JP5422841B2 - 生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法及び判定装置 - Google Patents

生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法及び判定装置 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックスの生体適合性を判定する装置及び方法に関し、さらに詳しくは表面プラズモン共鳴(SPR)素子を使用してセラミックスの生体適合性を判定する装置及び方法に関する。
近年、わが国を含む先進国では高齢化社会を迎え、人工骨や人工関節の需要は益々高まっている。こうした製品は人体(人体中の生体分子)と適合可能な生体適合性の材料であることが要求される。生体適合性材料として有望な材料にセラミックスがある。
生体と材料との生体適合性を評価する手法として、生体と材料との巨視的な適合性を評価する手法と、微視的な適合性を評価する手法と、がある。
生体(骨)へのチタン製インプラント材を例にとると、「巨視的な適合性」とはチタンと骨との相互作用を意味するが、実際にはチタン表面には酸化チタンが存在しその周辺には生体液が介在している(すなわち、チタン−酸化チタン−生体液−骨)ため、この酸化チタンと生体液(タンパク質)との微視的な相互作用を把握する必要があり、これを「微視的な適合性」と呼ぶ。
前者の巨視的な適合性を評価する手法として、国際標準化機構(ISO,International Organization for Standardization)のISO10993が知られており、また、米国材料試験協会(ASTM,American Society of Testing and Materials)のASTM750が知られている。しかしながら、これらの方法は数日〜数ヶ月の長期間にわたる試験方法であるとともに、臨床前段階の試験方法である。
後者の微視的な試験方法は、生体適合性材料を検討する初期段階における試験方法であり、前者の試験方法に比べて未だ確立された方法は存在していないが、例えば、非特許文献1及び2に開示されているように、セラミックス材料に吸着したバクテリアを一定期間培養しコロニーを形成させて、そのコロニー数をカウントする方法や、セラミックス材料に吸着したタンパク質を緩衝液中に脱離させた後、遠心分離によって吸着したタンパク質量を分光分析又は熱分析によって定量する方法を使用していた。
しかしながら、このような従来の微視的な生体適合性を評価する方法では、材料に吸着したバクテリア等のコロニー数を目視でカウントする等の手作業が必要となり、評価者への肉体的負担が掛かる点や評価の精度が必ずしも高くない点といった問題があった。
一方、DNA、タンパク質、糖鎖などを検出するバイオセンサーとして、表面プラズモン共鳴(SPR,Surface Plasmon Resonance)を用いる技術が知られている。
この技術は、通常、ガラス上に貴金属(金あるいは銀)を蒸着し、このガラスの当該貴金属を蒸着した面と反対側の面とを、屈折率調節オイルを介して光学プリズムと密着させた構造からなり、レーザー光あるいは白色光を、プリズムを通してガラス上の金属に照射し、その反射光の強度を検出するものである。
入射光はガラスに対して全反射となる条件で入射され、このとき、光が入射された側と逆側の金属表面側に染み出すエバネッセント波によって、ある入射角でSPR(表面プラズモン共鳴)が発現する。SPRが起こると、エバネッセント波は表面プラズモン波によって吸収されるので、その入射角付近では反射光の強度が著しく減少する。
SPRが発現する入射角や、SPRが発現している入射角付近における反射光強度は、金属の表面上の付着物の厚さ、屈折率又は誘電率等によって変化する。このことを利用し、金属の表面上に被検出試料と結合あるいは吸着する物質(生体認識基、抗体、結合物質とも呼ばれる)を修飾し、被検出試料が生体認識基付近に結合あるいは吸着した際に生じる入射角や反射率の変化を検出し、被検出試料の結合量(膜厚あるいは質量)を得るのが、SPRセンサーである(例えば、特許文献1参照)。
本発明者等は従来のSPRセンサーを改善することにより、つまりセンサーの金属(金,Au)表面上にさらにセラミックス材料を積層させた構造やこのセラミックス材料の上にさらに金属(Au)を積層させてこのセラミックス材料を中間層とした構造とすることにより、SPRセンサーの高感度化が期待できることを報告している(非特許文献3〜5)。
しかしながら、これらのSPRセンサーは、上述の通り、一方の生体分子(生体認識基)9を金属3の表面上に修飾させ、他方の生体分子8を被検出試料としてセンサー近傍のセル内に注入して金属3の表面上に接触させて、生体分子8,9間の相互作用を検出するものである(図12(a)参照)が、セラミックス材料4と生体分子8との相互作用を検出するもの(図12(b)参照)ではなかった。
