。
また、以下の特許文献2では、熱延板を黒皮付きのままで脱炭焼鈍する方法が開示されており、脱炭焼鈍の温度×時間は、750℃×2hrの例が示されている。この技術においても、脱炭焼鈍は追加の工程となるため、コスト的な負担が大きくなるという問題があった。
脱炭焼鈍工程が追加の工程となってしまう最大の理由は、脱炭の起こる温度が700〜800℃と比較的低温であるからである。ここで、連続再結晶焼鈍は通常1000℃前後であるが、従来、1000℃では脱炭は生じないとされてきた。その原因は、1000℃程度の高温になると、昇温中において既にSiOの膜が表面を被覆してしまい、炭素の拡散が阻止されるためであった。
特開2002−317254号公報 特開2003−247020号公報
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、脱炭を容易に実行可能であり、かつ、優れた鉄損特性を有する無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、質量%で、C≦0.006%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部は、不可避的不純物およびFeからなり、SiO を主体とする針状の酸化物とFe母材からなる部分とを有する酸化物層が鋼板の表面近傍に位置し、前記針状の酸化物は、当該酸化物の長軸方向が前記鋼板の厚み方向と平行である無方向性電磁鋼板が提供される。
前記酸化物層の厚みは、0.2〜4μmであることが好ましい。
前記無方向性電磁鋼板は、更に、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含むことが好ましい。
前記無方向性電磁鋼板は、更に、質量%で、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、質量%で、C≦0.007%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部が不可避的不純物およびFeからなる熱延板を焼鈍する工程と、焼鈍された前記熱延板を冷間圧延して冷延板とする工程と、前記冷延板を再結晶焼鈍する工程と、を含み、前記再結晶焼鈍の均熱過程を、900〜1100℃、かつ、水蒸気分圧PH2O/PH2が0.05〜0.8である酸化性雰囲気とすることで、SiO を主体とする針状の酸化物とFe母材からなる部分とを有し、当該針状の酸化物の長軸方向が鋼板の厚み方向と平行である酸化物層を前記冷延板の表面近傍に形成する無方向性電磁鋼板の製造方法が提供される。
前記再結晶焼鈍では、水蒸気分圧PH2O/PH2が0.05〜5である酸化性雰囲気で900℃まで昇温を行うことが好ましい。
前記酸化物層の厚みは、0.2〜4μmであることが好ましい。
前記熱延板は、更に、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含むことが好ましい。
前記熱延板は、更に、質量%で、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
前記再結晶焼鈍では、900℃まで昇温を行う昇温過程を、直火雰囲気としてもよい。
前記再結晶焼鈍では、前記均熱過程後に行われる900℃から300℃までの冷却過程の冷却速度を、1〜30℃/sとしてもよい。
以上説明したように本発明に係る無方向性電磁鋼板は、針状の酸化物を含み、酸化物の長軸方向が鋼板の厚み方向と平行となる内部酸化層を有するため、脱炭を容易に実行可能であり、優れた鉄損特性を実現することが可能となる。
本発明の第1の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を説明するための説明図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を説明するための流れ図である。 同実施形態に係る再結晶焼鈍工程を説明するための説明図である。 同実施形態に係る無方向性電磁鋼板を説明するためのSEM写真である。 従来の無方向性電磁鋼板を説明するためのSEM写真である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
<無方向性電磁鋼板の構造>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造について、説明する。図1は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を説明するための説明図であり、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の構造を、模式的に表したものである。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板1は、例えば図1に示したように、母材である鋼板10と、鋼板10上に形成された内部酸化層20と、内部酸化層20上に形成された外部酸化層30と、を主に有する。ここで、内部酸化層20は、酸化物層の一例である。
