以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための拡大観察装置及び拡大観察方法、拡大観察用プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を例示するものであって、本発明は拡大観察装置及び拡大観察方法、拡大観察用プログラム並びにコンピュータで読み取り可能な記録媒体を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本発明の実施例において使用される拡大観察装置とこれに接続される操作、制御、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232xやRS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的、あるいは磁気的、光学的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。なお本明細書において拡大観察装置とは、拡大観察装置本体のみならず、これにコンピュータ、外部記憶装置等の周辺機器を組み合わせた拡大観察システムも含む意味で使用する。
また、本明細書において拡大観察装置、拡大観察方法、拡大観察用プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、拡大観察を行うシステムそのもの、ならびに画像生成に関連する入出力、表示、演算、通信その他の処理をハードウエア的に行う装置や方法に限定するものではない。ソフトウエア的に処理を実現する装置や方法も本発明の範囲内に包含する。例えば汎用の回路やコンピュータにソフトウエアやプログラム、プラグイン、オブジェクト、ライブラリ、アプレット、コンパイラ、モジュール、特定のプログラム上で動作するマクロ等を組み込んで画像生成そのものあるいはこれに関連する処理を可能とした装置やシステムも、本発明の拡大観察装置、拡大観察方法、拡大観察用プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体に該当する。また本明細書においてコンピュータには、汎用あるいは専用の電子計算機の他、ワークステーション、端末、携帯型電子機器、PDCやCDMA、W−CDMA、FOMA(登録商標)、GSM、IMT2000や第4世代等の携帯電話、PHS、PDA、ページャ、スマートフォンその他の電子デバイスも包含する。さらに本明細書においてプログラムとは、単体で使用されるものに限られず、特定のコンピュータプログラムやソフトウエア、サービス等の一部として機能する態様や、必要時に呼び出されて機能する態様、OS等の環境においてサービスとして提供される態様、環境に常駐して動作する態様、バックグラウンドで動作する態様やその他の支援プログラムという位置付けで使用することもできる。
なお本明細書において、電子顕微鏡画像とは、電子顕微鏡等の電子線撮像手段で撮像された主に観察対象の輝度情報を含む、濃淡で表示されるモノクロ画像を指す。また光学画像とは、可視光や紫外光等を利用した光学系撮像手段で撮像された、主に色情報を含むカラー画像を指す。また光学画像には、可視光カメラによる可視光観察像の他、赤外線カメラによる赤外線観察像も利用できる。また、後述するように光学画像の色情報に基づいて電子顕微鏡画像を着色することも可能である。さらに、電子線撮像手段や光学系撮像手段が画像を取得するとは、一般にはこれらの部材で撮像する意味であるが、他の部材で撮像された画像を電子顕微鏡に取り込むことも包含する概念であり、このような概念を包括する意味で画像の取得という。
以下の実施例では、本発明を具現化した拡大観察装置の一例として、電子顕微鏡の一であるSEMを採用した例を説明する。但し、本発明はTEMやSTEM、その他の荷電粒子線装置においても利用できる。この場合、電子線系撮像手段は荷電粒子線系撮像手段に置換できる。また近視野顕微鏡、原子間力顕微鏡、静電気力顕微鏡等に適用することもできる。さらに光学系撮像手段としては、光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等に適用することもできる。
図1〜図8は、本発明の実施の形態に係る拡大観察装置である。これらの図において、図1は拡大観察システムの概要を示す概略図、図2Aは拡大観察装置の外観斜視図、図2Bは変形例に係る拡大観察装置の外観斜視図、図2Cは図2Bの拡大観察装置を右側から見た外観斜視図、図3は拡大観察装置の試料室内を示す正面断面図、図4は図3のIV−IV線から見た側面断面図、図5は図4のV−V線における断面図、図6は試料台33の水平面移動機構を説明するための右斜め前方から見た一部断面斜視図、図7は図6を上から見た一部断面平面図、図8は図6を右斜め後方から見た一部断面斜視図を、それぞれ示す。
(拡大観察システム)
図1に示す拡大観察システム1000は、拡大観察装置100と、減圧ポンプVPと、電源ユニットPUと、表示手段2とを備える。拡大観察装置100は、試料を気密に保持するチャンバユニット14と、試料室21内を減圧する減圧ユニット15とで構成される。チャンバユニット14には観察手段10として、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の2本が装着されている。減圧ユニット15は、外部の減圧ポンプVPに接続されて、試料室21内を高真空、低真空等所定の真空度に減圧する排気系ポンプ70を構成する。また各観察手段10は表示手段2に接続されており、取得した画像データを表示手段2に送出する。表示手段2はディスプレイを備えており、電子線撮像手段11で撮像された電子顕微鏡画像や光学系撮像手段12で撮像された光学画像を、ディスプレイ上に表示できる。
(電源ユニットPU)
コントローラ1や拡大観察装置100、減圧ポンプVPは、電源ユニットPUに接続されている。電源ユニットPUは、図示しない外部の商用電源に接続されて拡大観察装置100等に電力を供給する。この例では、電源ユニットPUはコントローラ1からの指示に基づいて拡大観察装置100に所定の電圧を供給し、拡大観察装置100の動作をコントローラ1で制御し、取得した画像を表示手段2に表示する。
(コントローラ1)
コントローラ1は、拡大観察システム1000を構成する各部材を制御するための部材である。このコントローラ1は、専用の機器の他、汎用のコンピュータに拡大観察装置操作プログラムをインストールしたものも利用できる。また必要に応じて、コントローラ1や表示手段2を操作するための外付けのコンソールCSや、電子線撮像手段11の電子銃47に高加速電圧を印加するための高加速電圧ユニットHU等を付加することもできる。さらに図1の例では、コントローラ1が電源ユニットPUを介して拡大観察装置100等の制御を行っているが、電源ユニットをコントローラに統合して直接制御することもできる。
(表示手段2)
図1の例では、コントローラ1に表示手段2を備えている。表示手段2は、電子顕微鏡画像や光学画像を表示するディスプレイ部102を備える。これらの画像は、同時に一画面に表示させたり、切り替えて表示させることができる。表示の切り替えは、コンソールCSから手動で行う。表示手段2にはCRTやLCD、有機EL等のモニタが利用できる。なお図1の例では、表示手段2とコントローラ1を一体に統合しているが、これらを別部材で構成することも可能である。またコンソールCSも、コントローラ1や表示手段2に組み込んでもよい。例えばタッチパネル式の表示手段を利用できる。さらに図1に示す各部材の接続例は一例であって、異なる接続形態や配線を利用することも可能である。また、必要に応じてワイヤレス接続も可能であることはいうまでもない。
図1に示す拡大観察システム1000は、デジタルマイクロスコープ等の光学式レンズを用いた拡大観察と、SEM等の電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡観察を組み合わせたものである。すなわち、電子顕微鏡の試料室21内に光学系撮像手段12を付加している。光学系撮像手段12は第一の観察手段として、可視光や赤外光等により光学画像を撮像する。例えば可視波長や赤外波長の光を利用する光学顕微鏡や光学カメラ等が利用できる。撮像した光学画像はユーザが任意に利用でき、例えばSEM画像等の電子顕微鏡画像の観察中において視野探しのための広域画像として利用したり、観察対象の試料の確認といった電子線観察の補助的な目的で利用される。これら電子線等の荷電粒子を用いて撮像する電子線撮像手段11と、可視光等を用いて撮像する光学系撮像手段12を含む複数の撮像系すなわち観察手段10を、切換可能に構成している。
なお観察手段10の内、光学系撮像手段12は、図9に示すように、SEMを構成する拡大観察装置100から外して、デジタルマイクロスコープ用のスタンドSTに接続し、このスタンドSTの試料台に載置された試料の観察を行うこともできる。この構成は、光学式レンズを用いたデジタルマイクロスコープ等の拡大観察システムから見れば、交換可能なヘッド部の一として、SEM等の電子線撮像手段11を接続可能にしたと捉えることもできる。すなわち、従来のデジタルマイクロスコープは、図9に示すスタンド式のカメラユニットのように、主に光学式の観察手段のみをカメラユニット又はレンズユニットとして接続可能としていたところ、本実施の形態ではSEMのような電子線撮像手段11も接続可能とし、さらに電子線撮像手段11を設けた試料室21内での光学画像を撮像するためのカメラユニットとして、光学系撮像手段12を利用することができる。この場合は、図9における電子線撮像手段11を備える拡大観察装置100自体が、拡大観察システムの交換式ヘッド部の一となる。これにより、拡大観察システムで使用する交換可能なカメラ乃至レンズの一として、SEMや光学レンズ等のヘッド部分を選択的に装着し、所望の用途に応じた適切な観察手段を接続して観察を行うことが可能となり、拡大観察の利用範囲が光学系のみならず、電子顕微鏡系等に拡張でき、様々な拡大観察が実現可能となる。
一方、電子線撮像手段11を備える拡大観察装置を主としてみれば、これにデジタルマイクロスコープを付加したものと捉えることもできる。いずれにしても、同一の試料に対して、光学画像と電子顕微鏡画像とを撮像できるという利点が得られる。特に、同一の視野で同一の倍率にて、異なる観察手段で取得されたこれらの画像を対比できることは、各観察像の利点を生かした種々の観点からの観察を可能とでき、拡大観察で得られる情報量を飛躍的に増大できる。
(観察手段10)
この拡大観察装置は、試料室21内の試料を観察する観察手段10を複数備えている。図2Aに示す拡大観察装置100では、第一の観察手段として電子顕微鏡画像を撮像可能な電子線撮像手段11を、第二の観察手段として光学画像を撮像可能な光学系撮像手段12を、各々胴部24から突出させる姿勢に固定している。各撮像手段は、使用/非使用を後述する表示切替手段36で切り替え可能に構成されている。図2Aの例では、胴部24の円筒状側面に表示切替手段36として押しボタンを設けている。また各撮像手段は、交互に使用する他、同時に使用するよう構成してもよい。さらに図2Aの例では、電子線撮像手段11の右側に光学系撮像手段12を配置しているが、これらの配置を入れ換えても同様の効果が得られることはいうまでもない。
(倍率調整手段)
また各観察手段10は、拡大倍率を各々調整するための倍率調整手段を備える。具体的には、電子線撮像手段11は、電子顕微鏡倍率を調整するための電子顕微鏡倍率調整手段68を備え、一方光学系撮像手段12は、光学倍率を調整するための光学倍率調整手段95を備える。各倍率調整手段は、例えば図2Aに示すように各々の鏡筒の外周に回転自在に設けられたリングを回転させることで、倍率を調整する。特に電子顕微鏡倍率調整手段68を、光学倍率調整手段95と同様、鏡筒周囲で回転するリング状に構成することで、各観察手段の倍率調整の操作感を統一し、優れたユーザインターフェースが提供される。また各リングの表面には滑り止め加工を設けることが好ましい。電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な倍率範囲としては、例えば20倍〜10000倍とする。また、光学倍率調整手段95で調整可能な倍率範囲としては、例えば50倍〜500倍とする。さらに光学ズームにデジタルズームを併用することで、より高倍率の画像を得ることもできる。
(焦点調整手段)
さらに各観察手段10は、各々の光軸に沿って焦点距離を調整するための焦点調整手段を備えてもよい。例えば電子線撮像手段11は、その光軸に沿って焦点距離を調整するための顕微鏡焦点調整手段37を、光学系撮像手段12は、その光軸に沿って焦点距離を調整するための光学焦点調整手段38を、各々備えることができる。光学焦点調整手段38は、光学レンズ自体を機械的に光軸方向に上下させて焦点位置を調整する。図2Aの例では、焦点調整手段として、各観察手段の近傍に、ダイヤル式の摘みを各々設けており、摘みの回転量で焦点位置を調整できる。なお電子線撮像手段11で、電子顕微鏡画像を撮像する際の、電子銃から電子線を照射する軸を、本明細書においては「光軸」と呼ぶ。
なお電子線撮像手段11に光学系撮像手段12を併用することで、色情報のないモノクロ画像が中心となる電子顕微鏡画像に対し、色情報を含むカラー画像の光学画像を取得できる。光学系撮像手段12には、可視光や紫外光等を利用した可視光観察像の他、赤外線カメラによる赤外線観察像も利用できる。また、光学画像の色情報に基づいて電子顕微鏡画像を着色することも可能である。例えば電子顕微鏡画像に光学画像を合成して、高倍率、高精度のカラー画像を得ることができる(詳細は後述)。
(拡大観察装置100)
次に、拡大観察装置100の概要を説明する。拡大観察装置100の外観は、図2A〜図4等に示すように、円筒状のチャンバユニット14に、箱形の減圧ユニット15を連結した形状となる。チャンバユニット14は、図4に示すように平板状の水平板を構成するベース部22に載置される。ベース部22の上面には、固定板23を垂直姿勢に突出させるよう固定している。この固定板23は、胴部24の一方の開口端を閉塞する端面板として機能する。また固定板23の背面には減圧ユニット15に固定されている。さらに固定板23の前面には、胴部24を回転させるための回動手段30を備えている。図4の構成においては、固定板23は、回動手段30を介して胴部24の片側端面を気密に閉塞して、試料室21の減圧状態を維持しつつ、同時に胴部24を回転自在としている。胴部24の回転を許容するため、固定板23は、胴部24をベース部22上に片持ちで保持しつつ、ベース部22上に浮かせるよう離間しており、ベース部22との胴部24との間には隙間が設けられる。さらに胴部24の開口端縁も、固定板23と非接触として、胴部24の回転を阻害しないように隙間を設けている。またこのような片持ち式の支持構造は、胴部24の一方の端面を蓋部27で開閉自在とし、他方の端面を回動手段を介して固定板23に連結して、試料室21の開閉と回転とを両立できる。
チャンバユニット14は胴部24と一対の端面板で構成され、拡大観察装置100の本体部となる。胴部24は、その外形を略円筒状としている。胴部24の内部空間は2枚の端面板で気密に閉塞され、減圧可能な試料室21を構成する。端面板の一方は開閉式の蓋部27とし、他方は胴部24に固定される固定板23となって試料室21を気密に閉塞する。固定板23には図5の断面図に示すように、減圧ユニット15に試料室21内の空気を吸引するための吸引口25が開口されている。さらに固定板23には、後述する二次電子検出器61、試料室内観察手段13等が設けられている。
(減圧ユニット15)
試料室21は、吸引口25を介して減圧ユニット15と接続される。減圧ユニット15は排気系を構成し、加速電子の電子線が気体成分通過中に極力エネルギーを失うことなく試料に到達するよう、減圧環境を実現する。減圧ユニット15には、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ(Turbo-Molecular Pump:TPM)等が利用でき、高真空から低真空排気まで所望の真空度に調整できる。真空度の調整可能範囲としては、例えば10-6Torr〜10-10Torrとする。この減圧ユニット15はチャンバユニット14の背面に気密に連結されている。なお吸引口25は、固定部分である固定板23に設けることが好ましいが、後述する回転部分側に形成しても良いことはいうまでもない。
(減圧ユニット操作パネル16)
また減圧ユニット15は、減圧ユニットの動作を操作するための減圧ユニット操作パネル16を設ける。図2Aの例では、胴部24の脇に減圧ユニット操作パネル16を設けており、ボタン操作で真空引きや大気導入の開始を操作する。また減圧ユニット操作パネル16は、真空引きの動作中や動作完了を示すためのインジケータを設けている。この例ではインジケータとして2つのLEDを設けており、点灯パターンの組み合わせで試料室21の状態を、大気状態、真空引き中、真空状態、大気導入中の4つに区分して表示する。
(脚部26)
またこの拡大観察装置100は、ベース部22の底面の四隅から脚部26を突出させている。脚部26を介して、拡大観察装置100は接地面に水平に載置される。このため脚部26は、各々の高さを調整できる調整手段を設けることが好ましい。これにより、接地面の傾斜によらず水平姿勢に試料台33を維持して、安定して拡大観察を行える利点が得られる。調整手段は、例えばネジの進行によってその突出量を調整できる機構等、既知の構成が適宜利用できる。図4の側面図に示す例では、脚部26はチャンバユニット14側のベース部22に設けられている。ただ、減圧ユニット15に脚部を設けてもよい。
(胴部24)
胴部24は中空の円筒状で、その両端面を端面板で封止して気密な試料室21を構成する。また端面板の少なくともいずれか一方は、開閉自在な蓋部27とする。胴部24の円筒状側面には、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11が装着される。具体的には、第一の位置41に電子線撮像手段11が、第一の位置41と離間した第二の位置42に光学系撮像手段12が、各々装着されている。
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11は、各々内部にレンズを内蔵する筒状に構成されている。光学系撮像手段12は、筒状とした光学レンズ鏡筒の内部に光学レンズが複数枚組み込まれている。同様に電子線撮像手段11も、電子レンズ鏡筒の内部に電子レンズが組み込まれている。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11は、図3の断面図に示すように、内部を円筒状とした試料室21の中心軸から半径方向に突出する姿勢で、胴部24の外面に固定されている。言い換えると各観察手段10の電子レンズ鏡筒及び光学レンズ鏡筒は、各々回転中心に向かう姿勢に固定されており、電子線撮像手段11の電子銃47の光軸と光学系撮像手段12の光軸は、回動手段30の回転軸を中心として径方向に放射状に延長されている。
(蓋部27)
端面板の一方は、開閉自在な蓋部27とする。蓋部27は、胴部24の開口端を閉塞する閉塞板28と、閉塞板28を開放位置、閉塞位置に切り替えるための蓋開閉手段と、閉塞板28を蓋開閉手段上で回転自在に支承蓋する蓋回転軸142と、閉塞板28を調芯するよう保持する保持機構140とを備える。図4の側面図の例では、蓋部27は、胴部24端面を閉塞する円盤状の閉塞板28と、蓋開閉手段として閉塞板28の回転を支承する蓋開閉アーム29で構成される。図4においては左側が正面側であり、この図に示すように、蓋開閉アーム29の下端がベース部22先端にヒンジ部138によりピボット式に軸支されており、蓋開閉アーム29を倒すことで閉塞板28が下方向に開放され、蓋開閉アーム29を直立させて閉塞板28を胴部24端面に位置させて閉塞する。閉塞板28を開放した状態で、ユーザは試料室21内に備えられた試料台33上に試料を載置できる。図6に示す例では、閉塞板28の中心を軸支する蓋開閉アーム29を、ベース部22の先端にヒンジ部138により折曲自在に固定している。これにより、蓋開閉アーム29を手前に倒して閉塞板28を開放位置とできる。この構造によれば、閉塞板28を胴部24に密着させて回転させつつ、ヒンジ部138を閉塞板28の下方に固定することで、閉塞板28の開閉方向は胴部24の回転位置に依らず、下方向となるように一定とできる。
さらに胴部24の端面を蓋部27で開閉式とすることで、試料室21内部を大きく開放でき、サイズの大きな試料でも容易にセットできる利点も得られる。特に試料台33を傾斜させない構成と相俟って、試料を単に試料台33上に載置するだけで済み、試料を試料台33上で滑らないように固定する必要がないため、試料の出し入れ、設置作業を極めて簡単にできるという優れた利点が得られる。
なお、試料台への載置を容易にするために、蓋部を開放した状態で試料台33を手前に引き出すスライド式に構成してもよく(例えば、後述する図16A、図16B参照)、これによって試料台33へのユーザのアクセスが容易となる反面、引き出し構造が必要となる上、蓋部の前面に蓋部をスライドさせるための空間を確保する必要がある。蓋部27を含め端面板や胴部24は、高真空を維持できる十分な耐性を備える部材で構成される。
(固定部分)
胴部24は、円筒状側面の少なくとも一部を回動手段30で回転可能としている。このため、胴部24及び端面板は、胴部24の回転運動に伴って回転する回転部分と、回転せず静止状態のままの固定部分とに分けられる。いいかえると、回動手段30によって固定部分と回転部分とに区分される。例えば、試料台33を駆動する試料台駆動手段34である水平面移動機構74及び高さ調整機構80や、蓋部27、試料室内観察手段13、ベース部22及び固定板23等は、固定部分となる。一方、各観察手段10や、これに付随あるいは協働させる照明部の光源ポート97等は、回転部分側に設けられる。
(回動手段30)
さらに胴部24は、一方の観察手段の光軸の方向を、他方の観察手段の光軸の方向と略一致させるように各観察手段を移動可能な移動手段として、回動手段30を備える。回動手段30は、円筒状胴部24の中心軸を回転軸として、観察手段10を固定した側面を円周に沿って回転させる。このような回動手段30は、例えばベアリングや、胴部24の回転軸方向に設けたギヤを、固定側であるベース部22又は減圧ユニット15側に設けたギヤとの噛合によって回転させる方式が利用できる。また、回動手段30を回転させるために必要な外力すなわち回転の抵抗力は、ユーザが手動で回転できる程度としつつ、観察手段10が所望の位置となるように胴部24を回転させた状態で手を離すと、該姿勢を維持できる程度の抵抗力を備えることが好ましい。このような回転の抵抗力乃至摩擦力に維持できるよう、ベアリングの油量やギヤのウェイト等を調整する。この構成により、複数の観察手段10を容易に同一の位置に切り替え可能であり、視野の変更等も生じない。また、回動によって観察手段10を傾斜できるので、マルチアングル機構で簡単に高倍率での傾斜観察が可能なるという利点も得られる。
また上述の通り、電子線撮像手段11を回動させる回動面と、光学系撮像手段12を回動させる回動面とは略一致させている。これにより、各撮像手段の光軸が交差する位置となるため、一方の撮像手段を他方の撮像手段の位置まで回動させるだけで、同じ視野の観察画像を取得でき、位置の切り替えによる視野合わせや焦点の調整といった、同じ視野での撮像を行うべく異なる撮像手段に切り替えるためのユーザの操作を極めて容易にできる利点が得られる。
また、回動手段30によって観察手段10を回転させつつ、試料は固定姿勢とするために、試料台33は固定部分側に固定される。図4の例では、この試料台33を駆動する試料台駆動手段34である水平面移動機構74及び高さ調整機構80は、胴部24背面の端面板を通じて固定されている。
従来は、同一の試料に対して観察手段を切り替えるために、図10〜図12に示すように観察手段10X又は試料台33Xを平行移動させる機構が採用されていた。この構成で傾斜観察を行うには、試料台33X側を回転あるいは傾動させる方式であったため、視点を変更する際、観察手段10Xと試料SAxの位置関係の把握がユーザに容易でなく、移動方向等に混乱を生じる場合が少なからずあった。これに対して本実施の形態では、あくまでも観察対象を固定し、見る側の視点を変更するという自然な形での観察方式としているため、物理的に位置関係の把握が容易であり、視点の移動や変更に際しての調整作業に誤解や混乱が生じ難い、初心者でも理解しやすい、といった利点が得られる。
観察手段10である光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、胴部24側面の回転によって同時に移動できる。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との移動機構を一の回動手段30で共通化することで、2つの観察手段10の移動のための機構を簡素化できる利点が得られる。また回転によって、各観察手段10を同一の位置に容易に切り替え可能であり、試料を回転軸の位置に静止させることで、視野の変更等も生じない。さらに図13の各観察手段10と試料台33との距離を示す模式正面図に示すように、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11の各観察手段10は、回転移動によって、その回転軸に位置する試料までの距離をほぼ一定に維持できるため、一旦焦点距離を調整しておけば、位置を変更しても常にフォーカスを合わせた状態となるため、回転角度すなわち視点のみを変化できるという合焦状態での傾斜観察に好適な環境が実現される。
好ましくは、蓋部27は固定部分側に開閉自在に固定する。例えば、図4の側面図に示すように、蓋部27の閉塞板28を胴部24の開放端に着脱自在に装着しつつ、閉塞板28の回転軸を蓋開閉アーム29で支承して、蓋開閉アーム29の下端をベース部22の先端に折曲自在に固定している。これによって、上述の通り胴部24の回転位置によらず蓋部27を開閉する方向を一定に維持できる。この場合、蓋部27は胴部24端面の正面側を閉塞し、背面の端面板は胴部24と一体に固定しつつ、その一部を貫通するように試料台33を駆動する試料台駆動手段34を固定部分である減圧ユニット15に固定している。すなわちこの例では、蓋部27の閉塞板28は、胴部24を閉塞する状態では回転部分と一体となり、蓋開閉アーム29は固定部分に固定されている。
(引張バネ135)
また蓋開閉アーム29とベース部22との折曲部分であるヒンジ部138の近傍には、引張バネ135を設けている。引張バネ135は、ヒンジ部138を折曲しやすくなる方向に付勢している。すなわち、蓋開閉アーム29を開放状態の水平姿勢から、閉塞状態の垂直姿勢に直立させ易くする。さらに引張バネ135は、垂直姿勢とした後も後述する保持機構140のロック状態を解除するロック解除機構として、蓋開閉アーム29を胴部24側に付勢している。
蓋部27を回転部分側に固定すると、胴部24の回転位置によって蓋部27の開閉方向が変化してしまい、ユーザはその都度開閉方向を確認しなければならないという弊害が生じる。また蓋部27が剛性の高い重い金属製の場合は、蓋部27の方向によってはユーザが手動で開閉し難くなったり、開閉を支承するヒンジへの負荷が大きくなることも考えられる。よって、このような開閉姿勢の変化を回避するために、蓋部27の固定位置を固定部分側とすることが有効となる。また、蓋部27を開閉する向きを常に一定方向とすることで、蓋部27の開閉構造を簡素化できる利点も得られる。
ただ、本実施の形態は蓋部の開閉方向を限定せず、蓋部を側方に開閉させたり、十分な強度が維持される場合は蓋部を上方向に開閉させる方式を採用することも妨げない。あるいは、蓋部を回転軸方向で装置の外方に移動させるスライド式とすることもできる。この場合は、蓋部は胴部の底面と平行状態を維持したまま、手前に引き出される。またこの構成では、蓋部と同時に試料台を引き出すこともでき、上述のように試料台へのアクセスを容易にできる利点が得られる。また蓋部の開閉方式に依らず、試料台を単独で試料室の外部に引き出し自在としてもよい。試料台を引き出す構成は、例えば試料台及びこれを駆動する試料台駆動手段のアームを手前側に突出自在とすることで実現できる。
なお、後述するように試料台は傾動や揺動をしないように水平姿勢を維持しつつ、平面内の移動や回転を可能としているが、本明細書においてこのような試料台を水平姿勢に「固定」するとは、試料台を回転軸回りに胴部に対して揺動、傾斜させないという意味で使用する。すなわち、回転軸の軸方向に試料台をスライドさせることは「固定」の概念に含まれる。
(回動手段の変形例)
上述した図4の構成を、主に回転部分と固定部分の区分けで示した模式側面図を図14に示す。この構成では、胴部24全体が一方の端面板(図14において右側に位置する背面側)に対して回動し、端面板と胴部24との間に胴部24の回動を行わせるための回動手段30が構成されている。ただ、蓋部や胴部等の回転部分、固定部分の構成例は、このような構成に限られず、種々の形態が利用できる。図15〜図16Bに、変形例に係る回動手段の例を示す。これらの図において、図15は固定部分に蓋部27Bを設けた試料室21Bの模式側面断面図、図16Aは蓋部27Cを試料台33Cと一体とした試料室21Cで蓋部27Cを閉塞した状態を、図16Bは蓋部27Cを開放した状態を、それぞれ示している。なおこれらの図では、説明のため減圧ユニット等の図示を省略している。
図15の例では、胴部24の正面側(図において左側)を端面板で閉塞し、背面側(図において右側)に開閉式の蓋部27Bを設けている。この構成では、蓋部27Bは胴部24の回転によって回転しない、固定部分となっている。さらに図16A、図16Bの例では、固定部分に設けた蓋部27Cに、試料台33Cを一体的に固定している。この構成においては、好ましくは図16A、図16Bに示すように、蓋部27Cに試料台33Cを固定し、蓋部27Cを装置背面から引き出すことで、蓋部27Cを開放すると共に、蓋部27Cに固定された試料台33Cも試料室21C外に引き出される。この構成であれば、試料台33Cへのアクセスが容易となり、試料の載置や取り出し、交換作業が容易となる。
また図14及び図15の例では、胴部の全体を回転させているが、胴部の一部のみを回転させるような構造とすることもできる。例えば図17の斜視図に示すように胴部24Dを2つに分け、端面板の一方側(図において右側の背面側)を固定部分(図中斜線で示す)とし、他方(正面側)側を回転部分とすることで、円筒状側面の一部(正面側)を回転させている。また図18の斜視図の例では、胴部24Eを3分割し、両端面を固定部分(図中斜線で示す)とし、側面の中間部分である、観察手段10を固定した一部のみを摺動させる構成としている。これによって、端面板や蓋部27Eを固定部分側とでき、特に蓋部27Eの開閉構造を容易にできる利点が得られる。
なおこのような構成において、端面板や胴部24の一部に固定部分を設ける場合、この固定部分に、試料台33を駆動させる試料台駆動手段34を支持させる。具体的には、図4等に示すように、端面板に開口を設け、開口の内側であって固定板23上に試料台33を駆動する試料台駆動手段34を設けている。すなわち固定部分である開口内から試料台駆動手段34のアームを試料室21内に挿入し、アームの先端に試料台33をX、Y、Z方向に駆動させる状態に支持する。また図18の例では、他の固定部分である正面側の端面板に試料台駆動手段34を設けてもよい。あるいは、胴部24及び両端面板を、これらを支持するベース部22上にて回転軸回りに回転自在に支承させてもよい。この場合は、端面板の一部のみに試料台33を支持させることができる。
なお、いずれの構成においても回動手段が回転しても試料室21内の減圧状態が維持できるよう、気密を維持したまま回動できる構造が求められる。特に胴部24は複数の観察手段10を備え相当の重量がある上、固定板23で片持ち姿勢にて回転させるため、十分な機械的強度も求められる。そこで図4に示す例では、端面板を構成する固定板23と胴部24との間の回転面において、ベアリングとして回転精度が高くかつ荷重負荷耐性に優れたクロスローラベアリング31を使用している。さらに回転面での気密性を維持するため、Oリング32を介在させている。これにより、胴部24内部の試料室21の気密性を維持しつつ、安定的な回転機構が実現できる。
(回動手段の気密封止機構)
また一方、閉塞板28を閉塞位置として試料室21内を減圧すると、減圧による試料室21内外の圧力差によって閉塞板28は胴部側に吸引され、引き寄せられることになる。この結果、図19に示すように、回動手段の気密封止する界面に配置されたOリング32が挿入溝136のテーパ壁面137で変形されて、この部分の気密性が達成されつつ、回動手段による回動面の摩擦力を抑制できる。
従来の構造ではOリングを配置するため、図20に示すように、気密封止する界面に垂直な壁面を有する凹状の挿入溝136xを形成していた。この構造では、挿入溝136に配置された真空密閉用のOリング32xを上下方向から狭持して潰すため、接触面積が大きくなり、その分相当な摩擦力が発生して、回動手段による回転の抵抗力が大きくなるという問題があった。
そこで、このように封止界面でOリングを物理的に狭持して変形させるのでなく、減圧による吸い付きを利用してOリングを変形させ、摩擦抵抗を軽減している。具体的には、図19に示すように、挿入溝136の側面を、Oリング32の外形に沿うように傾斜させたテーパ壁面137としている。また封止界面においてはOリング32の機械的な狭持は、行わないか、あるいは比較的弱い力に止め、減圧時に発生する吸引力でテーパ壁面137にOリング32を密着するよう弾性変形させて、気密性を発揮させる。また封止部材はOリングに代えて、リップパッキン等他の弾性部材を利用できる。
(蓋部の回転軸支承構造)
さらに蓋部27の閉塞板28は、試料室21を気密に閉塞しつつ、胴部24と一体となって回転させる構造が要求される。すなわち、胴部24の回転時に閉塞板28を支承する機構が必要となるが、同時に蓋部27の回転軸を胴部24の回転軸と完全に一致させることは容易でない。すなわち、閉塞板28と胴部24とが一体となって回転するには、胴部24の回転軸と閉塞板28の回転軸が一致していなければならず、そのような姿勢に閉塞板28を正確に保持する必要がある。その一方で、保持する力が強すぎると、蓋部の閉塞板28の回転が阻害されることとなる。特に胴部24の回転に従って閉塞板28も回転するように同調できないと、ギスギス感が生じて回転の動きが悪くなってしまう。いわば正確な位置に閉塞板28を保持しつつも、その位置での回転は許容するという背反する特性が要求される。
一方、閉塞板の開閉機構を回転部分側に設ければ、このような問題は生じないものの、図21A、図21Bに示すように蓋28xの開閉の方向が真空チャンバ24xの回転位置によって変化するという問題があった。この構成で常に一定の方向に蓋28xを開閉させようとすれば、真空チャンバ24xを必ず所定の回転位置に一旦戻した状態で蓋28xを開閉させる必要があり、使い勝手が悪くなる。特に、従来のように試料台側を傾斜させて傾斜観察を行う構成では、このような胴部の回転作業自体が本来不要であったため、胴部側を回転式とした構成においては一層使い勝手を悪くする印象が強くなる。また一方で、試料台を傾斜させずに水平姿勢に維持する構成においては、胴部の回転位置に依らず試料台が常時水平姿勢であるため、尚更胴部を所定位置(例えば正面観察の姿勢)に戻す必然性は低い。さらに一方、胴部に閉塞板の開閉機構を設けると、閉塞板を開放した状態ではその重量によって閉塞板が不安定な状態となり、胴部を不用意に回転できなくなるため、試料を試料台に載置して傾斜観察の視野確認を表示手段で確認しながら載置位置を調整することが困難になるという問題もあった。
さらに閉塞板を引き出し式に開閉する構成も考えられるが、この構成では図22に示すように、手前側に蓋28yを引き出すためのスペースを確保しなければならない。またこの場合は、蓋28yの背面に試料台33yが固定されるため、蓋28yを開放した状態では試料台33yも手前に移動される結果、光学系撮像手段で試料を観察できなくなり、試料の載置位置を光学系撮像手段で確認しながら調整することができないという問題がある。
したがって、このような不利益を生じさせずに、胴部の回転位置に依らず閉塞板の開閉方向を常時一定に維持するには、閉塞板の開閉機構を回転部分でなく固定部分側に設ける必要がある。ただ、この構造を採用すると上述の通り、回転軸の支承部分で、回転の軸合わせと回転の容易さを両立させることが困難になるという問題があった。
そこで本実施の形態では、蓋部の蓋回転軸142を保持、開放する保持機構140を設けることで、このような位置決め保持と回転の抵抗力低減という矛盾する特性を両立させている。以下、蓋回転軸142と保持機構140の詳細を、図23A及び図23Bに基づいて説明する。これらの図において、図23Aは開放位置における蓋回転軸142のロック状態を、図23Bは閉塞位置における蓋回転軸142のロック解除状態を、各々示している。
(蓋回転軸142)
蓋回転軸142は、閉塞板28を蓋開閉手段で支持しつつ、胴部24の開口端を閉塞した状態では、閉塞板28の回転中心となる。すなわち、固定部分である蓋開閉アーム29と、回転部分である閉塞板28との間に介在して、これらを連結する部材である。
(保持機構140)
また保持機構140は、閉塞板28の位置に応じて蓋回転軸142のロック状態と解除とを切り替える部材である。すなわち、閉塞板28が開放位置にあるときは、閉塞板28を所定の姿勢に保持するロック状態となる。所定の姿勢とは、閉塞板28を閉塞位置としたとき、その回転軸が胴部24の回転軸と略一致するように、軸合わせあるいは調芯した姿勢である。すなわち、閉塞板28を開放位置から閉塞位置に移動させたときに回転軸が一致される姿勢に、閉塞板28を位置決めした状態に保持機構140は保持する。さらに閉塞板28が開放位置から閉塞位置に切り替えられると、保持機構140はこのロック状態を解除する。この結果、閉塞板28は胴部24と一体となって回転される。
蓋回転軸142と保持機構140の具体例を示す図23A及び図23Bの例では、蓋回転軸142を蓋開閉アーム29の先端から閉塞板28に向かう姿勢に突出させている。また閉塞板28は、蓋回転軸142と面する部位に、これを支承するための軸受凹部143を形成している。軸受凹部143は略凹状で、その開口部の内径を蓋回転軸142よりも大きくしている。このようにして蓋回転軸142と軸受凹部143との間に隙間を設け、これを遊びとすることで閉塞板28の胴部24への固定後の回転を蓋回転軸142で阻害せず、スムーズな回転を実現できる。
また軸受凹部143の開口部分には、開口端側の内径を狭くし、軸受凹部143の底面側に向かって末広がりに傾斜させた傾斜面144を形成している。図23A及び図23Bの例では、軸受凹部143の開口端部分に、中心を残して開口端を覆うようにストッパ145を固定している。ストッパ145は、蓋開閉アーム29と面する表面側を平板状として後述するコイルスプリング146を支承し易くし、軸受凹部143内部の裏面側を、開口端縁に向かって狭く形成した傾斜面144としている。
一方、蓋回転軸142の一端には、軸受凹部143に挿入された状態で、傾斜面144に沿った傾斜方向となるよう、開口端縁側の外形を細く、軸受凹部143の底面に向かって外形を大きくしたテーパ面147を形成している。テーパ面147及び傾斜面144は、両者を接触させた状態で閉塞板28と胴部24の回転軸が調芯される姿勢となるよう設計される。また好ましくは、テーパ面147の傾斜を傾斜面144よりも緩やかとなるように形成することで、確実にこれらの当接面で摩擦力を生じてロック状態を作り出すことができる。
さらに保持機構140は、蓋回転軸142と閉塞板28とが当接するように付勢された弾性部材を備えている。弾性部材には、例えばコイルスプリング146を利用できる。コイルスプリング146は、閉塞板28が開放位置にある姿勢で傾斜面144がテーパ面147に当接するように付勢する第一付勢手段として機能する。コイルスプリング146の内部に蓋回転軸142を挿通するように配置して、ストッパ145の表面を押圧することで、ストッパ145内面側で傾斜面144と蓋回転軸142のテーパ面147とを当接させる。これにより、摩擦力で蓋回転軸142と閉塞板28との保持状態を作り出すことができる。すなわち、閉塞板28が閉塞状態でないときは保持機構140で傾斜面144がテーパ面147に当接するよう付勢して保持状態を作り出す。そして保持状態においては上述の通り蓋回転軸142と閉塞板28とが芯合わせされて、位置決めされた状態に維持される。このため、閉塞板28を閉塞位置としたとき、胴部24の開口部分が正確に閉塞され、両者の回転軸が正確に位置決めされ、また位置ずれによる気密性の低下を回避できる。さらに閉塞板28を閉塞位置として試料室21内を減圧すると、減圧による試料室21内外の圧力差によって閉塞板28は胴部24側に吸引され、開口端のOリング32を潰して密着されて気密状態が達成される。
さらに、閉塞位置とすることで、蓋開閉アーム29とベース部22との折曲部分であるヒンジ部138に設けた引張バネ135が、蓋開閉アーム29を胴部24側に引き寄せる。引張バネ135は、閉塞板28が閉塞位置にある姿勢で第一付勢手段の付勢力に対向する応力を付与する第二付勢手段として機能する。引張バネ135による引張力は、コイルスプリング146による押出力よりも強くなるよう選択されている。この結果、蓋開閉アーム29がコイルスプリング146の反発力に抗して胴部24側に引き寄せられ、蓋開閉アーム29に固定された蓋回転軸142も胴部24側に押し出される。この結果、図23Bに示すように、蓋回転軸142のテーパ面147と閉塞板28の傾斜面144との接触が解除され、この界面で隙間が生じ、あるいはこの界面での摩擦が低減され、いずれにしても保持機構140の保持状態が解除される。このため、蓋回転軸142での摩擦力を低減でき、弱い力でも閉塞板28を回転できるようになって、胴部24の回転に追従して回転できるようになる。
このように、閉塞板28が閉塞位置にないときは閉塞板28の回転軸が胴部24の回転軸と略一致するように保持機構140で保持して調芯して、閉塞板28を閉塞位置に切り替える際の軸合わせと気密状態の達成とを確実ならしめ、さらに閉塞板28が一旦閉塞されると保持状態を解除することで、胴部24のスムーズな回転を保持機構140で阻害しないように回転の抵抗力を低減でき、信頼性と操作性を両立できるという優れた利点が得られる。
換言すると、保持機構140は試料室21の開放状態では閉塞板28を調芯した位置に保持しつつ、減圧状態では胴部24側に閉塞板28を引き渡す格好とすることで、蓋回転軸142の摩擦抵抗を軽減し、スムーズに胴部24を回転できる構成を実現している。