特開2002−357542号公報(第7−9頁,第9図) ヘレン・ラーセリックドッター(Helen Larsericsdotter)、外2名、「ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)」、(U.S.A)、アカデミック・プレス(Academic Press)、2001年5月1日、第237巻、第1号、p.99 シー・リウ(C. Liu)、外4名、「コロイズ・アンド・サーフェイシーズ・ビー:バイオインターフェイシーズ(Colloids and Surfaces B: Biointerfaces)」、(U.S A)、エルゼビア社(Elsevier B. V.)、2008年2月15日、第61巻、第2号、p.184 岸本、外2名、「SPRセンサーの高感度化を目指した大気開放型CVD法による薄膜中間層の効果」、第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第2分冊、平成19年9月4日、p.661 小西、外3名、「表面プラズモン共鳴を利用したアモルファスSiO2薄膜の評価」、第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第2分冊、平成19年9月4日、p.662 長尾、外3名、「表面プラズモン共鳴を用いたTiO2薄膜の構造解析」、第68回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第2分冊、平成19年9月4日、p.662
従って、本発明はこれらの従来技術の問題点を解消し、生体分子とセラミックス材料との微視的な生体適合性を高精度に評価できる評価方法及び評価装置を安価に提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、金属表面上にセラミックス材料をさらに積層させたSPR素子を作成し、この素子上に被検出試料の生体分子が注入されるセルを配置した構成のSPR生体適合性評価装置にSPR測定やXRR測定を含んだ光学特性解析を行うことによって、上記課題が解決されることを発見し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明では次の構成を採用する。
1.光学プリズムに金属薄膜を積層し、SPR素子を作成するSPR素子作成ステップと、
前記金属薄膜の表面上に2nm〜25nmの膜厚を有したセラミックス薄膜を積層する最表層積層ステップと、
前記セラミックス薄膜の表面上に生体分子注入セルを配置するセル配置ステップと、
前記生体分子注入セル内に緩衝液のみを注入してSPR角を測定する第1のSPR角測定ステップと、
前記生体分子注入セル内に生体分子溶液を溶かした緩衝液を注入してSPR角を測定する第2のSPR角測定ステップと、
前記生体分子注入セル内に再び緩衝液のみを注入してSPR角を測定する第3のSPR角測定ステップと、
上記ステップにより測定されたSPR角を比較する比較ステップと、
を含み、かつ、
前記セラミックス薄膜は、水素化アモルファス炭素薄膜又はアモルファス炭素薄膜であることを特徴とする生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法。
2.前記SPR素子作成ステップにはスパッタリング法が使用され、かつ、
前記最表層積層ステップには大気開放型CVD法が使用されることを特徴とする前記1に記載の判定方法。
3.前記最表層積層ステップの後に、前記セラミックス薄膜の表面を改質するか否かを選択するステップをさらに含み、かつ、
前記ステップで前記表面を改質する選択した場合には疎水化処理又は親水化処理を施すことを特徴とする前記1又は2に記載の判定方法。
4.前記SPR素子作成ステップと最表層積層ステップとを用いて、前記セラミックス薄膜の膜厚が異なったSPR素子を複数作製するステップと、
前記作製されたSPR素子に対してX線反射率測定とSPR角測定とを行う解析ステップと、
前記解析ステップから得られた測定結果から生体適合性判定に最適な膜厚のセラミックス薄膜を特定する特定ステップと、
を含んだ予備光学特性解析ステップをさらに含み、かつ、
前記予備光学特性解析ステップを行った後に、最適な膜厚のセラミックス薄膜を有するSPR素子を用いて、前記判定方法の各ステップを実行することを特徴とする前記1〜のいずれかに記載の判定方法。
5.前記SPR素子作成ステップと最表層積層ステップとを用いて、前記セラミックス薄膜の密度が異なったSPR素子を複数作製するステップと、
前記作製されたSPR素子に対してX線反射率測定とSPR角測定とを行う解析ステップと、
前記解析ステップから得られた測定結果から生体適合性判定に最適な密度のセラミックス薄膜を特定する特定ステップと、
を含んだ予備光学特性解析ステップをさらに含み、かつ、
前記予備光学特性解析ステップを行った後に、最適な密度のセラミックス薄膜を有するSPR素子を用いて、前記判定方法の各ステップを実行することを特徴とする前記1〜のいずれかに記載の判定方法。
6.前記1〜のいずれかに記載の生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法に用いられる判定装置であって、
光学プリズムに中間層の金属薄膜と最表層のセラミックス薄膜とが積層されたクレッシュマン配置のSPR素子と、
前記セラミックス薄膜の表面を覆うように配置された生体分子注入セルと、を備え、
前記生体分子注入セルには、生体分子を注入する注入口と排出口とが設けられ、かつ、
前記セラミックス薄膜は、水素化アモルファス炭素薄膜又はアモルファス炭素薄膜であることを特徴とする判定装置。
本発明の生体適合性判定方法及びこれに用いられる生体適合性判定装置は次のような顕著な効果を奏するものである。
(1)セラミックス薄膜と生体分子との適合性判定にSPR角測定を使用しているため、評価者の評価作業負担(目視確認等)を排除するとともに、評価精度を高めることが可能となる。