母材である鋼板10は、鋼板に含まれる各成分が所定の範囲となるように調製された冷延材を使用することが可能である。なお、鋼板10の板厚は、高周波(400Hz〜1kHz程度の周波数)での磁気特性を改善するために、薄いほうが好ましい。
続いて、図1に示した内部酸化層20について、詳細に説明する。
従来の無方向性電磁鋼板では、かかる内部酸化層が存在しないように電磁鋼板が製造されたが、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、以下で説明するような内部酸化層を積極的に形成するように、電磁鋼板の製造を行う。
この内部酸化層20は、例えば図1に示したように、表層側に位置する外部酸化層30と鋼板10との間に位置する酸化物を含む層であり、針状(棒状)の酸化物21と、Fe母材(メタル)からなる部分23と、を含む。この内部酸化層20では、図1に示したように、針状の酸化物21が鋼板10の表面全体を覆っているわけではなく、針状の酸化物21が形成されていないFe母材からなる部分23と、針状の酸化物21が形成された部分と、がともに存在するような状態となっている。
針状の酸化物21は、SiOを主体とする酸化物であり、SiO以外にも、AlやCrの酸化物等が含まれている。この針状の酸化物21は、図1に示したように、鋼板10上に竹林状に形成されており、酸化物21の長軸方向が、鋼板10の厚み方向(ずなわち、図1におけるz軸方向)と略平行となっている。
針状の酸化物21が図1に示したように形成されることで、内部酸化層20では、Fe母材からなる部分23が、鋼板10と外部酸化層20との間を介在するように存在することとなる。その結果、このFe母材からなる部分23が、脱炭の際における炭素(C)の通路として機能し、再結晶焼鈍の際に、鋼板10内に含まれる炭素を電磁鋼板1の外部へと拡散させることが可能となる。
この針状の酸化物21を含む内部酸化層20の厚みは、0.2μm以上4μm以下であることが好ましい。内部酸化層20の厚みを上述の範囲とすることで、鉄損の劣化を防止しつつ、再結晶焼鈍時に十分な脱炭を行うことが可能となる。なお、内部酸化層20の厚みが0.2μm未満の場合には、再結晶焼鈍時に十分な脱炭を行うことが困難となるため、好ましくない。また、内部酸化層20の厚みが4μm超過の場合には、無方向性電磁鋼板1の高周波鉄損の劣化が大きくなるため、好ましくない。
なお、図1では、針状の酸化物21が、内部酸化層20中に均一に形成されているような図面となっているが、かかる場合に限定されるわけではなく、互いに隣り合う針状の酸化物21間の距離は、一定でなくともよい。また、内部酸化層20中に存在する針状の酸化物21の個数は、図1に示した個数に限定されるわけではない。また、図1では、針状の酸化物21の長軸方向が鋼板平面に対して略垂直となっている場合について図示しているが、かかる場合に限定されるわけではない。針状の酸化物21の長軸方向は、鋼板10と外部酸化層30との間を介在するFe母材からなる部分23が形成される範囲内で、鋼板平面に対して垂直な方向からある程度傾いていてもよい。
以上、本実施形態に係る内部酸化層20について説明した。続いて、図1に示した外部酸化層30について説明する。
外部酸化層30は、酸化鉄(FeO)を主体とする層である。この外部酸化層30は、内部酸化層20上に形成され、無方向性電磁鋼板1の最表面に位置する層である。外部酸化層30の厚みは内部酸化層20の厚みに比べて非常に薄く、内部酸化層20の厚みの1%〜5%程度であり、内部酸化層20の厚みが例えば1〜2μm程度であった場合、外部酸化層30の厚みは0.04μm程度である。
ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板1は、質量%で、C≦0.006%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部は、不可避的不純物およびFeからなる鋼板である。また、無方向性電磁鋼板1は、上述の成分に加えて、更に、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含んでいてもよい。
なお、Cr添加鋼の問題点として、窒化に関する問題があった。窒化は、再結晶焼鈍において雰囲気中の窒素(N)が鋼板表面から拡散によって侵入することで生じ、鉄損特性を劣化させる。そこで、この窒化を抑制するために、無方向性電磁鋼板1は、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を更に含んでいてもよい。