また保持機構は上記構成に限られず、閉塞状態で閉塞板を開放し、それ以外では閉塞板を把持可能な構造が適宜利用できる。例えば穴に球状部材を設け、蓋開閉アーム側にこの球状部材を捕捉するキャッチャーを設ける構造が利用できる。
以上のように、蓋部27を蓋開閉アーム29先端の蓋回転軸142上で回転自在とした円盤状の閉塞板28で構成し、さらに蓋開閉アーム29を固定部分であるベース部22に設けることで、閉塞板28の開閉方向は、胴部24の回転位置に依らず常時一定となる。図24に示す例では、開口端の下方に蓋開閉アーム29のピボットが位置されており、閉塞板28の開閉方向を一定として、ユーザは開閉動作をスムーズに行える。
さらに本明細書において回転乃至回動とは、必ずしも完全な円運動である必要はなく、円弧状の移動軌跡を含む。例えば図25の模式側面断面図に示すように、胴部24Fを半円状に構成して、湾曲側面に沿って電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12を移動させて試料室21F内を傾斜観察を可能とする例も包含する。同様に、胴部の円筒状側面には、完全な円筒のみならず、部分的な円筒、例えば断面が半円や円弧となるものも含む意味で使用する。
(取っ手35)
また胴部24は、手動で回転し易いように取っ手35を設けることもできる。図2Aに示す取っ手35は、観察手段10と同様、胴部24の円筒状側面から突出する姿勢に固定されたチャンバチルトノブである。取っ手35の先端には、ユーザが手で把持し易いようグリップ部分を設けている。ユーザは取っ手35のグリップ部分を把持して胴部24を所望の方向に回転できる。取っ手35は、両手で把持できるように、離間させて2つ設けている。好ましくは、胴部24の側面から突出する2つの観察手段である電子線撮像手段11と光学系撮像手段12を設けた位置の外側に、2つの取っ手35を設け、2つの観察手段の両側から挟み込むようにして配置する。このようにして、取っ手35同士の間に2つの観察手段を位置させることで、円周方向に突出した観察手段の端部が回動時に外部の部材と接触して破損したりする事態を、これら観察手段よりも外部に配置された取っ手35によって保護する効果も得られる。また、取っ手35の突出長さを、電子線撮像手段11や光学系撮像手段12よりも長く突出させることで、これら観察手段の保護効果をさらに高めることができる。加えて、図2B、図2Cに示す変形例のように、取っ手35Bの先端に設けたグリップ部分を外側に折曲させることで、ユーザがより把持し易くできる。また、取っ手35の形状は棒状とする他、L字状やコ字状、半円状等に形成してもよい。あるいは、取っ手を1本のみ設けてもよい。あるいはまた、観察手段が十分な強度で胴部に固定されている場合は、観察手段を取っ手に兼用することもできる。
(表示切替手段36)
また拡大観察装置は、使用する撮像手段を切り替える表示切替手段36を備える。表示切替手段36の例としては、ハードウエア的な切替スイッチが利用できる。図2Aの例では、表示切替手段36として胴部24の円筒状側面で、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の手前に、各々押しボタンを設けている。また各ボタンの前面にはLEDランプ等の表示灯17が設けられている。この表示切替手段36は、いずれか押しボタンを押下すると、該押しボタンの背面の観察手段が選択されて、表示手段2でリアルタイム表示される動画表示が、該観察手段で取得した画像に自動的に切り替わると共に、該当する表示灯17が点灯して、該観察手段が選択中であることを示す。このように、押しボタンの押下というメカニカルな切り替え操作によりユーザに対し切り替え操作を感覚的に知覚させ、さらに押しボタンの押し込み位置と表示灯17の点灯/消灯とで、現在の選択状態を視覚的に把握させることができる。なお図2Aの例では、いずれかの押しボタンを択一的に選択でき、非選択の押しボタンは自動的にOFFに切り替わる。言い換えると、表示切替手段36によりいずれか一方の観察手段を選択して、選択された観察手段のみ操作するよう構成されており、2つの観察手段を同時に使用することはできない。ただ、このように観察手段を交互に使用する構成の他、同時に使用可能に構成してもよい。
また、表示切替手段36による観察手段の切り替えには、各観察手段に設けられた切替スイッチを操作するハードウエア的な操作の他、ソフトウエア的な切り替えを採用することも可能である。例えば表示手段2の画面上で、選択したい観察手段の観察上を表示しているウィンドウを選択してアクティブにすると、自動的に観察手段の選択状態が切り替わるように構成してもよい。
また表示切替手段36は、このようなハードウエア的な構成の他、拡大観察装置100の操作プログラムを操作する等、電子的あるいはソフトウエア的に切り替え指示を送る構成としてもよい。あるいは、ハードウエアによる切替スイッチと、操作プログラム等のソフトウエアによる切替スイッチとを兼用してもよい。例えば胴部24を回動手段30で回動時させると、自動的に観察手段10を切り替えるように促すこともできる。また回動操作のための取っ手35に、切替スイッチを設けることもできる。特に、観察手段10の切り替え操作は、観察手段10を物理的に移動させる、すなわち回動手段30を操作させるタイミングで行うことが多いため、回動時に把持する取っ手35に、観察手段10の表示切替手段36を設けることで、この切り替え操作も回動操作とほぼ同時に実行することができ、操作性を向上できる。例えば、取っ手35のハンドル部35bの端面や側面に、ユーザがハンドル部35bを把持した状態で親指や人差し指で押し易い位置に、表示切替手段36として押しボタンスイッチを設ける。また、押しボタンスイッチはトグル式に電子線撮像手段と光学系撮像手段とを切り替える他、各観察手段に切り替えるための専用のボタンを設けてもよい。例えば右側の取っ手35には観察手段の内、右側に配置されたもの、例えば光学系撮像手段には光学系撮像手段への切替スイッチを、左側の取っ手35には左側に配置されたもの、例えば電子線撮像手段には電子線撮像手段への切替スイッチを、それぞれ設けることができる。
(試料室21)
試料室21内は、減圧状態を維持できるような封止構造としている。試料室21の内壁には、各種の部材を配置、或いは接続するためのポートを開口している。各ポートは、試料室21内を減圧状態に維持できるよう、気密に封止される。このような気密封止を実現するために、接合箇所にはOリング等のパッキンが利用される。
(第一の位置41及び第二の位置42)
観察手段10の内、第一の観察手段を構成する電子線撮像手段11は胴部24の円筒状側面の第一の位置41に固定されており、また第二の観察手段を構成する光学系撮像手段12は同じく胴部24の円筒状側面で、第一の位置41と近接した第二の位置42に固定されている。図3の例では、電子線撮像手段11を固定している第一の位置41と、光学系撮像手段12を固定している第二の位置42との距離は、固定値である。すなわち、円筒状胴部24を回転させると、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが一緒に回動されることになる。これにより、各観察手段10の移動機構を共通にして簡素化できる。
第二の位置42は、光学系撮像手段12の先端が電子線撮像手段11の電子銃47の光軸と干渉しない位置とする。好ましくは、非干渉としつつ極力接近させた位置とする。これにより、図3に示すように光学系撮像手段12を電子線撮像手段11と近付けることができ、この結果、双方の観察手段10の位置まで回動させるための回転量を最低限に抑え、撮像位置の切り替え作業をスムーズにかつ迅速に行える。また、観察手段10の位置を近付けることで、図26(a)〜(c)に示すように、両者の回動移動可能な範囲の重複範囲(後述する重複回動範囲)を大きくできる利点も得られる。
このため第一の位置41と第二の位置42とが回動中心と成すオフセット角度は、小さい程好ましく、具体的には30°〜50°の範囲とすることが好ましい。図3の例では、光学系撮像手段12の光軸と電子線撮像手段11の光軸が、40°の角度差となるように、各々が胴部24に固定されている。また回動手段30は、オフセット角度以上の範囲で回転させることが可能であり、これによって一方の観察手段を他方の観察手段の位置まで回転させることができる。回動手段30で回動可能な範囲は、回動規制手段214で規制される最大回動範囲である。また回動規制手段214を解除することで、さらに広範囲の回動範囲規制値まで回動させることも可能である。
なおこの例では、電子線撮像手段11は胴部24に交換不能な状態で固定されている一方、光学系撮像手段12は着脱式に固定している。これにより、光学系撮像手段12を図9に示すように拡大観察装置100から外して、デジタルマイクロスコープ用のスタンドSTに付け替えることが可能となる。この着脱構造を実現するため、第二の位置42には光学系撮像手段装着部が設けられる。
(光学系撮像手段装着部)
胴部24の円筒状側面には、第二の位置42に光学系撮像手段12を着脱自在に装着するための光学系撮像手段装着部を設けている。光学系撮像手段装着部は、光学系撮像手段12の光学レンズ鏡筒を差し込み可能に開口されたポートを有しており、ポート部分には光学系撮像手段12を装着するためのマウント39が設けられる。マウント39は、図3に示すように有底筒状で、その内径は光学系撮像手段12を装着できるよう、光学系撮像手段12の外形よりも若干大きく設計される。またマウント39の筒状内面には、ネジ溝等、光学系撮像手段12を挿入し固定するための構造を設ける。
さらにマウント39の底面には開口窓が設けられ、装着された光学系撮像手段12の光学レンズを阻害しないよう、透光性ウィンドウが嵌め込まれている。さらにマウント39は、試料室21内の気密性を維持しつつ装着できるよう、Oリングを介して封止される。Oリングはマウント39と胴部24との接合面及びマウント39と透光性ウィンドウとの接合面に、各々設けられる。図3の例では、光学系撮像手段装着部は、第一Oリング、ポート、第二Oリング、透光性ウィンドウの4部品により、真空封止している。
このように胴部24の筒状側面に気密に設けられたマウント39に光学系撮像手段12を装着自在とすることで、気密性を維持しつつ光学観察を行うことができる。さらに、マウント39に装着される光学系撮像手段12を交換することも容易に行えるため、光学観察の自由度が飛躍的に増す。特に従来のSEM等の電子顕微鏡においては、光学観察が可能な光学レンズを備えるものは存在したが、あくまでも電子顕微鏡の視野探し等に利用することを想定した補助的な意味合いが強く、本格的な光学レンズを備えるものは殆ど利用されていなかった。これに対し本実施の形態では、光学レンズを交換可能としたことで、電子顕微鏡と併用する光学観察においてもその選択肢を広げ、観察の自由度を大きく拡大できる利点が得られる。
すなわち従来は、視野探しを光学系撮像手段12で行い、その後の詳細な観察は電子線撮像手段11で行うという位置付けに過ぎなかった。また、同じ視野の光学画像と電子顕微鏡画像とを同倍率で表示し、これらを併用して対比、切り替えを行おうとすれば、両者が同じ視野となるように位置合わせする作業が非常に面倒であった。これに対して本実施の形態では、光学系撮像手段12と電子顕微鏡の拡大倍率を重複させ、かつ回転式に移動させつつ、その回転軸に試料を配置することで、同じ視野範囲で光学画像と電子顕微鏡画像との取得が飛躍的に容易となった。
第一の位置41と第二の位置42は、図3に示すように、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが相互に干渉しない程度に近接させて固定されている。具体的には観察手段10の先端部が試料室21内部で物理的に干渉する虞があり、また一方の光軸が他方の鏡筒で遮られる虞もある。特に図3に示すように、電子線撮像手段11は試料室21内部まで突出している一方、光学系撮像手段12はマウント39に固定される都合上、試料室21内部への侵入量が相対的に少なく、その光軸が電子線撮像手段11の先端に阻害される虞がある。このため、このような物理的、光学的な干渉が生じないように、これらを離間させる必要がある。
一方でこれらを離間させすぎると、今度は胴部24を回転させて互いの位置まで移動させる際の移動距離が長くなる上、相互の観察手段10が共に位置することのできる軌跡の重複すなわち重複回動範囲が狭くなる不都合がある。そこで、これらが干渉しない程度に近接して配置することで、一方の観察位置に他方の観察手段10を移動させる際の移動量を必要最小限に抑えて無駄な移動量を無くし、切り替えを速やかに行う利点が享受できる。
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との固定位置は、円筒状胴部24の回転軸と略直交する略同一平面上としている。これにより、回転移動された光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、常に同じ円周上で移動するため、両者の軌跡が一致し、同一視野の観察画像を得ることが可能となる。特に電子線撮像手段11を回動させる回動面と、光学系撮像手段12を回動させる回動面とを略一致させることで、各観察手段10の光軸の移動範囲が一致するため、一方の観察手段10を他方の観察手段10の位置まで回動させるだけで、同じ視野の観察画像を取得でき、位置の切り替えによる視野合わせや焦点の調整といった、同じ視野での撮像を行うべく異なる観察手段10に切り替えるためのユーザの操作を極めて容易にできる利点が得られる。
また、同一平面上に光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを固定することで、胴部24の長さを短くでき、回転軸方向における装置のコンパクト化を図り、拡大観察装置の外形を小型化できる利点も得られる。このような試料台33側を固定して観察手段10側を傾斜させる構造によって、異なる傾斜角度(観察角度)での傾斜観察を容易に行え、マルチアングルでの高倍率傾斜観察が可能となる。
また電子線撮像手段11を固定する第一の位置41と、光学系撮像手段12を固定する第二の位置42とは、異なる位置であるため、各観察手段10で試料を撮像する傾斜角度も、第一の位置41と第二の位置42とで異なる。この結果、同時に撮像できる電子顕微鏡画像と光学画像とは、異なる傾斜角度で得られたものとなるが、胴部24を回転させることでお互いの位置まで容易に移動させることができる。すなわち、光学系撮像手段12があった位置まで電子線撮像手段11を移動させたり、逆に電子線撮像手段11の位置に光学系撮像手段12を移動させることが、胴部24を回動させるという極めて簡単な操作により速やかに、かつ正確に行える。このことは、特に従来の電子顕微鏡と比べて大きな利点となる。
本実施の形態によれば、同じ傾斜角度での観察画像を、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とで得ようとすれば、一旦一方の観察手段(例えば光学系撮像手段12)で観察画像(例えば光学画像)を撮像した上で、円筒状胴部24を回転させ、他方の観察手段(例えば電子線撮像手段11)を、先ほど一方の観察手段で撮像した位置まで回動させる。回動は、回転運動の中心軸すなわち回転軸に沿った円弧状の軌跡となるため、どの位置であっても常に観察手段の光軸は回転軸に向かう姿勢で維持される。よって、一旦焦点距離を調整しておけば、回動によっても本質的にはその焦点距離が維持されるため、合焦のための操作は極めて容易である。
言い換えると、最初に一方の観察手段で観察画像を撮像する際、他方の観察手段でも合焦位置に調整しておけば、回動の前後で合焦状態が維持されるため、回動後速やかに観察画像を取得できる。このように本実施の形態によれば、2つの異なる観察手段10を用いて、同じ位置での観察画像を速やかに、かつ容易に取得できるという極めて優れた特長が得られるのである。
(回動可能範囲)
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11が各々回動できる範囲は、少なくとも一部が重複するよう、すなわち互いの観察手段10がお互いの位置に移動できるように構成する。図26(a)〜(c)は、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11がそれぞれ回動できる範囲を概念的に示した模式図であり、図26(a)は電子線撮像手段11と光学系撮像手段12の重複回動範囲を、図26(b)は電子線撮像手段11の回動可能範囲を、図26(c)は光学系撮像手段12の回動可能範囲を、それぞれ示している。また各図において実線は電子線撮像手段11の回動可能範囲を、破線は光学系撮像手段12の回動可能範囲を、それぞれ示している。上述の通り光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、胴部24の回転により一緒に回動されるため、各々の観察手段10が回動できる回動可能範囲は、胴部24の回転可能範囲に依存する。
(重複回動範囲)
より正確には、胴部24の回転可能範囲から、第一の位置41と第二の位置42との角度差すなわちオフセット角度を減算した角度が、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが重複する重複回動範囲である。例えば、胴部24の回転可能範囲が150°で、オフセット角度が40°の場合は、150°−40°=110°が、重複回動範囲となる。重複回動範囲が広い程、様々な傾斜角度で電子顕微鏡画像、光学画像を共に撮像することができ、好ましい。理想的には、重複回動範囲を試料台33の上面をすべてカバーできる0°〜180°とする。この場合は、ほぼすべての傾斜角度で電子顕微鏡画像、光学画像を取得できる。ただ、胴部24から突出する各観察手段10が拡大観察装置の載置面と抵触すると回動が阻止されるため、各観察手段10が胴部24から突出する長さや、拡大観察装置を床面に載置するための脚部26の高さ等により物理的な制約を受けることになる。このため重複回動範囲は、60°〜180°程度となる。好ましくは、180°もしくはこれに近い重複回動範囲を実現できるよう、各観察手段10の突出長さや脚部26の長さを設定する。なお本明細書において傾斜角度は、電子線撮像手段11が垂直姿勢にある状態を0°として計算している。例えば図26(b)の例では、電子線撮像手段11の回動可能範囲が、垂直姿勢から左に90°、右に60°で、合わせて150°である。また光学系撮像手段12の回動可能範囲は、電子線撮像手段11から右に40°傾斜して固定されているため、その回動可能範囲は、図26(c)に示すように、垂直姿勢から左に50°、右に100°で、合わせて150°である。
以上のように、各観察手段10(光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11)は、回転移動(回動)によって、その回転軸に位置する試料までの距離をほぼ一定に維持できるため、一旦焦点距離を調整しておけば、位置を変更しても常にフォーカスを合わせた状態で、回転角度すなわち視点のみを変化させることができるという優れた利点が得られる。
(電子線撮像手段11の概要)
次に、電子線撮像手段11の概要について、図27に基づいて説明する。図27は、電子線撮像手段11のシステム構成を示すブロック図であり、ここでは静電型の静電レンズを用いたSEMを利用している。このSEMは、一般に加速電子の電子線を発生させ試料SAに到達させるまでの電子レンズ系と、試料SAを配置する試料室21(チャンバ)と、試料室21内を真空にするための排気系と、像観察のための操作系で構成される。また図27の電子線撮像手段11は、荷電粒子線による電子線観察像である電子顕微鏡画像の観察を行うため、電子顕微鏡制御部40で各部材を制御する。さらに図27のコントローラ1で実行される電子顕微鏡の操作プログラムで、電子顕微鏡の像観察条件の設定や各種操作を行い、観察像の表示を行う表示手段2に表示する。
(電子レンズ系)
電子レンズ系は、加速電子の電子線EBを発生させる電子銃47、加速電子の束を絞り込んで細束化する電子レンズ系、試料SAから発生する二次電子や反射電子を検出する検出器を備える。電子レンズ系の細束化は、電子線を集束させるための集束部と、試料に対する電子線の焦点合わせをするための焦点合わせ部とで構成される。これらは、電子線源から放出される電子線の光軸方向に並べて配設される。集束部にはコンデンサレンズ等が利用でき、集束部には対物レンズ等が利用できる。また集束部は、複数段に構成することもでき、例えば集束部を第一集束部と第二集束部の二段で構成できる。図27に示す電子線撮像手段11は、電子レンズ系として電子線EBを照射する電子銃47と、電子銃47から照射される電子線EBが電子レンズ系の中心を通過するように補正する光軸調整器としてガンアライナ49と、電子線EBのスポットの大きさを細く絞る集束レンズ52であるコンデンサレンズと、集束レンズ52で集束された電子線EBを試料SA上で走査させる電子線偏向走査手段58と、走査に伴い試料SAから放出される二次電子を検出する二次電子検出器61と、反射電子を検出する反射電子検出器62を備える。
(排気系)
試料室21には、試料台33、試料導入装置、X線検出用分光器等が備えられる。試料台33(ステージ)は試料台制御部34で制御され、試料台33のX、Y、Z(高さ)方向への移動、回転(R軸)機能を備える。これら4軸は電動駆動される他、一部もしくは全部を手動での駆動とすることもできる。排気系は、上述した減圧ユニット15で構成される。
(操作系)
操作系は二次電子像、反射電子像、X線像等を表示、観察しながら照射電流の調整、焦点合わせ等を行う。二次電子像等の出力は、アナログ信号であれば写真機によるフィルム撮影が一般的であったが、近年は画像をデジタル信号に変換した出力が可能となり、データの保存や画像処理、印刷等の多種多様な処理が可能である。図27のSEMは、二次電子像や反射電子像等の観察像を表示する表示手段2と印刷のためのプリンタ69を備える。また操作系は、像観察条件として少なくとも加速電圧又はスポットサイズ(入射電子線束の直径)を設定するために必要な設定項目の設定手順を誘導(ガイダンス)する設定誘導手段を備える。
(電子線撮像手段11の詳細)
次に、電子線撮像手段11の詳細について、図27に基づき説明する。図27のSEMは、コントローラ1及び表示手段2と接続され、コントローラ1で電子線撮像手段11の操作を行い、結果を表示手段2に表示し、また必要に応じて像観察条件や画像データを保存したり、画像処理や演算を行う。図27に示すCPUやLSI等で構成される中央演算処理部60は、電子線撮像手段11を構成する各ブロックを制御する。電子銃高圧電源43を制御することにより、フィラメント44、ウェーネルト45、アノード46からなる電子銃47より電子線EBを発生させる。電子銃47から発生された電子線EBは、必ずしも電子レンズ系の中心を通過するとは限らず、ガンアライナ49を光軸調整器50によって制御することで、電子レンズ系の中心を通過するように補正を行う。次に、電子線EBは集束レンズ制御部51によって制御される集束レンズ52であるコンデンサレンズによって細く絞られる。集束された電子線EBは、電子線EBを偏向する非点収差補正器57、電子線偏向走査手段58、対物レンズ59、及び電子線EBのビーム開き角を決定する対物絞り53を通過し、試料SAに至る。非点収差補正器57は非点収差補正器制御部54によって制御され、走査速度等を制御する。同様に電子線偏向走査手段58は電子線偏向走査手段制御部55によって、対物レンズ59は対物レンズ制御部56によって、それぞれ制御され、これらの作用によって試料SA上を走査する。試料SA上を電子線EBが走査することにより、試料SAから二次電子、反射電子等の情報信号が発生され、この情報信号は二次電子検出器61、反射電子検出器62によりそれぞれ検出される。検出された二次電子の情報信号は二次電子検出増幅部63を経て、また反射電子の情報信号は反射電子検出器62で検出されて反射電子検出増幅部64を経て、それぞれA/D変換器65、66によりA/D変換され、画像データ生成部67に送られ、画像データとして構成されて第一記憶手段131に保持される。第一記憶手段131に保持された画像データはコントローラ1に送られ、コントローラ1に接続されたモニタ等の表示手段2にて表示され、必要に応じてプリンタ69にて印刷される。排気系ポンプ70は、試料室21内部を真空状態にする。排気系ポンプ70に接続された排気制御部72が真空度を調整し、試料SAや観察目的に応じて高真空から低真空まで制御する。
(電子銃47)
電子銃47はあるエネルギーをもった加速電子を発生させるソースとなる部分で、W(タングステン)フィラメントやLaB6フィラメントを加熱して電子を放出させる熱電子銃の他、尖状に構成したWの先端に強電界を印加して電子を放出させる電界放射電子銃がある。一方電子レンズ系は、電子顕微鏡倍率調整手段68で制御されて電子顕微鏡倍率を調整する。電子レンズ系には、集束レンズ52、対物レンズ59、対物絞り53、電子線偏向走査手段58、非点収差補正器57等が装着されている。集束レンズは電子銃47で発生した電子線EBをさらに収斂して細くする。対物レンズ59は最終的に電子プローブを試料SAに焦点合わせするためのレンズである。対物絞り53は収差を小さくするために用いられる。検出器には、二次電子を検出する二次電子検出器61と反射電子を検出する反射電子検出器62がある。二次電子はエネルギーが低いのでコレクタにより捕獲され、シンチレータにより光電子に変換されて、光電子倍増管で信号増幅される。一方、反射電子の検出にはシンチレータあるいは半導体型が用いられる。なお、本発明では二次電子や反射電子の信号検出に限定されず、オージェ電子、透過電子、内部起電力、カソードルミネッセンス、X線、吸収電子等の信号検出器を適用することもできる。あるいは、反射電子検出器を省略してもよい。
(静電レンズ)
以上の電子線撮像手段11であるSEMは、電子レンズとして静電型の電子レンズである静電レンズを採用している。静電型のSEMは軽量であるため、本実施の形態のように傾斜させる構造に適している。静電レンズの概要を、図28のブロック図に示す。この図に示すように静電レンズは、電子レンズ鏡筒内の各電子レンズを、静電レンズ制御部40Aで電気的に制御する構造となっている。電子レンズ鏡筒内には、電子銃47Aと、集束部を構成する第一コンデンサレンズ52A及び第二コンデンサレンズ57Aと、電子線偏向走査手段58として、電子線EB1を走査させるための走査電極58Aと、焦点合わせ部を構成する対物レンズ59Aとが備えられる。電子銃47Aは、電子線源であるフィラメント44Aと、電子線集束用の円筒電極であるウェーネルト45Aと、アノード46Aとで構成される。また静電レンズ制御部40Aは、フィラメント44A及びウェーネルト45Aを制御して電子銃47Aより電子線EB1を発生させる電子銃高圧電源43Aと、第一コンデンサレンズ52Aを制御する第一レンズ制御部51Aと、第二コンデンサレンズ57Aを制御する第二レンズ制御部54Aと、走査電極58Aを制御する走査電極制御部55Aと、対物レンズ59Aを制御する対物レンズ制御部56Aとを備える。このように静電レンズは、複数の電極を組み合わせて、正電場の電子線EB1に対する集束作用を利用して電子線EB1を試料SAに向けて照射し、試料SAから放出される二次電子SE1を二次電子検出器61Aで検出している。この構造の静電レンズは収差が大きいものの、構造を簡素化して電子線撮像手段11の軽量化を図ることができ、これにより観察手段10の回動を安定的に行え、信頼性を向上できる利点が得られる。なお図28の例では、電子線偏向走査手段58を1段の走査電極58Aで構成しているが、複数段の電極で構成することもできる。
(電子銃)
ここで、電子銃の詳細について図30〜図32に基づいて説明する。これらの図において、図30は電子銃の詳細な構成を示すブロック図、図31は電子銃の動作を示す模式図、図32はフィラメント電流と信号強度の関係を示すグラフを、それぞれ示している。これらの図に示す電子銃は、フィラメント44、ウェーネルト45、アノード46を備える。この電子銃の制御は、電子銃高圧電源43に対してフィラメント電流、バイアス電圧、加速電圧の3つのパラメータにて行う。ここで電子銃高圧電源43は、フィラメント電源43a、バイアス電源43b、加速電圧電源43c、エミッション電流計43dを備える。エミッション電流計43dは、電子銃高圧電源43からのエミッション電流出力を取得して、エミッション電流として表示する。また図31に示すように、フィラメント44はフィラメント電源43aにて電流を流されることにより加熱され、先端から電子線を発生する。ウェーネルト45は、バイアス電源43bにてフィラメント44より低い電圧に設定されることにより、フィラメント44から出た電子線を集束する。一方、アノード46はグランド電位に保たれ、電子線を引き寄せ、穴を通過させる。さらにバイアス電源43b、フィラメント電源43aには、加速電圧電源43cによって電圧を加算される。
なお電子線の最終照射量は、図32に示すように、フィラメント44に流すフィラメント電流によって変化する。通常は、図32に示す第二飽和点に設定して使用する。バイアス電圧を高めるとウェーネルト45によって作られるレンズ効果が大きくなり、フィラメント44から出た電子線が強く絞られる。これにより仮想光源の大きさが変化すると同時に、絞り等によって排除される電子線の量が変化し、最終的に試料に照射される電流量が変化することとなる。
(倍率制御モード切替機能)
さらに電子線撮像手段11は、表示倍率に応じて複数の倍率制御モードを備えている。具体的には、低倍率での観察に適した低倍率制御モードと、高倍率での観察に適した高倍率制御モードとを、倍率制御モード切替手段で切り替え可能としている。このような倍率制御モード切替手段187による倍率制御モードの切り替えを可能とした電子線撮像手段11を、図33〜図38に示す。これらの図において、図33は倍率制御モード切替機能を実現する拡大観察装置のブロック図、図34は図33の電子線撮像手段11を詳細に示した模式図、図35は図34の電子線偏向走査手段58の模式図、図36は図35の電子線偏向走査手段58を高倍率制御モードとした場合の電子線の走査状態を示す模式図、図37は図35の電子線偏向走査手段58を低倍率制御モードとした場合の電子線の走査状態を示す模式図、図38は設定された表示倍率に応じて倍率制御モードを切り替える様子を示す模式図を、それぞれ示している。これらの図に示すように、電子線撮像手段11はユーザが設定した表示倍率に応じて、倍率制御モードを自動的に切り替える倍率制御モード切替機能を実現しており、これによってユーザは倍率制御モードの切り替えを意識することなく、また倍率制御モードの切り替えに必要な、観察条件を規定するパラメータ値セットの再設定を行うことなく、シームレスに表示倍率を変更できるようになる。すなわち従来であれば、ユーザは観察したい表示倍率に応じて、この表示倍率に応じた適切な倍率制御モードを選択しなければならず、さらに選択した倍率制御モードの変更によって発生する非点収差等のパラメータを、さらに調整しなければならず、倍率を単純に低倍率から高倍率、あるいは高倍率から低倍率に変更できないという問題があった。このような問題を、倍率制御モード切替機能によって解消でき、ユーザは面倒な設定変更を行う煩わしさから開放され、使い勝手のよい電子顕微鏡画像の観察が可能となる。
具体的には、図33のブロック図に示すように、拡大観察装置は、電子線撮像手段11と、電子顕微鏡制御部40と、表示手段2と、電子顕微鏡倍率調整手段68とを備える。この電子顕微鏡倍率調整手段68は、表示手段2における電子顕微鏡画像の表示倍率を調整するための部材である。
また電子顕微鏡倍率調整手段68は、倍率制御モード切替手段187と、パラメータ値セット設定手段188と、パラメータ値セット記憶手段189とを備える。パラメータ値セット記憶手段189は、電子線撮像手段11による電子顕微鏡画像の撮像条件を調整するための複数のパラメータについて、第一倍率制御モードで設定されるパラメータ値セットと、第二倍率制御モードで設定されるパラメータ値セットとを記憶する。ここで電子顕微鏡画像の撮像条件には、明るさや拡大倍率、解像度等が挙げられる。このパラメータ値セット記憶手段189は、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶素子が適宜利用できる。さらにパラメータ値セット設定手段188は、倍率制御モードの切り替えに伴って、パラメータ値セットを切り替えて設定する。
(電子線撮像手段の詳細)
この電子線撮像手段の詳細を、図34に示す。この図に示す電子線撮像手段11は、電子銃47を構成する、電子線源であるフィラメント44Cと、電子線集束用の円筒電極であるウェーネルト45Cと、アノード46Cと、ガンアライナ49として、上段アライナ電極49C1と、下段アライナ電極49C2と、第一コンデンサ絞り52cと、第一コンデンサレンズ52Cと、第二コンデンサ絞り57cと、第二コンデンサレンズ57Cと、対物絞り53Cと、電子線偏向走査手段58として第一偏向部58C1である第一偏向電極と、第二偏向部58C2である第二偏向電極と、対物レンズ59Cとを備えている。なお図34に示す電子線撮像手段11では、電子線偏向走査手段58として、図28の電子線EB1を走査させるための一段の走査電極58Aと異なり、複数段で構成している。すなわち、第一偏向部58C1及び第二偏向部58C2の2段で電子線偏向走査手段58を構成している。
(電子線偏向走査手段58)
電子線偏向走査手段58は、電子線を走査するスキャナの役割を果たす。ここで、図34の電子線撮像手段11において、電子線偏向走査手段58を用いて倍率制御モード毎に電子線を走査する状態を、図35〜図37に基づいて説明する。図35は、電子線偏向走査手段58を示す模式図であり、上述の通り第一コンデンサレンズ52Cと、第二コンデンサレンズ57Cと、電子線源から放出される電子線の光軸方向に並べて配置された、該電子線を偏向させるための第一偏向部58C1及び第二偏向部58C2と、対物レンズ59Cとを備えている。
(高倍率制御モード)
この電子線偏向走査手段58で、高倍率制御モードとした場合の電子線の走査状態を図36に、低倍率制御モードとした場合の電子線の走査状態を図37に、それぞれ示す。電子線偏向走査手段58は、第一倍率制御モードである高倍率制御モードでは、第一偏向部58C1及び第二偏向部58C2を用いて電子線を走査する。ここでは、二段のコンデンサレンズ52C、57Cで電子線を集束し、二段の偏向部58C1、58C2で電子線を走査し、さらに対物レンズ59Cで電子線を試料にフォーカスするよう制御する。高倍率制御モードでは、二段の偏向部58C1、58C2で電子線の振り戻しを行い、対物レンズ59C中心に走査の中心となる偏向節を一致させた電子線走査を行う。これにより、対物レンズ電界によって画面端縁が歪められないという利点がある。
(低倍率制御モード)
しかし、このままでは低倍率にすると、第二偏向部の端縁の不均一電解で歪みが発生し易くなる。そこで、第二倍率制御モードである低倍率制御モードでは一方の偏向部をOFFしている。一方の偏向部をOFFすると、対物レンズの端縁で歪みが発生し易くなるため、対物レンズもOFFしている。ここでは、第一偏向部58C1及び第二偏向部58C2の内、試料に近い側の偏向部、図37の例では第二偏向部58C2を用いて電子線を走査する。これにより、同じ電極間隔でも、低倍率制御モードにおいて広範囲の走査が可能になる。
(倍率制御モード切替手段187)
倍率制御モード切替手段187は、ユーザが選択した表示倍率から、高倍率制御モード又は低倍率制御モードのどちらに属するかを判断して、自動で倍率制御モードを切り替える。さらに、倍率制御モードの変更に応じて、変化させる必要のある画像調整用のパラメータを自動的に変更する。これによりユーザは、低倍率観察用の倍率制御モードと高倍率観察用の倍率制御モードの区別を意識することなく、低倍率から高倍率までシームレスな観察が可能となる。
具体的には、倍率制御モード切替手段187は、電子顕微鏡倍率調整手段から、電子顕微鏡画像の表示倍率を取得し、表示倍率が所定の閾値に達すると、倍率制御モードを切り替える。この様子を、図38に基づいて説明すると、ユーザが設定可能な倍率範囲としては、高倍率での観察に適した高倍率制御モードに対応する倍率範囲と、低倍率での観察に適した低倍率制御モードに対応する倍率範囲とが存在する。これら両方を含む範囲で、ユーザが所望の表示倍率、すなわちユーザ設定倍率に、電子顕微鏡倍率調整手段で設定可能としている。この例では、高倍率制御モードと低倍率制御モードの使用可能範囲は一部重複する。この重複範囲内で、倍率制御モード切替倍率が設定される。そして倍率制御モード切替手段187は、ユーザが設定したユーザ設定倍率が、どちらの倍率制御モードに属するかを判断して、倍率制御モードを自動的に切り替える。さらにこの際、パラメータを自動で変更する。図38の例では、倍率制御モード切替倍率を100倍としている。ユーザが表示倍率を上げていき、100倍になった時点で倍率制御モードを倍率制御モードから高倍率制御モードに切り替える。
なお、上記の例では、倍率制御モードを切り替える倍率制御モード切替倍率は、一定値としているが、高倍率制御モードから低倍率制御モードに切り替える倍率制御モード切替倍率と、低倍率制御モードから高倍率制御モードに切り替える倍率制御モード切替倍率とを個別に設定してヒステリシスを持たせることもできる。例えば倍率制御モード切替手段187が、低倍率から高倍率に調整される表示倍率が所定の倍率制御モード切替倍率に達したときに、第一倍率制御モードから第二倍率制御モードへ切り替えると共に、高倍率から低倍率に向けて調整される表示倍率が所定の倍率制御モード切替倍率よりも低い倍率に達したとき、第二倍率制御モードから第一倍率制御モードへ切り替えるように構成してもよい。これによって、可能な限り現在の倍率制御モードを維持できるという利点が得られる。その一方で、同じ表示倍率が2つの倍率制御モードによって取得できることとなって、観察像の見え方が若干異なる可能性が生じる。
(パラメータ)
各倍率制御モードにおいては、電子線撮像手段の撮像条件を決定する各種のパラメータを最適値に設定する。このため、各倍率制御モードに応じたパラメータ値セットを予め設定し、パラメータ値セット記憶手段189に記憶しておく。そして表示倍率が変更され、倍率制御モードの切り替えが必要であると倍率制御モード切替手段187が判定した場合は、パラメータ値セット記憶手段189から該当するパラメータ値セットを読み出し、パラメータ値セット設定手段188により、各パラメータを適切なパラメータ値に設定することができる。このようなパラメータとしては、電子顕微鏡画像の明るさ、倍率、解像度等に関する条件が挙げられる。
(パラメータ値セットの例)
ここで、倍率制御モード変更時に調整が必要となるパラメータとその設定例を説明する。例えばバイアス電圧のパラメータでは、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードに応じた最適値とする。一方で、高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードと同じ照射電流量となるように、バイアス電圧を設定する。これは、低倍率制御モードと高倍率制御モードとでは電子線の縮小率が異なることから、照射電流量が倍率制御モードの移行前後で変化しないように、バイアス電圧を変化させるものである。
また他のパラメータとして、第一コンデンサレンズの強度は、各倍率制御モードに応じた最適値を使用する。一方で第二コンデンサレンズは、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードに応じた最適値とする。このように高倍率制御モードでは、対物レンズで電子線を試料にフォーカスするよう制御している。逆に高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、対物レンズをOFFとして第二コンデンサレンズで電子線を試料にフォーカスするよう制御する。そのため、倍率制御モードへの切替時に高倍率制御モードとフォーカスがずれないように、低倍率制御モードでは第二コンデンサレンズを制御する。
また非点については、各倍率制御モードに応じた最適値を使用する。さらに第一偏向部及び第二偏向部は、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、倍率が合うようなモード最適値に設定される。一方で、高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、第一偏向部は上述の通りOFFとし、一方で第二偏向部は倍率が合うようなモード最適値に設定される。さらにイメージシフトについては、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、モード最適値とし、逆に高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードと視野ずれが発生しないよう設定される。さらに対物レンズについては、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、低倍率制御モードとフォーカスずれが発生しないよう設定され、逆に高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、OFFとされる。またコントラストについては、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、低倍率制御モードと画像明るさが変化しないよう設定され、逆に高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードと画像明るさが変化しないように設定される。最後に明るさについては、低倍率制御モードから高倍率制御モードへの切替時には、低倍率制御モードと画像明るさが変化しないように設定され、逆に高倍率制御モードから低倍率制御モードへの切替時には、高倍率制御モードと画像明るさが変化しないよう設定される。
なお、上述の通り倍率制御モード切替手段187によって倍率制御モードの切り替えに伴って必要なパラメータは自動で切り替えられるが、ユーザがさらにパラメータを操作手段等により微調整可能としてもよいことはいうまでもない。