(2)セラミックス薄膜の積層ステップに大気開放型CVD法を使用することで、真空引き等に要する複雑な装置構成、コスト及び時間を掛けることなく薄膜を合成することができる。つまり、簡素な設備により、セラミックス薄膜の種類や膜厚等の試験条件が異なる多くの供試材料を用いて迅速に生体適合性評価が行うことができる。
(3)セラミックス薄膜の表面を改質するか(例えば、親水性表面又は疎水性表面のいずれか)を選択することにより、同一セラミックス材料における表面状態の違いが生体適合性に影響するかを検討でき、評価対象の生体分子に対して好適な表面を特定することができる。
(4)セラミックス薄膜と生体分子との生体適合性を判定する前(すなわち、セラミックス薄膜を備えたSPR素子と生体分子とを接触させた状態のSPR角測定を行う前)に、セラミックス薄膜を備えたSPR素子のみに対して、予備的に光学特性解析を行うことにより、生体適合性判定方法に最適なセラミックス薄膜の構造パラメータ(膜厚、密度等)を特定することができる。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
図1は本発明の生体適合性判定方法に用いられる判定装置の概略を示す図、図2は本発明の生体適合性を判定する判定方法の主要なステップを示すフローチャート、図3は本発明の予備光学特性解析ステップを示すフローチャート、図4は本発明の実施例1(チタニア薄膜付きSPR素子)の素子自体のSPR角測定結果の一例を示した図、図5は本発明の実施例1の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図、図6は本発明の実施例1の生体適合性判定結果を示す図、図7は本発明の実施例2(シリカ薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図、図8は本発明の実施例2の生体適合性判定結果を示す図、図9は本発明の実施例3(アルミナ薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図、図10は本発明の実施例3の生体適合性判定結果を示す図、図11は本発明の実施例4(水素化アモルファス炭素薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図、図12は従来のSPR素子と本発明のSPR素子の構成及び検出対象を示した図である。なお、各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
図1は本発明の生体適合性判定方法に用いられる判定装置1を示す。判定装置1は、光学プリズム2の一面に金属薄膜3及びセラミックス薄膜4が配置されたSPR素子5を備える。図1に示すようなSPR素子5の配置はクレッシュマン(Kretschmann)配置と呼ばれる。セラミックス薄膜4の表面上には、緩衝液7及び生体分子溶液8が注入される生体分子注入セル6が配置されており、このセル6にはこれらの液体を注入又は排出させるための注入口6a又は排出口6bを有する。この生体分子注入セル6が配置されたSPR素子5はゴニオメーター(図示せず)に装着される。ここで、ゴニオメーターは角度計、測角器などとも言い、入射光の角度を測定するのに使われる角度計である。励起光光源10から発生される入射光13は絞り11及び偏光子12によってp偏光の光波とする。これは表面プラズモンがp偏光の光波のみと結合するためである。
以上の操作によってp偏光となった入射光13は光学プリズム2に入射する。本発明では、被分析対象であるSPR素子5の薄膜3,4及び溶液7,8に全反射した光を検出する全反射減衰法(ATR,Attenuated Total Reflectance)を採用しているため、入射光13は薄膜3,4の表面で全反射する角度範囲で、入射角度を変化させながら入射されるが、ある特定の角度で表面プラズモン波を励起してそのときの反射光14の強度を低下させる。ここで、生体分子8とセラミックス薄膜4との相互作用(例えば、セラミックス薄膜4への生体分子8の吸着)が起こり、被分析対象の屈折率、誘電率等が変化した場合には、表面プラズモン波が励起される前記入射角度(共鳴角)が変化するため、生体分子8がセラミックス薄膜4の表面上に吸着したかどうかを確認できる。
光学プリズム2から出射した反射光14は光検出器15に入射され、前記入射角度の変化に対応する反射光14の反射光強度が測定される。
生体分子8とは、多数の単量体が脱水縮合によって結合した分子(高分子も含む)であり、例えば、糖質、タンパク質、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)等がある。本発明の評価においては、「微視的な適合性」を評価するためタンパク質が好ましい。
図2は、本発明のセラミックス薄膜と生体分子との生体適合性を判定する判定方法の主要なステップ(以下、メインフロー100と呼ぶ。)を示すフローチャートである。
本発明の前記判定方法を実行するには、まず、セラミックス薄膜4の種類を設定する(ステップ101)。ここで、セラミックス薄膜4の材料には、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、アルミナ(Al)、イットリア(Y)、及びジルコニア(ZrO)等の酸化物系セラミックスを用いるのが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、炭化物系セラミックスや窒化物系セラミックスを用いてもよいし、非晶質(アモルファス)のダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いてもよい。なお、DLCには水素化アモルファス炭素薄膜又はアモルファス炭素薄膜が含まれ、本発明の判定方法にはどちらの材料を使用してもよい。