無方向性電磁鋼板(以下、電磁鋼板とも称する。)1に含まれる炭素量(C量)は、質量%で0.006%以下である。また、鋼板10に含まれる炭素量は、質量%で0.003%以下であることが好ましい。電磁鋼板の母材中の炭素量が0.006%超過である場合には、磁気時効に問題が生じる可能性がある。また、無方向性電磁鋼板中の炭素量が0.003%以下である場合には、特に歪取焼鈍後に優れた磁気特性が得られるので、より好ましい。
電磁鋼板1に含まれるクロム量(Cr量)は、質量%で、0.3%以上4%以下である。鋼板中にCrが含有されることで、電磁鋼板を脆化させることなく、固有抵抗を増大させることが可能となる。また、電磁鋼板中のCr量を上述の範囲とすることで、以下で説明するような内部酸化層を形成することが可能となる。なお、鋼板中のCr量が上述の範囲外である場合には、鋼板10の表面が酸化しなくなるため、好ましくない。なお、電磁鋼板1に含まれるCr量は、質量%で0.5%以上3.5%以下であることが更に好ましい。これは、再結晶焼鈍において、表面に針状の酸化物がより明瞭に観察されるようになることから、より良好な内部酸化層を形成することが可能となるためである。
電磁鋼板1に含まれるケイ素量(Si量)は、質量%で1%以上4%以下である。電磁鋼板中にSiが含有されることで、鉄損を改善することが可能となる。電磁鋼板中のSi量を上述の範囲とすることで、鉄損を改善しつつ、かつ、以下で説明するような内部酸化層を形成することが可能となる。電磁鋼板中のSi量が1%未満である場合には、以下で説明するような内部酸化層を形成することができない。また、電磁鋼板中のSi量が4%超過である場合には、脆化が大きくなるため、好ましくない。なお、電磁鋼板1に含まれるSi量は、質量%で1.5%以上3.5%以下であることが更に好ましい。これは、再結晶焼鈍において、表面に針状の酸化物がより明瞭に観察されるようになることから、より良好な内部酸化層を形成することが可能となるためである。
電磁鋼板1に含まれるアルミニウム量(Al量)は、質量%で0.4%以上3%以下である。鋼板中にAlが含有されることで、鉄損を改善することが可能となる。電磁鋼板中のAl量を上述の範囲とすることで、鉄損を改善しつつ、かつ、以下で説明するような内部酸化層を形成することが可能となる。電磁鋼板中のAl量が0.4%未満である場合には、以下で説明するような内部酸化層を形成することができない。また、電磁鋼板中のAl量が3%超過である場合には、脆化が大きくなるため、好ましくない。なお、電磁鋼板1に含まれるAl量は、質量%で0.5%以上2.5%以下であることが更に好ましい。これは、再結晶焼鈍において、表面に針状の酸化物がより明瞭に観察されるようになることから、より良好な内部酸化層を形成することが可能となるためである。
電磁鋼板1が更にマンガンを含む場合、電磁鋼板1に含まれるマンガン量(Mn量)は、質量%で1.5%以下であることが好ましい。電磁鋼板中にMnが上述の含有量で含有されることで、電磁鋼板の固有抵抗を増大させ、鉄損を改善することが可能となる。なお、電磁鋼板中のMn量が1.5%超過である場合には、電磁鋼板に脆性の問題が生じるため、好ましくない。
電磁鋼板1が更に硫黄を含む場合、電磁鋼板1に含まれる硫黄量(S量)は、質量%で0.003%以下であることが好ましく、0.002%以下であることが更に好ましい。電磁鋼板中のS量が0.003%超過である場合には、電磁鋼板中にMnS等の硫化物が増加し、電磁鋼板における磁壁の移動が阻害されることとなって電磁鋼板の磁気特性が劣化するため、好ましくない。0.002%以下であれば、硫化物がさらに減少するので鉄損が改善され、より好ましい。
電磁鋼板1が更に窒素を含む場合、電磁鋼板1に含まれる窒素量(N量)は、質量%で0.003%以下であることが好ましい。電磁鋼板中のN量が0.003%超過である場合には、電磁鋼板に、ブリスターと称されるフクレ状の表面欠陥が生じるため、好ましくない。
電磁鋼板1が更にスズを含む場合、電磁鋼板1に含まれるスズ量(Sn量)は、質量%で0.01%以上0.15%以下であることが好ましい。電磁鋼板中にSnが上述の含有量で含有されることで、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を防止することが可能となる。なお、電磁鋼板中のSn量が0.01%未満である場合には、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を十分に防止することができないため、好ましくない。また、電磁鋼板中のSn量が0.15%超過である場合には、再結晶焼鈍時における窒化を防止する効果が飽和するため、コスト面から好ましくない。