このようにして、観察倍率範囲に応じて光学系を異なる倍率制御モードで動作させる際、ユーザの設定倍率に応じて倍率制御モードを切り替えると共に、関係パラメータを連動させる手段を提供することで、ユーザが倍率を操作した際に、その設定倍率がどの倍率制御モードにて実現されるかを自動的に判断して切り替えることができる。また、その際に倍率制御モードに応じて各種関連パラメータを自動的に変更することにより、ユーザは倍率制御モードを意識することなく倍率を変更することが可能となる。なお、このような倍率制御モードを自動的に切り替える機能をOFFするように構成してもよいことはいうまでもない。
(電磁レンズ)
ただ、本発明は電子線撮像手段11を静電レンズに限定するものでなく、他の電子レンズも適宜採用できる。例えば、十分な機械的強度を維持できるのであれば、電子レンズとして磁界型の電子レンズである電磁レンズを利用してもよい。電磁レンズは高倍率化に有利であるという利点が得られる。電磁レンズの概要を、図29に示す。この図に示す電磁レンズも、電子レンズ鏡筒内の各電子レンズを、電磁レンズ制御部40Bで電気的に制御する構造である。電子レンズ鏡筒内には、電子銃47Bと、第一コンデンサレンズ52Bと、第二コンデンサレンズ57Bと、電子線EB2を走査させるための走査コイル58Bと、対物レンズ59Bとが備えられる。電子銃47Bは、電子線源であるフィラメント44Bと、電子線集束用の円筒電極であるウェーネルト45Bと、アノード46Bとで構成される。また電磁レンズ制御部40Bは、フィラメント44B及びウェーネルト45Bを制御して電子銃47Bより電子線EB2を発生させる電子銃高圧電源43Bと、第一コンデンサレンズ52Bを制御する第一レンズ制御部51Bと、第二コンデンサレンズ57Bを制御する第二レンズ制御部54Bと、走査コイル58Bを制御する走査コイル制御部55Bと、対物レンズ59Bを制御する対物レンズ制御部56Bとを備える。このように電磁レンズは、電子線EB2を試料SA2に向けて照射し、試料SA2から放出される二次電子SE2を二次電子検出器61Bで検出している。上述した静電レンズが電場を利用するのに対し、電磁レンズでは電磁石による磁場を利用して電子線EB2を照射している。
また磁界型電子レンズは一般に電磁石を用いた電磁レンズが利用されるが、磁界発生手段として、電磁石でなく永久磁石を用いることで、レンズ構造の簡素化、小型化、軽量化等を図ることもできる。ただし、この場合は電磁石のように磁力の調整ができないため、焦点距離が固定値となる。本明細書では便宜上、このようなレンズも電磁レンズと呼ぶ。
さらに、このような磁界型電子レンズにおいても、静電型電子レンズで説明したのと同様、倍率制御モード切替機能を備えることができることはいうまでもない。例えば図39で示すように、電子線偏向走査手段58を構成する走査コイルを、図28のような1段でなく、2段で構成することで、高倍率制御モードと低倍率制御モードとに切り替え式とした態様において、これらの倍率制御モード間の切り替えをスムーズに行えるよう、倍率制御モード切替手段187を用いて自動切り替えを実現できる。図39に示す磁界型電子レンズは、電子銃を構成するフィラメント44Dと、ウェーネルト45Dと、アノード46Dと、アライナコイル49Dと、第一コンデンサ絞り52dと、第一コンデンサレンズ52Dと、第二コンデンサ絞り57dと、第二コンデンサレンズ57Dと、電子線偏向走査手段58として、第一偏向部58D1である非点コイルと、第二偏向部58D2である偏向コイルと、対物絞り53Dと、対物レンズ59Dとを備えている。この磁界型電子レンズにおいても、倍率制御モード切替機能により、低倍率から高倍率にシームレスな倍率切り替えが実現される。
(検出器)
図3に示す例では、検出器として、二次電子検出器(SED)61を使用している。ただ、これに代えて、あるいはこれに加えて他の検出器を利用することもできるのは上述の通りである。なお二次電子検出器61は、図3の例では固定部分に設けている。好ましくは、背面側に位置する端面板に設ける。これにより、試料台33と二次電子検出器61はいずれも固定部分にあるため、その位置関係が不変で、安定した二次電子の検出が可能となる。特に試料台を傾斜させる傾斜観察においては、二次電子が試料台の影とならずに確実に捕捉できる利点が得られる。すなわち、従来の試料台側を傾斜させて電子銃及び二次電子検出器を固定する構成では、試料表面が二次電子検出器から見たときに試料台の影になってしまうことがあり、この結果二次電子の検出感度が低下するという問題があった。これに対して上述のように試料台側を固定して電子銃側を傾斜させる構成では、傾斜観察においても試料台が傾斜しないため、このような影になる問題が生じず、この結果傾斜観察においても安定した観察結果を得ることができる利点が得られる。ただ、この構成に限らず、検出器を回転部分側に設けてもよい。
(試料台33)
さらに図6〜図8に示すように、試料室21内には、観察対象の試料を載置するための試料台33を配置している。試料台33は、上面を平坦な円形状のテーブルとしている。なお図6〜図8の一部断面斜視図の例では、説明のため試料台33を半円状に切り欠いた状態を示している。試料台33は、円筒状の試料室21の中心軸とほぼ一致させる位置に配置する。厳密には、試料台33は水平姿勢を維持したまま上下に昇降可能であることから、試料台33の試料載置面が2つの観察手段10の光軸の交点に一致させることができるように、移動機構を調整している。
これによって、回転軸のほぼ中心に試料を配置して、各観察手段10が中心軸に向かう姿勢に保持されて試料を観察するため、回転軸に沿って各観察手段10を回動させても、常にその光軸の向かう先を試料として、試料を視野に捉えやすくできる上、その焦点距離(ワーキングディスタンス:WD)も一度調整すれば、観察手段10を回動させても常に一定のワーキングディスタンスにて維持されるため、合焦点状態をほぼ維持しつつ、異なる角度からの観察を可能とすることができる。すなわち、観察手段10を移動させたことによる視野のロストを極減することができるので、特に操作に不慣れな初心者ユーザであっても容易に操作できるという優れた利点が得られる。
(試料台駆動手段34)
観察位置の位置決めは、試料SAを載置した試料台33を物理的に移動させて行う。試料SAの移動は、試料台33を駆動する試料台駆動手段34を構成する水平面移動機構74及び高さ調整機構80で行う。これらの試料台駆動手段34は、試料台制御部34によって制御される。試料台33は試料SAの観察位置を調整可能なように様々な方向への移動、調整が可能である。具体的には、試料台33を水平面内で移動させるための水平面移動機構74を備える。水平面移動機構74は、試料台33の平面方向であるX軸及びY軸方向への移動及び微調整を行うXY移動機構75を備える。また水平面移動機構74に、R軸方向への回転、すなわちXY平面と直交するZ軸の回りに回転可能なR軸回転機構76を付加できる。R軸回転機構76の回転量は、回転調整手段により調整される。なお、R軸方向への回転移動と区別するため、本明細書ではXY方向への移動を線状移動と呼ぶ。この試料台駆動手段34は、試料に対して観察位置の位置決めを行う観察位置決め手段として機能する。
(水平面移動機構74)
また図6〜図7に示すように、水平面移動機構74のXY移動機構75は、試料台33をX軸方向、Y軸方向に移動させる移動量を手動で調整するためのX軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Yを、胴部24の右側で手前側に突出するように設けている。さらにR軸回転機構76は、試料台33をR軸方向に移動させる移動量を手動で調整するための回転調整手段であるR軸操作摘み74Rを、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Yと並べて、胴部24の右側で手前側に突出するように設けている。これらの図に示すように、試料台33のX軸方向、Y軸方向及びR軸方向への移動は、各々操作摘みの後端に張設された無限軌道のベルト駆動及びギヤ駆動により、各操作摘みの回転量に応じて回転力が伝達され、試料台33が所定量移動する。
(操作摘み)
さらに高さ調整機構80は、試料台33をZ軸方向に移動させる移動量を調整するためのZ軸操作摘み80Zを、固定板23の背面から上方に突出するように設けている。このように、各操作摘みを回転式に統一することで、ユーザは試料台33の移動を統一された操作感によって調整できる。なお、図6〜図7等の例では、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Y、R軸操作摘み74Rを、いずれも胴部24の右側で鉛直面から突出する姿勢に設けられている。ただ、このような配置や位置に限られるものでなく、拡大観察装置の任意の位置に、任意の配置で設けることも可能であることはいうまでもない。例えば、図2B、図2Cに示す変形例に係る拡大観察装置では、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Y、R軸操作摘み74Rを水平面に並べて配置している。また各摘みには、回転時に指で摘んで連続回転を容易にする突起を設けてもよい。さらにZ軸操作摘み80Zは、その回転軸が側面から突出する姿勢に、摘み部分が垂直姿勢となるように固定することで、ユーザは感覚的に高さ方向の調整であることを摘みの姿勢から把握でき、他の摘みと区別し易くできる。
(非傾動)
この試料台33は水平面内での移動のみを可能としており、従来の試料台では可能であった傾斜角度(T軸方向)の調整を排除している。いいかえると、試料台駆動手段34は試料台33を傾斜させるための傾動手段を有しない。このように試料台33の傾動動作を禁止した非傾動状態にて、試料台33を水平姿勢に固定することで、試料台33上面に載置した試料が傾斜により移動したり滑り落ちる事態を回避できる。また、従来必要であった、両面テープ等で試料を試料台に固定する作業を無くすと共に、このような粘着材の貼付、剥離によって試料が破損する事態も回避できるという優れた利点が得られる。
また、試料台33の傾動に代えて、観察手段側を傾斜させる、すなわち回動させることにより、傾斜観察における視野の変化をユーザが把握しやすいといった利点も得られる。すなわち、従来は電子銃等の観察手段側を固定し、試料側を傾斜させていたため、視野の変化が観察対象の変化となって現れ、試料がどのような姿勢であり、どの方向から見ているのか、また所望の視野を得るためにはどの軸をどの方向に調整すればいいのか等を把握することが容易でなく、微調整の操作には熟練を要していた。これに対し、試料を固定して観察手段側を移動(回動)させる構成では、ユーザ自身の手で観察手段を物理的に傾斜し、さらに試料の位置が固定されているため、両者の位置関係を容易に把握できるのである。換言すると、一般の観察と同様、固定された試料に対してユーザ自身の視点を移動させるという動作に近い構成のため、ユーザ自身が観察手段を手動で調整することと相俟って、相対的な位置関係が極めて明確となる。また、視野の変更に際しても、試料と観察手段の相対位置が把握できることから、どの軸をどの方向に移動させれば所望の視野に調整できるかの理解も容易となり、操作に熟練していないユーザであっても直感的に把握できるメリットがある。
(高さ調整機構80)
また試料台33は、その水平位置を調整するための高さ調整機構80として、対物レンズ59と試料との距離(ワーキングディスタンス)を調整するために、鉛直方向であるZ軸方向の調整を可能としている。また高さ調整機構80の移動軌跡に、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の焦点可変範囲を含めることで、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12の焦点調整が可能となる。この場合、高さ調整機構80は、電子線撮像手段11の焦点距離を調整するための顕微鏡焦点調整手段37と、光学系撮像手段12の焦点距離を調整するための光学焦点調整手段38に兼用、あるいは各観察手段10が各々焦点調整手段を有している場合は、これらと併用することができる。また、いずれか一方の観察手段10が焦点調整手段を有しない焦点固定式の場合は、その焦点調整手段として機能することは言うまでもない。例えば、電子線撮像手段11が顕微鏡焦点調整手段37を備えており、光学系撮像手段12が焦点固定式の場合に、高さ調整機構80を光学焦点調整手段38として利用できる。
なお観察像の位置決めや観察視野の移動には、試料台を物理的に移動させる方法に限られず、例えば電子銃から照射される電子線の走査位置をシフトさせる方法(イメージシフト)も利用できる。あるいは、このような仮想的な移動を物理的な移動と併用してもよい。あるいはまた、広い範囲で一旦画像データを取り込み、データをソフトウエア的に処理する方法も利用できる。この方法では、一旦データが取り込まれてデータ内で処理されるため、ソフトウエア的に観察位置を移動させることが可能で、試料台の移動や電子線の走査といったハードウエア的な移動を伴わないメリットがある。予め大きな画像データを取り込む方法としては、例えば様々な位置の画像データを複数取得し、これらの画像データをつなぎ合わせることで広い面積の画像データを取得する方法がある。あるいは、低倍率で画像データを取得することによって、取得面積を広く取ることができる。
(光学系撮像手段12)
次に、光学系撮像手段12について説明する。まず、光学系撮像手段12の光学レンズ系の構成例を、図59Aに示す。この光学レンズは、光学レンズ鏡筒内に配置された光学撮像素子92と、光学レンズ群98を構成する光学ズームレンズ93及び対物レンズ94とを備える。各レンズは、複数枚の光学レンズで構成できる。倍率の調整は、光学ズームレンズ93を手動又は電動で駆動してレンズ間の間隔を調整することで行われる。電動駆動の場合は、光学ズームレンズ93の位置を移動させるモータを備えており、モータの回転によって光学ズーム倍率を調整する。このような光学倍率を調整するため、光学系撮像手段12は光学倍率調整手段95を備える。また焦点位置を可変とする場合は、これを調整するための光学焦点調整手段38を備えてもよい。焦点位置を固定式とする場合は、光学焦点調整手段を省略できる。さらに、試料台33に載置された試料SA3を照明するための照明部96を配置している。
光学撮像素子92には、CCDやCMOS等が利用できる。光学撮像素子92は、試料SA3に光学系を介して入射される光の反射光又は透過光を、2次元状に配置された画素毎に撮像信号を電気的に読み取って光学画像を結像する。光学撮像素子92によって電気的に読み取られた画像データは、情報処理手段101に送出されて処理される。
(光学撮像システム)
図1に示す拡大観察システム1000の構成では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を制御するコントローラが、各々別個に設けられている。ここでは、電子顕微鏡画像手段はコントローラ1で制御され、光学系撮像手段12は表示手段2に組み込まれた情報処理手段101で制御される。本実施の形態においては、コントローラ1で画像合成等の画像処理を行うよう構成している。ただ、各観察手段を制御する別個のコントローラを設ける構成の他、一のコントローラで複数の観察手段を制御するよう構成してもよい。共通のコントローラを使用することで、必要な部材を低減できる上、ユーザも一のコントローラのみを操作することで複数の観察手段を制御できる。さらに各観察手段の操作についても、統一された環境やユーザインターフェースを提供することで、より操作性が向上される。
図59Bに、表示手段2の情報処理手段101で光学系撮像手段12を制御する光学撮像システムのブロック図を示す。この図に示す光学系撮像手段12は、試料SA3を撮像する光学撮像素子としてCCD等の受光素子と、CCDを駆動制御するCCD制御回路91と、照明部96から試料台33上に載置された試料SA3に対して照射された光の透過光や反射光をCCD上に結像させる光学レンズ群98とを備える。光学レンズ群98は、図59Aに示す構成が利用できる。また試料SA3を載置する試料台33を駆動する試料台駆動手段34として、水平面移動機構74及び高さ調整機構80を備えることも、図4等で説明した通りである。また光学焦点調整手段として、光学レンズ群98を光軸方向に移動させる機構を設けたり、あるいは高さ調整機構を、光軸方向における相対距離を変化させ焦点を調整する光学焦点調整手段として兼用してもよい。
一方表示手段2は、撮像素子によって電気的に読み取られた画像データを記憶するメモリ等の第二記憶手段103(図133の第二記憶手段132に相当)と、撮像素子によって電気的に読み取られた画像データに基づいて画像を表示するディスプレイ部102と、ディスプレイ部102上に表示される画面に基づいて入力その他の操作を行う操作手段105(図133等の操作手段105cに相当)と、操作手段105によって入力された情報に基づいて画像処理その他各種の処理を行う情報処理手段101と、情報処理手段101が光学系撮像手段12からの情報を授受するためのインターフェイス104とを備える。ディスプレイ部102は、高解像度表示が可能なモニタであり、CRTや液晶パネル等が利用される。
第二記憶手段103は、例えば光学焦点調整手段によって焦点を調整したときの試料台33と光学レンズ群98の光軸方向における相対距離に関する焦点距離情報を、光軸方向とほぼ垂直な面内における試料SA3の2次元位置情報と共に記憶する。またディスプレイ部102によって表示された画像上で任意の点、領域を操作手段105で設定すると、設定された領域に対応する試料SA3の一部又は全部に関する第二記憶手段103に記憶された焦点距離情報に基づいて、該領域に対応する試料SA3の光軸方向における平均高さを情報処理手段101で演算する。このようにして拡大観察装置は、光学レンズ群98を介して入射する試料台33上に載置された試料SA3からの反射光又は透過光を撮像素子で電気的に読み取り、指定された領域に対応する試料SA3の光軸方向における平均高さ又は深さを演算できる。さらに情報処理手段101は、後述する電子顕微鏡画像と光学画像とを合成する画像合成手段116として機能させることもできる。
操作手段105はコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータに固定されている。一般的な操作手段105としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの操作手段105は、拡大観察用プログラムの操作の他、拡大観察装置自体やその周辺機器の操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示するディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。図59Bの例では、操作手段105はマウス等のポインティングデバイスで構成される。
また、表示手段2にはコンピュータ70を接続可能であり、コンピュータ70に別途拡大観察用プログラムをインストールして、コンピュータ70側からも拡大観察装置を操作することもできる。あるいは表示手段そのものをコンピュータで実現することもできる。この場合、コンピュータに接続したモニタが、表示手段のディスプレイ部として機能する。
(画素ずらし手段99)
さらに光学系撮像手段12は、画素ずらしによってCCDの持つ解像度以上の高解像度を得るための画素ずらし手段99を備えることができる。画素ずらしとは、例えば画素ピッチの半分だけ被写体をずらして撮影した画像と、ずらす前の画像とを合成することにより高解像度化を図るものである。代表的な画像ずらしの機構としては、撮像素子を移動させるCCD駆動方式、LPFを傾斜させるLPF傾斜方式、レンズを移動させるレンズ移動方式等がある。図59Bにおいては、試料台33に固定された試料SA3から光学レンズ群98を介してCCDに入射される反射光又は透過光の入射光路を、少なくとも一の方向に、その方向におけるCCDの一画素の間隔よりも小さい距離で光学的にシフトさせる光路シフト部14を備える。画素ずらしを実現するための機構や手法は、上記の構成に限られず、既知の方法や将来開発される方法が適宜利用できる。
CCDは、x方向およびy方向に2次元状に配置された画素毎に受光量を電気的に読み取ることができる。CCD上に結像された試料SA3の像は、CCDの各画素において受光量に応じて電気信号に変換され、CCD制御回路91においてさらにデジタルデータに変換される。情報処理手段101は、CCD制御回路91において変換されたデジタルデータを受光データとして、光軸方向(図59B中のz方向)とほぼ垂直な面内(図59B中のx、y方向)における試料SA3の2次元位置情報としての画素の配置情報(x、y)と共に第二記憶手段103に記憶する。ここで、光軸方向とほぼ垂直な面内とは、厳密に光軸に対して90°をなす面である必要はなく、その光学系および撮像素子における解像度において試料の形状を認識できる程度の傾きの範囲内にある観察面であればよい。
以上のように図1の拡大観察システム1000の構成では、光学系撮像手段12を表示手段2に組み込まれた情報処理手段101で制御する一方、電子線撮像手段11はコントローラで制御する。すなわち観察手段毎に別個にコントローラを設けているが、この構成に限られず、一のコントローラで複数の観察手段を制御する構成とすることもできる。
(照明部96)
図59Bに示す照明部96は、試料SA3に落射光を照射するための落射照明を例示している。特に観察手段10を傾斜させずに正面から観察する際は、視点すなわち観察手段の光軸と照明を略一致させることができ、最も明るい画面とすることができる。ただ、これに限らず、透過光を照射するための透過照明を利用することもできる。照明部96は、光ファイバ106を介して表示手段2と接続される。表示手段2は、光ファイバ106を接続するコネクタを備えると共に、コネクタを介して光ファイバ106に光を送出するための光源107を内蔵する。光源107にはハロゲンランプやキセノンランプ、LED等が用いられる。
照明部96は、図4、図7等に示すように、試料室21内の光源ポート97に設置される。光源ポート97に接続される照明部96は、その照明光が試料台33に向けられるように照明光の光軸が設定される。照明光の光軸は、各観察手段10と同様に回転軸に向かう姿勢に設定する。これにより、傾斜観察に際して試料台33を固定しつつ各観察手段10を傾斜させても、照明光が試料台33の影に隠れてしまう事態を低減できる。より好ましくは、照明部96は図4に示すように、各観察手段10を設けた回転面とは異なる面上に位置させ、かつ光軸が該回転面と交差する角度に設定される。このように照明光を傾斜させることで、照明光により試料に影が生じる方向が回転面と平行とならず、交差するため、傾斜観察において影の暗い部分を少なくできる効果が期待できる。
さらに試料室21の内面は、反射性とすることが好ましい。これにより、照明光を試料室21内部で可能な限り反射させ、乱反射により照明の陰影を少なくできる効果が得られる。例えば試料室21の内面をAgコート等反射率の高い金属で被覆する。
光源ポート97は、回転部分側に設けられる。これにより、胴部24の回動に沿って照明部96も回転するため、光学系撮像手段12と照明部96の位置関係を一定に維持でき、光学系撮像手段12の位置によらず半径方向に同じ角度で照明を照射し続ける結果、光学系撮像手段12の回動によって照明状態が変化しないという利点が得られる。
(試料室内観察手段13)
さらに本実施の形態では、第三の観察手段として、試料室21内の環境を観察するための試料室内観察手段13を設けている。試料室内観察手段13は、追加の光学系撮像手段として、少なくとも試料台33と、試料台33に載置された試料及び電子線撮像手段11の先端部を視野に含む光学画像を試料室内画像として取得可能である。これにより、試料室21内での試料や光学系撮像手段12、電子線撮像手段11の位置関係を容易に把握できる。特に、試料の載置位置の確認に有利となる。例えば試料台33を試料室21から手前に引き出す構成では、載置作業自体は容易であるものの、図22に示すように、載置する位置によって観察手段でどのように見えるかを事前に確認できない。これに対して、試料室内観察手段13を設けることで、図60に示すように、ユーザは試料室内観察手段13の光学画像である試料室内画像をリアルタイムで確認しながら、真空引きの前に試料を試料台33上の所望の位置に置くことができる。すなわち、載置場所を確認しながら試料を載置できるという利点が得られる。このような試料室内観察手段13は、CCDやCMOS等の撮像素子で構成でき、チャンバビューカメラ(CVC)等とも称呼される。
図60は閉塞板28の開放状態で試料の位置決めを行う様子を示す模式断面図であり、この図に示すように、閉塞板28の開閉に伴って試料台33を移動させないことで、すなわち閉塞板28の開閉動作と試料台33の移動とを独立させることで、試料の試料台33への載置位置が閉塞板28の開閉前後で変化しない。このため、試料室21を解放したまま、試料室内観察手段13で試料台33の観察が可能となり、試料の位置や表示状態を示す試料室内画像を表示手段2上で確認したり、最適な載置位置に手動で微調整できるという優れた利点が得られる。このように試料室内観察手段13を用いて、試料室21を閉塞する前に載置状態を予め確認できることは、試料の位置決め作業を飛躍的に省力化できる利点が得られる。すなわち、従来は試料台に試料をセットし、試料室内を真空引きした後でなければ、その観察像を確認できなかった。観察像を表示させた後、さらに位置を調整するには試料室内を一旦大気圧に戻して再度試料室を開き、位置を直した上で再度真空引きを行って観察を行うという、試行錯誤の繰り返しで位置決めを行うこととなり、極めて繁雑な作業であった。これに対して上記構成では、真空引きの前に光学画像を確認しながら試料置きを実行できる。すなわち試料室を開いたままで光学画像を表示できるので、光学画像上の見え方を確認しながら試料の位置の微調整を行えるため、意図通りの位置に容易に試料を位置決めできる。このように試料の位置決め作業を大幅に省力化でき、また真空引き回数を最小限として前処理の時間を短縮化できるという優れた利点が得られる。なお、試料室内の観察は試料室内観察手段に限られず、光学系撮像手段を用いることも可能である。
試料室内観察手段13は、その光軸を好ましくは回転軸と略平行とする。これにより、胴部24の回転移動を上方から把握でき、円弧状の軌跡として回転状態を把握しやすくできる。また光軸を回転軸と平行となるように偏芯させたオフセット配置により、光学画像内に回転軸を含めることができ、回転を一層容易に把握し易くできる。試料室内観察手段13の光軸の偏芯量は、好ましくは胴部24の回転軸を基準として、円筒状半径の±10%程度とする。なお本明細書において、試料台33が回転軸と略一致するとは、このようなオフセット位置を包含する意味で使用する。またここでの平行とは、回転軸に対して約20°までの角度差を有するものを含む意味で使用する。また試料室内観察手段13を偏芯配置する場合、より好ましくはその光軸を、回転軸よりも上方に位置させる。これにより、回転軸と一致させた試料の観察面も試料室内画像の下方に含めることができ、試料と電子銃との位置関係を確実に把握できる。
試料室内観察手段13の固定位置は、電子線撮像手段11を胴部24と共に回動させる場合、試料台33や試料台33上の試料との干渉の有無や干渉のおそれを確認しながら回動させるために、回動しない固定部分側とすることが望ましい。
(反転表示機能)
さらに試料室内観察手段13を固定部分側の内、固定板23に固定する場合は、反転表示機能を備えることもできる。以下、この様子を図61〜図66に基づいて説明する。これらの図において、図61は試料室内観察手段を試料SA6の背面に位置させた場合の試料SA6の見え方を示す模式図、図62は図61において、ユーザから見た試料SA6の移動方向を示す模式図、図63は図61において、試料室内観察手段から見た試料SA6の移動方向を示す模式図、図64は図61において、反転表示機能で試料室内画像を表示させる様子を示す模式図、図65は変形例に係る試料室内観察手段の一例を示す模式側面断面図、図66は他の変形例に係る試料室内観察手段の一例を示す模式側面断面図を、それぞれ示している。
試料室内観察手段13を固定板23に固定する場合は、図61に示すように、試料SA6の背面側に試料室内観察手段13が位置するため、試料SA6の正面側から見た場合と比較すると、試料SA6や観察手段10の移動方向が左右で逆になるため、見え方が異なることになる。すなわち、ユーザは拡大観察装置を、通常はその正面から観察する状態にて使用するため、例えば図62に示すように、試料SA6を右方向に移動させる場合、試料室内観察手段13から見た試料室内画像は、図63に示すように左側に移動するように見える。これでは、表示手段2上から試料室内の様子を試料室内観察手段13で観察していても、ユーザの意図した方向とは逆向きに移動するよう表示されるため、位置関係や修正方向の把握が判り難くなり、ユーザに混乱を与えるおそれがあった。特に電子線撮像手段での観察を前提とした試料室内は暗室状態に維持する必要があるため、採光窓等を設けることができない。一方で、試料SA6と観察手段10の相対位置を移動、変化させることで種々の角度からの観察可能とした拡大観察装置においては、試料SA6と観察手段10とが接触するおそれがあるため、これらを移動させる際には、両者の接触を避けるよう、位置関係を正確に把握することが重要となる。この結果、ユーザは試料室内観察手段で撮像された試料室内画像のみを頼りに、試料台33や観察手段10の位置を調整しなければならず、試料室内画像の表示内容は重要となる。
そこで本実施の形態では、試料室内画像を図64に示すように反転して表示させる反転表示機能を備えており、これにより試料SA6や観察手段10の左右の移動方向と、試料室内画像の表示を合致させ、ユーザは移動方向をより感覚的に理解し易くなる。この結果、試料室内画像を直感的で判り易い表示とするができ、観察環境を大きく改善できる。このような反転表示機能は、図61のブロック図に示す反転表示制御手段228により実現できる。反転表示制御手段228は、試料室内観察手段13で撮像した試料室内画像を左右反転させて、表示手段2上に表示させる。
また試料室内観察手段13は、他の固定部分に設けることもできる。例えば、上述した例では、胴部24を閉塞する蓋部27を、胴部24と一体的に回転する回転部分としているが、蓋部を固定板と同様、固定部分とすることもできる。すなわち、図65に示すように、中空円筒状の胴部24Gの、両側端面を閉塞する端面板である蓋部27Gと固定板23Gをいずれも固定部分とすることもできる。この例では、蓋部27Gと胴部24Gとの接合部分を気密にシールしつつ回転自在とすることで、背面側のみならず正面側の端面板も固定部分としている。この構成であれば、正面側の蓋部27Gに試料室内観察手段13を設けることで、試料室内画像をそのまま表示させても、試料や観察手段の左右の移動方向を、試料室内画像中の表示と一致させることができ、反転表示を不要とできる。
あるいは、固定部分として、蓋部27や固定板23と異なる固定部分を設けてもよい。例えば、図66に示すように、蓋部27と離間させて試料室内観察手段13を固定するための試料室内観察部固定手段229を設けることで、蓋部27の回転に依らず、試料室内観察手段を固定でき、試料室内画像を回転させることなく安定的に、しかも試料や観察手段の左右への移動方向を一致させて表示させることができる。この例では、試料室内観察部固定手段229を、試料台33を支持する構造体に固定しているが、背面の固定板23等、他の固定部分に固定することもできる。
ただ、回転部分側に試料室内観察手段13を設けることも可能である。この場合は、胴部24の回転角度情報を角度センサ等で取得し、画像の回転を補正する制御を行うことで、回転運動を相殺した静止画を得ることができる。例えばコントローラ1によって回動部の回転量と視野の移動量を計算し、視野の移動分だけ観察視野の表示部分を逆方向に移動させるよう、画像処理する。これにより、試料室内画像を、胴部の回転による傾きを相殺するように補正した回転補正画像として表示できるので、回転位置によらず表示手段2に表示される画像の視野を一定に保持できる。
(仮想イメージ表示機能)
さらに拡大観察装置は、電子線撮像手段での撮像時に、電子線撮像手段の先端部が試料と接触、干渉しないようにモニタするための仮想イメージ表示機能を備えている。すなわち、従来であれば、電子線撮像手段で電子顕微鏡画像を撮像する際には、光学画像撮像用の照明部96を消灯しなければならず、このため電子顕微鏡画像の撮像と同時に光学画像をリアルタイムで確認することが不可能であった。このことは、電子顕微鏡画像の撮像時には、観察手段と試料との位置関係をリアルタイムで把握することが困難であることを意味する。このため、観察手段が試料に接触することを避けるための確認手段が無いという問題があった。特に試料の大きさや形状は試料毎に変化するため、その把握が問題となる。
そこで本実施の形態では、試料の大きさや形状等、観察する試料毎に異なる構成部分は、予め試料室内観察手段で試料室内基準画像KGとして撮影しておく。その一方、電子線撮像手段11の先端部や試料台等、大きさや形状が予め決まっている部分は、仮想イメージKIで表現し、各構成部の位置情報を基に、現時点での位置を予想して、試料室内基準画像KG上の対応する位置に重ねて表示する。そして、回動手段30による回転に従い、仮想イメージKIの位置も逐次更新して表示手段2上に再描画することで、試料自身の大きさや形状を加味した状態で、真空チャンバ内部での接触の可否を判断できるので、安全に電子顕微鏡画像を観察できる利点が得られる。
以下、この機能を、図40〜図58に基づいて説明する。これらの図において、図40は、仮想イメージ表示機能を実現する拡大観察装置のブロック図、図41は、電子線撮像手段11の傾斜角度0°における真空チャンバ24x内の試料室内基準画像KGを示すイメージ図、図42は、図41の電子線撮像手段11を傾斜角度60°とした真空チャンバ24x内の試料室内基準画像KGを示すイメージ図、図43は、図41の試料室内基準画像KGに、電子線撮像手段11の先端部の仮想イメージKIを重ねた仮想リアルタイム画像KRを示すイメージ図、図44は回動ロック手段210の回動ロック状態を示す模式図、図45は図44の回動ロック状態を解除した解除状態を示す模式図、図46は、回動ロック手段210を備える拡大観察装置を示すブロック図、図47は電子顕微鏡画像を観察中の表示例を示すイメージ図、図48は図47の状態から、電子線撮像手段11を傾斜角度45°に傾斜させた状態の表示例を示すイメージ図、図49は同じく図47の状態から、電子線撮像手段11を傾斜角度60°に傾斜させた状態の表示例を示すイメージ図、図50は回動ロック手段210の中途半端な状態での警告例を示すイメージ図、図51は回動ロック状態で傾斜させた状態の警告例を示すイメージ図、図52は回動規制手段214の一例を示す模式図、図53は他の回動規制手段214を備える胴部24の断面図、図54は図53に示す胴部24の側面図、図55は図53に示す胴部24を左に60°傾斜させた状態を示す拡大図、図56は図55に示す胴部24を左に90°傾斜させた状態を示す拡大図、図57は、傾斜ストッパの他の例を示す模式図、図58は、電子線撮像手段11の傾斜範囲を示す模式図を、それぞれ示している。この拡大観察装置は、図40に示すように、試料室を構成する胴部24と、試料室に照明光を照射するための照明部96と、試料室内観察手段と、電子線撮像手段11と、胴部24又は試料台33を回転させる回動手段30と、回動手段30による回転位置の情報を取得するための位置情報取得手段204と、試料室内基準画像KGを取得するための試料室内基準画像取得手段202と、逐次仮想イメージKIを生成し、試料室内基準画像KGに重ねて仮想リアルタイム画像KRとして表示するための仮想イメージ生成手段206とを備えている。
上述の通り、胴部24の内部には、真空チャンバ内部を観察する試料室内観察手段と照明部が備えられている。この試料室内観察手段は光学系の撮像手段であり、照明部を点灯した状態で、図41、図42に示すように、真空チャンバ内の光学画像を試料室内画像として撮像できる。なおこれらの図においては、試料台33上に、ワーキングディスタンス調整用ブロックを試料に代えて載置している。特に、試料室内観察手段の光軸は、回動手段30で回転される電子線撮像手段11の回転軸方向にほぼ一致されているため、回転する構成物、ここでは電子線撮像手段11の先端部の回転の様子が、試料室内画像から明瞭に把握できる。さらに、試料台33に載置された試料も、試料室内画像中に含まれる。このため、試料と先端部との位置関係が試料室内画像から明確に把握でき、ユーザはこれらが接触しないように留意しながら、回動手段30の回転量すなわち電子線撮像手段11の傾斜角度や、試料台33のXYZ位置等を調整できる。例えば図41に示すように電子線撮像手段11を傾斜角度0°から、図42に示すように傾斜角度60°に傾斜させた際の、先端部と試料との位置関係の変化を、リアルタイムに捉えることができる。このように試料室内観察手段を用いて試料室内のライブ画像を確認できるので、例えば光学系撮像手段12での観察時は、試料室内画像のライブ画像を表示手段2上に同時に(例えば画面の左上に表示させた状態で)、傾斜角度を調整しながら光学観察を行うことができる。一方で、図47に示すように電子線撮像手段を用いた撮像を行う際には、照明部を消灯する必要があるため、リアルタイムで試料室内画像を観察することができなくなる。このため、試料室内基準画像取得手段202を用いて、予め試料室内基準画像KGを取得しておき、さらに回動手段等の位置に応じて先端部の位置を仮想的に再現することで、これらの位置関係を把握できるようにしている。
(試料室内基準画像取得手段202)
試料室内基準画像取得手段202は、試料室内基準画像KGを取得するタイミングを決定する。この試料室内基準画像取得手段202は、電子線撮像手段を用いて試料を観察する前に、電子線撮像手段を用いて試料の観察を開始するための所定操作が行われたことを契機として、試料室内観察手段を用いてこの時点における試料を含んだ試料室内画像を試料室内基準画像KGとして取得する。ここでは、試料室内基準画像取得手段202は、電子顕微鏡での観察を開始する直前、つまり照明部96の照明光を切る直前での真空チャンバ内部の状態を、試料室内観察手段で撮影し、試料室内基準画像KGとして保持する。
(位置情報取得手段204)
位置情報取得手段204は、少なくとも電子線撮像手段11で試料を観察する間の、電子線撮像手段11の先端部又は試料台33の回動位置に関する位置情報を逐次取得する。例えば、真空チャンバ内部の構成物の内、回転部分であるXYステージ、Zステージ、試料台33又は電子線撮像手段11の鏡筒の傾斜、各種検出器の真空チャンバ内への突き出し等の内、全部又は一部に、それらの位置情報を得るための位置情報取得手段204を設けることができる。この例では、位置情報取得手段204として、電子線撮像手段11を傾斜させる胴部24の回転軸に、傾斜角度を検知する角度センサで構成された回動位置検出手段264が搭載されている。この場合に回動位置検出手段264で検出される回動位置は、電子線撮像手段11の傾斜角度である。この位置情報取得手段204は、電子線撮像手段11を用いて試料を観察する際、先端部の現在の位置情報、すなわち傾斜角度を取得する。そして電子線撮像手段11を用いて試料を観察する際に、表示手段2に表示された試料室内基準画像KG上に、この位置情報に基づいて、先端部の現在の回動位置を、仮想イメージ生成手段206で重ねて表示させる。なお、回動位置として、光学系撮像手段の傾斜角度を用いてもよいことはいうまでもない。
なお、二つの観察手段は、いずれも回動手段30によって提供可能ないかなる回動位置においても、回動手段30の回動中心を通る光軸を持つように、胴部24に固定されている。そして、回動手段30を用いて、一方の観察手段(例えば電子線撮像手段11)の位置を、観察者の望む位置に回動させて固定することにより、特定の視野方向から、試料台33に載置された試料の特定の箇所の拡大観察が可能となる。
ここで、本実施例でいう「略同一の観察位置」とは、上述したような手法にて位置決めされた一方の観察手段にて、試料台33に載置された試料の特定の箇所の画像を取得した後、他方の観察手段(例えば光学系撮像手段12)を一方の観察手段が位置していた回動位置に回動させて固定することにより、略同一の特定の視野方向から、試料台33に載置された試料の特定の箇所の拡大観察を行う場合における、一方と他方の観察手段が位置決めされた位置のことを意味する。
また、このように二つの観察手段に対して略同一の観察位置を提供し、且つ二つの観察手段が略同一の倍率にて画像を取得する場合、その前提として、試料台33の位置ならびに試料台33上に載置された、試料台33に対する試料の位置が略同一であることにより、各々の観察手段にて取得する画像の倍率ならびに試料の特定の箇所の画像が可能となり、その後の二つの画像の比較観察がより良いものとなることはいうまでもない。
言い換えれば、一方の観察手段によって試料を特定の視野方向から特定の倍率で観察したときの試料の観察視野範囲と、他方の観察手段によって試料を特定の視野方向と同一方向から観察可能となるように、回動手段30によって胴部24を回転させた後、他方の観察手段によって試料を特定の視野方向と同一方向から特定倍率と同倍率で観察したときの試料の観察視野範囲とが、ほぼ同一であることを意味する。なお、回動手段30の機械誤差により、ここでいう略同一の観察位置が、完全に同一の観察位置にならない場合があることは言うまでもない。
(仮想イメージ生成手段206)
仮想イメージ生成手段206は、位置情報取得手段204から取得した位置情報に基づいて、先端部の回動位置における姿勢を逐次仮想イメージKIとして生成し、電子線撮像手段11で試料を観察する間に、試料室内基準画像取得手段202で取得された試料室内基準画像KG上に重ねて表示させる。具体的には、電子線撮像手段11での観察中に、この電子線撮像手段11が回動されたことを位置情報取得手段204が検知すると、その位置情報を基に、回転部分である現在の電子線撮像手段11の位置を計算する。そして、図43に示すように、事前に撮影した試料室内観察手段の試料室内基準画像KGに、先端部の現在の位置に仮想イメージKIを重ねて、仮想リアルタイム画像KRとして表示手段2上に表示させる。ここでは、仮想イメージKIは線図で構成された先端部のグラフィック画像である。この状態でユーザは、電子顕微鏡観察をしながら、真空チャンバ内部の構成物が衝突しないかどうかを仮想リアルタイム画像KRから確認することができる。すなわち、可動する構成物の位置が、試料室内基準画像KG上で相対的に再現されているため、試料と先端部の位置関係を把握できるからである。このとき、ユーザは仮想リアルタイム画像KRに含まれる試料室内基準画像KGの回転部分、図43の例では光学画像で表示された電子線撮像手段先端部の位置を無視し、代わりに仮想イメージKIとして再現された先端部の線図でもって、現在の先端部の位置を把握できる。この結果、本来であれば電子線撮像手段の稼働中には確認できない光学画像(試料室内画像)を、試料室内基準画像KGに仮想イメージKIを重ねることで、擬似的に試料室内のリアルタイム画像として構築でき、ユーザは衝突を避けつつ安全に傾斜観察等を行うことができる。例えば電子線撮像手段を傾斜角度0°から60°に傾斜させた場合、図43のように表示されるので、試料室内観察手段でリアルタイムに観察した図42の例と同様に、先端部と試料との位置関係の把握が可能となる。