次のステップ102では、光学プリズム2上に金属薄膜3を積層する。ここで、金属薄膜3には、金(Au)あるいは銀(Ag)が用いられる。金属薄膜3の積層方法としては、公知の真空蒸着法やスパッタリング法等がある。
次のステップ103では、金属薄膜3の表面上にセラミックス薄膜4を積層する。これにより金属薄膜3は光学プリズム2とセラミックス薄膜4とに挟まれた中間層となり、セラミックス薄膜4はSPR素子5の最も外側の表面層(最表層)となる。セラミックス薄膜4の積層方法には、金属薄膜3の積層技術と同様に公知の技術を使用できるが、大気開放型有機金属化学気相析出法(以下、大気開放型CVD法と呼ぶ。)を用いることが好ましい。大気開放型CVD法を使用すれば、簡素な設備で済み、真空引き等を行う必要が無いため、コストや時間を掛けずに数nm(ナノメートルサイズ)のセラミックス薄膜4を形成することができるからである。
次のステップ104では、セラミックス薄膜4の表面を改質するか(ここでは親水性表面又は疎水性表面のいずれか)否かを選択する。表面の改質を選択した場合には、ステップ104aに進み、疎水化処理又は親水化処理をす。ここで、疏水化処理には、例えばシランカップリング反応による処理が挙げられる。
ステップ105では、セラミックス薄膜4の表面上に生体分子注入セル6を配置する。以上の操作により、本発明の判定方法に用いられる装置構成の準備がほぼ整ったことになり、次のステップ106から実際の測定が開始される。
ステップ106では、生体分子注入セル6内に緩衝液7のみを注入した状態でSPR角の測定を行う。その後のステップ107では、生体分子注入セル6内に生体分子8を溶かした緩衝液7を注入した状態でSPR角の測定を行う。更にステップ108では、生体分子注入セル6内に再び緩衝液7のみを注入した状態でSPR角の測定を行う。この各ステップ106,107,108で測定されたSPR角を、光学分析ソフトウェアを使用して互いに比較することにより、ステップ101で選択したセラミックス薄膜4での生体適合性の判定が可能となる。
ステップ108を終了すると、ステップ109において、生体適合性を評価すべき他のセラミックス薄膜4が存在するか否かを選択する。存在する場合にはステップ101に戻り、上述のステップ101〜108を繰り返す。無い場合は、ステップ110に進み、各々のセラミックス薄膜4毎に得られたデータ(SPR角)を基に、生体分子8と各セラミックス薄膜4との生体適合性を評価し、生体分子8に対して所望の生体適合作用(吸着または剥離)を有するセラミックス材料を特定することが可能となる。
以上が本発明の生体適合性判定方法のメインフロー100の操作であるが、次に、このメインフロー100に先んじて実行可能な予備光学特性解析ステップ200を説明する。
図3は、予備光学特性解析ステップ200の各ステップを示すフローチャートである。まず、ステップ201にて評価すべきセラミックス薄膜4の種類を設定する。次のステップ202では、メインフロー100のステップ102,103と同様な操作(すなわち、光学プリズム2に金属薄膜3、セラミックス薄膜4の順番で薄膜層を形成すること)を繰り返し、同一材質のセラミックス薄膜4の膜厚や密度の異なるSPR素子5を複数用意する。
そして、その後のステップ203では、これらのSPR素子5のみ(生体分子8等を含んだセル6をSPR素子5に結合させない状態)に対して、SPR角を測定するSPR測定と、X線反射率(XRR,X-ray Reflectivity)を測定するXRR測定と、を行う。
ここで、XRR測定について説明する。X線に対する物質の屈折率は1よりもわずかに小さいため、基板上の薄膜・多層膜に対して非常に浅い角度で入射すると全反射を起こす。入射X線強度に対する全反射X線強度(反射率)の薄膜表面への入射角度依存性を測定することにより、薄膜の構造パラメータを非破壊で評価することが可能となる。つまり、XRR測定は、各薄膜層の密度、膜厚、ラフネス等を非破壊で評価できる手法である。
次のステップ204に進むと、ステップ203で求められたSPR測定及びXRR測定の予備光学特性解析結果から、選択したセラミックス薄膜4における構造パラメータ(膜厚、密度等)の影響を検討する。これにより、生体適合性判定(メインフロー100の判定評価)を行う上で最適な膜厚や密度のセラミックス薄膜を特定することが可能となる。
次に、本発明をさらに具体的な実施例に基づき説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例1(チタニア薄膜とリゾチームとの生体適合性判定)
(装置構成)
実施例1のセラミックス薄膜4として酸化物系セラミックスであるチタニア(TiO)を使用した。本発明の装置構成として、光学プリズム2には屈折率1.51のガラスプリズム(BK7)を用い、金属薄膜3には金(Au)薄膜を用いた。金薄膜3及びチタニア薄膜4は、それぞれスパッタリング法及び大気開放型CVD法により光学プリズム2上に形成した。光源10には可視光半導体レーザー光源を用い、励起されたレーザーの波長は635ナノメートル(nm)とした。また、光検出器15に光パワー・メータを用いてプリズム2から反射されたレーザー強度を測定した。また、SPR測定角度範囲はAu膜3でSPR現象が観測できる範囲を考慮し、40°〜89°に設定した。