電磁鋼板1が更にアンチモンを含む場合、電磁鋼板1に含まれるアンチモン量(Sb量)は、質量%で0.005%以上0.05%以下であることが好ましい。電磁鋼板中にSbが上述の含有量で含有されることで、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を防止することが可能となる。なお、電磁鋼板中のSb量が0.005%未満である場合には、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を十分に防止することができないため、好ましくない。また、電磁鋼板中のSb量が0.05%超過である場合には、再結晶焼鈍時における窒化を防止する効果が飽和するため、コスト面から好ましくない。
スズまたはアンチモンが鋼板中に含有されることで、以下で説明するような内部酸化層が形成される最終段階において、スズまたはアンチモンの薄い酸化層が、母材である鋼板10と内部酸化層20との境界近傍に、二次元の膜状に(すなわち、図1におけるxy平面と平行となるように)形成される。この薄い酸化層により窒素の侵入がブロックされ、電磁鋼板の窒化が防止されると考えられる。
なお、スズまたはアンチモンは、鋼板中に単独で含有された場合であっても窒化防止効果を奏する元素であるが、鋼板中にスズおよびアンチモンの双方が含有された場合であっても、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を効果的に防止することが可能である。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、以下で説明するような内部酸化層が形成されることにより、再結晶焼鈍時により窒化が生じやすい。そのため、スズおよびアンチモンの少なくとも何れか一方を鋼板10に含有させることで、再結晶焼鈍時における鋼板の窒化を効果的に防止することが可能となるだけでなく、電磁鋼板の鉄損を改善することが可能となる。
また、電磁鋼板1中には、工業的にはゼロppmとはできない不可避的不純物が含有されていてもよい。かかる不可避的不純物として、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、リン(P)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、酸素(O)等の元素を挙げることができる。これらの不可避的不純物のうち、特にTi、Nb、V、Zr、O等は、含有量が微量であっても、微細な析出物を形成して鋼板の鉄損を劣化させるため、かかる元素の含有量は、0.005%以下であることが好ましい。
このように、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板1は、主に、母材である鋼板10、内部酸化層20および外部酸化層30の3層構造となっており、内部酸化層20中には、針状の酸化物21が、当該酸化物の長軸方向が鋼板の厚み方向と平行となるように形成されている。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板1は、このような構造を有することにより、再結晶焼鈍時に脱炭を容易に実行可能であり、優れた鉄損特性を実現することが可能となる。
<無方向性電磁鋼板の製造方法>
続いて、図2および図3を参照しながら、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を説明するための流れ図であり、図3は、本実施形態に係る再結晶焼鈍工程を説明するための説明図である。
[製造方法の概略について]
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を詳細に説明するに先立ち、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の概略について、まず説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、先に説明したように、針状の酸化物が林立している内部酸化層を含む点に特徴がある。かかる構造の内部酸化層を冷延板に形成することで、冷延板を1000℃程度の高温加熱状態でも脱炭させることが可能となる。
この内部酸化層は、主成分であるSiO等の酸化物が板厚方向に針状に成長した部分と、互いに隣り合う酸化物間に存在するFe母材からなる部分とを含む。このような針状の酸化物が林立した内部酸化層は、少なくともFe、Si、AlおよびCrの4つの元素を所定の含有量で含む系に対して、所定の条件で再結晶焼鈍を実施することで形成される。すなわち、上述の内部酸化層は、Si−Al−Crの各元素の量が特定の領域に属する鋼板に対して、再結晶焼鈍の均熱過程を酸化性雰囲気で実施することにより形成される。このような鋼板に対して酸化性雰囲気で均熱過程を実施すると、爆発的な酸化物形成が生じ、この際に、SiOを主成分とする酸化物が、鋼板の表面から内層に向かって急激に成長する。