(試料室内基準画像KG)
試料室内基準画像KGの取得は、試料室内基準画像取得手段202により、自動的に行われる。試料室内基準画像KGは、電子線撮像手段での観察が行われるまでに取得すれば足りるので、試料室内基準画像取得手段202が試料室内基準画像KGを取得するタイミングは、電子線撮像手段の観察を開始するための何らかの操作に関連付けて行わせることが好ましい。例えば、表示手段2における表示を、試料室内観察手段から電子線撮像手段に切り替える操作、照明部を消灯する操作、試料室内の減圧を開始する操作、電子線撮像手段から電子線を放出するための操作、回動手段30を回動させる操作、具体的には試料台33を回動させる操作、試料台33を上下動させる操作、あるいは光学系撮像手段12による観察をOFFさせる操作等とすることができる。このように電子線撮像手段での観察に拘わる動作を適宜選択して、このような所定操作を契機として試料室内観察手段で試料室内基準画像を取得するように設定することもできる。また自動的に試料室内基準画像KGを取得することで、ユーザは余計な操作や手間を要することなく、電子顕微鏡観察の前の試料室内画像を用いた位置関係の把握が可能となる。なお、上記に加えユーザが任意のタイミングで試料室内基準画像を撮像するよう構成してもよい。
(仮想イメージKI)
なお、図43、図48、図49等の例では、先端部の仮想イメージKIを線画で表示しているが、この例に限られず、先端部の位置を特定できる態様が種々利用できる。例えば輪郭線のみ、あるいは輪郭線の内部を塗り潰した状態で仮想イメージKIを表示したり、先端部の写真を色を変えたりアイコン状としたり半透明で表示する等、元の試料室内基準画像KGに写り込んでいる先端部と異なる態様で表示させたり、あるいはコンピュータグラフィックス画像で先端部を再現する等、先端部の、試料と接触する可能性のある部位の位置が判別できる態様であれば足りる。
また、仮想イメージ生成手段206でグラフィックス化する構成物は、全ての回転部分とする必要はなく、移動量の大きい構成物のみを仮想イメージKIとして表示するだけでも、衝突の有無を十分に確認できる効果が得られる。図43の例では、大きく動く電子線撮像手段11の先端部である電子顕微鏡レンズのみをグラフィックス化している。換言すると、XYZθ方向に移動する試料台33については、グラフィックス化していない。ただ、これらをグラフィックス化することも可能であることはいうまでもない。例えば、Zステージの上下の位置も位置センサで検知して、グラフィックス化する。またXYステージやRステージのグラフィックス化も可能である。ただし、試料室内観察手段で観察する試料室内画像の奥行き方向における移動物の変化は、実際の光学画像を見ていても変化が判別し難く、グラフィックスで表現してもユーザが変化を確認し難いので、好ましくは移動による変化量が顕著で確認の容易な構成物、具体的には電子線撮像手段11の先端部をグラフィックス化する。
さらに、仮想リアルタイム画像KRは、仮想イメージKIを移動させる例に限られず、例えば仮想イメージ側を固定し、試料室内基準画像側を回転させることでも、相対的な位置関係を表現できるので、同様に衝突防止の効果が得られる。
(変形例)
上記の例では、試料台33側を固定し、電子線撮像手段11側を傾斜させる例について説明したが、仮想イメージ表示機能はこの例に限られず、電子線撮像手段側でなく、試料台側を傾斜させる構成においても利用できる。すなわち、図68A、図68B等に示すように、電子線撮像手段11側を固定し、試料台33を揺動させることで、相対的な傾斜観察を実現する拡大観察装置においても、試料台33上に載置された試料と、観察手段の先端部との接触の可能性があるため、これを回避するために、仮想的に再現した先端部の仮想イメージKIと、試料室内基準画像KGとを重ねて仮想リアルタイム画像KRとして表示させることで、相対的な位置関係の把握をリアルタイムに行うことが可能となる。この場合、試料台側をグラフィックス化すると、試料台上に載置された試料のグラフィックス化が必要となり、その処理が面倒となるため、好ましくは上記例と同様、先端部をグラフィックス化する。そして、図40に従い、回動手段等の位置を位置情報取得手段204で検出して、その移動量に応じて、試料室内基準画像取得手段で取得した試料室内基準画像を回転させるよう、仮想イメージ生成手段で処理して、仮想リアルタイム画像KRとして表示手段2上に表示させる。以上のように、電子線撮像手段側が傾斜する構成では、その先端部の仮想イメージを移動させて試料室内基準画像を固定し、逆に試料台側が傾斜する構成では、先端部の仮想イメージを固定させて試料室内基準画像を移動させることで、実際の移動状態を再現でき、ユーザは位置関係の把握を容易に行える。ただ、相対的な位置関係が把握できれば、接触の有無自体の確認は可能であることから、例えば、試料台を傾斜させる構成においても、本来であれば傾斜しているはずの試料室内基準画像を固定しつつ、本来固定されている先端部の仮想イメージ側を相対的に傾斜させることでも、衝突防止を図ることができる。
(仮想リアルタイム画像KRの表示切替)
またこのような試料室内観察手段像にグラフィックスを重ねた仮想リアルタイム画像KRは、常時表示させる他、試料台や胴部等を動かせる際のみ表示させてもよい。さらに停止状態が継続すると、自動的に仮想イメージ表示をOFFに切り替えてもよいし、あるいは仮想リアルタイム画像KRそのものを表示手段上で非表示に切り替えてもよい(図47)。あるいはまた、回動部を回動させるための回動ロック手段210(詳細は後述)を解除したことを契機として、仮想リアルタイム画像KRを表示させてもよい。この例では、電子顕微鏡レンズを傾斜させるために回転軸の回動ロック手段210を解除したときに、試料室内基準画像KGに仮想イメージKIを重ねた仮想リアルタイム画像KRを表示させている。表示手段上の表示領域が限られているため、仮想リアルタイム画像KRを常時表示させていると、電子顕微鏡画像の表示が部分的に遮られるので、必要時にのみこれを表示させることで、効率的な表示の切り替えが可能となる。
(仮想リアルタイム画像表示領域218)
以上のようにして、電子線撮像手段11を用いた電子顕微鏡観察に際して、図48に示すように同一画面上で試料室内基準画像KGに仮想イメージKIを重ねた仮想リアルタイム画像KRを表示させることができ、従来確認が困難であった電子線撮像手段11の先端部と試料との位置関係の把握がリアルタイムで可能となり、安全な傾斜観察が実現できる。なお図48の例では、仮想リアルタイム画像KRを表示させる仮想リアルタイム画像表示領域218を別ウィンドウで構成し、表示手段2の左上に重ねて表示させている。ただ、このような表示例に限られず、例えば同一ウィンドウを分割して、電子顕微鏡画像と仮想リアルタイム画像KRとを同一画面で表示させることも可能であることはいうまでもない。また仮想リアルタイム画像表示領域218の、表示領域の大きさを変更することもできる。図41、図42、図43、図48、図49に示す例では、ラジオボタンで仮想リアルタイム画像KRの表示サイズを640×480ドット、又は320×240ドットに変更可能としている。
(回動ロック手段210)
さらに拡大観察装置は、胴部24の回転を停止状態に保持する回動ロック状態と、該回動ロック状態の解除状態とを切り替え可能な回動ロック手段210を備えている。この回動ロック手段210は、通常の状態で胴部24が自重等で回転しないよう回動ロック状態となるように付勢している。このような回動ロック手段210の一例を、図44、図45に示す。この回動ロック手段210はチルトロックであり、図2Bの外観図に示すように、拡大観察装置の側面下方に突出させたチルトレバー220を備えている。ユーザはこのチルトレバー220を操作して、回動ロック状態と解除状態とを切り替えることができる。具体的には、図44はチルトロックの回動ロック状態、図45はロック解除状態を示しており、各々チルトレバー220をロック位置、ロック解除位置としている。このチルトロックは、胴部24の背面側の端縁に備えられた環状の回転リング221に対して、その表面を押圧する弾性体状のブレーキパッド222を備える。このブレーキパッド222は、板状のパッドプレート223に固定されており、パッドプレート223は長穴及び支点224を介して水平面内に移動できる。パッドプレート223の移動により、ブレーキパッド222が回転リング221に対して押圧位置、解除位置に切り替えられ、これによってブレーキパッド222は回転リング221に対してディスクブレーキ状に作用する。すなわち、ブレーキパッド222を回転リング221に押圧することで、回転リング221と固定された胴部24の回転をロックし、また回転リング221からブレーキパッド222を離すことで回動ロックを解除する。具体的には、図44に示すようにチルトロックをロック位置に切り替える際には、チルトレバー220を矢印で示すように左側に倒す。これによってチルトレバー220に連結されたレバーギヤ225が逆回転され、さらにこのレバーギヤ225と歯合する伝達ギヤ226が順回転され、伝達ギヤ226のギヤ軸227が奥側に移動する。そしてブレーキパッド222を固定したパッドプレート223がギヤ軸227で押し込まれる結果、パッドプレート223が回転し、パッドプレート223に固定されたブレーキパッド222が回転リング221に押圧され、その摩擦力によって胴部24が回動ロック状態となる。
逆に回動ロック状態を解除するには、図45に示すようにチルトレバー220を右側に倒し、レバーギヤ225を順回転させることで、伝達ギヤ226を逆回転させる。この結果ギヤ軸227が手前側に移動し、パッドプレート223がギヤ軸227に引っ張られて、支点224を中心に回転するので、回転リング221からブレーキパッド222が離れて、ロック状態が解除される。
このようにチルトロックは、胴部24を回転させる際にはユーザが手動でチルトレバー220を、図45に示すようにロック解除位置まで移動させ、回動ロック状態を解除する。そして傾斜角度が決まった状態で、図44に示すようにチルトレバー220をロック位置まで移動させ、再び回動ロック状態に戻す。このようにして、胴部24を回動させる度毎に手動で回動ロック手段210を操作して、回動ロック状態と解除状態とを切り替えるようにする。
(ロック解除表示手段212)
さらに、このような回動ロック手段210による操作、特に胴部24を回転させた後に回動ロック状態に戻す操作を、ユーザに促すように、ロック解除表示手段212を設けてもよい。一般に、回動ロック状態を解除する操作は、回動ロック手段210を操作しないと胴部24が回転しないため、ユーザが操作を忘れることは考え難く、仮に回動ロック手段210を操作しないと、胴部24を回転させるには相当の力が必要となり、この時点でユーザが操作を忘れたことに気付く。一方、一旦胴部24を回転させた後、再度回動ロック状態に戻すために回動ロック手段210を操作する作業は、これを行わずとも観察が可能であるため、ユーザが忘れやすいといえる。このような解除状態が継続されると、例えば胴部24や観察手段の自重によって胴部24が徐々に回転して、観察手段の先端部が試料に接触することも考えられる。そこで、回動ロック状態が解除されている間は、ロック解除表示手段212が表示手段2上にその旨のメッセージを表示する。このためロック解除表示手段212は、図46のブロック図に示すように、回動ロック手段210の解除状態を検出して、表示手段2上にロック解除表示を行う。例えば図48に示すように、画面の左下に「チルトロック解除中」等と赤文字で表示させる。これにより、ユーザは回動ロック手段210が解除状態であることが告知されるので、傾斜角度を決定した後は速やかに回動ロック手段210を回動ロック状態に戻すよう促され、ロックし忘れを防止できる。
上記の例では、回転軸の回動ロック手段210を解除した際、すなわちこれから電子線撮像手段11を傾斜させようとしたタイミングで、図48に示すように表示手段2上の左上に、電子顕微鏡画像表示領域117に重ねて、試料室内基準画像KGの画像を表示させている。さらに同時に、回転軸の回動ロック手段210を解除している間だけ、画面の左下にロック解除表示メッセージ230を表示させることで、ロックし忘れを回避できる。
また他の利点として、傾斜する際に、試料室内画像に注目させることも期待できる。すなわち、試料室内画像が表示されていても、何の目的で表示されているのか、どこに着目して試料室内画像をチェックすれば良いのかをユーザに理解させる必要がある。このため回転移動の際には、真空チャンバ内部の構造物が衝突しないことの確認を促すようにメッセージを表示させる。この例では、衝突の可能性が比較的少ないとき、例えば、傾斜角度が鉛直姿勢から±60°未満では、図48に示すように、単に「チルトロック解除中」とロック解除表示メッセージ230を表示させている。
一方で、傾斜角度が大きくなり、衝突の可能性が大きくなったときに、メッセージを変更して、一層の注意をユーザに促すこともできる。例えば図49の例では、±60°以上の高傾斜観察では、「チルトロック解除中です。レンズが大きく傾斜しています。試料とレンズが衝突する危険性がありますので、チャンバビューの映像を確認し注意してください。」等と警告メッセージ231を表示させることができる。
(ロック確認メッセージ232)
また、これに加えて回動ロック手段210の回動ロック状態が不完全あるいは不十分であることをロック解除表示手段212で検出して、その旨を告知するロック確認メッセージ232を表示させることもできる。例えば回動ロック手段210のレバーがロック位置まで完全に戻されていない場合は、胴部24の円筒状側面に対して押圧すべき弾性体が十分な押圧力を発揮できず、摩耗したり破損するおそれがある。このため、例えば図50に示すように、「チルトロックの状態が不定です。しっかりと固定、又は解除の方向に回してください。」等のロック確認メッセージ232を表示手段2上の画面中央に表示させて、ユーザに警告することができる。ユーザは該ロック確認メッセージ232を受けて、回動ロック手段210を完全にロック位置にセットするよう促されるので、このような破損を回避できる利点が得られる。このようなロック解除メッセージの表示は、例えば上述した図46に示したロック解除表示手段212等で行わせることができる。
(ロック解除メッセージ233)
あるいは、ユーザが回動ロック状態の解除を忘れて、強引に胴部24等を回転させようとすることも考えられる。このような場合に、回動ロック手段210が回動ロック状態であるにもかかわらず、傾斜角度が変化したことをロック解除表示手段212等で検出して、ロック解除メッセージ233を表示させることもできる。例えば図51に示すように、「傾斜する場合は必ずチルトロックを解除してください。」とロック解除メッセージ233を画面中央に表示させて、ユーザに対して回動ロック状態の解除を促す。
なお、以上の例では回動ロック手段210を手動でロック位置と解除位置に切り替える方式としているが、自動あるいは半自動で切り替え可能としてもよい。例えば、胴部を回転させるための取っ手のハンドル部分に設けたスイッチを押下している間だけ回動手段を回転可能とすれば、スイッチを押下することでロック位置、スイッチから指を離すことで解除位置に、回動ロック手段が各々に切り替わるように構成できる。また、胴部を回転させると自動的に回動ロック手段が解除状態となり、また回転を停止させると自動的に回動ロック手段が回動ロック状態に切り替わる構成してもよい。
(回動規制手段214)
さらに拡大観察装置は、傾斜角度が高くなった際のハードウエア的な衝突防止策として、所定の回動範囲規制値を超える回動手段30の回転を阻止する回動規制手段214を備えることもできる。このような拡大観察装置のブロック図を図46に示す。回動規制手段214の一例としては、回動手段30の回動範囲を一定範囲内に抑え、回動範囲規制値以上に回転しないように阻止する傾斜ストッパが利用できる。また回動範囲規制値は、観察手段の傾斜角度が大きくなることによって試料と接触する可能性が高くなる範囲、例えば±60°に設定される。例えば試料の側面を観察したい場合は、傾斜角度を大きくする必要があるところ、傾斜角度を高くする際には、試料台を一旦降下させる等して、試料と観察手段の特に先端部とが接触しないように注意する必要がある。そこで、このような回動規制手段214を用いて、胴部24の回転を一旦止めることによって、ユーザに対して注意や準備を促す効果が期待できる。
回動規制手段214の一例として、傾斜ストッパは、胴部24の外周面から突出させた突起や、外周面に形成した切り欠きに、胴部24の周囲に固定配置した傾斜ストッパを当接あるいは係合させて、胴部24の一定以上の回転を阻止する。例えば図52に示すように、胴部24の外周から突出させた突起234に、胴部24の周囲に固定された傾斜ストッパ235を当接させて、胴部24の一定以上の回転を阻止する。この切り欠きや突起及び傾斜ストッパを設ける位置を調整することで、胴部24が回動範囲規制値を超えて回転しないように規制できる。また、傾斜ストッパを可動式とし、当接位置から後退させることで、突起との当接状態を解除し、胴部24の更なる回転を許容するように構成することもできる。例えば図2B及び図2Cに示す傾斜ストッパ238では、拡大観察装置から突出させたストッパハンドル239の先端部分を円盤状に形成することで、ユーザがこの部分を把持して引っ張り易くしている。ストッパハンドル239の円盤状先端を引き出すことで、傾斜ストッパ238が後退されて当接状態が解除され、胴部24の回転が許容されるようになる。
あるいは傾斜ストッパを、所定の回動範囲規制値に達したときに胴部の回転を一旦停止させるよう構成してもよい。この傾斜ストッパは、傾斜観察時に傾斜角度を徐々に大きくしていく際、衝突の危険性が高くなる角度、すなわち回動範囲規制値に達したときに、一旦回動手段を停止させる。そして、この傾斜角度以上に傾斜させたい場合は、傾斜ストッパの回転ロック状態を解除することで、胴部の更なる回転を許容する。例えば図57に示すように、胴部24の回転面に対してカギ状に突出するカギ状突起236を設け、一方胴部24の側面には、このカギ状突起236が係止される切り欠き237を形成する。そしてこれらカギ状突起236と切り欠き237とを、予め回動範囲規制値に対応する位置に形成することで、胴部24が回動範囲規制値に達すると、カギ状突起236が切り欠き237に案内されて、胴部24の回転が阻止された回転ロック状態となる。そしてこの状態から、カギ状突起236を後退させて、切り欠き237との係合状態を解除することで、胴部24の回転が再び許容される状態となって、胴部24は更に、物理的に取り得る最大の回動角度まで回転させることができる。
傾斜ストッパ238を備える拡大観察装置の外観を、図2Bに示す。この図に示すように、傾斜ストッパ238は拡大観察装置の側面に設けられている。この例では、共通の傾斜ストッパ238でもって、回動手段30の左方向(反時計回り)への回転と、右方向(時計回り)への回転を共に規制している。ただ、回動手段の左方向への回転と、右方向への回転とを個別に規制するよう、左回転を規制する左回動規制手段と、右回転を規制する右回動規制手段とを、それぞれ設けることもできる。
また、回動範囲規制値は左方向への回転と右方向への回転とで、角度を等しくする他、左右で異ならせることもできる。特に、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを一定のオフセット角度でもって傾斜姿勢に固定した胴部24においては、いずれか一方の観察手段を基準に考えると、左右に回転可能な範囲は、他方の観察手段の有無によって異なる。そこで、このようなオフセット角度を考慮して、適切な回動範囲規制値を、左右で個別に規定することが好ましい。本実施の形態では、図58に示すように、電子線撮像手段11を基準とし、これが垂直姿勢にある状態を0°とする胴部24の回転は、光学系撮像手段12のオフセット角度(この例では40°)を考慮し、左回動規制値を60°、右回動規制値を45°に、それぞれ規定している。そしてこれらの回動規制値に達すると、傾斜ストッパ238によって回転が停止される。また傾斜ストッパ238を解除することで、さらに胴部24の回転が可能となり、ハードウエア的な回転の限界となる最大回動範囲まで回転させることができる。図58の例では、最大回動範囲として、左回動最大角度を90°右回動最大角度を60°に、それぞれ設定している。
なお最大回動範囲は、ハードウエア的な仕様により決定されるものの、一般には試料台の上面に載置された試料を観察するという観点から、傾斜角度が±90°を超えると、試料台の裏側に回り込み、試料台が透明でない限りは観察ができなくなるため、好ましくは最大回動範囲は±90°以内に設定される。
さらに上記の例では、回動規制手段214が規制する回動範囲規制値を固定値としているが、この範囲を可変とすることも可能である。例えば、傾斜ストッパを設ける位置を、胴部24側面に沿って移動式とすることで、傾斜ストッパの位置に応じて回動範囲規制値を調整できる。これにより、ユーザは試料の大きさや形状等に応じて回動範囲規制値を任意に調整できる利点が得られる。
(傾斜ストッパ238)
傾斜ストッパ238の具体例を図53〜図56に示す。これらの図において、図53は回動規制手段214を備える胴部24を正面から見た断面図であり、この図においては傾斜角度は電子線撮像手段11の垂直姿勢を基準として0°である。この図に示すように、胴部24の側面には、側面から突出させた2つのストッパ凸部240を設けている。ストッパ凸部240は、左方向への回動を規制する左ストッパ凸部241と、右方向への回動を規制する右ストッパ凸部242とを有する。さらに胴部24の周囲には、これらのストッパ凸部240と当接するためのストッパ突起243を設けている。ストッパ突起243は胴部24側に向かって突出するよう、ばね等の弾性体で付勢されている。また各ストッパ凸部240は、このストッパ突起243と当接するための当接面を設けている。この例では、ストッパ突起243を左ストッパ凸部241と右ストッパ凸部242とで共通としているため、各ストッパ凸部240は当接面を設ける位置を左右逆向きとしている。
例えば図53の位置から図55に位置まで、胴部24が回転されてストッパ凸部240がストッパ突起243と対向する位置になると、ストッパ突起243がストッパ凸部240に当接されて、それ以上の胴部24の回転が阻止される。このストッパ突起243は、胴部24の外方に突出されたストッパハンドル239と連結されており、ユーザが手でストッパハンドル239を把持して、付勢力に抗するよう引き出すと、ストッパ突起243が後退して当接状態が解除され、胴部24の更なる回転が許容される。これにより、傾斜ストッパ238により規制される回動範囲規制値以上に胴部24を回転させることが可能となる。なおストッパ突起243は必ずしも付勢する必要はなく、例えばねじ式に進行、後退させる態様としてもよい。
(限界ストッパ245)
さらにこの例では、回動範囲規制値以上に胴部24を回転させても、胴部24の回転は最大回動範囲までとなる。この最大回動範囲に胴部24の回転を規制するため、限界ストッパ245を備えている。限界ストッパ245は、胴部24の外周面に設けられた限界凸部246と、この限界凸部246と当接するよう胴部24の周囲に固定配置された限界突起247とで構成される。限界凸部246もストッパ凸部240と同様、左右の回転方向に応じて2箇所に設けられている。限界突起247はストッパ突起243と異なり、固定式で、当接状態を手動で解除することができない。したがってこれ以上の胴部24の回転は阻止され、この結果胴部24の回転範囲は、限界ストッパ245で規定される最大回動範囲内となる。例えば、図55の状態から傾斜ストッパ238を解除し、胴部24を更に回転させると、限界凸部246が回転に沿って進行し、遂には図56に示すように、限界突起247に当接する。これによって、胴部24の最大回動範囲を適切に規定できる。これら図53〜図56の例では、傾斜ストッパ238は、電子線撮像手段11が水平姿勢を基準として左向きに60°となる位置に、また限界ストッパ245は左向きに90°となる位置に、それぞれ設けられている。
なおこれら傾斜ストッパ238と限界ストッパ245とは、互いに交差しない位置に設けることが好ましい。同一線上に配置されると、対応しない凸部と突起とが当接するおそれがあるため、これを避けるために平行に、あるいは離間して設ける。図54の例では、胴部24の円周上でストッパ凸部240と限界凸部246とは平行に設けられており、互いの回転面が交差しないように配置されており、誤動作を回避している。
(回動規制値到達告知手段216)
また、上述の通り回動範囲規制値を設けることで、傾斜角度が高くなった際のハードウエア的な衝突防止策を設けると共に、回動範囲規制値に達したことをユーザに告知する回動規制値到達告知手段216を設けてもよい。このような拡大観察装置のブロック図の例を図46に示す。例えば左右いずれかの傾斜により回動規制値に到達すると、ユーザに対して「レンズが大きく傾斜しています。試料とレンズが衝突する危険性がありますので、チャンバビューカメラの映像を確認し注意して下さい。これ以上傾斜させるには傾斜ストッパを解除する必要があります。」等のメッセージを表示させる。特に、上述したロック解除表示手段212と併用することで、メッセージ内容が、単にロック機構解除中であることを示す内容から(図48)、傾斜角度が大きくなった時点で上記内容に変化、あるいは追加されることとなり(図49)、ユーザに対する注意喚起が行われる。
図67A及び図67Bは、試料室21内における試料台33と観察手段10の相対移動を示す模式断面図である。上述の通り、試料台33は水平姿勢を維持しつつ高さ調整機構80により上下動するのみで、試料台33の載置面を傾斜させる傾動や揺動を禁止している。この構造で傾斜観察を実現するために、観察手段10側を傾斜させるよう構成している。このように、試料側を固定して観察手段10側を傾斜させることで、ユーザは観察手段10で撮像されて表示手段2に表示される観察像において、傾斜姿勢の位置関係を容易に把握できる利点が得られる。逆に言えば、従来のようにカメラ側を固定して試料台33を傾斜させる構造、すなわち図68A及び図68Bに示すようなユーセントリック構造では、現在観察中の画像において、傾斜観察の傾斜角度を変更する際、どの方向に傾斜を調整すれば、所望の画像が得られるか、その位置関係を把握することが容易でなかった。これに対し、観察対象である試料側を固定し、観察の視点となる観察手段10側、すなわち目線そのものを移動させる構成とすることで、実際にユーザが試料を観察する際と同様の目線を動かすという感覚で位置関係を把握でき、この結果角度調整すべき方向も速やかに把握できるという利点が得られる。
また、試料台33を傾斜させないことで、試料が試料台33から滑り落ちる虞もなくなり、試料を試料台33に固定するための構造、例えば粘着テープによる固定作業も不要にでき、さらに粘着テープを剥離する際に試料を破損する虞も無くすことができるといった、作業性や安全性の向上が図られる。
さらに従来のユーセントリック構造では、試料台33を傾斜させたまま試料台33の高さ(Z軸)を変更すると、図68Bに示す黒塗りの位置から斜線ハッチングに示す位置に試料台33が移動する結果、傾斜姿勢で固定された光学系撮像手段12の光軸が相対的に試料台33上を移動することとなって、観察視野が意図せず移動してしまうという問題があった。特に光学系撮像手段12に焦点位置を調整するための光学焦点調整手段を備えない焦点固定式の場合は、試料台33の高さ調整のみでワーキングディスタンスを変化させる必要があり、合焦位置によっては観察視野が電子顕微鏡と一致しなくなる虞がある。
また、観察手段10と試料との間の角度を変更した場合、角度を変更する度に、観察手段10と試料との間の焦点距離が変わるため、焦点位置の補正を行わなければならない。加えて、二つの観察手段10で、同一の試料に対して同一の傾斜角度で、傾斜観察の画像を取得したい場合、一方の観察手段10で用いた角度を記憶すると共に、他方の観察手段10側に試料台33を移動させた上で、先の角度を再現し、焦点位置を合わせる必要があった。
これに対して本実施の形態では、図67A及び図67Bに示すように、観察手段10を鉛直位置に回転移動させることで、試料台33の高さによらず観察視野を一定に保持できるという利点が得られる。なお、本実施の形態においては使用したい観察手段10を鉛直姿勢とすることで、いいかえると選択した観察手段10の光軸を、高さ調整手段の移動方向(Z軸)と略一致させることで、高さ調整による観察視野の移動を回避できる。この結果、ユーセントリックなワーキングディスタンスは1箇所のみとなる。このように、観察手段10を鉛直姿勢にして観察すると、観察手段10の光軸と試料台33の上下移動の軸が一致し、ワーキングディスタンスを調整しても視野が移動しないので、ユーセントリック位置の調整がし易いという利点が得られる。
ただ、観察手段10を傾斜姿勢としても試料の観察が可能であることはいうまでもない。また、この場合には試料台33の高さ調整による観察視野の移動が生じるが、画像処理によってこの移動分を相殺することも可能である。例えばコントローラ1によって、高さの変化と視野の移動量を計算し、視野の移動分だけ観察視野(表示中の光学画像乃至電子顕微鏡画像)の表示部分を逆方向に移動させるよう、コントローラ1で画像処理する。これにより、高さの移動によらず表示手段2に表示される画像の視野を一定に保持できる。この結果、試料台33の角度や観察位置によらず、観察手段10を切り替えても観察視野が変化しない拡大観察装置が実現できる。
特に従来は、電子顕微鏡観察を優先するため、光学系撮像手段12による観察を犠牲にし、さらに電子顕微鏡の分解能(最高倍率)を優先する結果、傾斜観察を制限する設計思想が採用されていた。この結果、折角電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とを共に備えていても、両者を最大限に活用し、光学画像や傾斜観察を制限無くユーザが利用できる環境が実現されているとは言い難い状況であった。
具体的には、電子顕微鏡の分解能は、電子線撮像手段11の対物レンズ先端から試料までの距離であるワーキングディスタンスが短いほど良くなる。しかしながら、傾斜させた角度から試料を観察する場合は、ワーキングディスタンスが短すぎると電子線撮像手段11の対物レンズに試料が接触してしまうという問題があった。したがって、従来はワーキングディスタンスを、試料の大きさと希望する傾斜角度で決定される、対物レンズに衝突しない最短距離に設定して観察していた。この結果、従来の電子顕微鏡では、試料の大きさと希望する傾斜角度によって決定されるワーキングディスタンスで観察することになる。このように種々のワーキングディスタンスで快適に観察するためには、どのワーキングディスタンスであっても、試料台33の傾斜角度を変化させた際に観察視野が変化しないことが望まれる。このような背景から、従来の電子顕微鏡では、どのワーキングディスタンスであっても、試料台33を傾斜させても視野が動かないような構成、すなわち図68Bに示すように、電子顕微鏡の光軸上で、試料台33のZ軸の位置によらず視野ずれしないユーセントリック式とした試料台33の傾斜機構が採用されていた。
この構造によれば、図68A、図68Bの黒塗りした位置に試料表面が位置するように予め調整することで、試料台33を傾斜回転させる1動作のみで、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11で同一視野、同一傾斜角度での観察が可能となる。しかしながら、視野探しや位置調整は被写界深度の浅い光学系撮像手段12で行う必要があるものの、位置調整をする際に視野が電子線撮像手段11との間でずれる結果、調整し難いという問題があった。
このような状況に鑑み、本実施の形態では上述の通り、図67A及び図67Bに示すように試料台33側を固定し、観察手段10側を傾斜させる構造を採用している。この結果、傾斜させるのは試料台33でなく観察手段10側となるため、試料台33の高さによらず、容易に同じ観察位置、傾斜角度での画像に切り替えることが可能となる。これにより、電子顕微鏡観察と、光学顕微鏡観察の双方を重視し、かつ傾斜観察も重視した、従来よりも使い勝手のよい拡大観察が実現できる。
さらに従来の電子顕微鏡では、電子レンズ、光学レンズが取り付けられている部材に、高さ調整機構80としてZステージが構成され、そのZステージ上に、試料台33を傾斜、回転させる機構が構成されていた。さらに電子レンズ、光学レンズは、固定側に取り付けられていた。
これに対して本実施の形態に係る拡大観察装置では、電子レンズ、光学レンズが取り付けられている部材に、試料台33を回転させる機構が構成され、さらにその上に、高さ調整機構80が構成されている。すなわち、回転軸の機構と、Z軸の移動機構が従来とは逆に構成されている。また、電子レンズ、光学レンズは、回転側に取り付けられている。
(光軸と試料台33の移動方向の一致)
本実施の形態に係る拡大観察装置においては、回動手段30により電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12を回転移動させることで一の観察位置に双方の観察手段10を切り替えて配置できる。すなわち、このような切り替えによって、双方の観察手段10の光軸を一致させた撮像が可能となる。一方、試料台33は水平姿勢を維持したまま上下に、すなわち鉛直方向に高さ調整機構80で移動可能としている。この結果、観察手段10を鉛直姿勢に位置させることで、光軸を試料台33の移動方向と一致させることが可能となる。
これにより、円筒状側面に沿って回転させた電子線撮像手段11や光学系撮像手段12で傾斜観察を可能としつつ、回転軸と試料台33の高さ方向、すなわち試料台33上に載置された試料の観察面の高さとを一致させて、視野変化のない観察が可能となる。また各観察手段10の光軸を一致させた、略同一の視野、略同一の傾斜角度、略同一の倍率での観察像を取得でき、取得された2つの観察像を比較観察できる。
(焦点の可変範囲の中に回転軸)
高さ調整手段は、その高さを調整可能な高さ可動範囲に、回動手段30の回転軸が含まれるように設定している。これにより、回転軸の中心に試料台33を位置させて、観察手段10を回転軸に沿って回転させても、各位置における観察手段10から試料台33までの距離を一定に維持できるので、焦点距離を一旦調整した後は、観察手段10を移動させても合焦距離を維持しまままとでき、常に合焦状態で視野角を変更でき、傾斜観察に際して極めて有利となる。
より正確には、このようなセットバックを示す図69の模式断面図に示すように、試料の表面の観察位置すなわち試料の上面である観察面が、回転軸と一致するように、試料の高さ分だけ試料台33を回転軸から降下させることで、上記ワーキングディスタンスの保持状態を達成できる。このため高さ調整機構80は、試料台33を回転軸と一致させた位置から所望の範囲下方に降下可能としている。これにより、観察面の高さに応じて試料台33を降下させて、観察面を正確に回転軸に一致させることが可能となる。
このため、試料台33のZ軸方向の移動においては、試料台33の上端ストローク位置は、少なくとも回転軸を含む位置までは上昇可能とし、さらに少なくともその回転軸から下方位置に移動可能に設定する。
(セットバックの調整)
試料表面を回転軸に合わせるには、電子レンズより被写界深度の浅い光学レンズを使用する。光学レンズの取り付け位置は、予めその焦点位置が回転軸と一致するように調整される。光学レンズの光軸と試料台33の試料載置面が垂直となるように、胴部24を回転させて、光学レンズの画像の焦点が合うように、試料台33のZ軸位置を調整する。この際、光学レンズと試料の距離のみ変化して、視野は移動しないので、調整は容易となる。次に、電子レンズの焦点調整を上記と同様の手順で行う。これにより、胴部24をどのように回転、傾斜させても、電子顕微鏡と光学顕微鏡の視野がずれることはない。
(焦点調整手段の有無 固定焦点式)
また、観察手段10の焦点距離が固定式の場合は、この構成によって試料台33の高さを調整することで、焦点位置にワーキングディスタンスを正確に調整できる。あるいは、観察手段10が焦点調整手段を備える場合は、これで調整可能な焦点距離範囲に、回動手段30の回転軸が含まれるように設定する。例えば電子線撮像手段11は、その光軸に沿って焦点距離を調整可能な顕微鏡焦点調整手段37を備えている場合が多く、この場合は図70に示すように予め焦点位置の可変範囲に回転軸を含むように設定しておき、顕微鏡焦点調整手段37で焦点距離を調整して、電子レンズの焦点位置を回転軸の位置に一致させる。また光学系撮像手段12が、その光軸に沿って焦点距離を調整可能な光学焦点調整手段38を備えている場合も同様に、図71に示すように焦点位置の可変範囲に回転軸を含むように予め設定しておき、焦点位置が回転軸と一致するように光学焦点調整手段38を調整する。
(実施の形態2)
上述の例では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを組み合わせた例を説明したが、常にこれらを併用する構成のみならず、必要に応じて付加する構成とすることもできることはいうまでもない。例えば上述の通り、光学系撮像手段12をマウント39を介して着脱した構成とすることで、図27のブロック図に示したような拡大観察システムを構成できる。このように電子顕微鏡撮像として使用しつつ、必要に応じて光学系撮像手段12を付加できる構成とすることで、観察用途に応じたオプションを追加、除去可能な、柔軟性、拡張性に富む利便性に優れた拡大観察システムを構築できる利点が得られる。
(倍率換算機能)
さらに拡大観察装置は、異なる観察手段において倍率の決定基準が異なる場合に、これらを統一した倍率で表示したり、該倍率に自動調整する倍率換算機能を備える。一般に、拡大観察装置で観察する際に、どの程度拡大して観察するかは、倍率でその度合いを示すことが多い。しかしながら倍率は、表示範囲の大きさによってその定義が変わるので、観察手段毎に異なることが多い。一般に倍率は、次式で定義乃至算出される。
倍率=観察像の表示範囲/観察している視野範囲
上式において、表示範囲は観察手段の設計者が決定するパラメータであり、ユーザが決定するものではない。一方で観察視野範囲とは、観察手段の能力で決まる設定可能な視野範囲の中から、ユーザが所望する視野範囲を任意に選択するものである。以下、電子線撮像手段11の視野範囲と表示範囲を示す図72、及び光学系撮像手段12の視野範囲と表示範囲を示す図73に基づいて、倍率決定方法を説明する。
(電子顕微鏡倍率)
例えば、走査型電子顕微鏡を構成する電子線撮像手段11において表示範囲とは、図72に示すように、一般的には写真PHのサイズ(例えば124mm×94mm)である。また観察視野範囲とは、電子銃や電子レンズから試料に照射される電子線が試料上を走査する範囲の実寸法である。
(光学倍率)
これに対してデジタルマイクロスコープ等の光学系撮像手段12では、図73に示すように、照明光によって照明された試料SAからの反射光が、光学レンズを通って、CCDやCMOS等の光学撮像素子に結像する構造となる。その表示範囲は一般的にはディスプレイ部102のモニタサイズ(例えば15インチモニタ画面サイズ)となる。またモニタサイズも、ディスプレイ部102がLCDかCRTか等によって変化する。さらに観察視野範囲は、(光学撮像素子の有効撮像範囲)/(光学レンズの光学倍率)となる。このように光学倍率は、物体の大きさに対する拡大率となる。
なお倍率決定の方法は上記に限られない。特殊な例として、例えば観察視野範囲から取得した画像データのすべてを表示範囲に表示するのではなく、ある一部分を表示することが考えられる。このような方法は、例えば画像周囲にピンぼけや歪み等が見られる場合、これらの部分をカットして表示することが考えられる。あるいは、解像度は粗くなるものの、いわゆるデジタルズームによって見かけ上の倍率を上げることもある。このような場合は、倍率が上昇することになる。
一方、観察視野範囲を縦横又はXY方向に移動して、複数の画像データを取得し、それらを連結して広い視野範囲を表示範囲に表示することもある。例えば、観察可能な最低倍率よりも更に低い画像を得たり、あるいは後でデジタルズームしたい場合等のために高解像度画像を得ることもある。このような場合は倍率が低下する。
以上のように、2種類以上の観察手段で、同じ観察視野範囲の観察画像を取得したい場合に、それぞれの観察手段の倍率の定義が異なっている場合は、同じ「倍率」で画像取得しても、希望通りの同じ観察視野範囲の観察画像の取得ができずに不便であった。すなわち、同じ視野範囲を拡大観察したとしても、大きな画面に表示する拡大観察装置は倍率が高くなり、小さな表示画面上に表示する拡大観察装置では倍率は低くなる。この結果、倍率のみを基準とした場合、観察手段によって実際に表示されるサイズが一定しないことになり、比較観察等を行うに際しては好ましくない。
このような状況のため、従来は対応策として、予め寸法の判明している試料を観察して、各観察手段の倍率定義を確認するキャリブレーション作業を事前に行う方法や、倍率定義の相違を考慮し、同じ観察視野範囲が観察できるような倍率を、ユーザが手動で計算する方法や、さらには同一の拡大観察装置内でなく、別個の電子顕微鏡と光学式デジタルマイクロスコープを使用する方法等、が採られてきたが、いずれも手間がかかるという問題があった。
これに対して本実施の形態では、双方の観察手段で、同一の観察視野範囲に対して同じ表示サイズとなるように、統一的な倍率を定義する。換言すると、同じ表示範囲を、観察視野範囲で除算した値を倍率として定義する。このように、異なる観察手段であっても、設計者が同一の表示範囲を定義して、倍率換算機能を持たせることで、ユーザは異なる観察手段であっても同じように定義された倍率を利用できる。これにより、いずれか一方の観察手段で倍率が設定されたら、該倍率と共に他方の観察手段の倍率に換算した値が表示される。あるいは、他方の観察手段の倍率表示を変更し、一方の観察手段の倍率に換算して表示あるいは併記してもよい。