次に生体分子注入セル6の構成方法について例示する。緩衝液7や生体分子溶液8をSPR素子5の表面上に流すために、光学プリズム2の寸法に合わせてアルミニウム製の板を40mm×80mmの寸法に切り出して、この板の中心付近にドリルでφ4mmの孔を2か所開ける。細管接続専用のコネクターで、この板の前記2つの孔にシリコンチューブを接続することで、注入口及び排出口6a,6bを形成する。次に、25 mm×25 mm、厚さ1 mmの寸法を有するシリコンゴムの中心に穴を開けた後に、このシリコンゴムをSPR素子5の上に置き、さらにこのシリコンゴムの上に加工したアルミニウム板を配置して両端をC字形クランプで固定する。各溶液7,8の注入・排出方法については、チューブ状の注入口6aからマイクロシリンジで溶液7,8をチタニア薄膜4上へ流し込み、排出口6bから排出されるようにした。
(チタニア薄膜付きSPR素子への予備光学特性解析)
図4に、本発明の実施例1(チタニア薄膜4付きSPR素子5)のSPR素子自体のSPR角測定結果を示す。図4中、公知のSPR素子5(Au/BK7)のSPR角を破線で示し、本発明のチタニア薄膜4付きSPR素子5(TiO/Au/BK7)のSPR角を実線で示している。チタニア薄膜4の膜厚は、XRR測定により15.0nmであった。図4より、チタニア薄膜4の存在によりSPR角がシフトしていることがわかる。詳しくは、金薄膜のみのSPR素子のSPR角は45.07°であり、一方、チタニア薄膜4付のSPR素子のSPR角は約51.19°であり、このときのSPR角シフト量は6.12°である。
次に、膜厚の異なるチタニア薄膜4を形成したSPR素子5を用いて予備光学特性解析(XRR測定、SPR測定)を行った結果を図5に示す。
図5中、●印は実験値を示し、実線はチタニア薄膜4の屈折率を2.30と仮定した場合のフレネル反射式を応用し計算された理論線である。この予備解析結果より、金属薄膜3上に合成したチタニア薄膜4の膜厚変化に対するSPR角の角度シフトは、チタニア薄膜4が厚くなるにつれてシフト量が増大することがわかる。また、図5から実験値と理論線とは良く一致している。このことは、屈折率1.00である空気に触れているチタニア薄膜4が、理論通りSPR現象を観測できる範囲に影響を及ぼすことを示している。加えて、前記理論計算に従えば、空気に替わりチタニア薄膜4に触れる緩衝液7の屈折率(おおよそ1.33〜1.40)もまた、SPR現象を観測できる範囲に影響を及ぼすことになる。そこで、本発明におけるSPR角の角度測定範囲と、チタニア薄膜4が影響を及ぼす前記SPR現象を観測できる範囲との関係から、緩衝液7中のチタニア薄膜4を用いて生体分子8との生体適合性の判定を行うに際して最適な膜厚範囲を決定することができ、そのチタニア薄膜4の膜厚の範囲は、2〜5nmで、好ましくは3〜4nmとなる。
(生体適合性判定評価)
以上の解析により、チタニア薄膜4付きSPR素子5自体のSPR特性がわかったので、本発明の生体分子注入セル6を、膜厚3nmのチタニア薄膜4の表面上に配置し、チタニア薄膜4と生体分子8とを接触させることで両者間の生体適合性の判定を行った。緩衝液7としてはリン酸緩衝液(PB,Phosphate buffer solution、水素イオン指数pH=7)を用い、生体分子8にはタンパク質の一種であるリゾチームを使用した。ここで、リゾチームとは細菌細胞壁を加水分解する酵素で唾液や卵白などに存在しており、分子量14300、等電点11、分子の大きさは4.5×3×3nm である。
上記生体適合性判定方法のステップ106に際しては、体積モル濃度1.8mM(M×10−3、ここで、M(モーラー)=mol/L(モル毎リットル))のリン酸緩衝液(PB)7をマイクロシリンジでチタニア薄膜4上に1mL(ミリリットル)だけ流し込み、その時のSPR角を測定した。
その後のステップ107において、本実施例では、リゾチーム濃度を7μM(M×10−6)、21μM、35μM、及び70μMにして(つまり注入するリゾチーム8を高濃度にして)、その都度、SPR測定を行った。
なお、前記設定した濃度のうち、ある濃度条件でのSPR測定を終了して濃度を変化させる際には、一旦、使用されたリゾチーム溶液8を除去し、新たなリン酸緩衝液7だけを注入して、SPR測定を行った(ステップ108)。これは、SPR素子5上にリン酸緩衝液7だけが注入された時のSPR角から、リゾチーム溶液8が注入されている間にSPR角が増加した場合、その後、リゾチーム溶液8を除去した時にSPR角が減少し元のSPR角に戻れば、リゾチーム8がチタニア薄膜4に吸着していないと判断でき、一方、リゾチーム8溶液を除去してもSPR角が変化しなければ、リゾチームの分子8がチタニア薄膜4に吸着したと判断できる。
図6は実施例1の生体適合性判定結果を示し、横軸に経過時間を縦軸に測定されたSPR角を示す。図6より、まずリン酸緩衝液7のみをセル6に注入した時のSPR角(図6中、最も左側の○印)は74.46°であり、リゾチーム8の濃度が7μMの溶液を更に流し込んだ時のSPR角は74.90°(図6中、最も左側の●印)であった。その後、リゾチーム8の濃度を増加させても、SPR角は僅かに増加する傾向はみられるが約75°の値に留まった。
また、各々の濃度条件終了後にリゾチーム溶液8を除去してリン酸緩衝液7のみにしてもSPR角(図6中、最も左側の点を除いた○印)は、リゾチーム溶液8を注入した状態のSPR角からほとんど変化せず、元に戻らなかった。これにより、チタニア薄膜4の表面上にリゾチーム8の分子が吸着(結合)していることが確認できた。