母材である冷延板に含まれる炭素は、Fe母材からなる部分を通路として利用することで鋼板の外部に拡散し、外部雰囲気のHOと反応することで、鋼板内部から除かれる。その結果、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、高温での脱炭が可能となる。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、高温での脱炭が可能となることによって、再結晶焼鈍工程の温度および時間に関する熱履歴サイクルとして、従来の無方向性電磁鋼板の製造過程における熱履歴サイクルを雰囲気以外は何ら変更することなく、適用することができる。その結果、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、脱炭を行いつつ、所望の磁気特性を得るための再結晶焼鈍工程を行うことが可能となる。これにより、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、従来の無方向性電磁鋼板の製造方法では必須であった700℃〜800℃での脱炭焼鈍工程が不要となる。
以上、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の概略を説明した。以下では、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法を、順を追って詳細に説明する。
[製造方法の全体的な流れについて]
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法は、例えば図2に示したように、製鋼工程S11と、熱間圧延工程S13と、熱延板の焼鈍工程S15と、冷間圧延工程S17と、再結晶焼鈍工程S19と、を主に含む。
製鋼工程S11は、所望の成分を含む鋼材を製造する工程である。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造するためには、質量%で、C≦0.007%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部が不可避的不純物およびFeであることが必要である。ここで、炭素量が質量%で0.007%超過である場合には、後述する再結晶焼鈍工程において脱炭が行われたとしても、最終的な炭素量を質量%で0.006%以下とすることができない可能性があり、無方向性電磁鋼板の磁気時効に問題が生じる可能性があるため好ましくない。また、Cr量、Si量、Al量を上述の範囲とする理由は、先に説明したとおりである。
また、先に説明したように、成分調整後の鋼材は、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含んでいてもよい。また、成分調整後の鋼材は、質量%で、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。
製鋼工程S11後に実施される熱間圧延工程S13は、成分調整後の鋼材を熱間圧延し、熱延材とする工程である。熱間圧延に際し、鋼材(例えばスラブ)の加熱については特に制限するものではないが、微細な析出物の発生を防止するために、950〜1200℃程度の低温とすることが好ましい。また、製造される熱延板の板厚は、特に制限するものではないが、0.8〜3.0mm程度とする。
熱間圧延工程S13後に実施される熱延板の焼鈍工程S15は、熱間圧延工程において製造された熱延板を焼鈍する工程である。熱延板を焼鈍することで、鋼板の磁束密度を向上させ、ヒステリシス損の低減を図ることが可能となる。この熱延板の焼鈍は、例えば、連続焼鈍により行うことが可能である。熱延板の焼鈍温度は、コイルの均熱性を考慮して、例えば800〜1100℃とすることが好ましい。
なお、この熱延板の焼鈍工程S15の実施前または実施後に、熱延原板または熱延板に生成した酸化物スケールを塩酸等の酸を用いて洗い流す酸洗工程を行ってもよい。
熱延板の焼鈍工程S15後に実施される冷間圧延工程S17は、熱延板を冷間圧延して、所望の板厚の冷延板を製造する工程である。冷間圧延は、通常のリバース圧延またはタンデム圧延により行うことが可能であるが、ゼンジマーミル等を用いるリバース圧延の方が、高い磁束密度の冷延板を製造することができるため、好ましい。また、脆性破断を防止するために、40〜200℃で温間圧延することも好ましい。冷延板の板厚は、高周波磁気特性を改善するために薄い方がよく、例えば、0.1〜0.5mmとすることが好ましい。
冷間圧延工程S17後に実施される再結晶焼鈍工程S19は、焼鈍により結晶組織を再結晶させることで、圧延時に鋼板に生じた加工歪みを取り除く工程である。この再結晶焼鈍工程については、図3を参照しながら以下で改めて詳細に説明する。