なお倍率の基準は、いずれか一方の観察手段に換算した換算倍率を倍率換算手段で換算する他、いずれの観察手段の倍率とも異なる第三の基準の倍率に変換することも可能である。この場合は、第三の基準の倍率で統一して光学画像と電子顕微鏡画像を表示する。
(倍率換算機能)
図74に、倍率換算機能を備える拡大観察装置のブロック図を示す。この図に示す拡大観察装置は、光学系撮像手段12と、電子線撮像手段11と、コントローラ1と、表示手段2と、操作手段105Bとを備える。コントローラ1はMPU等の演算部を備えており、一方の観察手段で規定された基準に従って他の観察手段の倍率を換算する倍率換算手段111、及び観察モードを選択するモード選択手段110として機能する。この例では、観察モードとして、表示手段2で電子顕微鏡画像と光学画像とを比較観察可能な比較モードと、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を表示可能な合成モードを備えており、モード選択手段110で選択する。なお合成モードは必ずしも必須でなく、比較モードのみを実装することも可能である。この場合は、モードを選択するためのモード選択手段も必須でない。
操作手段105Bは入力デバイスで構成され、ユーザはこれを操作することで電子顕微鏡倍率を設定する。これにより、電子顕微鏡倍率を設定、調整する電子顕微鏡倍率調整手段68の操作を行うことができる。なお操作手段105Bは、図74の例ではコントローラ1に接続されているが、表示手段2に接続された操作手段105やコンソールCSと共通化することもできる。
(倍率換算手段111)
また表示手段2のディスプレイ部102は、後述するように換算倍率表示手段123と、倍率範囲表示手段126と、予定倍率表示手段124と、判定告知手段125と、状態表示手段121と、非選択表示手段122として機能する。換算倍率表示手段123は、一方の観察手段で取得され表示手段2に表示された画像の倍率を取得した上で、倍率換算手段で換算した換算倍率に他方の観察手段を設定可能かどうかを判定し、設定可能な場合は該換算倍率を、設定不可能な場合は設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を、各々表示手段2に表示する。倍率範囲表示手段126は、電子顕微鏡画像の調整可能な電子顕微鏡倍率範囲と、光学画像の調整可能な光学倍率範囲とを、同じ基準の倍率に換算して表示手段2上に一次元状に表示する。また倍率範囲表示手段126は、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を示すことができる。予定倍率表示手段124は、一方の観察手段で取得された画像と同一表示サイズで、他方の観察手段により画像を取得するための換算倍率を表示する。判定告知手段125は、倍率換算手段で換算した換算倍率に他方の観察手段の倍率を設定することが不可能と判定された場合に、設定不可能な旨を表示する。状態表示手段121は、動画表示と静止画表示のいずれの状態であるかを区別する状態表示を行う。
(光学倍率調整手段95)
図74に示す光学系撮像手段12は、光学倍率調整手段95と、光学倍率読取手段112を備えている。また光学倍率調整手段95は、光学レンズ鏡筒の側面で回転自在なリング状に設けられており、リングの回転量で倍率を調整する。なお図74の例では、光学ズームレンズを内蔵した光学レンズ鏡筒のイメージを示しており、光学レンズ鏡筒の外周に設けられた光学倍率調整手段95と、設定された倍率を読み取る光学倍率読取手段112を設けている。光学倍率読取手段112は演算部と電気的に接続され、その出力を演算部の倍率換算手段111に送出する。
この構成により、ユーザは電子線撮像手段11の倍率調整を操作手段105Bから行い、一方で光学顕微鏡の光学倍率を光学倍率調整手段95で調整する。ユーザが光学倍率調整手段95を操作して光学倍率を調整すると、その光学倍率を光学倍率読取手段112で読み取り、倍率換算手段111に送出される。倍率換算手段111は光学倍率と対応する電子顕微鏡倍率に光学倍率を換算して、表示手段2に表示させる。ユーザは、換算倍率に従って操作手段105Bを操作し、換算倍率での電子顕微鏡画像が得られるよう電子線偏光走査器58等の条件を設定する。なお、倍率換算手段111で換算された換算倍率の表示は、表示手段2上に常に表示させる他、表示と非表示とを切り替えるよう構成してもよい。
また一方で、倍率換算手段111が換算倍率を電子線撮像手段11に送出して、電子顕微鏡倍率を自動的に調整するよう電子線走査や偏向器等を設定してもよい。この場合は、ユーザが電子顕微鏡倍率調整手段68を手動で調整する作業が不要となり、利便性が高まる。例えば、ユーザが表示手段2に表示させる画像を光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えると、自動的に表示中の光学画像の光学倍率を光学倍率読取手段112が読み取り、倍率換算手段111で、対応する電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率に換算する。そしてこの電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を取得して、表示手段2に自動的に表示させる。例えば、撮像済みの電子顕微鏡画像を拡大/縮小して、該電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を生成したり、あるいは新たにこの電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を撮像するために、電子線撮像手段11に必要な設定情報を送出することもできる。このようにして、光学画像に対応する、同じ大きさでの電子顕微鏡画像を、表示手段2上に表示させることが可能となる。また、このような観察手段の切り替えによる倍率の自動連動機能は、ON/OFFを選択式にすることもできる。例えば、倍率連動機能をOFFした場合には、光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えた際、前回、電子線撮像手段での観察で用いた倍率で表示させ、一方倍率連動機能をONした場合には、光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えた際、自動的に対応する倍率での電子顕微鏡画像を表示させることができる。
なお図74の例では、電子顕微鏡倍率調整手段68を操作手段105Bで実現しているが、図2A等で示したように、電子レンズ鏡筒の側面で回転自在としたリング状に構成することもできる。このように光学倍率調整手段95と同様の倍率調整手段を電子線撮像手段11にも設けることで、操作感の統一性が得られユーザの使い勝手を向上できる。
光学ズームレンズの倍率は、光学レンズ鏡筒内の光学レンズ系の内、光学倍率を決定するレンズ群の位置によって変化する。レンズ群を移動させるため、光学レンズ鏡筒には光学倍率調整手段95として、光学レンズ鏡筒の側面に沿って回転自在なズームリングが設けられる。ユーザは光学レンズ鏡筒の側面に沿ってズームリングを回転させることで、光学レンズを光学レンズ鏡筒内部で移動させ、光学倍率を調整できる。このためズームリングには、回転位置によって決まる倍率を把握できるよう、倍率を数値や目盛りで表示することが好ましい。例えば光学ズームレンズ側に矢印を、光学レンズ鏡筒側に倍率を、各々刻印や印刷により表示して、ユーザは矢印を所望の倍率に一致させるように回転位置を調整する。なお、矢印と数値の配置は、光学ズームレンズと光学レンズ鏡筒を逆にしてもよいことはいうまでもない。
また光学倍率調整手段95は、ユーザが手動で回転して操作する他、電動により回転させる機構を採用してもよい。調整された倍率は、光学倍率読取手段112によって検出される。なお電動等によって光学倍率調整手段を手動によらず自動調整する機構を設けた場合は、上記構成と逆に、電子顕微鏡画像の倍率を電子顕微鏡倍率読取手段等によって取得して、対応する光学画像の倍率に倍率換算手段で換算し、この換算倍率となるように光学倍率調整手段に情報を送出して、光学系撮像手段の撮像倍率を自動調整することも可能となる。
(光学倍率読取手段112)
光学倍率読取手段112は、光学レンズ鏡筒に設置された光学ズーム倍率読み出し器等で構成できる。光学倍率読取手段112は、ズームリング113の回転位置を電気的に検知し、それによって倍率を認識する。これにより、例えばユーザの手動により設定された光学ズームレンズの倍率を拡大観察装置側で認識でき、これに応じた倍率換算等の処理をスムーズに行うことができる。
このような光学倍率読取手段112の一例を、図75の断面図に示す。この図は光学系撮像手段12の光学レンズ鏡筒の横断面図であり、光学レンズ鏡筒の外周にズームリング113が回転自在に装着されている。光学レンズ鏡筒の外周には、球状の突出電極114を弾性的に突出させるよう設けている。またズームリング113の内周側には、ズームリング113の位置に応じた光学倍率を出力するための倍率出力電極115を、円周に沿って複数、離間して設けている。各倍率出力電極115は、突出電極114と接触することで、対応する光学倍率の情報を、例えば抵抗に発生する電圧信号として出力する。このように、各倍率出力電極115をスイッチとして作用させることで、倍率出力電極115の位置に該当する倍率が選択されたことが検知される。すなわち光学倍率読取手段112はスイッチのON/OFFによって、現在の光学倍率を認識し、これを演算部に送出する。またズームリング113の内面に、突出電極114を受ける凹面を形成することで、所定倍率にズームリング113を保持する位置決めの機能を奏することもできる。さらに、各電極の位置に、倍率の数値や目盛りを表示することで、ユーザによる倍率調整作業を容易に行える。ただ、表示手段上に倍率表示を行う場合は、このような物理的な倍率表示は必ずしも必要でない。
また、光学倍率読取手段112はこのような電極の接触による位置検出に限られない。例えばズームリングと光学レンズ鏡筒との界面にフォトインタラプタを設ける等して、非接触で行うこともできる。あるいは、定位置での離散的な倍率検出の他、ロータリーエンコーダ等を利用して連続的に倍率を読み取るよう構成してもよいことはいうまでもない。
なお、図74の例では、光学系撮像手段12に光学倍率調整手段95を光学倍率読取手段112を備えているが、光学倍率読取手段を設けないこともできる。この場合は、ユーザがズームリング等に表示された目盛りを読み取ることで、ユーザは大まかな光学倍率を知ることができる。また、光学倍率調整手段を設けず、固定倍率とすることもできる。この場合は、光学系撮像手段を着脱式とすることで、倍率の異なる光学系撮像手段に交換して光学倍率を変化できる。
なおディスプレイ部102上に倍率を数値で表示させるのに変えて、あるいはこれに加えて、視野範囲を示すこともできる。例えば「倍率100倍」といった表示でなく、「表示視野範囲4mm×3mm」といった表示形態も利用できる。
(換算倍率の表示)
倍率換算手段111は、以上のようにして電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれか一方で取得された画像の倍率を認識し、該画像と略同一の表示サイズの画像を他方の観察手段で取得するための倍率を、他方の観察手段の基準に基づく倍率に換算する。
一般的な電子顕微鏡観察では、先に光学系撮像手段12を用いて低倍率にて試料の視野を決定した上で、電子線撮像手段11で高倍率の画像を取得する。このため、まず光学系撮像手段12で取得した光学画像を表示手段2上で表示する際に、この光学画像の光学倍率を表示すると共に、これを電子顕微鏡倍率に換算した換算倍率を併記する。よってユーザは、電子線撮像手段11を操作して換算倍率の電子顕微鏡画像を取得すれば、同一の表示サイズで電子顕微鏡画像を撮像できる。この結果、同一の表示サイズで光学画像と電子顕微鏡画像を表示手段2で表示させて比較観察を容易に行える。特に、上述した回動式の移動機構を備える試料室21の構成(図26)を併用することで、同一視野での光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との切り替えを容易にできることと相俟って、比較観察を一層容易に行える利点が得られる。
また換算倍率は、光学倍率を電子顕微鏡倍率に換算する場合のみならず、逆に電子顕微鏡倍率を光学倍率に換算した換算倍率を使用してもよい。特に、先に電子顕微鏡画像を取得した後に光学画像を取得する場合には好適となる。あるいは、異なる基準の倍率を併用するのでなく、一の基準で統一した倍率にしたがって、光学画像及び電子顕微鏡画像の倍率表示を行うよう構成してもよい。
また、単に換算倍率を表示手段2に表示させるのみならず、上述の通り換算倍率に従って観察手段10の倍率設定まで自動化することも可能である。例えば、取得した光学画像の光学倍率に基づいて倍率換算した電子顕微鏡倍率を、電子線撮像手段11の電子顕微鏡倍率調整手段68に自動的に設定するよう構成してもよい。または、該電子顕微鏡倍率の画像を取得できるよう、撮像条件のパラメータを自動設定する。これによれば、光学系撮像手段12で取得した画像と同じ表示サイズの電子顕微鏡画像を、ほぼ自動的に取得できる。また取得の実施まで行わずとも、撮像条件のパラメータ設定画面を表示手段に表示させ、ユーザが微調整可能としてもよい。
(近接倍率への自動変更)
また、換算倍率での画像取得が困難あるいは不可能な場合は、この換算倍率に近い倍率を選択して表示手段2に倍率を表示させたり、画像取得、画像表示等を行うこともできる。すなわち、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とでは、設定可能な倍率の範囲が異なるため、一方の観察手段では設定できても、他方の観察手段では設定できない倍率が存在する。このような場合でも、設定可能な範囲の中から、できるだけ近い倍率を選択して、倍率の表示、画像の取得、あるいは画像の表示等を行うこともできる。
(倍率範囲表示手段126)
図76に、倍率範囲表示手段126で光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を示す表示例を示す。表示手段2上にこのような倍率範囲表示手段126を表示させることで、各観察手段の倍率範囲を視覚的に把握でき、また現在の倍率が重複範囲外にある場合は、どの方向にどれだけ拡大、縮小すればよいかを確認できる。特に電子顕微鏡倍率範囲は、加速電圧やワーキングディスタンス等の条件によって変化するので、現在の観察条件における重複範囲を視覚的に把握できるようにすることで、ユーザは速やかに必要な倍率設定の指標を得ることができる。
この例では、電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な電子線撮像手段11の倍率の範囲と、光学倍率調整手段95で調整可能な光学系撮像手段12の倍率の範囲とが、倍率換算手段111で換算された換算倍率において、少なくとも部分的に重複している。これにより、電子顕微鏡画像と光学画像とを同一のサイズで取得でき、比較観察に有利となる。
また図76の例においては、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲とを、同一基準の換算倍率の軸上に並べ、一次元状に重ねたゲージ式に表示している。ただ、重複する倍率範囲は、各観察手段の観察可能倍率の値のみで決定する必要はなく、目的とする比較観察や、合成処理が可能な倍率範囲を、重複倍率として捉えることもできる。
例えば画像の合成に際しては、同じサイズの画像同士を合成することが好ましいが、必ずしもこれに限定するものでない。例えば、電子顕微鏡画像に光学画像の色情報を付加してカラー化する例を考えると、倍率換算して電子顕微鏡画像の倍率と同じ倍率の光学画像を取得できない場合は、光学系撮像手段12で取得可能な最も近い倍率の光学画像を取得し、該光学画像から色情報を取得することができる。このように、各観察手段の観察可能倍率は、各観察手段の像観察条件によっても変化するので、それに対応して重複倍率の有無も捉えることができる。例えば、SEMでは加速電圧が低いほど、より低倍率まで観察可能となる。またSEMではレンズと試料の距離であるワーキングディスタンスが長いと、より低倍率まで観察可能となる。
なお、倍率が重複しない場合に、最も近接する倍率とは、必然的に設定可能な最大倍率もしくは最小倍率となるが、必ずしも最大、最小倍率のみに限定するものでなく、最大倍率や最小倍率に近い倍率でも同様の効果が得られることは言うまでもない。したがって本発明において最も近接する倍率とは、一点の倍率のみを意味するのでなく、該倍率と実質的に等しい倍率(例えば誤差の範囲)も含む。
さらに、各観察手段の観察可能倍率は各観察手段の像観察条件等により変化するので、それに対応して倍率範囲の重複も変化させることがさらに好ましい。例えば電子線撮像手段11では、加速電圧が低いほどより低倍率での観察が可能となる。また電子線撮像手段11では電子レンズと試料とのワーキングディスタンスが長いと、より低倍率まで観察可能となる。一方で光学系撮像手段12は交換式とすることで、光学倍率の設定可能な範囲を変化できる。
また倍率範囲が重複しない条件で観察手段を切替える場合は、倍率換算手段111で、最も近接する他方の倍率を算出して、切替後の倍率とする。あるいは、観察手段の切替前に、観察していた最後の倍率を記憶しておき、その倍率を切替後の倍率とすることもできる。
(モード選択手段110)
この拡大観察装置は、複数の観察モードをモード選択手段110で選択可能としている。観察モードとしては、比較モードや合成モード等が挙げられる。電子線撮像手段11で取得した電子顕微鏡画像と、光学系撮像手段12で取得した光学画像を、比較観察したり、合成処理する際には、2つの観察手段10で取得する画像は、同じ観察視野範囲の画像であることが望ましい。また表示倍率も近似させることが望ましい。
(合成モード)
合成モードでは、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を生成し、ディスプレイ部102上に表示する。例えば、図77に示すような電子顕微鏡画像EIと、図78に示すような光学画像OIの2枚の画像を重ねて、図79に示すような、各画素の情報を演算した1枚の合成画像データに合成する。特に、電子顕微鏡画像EIの輝度情報と、光学画像OIの色情報を合成してカラー合成画像GIにすることで、高精細なカラー画像が得られる。なお合成前の各画像に、歪み等のレンズ収差や、2画像間に位置ズレがある場合は、合成処理前に、歪み補正、位置ズレ補正等を行うことが好ましい。
このような画像合成は、後述する図85に示すカラー画像合成手段116Bにより行われる。カラー画像合成手段116Bでカラー合成画像GIを合成し、表示手段2上に表示させることで、試料表面の形態と色の関係が明確となり、画像の認識が格段に向上する。また、表示手段2に表示された画像に対し、種々の計測を行うに際しても、このようなカラー画像を利用することでその利便性が向上される。
(カラー合成画像生成機能)
合成画像の生成方法としては、従来は、光学画像から得た色情報と、電子顕微鏡画像から得た輝度情報を合成する方法が主に採用されてきた。この方法では、基本的に電子顕微鏡画像が有する輝度情報を利用して、この上に、光学画像から得た色情報を重ねるという方式のため、画像自体の精細さは基本的には電子顕微鏡画像そのものであって、本来モノクロの電子顕微鏡画像を着色してカラー化した画像となる。このため、明暗の関係が肉眼で観察した状態とは異なってしまい、不自然なカラー画像となるという問題があった。例えば、図80に示す電子顕微鏡画像EI2と、図81に示す光学画像OI2とを合成すると、図82に示すようなカラー合成画像GI2となる。図82の画像は、本来のカラー画像、すなわち図81で示される光学画像OI2で表現されている見え方とは随分異なっている。特に明暗の様子が殆ど再現されておらず、寧ろ逆になってしまっている。
そこで、より光学画像、すなわち肉眼で観察するイメージに近い合成画像を得るため、本実施の形態では、従来は画像合成の際に捨象されていた、光学画像の輝度情報も利用し、さらに電子顕微鏡画像との合成時に互いの輝度情報の合成比率を調整するための比率調整手段250を設けることで、図83に示すように、光学画像OI2の有する輝度情報を加味したカラー合成画像GI3を生成している。これにより、図84に示すように、従来のカラー合成画像GI2に比して、より現実に近いカラー合成画像を得ることに成功した。以下、このようなカラー合成画像生成機能の詳細について、図85〜図88に基づいて説明する。これらの図において、図85はカラー合成画像生成機能を備える拡大観察装置のブロック図、図86はカラー合成画像生成を行う手順を示すブロック図、図87は表示パラメータ調整手段258の一例を示すイメージ図、図88は表示パラメータ調整手段258Bの他の例を示すイメージ図を、それぞれ示している。この拡大観察装置は、図85に示すように、電子線撮像手段11と、光学系撮像手段12と、この光学系撮像手段12で取得された光学画像OI2から色情報を分離する色分離手段255と、電子顕微鏡画像EI2及び光学画像OI2から、それぞれ輝度情報を抽出する抽出手段256と、電子顕微鏡画像EI2の輝度情報と光学画像OI2の輝度情報との合成比率を調整する比率調整手段250と、比率調整手段250で調整された合成比率に基づいて、電子顕微鏡画像EI2と光学画像OI2の輝度情報を合成する輝度合成手段257と、輝度合成手段257で合成された合成輝度情報に対して、色分離手段255で分離された色情報を付加することにより、カラー合成画像GI3を生成するカラー画像合成手段116Bと、カラー合成画像GI3を表示させる表示手段2とを備えている。
この拡大観察装置は、同一の試料を撮影したモノクロの電子顕微鏡画像EI2とカラーの光学画像OI2を合成してカラー合成画像GI3を作成する際に、それぞれの画像から輝度情報(テクスチャ成分と概形成分)、色情報をそれぞれ抽出すると共に、それぞれの成分の大きさ、合成比率をユーザが調整可能としている。これにより、電子顕微鏡画像と光学画像からカラー合成画像を生成する際に、従来捨象されていた光学画像の輝度情報を利用し、さらに電子顕微鏡画像の輝度情報と合成する際の合成比率を調整可能として、用途に応じた所望のカラー合成画像を得ることが可能な、カラー合成画像生成機能が実現される。特に電子顕微鏡画像により、表面の微細な形状を表すテクスチャが高精細に取得可能であり、さらに電子顕微鏡では得られない色情報を光学画像から得て、肉眼で観察したときに近しい明暗関係のカラー合成画像を取得できる。
なお、画像合成を行う前段階として、同一の試料を撮影したモノクロの電子顕微鏡画像EI2とカラーの光学画像OI2とを用意する必要がある。このため、観察対象の試料の任意の観察位置について、ほぼ同一の観察方向と、ほぼ同一の撮像倍率で、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12を用いて、予め電子顕微鏡画像EI2と光学画像OI2とを撮像しておく。また、過去に撮像され画像データとして保存された電子顕微鏡画像や光学画像を、読み出して利用することも可能であることはいうまでもない。
(色分離手段255)
色分離手段255は、光学画像から、輝度情報と色情報とを分離する。この色分離手段255で光学画像から色情報の分離された輝度情報に対して、さらに抽出手段256でテクスチャ成分を抽出する。これによって、光学画像から色情報を分離した輝度情報に対して、抽出手段256でテクスチャ成分を抽出することができるので、より精度の高い画像合成が可能となる。
ここでテクスチャ成分とは、画像の表面形状を表す情報であり、画像データの輝度の高周波成分を主に含む。また概形成分とは、画像の外観形状を示す情報であり、画像データの輝度の低周波成分を主に含む。
(抽出手段256)
抽出手段256は、画像から輝度情報を抽出する。さらにこの抽出手段256は、電子顕微鏡画像及び光学画像の輝度情報から、それぞれ画像の表面形状を表すテクスチャ成分と、画像の外観形状を示す概形成分とを抽出可能としている。このような抽出手段256には、フィルタ処理を行うフィルタ手段が好適に利用できる。上述の通り、テクスチャ成分と概形成分とは、周波成分によって区別できる。よって周波数フィルタを用いることで、テクスチャ成分と概形成分との分離が可能となる。このようなフィルタとしては、例えばガウシアンフィルタやAnisotropic Diffusion等の帯域制限フィルタが利用できる。以下、画像中からテクスチャ成分と概形成分とを分離するフィルタ処理の一例を説明する。まず、光学画像を一旦グレー画像に変換する。なお電子顕微鏡画像は、元々がグレー又は白黒画像であるため、この処理は不要である。そしてグレー画像を対数画像に変換した上で、対数画像をテクスチャ画像と概形画像に分離する。具体的には、対数画像に含まれる輝度信号の周波数成分の分布から、細かい模様に関するテクスチャ成分と、全体の概形を示す概形成分とに、周波数フィルタを用いて分離する。ここでテクスチャ画像は、ダイナミックレンジの広い範囲にわたる画像の特徴を有している。また概形画像は、細かな模様部分の特徴を有している。また必要に応じて、テクスチャ画像や概形画像に対して、階調変更処理を行うこともできる。これにより、微小な凹凸部分を相対的に強調する等の効果が得られる。
(比率調整手段250)
比率調整手段250は、抽出手段256で抽出された電子顕微鏡画像の輝度情報と、光学画像の輝度情報との合成比率を調整するための手段である。ここでは、輝度合成手段257により電子顕微鏡画像と光学画像の輝度情報を合成する際の、テクスチャ成分と概形成分の合成比率を、比率調整手段250によって調整可能としている。
また、調整可能な項目は合成比率に限られず、カラー画像合成手段116Bが画像合成を行う際に関連するその他のパラメータ(表示パラメータ)を調整することもできる。例えば、電子顕微鏡画像と光学顕微鏡のテクスチャ成分全体の強度や、色情報の強度を調整することもできる。これらの表示パラメータの設定は、拡大観察装置側で自動設定する他、ユーザが手動で調整することもできる。特にこれらの表示パラメータを調整することで、カラー合成画像の見え方を調整できるので、ユーザは試行錯誤により、目的に応じた所望のカラー合成画像を得られやすくなる。例えば、ユーザが表示パラメータ調整手段258を操作することで、表示パラメータの所望の項目を任意に設定できるようにすることで、ユーザは得られたカラー合成画像を参照しながら、更に表示パラメータを再設定、あるいは微調整できる。この結果、例えば光学画像のテクスチャ成分を強調して、自然なカラー合成画像としたり、あるいは逆に光学画像のテクスチャ成分を弱めて、電子顕微鏡画像の特徴を生かしたカラー合成画像とすることもできる。
(表示パラメータ調整手段258)
合成比率を調整する比率調整手段250の具体例として、表示パラメータ調整手段258のGUI画面を、図87に示す。この図に示す表示パラメータ調整手段258は、比率調整手段250をスライダ状の「バランス」スライダで構成しており、ユーザはスライダを任意の位置に移動させることで、比率を連続的に調整できる。「バランス」スライダの位置に応じて、概形成分とテクスチャ成分の合成比率が変化するよう予め設定されており、この値によってカラー画像合成手段116Bで得られるカラー合成画像を色味や精細さを変化させることができる。なお、この例ではスライダを右へ移動させるほど数値が高く(例えば100%)、左へ移動させるほど低く(例えば0%)なるように設定しており、以下の例でも同様である。またこの例では、現在設定中の比率を数値として、各スライダの上部に表示しており、ユーザが正確な値を容易に把握できるようにしている。
なお「バランス」スライダでは、概形成分の合成比率とテクスチャ成分の合成比率とを同時に調整しているが、これらを個別に調整するよう構成することもできる。この例を図88に示す。この図に示す表示パラメータ調整手段258Bは、比率調整手段250を、概形比率調整手段251(「アウトラインバランス」スライダ)と、テクスチャ比率調整手段252(「テクスチャバランス」スライダ)の2つで構成している。これらは各々スライダ状に構成されており、ユーザはスライダを任意の位置に移動させることで、各合成比率を連続的に、個別に調整できる。これにより、概形成分とテクスチャ成分の合成比率を独立して調整でき、より最適な画質にチューニングしたカラー合成画像を得ることが可能となる。これに対して、上述した図87の例では、これら概形比率調整手段251とテクスチャ比率調整手段252とを一の比率調整手段250に統合しており、概形成分とテクスチャ成分の合成比率を連動して調整可能とすることで、一の比率調整手段250のみでカラー合成画像の画質に関する調整を行えるという利点が得られる。なお、一の比率調整手段250で概形成分とテクスチャ成分の合成比率を調整する手法は、例えば概形成分とテクスチャ成分が同時に増減するよう変化させたり、いずれか一方の合成比率が増加している間に他方の合成比率を減少させたり、あるいはある範囲では概形成分とテクスチャ成分のいずれか一方のみを増減させるよう設定する等、要求されるカラー合成画像の画質等に応じて適宜設定される。
さらに、調整可能な表示パラメータは、テクスチャ成分や概形成分の合成比率に限られず、上述の通り他の表示パラメータを調整可能とすることもできる。また、表示パラメータ調整手段258、258Bから、複数の表示パラメータを調整可能とすることもできる。図87、図88の例では、テクスチャ成分全体の強度を調整するテクスチャ強度調整手段253として、「テクスチャ強度」スライダを、色情報の強度を調整する色強度調整手段254として、「カラー」スライダを、それぞれ備えている。
(テクスチャ強度調整手段253)
テクスチャ強度調整手段253は、抽出手段256で抽出された電子顕微鏡画像と光学顕微鏡のテクスチャ成分全体の強度を調整する。この例では、「テクスチャ強度」スライダを左に移動させるほど、テクスチャ成分のゲインを増し、テクスチャ成分の振幅が増す結果、カラー合成画像におけるテクスチャが強調され、また左に移動させるほど弱められる。このように、カラー合成画像の表面形状を表すテクスチャの強弱を全体的に調整できる。
(色強度調整手段254)
また色強度調整手段254は、色分離手段255で分離された色情報の強度を調整する。この例では、「カラー」スライダを移動させることで、色情報のゲインを調整し、カラー合成画像の色の強弱を全体的に調整できる。なおこれらの表示パラメータ調整手段258、258Bは一例であり、調整可能な表示パラメータの種類を追加、削除、あるいは統合する等、他の構成も適宜採用できることはいうまでもない。
(輝度合成手段257)
輝度合成手段257は、以上のように比率調整手段250で調整された合成比率に基づいて、電子顕微鏡画像の輝度情報と、光学画像の輝度情報とを合成する。
(カラー画像合成手段116B)
さらにカラー画像合成手段116Bは、輝度合成手段257により合成された合成輝度情報に対して、色分離手段255で分離された色情報を付加することにより、カラー合成画像を生成する。なお、カラー画像合成手段116Bは、複数の画像を合成するという機能自体は後述する画像合成手段116と同様であり、基本的には画像合成手段116と同様の仕様やハードウエア構成、ソフトウエア構成等にて実現できる。異なる点は、カラー合成画像の生成時に、従来捨象していた光学画像の輝度情報も利用すること、及びその際の輝度情報を合成比率を調整可能とした点である。ここで、輝度合成手段257とカラー画像合成手段116Bが、それぞれ輝度情報と色情報を合成するための計算式の一例について、図88の表示パラメータ調整手段258Bに従って説明する。図88において、「アウトラインバランス」スライダは概形成分の合成比率w1、「テクスチャバランス」スライダはテクスチャ成分の合成比率w2、「テクスチャ強度」スライダはテクスチャ成分全体の強度k、「カラー」スライダは色情報の強度sを、それぞれ示しているとする。ここで、図86に示す光学画像OI2の概形成分をOa、テクスチャ成分をTa、一方電子顕微鏡画像EI2の概形成分をOb、テクスチャ成分をTbとすると、出力される輝度情報出力Lは、次式で表現できる。
L=w1*Oa+(1−w1)*Ob+k*{w2*Ta+(1−w2)*Tb}
また、光学画像OI2の色情報をCaとすると、出力されるカラー合成画像の色情報出力Cは、次式で表現できる。
C=s*Ca
このようにして、調整された表示パラメータに基づいて輝度情報出力と色情報出力とがカラー画像合成手段116Bにより合成され、カラー合成画像が生成されて表示手段2上に出力される。
(カラー合成画像生成手順)
次に、図80の電子顕微鏡画像EI2と図81の光学画像OI2から、図83のカラー合成画像GI3を生成する処理の手順の一例を、図86のブロック図に基づいて説明する。まず、光学画像OI2を、色分離手段255で色情報Caと輝度情報とに分離する。ここではYUV、HSV等の、輝度情報と色情報とに分離可能なフォーマットに分解される。
次に抽出手段256で、光学画像OI2、電子顕微鏡画像EI2のそれぞれの輝度情報を、テクスチャ成分と概形成分に分離する。さらに、光学画像、電顕微鏡画像の概形成分、テクスチャ成分それぞれについて、比率調整手段250でユーザが調整を行う。ここでは、ユーザが指定した表示パラメータによる重み付き和による合成が可能であるほか、各成分について強度やトーンカーブ補正等を行うことも可能である。このようにして、光学画像、電顕微鏡画像からそれぞれ概形成分、テクスチャ成分に分離された各輝度情報は、輝度合成手段257によって合成され、輝度情報出力として出力される。
一方で、色情報については、電子顕微鏡画像EI2が色情報を有しないため、光学画像OI2の色情報がカラー合成画像の色情報として使用される。上述の通り、光学画像OI2から抽出された色情報Caは、色強度調整手段254に入力される。ここで、彩度や色相等が調整され、色情報出力Cとして出力される。そして、それぞれ出力された色情報出力Cと輝度情報出力Lとを、カラー画像合成手段116Bに入力し、図83に示すカラー合成画像GI3を得る。
ここで、電子顕微鏡画像では、表面の微細な形状を現すテクスチャ成分が高精細に取得可能である。一方の光学画像では、電子顕微鏡画像では得られない、色情報、特に肉眼で観察したときに近しい明暗関係が取得可能である。そのため、両画像を合成する際には、電子顕微鏡画像で得られたテクスチャ成分を光学画像のテクスチャ成分に加えることで、肉眼で観察したときに近しい明暗関係や色味を残しつつ、電子顕微鏡画像で得られた精細なテクスチャ成分を表示すること等が可能になる。さらに、テクスチャ成分を強調して表示することによって、従来では電子顕微鏡画像においても可視化が困難であった微小な濃淡の変化も観察が可能となる。
このようにして得られたカラー合成画像の例を図80〜図84に示す。これらの図において、図80はカラー合成画像の元となる電子顕微鏡画像EI2のイメージ図、図81はカラー合成画像の元となる光学画像OI2のイメージ図、図82は従来の方法で図80と図81とを合成したカラー合成画像GI2を示すイメージ図、図83は一実施の形態に係る方法で図80と図81とを合成したカラー合成画像GI3を示すイメージ図、図84は図80〜図83の画像を部分的に拡大して対比した拡大イメージ図である。図82のカラー合成画像GI2は、図80の電子顕微鏡画像EI2に、図81の光学画像OI2から色情報のみを合成しており、元の光学画像OI2と明暗が異なってしまっている。これに対して、図83に示すカラー合成画像GI3は、テクスチャ成分のみ電子顕微鏡の成分を用い、概形成分に光学顕微鏡の成分を用いたものである。この図に示すように、肉眼で観察したときに近しい明暗の関係を保ちつつ、光学顕微鏡では観察不可能なテクスチャが可視化されている。なお、この方法では上述の通り画像合成時の表示パラメータをユーザが任意に調節可能であるため、表示パラメータの調整によっては、図82に示すような色味のカラー合成画像を得ることもできる。このようにユーザは、観察の用途や嗜好等に応じて、自由にカラー合成画像を生成できる。
また、画像合成の元となる光学画像は、一般的な8ビット階調のカラー画像の他、ハイダイナミックレンジ画像(High Dynamic Range Image:以下「HDR画像」という。)のような16ビット等の多階調画像を利用することもできる。さらに、複数の光学画像から、フォーカスの合う部分の画像のみを取り出して合成したフォーカス合成画像を利用して、画像合成を行うことも可能である。ここでHDR画像とは、輝度領域のダイナミックレンジを変更して撮像した複数の低階調画像を合成し、高階調画像としたものである。HDR画像は、同一の被写体で露出が異なる複数の画像を合成したものであり、最も暗いシャドウ(黒)から極めて明るいハイライト(白)まで、幅広いダイナミックレンジを有する。例えば複数の8ビット画像を合成して16ビットや32ビットといった高階調のHDR画像を生成し、保存する。これにより、原画像で白とび、黒つぶれしていた部分もはっきりと表現できる。加えて、HDR画像として光学画像に限らず、電子顕微鏡画像を用いてもよい。例えば、複数枚の電子顕微鏡画像をゲインを制御して撮像し、合成したHDR画像を、カラー合成画像で用いる電子顕微鏡画像として利用することもできる。
このように、カラー合成画像生成機能で得られる合成画像は、従来のような、単に光学画像から得た色情報と、電子顕微鏡画像から得た輝度情報を合成するのでなく、光学画像からも輝度情報、すなわちテクスチャ成分と概形成分を得て、さらにこれらの合成比率を調整可能とすることで、観察目的に応じた最適なカラー合成画像を生成できる。
(位置合わせ機能)
さらに、このような画像合成に際しての、同一の試料を同一の視野、同一の倍率で撮像した電子顕微鏡画像と光学画像との位置合わせ作業は、演算処理により自動位置合わせ手段324等で自動で行わせる他、ユーザが手動で調整することも可能である。特に、電子顕微鏡画像と光学画像では、レンズ収差による歪み等、画像特性が大きく異なるため、テンプレートマッチング等を用いた自動位置合わせは必ずしも容易でない。このため、ユーザが手動で位置合わせを行うことによって、画像同士の位置ずれを低減して、より高精細で高品質な合成画像を得ることができる。具体的には光学画像、電子顕微鏡画像をそれぞれ表示手段2上に表示させた状態で、ユーザが対応点を指定することで位置ずれを補正する。また表示手段2上には補正された合成画像も併せて表示することで、ユーザは所望の結果が得られているかどうか目視確認しながら、対応点の追加や変更を行うことができる。さらに対応点を指定する際には、両画像を重畳表示させることで、対応箇所の詳細な位置関係をユーザが視認できるようにする。
このような位置合わせ作業を、図89〜図93に基づいて説明する。これらの図において、図89は位置合わせ作業を行うハードウエア構成を示す模式ブロック図、図90は表示手段2の第一表示領域、第二表示領域において位置合わせを行う状態を示すイメージ図、図91は対応点編集機能を備える拡大観察用プログラムのGUIのイメージ図、図92は位置合わせによる合成画像の補正の前後の様子を示すイメージ図、図93は対応点による補正の手順を示すフローチャートを、それぞれ示している。
図89に示すように、位置合わせ機能を備える拡大観察装置は、電子顕微鏡画像を保持する第一記憶手段131と、光学画像を保持する第二記憶手段132と(これらの詳細は図133に基づいて後述)、画像合成手段116と、画像の位置合わせを自動で行うための自動位置合わせ手段324と、補正パラメータ算出手段181とをコントローラ1に備えている。また操作手段は、対応点指定手段180を含んでいる。さらに表示手段2は、図89及び図90に示すように、電子顕微鏡画像を表示させる第一表示領域(この例では電子顕微鏡画像表示領域117)と、光学画像を表示させる第二表示領域(この例では光学画像表示領域118)と、合成画像を表示させる第三表示領域108とを有している。
(対応点指定手段180)
対応点指定手段180は、電子顕微鏡画像と光学画像に、第一対応点と第二対応点を指定する。この対応点指定手段180には、マウス等のポインティングデバイスが好適に利用できる。図90においては、拡大観察用プログラムでポインティングデバイスを対応点指定手段180として利用し、対応点を指定する様子を示している。具体的には、先ず第二表示領域に表示される光学画像中で、任意の点を選択して第一対応点を決定する。次に、この第一対応点に対応する第二対応点を、第一表示領域に表示される電子顕微鏡画像中で指定する。すなわちユーザは、光学画像上で指定した第一対応点に対応する同じ位置を、電子顕微鏡画像上から特定し、第二対応点として決定する。対応点は、観察対象物の特徴的な位置とすることが好ましい。例えば試料の角部や輪郭等である。
ここで第一表示領域及び第二表示領域には、略同一の視野方向と略同一の倍率で取得した電子顕微鏡画像と光学画像とを、それぞれ表示させている。画像合成の元となる電子顕微鏡画像と光学画像の組み合わせとして、重ね合わせが概ね可能な程度、すなわち完全に一致できなくとも、ほぼ同じ視野角度で同じ倍率に設定した画像を、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とでそれぞれ取得しておくことで、高精度な合成画像を得ることができる。
なお、略同一の視野方向とは、視野範囲が一致する画像を必ずしも要するものでない。すなわち、重ね合わせができる程度に視野方向が一致しておれば足り、例えば画像が若干傾いていたり回転していても、あるいは視野そのものが狭くとも、重ね合わせできる程度に共通する画像が含まれていれば、この重なり合う領域において画像合成は可能である。
第一対応点と第二対応点の組すなわち対応点群は、複数指定することが好ましい。対応点群が多いほど、後述する位置合わせにおける情報量が多くなり、より正確な位置合わせが期待できる。なお、複数の対応点を指定するに際しては、第一対応点と第二対応点とを交互に指定する手法に限られず、纏めて第一対応点を複数指定した後に、各第一対応点と対応する第二対応点を指定してもよい。
このようにして対応点群が複数指定されると、補正パラメータ算出手段181が、複数の第一対応点と第二対応点の組を、各々略一致させるように画像の少なくとも一方を補正するための補正パラメータを算出する。補正パラメータとしては、例えば一方の画像の第一対応点を他方の画像の第二対応点と重ねるように、画像の平行移動、拡大/縮小、回転、奥行き移動等が挙げられる。これらの補正は、対応点群の数によって選択できる。例えば、対応点群が1個の場合、対応点同士が一致するように画像の平行移動を行う。