実施例2(シリカ薄膜とリゾチームとの生体適合性判定)
(装置構成)
実施例2の装置構成は、SPR素子5上のセラミックス薄膜4にシリカ(SiO)を採用した以外の基本的構成は、実施例1の装置構成と同様であり、説明を省略する。
(シリカ薄膜付きSPR素子への予備光学特性解析)
実施例1の場合と同様に、シリカ薄膜4付きSPR素子5の素子自体に対して予備光学特性解析を行った。図7はシリカ薄膜4の膜厚変化に対するSPR角のシフト量を示す。
図7中、●印は実験値を示し、実線はシリカ薄膜4の屈折率を1.48と仮定した場合の理論線である。この予備解析結果より、金属薄膜3上に合成したシリカ薄膜4の膜厚変化に対するSPR角の角度シフト量は、シリカ薄膜4が厚くなるにつれてシフト量が増大することがわかる。また、実験値と理論線とは良く一致している。加えて、実施例1と同様に、本発明におけるSPR角の角度測定範囲と、シリカ薄膜4が影響を及ぼす前記SPR現象を観測できる範囲(フレネル反射式を応用した計算により算出)との関係から、緩衝液7中のシリカ薄膜4を用いて生体分子8との生体適合性の判定を行うに際して最適なシリカ薄膜4の膜厚範囲を決定することができ、そのシリカ薄膜4の膜厚の範囲は、2〜25nmで、好ましくは10〜20nmとなる。
(生体適合性判定評価)
以上の解析により、シリカ薄膜4付きSPR素子5自体のSPR特性がわかったので、本発明の生体分子注入セル6を膜厚15nmのシリカ薄膜4の表面上に配置し、シリカ薄膜4と生体分子8とを接触させることで両者間の生体適合性の判定を行った。
なお、使用した緩衝液7及び生体分子溶液8は実施例1と同様に、それぞれリン酸緩衝液(PB、pH=7)及びリゾチームである。実施例2では、注入するリゾチーム8の濃度は一定とし、100μM(0.1mM)に設定した。
また、実施例2の生体適合性判定においては、親水性表面及び疎水性表面のシリカ薄膜4を用意して、上述の本発明のステップ104aの場合も実行した。本発明の疎水化処理にはシランカップリング反応による表面処理を施した。
図8は実施例2の生体適合性判定結果を示し、横軸に経過時間を縦軸に測定されたSPR角を示す。ここで、判定試験開始及び終了時の○印又は◇印は、シリカ薄膜4の親水性表面又は疎水性表面上にリン酸緩衝液7のみが存在した状態(つまり生体分子たるリゾチーム8を注入していない状態)のSPR角であり、開始後から終了までの●印又は◆印は、シリカ薄膜4の親水性表面又は疎水性表面上にリン酸緩衝液7及びリゾチーム溶液8が注入され、前記表面に接触した状態でのSPR角を示す。
図8より、シリカ薄膜4とリゾチーム溶液8が接触している間、SPR角は、疎水性表面では約1.5°、表面にOH基を有する親水性表面では約0.1°シフトしており、疎水性表面のシリカ薄膜4を用いた方がSPR角のシフト量が増加していることがわかる。SPR角のシフト量は、シリカ薄膜4の表面におけるリゾチーム8の分子数に比例することから、疎水性表面のシリカ薄膜4上には、より多くのリゾチーム8が存在するといえる。言い換えれば、リゾチーム8とシリカ薄膜4との生体適合性には、疎水性相互作用が大きく寄与することが推定された。
実施例3(アルミナ薄膜とヒト血清アルブミンとの生体適合性判定)
(装置構成)
実施例3の装置構成は、SPR素子5上のセラミックス薄膜4にアルミナ(アモルファスAl)を採用した以外の基本的構成は、前記実施例1及び2の装置構成と同様であり、説明を省略する。
(アルミナ薄膜付きSPR素子への予備光学特性解析)
前記実施例の場合と同様に、アルミナ薄膜4付きSPR素子5の素子自体に対して予備光学特性解析を行った。図9はアルミナ薄膜4の膜厚変化に対するSPR角のシフト量を示す。
図9中、●印は実験値を示し、実線はアルミナ薄膜4の屈折率を1.58と仮定した場合の理論線である。この予備解析結果より、金属薄膜3上に合成したアルミナ薄膜4の膜厚変化に対するSPR角の角度シフトは、アルミナ薄膜4が厚くなるにつれてシフト量が増大することがわかる。また、実験値と理論線とは良く一致している。加えて、本発明におけるSPR角の角度測定範囲と、アルミナ薄膜4が影響を及ぼす前記SPR現象を観測できる範囲(フレネル反射式を応用した計算により算出)との関係から、緩衝液7中のアルミナ薄膜4を用いて生体分子8との生体適合性の判定を行うに際して最適なアルミナ薄膜4の膜厚範囲を決定することができ、そのアルミナ薄膜4の膜厚の範囲は、2〜10nmで、好ましくは3〜5nmとなる。
(生体適合性判定評価)
以上の解析により、アルミナ薄膜4付きSPR素子5自体のSPR特性がわかったので、本発明の生体分子注入セル6を膜厚2nmのアルミナ薄膜4の表面上に配置し、アルミナ薄膜4と生体分子8とを接触させることで両者間の生体適合性の判定を行った。
なお、実施例3に使用した緩衝液7は実施例1と同様にリン酸緩衝液(PB、pH=7)であるが、生体分子8にはタンパク質の一種であるヒト血清アルブミン(HSA,human serum albumin)を使用した。ここで、ヒト血清アルブミン(HSA)とは、血漿タンパク質中に最も多い成分であり(約60%を占める)、分子量69000、等電点4.9、分子の大きさは18.7×18.7×8.1nmである。また、HSAは肝臓中で作られ、血漿膠質浸透圧の維持や輸送タンパク質として生体内物質などと結合し標的器官へ物質を輸送する機能を有するものである。