かかる手順を経ることで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板が製造される。なお、この再結晶焼鈍工程S19の後には、通常、絶縁被膜の塗布および焼付け処理が行われる。この絶縁被膜は、有機物であってもよく、無機物であってもよく、有機物と無機物との混合物であってもよい。
このようにして製造された無方向性電磁鋼板は、所望の形状に打ち抜かれた後に積層され、モータコアとして利用されたり、積層されたモータコアを700〜800℃程度で歪取焼鈍した後に使用したりする。
[再結晶焼鈍工程について]
続いて、図3を参照しながら、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法で実施される再結晶焼鈍工程について、詳細に説明する。
再結晶焼鈍工程は、例えば図3に示したように、i)加熱過程、ii)均熱過程、iii)冷却過程の3つに区分される。
加熱過程は、再結晶焼鈍を実施する冷延板を、所望の温度まで加熱する過程である。この加熱過程では、常温の冷延板を、ラジアントチューブ型の加熱方法または無酸化炉(Non Oxygen Furnace:NOF)等を利用して、900℃程度まで加熱させる。なお、加熱時間は、目的とする温度に応じて適宜調整することが可能である。
加熱過程での炉内の雰囲気は、水素(H)+窒素(N)+水蒸気(HO)からなる混合ガスとし、酸化性雰囲気であることが好ましい。加熱過程から酸化性雰囲気とすることで、より容易に鋼板中に含まれる炭素を脱炭することが可能となる。なお、鋼板の加熱に無酸化炉を用いる場合には、無酸化炉の直火バーナ燃焼ガスを鋼板の加熱に利用することも可能である。無酸化炉は、通常900℃程度までの加熱に用いられるが、この燃焼ガスは、CO、CO、HO、H、O、Nなどの多くの成分を含んだガスである。したがって、この燃焼ガスを利用することで、容易に所望の酸化性雰囲気を実現することが可能となる。なお、加熱過程での露点は、少なくとも30℃以上であることが好ましい。
また、加熱過程において所定の温度以上となると、酸化が始まって内部酸化層20が形成され始めるが、酸化の初期過程に強酸化性雰囲気とすることで、針状の酸化物を有する内部酸化層20が発達しやすくなる。そこで、加熱過程での炉内の雰囲気を、PH2O/PH2で表される水蒸気分圧が0.05〜5である酸化性雰囲気とすることが好ましい。なお、PH2Oは水蒸気成分(HO)の分圧であり、PH2は水素成分(H)の分圧である。水蒸気分圧が0.05未満である場合には、脱炭を行うことができないため、好ましくない。また、水蒸気分圧が5超過である場合には、鋼板の表面にガスマークと呼ばれる酸化むらが生じ、商品としての外観が損なわれるため、好ましくない。
均熱過程は、炉内の温度を所定範囲内で維持して、鋼板の脱炭および鋼板内の結晶組織の再結晶を主に行う過程である。
ここで、本実施形態に係る内部酸化層20を形成するためには、均熱過程において、900〜1100℃で焼鈍を行うことが必要である。ここで、焼鈍温度が900℃未満である場合には、脱炭に要する時間が長くなるため、好ましくない。また、焼鈍温度が1100℃以上である場合には、再結晶焼鈍を行う焼鈍炉の耐火物やハースロール等に対する損傷が大きくなるため、好ましくない。
また、本実施形態に係る内部酸化層20を形成するためには、均熱過程での炉内の雰囲気を、酸化性雰囲気とすることが必要である。より詳細には、均熱過程での雰囲気は、水素(H)+窒素(N)+水蒸気(HO)からなる混合ガスとし、PH2O/PH2で表される水蒸気分圧を、0.05〜0.8とすることが必要である。ここで、水蒸気分圧が0.05未満である場合には、脱炭を行うことができないため、好ましくない。また、水蒸気分圧が0.8超過である場合には、形成される内部酸化層20の膜厚が厚くなりすぎて高周波鉄損が劣化するため、好ましくない。水蒸気分圧を調整することで、鋼板中のケイ素と結合する酸素の量を調整することができ、形成される内部酸化層20の膜厚を制限できる。そこで、本実施形態では、均熱過程の水蒸気分圧を0.05〜0.8とすることで、形成される内部酸化層20の膜厚を0.2μm以上4μm以下に制限することが可能となる。
なお、均熱時間(図3においてt2−t1で表される時間)は、例えば、1秒〜100秒とすることが好ましい。均熱時間を長くすれば脱炭量も多くなるが、生産性は阻害されるからである。また、脱炭量は、10ppm(0.0010質量%)以上とすることが好ましいが、かかる脱炭量は、針状の酸化物を有する内部酸化層が形成されることで、十分に達成可能な脱炭量である。
また、再結晶焼鈍により生成される結晶の粒径は、例えば、30μm〜130μmであることが好ましい。この結晶粒径は、例えば、100倍程度の光学顕微鏡による組織観察により測定することが可能である。また、この結晶粒径は平均の粒径であって、通常の線分法(直線を横切る結晶粒界と交点の数をカウントする方法)で決定できる。