また対応点群が2個の場合は平行移動に加えて、倍率の調整が可能となる。2つの第一対応点間の線分距離と、第二対応点間の線分距離をそれぞれ求め、これらの線分が一致するように一方の画像を拡大、縮小することで、倍率を加味した画像同士の重ね合わせが実現できる。
さらに対応点群が3個の場合は、これら平行移動と倍率調整に加え、回転移動も可能となる。すなわち、3つの第一対応点で構成される三角形と、同じく3つの第二対応点で構成される三角形が完全に一致するように、アフィン変換等を用いて倍率の調整と回転を行うことが可能となる。
加えて対応点群が4個の場合は、これらに加えて奥行きの移動も可能となる。すなわち、2次元画像の平面的な一致に加え、奥行きを加味した画像の変形も可能となり、より正確な補正が期待できる。また5点以上の場合は、これ以上の補正パラメータを追加しないものの、対応点同士を一致させるよう変形させることから、各対応点の誤差が平均化されて一層正確な位置決めが期待できる。また各対応点は、完全に一致させる必要はなく、ある程度の誤差を許容するよう補正する。例えば、最小二乗法のような既知のアルゴリズムに従って、各対応点における一致位置からの誤差の低減又は最小化を行う。
また、すべての対応点を一度に指定する必要はなく、一旦ある程度の数の対応点を指定して合成画像を補正した後、さらに対応点を追加して、再度合成画像を補正することもできる。さらにこの際、単に対応点を追加するのみならず、指定済みの対応点の位置を変更したり、あるいは特定の対応点を削除してもよい。図91に示す拡大観察用プログラムのユーザーインターフェース画面は、このような対応点の編集機能を実現する対応点編集手段を示している。具体的には、Addボタン182を押下すると、対応点の追加が可能となる。またRemoveボタン183を押下すると、指定済みの対応点の削除が可能となる。例えば削除したい対応点を予めマウス等で選択しておき、Removeボタン183を押下してこの対応点と、該対応点と対になっている対応点を共に削除する。さらにModifyボタン184を押下すれば、指定済みの対応点の位置を修正できる。例えば修正したい対応点を予めマウス等で選択しておき、Modifyボタン184を押下すると、この対応点をマウス操作によって移動可能とできる。また、このようなボタン操作によらず、例えば所望の対応点をマウスでダブルクリックして移動可能な状態に移行させたり、あるいは対応点をマウスで選択した状態でキーボードのdeleteボタン(図示せず)を押下したり、あるいは右クリック等のショートカットメニューから削除を呼び出す等の方法で、対応点を編集するよう構成してもよい。さらに図91の画面は、画面のズームを行うためのズーム手段185や、後述する重畳表示時の半透明画像の透過度を調整する透過度調整手段186を構成する透過度スライダも備えている。
以上のようにして補正パラメータ算出手段181が補正パラメータを演算すると、画像合成手段116がこの補正パラメータに基づいて画像合成を行う、あるいは既に行った画像合成を補正して、新たな合成画像を生成する。画像合成手段116により合成された合成画像は、第三表示領域108に表示される。図90の例では、表示手段2は、第一表示領域と第二表示領域とを横並びに表示し、その下段に第三表示領域108を配置している。この例では、各表示領域の大きさをほぼ同じとしており、同じスケールにて合成前の電子顕微鏡画像、光学画像、及び合成後の合成画像を一画面で確認、対比できる。
またこのとき、合成画像は第三表示領域108上で、対応点指定手段180により追加の対応点が指定される度にリアルタイムに表示される。この結果、同一画面上で対応点を指定、追加する度に合成画像が更新され、ユーザは逐次対応点を指定した結果が反映された合成画像を確認できるので、対応点の指定や修正、削除等を容易に行える。
以上のようにして既に得られた合成画像を補正し、新たな合成画像を生成して第三表示領域108に表示させることができる。例えば図92の例では、図92(a)に示す合成画像を補正して、図92(b)に示す新たな合成画像を得ている。このような補正によって、補正前の画像にみられたぼけや歪みを低減した、鮮明な合成画像に修正できる。
(初期合成画像)
なお、画像合成における位置合わせ作業は、常にユーザが手動で行う他、自動化と併用することもできる。例えば、先ず位置合わせを自動位置合わせ手段324により自動で行い、その後さらにマニュアル調整をすることが考えられる。この方法であれば、デフォルトで自動生成された画像合成をユーザが確認して、必要に応じて位置合わせの調整作業を追加する手順となるため、仮に調整作業が必要としても、ある程度の位置決めが行われた状態で、ユーザは微調整のみを行えば足りるので、省力化の面から好ましい。具体的には、補正パラメータ算出手段181又は画像合成手段116で、電子顕微鏡画像及び光学画像を解析して、これらを一致させるように画像合成のための初期パラメータを自動的に演算させ、この初期パラメータに基づいて画像合成を行い、初期合成画像を表示手段2の第三表示領域108上に表示させる。そしてユーザは、初期合成画像を見て、更なる調整が必要と判断すれば、上述の通り対応点指定手段180で対応点を追加し、新たに補正パラメータ算出手段181で補正パラメータを演算させ、これに基づいて画像合成手段116で初期合成画像を補正して、補正後の合成画像を第三表示領域108上に表示させる。この方法であれば、まず初期画像合成を自動で行うことによって、この初期合成画像で足りるのであればユーザにより位置合わせ作業は不要となり、省力化が図られると共に、必要に応じて画像の微調整も可能とすることで、観察目的に応じた合成画像を少ない手間で得ることができる。
(対応点の補正の手順)
次に、対応点編集機能を利用して対応点を補正する手順を図93のフローチャートに基づいて説明する。まずステップS931で、既に指定されている対応点群から、補正パラメータ算出手段181が補正パラメータを計算する。上述の通り、補正パラメータとしては画像の平行移動、拡大/縮小、回転、奥行き移動等が挙げられる。次にステップS932に進み、この補正パラメータに従って画像合成手段116で合成した合成画像を第三表示領域108に表示させ、この補正結果が妥当かどうかを判定する。ここではユーザが目視により、所望の合成画像が得られているかどうかを判断し、正しいと判断した場合は補正結果を出力して終了する。一方、補正結果が妥当でないと判断された場合はステップS933に進み、対応点を追加するかどうかを判断する。追加する場合はステップS934−1に進み、一方の画像上で対応点Aを指定し、次いでステップS935で他方の画像上で、対応点Aと対応する対応点Bを指定する。そしてステップS936で対応点群を更新し、ステップS931に戻って再度補正パラメータを演算する処理を繰り返す。一方、ステップS933において対応点を追加しない場合はステップS934−2に進み、既に指定された対応点を変更又は削除する処理を行うため、該当する対応点を指定する。その後はステップS936に進み、以下は同様の処理を行う。このようにして、ユーザは対応点編集機能を利用して、合成画像を確認しながら対応点を追加、編集する作業を繰り返すという試行錯誤を経て、画像の位置ずれを補正して最終的にユーザが望む合成画像を得ることができる。
(対応点の対応点表示機能)
対応点群は、どの第一対応点と第二対応点とが対応しているかを示すように、対応点表示機能を備えている。例えば、対応点群に固有の対応点情報が付与され、この対応点情報に従って、対応点表示が行われる。対応点情報としては、例えば各対応点群に対して、指定された順に連番やIDを付与する。図90の例では、図において左側の第二表示領域に表示される光学画像上に、3つの第一対応点1〜3が指定されており、各第一対応点はそれぞれ、その位置を示すX印の近傍に、対応点情報として指定された順番に付与された番号が表示されている。また、図において右側の第一表示領域に表示される電子顕微鏡画像上には、これら3つの第一対応点1〜3と対応して指定された第二対応点1〜3が、同じくX印の近傍に、対応点情報である番号と共に表示されている。このような対応関係によって、ユーザはどの第一対応点がどの第二対応点に対応しているかを容易に区別できる。また対応点表示の例は数字に限られず、英文字や記号等を単独、或いは組み合わせて使用することもできる。また、色や線種のパターン、ハッチング、太さ等、視覚的に区別可能な装飾を適宜利用できる。
さらに各対応点は、指定済みの対応点と、現在選択中の対応点とを区別して表示させることもできる。図90の例では、指定済みの対応点を緑色で表示し、選択中の対応点は赤色で表示している。すなわち図90では、赤色で表示された第一対応点と対応する第二対応点を指定中の様子を示している。また、対応点を区別する態様は、色の違いによる他、上述の通りパターンや点滅表示、グレーアウト表示等、既知の表示態様を適宜利用できることは言うまでもない。このようにして、指定済みの対応点と指定中の対応点とをユーザは視覚的に区別でき、新たな対応点の指定に際して既存の対応点との混同を避けることができる。
(重畳表示機能)
さらにまた、対応点指定の際、両画像を重畳して表示する重畳表示機能を備えることで、対応箇所の詳細な位置関係をユーザが視認することもできる。具体的には、対応点指定手段180が、表示手段2上で対応点を指定するための位置指定ポインタを表示させている。位置指定ポインタは、例えばマウスのカーソルやポインタが利用できる。そして対応点指定手段180で、一方の画像上で第一対応点を指定した後から、他方の画像上で第二対応点が指定されるまでの間、一方の画像を半透明にした半透明画像を、位置指定ポインタに追随させて表示させる。図90の例では、上述の通り光学画像上に指定された4番目の第一対応点4に対応する第二対応点を、電子顕微鏡画像上に指定するにあたり、光学画像の半透明画像を、第二表示領域に重ねて表示している。この半透明画像は、位置指定ポインタの先端に、指定済みの第一対応点が位置するように表示されている。そして、対応点指定手段180で位置指定ポインタの位置を動かすと、これに追随して半透明画像もリアルタイムに移動する。この結果、第二表示領域の電子顕微鏡画像上で、第一対応点と同じ位置に位置指定ポインタを位置させようとすると、この位置指定ポインタに従って移動する半透明画像は、指定済みの第一対応点と重なる位置にて、電子顕微鏡画像と重なって表示される。言い換えると、電子顕微鏡画像上で、半透明の光学画像がほぼ一致する姿勢で表示されることとなるため、ユーザは可能な限り両画像が一致する位置に、第二対応点を指定するよう微調整できる。このようにすることで、第一対応点と対応する位置に第二対応点を正確に位置決めする作業を、ユーザはリアルタイムに重なり具合を確認しながら行うことができ、位置ずれの調整作業を極めて便利にかつ簡単に行える利点が得られる。
加えて、第二対応点を指定すると、これに応じて第三表示領域108上に合成画像を更新することにより、第二対応点の位置指定が妥当であったかどうかをユーザは直ちに確認できるため、この点においても即時性に優れた操作し易い位置決め環境が実現される。
なお、半透明画像の透過度は、ユーザが調整可能としてもよい。これにより、観察対象の画像の状態、例えば表面模様の複雑さや色等に応じて、見易くなるように透過度を調整でき、画像同士の重なり具合の確認が容易になる。透過度の調整は、例えば図91に示すダイヤログで透過度調整手段186の透過度スライダを調整することにより行える。またこのようなソフトウエア的な調整に限られず、マウスのスクロールボタンに割り当てる等、ハードウエア的な操作摘みにて調整することもできる。
(不適対応点の警告機能)
さらに、対応点として不適切な位置、具体的には画像合成ができない位置が指定された場合に、その旨をユーザに告知して画像構成を行わなくしたり、あるいは対応点として不適切な点が指定されようとした場合に、警告を発して対応点の指定そのものができないようにすることもできる。このような不適対応点の警告機能は、例えば警告ダイヤログを表示手段2上に表示したり、警告音を発したり、音声で「その位置では設定できません」等と案内を流したり、位置指定ポインタや対応点表示の色を赤色に変化させる等、ユーザに対して視覚的、音声的な手段で注意を促す態様が適宜利用できる。また、このような不適対応点かどうかの判断は、補正パラメータ算出手段181や画像合成手段116で行わせることができる。この警告機能によって、ユーザは正しい対応点の再設定等を促されるので、画像合成の失敗を回避できる。
なお図90に示すように、第一表示領域、第二表示領域、第三表示領域108は、一画面上で同時に表示させている。ただし、各表示領域を別画面で表示させたり、あるいは個別のウィンドウで表示させる等して、表示を切り替えることも可能である。また第一表示領域、第二表示領域、第三表示領域108のレイアウトも、図90の例に限られず、上下や左右に3つの表示領域を並べたり、第三表示領域108を小さくして表示させることも可能である。
また上述の例では、第一対応点を指定後に第二対応点を指定する例について説明したが、逆に第二対応点を先に指定して、その後第一対応点を指定する構成とすることもできる。例えば、後述する図125等に示すように光学画像上で第一対応点を指定後、電子顕微鏡画像上で第二対応点を指定し、続けて電子顕微鏡画像上で対応点を指定後、光学画像上で対応点を指定するという順序でもよい。また、後から指定する対応点の選択時に、半透明画像を重ねて表示するので、先に電子顕微鏡画像上で対応点を指定した場合は、光学画像上での対応点指定時に、電子顕微鏡画像の半透明画像が表示されることとなる。
なお、以上説明した手動による位置合わせ機能は、上述した光学画像の輝度情報を利用したカラー合成画像の生成に限らず、従来の画像合成や対比観察等においても利用可能である。すなわち、従来から利用されている画像合成として、例えば光学画像から得た色情報と、電子顕微鏡画像から得た輝度情報を、各座標のピクセルごとに合成する方法、あるいは電子顕微鏡画像から画像の輪郭情報を抽出し、光学画像を重ねて、上記輪郭内の代表色を光学画像から抽出し、輪郭内の範囲を代表色で塗り潰す方法においても利用できる。この方法では、微視的には忠実な色再現はできないが、元画像2枚の誤差で、観察対象物が完全に合致しない場合は、観察対象物の輪郭から色がはみ出ることなく合成できる。また、濃淡画像である電子顕微鏡画像を基準とし、この上に光学画像に基づいてユーザが手動で、あるいは自動で着色する方法でもカラー画像を合成できる。この場合は、電子顕微鏡画像状の着色すべき部位と対応する、光学画像上の部位の色情報を取得して、この色に着色する。また、ユーザが手動で指定する場合は、例えば光学画像上でスポイト状に色を含む位置を指定して、色情報を取得することができる。あるいはまた、例えば特許文献3に記載されるように、画像合成手段で、電子顕微鏡画像をコントラスト情報像とブライトネス情報像に分離して、コントラスト情報像のみを抽出し、更にカラーの光学画像をコントラスト情報像と色彩情報像に分離して、色彩情報像のみを抽出し、抽出されたコントラスト情報像からなる電子顕微鏡画像と色彩情報像からなる光学画像とを合成できる。あるいは、日本電子顕微鏡学会第52回学術講演会予稿集第153頁に掲載される方法が利用できる。
なお画像合成に際しては、電子顕微鏡画像の倍率と光学画像の2枚(又はそれ以上)の倍率は、同じに設定することが望ましい。この場合は、一般に光学系撮像手段12の最大倍率が電子線撮像手段11の最大倍率よりも低いことから、合成画像を得られる倍率範囲が光学倍率範囲に制限されることとなる。ただ、必ずしも同じ倍率でなくとも画像合成を利用できる。例えば光学画像をデジタルズーム等により仮想的に高倍率に拡大したり、電子顕微鏡画像を光学画像の倍率に縮小すること等により、双方の倍率を略一致させることができる。このように電子顕微鏡画像に色情報を付加するという観点からは、電子顕微鏡画像上の対応する部位の色情報が取得できる程度の鮮明さを持った光学画像であれば利用できる。もちろん、表示サイズが近い程、より鮮明で高精細な合成画像の作成に有利となるので好ましい。
ここで、光学画像は顕微鏡画像と同時に撮像されたものに限られず、異なるタイミングで予め取得した光学画像の画像ファイルを読み込んで着色処理に利用することもできる。
なお比較モードと合成モードのファイル形式は、光学系撮像手段12で取得した光学画像ファイル、電子線撮像手段11で取得した電子顕微鏡画像ファイル、及び合成後の画像ファイル共に、ビットマップ形式やjpg等、汎用的な画像ファイル形式が好適に利用できる。
(比較モード)
一方、比較モードは比較観察のための観察モードであり、表示手段2で電子顕微鏡画像と光学画像とを同時に、あるいは切り替えて表示する。このため表示手段2のディスプレイ部102を二画面に分割して、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118を設けてもよい。図94に、表示手段2の表示例を示す。この図では、表示手段2を左右に二分割し、左側に光学画像を、右側に電子顕微鏡画像を表示している。各画像の左上には、各々の基準に従った固有の倍率が表示されている。
本実施の形態においては、SEM等の電子線撮像手段11とデジタルマイクロスコープ等の光学系撮像手段12の2つの観察手段を備えた装置で、両方の観察手段で同一視野範囲の観察が容易にできるように、両方の観察手段で同じ倍率、同じ視野範囲となるように、倍率を定義する。例えば一方の観察手段での観察像を撮像又は保存したときの倍率を、ユーザが他方の観察手段でも設定できるように、他方の観察手段の倍率に換算した換算倍率を表示手段2上に表示する。あるいは、観察手段が自動的に他方の観察手段の倍率を同一基準の倍率に設定するように制御させてもよい。なお倍率の統一は、いずれか一方の観察手段に合わせる他、これらと異なる基準で新たに定義された倍率を用いてもよい。
次に、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12で、同一の位置、同一の傾斜角度から、同一の視野範囲の画像を取得する動作の流れを説明する。まず光学系撮像手段12において、光学ズームレンズで観察視野範囲を設定する。具体的にはユーザが、光学ズームレンズに搭載されている光学ズーム倍率調整機構であるズームリング113を回転させて光学倍率を調整する。次に光学系撮像手段12で光学画像を撮像する。
一方で光学倍率読取手段112で、光学ズームレンズのズームリング113の回転位置を読み出す。読み出した回転位置を倍率換算手段111に送出することで、対応する光学倍率を倍率換算手段111により算出する。
ここで撮像手段を、光学系撮像手段12から電子線撮像手段11に切り替える。具体的には、光学系撮像手段12の光学ズームレンズ鏡筒の位置に、電子線撮像手段11の電子レンズ鏡筒を回動手段30で移動させる。また必要に応じて表示切替手段36を操作し、表示内容や操作系を切り替える。
次に、一方の観察手段の倍率を拡大観察装置が内部的に認識して、自動的に他方の観察手段の倍率を制御する例では、電子顕微鏡倍率調整手段68は電子線偏向走査手段制御部55に送る偏向量を自動的に計算する。さらに電子レンズ鏡筒で、光学系撮像手段12と同じ視野範囲を自動的に観察する。
一方、光学倍率読取手段を備えない等、表示手段2上に表示された一方の観察手段の倍率を見て、ユーザ自身が他方の観察手段の倍率を設定する場合についても説明する。まず表示手段2上に表示された光学系撮像手段12の倍率を確認する。そして表示された倍率を見て、電子顕微鏡倍率調整手段68にて、電子顕微鏡倍率を設定する。電子顕微鏡倍率調整手段68は、電子線偏向走査手段制御部55に送出すべき偏向量を計算する。これにより、電子線撮像手段11で光学系撮像手段12と同じ視野範囲を観察できる。
以上のようにして、同一表示サイズの光学画像及び電子顕微鏡画像を取得できる。なお上記の例では、先に光学画像を撮像した上で電子顕微鏡画像を撮像している。これは光学系撮像手段12ではカラー画像が取得できる反面、電子線撮像手段11よりも最大倍率が一般に低いため、まず低倍率で観察視野を決定した後、より高倍率の電子線撮像手段11に切り替えて拡大画像を取得するためである。ただ、観察手段の使用順序はこれに限定されるものでなく、逆に電子顕微鏡画像を先に取得した上で、光学画像を後から取得する手順においても本発明を利用できることは言うまでもない。次に、このような手順の例を説明する。
まず、電子レンズ鏡筒で観察視野範囲を設定する。具体的には、電子顕微鏡倍率調整手段68で倍率を設定して、電子顕微鏡画像を撮像する。一方で電子顕微鏡倍率読み取り手段により、撮像した電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率を算出する。
次に、観察像を電子線撮像手段11から光学系撮像手段12に切り替える。具体的には、電子レンズ鏡筒の位置に光学ズームレンズを回動手段30で移動させる。
ここで、一方の観察手段の倍率を拡大観察装置が内部的に認識して、自動的に他方の観察手段の倍率を制御する場合は、コントローラ1の倍率換算手段111は同一表示サイズとなるよう光学画像の換算倍率を演算する。例えば光学系撮像手段12が電動式の光学倍率読取手段112を備えている場合は、該光学倍率調整手段95に送出する回転信号を計算する。これに従い、光学系撮像手段12で電子線撮像手段11と同じ視野範囲を観察できる。
また一方で、表示手段2上に表示された一方の観察手段の倍率を見て、ユーザ自身が他方の観察手段の倍率を設定する例では、表示手段2上に表示された電子顕微鏡倍率を確認する。次に表示された倍率とるように、ズームリング113にて、光学ズームレンズの倍率を設定する。さらに電子レンズ鏡筒で光学系撮像手段12と同じ視野範囲を観察する。
なお表示手段2上に表示される、光学倍率と電子顕微鏡倍率は、いずれか一方のみを表示させてもいいし、両方の倍率を表示させてもよい。またこれらの倍率を常時表示させる他、画像撮像時や倍率変更時等必要なタイミングでのみ表示させてもよい。
(リアルタイム観察)
さらにこの拡大観察装置は、観察手段でリアルタイムに画像を簡易的に取得し、表示手段2に表示される画像を逐次更新するリアルタイム観察(ライブ画像又は動画ともいう)と、所望の視野にて高精細な画像を撮像し、得られた高精細画像を表示する撮像(静止画ともいう)を切り替え可能としている。
拡大観察装置は、観察手段でリアルタイムに画像を簡易的に取得し、表示手段2に表示される画像を逐次更新する。この状態では、視野や像観察条件の変更に応じて表示手段2の表示内容が変化するため、便宜的に動画表示と呼ぶ。そしてユーザが所望の視野、像観察条件に調整して高精細な画像を撮像すると、得られた高精細画像が表示手段2上に表示される。この状態では、表示手段2の表示内容は更新されない静止画表示となる。動画表示と静止画表示は、適宜切り替えることが可能である。
(簡易画像)
なお、リアルタイム観察において表示手段2で表示される画像を逐次更新する場合は、画像取得に要する時間を短縮化するため、撮像を簡易的に行う簡易画像を取得、表示する。簡易画像を得るには、例えば撮像時のフレームレートを上げることが挙げられる。通常、電子線撮像手段11で高精細な画像を描画するには、一画像あたり30秒〜1分間必要になる。さらに一枚の画像ではS/N比が悪いため、通常の撮像時には一画像1/4秒程度のフレームレートで10画像以上取得して、平均をかけて表示している。したがって、一画像を得るには2秒以上かかることになる。印刷用の詳細な観察像に至っては30秒以上かかることもある。そこで本実施の形態では、平均をかける枚数を8枚や4枚に少なくしたり、試料に対する電子線の走査範囲を狭くする等の制限をかけたり、走査を間引く等の処理によってフレームレートを上げて、画像を取得するまでの時間を短縮している。
(状態表示手段121)
また表示手段2上に、動画表示と静止画表示のいずれの状態であるかを区別するための状態表示手段121を設けてもよい。例えば動画表示から静止画表示に切り替わると、倍率を点滅表示させることで、ユーザは現在の状態が動画表示か静止画表示のいずれであるかを視覚的に容易に区別できる。また図95に示すように、テキスト表示で「動画」、「静止画」等と表示させてもよい。この方法であれば拡大観察装置の操作に詳しくない初心者ユーザでも混乱無く状態を判別できる。
また、高精細画像の撮像有無に拘わらず、現在選択中の観察手段で取得した画像を動画表示とし、非選択の観察手段に関しては静止画表示とすることもできる。静止画表示される画像は、観察手段をOFF又は切り替える時点で取得した画像、すなわち該観察手段で最後に取得した画像等をメモリで保持して表示させることができる。この構成は、複数の観察手段を同時に使用できない、いずれか選択した観察手段のみを操作可能な場合には好適となる。特に、複数の観察手段で取得した画像を一画面で同時に表示する場合は、動画表示されている画像が現在選択されていること、及び静止画表示されている画像が現在非選択であること、を把握できる。例えば図94の例では、表示手段2の左側に表示される光学画像が動画表示されており、右側に表示される電子顕微鏡画像が静止画表示されている。このため、現在操作可能な観察手段がいずれであるかを、速やかに把握できる。
なお光学系撮像手段と電子線撮像手段の両方の画像を、同時に動画として表示させてもよい。この場合、光学系撮像手段又は電子線撮像手段のいずれか一方の拡大倍率を変化させたとき、その倍率変化に連動させて、他方の電子線撮像手段又は光学系撮像手段の倍率を変更させることもできる。
(非選択表示手段122)
また非選択の観察手段については、表示手段2上で表示されている画像を選択できないことを示す非選択表示手段122を設けてもよい。例えば、非選択の観察手段に関する画像を、表示手段2上でグレーアウトさせたり、網掛けで表示させたり、鍵等のアイコンやマークを表示させる等により、現在は該画像を操作できないことをユーザに視覚的に示すことができる。またこのような非選択表示は、観察手段を切り替えて選択状態とすることで自動的に解除される。これにより、いずれか一の観察手段のみを操作可能な態様においては、非選択の観察手段に関する画像の操作ができないことでユーザが混乱しないよう、告知することができるので、操作性が向上する。
また一方の観察手段で画像を撮影した後、他方の観察手段に切り替える際、元の観察手段で撮影した画像は静止画として表示し続けても良いし、表示をOFFとすることもできる。本実施の形態では、表示手段2の画面を2分割して、一方が観察中(動画)の際は、他方の画像は観察手段を切り替えた時点での静止画を表示するように構成している。これにより、観察手段を切り替えて、画像のデータ処理等の負荷を軽減し効率よく操作できる。ただ、両方の画像を常時動画として表示し続けるよう構成してもよいことはいうまでもない。
(換算倍率表示手段123)
表示手段2上には、現在表示されている画像の倍率が表示される。動画表示においては、その時点で表示中の画像のリアルタイムの倍率を、また静止画表示においては表示中の静止画の倍率を、各々表示する。さらに換算倍率表示手段123として、表示中の画像の倍率決定基準に従って、該画像を取得した観察手段と異なる観察手段で画像を取得する場合の倍率に換算した倍率を表示することもできる。また、他方の観察手段での倍率決定基準に従って倍率を換算したり、別の基準を用いて倍率を決定してもよい。すなわち、異なる観察手段で取得した画像を統一的な倍率で表示させるものである。また換算倍率表示手段123は、固有の倍率と換算倍率を併記して表示させることもできる。さらに換算倍率表示手段123は、換算倍率に一方の観察手段を設定不可能な場合は、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を表示することもできる。
(予定倍率表示手段124)
さらに、現在表示中の画像の倍率表示に加え、将来適用される倍率を表示する予定倍率表示手段124を設けてもよい。例えば、比較観察においては異なる観察手段で同一表示サイズの画像を取得する必要がある。このため、一方の画像で設定された倍率と同一の換算倍率で、他方の観察手段の画像を手動で、あるいは自動的に取得するための、目標となる倍率を予定倍率として、表示手段2上に表示させる。この例を図95に基づいて説明する。
この図では、図94と同様、表示手段2を左右に二分割し、左側の光学画像表示領域118に動画表示で光学画像を、右側の電子顕微鏡画像表示領域117に静止画表示で電子顕微鏡画像を、各々固有の倍率と共に表示している。図95の例では、さらに静止画である電子顕微鏡画像に、予定倍率表示手段124を付加している。すなわち、動画表示された光学画像の倍率(図95では800倍)と、同一の換算倍率(800倍)を予定倍率として、電子顕微鏡画像表示領域117の右上に設けた予定倍率表示手段124に表示している。ユーザは、観察手段10を光学系撮像手段12から電子線撮像手段11に切り替えた後、この予定倍率となるよう、電子顕微鏡画像の撮像条件を設定、撮像を行う。あるいは、後述するように自動で撮像条件を設定したり、さらには撮像や表示、保存等も適宜自動化することもできる。
(倍率判定手段119)
さらに拡大観察装置は、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを同一の換算倍率に設定できるかどうかを判定する倍率判定手段119を備えることができる。倍率判定手段119は、例えば倍率換算手段111に実現させる。本実施の形態では、倍率換算手段111を構成するMPUが倍率判定手段119の機能も果たす。例えば、光学倍率調整手段95で調整可能な光学倍率範囲と電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な電子顕微鏡倍率範囲とが、換算倍率において重複している場合は、同一表示サイズで表示させることができ、比較観察に有利となる。この場合に倍率判定手段119が、現在動画表示で観察中の画像に設定された倍率に、他方の観察手段を換算倍率で設定可能かどうかを判定し、その判定結果を判定告知手段125で告知する。
(判定告知手段125)
例えば他方の観察手段で設定可能な場合に、該他方の観察手段の表示領域において、「OK」や「○」といった文字、記号等を表示したり、図95に示すように予定倍率表示手段124の枠を太線で表示したり、二重枠やハイライト、点滅表示等を単独、組み合わせて使用したり、あるいは一方の動画表示された表示領域において倍率を青色で表示、あるいは倍率の背景を青色に着色することができる。これによりユーザは、同一表示サイズでの観察が可能であることを容易に把握できるので、観察手段を切り替えた後、該倍率での観察を行えるように設定作業等を進めることができる。
さらに判定告知手段125は、一方の観察手段で観察中に、同じ表示サイズとなる換算倍率に他方の観察手段の倍率を設定することが不可能と判定された場合に、設定不可能な旨を表示する警告機能を備えることもできる。具体的には、倍率判定手段119による判定結果が、倍率設定不可能であった場合に、該他方の観察手段の表示領域において、換算倍率表示手段123を赤色で表示したり、「×」や「−」、「倍率設定不可」等の文字や記号を表示したり、警告音を発したり、表示領域自体をグレーアウトや網掛けで表示したり、選択不可能とする。このようにしてユーザは、倍率を変更している内に、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を外れてしまっても、同一表示サイズでの観察が不可能となったことを認識できるので、設定可能な判定結果が得られるよう他の倍率に変更する等の対応を採ることができる。このように判定告知手段125は、倍率判定手段119の判定結果に応じて他の表示と区別できる各種の装飾方法が適宜利用できる。また、上述した図76に示すゲージ状の倍率範囲表示手段126と併用することで、現在の倍率が重複範囲に対してどの位置にあるかを視覚的に把握できるので、一層好ましい。
(誘導手段120)
さらに他方の観察手段を換算倍率に設定することが不可能と判定された場合に、設定可能な倍率に変更するよう促す誘導手段120を備えることもできる。例えば、メッセージ表示や音声ガイダンスを用いて、ユーザに対して双方の観察手段で設定可能な倍率に変更するように、倍率変更操作を促す。また誘導すべき内容は、単に倍率を表示する他、該倍率に設定するために必要な操作やパラメータ設定まで指示することもできる。この方法は、特に倍率設定のための操作に不慣れな初心者ユーザに対して有効となる。
また倍率判定手段119で倍率設定不可能と判定された場合に、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を換算倍率表示手段123に表示させることもできる。この場合、換算倍率表示手段123は、設定可能と判定した場合はそのまま換算倍率を表示し、設定不可能と判定した場合は、設定可能な近い倍率を、各々表示する。さらに、単に倍率を表示するのみに止まらず、換算倍率表示手段123で表示する換算倍率に、観察手段の倍率調整手段を設定したり、画像の取得、保存等を自動的に行うよう構成してもよい。例えば、観察手段を切り替えるタイミングで、これをトリガとして倍率設定を実行する。このような自動化によって、比較観察や画像合成に際してユーザの設定作業を省力化した使い易い拡大観察装置が実現できる。
なお、上記の例では換算倍率表示手段が、換算倍率を表示手段上に表示させているが、換算倍率の表示は、ON/OFFすなわち表示状態と非表示状態とを切り替えることも可能である。また換算倍率の表示をしない場合でも、表示倍率を設定可能な一番近い倍率として自動的に表示させることが可能である。
また予定倍率表示手段124には、観察手段を切り替えた際に適用される、あるいは適用すべき倍率が常に表示されている。なお図95の例では、静止画表示される表示領域のみに予定倍率表示手段124を設けているが、これに限らず、例えば動画表示される表示領域にも予定倍率表示手段を設けてもよい。この場合は、換算倍率表示手段と同じ倍率が予定倍率表示手段に表示されることになる。
いずれの倍率基準に合致させるかは、先に使用した観察手段の基準を用いることが好ましい。一般には上述の通り、まず光学画像を用いて広視野範囲の中から目標を定め、電子顕微鏡画像で精細な情報を得ることが多い。このため光学画像の基準に合わせて、倍率を統一的に表示することで、ユーザは混乱無く同一表示サイズの画像を統一された倍率表示にて取得できる。勿論、ユーザが指定した観察手段の基準を利用したり、他の基準を利用することも可能であることは言うまでもない。
(判定告知手段125が警告を発するタイミング)
また、判定告知手段125がユーザに対して警告や確認を発するタイミングは、観察中常時、すなわち画像の倍率が重複範囲を外れた時点で速やかに行う他、必要なタイミングで発することもできる。
例えば観察中の倍率を変更した結果、重複範囲外となった場合に、直ちに告知するのみならず、画像の取得時や保存時といった重要な局面でのみ、確認の意味を込めて警告を発するよう構成することができる。または観察手段を切り替える際や、倍率調整手段で倍率を設定した際、等のタイミングで行ってもよい。また、いずれか一のタイミングに限られず、複数のタイミングで判定告知手段125は通知を発するように構成してもよい。
(判定告知手段125による警告の内容)
また、判定告知手段125が発する警告の例としては、例えば倍率が重複範囲を外れているため、他方の観察手段で同一の換算倍率での観察ができないことを通知したり、又は現在の倍率では重複倍率を外れているものの、このまま処理を続行するか中止するかの判断を促すダイヤログを表示すること、等が挙げられる。あるいは、現在設定されている倍率は重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)設定可能な倍率の内最も近い倍率に設定するか、(B)前回の観察で設定した倍率を使用するか、(C)処理を中止するか、の選択を促すダイヤログを表示させてもよい。あるいはまた、現在の倍率では重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)設定可能な最も近い倍率に設定するか、(B)処理を中止するか、を選択させるダイヤログを表示させてもよい。さらには、現在の倍率では重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)前回の観察倍率に設定するか、(B)処理を中止するか、を確認選択させるダイヤログを表示させることもできる。
一方、このような警告を行う方法としては、例えば図27のコンピュータにインストールされ、表示手段2に表示されて操作される拡大観察装置操作プログラム上に、ダイヤログ画面を表示して確認や選択を促す方法や、同じく表示手段2に表示されているプログラム上に、判定告知手段125として予め専用のメッセージ領域やコメント領域を設けておき、この部分に該当するメッセージ等を表示して告知する方法等が利用できる。
また、上記の告知に従い、ユーザが倍率を変更した結果、観察中の倍率が重複範囲内となった場合にも、その旨の判定告知手段125で告知を行うことができる。その告知のタイミングとしては、例えば倍率が重複範囲外から範囲内に切り替わった時点で速やかに告知する。また上述のように、一方の画像の撮影時、保存時や観察手段の切り替え時等のタイミングで告知してもよい。告知の方法としては、例えば重複範囲内の倍率になった時点で、換算倍率表示手段123の書式を変更する。具体的には、倍率の表示色や背景色を赤色から青色に変更したり、網掛けやグレーアウトを解除する。または、プログラム上で撮影ボタンや保存ボタンを、選択禁止状態やグレーアウトを解除して選択や押下等の操作が可能なアクティブ状態に復帰させる。あるいは、重複範囲内で同倍率での撮像画可能になったことを示すメッセージを、ダイヤログや専用のコメント領域で表示する。このようにして、同一表示サイズでの撮像が可能な状態に切り替わったことを、判定告知手段125により必要なタイミングでユーザに告知できるので、ユーザは比較観察の可否を速やかに把握することができる優れた操作環境が得られる。
このように拡大観察装置は、内部空間で減圧可能な試料室と、第一の観察手段として、試料室内の電子顕微鏡画像を取得するための電子線撮像手段11と、この電子線撮像手段11で取得される電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率を調整するための電子顕微鏡倍率調整手段と、第二の観察手段として、試料室内の光学画像を取得可能な光学系撮像手段12と、この光学系撮像手段12で取得される光学画像の倍率であって、電子顕微鏡倍率と異なる基準で決定される光学倍率を調整するための光学倍率調整手段と、電子線撮像手段11で取得された電子顕微鏡画像と光学系撮像手段12で取得された光学画像とを切り替えて、又は同時に表示するための表示手段2と、観察モードとして、表示手段2で電子顕微鏡画像と光学画像とを比較観察可能な比較モードと、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を表示可能な合成モードを選択可能なモード選択手段110と、電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれか一方で取得された画像の倍率を認識し、該画像と略同一の表示サイズの画像を他方の観察手段で取得するための倍率を、他方の観察手段の基準に基づく倍率に換算するための倍率換算手段111とを備え、比較モード又は合成モードにおいて、電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれか一方で取得された画像を表示手段2に表示すると共に、該画像と略同一のサイズで他方の観察手段で画像を取得するための倍率を、倍率換算手段111で換算し、該換算倍率、又は該換算倍率に設定不可能な場合は、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を表示手段2に表示可能に構成している。これにより、使用する観察手段に依らず統一的な倍率で表示できるので、同一表示サイズの画像を比較する比較観察や、画像を合成した合成画像を得る合成モードに際して、同一表示サイズの画像を取得し易くできる。
なお、比較モードにおいては、電子顕微鏡画像と光学画像の倍率を同一に合わせることが好ましく、このため倍率換算手段で、電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれか一方で取得された画像の倍率を、他方の観察手段で取得した場合の倍率に換算している。ただ、対比観察は必ずしも完全に同一の倍率や視野に合わせる必要はなく、観察の用途や目的に応じてユーザが適宜選択する。同様に、合成モードにおいても、電子顕微鏡画像と光学画像の倍率を同一に合わせることは必ずしも必須でなく、異なる倍率であっても画像合成は可能である。特に電子顕微鏡画像が高倍率で、光学画像が低倍率の場合は、視野の狭い電子顕微鏡画像の輝度情報や輪郭情報に、視野の広い光学画像中から対応する領域の色情報を抽出して、拡大或いは引き延ばして合成すると、色情報が若干ぼけるものの、実用上は問題なく利用できる。このように、合成する画像の倍率が一致しないことで多少の画質低下が生じるとしても、問題なく使用できるレベルで画像合成を行うことは可能である。このため、倍率換算手段で換算された電子顕微鏡画像の倍率と対応する換算倍率に、光学系撮像手段12を設定可能かどうかを判定するのみならず、倍率判定手段はこの換算倍率を基準とする合成可能な所定範囲の倍率に、光学系撮像手段12を設定可能かどうかを判定することもできる。ここで合成可能な所定範囲の倍率とは、求められる合成画像の精度に依存するが、例えば倍率差が20倍以下であれば、実用上は問題のない合成画像が得られる。また、上記と逆に、高倍率の光学画像と、低倍率の電子顕微鏡画像とを合成することも理論的には可能であるが、この場合は合成画像の品質が低下するので、上述の通り、倍率の一致しない画像同士の画像合成は、電子顕微鏡画像が光学画像よりも高倍率の場合に適用することが好ましい。
(傾斜観察)
さらに拡大観察装置は、上述の通り胴部24側を回動式とすることで、胴部24に固定された観察手段を試料に対して傾斜させて、容易に傾斜観察を行うことができる。特に、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とを、上述の通り一定のオフセット角度でもって傾斜姿勢に固定すると共に、胴部24をオフセット角度以上の角度範囲で回動可能とし、加えて、互いの光軸が胴部24の回転軸上の一点で交差するよう配置することで、各観察手段を互いの位置まで回動させることにより同一の傾斜角度での傾斜観察が可能となる。
(傾斜角度換算機能)