本実施例のステップ106に際しては、体積モル濃度50mMのリン酸緩衝液7をマイクロシリンジでアルミナ薄膜4上に1mLだけ流し込み、その時のSPR角を測定した。
その後のステップ107において、本実施例では、濃度を5μM、25μM、50μM、75μM、100μM、125μM、及び150μMにした(つまり注入するHSAを高濃度にした)HSA溶液8をリン酸緩衝液に加えて、その都度SPR測定を行った。
なお、実施例1と同様に、ある濃度条件でのSPR測定を終了して濃度を変化させる際には、一旦、使用されたHSA溶液8を除去し、新たなリン酸緩衝液7だけを注入して、SPR測定を行った(ステップ108)。
図10は実施例3の生体適合性判定結果を示し、横軸に経過時間を縦軸に測定されたSPR角を示す。図10より、まずリン酸緩衝液7のみをセル6に注入した時のSPR角(図10中、最も左側の○印)は74.95°であり、HSA溶液8の濃度が5μMの溶液を流し込んだ時のSPR角は74.98°(図10中、最も左側の●印)であった。その後、HSA溶液8の濃度を増加させると、SPR角は増加する傾向はみられ、150μMの溶液を流し込んだ時のSPR角は75.28°(図10中、最も右側の●印)であった。
また、各々の濃度条件終了後にHSA溶液8を除去してリン酸緩衝液7のみにするとSPR角(図10中、最も左側の点を除いた○印)は顕著に減少して約74.96°となり、判定評価開始時のリン酸緩衝液7のみのSPR角(図10中、最も左側の○印)とほぼ同じ値になった。これにより、アルミナ薄膜4の表面上にHSA溶液8の分子が吸着しなかったことが確認できた。
実施例4(酸化物系セラミックス以外のセラミックス薄膜の検討)
上述した具体的な実施例1〜3はいずれも酸化物系セラミックス薄膜4を使用した。本実施例では、酸化物系セラミックス薄膜4以外でも本発明の適用可能性を検討するため、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)の一種である水素化アモルファス炭素(a−C:H)薄膜を適用して予備的な光学解析特性評価を行った。
(装置構成)
実施例4の装置構成は、SPR素子5上のセラミックス薄膜4に水素化アモルファス炭素を採用した以外の基本的構成は、前記実施例1〜3の装置構成と同様であり、説明を省略する。
なお、実施例4に供される水素化アモルファス炭素薄膜4は、Au薄膜3上に高周波マグネトロンスパッタリング(MS,magnetron sputtering)法と電子サイクロトロン共鳴プラズマ化学気相析出(ECR-CVD,Electron Cyclotron Resonance−CVD)法を使用することにより2種類作製した
(水素化アモルファス炭素薄膜付きSPR素子への予備光学特性解析)
前記実施例1〜3の場合と同様に、水素化アモルファス炭素薄膜4付きSPR素子5の素子自体に対して予備光学特性解析(XRR測定及びSPR測定)を行った。XRR測定より得られた水素化アモルファス炭素薄膜4の真密度は、MS法作製の膜で1.6g/cmであり、ECR−CVD法作製の膜で1.4g/cmであった。
図11は水素化アモルファス炭素薄膜4の膜厚変化に対するSPR角のシフト量を示す。図11中、●印はMS法作製の膜に対する実験値を示し◆印はECR−CVD法作製の膜に対する実験値を示す。実線はMS法作製の膜及びECR−CVD法作製の膜の屈折率を1.93及び1.65と仮定した場合の理論線である。この予備解析結果より、どちらの方法で作製されたアモルファス炭素薄膜4を用いても、薄膜4の膜厚変化に対するSPR角の角度シフトは、水素化アモルファス炭素薄膜4が厚くなるにつれてシフト量が高角度側に増大することがわかる。また、密度の高かったMS法作製薄膜4の方が膜厚に対する変化量が増大している。従って、SPR角シフト量は、薄膜4の膜厚と真密度の関数であり、水素化アモルファス炭素膜の真密度測定への利用や前記実施例1〜3で行った生体適合性判定評価への利用が可能であることが示唆された。
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の記載した発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。例えば、本発明のセラミックス薄膜の材質を、用途に応じて、炭化物系や窒化物系のセラミックスに適宜変更できることは明らかである。
本発明の生体適合性判定方法に用いられる判定装置の概略を示す図である。 本発明の生体適合性を判定する判定方法の主要なステップを示すフローチャートである。 本発明の予備光学特性解析ステップを示すフローチャートである。 本発明の実施例1(チタニア薄膜付きSPR素子)の素子自体のSPR角測定結果の一例を示した図である。 本発明の実施例1の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図である。 本発明の実施例1の生体適合性判定結果を示す図である。 本発明の実施例2(シリカ薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図である。 本発明の実施例2の生体適合性判定結果を示す図である。 本発明の実施例3(アルミナ薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図である。 本発明の実施例3の生体適合性判定結果を示す図である。 本発明の実施例4(水素化アモルファス炭素薄膜付きSPR素子)の膜厚変化とSPR角シフト量との関係を示した図である。 従来のSPR素子と本発明のSPR素子の構成及び検出対象を示した図である。