冷却過程は、均熱過程を経た鋼板を、所望の温度まで冷却する過程である。ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板のようにCrを含有する電磁鋼板においては、単にSiのみを含む鋼よりも鉄損の歪感受性が強く、特に、高周波でかつ低磁場の鉄損には、再結晶焼鈍後の鋼板中の残留応力が効いていることがわかった。この残留応力は、鋼板の幅方向への圧縮であり、この幅方向の鉄損劣化が大きい。そのため、再結晶焼鈍後の無方向性電磁鋼板に残留する応力を軽減することが望ましい。かかる残留応力を軽減することで、残留磁束密度を向上させることが可能となる。
かかる再結晶焼鈍での残留応力を軽減するためには、再結晶焼鈍における冷却速度を徐冷とすることで改善できることがわかった。より詳細には、900℃から300℃までの冷却速度を、30℃/sec以下とすることで、再結晶焼鈍での残留応力を軽減できることがわかった。また、冷却速度は、生産性の点から、1℃/sec以上であることが好ましい。また、炉中張力は、0.5〜6MPaと、やや低目の値であることが好ましい。なお、300℃以下の温度では残留歪がほとんど入らないため、冷却速度は制御しなくともよい。
以上、本実施形態に係る再結晶焼鈍工程について、詳細に説明した。
従来の一般的な再結晶焼鈍過程での雰囲気は、水素と窒素とを混合したガスを利用した還元性雰囲気であったが、この還元性雰囲気では、鋼板中に含まれる炭素を脱炭することができない。そこで、本実施形態に係る再結晶焼鈍工程では、以上説明したように、少なくとも均熱過程の雰囲気を酸化性雰囲気とする。これにより、形成された内部酸化層20中のFe母材からなる部分23を通路として鋼板中の炭素が雰囲気中に分散することが可能となり、鋼板中に含まれる炭素の脱炭を行うことが可能となる。
(実施例)
以下では、実施例を示しながら、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法について、詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法の一例であって、本発明に係る無方向性電磁鋼板および無方向性電磁鋼板の製造方法が、以下の例に限定されるわけではない。
<実施例1>
実験室での真空溶解試験により、表1に示す成分を溶解鋳造し、2mm厚まで熱間圧延した。1000℃で1分間、N中で熱延板焼鈍し、その後酸洗、冷間圧延して、0.30mmとした。次いで、雰囲気を80%H+20%Nとし、水蒸気を20℃露点とした、1000℃で15秒間の均熱過程を含む再結晶焼鈍を行った。水蒸気分圧PH2O/PH2は、0.14であった。
再結晶焼鈍後に、炭素(C)成分および窒素(N)成分について化学分析を行うとともに、内部酸化層を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)により観察した。内部酸化層の厚みの測定は、鋼板中央の10mm幅をSEMにより測定し、得られた測定値を平均化した。再結晶焼鈍された鋼板は、100mm角に打ち抜かれてから、750℃で2時間、N雰囲気で歪取焼鈍を行い、400Hzでの磁気特性を単板磁気特性測定装置(JIS C 2550に準拠)により測定した。また、内部酸化層のSEM観察では、再結晶焼鈍後の鋼板断面を研磨後、通常の光学顕微鏡下で金属組織観察用のナイタル腐食を施してから、SEMにより鋼板断面を観察した。得られた結果を、表2、図4Aおよび図4Bに示す。
表1および表2に示すように、Cr−Si−Alの3種の含有量が、本発明に係る範囲に含まれるものは、針状の内部酸化層が形成され、脱炭が可能であった。また、針状の酸化物が形成される場合には窒化の傾向が認められるが、SnまたはSbの添加によって、窒化を抑制する効果が認められた。
図4Aは、実験No.12でのSEM画像であり、内部酸化が針状に鋼板厚み方向に進行していることが分かる。他方、図4Bは、実験No.1でのSEM画像であり、内部酸化層が従来のように鋼板面方向の2次元的な膜として発達していることが分かる。
<実施例2>
質量%で、0.0040%C、1%Cr、3%Si、1%Al、0.2%Mn、0.001%S、0.001%N、0.02%Snを含む溶鋼を連続鋳造して、1100℃で加熱し、1.5mm厚の熱延コイルとした。次いで、1100℃で2分間の焼鈍をN中で実施してから酸洗し、冷間圧延で0.25mm厚とした。この冷延板を、実験室で、再結晶焼鈍の均熱温度や均熱時間、加熱と均熱での雰囲気などを変更する試験を行った。均熱時間は、すべて10秒とした。冷却雰囲気はNとし、冷却速度は20℃/秒で一定とした。再結晶焼鈍後に実施例1と同様に分析、組織観察および磁気測定を行い、表3を得た。なお、この実施例2では、歪取焼鈍は実施しなかった。
表3に示すように、本発明に係る範囲に含まれる温度・雰囲気によって、針状の内部酸化層が得られ、目的の脱炭量が確保され、優れた高周波鉄損が得られることが分かった。