加えて、表示手段2の一画面上に、光学画像と電子顕微鏡画像を同時に表示させた状態で、同一の傾斜角度で傾斜観察を行う際の傾斜角度の調整作業を容易にするため、各観察手段の傾斜角度を換算して表示可能な傾斜角度換算機能を備えている。一般に傾斜角度を検出する角度センサは1個であるため、複数の観察手段を異なる角度で固定している以上、いずれかの観察手段ではその傾斜角度を求めるための計算が必要となる。従来、このような作業はユーザが手作業で行っており、例えば光学系撮像手段で撮像したときの傾斜角度をメモしておき、その後電子線撮像手段に切り替えて、この傾斜角度が、光学系撮像手段の傾斜角度と一致するように換算を行っていた。この様子を、図98、図99、図100に基づいて説明する。ここでは、図98で示すように水平姿勢に維持された試料台33に対して、鉛直な方向に位置された観察手段(図98では電子線撮像手段11)を、傾斜角度0°としている。例えば、図99で示す光学系撮像手段12と同じ傾斜角度で電子顕微鏡画像を撮像しようとすれば、図99の光学系撮像手段12の傾斜角度60°の位置に、電子線撮像手段11を移動させる必要がある。すなわち、図99から図100に示す位置まで胴部24を回動させる必要がある。図99の状態では、胴部24の回転角度は図98の状態を基準として15°であり、この位置から図100の位置まで回転させるには、胴部24を時計回りにオフセット角度に相当する45°回転させればよいことになる。このためユーザは、図99の状態で胴部24の回転角度15°をメモする等して記憶しておき、これにオフセット角度を加算して15°+45°=60°を求め、胴部24の回転角度がこの値となるように回動させることとなる。この方法では、ユーザが元の回転角度と共に、オフセット角度も予め記憶しておく必要があり、さらに角度の計算作業も必要となって、作業が煩雑となる。
そこで本実施の形態では、このような角度表示を、目標となる回転角度で表示させることによって、ユーザがメモや頭の中での角度計算をすることなく、表示された目標傾斜角度の通りに回転させるだけで足りるようになり、極めて容易に傾斜角度を一致させることができる。具体的には、操作対象の観察手段を切り替える際に、表示手段2上における観察像の傾斜角度を保持(ホールド表示)し、目標傾斜角度として表示させておく。さらに、切り替えた観察手段の傾斜角度の表示を、元の観察像の傾斜角度の表示と同様の基準に切り替えることによって、統一的な基準で傾斜角度が表示されるため、ユーザはリアルタイムに更新されるライブ画像の傾斜角度を、単にホールド表示された目標傾斜角度に一致させるように胴部24を回動させればよい。
以下、この様子を図101〜図110に基づいて説明する。これらの図において、図101は傾斜角度換算機能を備える拡大観察装置のブロック図、図102は光学系撮像手段12で観察を行う様子を示すイメージ図、図103は図102の状態から電子線撮像手段11に切り替えて観察を行う様子を示すイメージ図、図104は図103の状態から、電子線撮像手段11を光学系撮像手段12と同じ傾斜角度に設定する様子を示すイメージ図、図105は表示手段2を上下に分割して光学画像と電子顕微鏡画像を表示させる例を示すイメージ図、図106は表示手段2を左右に分割して光学画像と電子顕微鏡画像を表示させる例を示すイメージ図、図107は別ウィンドウで光学画像と電子顕微鏡画像を表示させる例を示すイメージ図、図108は視野ずれ補正タブ276を選択した状態を示すイメージ図、図109は、図108の状態から視野ずれ補正を実行した状態を示すイメージ図、図110はボタン操作で保持表示を行う例を示すイメージ図を、それぞれ示している。この拡大観察装置は、図101に示すように、観察手段として、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12と、内部に試料台33を配置し、電子線撮像手段11および光学系撮像手段12がオフセット角度で固定されている胴部24と、胴部24又は試料台33を回転させる回動手段30と、回動手段30の回動位置を検出するための回動位置検出手段264と、記憶手段265と、表示制御手段260と、表示手段2と、操作手段とを備えている。表示制御手段260は、表示手段2上で表示される内容を制御するためのものであり、傾斜角度換算手段261や表示方法選択手段262等の機能を実現する。
この拡大観察装置では、電子線撮像手段11、光学系撮像手段12を表示切替手段36で切り替えて、それぞれ電子顕微鏡画像、光学画像を取得して、これらを表示手段2上で同時に表示させ(図103、図104)、又は一方のみを表示させることができる(図102)。また光学画像と電子顕微鏡画像とを同一視野で観察するために、回動手段30で観察手段の光軸を傾斜させる。ここでは、胴部24側を回動手段30で回転させている。また胴部24は手動で回転させているが、電動で回転を制御するよう構成してもよい。例えば、操作手段105Cから傾斜角度指示値を設定して、回動手段30を傾斜させる。また操作手段105Cからは、電子線撮像手段11での撮像に必要なパラメータを設定する。
(記憶手段265)
記憶手段265は、観察手段で取得した静止画を記憶する静止画記憶手段266と、この静止画が取得されたときの、回動手段30の回動位置に基づく位置情報を、第一回動位置情報として記憶するための回動位置記憶手段267とを備えている。このような静止画記憶手段266及び回動位置記憶手段267は、個別に設けてもよく、また一の記憶手段として統合してもよい。記憶手段としてはメモリやハードディスク等が利用できる。
(回動位置検出手段264)
回動手段30の回動位置は、回動位置検出手段264により検出される。回動位置検出手段264は、角度センサや回転エンコーダ等が利用できる。回動位置検出手段264は回動手段30に一だけ設けられているため、直接的に傾斜角度を検出しようとすれば、電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれかの傾斜角度しか検出できないこととなる。いいかえると、他方の観察手段の傾斜角度は換算しなければならない。そこで、このような手間を省くために傾斜角度換算手段261で傾斜角度を自動的に換算させている。
(傾斜角度換算手段261)
上述の通り、一方の観察手段で撮像された観察像と、他方の観察手段で観察中の観察像とを、表示手段2で表示させる。このとき、一方の観察手段で撮像された観察像は静止画として、他方の観察手段で観察中の観察像は、表示内容をリアルタイムに更新するライブ画像として、それぞれ表示されている。ここで傾斜角度換算手段261は、静止画の傾斜角度を第一回動位置情報として、一方でライブ画像の傾斜角度を第二回動位置情報として、それぞれ表示手段2上に表示させる。そして傾斜角度換算手段261はこの際、回動位置情報について傾斜角度の換算を行う。すなわち、第一回動位置情報及び第二回動位置情報をそれぞれ、各観察手段の、試料台33に対する傾斜角度として換算する。具体的には、回動位置検出手段264でいずれか一方の観察手段(例えば電子線撮像手段11)の傾斜角度を検出し、第一回動位置情報として表示させる。静止画と第一回動位置情報とは、ホールド表示され、その後回転されても表示は更新されず、一定のまま維持される。一方、傾斜角度換算手段261は現在の回転位置から、オフセット角度(例えば45°)を減算することで、他方の観察手段(例えば光学系撮像手段12)の傾斜角度を算出し、第二回動位置情報として表示する。ライブ画像と第二回動位置情報とは随時更新される。これにより、共通の回動位置検出手段264で検出された値に基づいて、観察手段の傾斜角度を表示手段2上に直接表示させることができる。この結果、ユーザがオフセット角度を覚えておいたり、手計算をせずとも、既に観察手段で取得した際の傾斜角度が保持表示されており、しかも現在の傾斜角度はリアルタイムで表示されるため、この値を合わせるように傾斜させればよく、複数の観察手段で同じ傾斜角度の画像を取得する作業を極めて容易にすることができる。
(情報表示領域270)
次に、傾斜角度表示機能を実現する具体例として、表示手段2に表示される拡大観察用プログラムのユーザインターフェース画面の例を図102〜図104に基づいて説明する。これらの図において、画面左側の大部分が、観察像を表示させるための画像表示領域であり、その右端に各種操作や情報表示を行うための情報表示領域270を設けている。図102〜図104の例においては、画像表示領域は左右に二分割されて、左側に光学画像表示領域118を、右側に電子顕微鏡画像表示領域117を、それぞれ配置している。一方、情報表示領域270は光学系撮像手段12の操作用メニュー271と電子線撮像手段11の操作用メニュー272を切り替え可能としている。また各操作用メニューには各種の操作を行うための操作ボタン類273が配置されており、上端に設けられたタブを選択することで、これら光学系撮像手段操作用メニュー271、電子線撮像手段操作用メニュー272に応じた操作ボタン類273がそれぞれ表示される。図102の例では、光学系撮像手段操作用メニュー271が選択されている例を、図103の例では、電子線撮像手段操作用メニュー272が選択されている例を、それぞれ示している。この例では、操作ボタン類273は各操作用メニューにおいて共通としており、選択された操作用メニューにおいて、操作可能なボタンのみが選択可能となり、逆に選択できないボタンはグレーアウトされて、現在のメニューでは選択不能であることをユーザに告知する。操作ボタン類273には、カメラ、動画録画、計測・コメント、撮影設定、HDR、深度UP、アルバム、画像改善、画像連結、サイドアルバム、分割・表示、デュアルビュー、オプション、機能ガイド、終了等のボタンが含まれる。操作ボタン類273で選択されたボタンに対応する項目が、情報表示領域270の中段以下に表示される。図102〜図107の例では、デュアルビューボタン274が押下された例を示している。
(デュアルビュータブ275)
デュアルビューボタン274が選択された状態では、情報表示領域270の中段から下に、対比観察を行うためのデュアルビュータブ275と視野ずれ補正タブ276とが選択式に表示される。図102〜図107の例では、デュアルビュータブ275が選択された状態を示している。デュアルビュータブ275の上段には、電子顕微鏡画像及び光学画像画像の、表示手段2における表示形態を変更するための表示方法選択手段262として、「表示方法の選択」欄262Bが設けられている。「表示方法の選択」欄262Bはラジオボタンによって、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118の表示方法を複数の選択肢から選択できる。例えば、「左右」262bを選択すると、図102〜図104に示すように、表示領域が左右に二分割されて、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118とが同時に表示される。また「上下」262cを選択すると、図105に示すように、表示領域が上下に二分割されて、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118とが同一画面上に表示される。さらに「縮小」262dを選択すると、図106に示すように、表示領域が上下に二分割され、さらに上段の領域が左右に二分割されて、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118とが縮小されて、約1/4サイズで同一画面上に表示される。なおこの例では、左右に二分割表示すると、表示倍率が維持されるものの、視野の一部が欠けて表示される。一方、縮小表示では表示倍率は小さくなるものの、視野欠けが発生しないという利点がある。さらにまた「2ウィンドウ」262eを選択すると、図107に示すように、選択中の観察手段で撮像した観察像が表示領域の全域に表示されると共に、別ウィンドウ277で、非選択に係る観察手段で撮像した観察像が小さく表示される。図107の例では別ウィンドウ277は左上に表示されているが、任意の位置に移動させることも可能であることはいうまでもない。またこの別ウィンドウ277は、別ウィンドウ277の選択、非選択に拘わらず常時画面上に表示されている。最後に「OFF」262aを選択すると、このような複数同時表示がOFFとなり、選択中の観察像のみが表示領域の全域に表示される。
(傾斜角度換算表示欄278)
さらにデュアルビュータブ275の中段で、表示方法選択手段262の下方には、傾斜角度換算手段261で換算された傾斜角度を表示するための傾斜角度換算表示欄278が設けられている。この例では、傾斜角度換算表示欄278が左右に二分割されて、左側には光学画像の傾斜角度換算表示領域として「カラー画像」欄278aが、右側には電子顕微鏡画像の傾斜角度換算表示領域として「超深度画像」欄278bが、それぞれ設けられている。そして、各欄には上段に拡大倍率が、下段には傾斜角度が、それぞれ表示される。例えば図103の例では、「カラー画像」欄278aに倍率が50倍、第一回動位置情報として傾斜角度が30°である旨が表示されている。また「超深度画像」欄278bには倍率が50倍、さらに第二回動位置情報として傾斜角度が−10°である旨が表示されている。傾斜角度は、回動位置検出手段264を構成する角度センサから取得される。ここでは傾斜角度として、試料の観察面に対する垂直線を基準とした、観察手段の光軸の入射角度を表示している。このように傾斜角度を、胴部24を基準とした指標でなく、試料の観察面すなわち試料台33を基準として、各観察手段毎に個別に計算することで、ユーザは電子線撮像手段11と光学系撮像手段12の回動位置を共通の尺度で理解し易い表示体系が実現できる。
(視野ずれ補正タブ276)
一方、情報表示領域270において視野ずれ補正タブ276を選択すると、図108及び図109に示すように視野ずれ補正機能を構成する画面が表示される。この画面を視野ずれ補正手段323(詳細は後述)として、同一の試料を同一の拡大倍率、傾斜角度で撮像した光学画像と電子顕微鏡画像の視野位置を補正し、視野ずれを是正することができる。例えば、デュアルビュータブ275において光学画像と電子顕微鏡画像とを撮像した状態で、デュアルビュータブ275から視野ずれ補正タブ276に切り替えると、視野ずれ補正機能を構成する画面に切り替わり、視野ずれ補正に必要な調整作業を行える。この例では、情報表示領域270において、視野ずれ補正タブ276の表示内容中、上段にその目的として「カラー画像と超深度画像の視野ずれを補正します。」と説明し、視野ずれ補正タブ276がどのような設定を行うためのタブであるかを説明している。さらに視野ずれ補正タブ276は、視野ずれ補正に必要な手順を順にテキストで説明する案内表示を設けており、ユーザはこの指示内容に従って順次作業を行うことで、視野ずれ補正を完了できる。このように視野ずれ補正に必要な作業をユーザに案内する視野ずれ補正ガイダンス機能を備えることで、視野ずれ補正の意味を理解していない、あるいは拡大観察装置の操作に不慣れなユーザであっても、指示に従うことで簡単に視野ずれ補正を行える、初心者でも調整作業の容易な環境を実現できる。
以下、視野ずれ補正作業を図108及び図109に基づいて説明すると、まず光学画像と電子顕微鏡画像とを、図108に示すようにそれぞれ光学画像表示領域、電子顕微鏡画像表示領域に表示させる。この状態では、光学画像と電子顕微鏡画像とが、視野がずれた状態で表示されている。この状態から、両者の視野を一致させるように、いずれかの画像の位置を調整する。ここでは、電子顕微鏡画像の位置を調整する例を説明する。まずステップ1として、「ユーセントリック位置で基礎となるカラー画像を表示してもう一つのウィンドウに超深度画像を動画で表示してください。」と情報表示領域270に説明される。ユーザはここでの指示に従い、上述の通り電子顕微鏡画像と光学画像を取り込み、さらに電子線撮像手段11を表示切替手段36で選択して、電子顕微鏡画像を動画で、光学画像を静止画で、それぞれ表示させる。次にステップ2の「カラー画像と同じ倍率、傾斜角度になるように超深度画像を選択してください。」との案内表示に従い、電子顕微鏡画像の拡大倍率及び傾斜角度が、静止画で表示中の光学画像のそれらと一致するように調整する。ここでは、電子顕微鏡画像の拡大倍率、傾斜角度を光学画像のそれらと一致させやすいように、各値を並べて表示させている。そしてステップ3の「「点を指定する」ボタンを押して、カラー画像→超深度画像の順に対応させたい点をクリックしてください。」との案内表示及び図示に従い、視野ずれを補正するための視野位置補正点を指定する。具体的には、図108の画面から、「点を指定する」ボタン285を押下すると、画像表示領域上で視野位置補正点を指定できるようになる。ユーザはまず光学画像中で、視野ずれの補正に適した位置を第一視野位置補正点SH1として指定する。次いで電子顕微鏡画像中でも同様に、光学画像中で指定済みの第一視野位置補正点SH1と対応する第二視野位置補正点SH2を指定する。すると、これら第一視野位置補正点SH1と第二視野位置補正点SH2とが一致するように、図111のブロック図に示す視野ずれ補正手段323が自動的に視野位置の調整を行う。ここでは、電子線撮像手段11の走査範囲を自動的に変更することで、電子顕微鏡画像の視野位置を、図109において下方に移動させ、光学画像と一致させる。この方法であれば、電子線撮像手段11のパラメータを自動調整することで、電気的に、又はソフトウエア的に視野ずれ補正が実行できる。いいかえると、ハードウエア的な調整作業を不要とでき、視野ずれ補正を極めて容易に実行できる利点が得られる。
なお、この例では電子顕微鏡画像の視野位置を光学画像に合わせるように調整する構成について説明したが、逆に光学画像側を電子顕微鏡画像に合わせるように調整することでも、同様に視野ずれ補正が実現される。光学画像の位置を調整するには、例えば試料台33のXY方向を、XYステージを操作して調整する。また、光学画像においても、イメージシフト等の方法で電気的に視野ずれ補正を行うことも可能である。
(設定欄279)
さらに傾斜角度換算表示欄278の下方には、その他の設定を行うための設定欄279が設けられている。図102〜図104の例では、上から順にまず「レンズ変更時に静止解除」チェックボックス279aが設けられており、光学系撮像手段12の光学レンズの交換時に、表示手段2で表示中の静止画がクリアされるかどうかを設定できる。またその下には「表示位置入れ替え」ボタン279bが設けられており、これを押下することで電子顕微鏡画像と光学画像の表示位置を入れ替えることができる。さらに「静止画像を復元」ボタン279cを押下すると、前回表示された静止画を再度読み込むことができる。この例では、初期設定、すなわち「レンズ変更時に静止解除」チェックボックス279aがONの状態では、観察手段を切り換えることで、それまで表示手段2上で表示されていた観察像の静止画は保存されずに破棄される。このような仕様では、ユーザが誤って観察手段を切り替えた際に、必要な静止画が破棄されてしまう可能性がある。そこで、観察手段の切り替え時に消えてしまった静止画を復元する復元機能として、この「静止画像を復元」ボタン279cが設けられている。なおこの例では、「レンズ変更時に静止解除」チェックボックス279aをOFFにすると、観察手段の切り替え後も静止画の表示状態が保持される。静止画表示を解除するには、情報表示領域270の最下段左下に設けられた静止ボタン281を押下し、押下状態を解除する。さらにまた「マルチ保存」ボタン279dは、後述するマルチ保存機能を実現するためのボタンである。加えて、「表示画像でカラー合成」ボタン279eは、現在表示中の電子顕微鏡画像及び光学画像をカラー合成してカラー合成画像を行うためのボタンである。
さらに、設定欄279の下方には、現在選択中の観察像に関する情報を表示するためのステータス表示欄280が設けられている。例えば、画面サイズ、傾斜角度、撮影スキャン速度等が表示されている。さらに情報表示領域270の最下段には、ライブ画像を静止画に切り替え、又は静止画をライブ画像に切り替えるための静止ボタン281、静止画として撮影し、保存するための撮影ボタン282、印刷を実行するための印刷ボタン283が、それぞれ設けられている。
(傾斜角度を一致させる手順)
次に、実際に傾斜角度を一致させる手順を、図102〜図104に基づいて説明する。ここでは、先に光学系撮像手段12で撮像を行い、次いで同じ傾斜角度に電子線撮像手段11を調整して電子顕微鏡画像を撮像する手順について説明するが、逆に電子顕微鏡画像を先に撮像して、次いで同じ傾斜角度の光学画像を撮像することも可能であることはいうまでもない。
まず、光学系撮像手段12を用いて、所望の傾斜角度にて光学画像を撮像する。撮像した光学画像は静止画として、静止画記憶手段266に保持される。またこのときの傾斜角度は、回動位置検出手段264で検出され、第一回動位置情報として回動位置記憶手段267に保持される。なお、保持とはデータファイルとして保存することに限られず、一時記憶領域(例えばVRAM)に一時的に保持した状態をも含む。図102の例では、画面左側に設けられた光学画像表示領域118に、光学画像がライブ画像として表示されている。また、このときの拡大倍率及び傾斜角度が、傾斜角度換算表示欄278に表示されており、その値はリアルタイムに変化する。図102の例では光学画像の倍率が50倍、傾斜角度が30°と表示されている。また、画面右寄り中段に設けられた電子顕微鏡画像表示領域117には、何も表示されない。
次に、電子線撮像手段11に切り替えて、電子顕微鏡画像を撮像する。ここでは電子線撮像手段操作用メニュー272のタブをクリックすると、図103のように、電子線撮像手段操作用メニュー272に切り替わる。このとき、光学画像表示領域118で表示されている光学画像が、ライブ画像から静止画に切り替わると共に、電子顕微鏡画像表示領域117では、電子顕微鏡画像のライブ画像が表示される。詳細には、図103において光学画像表示領域118には、観察手段の切り替え時のタイミングで取得された光学画像の静止画が表示される。また、このときの拡大倍率及び傾斜角度が、傾斜角度換算表示欄278に表示されており、図102の例では光学画像の倍率が50倍、傾斜角度が30°である旨が表示されている。これら、光学画像及び第一回動位置情報の表示は、切り替え操作と共にホールド表示される。
一方、電子顕微鏡画像表示領域117には、現在の傾斜角度における電子顕微鏡画像のライブ画像が表示されており、現在の拡大倍率として50倍、傾斜角度(第二回動位置情報)が−10°である旨が、「超深度画像」欄278bに表示されている。すなわち、この例では電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とは、オフセット角度をもって傾斜姿勢で固定されている(ここでは40°)ため、観察手段を切り替えた時点では、傾斜角度は必然的に一致しない。よって、切り替えた観察手段である電子線撮像手段11を、光学系撮像手段12の傾斜角度と一致させるように、胴部24を回転させる必要がある。なおこのとき、一の回動位置検出手段264で検出された回動手段30の回動位置自体は一意であるため、回動手段30の回転位置も一意となるところ、傾斜角度として位置の値を表示するのみでは、その値が光学系撮像手段の傾斜角度を表しているのか、電子線撮像手段の傾斜角度を表しているのか判らず、またオフセット角度を加減算する等して変換するにしても、逐次変化する角度値を一々手計算し直すのは面倒であるため、ここでは各々の観察手段の傾斜角度に自動換算して表示させている。さらに、観察手段の切り替え時には傾斜角度のホールド表示がリアルタイム表示に変化するため、この時点で傾斜角度がホールド時の値と変化している場合は、当然ながら傾斜角度は新たに更新された値に書き換えられることとなる。
そして電子顕微鏡画像表示領域117で表示されるライブ画像と、傾斜角度換算表示欄278で表示される第二回動位置情報とは、胴部24を回動させることでリアルタイムに変化する。ユーザは、電子線撮像手段11を操作して、光学画像と同じ拡大倍率で、同じ姿勢、すなわち同じ傾斜角度で、電子顕微鏡画像を撮像するよう、操作する。例えば、傾斜角度を調整し、「超深度画像」欄278bに表示されている傾斜角度が、「カラー画像」欄278aに表示されている値と同じになるように、胴部24を回転させる。胴部24の回転に伴って、傾斜角度換算表示欄278の表示及び電子顕微鏡画像表示領域117の表示は時々刻々と変化する。よってユーザは、どのくらいの角度に調整すれば、所望の電子顕微鏡画像が得られるのか、その進捗をリアルタイムで確認することができる。そして、図104に示すように、傾斜角度換算表示欄278で表示される光学画像の拡大倍率及び傾斜角度に、電子顕微鏡画像を一致させた時点で、胴部24を停止させて、観察や撮像を行うことができる。
さらにこの後、表示切替手段36で再度光学系撮像手段12に切り替える場合には、電子顕微鏡画像のライブ画像を静止画とし、一方光学画像の静止画をライブ画像に切り替えて表示する。さらにこれと同時に、電子顕微鏡画像の傾斜角度と拡大倍率を保持してホールド表示し、一方光学画像の傾斜角度と拡大倍率はホールド表示から、現在の傾斜角度や拡大倍率を示すリアルタイム表示に切り替えられる。このとき、第二回動位置情報は上記と異なり光学画像の傾斜角度をリアルタイムで示し、第一回動位置情報は電子顕微鏡画像の傾斜角度をホールド表示するように入れ替わる。
このように、表示手段2で表示される観察像と傾斜角度とを連動して表示させることで、異なる電子顕微鏡画像を同一の傾斜角度に簡単に合わせて比較観察できる。なお、上記の例では回動位置検出手段264を一のみ設けているが、観察手段毎に個別に回動位置検出手段を設けて、その値を表示させてもよい。この場合は、傾斜角度換算手段による換算の工程を不要とできる。
(カウントダウン式表示)
また、上記の例では、各観察手段の傾斜角度をそのまま表示させているが、この例に限られず、例えば第二回動位置情報を、第一回動位置情報を目標値とする差分で表示させてもよい。この場合は第二回動位置情報がカウントダウン式に表示され、差分値がゼロとなるように傾斜角度を調整すればよく、この方式でも観察手段の傾斜角度を一致させる操作を、ユーザに操作を判り易くできる。特に、互いの観察手段の傾斜角度を一致させるには、回転量は常に観察手段を設けた位置で決まるオフセット角度となるため、目標角度に対するカウントダウン式表示とすることで、毎回の操作量を一律に維持し易くできる。
さらに、上記の例では、ライブ画像を静止画に切り替える例を説明したが、例えば静止画像を予め保存しておき、これを読み込んで表示させて利用することも可能であることはいうまでもない。この場合も、読み出された静止画に保存されている、保存時の傾斜角度と拡大倍率値を読み出し、傾斜角度換算表示欄278に表示される。これらの値を参考にして、他方の観察手段で傾斜角度と拡大倍率を一致させることで、上記と同様に異なる観察手段で同一の試料を同一姿勢、倍率で対比する対比観察等を行うことができる。
また上記の例では、傾斜角度、拡大倍率を保持するタイミングも、観察手段の切り替え時に限らず、任意のタイミングとすることも可能である。例えば、図110に示すように、傾斜角度換算表示欄278に、ホールド表示を行う「ホールド」ボタン284を設け、このボタン284をユーザが押下するタイミングで、静止画や傾斜角度、拡大倍率を保持するよう構成してもよい。
なお、以上の例では図98、図99等に示すように、観察手段を固定した胴部24を回動させる態様について説明したが、この構成に限られず、試料台側を回動させる態様においても、傾斜角度換算機能は好適に利用できる。すなわち、図96、図97等に示すように、試料を試料台33Yに固定した状態で、試料台33Y側を傾斜させることでも、観察手段に対して相対的に光軸を傾斜させた傾斜観察が可能となる。この際の、各観察手段の傾斜角度が、試料の観察面を基準とした統一した尺度で表示されるよう、傾斜角度換算手段261で各観察手段の傾斜角度の表示を自動的に換算する。この例においても、観察手段で共通の傾斜角度の算出方法を採用して、表示手段2の画面上に表示される傾斜角度を統一的な尺度で表示させて、ユーザは試料台33Yの回動角度の調整を容易に行えるという利点が得られる。さらに、胴部と試料台とをいずれも回転可能とする構成を採用することもできる。この構成では傾斜角度の計算が更に複雑化するため、これらを自動的に演算して表示させる傾斜角度換算機能の有用性が一層際立つ。
(視野ずれ補正支援機能)
さらに比較モードにおいては、同一の観察対象を電子顕微鏡画像と光学画像のような異なる観察手段で対比すると、たとえ倍率と傾斜角度とを同じに設定していても、視野が完全に一致せずにずれることがある。このような視野ずれは、異なる観察手段を用いたことによる撮像特性の相違や構造的な誤差に起因して生じるものであり、特に傾斜観察において目立つことがある。そこで、視野ずれを補正するために、試料台のXY方向を微調整する等、位置を合わせるための調整作業が必要となるところ、このような調整作業を行うには、前提として電子顕微鏡画像と光学画像とで対応する位置関係を、ユーザが正確に把握しておく必要がある。このため通常は、先に撮像した観察像(例えば電子顕微鏡画像の静止画)を表示させた状態で、他の観察手段(例えば光学系撮像手段12)に切り替え、ライブ画像を表示させつつ、ライブ画像中で先の観察像との対応位置を調べるために、一旦ライブ画像を低倍率に切り替える。一般に拡大観察においては、部分的に拡大した画像であることから、対応関係の把握が容易でなく、このため一旦低倍率に合わせて、より広い視野の観察像に切り替えることで、観察像同士の対応する位置関係を把握し易くできる。この場合に、元の観察像も広域画像に一時的に切り替える必要があるところ、従来はこのような作業が極めて煩雑であった。すなわち、一旦観察手段自体を元の観察手段に切り替えて、該観察手段の倍率を低倍率にした撮像を行い、再び他の観察手段に切り替えて、倍率を低倍率に合わせる。広域画像同士の視野が一致しなければ、再度観察手段を切り替え、別の視野に移動させて撮像し、元の観察手段に戻す作業が必要となる。特に、電子線撮像手段と光学系撮像手段とで対比観察を行う場合は、電線撮像手段を使用するには試料室の真空引きが必要で、さらに光学系撮像手段では必要な照明を消灯しなければならない。逆に光学系撮像手段での撮像に切り替える場合は、照明のON/OFF作業が必要となる。このような作業は極めて煩雑であり、また対応する位置関係を試行錯誤しながら把握しようとすれば、同じような作業を何度も繰り返す必要が生じ、ユーザの負担も大きくなる。このようなストレスからユーザを解放し、電子顕微鏡画像と光学画像とで対応する位置関係を容易に把握できる環境を提供するため、本実施の形態においては、視野ずれ補正作業を容易にする視野ずれ補正支援機能を備えている。具体的には、まず一方の観察像を取得する際に、予め低倍率の画像を自動的に取得しておく。次に他方の観察像を取得する際に、観察位置を合わせるために一旦低倍率にして、全体を俯瞰して視野ずれの補正を行った後に再度元の倍率に戻す。このとき、先に取得した低倍画像の表示倍率を、現在の観察像の表示倍率と連動させて表示させることにより、表示される観察像の表示倍率を自動的に一致させることが可能となり、また観察手段の切り替えも不要とできる。以下、このような視野ずれ補正支援機能を図111のブロック図に基づいて説明する。この拡大観察装置は、光学系撮像手段12と、電子線撮像手段11と、撮像された観察像を記憶する画像データ記録領域として記憶手段131Gと、試料台33と、胴部24と、この胴部24を回動させる回動手段30と、表示手段2と、広域画像を取得する広域画像取得手段320と、取得された広域画像を保存する広域画像保存手段321と、視認倍率画像生成手段322と、視野ずれ補正手段323と、カラー画像合成手段116Bと、自動位置合わせ手段324と、設定誘導手段325とを備える。なおこの例では、第一観察像を取得する第一観察手段を電子線撮像手段11、第二観察像を取得する第二観察手段を光学系撮像手段12として説明する。ただ、これらを入れ替えてもよいことはいうまでもない。
この拡大観察装置は、電子線撮像手段11、光学系撮像手段12でそれぞれ電子顕微鏡画像、光学画像を撮像し、表示手段2でこれらを同時に表示、又は片方のみ表示する。2つの観察像を同一視野で観察するために、例えば回動手段30で光学系撮像手段12の光軸や電子線撮像手段11の光軸を傾斜する。なお、光学系撮像手段や電子線撮像手段を設けた胴部を回転させる代わりに、試料台側を回転させてもよい。
(広域画像取得手段320)
広域画像取得手段320は、第一観察手段を用いて、任意の観察位置における試料の観察像を第一倍率で取得する際に、第一観察手段を用いて、第一倍率よりも低い倍率にて広域画像を取得する。
(広域画像)
広域画像は、第一倍率よりも低倍率として、より広い視野での観察を可能としている。この広域画像は、視野ずれ補正で利用するに過ぎず、本来の拡大観察に使用するものでないため、精細な画像として撮像、保存する意義は少ない。よって、広域画像は通常の撮像よりも短時間で撮像を完了可能な簡易観察像とすることが好ましい。例えば撮像時のフレームレートを低くする、飛び越し走査を低密度にする等の手法が採用できる。例えば電子線撮像手段で簡易観察像を撮像する場合を考えると、通常のSEMで高精細な画像を描画するには、一画像あたり30秒〜1分間必要になる。さらに一枚の画像ではS/N比が悪いため、通常の撮像時には一画像1/4秒程度のフレームレートで10画像以上取得して、平均をかけて表示している。したがって、一画像を得るには2秒以上かかることになる。印刷用の詳細な観察像に至っては30秒以上かかることもある。そこで、簡易観察像としては、平均をかける枚数を8枚や4枚に少なくしたり、試料に対する電子線の走査範囲を狭くする等の制限をかけたり、走査を間引く等の処理によってフレームレートを上げて、画像を取得するまでの時間を短縮できる。
(視認倍率画像生成手段322)
視認倍率画像生成手段322は、第二観察手段を用いて、観察位置の試料における相対位置を視認するための視認倍率で観察される第二観察像を、第二表示領域に表示させた際に、該表示と連動して、広域画像取得手段320により取得された広域画像に基づいて、第一観察手段によって当該視認倍率と同じ倍率で取得されるべき視認倍率画像を取得し、第一表示領域に表示させる。
広域画像取得手段320は、倍率の異なる広域画像を複数枚撮像する際の撮像倍率は、第一倍率を基準として自動的に決定する。例えば、第一倍率の1/2倍、1/4倍、1/8倍で撮像する。このように、広域画像を基準として視野範囲を2倍ずつ拡大した画像とすることで、十分な視野範囲を持った複数枚の広域画像を容易に取得できる。あるいは、広域画像取得手段320で取得された複数の広域画像の内、最も視認倍率と近い広域画像に基づいて視認倍率画像を生成する。このように構成することで、視認倍率画像生成手段322は高精細な視認倍率画像を取得できる。あるいはまた、視認倍率画像生成手段322が、広域画像取得手段320で取得された複数の広域画像であって、視認倍率よりも低い倍率で撮像された広域画像の内、最も視認倍率と近い広域画像に基づいて視認倍率画像を生成するよう構成してもよい。これにより、常に視認倍率よりも低い倍率の広域画像を用いることで、視認倍率に含まれる視野をすべて含んだ、視野欠けのない視認倍率画像を生成できる利点が得られる。さらには、視認倍率画像生成手段322が、広域画像が同倍率画像の場合には、視認倍率画像としてそのまま広域画像を表示させ、広域画像が同倍率画像でない場合には、広域画像からデジタルズームで視認倍率画像を生成するよう構成してもよい。このように、広域画像取得手段320は種々の方法で視認倍率画像の撮像倍率を決定できる。
(視野ずれ補正手段323)
視野ずれ補正手段323は、第一表示領域に視認倍率画像が表示された状態で、第二表示領域に表示された第二観察像の視野位置を補正するための手段である。具体的には、電子顕微鏡画像を参照しながら、同一倍率の光学画像に基づいて視野位置を補正する。上述した図108、図109の例では、「点を指定する」ボタン285が視野ずれ補正手段323に該当し、この「点を指定する」ボタン285を押下することで、視野ずれ補正機能が実行される。このような視野ずれ補正の具体例としては、試料台や観察手段を物理的に移動させる機構が該当する。例えば、試料台33をXY方向、あるいはZ方向やR方向に移動させる。または、上述したイメージシフトのような、電子線の走査範囲を変える方法も利用できる。
(視野ずれ補正を行う手順)
以下、視野ずれ補正を行う手順を、図112〜図116に基づいて説明する。これらの図において、図112は視野ずれ補正の手順を示すフローチャート、図113は第一観察手段から第二観察手段に切り替えた直後の画像表示領域286での表示例を示すイメージ図、図114は第二観察手段の傾斜角度を第一観察手段で取得した第一観察像のそれと一致させた表示例を示すイメージ図、図115は第二観察像の視認倍率を低倍率にした表示例を示すイメージ図、図116は第二観察像の視認倍率を高倍率に戻した表示例を示すイメージ図を、それぞれ示している。この例では、先に第一観察手段である電子線撮像手段11で電子顕微鏡画像を取得し、次いで第二観察手段である光学系撮像手段12で光学画像を撮像して、視野ずれ補正を行う例について説明する。ただ、逆の順で視野ずれ補正を行うことも可能であることはいうまでもない。
まず、ステップS1121にて、電子線撮像手段11にて電子顕微鏡画像を取得する。この際に、広域画像取得手段320で、電子線撮像手段11の倍率を撮像時の拡大倍率よりも低倍側に数通り変更を加えた広域画像を複数枚取得する。そしてステップS1122に進み、観察手段を電子線撮像手段11から光学系撮像手段12に、表示切替手段36により切り替える。このとき、図113に示すように表示手段2上における画像表示領域286の表示内容が、二分割された光学画像表示領域118(図113左側)と電子顕微鏡画像表示領域117(図113右側)の画面となり、それぞれに光学画像、電子顕微鏡画像が表示される。ここでは、観察手段を電子線撮像手段11から光学系撮像手段12に切り替えた直後であるため、両者の傾斜角度が必然的に異なり、オフセット角度分だけ光学画像が電子顕微鏡画像よりも傾斜されている。このためステップS1123にて、光学系撮像手段12の傾斜角度を電子顕微鏡画像のそれと一致させるように、回動手段30により胴部24を回転させる。この結果、図114のような画面となる。この段階で、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とで傾斜角度と拡大倍率が一致されるため、本来であれば観察像の視野は一致するはずであるが、現実には各観察手段の特性の違いや誤差等によって、図114に示すように視野がずれた状態となる。そこで、視野ずれを補正するよう、位置を微調整する作業が必要となるところ、図114のような高倍率に拡大された状態では、両観察像の対応関係が判り難いことがある。そこで、表示中の観察像の視認倍率を一度低倍率にして、視野を広い範囲で確認できる状態とした上で、対応関係を確認する方が、間違いのない視野ずれ補正を得るためには好ましいといえる。この際、元の観察像も同様に低倍率に変更する必要があるところ、従来であれば一旦観察手段を切り替えて、低倍率画像で撮像し直し、さらに観察手段を切り替える必要があり、作業が繁雑となっていた。これに対して、電子顕微鏡画像と光学画像の表示倍率を自動的に一致させる倍率連動機能を備えることで、このような手間を大幅に省力化して、位置ずれ調整のための視野の特定を容易に行える利点が得られる。ステップS1124では、図115に示すように光学画像の視認倍率を低倍率にすると、視認倍率画像生成手段322が、予めステップS1121で撮像された電子顕微鏡画像の広域画像に基づいて、自動的に光学画像の視認倍率を同じ倍率の電子顕微鏡画像を生成する。この結果、ユーザは一々電子線撮像手段に戻って所望の低倍率画像を撮像することなく、ステップS1125にて所望の視認倍率で両観察像を対比しながら、視野ずれ補正のための調整作業を行うことができる。ここでは試料台33のXY方向を調整するが、光軸側を調整する方法も採用できることは上述の通りである。そしてステップS1126に示すように、視認倍率を元の高倍率に戻して、図116に示すように光学画像と電子顕微鏡画像の視野位置を一致させる。例えば図108の画面から、「点を指定する」ボタン285を押下して、光学画像と電子顕微鏡画像とで対応する視野位置補正点を指定し、これらを一致させるように光学画像又は電子顕微鏡画像の視野位置を調整する。またこの段階で必要に応じて、再度視野ずれ補正を行うことも可能であることはいうまでもない。このようにして、視野ずれ補正を容易に行えるようにでき、これによってユーザはステップS1127にて所望の観察、例えば比較観察やカラー画像合成等を行うことが可能となる。
(視野ずれ補正ガイダンス機能)
なお、以上の視野ずれ補正をユーザが行いやすいように、視野ずれ補正を行うために必要な手順をユーザに順に案内する視野ずれ補正ガイダンス機能を拡大観察用プログラムに備えてもよい。上述した図108、図109に示す拡大観察用プログラムでは、視野ずれ補正タブ276においてこの視野ずれ補正ガイダンス機能を実現している。すなわち、視野ずれ補正を行う手順を情報表示領域270において順にテキスト等の案内表示で説明し、ユーザがこれに沿って順次作業を行えるように案内することで、操作に詳しくないユーザであっても容易に視野ずれ補正を行える。
(カラー合成画像生成プログラム)
次に、拡大観察用プログラムを用いて、カラー合成画像を生成する手順を、図117〜図128のユーザインターフェース画面に基づいて説明する。これらの図において、図117はカラー合成画像生成を行う拡大観察用プログラムで電子顕微鏡画像を取得する様子を示すイメージ図、図118は図117の状態から、光学画像を表示させた状態を示すイメージ図、図119は図118の状態から光学系撮像手段12の傾斜角度を電子顕微鏡画像と一致させた状態のイメージ図、図120は図119の状態から光学系撮像手段12の拡大倍率を電子顕微鏡画像と一致させた状態のイメージ図、図121は図120の状態から、光学画像を撮像しようとする状態を示すイメージ図、図122は図121の状態から光学画像の撮像を終了した状態のイメージ図、図123は図122の状態から光学画像と電子顕微鏡画像の位置合わせを行う状態を示すイメージ図、図124は図123の状態からマニュアル調整を選択した状態のイメージ図、図125は図124の状態から第一対応点に対応する第二対応点を選択中のイメージ図、図126は図125の状態から、対応点を指定した状態を示すイメージ図、図127は図126の状態から、さらに対応点を多く指定した状態のイメージ図、図128は図127の状態からカラー合成画像を生成した状態のイメージ図を、それぞれ示している。
(カラー合成画像生成ガイダンス機能)