1 生体適合性判定装置
2 光学プリズム
3 金属薄膜
4 セラミックス薄膜
5 SPR素子
6 生体分子注入セル
6a 注入口
6b 排出口
7 緩衝液
8 生体分子(溶液)
10 励起光光源
11 絞り
12 偏光子
13 入射光
14 反射光
15 光検出器
100 本発明の判定方法におけるメインフロー
101 評価すべきセラミックス薄膜の種類を設定するステップ
102 光学プリズムに金属薄膜を積層するステップ
103 金属薄膜の表面上にセラミックス薄膜を積層するステップ
104 セラミックス薄膜の表面を改質するか否かを選択するステップ
105 セラミックス薄膜の表面上に生体分子注入セルを配置するステップ
106 緩衝液のみを注入した状態でのSPR角測定を行うステップ
107 緩衝液及び生体分子溶液を注入した状態でのSPR角測定を行うステップ
108 再び緩衝液のみを注入した状態でのSPR角測定を行うステップ
109 他の評価対象セラミックス薄膜の存在の有無を選択するステップ
110 生体分子と各セラミックス薄膜との生体適合性を評価・検証するステップ
200 本発明の予備光学特性解析ステップ
201 評価すべきセラミックス薄膜の種類を設定するステップ
202 膜厚の異なるSPR素子を複数用意するステップ
203 SPR素子自体にXRR測定及びSPR測定を行うステップ
204 測定結果からセラミックス薄膜の構造パラメータ(膜厚、密度など)の影響を検討するステップ

Claims (6)

  1. 光学プリズムに金属薄膜を積層し、SPR素子を作成するSPR素子作成ステップと、
    前記金属薄膜の表面上に2nm〜25nmの膜厚を有したセラミックス薄膜を積層する最表層積層ステップと、
    前記セラミックス薄膜の表面上に生体分子注入セルを配置するセル配置ステップと、
    前記生体分子注入セル内に緩衝液のみを注入してSPR角を測定する第1のSPR角測定ステップと、
    前記生体分子注入セル内に生体分子溶液を溶かした緩衝液を注入してSPR角を測定する第2のSPR角測定ステップと、
    前記生体分子注入セル内に再び緩衝液のみを注入してSPR角を測定する第3のSPR角測定ステップと、
    上記ステップにより測定されたSPR角を比較する比較ステップと、
    を含み、かつ、
    前記セラミックス薄膜は、水素化アモルファス炭素薄膜又はアモルファス炭素薄膜であることを特徴とする生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法。
  2. 前記SPR素子作成ステップにはスパッタリング法が使用され、かつ、
    前記最表層積層ステップには大気開放型CVD法が使用されることを特徴とする請求項1に記載の判定方法。
  3. 前記最表層積層ステップの後に、前記セラミックス薄膜の表面を改質するか否かを選択するステップをさらに含み、かつ、
    前記ステップで前記表面を改質する選択をした場合には疎水化処理又は親水化処理を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の判定方法。
  4. 前記SPR素子作成ステップと最表層積層ステップとを用いて、前記セラミックス薄膜の膜厚が異なったSPR素子を複数作製するステップと、
    前記作製されたSPR素子に対してX線反射率測定とSPR角測定とを行う解析ステップと、
    前記解析ステップから得られた測定結果から生体適合性判定に最適な膜厚のセラミックス薄膜を特定する特定ステップと、
    を含んだ予備光学特性解析ステップをさらに含み、かつ、
    前記予備光学特性解析ステップを行った後に、最適な膜厚のセラミックス薄膜を有するSPR素子を用いて、前記判定方法の各ステップを実行することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の判定方法。
  5. 前記SPR素子作成ステップと最表層積層ステップとを用いて、前記セラミックス薄膜の密度が異なったSPR素子を複数作製するステップと、
    前記作製されたSPR素子に対してX線反射率測定とSPR角測定とを行う解析ステップと、
    前記解析ステップから得られた測定結果から生体適合性判定に最適な密度のセラミックス薄膜を特定する特定ステップと、
    を含んだ予備光学特性解析ステップをさらに含み、かつ、
    前記予備光学特性解析ステップを行った後に、最適な密度のセラミックス薄膜を有するSPR素子を用いて、前記判定方法の各ステップを実行することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の判定方法。
  6. 前記請求項1〜のいずれかに記載の生体分子とセラミックスとの生体適合性を判定する判定方法に用いられる判定装置であって、
    光学プリズムに中間層の金属薄膜と最表層のセラミックス薄膜とが積層されたクレッシュマン配置のSPR素子と、
    前記セラミックス薄膜の表面を覆うように配置された生体分子注入セルと、を備え、
    前記生体分子注入セルには、生体分子を注入する注入口と排出口とが設けられ、かつ、
    前記セラミックス薄膜は、水素化アモルファス炭素薄膜又はアモルファス炭素薄膜であることを特徴とする判定装置。
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