また、表3の実験No.3に示した条件と同一の条件で、実際の操業に用いられる設備を利用して無方向性電磁鋼板を製造し、製造した無方向性電磁鋼板に対して、実施例1と同様に分析、組織観察および磁気測定を行った。その結果、針状の酸化物を有する厚み1.6μmの内部酸化層が形成され、W10/800は、31.4W/kgとなった。この結果から明らかなように、実際の操業に用いられる設備を利用して無方向性電磁鋼板を製造した場合にも、実験室で無方向性電磁鋼板を製造した場合と同様の結果が得られた。
<実施例3>
実施例2の実験No.8の再結晶焼鈍温度・雰囲気において、冷却900℃から300℃の速度をコントロールして実験を行った。得られた鉄損の結果を、表4に示す。
表4に示すように、本発明に係る範囲に含まれる冷却速度で冷却を行うことで、優れた高周波鉄損が得られた。なお、この高周波鉄損については、特に、鋼板幅方向に励磁したときの鉄損劣化が著しかった。ここで、L方向は圧延方向のことであり、C方向は圧延方向に対して垂直な幅方向のことである。C量や内部酸化層構造、厚みについては、実施例の実験No.8で得られている結果と、まったく同一であった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 無方向性電磁鋼板
10 鋼板
20 内部酸化層
21 酸化物
23 Fe母材からなる部分
30 外部酸化層

Claims (11)

  1. 質量%で、C≦0.006%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部は、不可避的不純物およびFeからなり、
    SiO を主体とする針状の酸化物とFe母材からなる部分とを有する酸化物層が鋼板の表面近傍に位置し、
    前記針状の酸化物は、当該酸化物の長軸方向が前記鋼板の厚み方向と平行であることを特徴とする、無方向性電磁鋼板。
  2. 前記酸化物層の厚みは、0.2〜4μmであることを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 前記無方向性電磁鋼板は、更に、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 前記無方向性電磁鋼板は、更に、質量%で、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 質量%で、C≦0.007%、Cr:0.3〜4%、Si:1〜4%、Al:0.4〜3%を少なくとも含み、残部が不可避的不純物およびFeからなる熱延板を焼鈍する工程と、
    焼鈍された前記熱延板を冷間圧延して冷延板とする工程と、
    前記冷延板を再結晶焼鈍する工程と、
    を含み、
    前記再結晶焼鈍の均熱過程を、900〜1100℃、かつ、水蒸気分圧PH2O/PH2が0.05〜0.8である酸化性雰囲気とすることで、SiO を主体とする針状の酸化物とFe母材からなる部分とを有し、当該針状の酸化物の長軸方向が鋼板の厚み方向と平行である酸化物層を前記冷延板の表面近傍に形成することを特徴とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 前記再結晶焼鈍では、水蒸気分圧PH2O/PH2が0.05〜5である酸化性雰囲気で900℃まで昇温を行うことを特徴とする、請求項5に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記酸化物層の厚みは、0.2〜4μmであることを特徴とする、請求項5または6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 前記熱延板は、更に、質量%で、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%を含むことを特徴とする、請求項5〜6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  9. 前記熱延板は、更に、質量%で、Sn:0.01〜0.15%およびSb:0.005〜0.05%の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  10. 前記再結晶焼鈍では、900℃まで昇温を行う昇温過程を、直火雰囲気とすることを特徴とする、請求項5〜9のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
  11. 前記再結晶焼鈍では、前記均熱過程後に行われる900℃から300℃までの冷却過程の冷却速度を、1〜30℃/sとすることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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