なお拡大観察用プログラムは、カラー合成画像の生成手順をユーザに案内するカラー合成画像生成ガイダンス機能を備えている。よって、以下の説明ではカラー合成画像の生成手順をカラー合成画像生成ガイダンス機能に従って説明する。このカラー合成画像生成ガイダンス機能は、図103〜図107に示す拡大観察用プログラムのユーザインターフェース画面において、操作ボタン類273に設けられた「カラー合成」ボタン269を押下することで実行される。また設定欄279に設けられた「表示画像でカラー合成」ボタン279eを押下することでも、図123に示す画面を呼び出して実行できる。またカラー合成画像生成ガイダンス機能は、図111における設定誘導手段325等により実現される。
(合成フロー表示欄290)
これらのユーザインターフェース画面は表示手段2上に表示され、画面中央から左側に画像表示領域286が設けられ、右側に情報表示領域270が設けられる。カラー合成画像生成ガイダンス機能実行中においては、情報表示領域270の上段に、合成フロー表示欄290が設けられる。合成フロー表示欄290には、カラー合成画像生成に必要な各手順を示す合成フローが表示される。さらに合成フロー表示欄290の下方には、各手順の詳細を表示する手順表示欄292が設けられる。手順表示欄292には、ユーザが行うべき手順がテキストの案内表示で説明されるテキスト説明欄293と、具体的な項目を示す詳細設定欄294が設けられる。
(縮小画像表示欄295)
さらに手順表示欄292の下方には、縮小画像表示欄295が設けられ、カラー合成画像を生成するために取得された光学画像及び電子顕微鏡画像を縮小した縮小画像SGが表示される。また縮小画像表示欄295の下方には、後述するマルチ保存機能を実現する「マルチ保存」ボタン279dが設けられる。さらにその下方には、次の手順に進むための「次へ」ボタン296、前の手順に戻るための「戻る」ボタン297、カラー合成画像生成を終了するための「終了」ボタン298が設けられている。さらにまた情報表示領域270の最下段には、図102〜図104と同様、静止ボタン281、撮影ボタン282、印刷ボタン283が、それぞれ設けられている。
(「超深度画像取り込み」手順)
以下、カラー合成画像生成ガイダンス機能を、順に説明する。まずカラー合成画像生成ガイダンス機能を実行すると(具体的には図103〜図107の画面で操作ボタン類273に設けられた「カラー合成」ボタン269を押下すると)、図117の画面が表示される。ここでは、「超深度画像取り込み」手順が案内される。ユーザはこの手順に従って、電子顕微鏡画像を撮像するために必要な設定を順次行う。合成フロー表示欄290では、合成フロー中、現在の手順である「超深度画像取り込み」手順のみがハイライト表示され、また手順表示欄292のテキスト説明欄293には、ユーザが行うべき手順が文字で説明される。図117の例では、「Step1:超深度画像取り込み 超深度画像を取り込みます。画像の調整を行い、「取り込み」ボタンをクリックしてください。」と説明される。また、必要に応じて音声案内や手順をアニメーションで説明する動画等の説明を追加してもよい。さらに詳細設定欄294には、現在設定されている電子線撮像手段11の拡大倍率と、傾斜角度とが倍率角度表示欄299に表示される。加えて、走査速度を指定するための走査速度設定欄301が設けられている。走査速度設定欄301では、走査速度による撮像結果をユーザが感覚的に把握しやすいよう、「撮影スキャン」として標準、はやい、きれい、積算のいずれかをラジオボタンで選択可能としている。また、より詳細な設定、例えば加速電圧の指定等を行うには、「画質の調整」ボタン302を押下して、詳細設定可能な設定画面を呼び出す。以上のようにして、電子顕微鏡画像の撮像に必要な設定を終えると、「取り込み」ボタン303を押下して、撮像を実行できる。撮像が終了して、電子顕微鏡画像が静止画として取り込まれると、縮小画像表示欄295に、取得した電子顕微鏡画像の縮小画像SGが表示される。この例では、倍率角度表示欄299に表示されるように、撮像時の拡大倍率すなわち第一倍率として200倍で、傾斜角度−3°の電子顕微鏡画像が撮像される。
さらにこの際、広域画像の取得も併せて実行される。すなわち、詳細設定欄294で表示された拡大倍率よりも低倍率の広域画像を複数枚取得して、広域画像保存手段321に保存しておく。広域画像は、上述の通り広域画像取得手段320で、自動的に拡大倍率が指定されて複数枚が取得される。ここでは、第一倍率である200倍を基準として、100倍、50倍、25倍の計3枚の広域画像が撮像される。この撮像はバックグラウンドで行われ、ユーザには広域画像が追加で撮像されていることを意識させない。
(「視野・倍率の調整」手順)
以上のようにして「超深度画像取り込み」手順が終了すると、「次へ」ボタン296を押下し、図118に示す「視野・倍率の調整」手順に移行する。ここでは、電子顕微鏡画像と同じ倍率、同じ姿勢で光学画像を撮像するための設定を行う。この画面では、画像表示領域286が左右に二分割され、右側の電子顕微鏡画像表示領域117には既に撮像された電子顕微鏡画像の静止画が、左側の光学画像表示領域118には、現在観察中の光学画像のライブ画像が、それぞれ表示されている。また、各表示領域には、十字状のグリッドが重ねて表示される。
合成フロー表示欄290では、合成フローのハイライト表示が「超深度画像取り込み」手順から「視野・倍率の調整」手順に移り、手順が移行したことが示される。また手順表示欄292のテキスト説明欄293には、ユーザが行うべき手順として「Step2:視野・倍率の調整 左右の画像で対象物が同じ位置・大きさに見えるように、光学レンズの傾斜角度、倍率を調整してください。」と説明される。また詳細設定欄294には、拡大倍率と傾斜角度が、撮像済みの電子顕微鏡画像のそれらと、現在観察中の光学画像のそれらとが対比して表示される。このとき、各値を現在値と目標値として表示することで、ユーザは設定すべき項目がより明確になって、混乱無く必要な設定値に合わせ込むことができる。この例では、現在の光学画像の拡大倍率50倍(視認倍率)に対して、目標となる電子顕微鏡画像の拡大倍率が200倍(第一倍率)であること、また現在の光学画像の傾斜角度37°に対して、目標となる電子顕微鏡画像の傾斜角度が−3°であることが表示されている。よってユーザは、現在値が目標値となるように、光学系撮像手段12の拡大倍率と傾斜角度とを調整する。
(倍率連動機能)
(視認倍率画像生成機能)
またこのとき、電子顕微鏡画像と光学画像の表示倍率を一致させる倍率連動機能をONにすることで、両観察像の対応関係を容易に把握し易くできる。具体的には、「カラー画像の倍率に超深度画像の倍率を合わせて表示」チェックボックス304をONすることで、倍率連動機能が働き、電子顕微鏡画像が、その撮像時の倍率に拘わらず、光学画像で現在設定されている視認倍率と一致するように自動的に拡大/縮小された視認倍率画像として、電子顕微鏡画像表示領域117に表示される。この機能によって、図118においては電子顕微鏡画像の目標倍率が200倍であるにも拘わらず、電子顕微鏡画像表示領域117においては視認倍率である50倍で表示されている。この倍率連動機能は、視認倍率画像生成手段322によって実現される。すなわち、予め撮像された広域画像に基づいて、視認倍率画像が視認倍率画像生成手段322によって生成され、電子顕微鏡画像表示領域117に表示される。そしてユーザが光学画像の視認倍率を変更すると、これに追従して、変更後の視認倍率の視認倍率画像が生成され、表示領域で表示される電子顕微鏡画像も更新される。この結果、光学画像表示領域118で表示される光学画像のライブ画像と同じ倍率で、電子顕微鏡画像を表示させることができるので、ユーザは従来のように電子線撮像手段に切り替えて低倍率の広域画像を撮像し直す手間を省くことができ、極めて容易に各観察像の対応関係を把握できるようになる。また、カラー合成画像の生成用に撮像した元の電子顕微鏡画像については、縮小画像表示欄295に表示させていることから、本来撮像したい画像についても、ユーザは見失うことがない。
そして、上述の通り光学画像の傾斜角度と拡大倍率を、電子顕微鏡画像のそれらと一致させる。例えば図118の状態で、傾斜角度を現在の37°から目標値の−3°に一致させる。すると、図118の例では傾斜角度が異なることから、観察像の見え方も異なっていたものが、図119に示すように等しい傾斜角度に一致されて、同じような見え方の画像に近付けることができる。またこの際、詳細設定欄294に表示されている傾斜角度の現在値を、黒色から緑色に変化させている。このように現在値の表示を変化させることで、ユーザに対して目標値に一致されたことを視覚的に告知できる。また表示の変化は色に限らず、点滅表示やハイライト表示等、他と区別可能な表示形態が適宜利用できる。
さらに拡大倍率も、図119に示す現在値の50倍から、図120に示すように目標値の200倍に調整すると、詳細設定欄294に表示されている拡大倍率の現在値表示が、同様に黒色から緑色に変化され、さらに画像表示領域286においても光学画像の拡大倍率が元の電子顕微鏡画像と一致されるので、電子顕微鏡画像表示領域117で表示される視認倍率画像が、本来の撮像された電顕微鏡画像に戻り、縮小画像表示領域における電子顕微鏡画像の縮小画像SGと一致する。このようにして、光学画像を撮像するための条件設定をユーザは極めて容易に、かつガイダンスに従ってスムーズに行うことができる。さらに、上述した視野ずれ補正も、ここで併せて行うことができる。
(「カラー画像取り込み」手順)
そして、図120の状態から「次へ」ボタン296を押下すると、図121の画面に切り替わり、「カラー画像取り込み」手順に進む。この画面では、実際に光学画像の撮像を行う。ここでは手順表示欄292のテキスト説明欄293には、ユーザが行うべき手順として「Step3:カラー画像取り込み カラー画像を取得します。画像を調整し、「取り込み」ボタンをクリックしてください。」と説明される。さらに詳細設定欄294には、図117の画面と同様、現在設定されている光学系撮像手段12の拡大倍率と傾斜角度が表示され、さらに「画質の調整」ボタン302Bと「クイック深度合成」ボタン305、「取り込み」ボタン303Bが表示される。「画質の調整」ボタン302Bを押下すると、光学画像の撮像に関するより詳細な設定が可能な詳細設定画面が表示される。特にこの画面では、画像表示領域286から電子顕微鏡画像表示領域117の表示を非表示とし、光学画像表示領域118のみを表示し、光学画像を撮像するための細かな設定を確認し易くしている。
(「クイック深度合成」ボタン305)
また「クイック深度合成」ボタン305を押下すると、光学画像を複数枚、合焦位置を変えて撮像し、ピントの合った部分を抜き出して合成するクイック深度合成を行い、得られたクイック深度合成画像を表示させることができる。このクイック深度合成画像は、通常の光学画像よりも広い範囲で合焦が得られるため、より高精細で、この画像を用いてさらに電子顕微鏡画像とカラー画像合成することによって、一層精細なカラー合成画像を得ることが可能となる。
そして「取り込み」ボタン303Bを押下すると、光学画像が撮像されて、図122に示すように撮像された光学画像が、光学画像表示領域118に表示される。また縮小画像表示領域にも、撮像された光学画像の縮小画像SGが同じく表示される。この状態で「次へ」ボタン296を押下すると、図123の画面に進み、「画像の位置合わせ」手順が表示される。
(「画像の位置合わせ」手順)
図123に示す「画像の位置合わせ」手順では、撮像された電子顕微鏡画像と光学画像との位置合わせを行う。手順表示欄292のテキスト説明欄293には、ユーザが行うべき手順として「Step4:画像の位置合わせ 画像の合成位置は下段に表示されている位置でよろしいですか?よろしければ「次へ」をクリックしてください。合成位置をマニュアルで調整したい場合は「マニュアル調整」をクリックしてください。」と説明される。この画面では、位置合わせを自動調整のまま利用するか、ユーザが手動で位置調整を行うかを選択できる。画像表示領域286では、上下に二分割された上段では、さらに左右に二分割されて左側の光学画像表示領域118に撮像済みの光学画像が、右側の電子顕微鏡画像表示領域117には同じく撮像済みの電子顕微鏡画像が、それぞれ表示される。さらに下段には第三表示領域108が設けられており、この状態では未だカラー合成画像は生成されず、単に光学画像と電子顕微鏡画像とが一致するように重ね合わせられた重畳状態で表示される。自動位置合わせ作業は、自動位置合わせ手段324により行われる。ここではパターンマッチング等の既知の手法を用いて、光学画像と電子顕微鏡画像との対応位置を計算し、この結果に基づいて2枚の観察像を一致させるように重ねて表示する。図123の例では、電子顕微鏡画像を基準とし、この上に光学画像をできるだけ一致させる姿勢に移動、回転、拡大/縮小等を行った上で、重ねて表示している。ユーザは、合成画像表示領域にて表示される重ね合わせ状態を確認し、このままでよければ「次へ」ボタン296を押下して、「カラー合成画像を表示」手順に該当する図128に進む。
(「カラー合成画像を表示」手順)
図127の画面で「次へ」ボタン296を押下すると、これまでの手順で設定された条件に従ってカラー画像合成が実行されて、図128に示すように、生成されたカラー合成画像が画像表示領域に表示される。また、得られたカラー合成画像では不十分な場合は、さらに条件を変更して再度カラー合成画像を生成し直すため、図128の画面から「戻る」ボタン267を押下して先の手順に戻り、各種設定を再度調整する。例えば、光学画像と電子顕微鏡画像の位置合わせが不十分と思われる場合は、図123の画面から「マニュアル調整」ボタン306を押下して、図124のマニュアル調整画面に切り替える。
(マニュアル調整画面)
マニュアル調整画面では、手順表示欄292のテキスト説明欄293が、図123から図124に示すように「Step4:画像の位置合わせ カラー画像上で特徴のある点をクリックし、次に超深度画像上で対応する点をクリックしてください。」と変化し、各観察像の上で対応点を指定する様子が絵付きで説明される。また詳細設定欄294には、対応点を指定、修正等するための対応点指定手段180に対応する対応点指定ボタン群180Bとして、「追加」ボタン182B、「移動」ボタン184B、「削除」ボタン183B、「オート」ボタン307、「リセット」ボタン308が設けられる。さらに対応点指定ボタン群180Bの下方には、対応点の指定作業をサポートする機能を実現するため、「点の追加・移動時に拡大表示する」チェックボックス185B、「対応点の指定時に画像を重ねて表示する」チェックボックス309、透明度スライダ186Bが設けられている。これらの対応点指定ボタン類は、対応点を編集する対応点編集機能にも対応する。具体的には、図91に示す対応点編集手段におけるAddボタン182が「追加」ボタン182Bに対応し、Removeボタン183が「削除」ボタン183Bに対応し、Modifyボタン184が「移動」ボタン184Bに対応する。さらにズーム手段185は、「点の追加・移動時に拡大表示する」チェックボックス185Bに、透過度調整手段186は透過度スライダ186Bに、それぞれ対応する。「点の追加・移動時に拡大表示する」チェックボックス185BをONすると、対応点の追加や移動時に、画像表示領域286における画像表示を自動的に拡大表示に切り替えて、詳細な位置決めを行い易くできる。また透過度スライダ186Bを調整することで、半透明画像の透過率を連続的に調整でき、ユーザは試料の状態等に応じて重畳表示時の見易さを加減できる。なお「オート」ボタン307は、自動位置合わせ手段324による自動位置合わせを実行するためのボタンであり、「リセット」ボタン308は指定済みの対応点をすべて削除して初期状態に戻すためのボタンである。
このような機能を備えた図124の画面から、「追加」ボタン182Bを押下すると、ポインティングデバイスのマウスカーソル等を位置指定ポインタとして、光学画像表示領域118中の光学画像上で第一対応点を指定する。指定された第一対応点は、第二対応点が指定されていない状態では、図125に示すように赤色で表示されており、第二対応点が指定されて対応関係が確定された時点で図126に示すように緑色の表示に変化する。また各対応点には、対応点情報として数値が表示される。この値は、対応点の指定順に数値が連番で昇順に1ずつ追加されている。さらに、対応点指定の際には光学画像と電子顕微鏡画像とを重畳して表示する重畳表示機能によって、特に第二対応点の指定に際してユーザが正確な位置調整を容易に行い易くできる。具体的には、「対応点の指定時に画像を重ねて表示する」チェックボックス309をONにすると、図125に示すように、電子顕微鏡画像表示領域中の電子顕微鏡画像上で第二対応点を指定する際、位置指定ポインタの動きに追従して光学画像が半透明画像として表示される。これにより電子顕微鏡画像表示領域117中で電子顕微鏡画像と光学画像とが重畳されて表示されるため、ユーザは、電子顕微鏡画像上で光学画像をどの位置に置くことで、両画像を一致させることができるかを、重なり具合を実際に確認しながら第二対応点を指定できる。第二対応点が指定されると、これら第一対応点と第二対応点とを一致させるように補正パラメータ算出手段181が補正パラメータを算出して、再度自動位置合わせ手段324により位置合わせの補正が行われ、補正後の位置にて重ね合わせた状態に、合成画像表示領域における光学画像と電子顕微鏡画像の重畳表示が更新される。なお、第二対応点が確定された時点で、図127に示すように電子顕微鏡画像表示領域117における重畳表示はOFFとなり、光学画像の半透明画像が消え、第二対応点を指定した電子顕微鏡画像のみの表示に戻る。
さらに図126、図127に示すように、複数の対応点が順次指定されると、これらの対応点に応じてさらに補正パラメータ算出手段181が補正パラメータを詳細に算出して、自動位置合わせ手段324はより詳細な位置合わせを行う。このようにして、自動で位置合わせされた状態から、ユーザが手動で微調整を行うことによって、より詳細な位置合わせが実現できる。そして「画像の位置合わせ」手順が終了すると、「次へ」ボタン296をクリックし、「カラー合成画像を表示」手順に進む。ここでは画像合成手段でカラー合成画像を生成し、生成されたカラー合成画像を画像表示領域286に表示させる。また、生成されたカラー合成画像に関する種々の操作を行う画面の例を図128に示す。この画面では、電子顕微鏡画像と光学画像の合成比率を調整する表示パラメータ調整手段258、画像表示領域286の表示内容を切り替える表示切替手段36、及び画像の印刷、保存を行う「印刷」ボタン311B、「保存」ボタン312を備えている。表示切替手段36としては、合成前の光学画像を表示させる「カラー」ボタン313、電子顕微鏡画像を表示させる「超深度」ボタン314、カラー合成画像の表示に戻す「デフォルト」ボタン315、詳細な設定画面を呼び出すための「詳細」ボタン316、「観察画面で表示」ボタン317等を備えている。「観察画面で表示」ボタン317を押下すると、カラー合成画像を画像表示領域に表示した状態でメインの観察画面に戻る。例えばカラー合成画像で計測等を行いたいユーザはこれを選択する。
図128の画面では、図87等で上述した表示パラメータ調整手段258を用いて、表示パラメータを調整することもできる。具体的には、図128の画面から、比率調整手段250を構成する「バランス」スライダ250Bを操作して、電子顕微鏡画像の輝度情報と、光学画像の輝度情報との合成比率を連続的に調整できる。またテクスチャ強度調整手段253を構成する「テクスチャ強度」スライダ253Bを調整して、電子顕微鏡画像と光学顕微鏡のテクスチャ成分全体の強度を調整できる。さらに色強度調整手段254を構成する「カラー」スライダ254Bを調整して、色情報の強度を調整できる。このようにして、得られたカラー合成画像に対してユーザは表示パラメータを微調整して、画像表示領域286で調整結果を確認しながら、最適な表示パラメータに決定し、最終的に所望のカラー合成画像を取得できる。
(マルチ保存機能)
さらに、複数の観察像を表示させた状態で、これらの観察像を画像データファイルとして保存する際、観察像毎に個別にファイル名を指定して保存する方法の他、表示中の観察像を一括して保存することもできる。このような複数画像の保存を行うマルチ保存機能を備えることで、ユーザは画像データ毎に個別にファイル名を指定して順次保存する作業を繰り返すという煩わしい作業から開放され、使い勝手を向上できる。
また対比観察や画像合成においては、同一の試料を異なる観察手段で撮像した観察像を表示させることが多い。この場合、例えば同一の試料を同一の倍率で同一の視野角度から撮像した画像同士は、対比して表示させることでその真価を発揮できるということもできる。このため従来は、同じ観察対象の試料を撮像した光学画像と電子顕微鏡画像とを保存する際に、それぞれのファイル名や保存場所をユーザが手書きでメモしておき、後日これらの画像を再生表示させる際は、このメモに従って各画像を個別に開くことで、元の観察状態を再現するということが行われていた。この方法では、各観察手段で撮像した画像データファイルの、ファイル名と保存場所とを一々メモする必要があり、またメモを管理しておく必要があって、極めて煩わしい。特にメモは紛失する虞があり、また紛失しないまでも、どのメモにどの観察の様子が記されているかを探し出すことが容易でない。
そこで本実施の形態においては、複数の画像データファイルのマルチ保存に際して、その観察時に撮像した試料の関連情報を、共通識別情報として記録しておくことができる。共通識別情報として、好ましくはファイル名の一部を指定する。また個別識別情報として、例えば観察像を撮像した観察手段の種別や観察像の種類、例えば電子顕微鏡画像か光学画像か、等の情報を記録することもできる。これによってユーザは、ファイル名から、どの画像ファイル同士が関連しており、またどの画像ファイルが電子顕微鏡画像で、どの画像ファイルが光学画像かを、容易に判別できるようになる。
以下、このようなマルチ保存機能を、図129〜図132に基づいて説明する。これらの図において、図129はマルチ保存機能を備える拡大観察装置のハードウエア構成を示すブロック図、図130は複数の異なる観察手段で撮像した観察像を表示手段2上に表示した状態を示すイメージ図、図131は、ファイル保存手段により画像データファイルを保存する際のユーザインターフェース画面のイメージ図を、それぞれ示している。この拡大観察装置は、図129に示すように、異なる観察手段として、電子線撮像手段11と、光学系撮像手段12と、これら観察手段で撮像され表示手段2上に表示された観察像を、画像データファイルとして各々保存するためのファイル保存手段190と、画像データファイルを保存するための画像データ記録領域として記憶手段131Gと、ファイル保存手段190で記憶手段131Gに一旦保存された複数の画像データファイル中から、所望の画像データファイルを選択して、表示手段2上で表示させるためのファイル表示選択手段197と、表示手段2とを備えている。ここで、図130に示すように光学系撮像手段12で撮像した光学画像と、電子線撮像手段11で撮像した電子顕微鏡画像と、これらを合成した合成画像を、表示手段2の第二表示領域、第一表示領域、第三表示領域108にそれぞれ表示した状態で、各観察像を画像データファイルとして保存することを考える。各観察像の保存は、個別に行う他、一括して行うことができる。このようなマルチ保存を行うには、例えば図117〜図127に示す画面上から、「マルチ保存」ボタン279dを押下すると、ファイル保存手段190が実行され、図131のダイヤログボックスが表示される。
(ファイル保存手段190)
ファイル保存手段190は、表示手段2上に表示された複数の観察像を、それぞれ画像データファイルとして、記憶手段131Gに保存する。この際、ファイル保存手段190は、これら光学画像と電子顕微鏡画像とに共通する共通識別情報を、各画像データファイルに対して付与する。図131のダイヤログボックスは、画像保存場所指定手段191と、共通文字列指定手段192と、ファイル名例示欄193とを備える。ユーザは画像保存場所指定手段191から、画像データファイルの保存先を指定する。また共通文字列指定手段192からは、共通識別情報として、ファイル名の一部を構成する共通文字列を指定する。さらにファイル名例示欄193には、共通文字列指定手段192に入力中の共通文字列に従って、各画像データファイルのファイル名がどのように付与されるかを、ユーザに例示する。
(画像保存場所指定手段191)
画像保存場所指定手段191は、画像データファイルの保存先を指定するための欄であり、ユーザは直接保存場所を入力し、又は「参照」ボタンを押下して、所望のディレクトリやフォルダを指定する。なお図131の例では、画像データファイルの保存場所は、一律に画像保存場所指定手段191で指定された場所となり、すべての画像データファイルがこの場所に保存されることとなる。ただ、観察像の種別に応じて、ファイル保存手段190が自動で保存先のフォルダを振り分けて保存するよう構成してもよい。例えば、デフォルトで光学画像用、電子顕微鏡画像用、合成画像用の保存先を予め指定しておき、各画像データファイルはこれらの場所にそれぞれ保存するように設定しておく。あるいは、画像保存場所指定手段191を観察像の種別毎に複数設け、光学画像用、電子顕微鏡画像用、合成画像用に保存先をそれぞれ指定可能としておき、各画像データファイルをそれぞれユーザが指定した位置に保存する構成としてもよい。
(共通識別情報)
画像データファイル同士の関連性を示す共通識別情報としては、画像データファイル名が好適に利用できる。図131の例では、ファイル保存手段190が、ユーザに対し、共通識別情報として、画像データファイル名の一部を構成する共通文字列194の入力を図131の画面上から促す。ユーザはファイル名として任意の文字列を指定する。例えば、観察対象の試料の名称や観察目的、観察の日時等をファイル名として共通文字列指定手段192から指定する。またこの共通識別情報は、後述するファイル表示選択手段197によってマルチ再生時に利用され、関連する画像データファイルを纏めて表示できるという利点も得られる。
(共通文字列194)
共通識別情報を示す共通文字列194には、任意の文字列が指定できる。好ましくは、ユーザが後で内容を判別しやすいようなファイル名を用いるのが好ましく、例えば「2010年1月1日の試料A」、「処理後の回路x」、「sample1」等とできる。また文字列には、数字や英文字、記号、例えば括弧やピリオド、スペース、空欄等を含めてもよい。あるいは、共通文字列指定手段を空欄のままとすることも可能である。なお本明細書中において文字列とは、1文字や空白(入力なし)を含む。
ユーザが共通文字列指定手段192から共通文字列194を指定し、OKボタンを押下すると、自動的に各観察像に対するファイル名が付与されて、画像データファイルが保存される。このためユーザは、複数の観察像を個別に保存するために、共通のファイル名を指定するだけで足りる。例えば光学画像と電子顕微鏡画像とこれらの合成画像の3枚を保存するために、各々の画像を選択した上で、各画像の保存先とファイル名とをそれぞれ指定する作業を、3回繰り返すことなく、一の動作ですべての画像データファイルを保存でき、煩雑な作業を簡素化できる利点が得られる。ここで、ファイル保存手段190がファイル名を自動付与する際のルールは、ユーザが指定した共通文字列194に対して、予め指定された個別文字列196を付加することで行われる。
(個別文字列196)
個別文字列196は、観察像を取得した観察手段の種別や、観察像の種類を示す。例えば、画像データファイルが光学画像の場合は、光学系撮像手段12で取得されたものである、あるいは光学画像であることを個別文字列196で示す。同様に画像データファイルが電子顕微鏡画像の場合は、電子線撮像手段11で取得されたものである、あるいは電子顕微鏡画像であることを個別文字列196で示す。図131の例では、光学画像にA、電子顕微鏡画像にB、合成画像にCの文字を個別文字列196として付加している。付加する文字列の長さは、共通とすることが望ましい。これによって、同時に生成される各ファイルのファイル名長さが一致し、視認性が良くなる。
また個別文字列196は、共通文字列194に続いて付加することが好ましい。これによって、ファイル名の先頭には共通文字列194が位置するため、ファイル選択画面においてファイル名でソートすることにより、関連する画像データファイルが並ぶこととなって、ユーザがファイル選択する際の視認性が改善される。
(区切り文字列195)
また、共通文字列194と個別文字列196との間に、区切り文字列195を介在させることもできる。このような区切りを配置することで、ユーザは共通文字列194と個別文字列196を判読し易くなる。このような区切り文字列195には、アンダーバーやハイフン、スペース、スラッシュ、バックスラッシュ、イコール、縦棒、ピリオド、コンマ、セミコロン、アンパサンド、パウンド(井桁)、ティルダ、括弧等が利用できる。もちろん、使用するコンピュータやOS、プログラム等の使用環境に応じて、適切な文字列を選択することはいうまでもない。例えばOSによってはコンマやスラッシュ等がファイル名に使用できないことがあり、このような文字以外、又は使用制限のない全角文字を使用する。
このような区切り文字列195を付加することで、ファイル名の構成は共通文字列194に続いて、区切り文字列195を介して、観察手段や画像の種別といった個別識別情報の内容が続くため、ユーザは個別識別情報の内容を把握し易くなるという利点が得られる。
なお、区切り文字列195と個別文字列196とは、いずれもファイル保存手段190で自動付与される関係上、これらの文字列を特に区別することなく、例えば個別文字列の一として区切り文字列を含めると捉えることもできる。すなわち、個別文字列の文頭に、このような区切り文字列に相当する文字列を付加することでも、同様の効果を得られることはいうまでもない。
また区切り文字列195は、一文字以上としてもよい。さらに個別文字列196や区切り文字列195は、予め所定の文字列を拡大観察装置側で規定しておく他、ユーザが所望の文字列を個別文字列として指定、変更するよう構成してもよい。
(ファイル名例示欄193)
さらに共通文字列指定手段192には、ファイル名が付与される規則を例示するファイル名例示欄193を設けている。この例では、光学画像には、共通文字列194に続けて「_A.jpg」の文字列が付加され、また電子顕微鏡画像には、共通文字列194に続けて「_B.jpg」の文字列が付加され、さらにこれらの合成画像には、共通文字列194に続けて「_C.jpg」の文字列が付加されるよう設定されており、そのような例示がファイル名例示欄193に示されている。これによりユーザは、ファイル名例示欄193に例示された規則に従ってファイル名が自動的に付与されることを視覚的に確認できる。
(記憶手段131G)
ファイル保存手段190により画像データファイルを保存するための記憶手段131Gには、ハードディスクや半導体メモリ等の記憶素子が利用できる。なお、記憶手段131Gは、上述した電子顕微鏡画像を記憶する第一記憶手段131、及び光学画像を記憶する第二記憶手段132を含めてもよい。また、このような電子顕微鏡画像と光学画像を保存する記憶手段又は記憶領域を区別することなく、共通の記憶手段等に、これら電子顕微鏡画像と光学画像、さらにはこれらの合成画像を、纏めて記憶することも可能であることはいうまでもない。
なお保存される画像データファイルのファイル形式としては、規格化された既存のファイル形式や、専用のフォーマットが利用できる。特に規格化されたファイル形式であれば、汎用の画像閲覧ソフトでも読み込みできるため、汎用性が高く好ましいといえる。例えば、jpegやtiff、png、bmp、gif、jpeg2000、fpx、pict、hdp(wdp)等が利用できる。また、PDFやPSD等、特定のアプリケーションファイル形式としてもよい。
このようにして、表示手段2上で表示中の観察像について、各観察像の画像データファイル名がファイル保存手段190によって自動で付与される。なお上記の例では、各画像データファイルは個別のファイルとして保存しているが、複数画像を統合した画像データファイルとして保存することもできる。例えば、ファイル保存手段190が個別の画像データファイルを保存するのと同時に、複数の画像ファイルを一ファイルに纏めたマルチtiffファイルやPDFファイルを生成する。あるいは、図130に示す3つの画像を一画面に表示した、表示例そのままで、すなわち一枚の画像中に光学画像と電子顕微鏡画像と合成画像とが表示された画像ファイルを、併せて保存することもできる。
また上記の例では、共通識別情報は各画像データファイルに付与しているが、いずれかの画像データファイルにのみ共通識別情報を付与してもよい。例えば光学画像にのみ共通識別情報を付与し、電子顕微鏡画像には共通識別情報を付与しない。この場合は、ファイル表示選択手段で光学画像を選択すると、この光学画像に対応する電子顕微鏡画像及び合成画像を作成している場合は、光学画像と共に合成画像も表示されるが、一方で電子顕微鏡画像を選択した場合は、このような画像データファイルの同時読み込みはなされない。あるいは、合成画像にのみ共通識別情報を付与しておけば、この合成画像を選択すると、合成画像の元となった光学画像と電子顕微鏡画像が併せて表示される。
さらに、合成画像の保存は必須でない。すなわち、合成画像を生成していない場合にマルチ保存機能を実行すると、光学画像と電子顕微鏡画像のみが保存されることとなる。
さらに一方で、画像データファイルを自動的に保存する機能を備えることもできる。例えば撮像時や保存時の日付や時間を共通識別情報として自動的に取得して、これに上述した個別識別情報を付加してファイル名を指定し、画像データファイルを保存することもできる。また、このような自動的な画像保存を一時的なものとして、例えば作業領域等に仮に保存しておき、ユーザがファイル名を指定して保存作業を行った際には、一時保存された画像データファイルを削除するように構成することもできる。
(マルチ再生機能)
以上のようにしてマルチ保存された画像データファイルを再生表示させる際に、共通識別情報によって関連付けされた画像データファイルも併せて再生表示させる機能を付加することもできる。このようなマルチ再生機能について、図132に示すファイル表示選択手段197で画像データファイルを選択する際のユーザインターフェース画面のイメージ図に基づいて説明する。
(ファイル表示選択手段197)
ファイル表示選択手段197は、ファイル保存手段190で保存された複数の画像データファイル中から、表示手段2上で表示させたい所望の画像データファイルを選択するための手段である。図132に示すダイヤログボックスでは、画像データファイルの場所とファイル名を指定するファイル選択欄198と、ファイル選択欄198で選択された画像データファイルの内容を表示させるファイルプレビュー欄199を備えている。ファイル選択欄198は、ファイル保存手段190で保存された画像データファイルの保存場所を指定する。このファイル選択欄198で、画像データファイルのいずれかをクリックすると、選択された画像データファイルの内容がファイルプレビュー欄199で一時的に表示される。この際、ファイル表示選択手段197は、マルチ保存された関連する画像データファイルが存在するかどうかを自動的に判定し、存在する場合はこれらの関連画像データファイルも抽出して、自動的にファイルプレビュー欄199に表示させる。ユーザは、ファイルプレビュー欄199で所望の観察像かどうかを確認して、決定後、OKボタンを押下すると、該当する画像データファイルがすべて読み込まれて、図130と同様に、表示手段2上に表示される。
またファイル表示選択手段197は、個別識別情報に基づいて、ファイル選択欄198において画像データファイルのアイコン表示を変更してもよい。例えば光学画像については光学系撮像手段のイメージ、電子顕微鏡画像については電子線撮像手段のイメージを、画像データファイルのアイコンとしてそれぞれ表示することで、ユーザは画像データファイルを開くことなく、観察像の種別を視覚的に判別できるようになる。あるいは、アイコン表示に代えて、画像データファイルの内容自体を縮小表示させることもできる。
このように、異なる種類の観察像を表示手段2上に表示させた状態で、ユーザがマルチ保存を指示することで、ユーザが共通文字列194を指定できる。さらに、区切り文字列195を介して個別文字列196として、ファイル名末尾に規則性のある接尾辞を付与することで、ファイル名を自動生成して、各観察像を一度に保存できる。これにより1回の操作で関連性のある複数の画像データファイルを保存することができる。
また、保存された画像データファイルを再生表示する際には、いずれかの画像データファイルに対して、ファイルを開く操作を行うと、接尾辞のみ異なる画像データファイルを関連性のあるファイルと認識して、自動的に同時再生表示を行う。これにより、関連性のあるファイルに対して、保存時における個別保存の手間と、再生時における関連する複数のファイルを探し出す手間とを省力化でき、ユーザの負担を軽減することができる。特にこの例では、ファイル名を手掛かりとして、保存時には複数の画像データファイルのファイル名を自動付与し、さらに再生時には、このファイル名を含む画像データファイルを自動で抽出して読み込むという、極めてシンプルな構成でありながら、ユーザが繰り返しファイルを保存したり、読み込みファイルを指定するという煩わしい作業を大幅に簡素化でき、しかもどのファイルが関連しているかという対応関係についても、ユーザはファイル選択画面中から、共通のファイル名を有するファイル同士を目視により容易に判別できる。さらに、ファイル名を利用した簡単な構成であることから、ファイルの関連付けを行うためのタグやリンク情報の埋め込みといった特殊な作業も不要であり、かつそのような特殊な情報を読み込むための専用のプログラムも不要で、汎用性も極めて高く、その利便性は極めて大きい。
(計測機能)
さらに拡大観察装置は、表示手段2上に表示される画像上で、指定した2点間の距離や指定した領域内の面積等を計測可能な計測機能を備えている。計測機能においては、電子顕微鏡画像、光学画像、あるいは合成画像のいずれかを表示手段2上に表示させて、マウス等のポインティングデバイスで画像上の任意の点を指示して、計測を実行させる。点の指定は、ユーザが指定した位置をそのまま計測点として利用する他、指定位置に近接するエッジ情報を画像中から検出して、そのエッジ位置を計測点とする、スナップ機能が好適に利用できる。
計測機能で利用する画像には任意のものが利用できるが、電子顕微鏡画像又は合成画像を用いることが好ましい。光学画像は色情報と輝度情報を各画素ごとに有しているが、その色情報、輝度情報の境界線は不明瞭となる傾向がある。特に高倍率での計測は、光学画像では分解能が不足する傾向にあり、計測対象である試料の輪郭やエッジがぼやけてしまい、特にスナップ機能を利用する場合は、計測時に正しい計測点の指定が困難になるためである。一方、電子顕微鏡画像は、輝度情報を各画素毎に有しているが、色情報は有していない。反面、輝度情報の境界線は明瞭であり、高倍率でも構造物のエッジが比較的、明瞭に観察できる。しかしながら、色情報を持った自然な見え方ではなく、試料の電子発生効率に依存した白黒のコントラスト画像であるため、求める計測対象物を直感的に認識し難いという問題がある。そこで、高精細でかつ色情報も有する合成画像が最も利用し易い。
合成画像は例えば、光学画像の色情報と、電子顕微鏡画像の輝度情報を合成する。しかしながら、合成前の2枚の元画像は、各々が独自の座標系を有しているため、図78に示すような基準位置や基準長が、厳密に一致しない。これらを何らかの方法で補正をしても、その誤差を完全に無くすことはできない。このため、2枚の元画像は正確に同一の倍率、観察位置とならず、倍率、観察位置共に多少の誤差を含んでいる。このような合成画像を用いて計測を行うと、座標位置や倍率の誤差によって、計測の精度が低下するという問題があった。例えば2点間の距離を測定する場合、各位置の指定に際して誤差が生じるため、2点を指定する測定では誤差が累積されることになる。
これに対して本実施の形態では、合成画像から計測を行うに際して、元画像である電子顕微鏡画像の位置情報を利用して計測を行う。すなわち、元画像である光学画像の位置情報や、画像合成の際に生じる倍率、観察位置の誤差の累積といった合成に起因する誤差を排除して、計測対象物の境界線を正確に指定することが可能となる。
図133に、このような合成画像における計測機能を備えた拡大観察装置のブロック図を示す。この図に示す拡大観察装置は、電子顕微鏡画像を取得するための電子線撮像手段11と、光学画像を取得するための光学系撮像手段12と、操作手段105Cと、コントローラ1と、表示手段2とを備える。
操作手段105Cは、電子顕微鏡画像の表示倍率を設定するための電子顕微鏡倍率調整手段68、光学画像の表示倍率を設定するための光学倍率調整手段95、表示手段2上に表示される合成画像に対して表示手段2の画面上にて計測点を指定する計測点指定手段130として機能する。
またコントローラ1は、電子顕微鏡画像を保持する第一記憶手段131、光学画像を保持する第二記憶手段132、合成画像に関する位置情報を記憶する第三記憶手段133、画像表示を切り替える表示切替手段36、合成画像を生成する画像合成手段116、倍率換算手段111、モード選択手段110、倍率判定手段119、誘導手段120、計測手段134を備える。表示切替手段36は、表示手段2における画像表示を光学系撮像手段12による表示から電子線撮像手段11による表示に切り替える。このようなコントローラ1は、コンピュータやCPU、LSI等で構成できる。ただ、各機能を個別の部材で実現するように構成してもよい。例えば、観察条件設定手段や光学倍率読取手段を操作手段と別に設けることができる。さらに表示手段2が、換算倍率表示手段123、倍率範囲表示手段126、予定倍率表示手段124、判定告知手段125、状態表示手段121として機能することは上述の通りである。
操作手段105Cは、電子線撮像手段11の像観察条件を設定するための観察条件設定手段として機能する。ユーザは観察条件設定手段を操作して、電子線撮像手段11で電子顕微鏡画像を撮像する際の像観察条件を設定する。像観察条件には、電子顕微鏡の場合は加速電圧やスポットサイズ(入射電子線束の直径)、検出器の種類、真空度等が挙げられ、使用する電子線撮像手段11に応じた条件を観察条件設定手段で設定する。観察条件設定手段で設定された像観察条件は、コントローラ1を介して電子線撮像手段11に送出される。同様に光学系撮像手段12の撮像条件も設定される。コントローラ1は、電子線撮像手段11から電子顕微鏡画像を、光学系撮像手段12から光学画像を取得し、各々第一記憶手段131、第二記憶手段132に保持する。モード選択手段110で合成モードが選択されると、画像合成手段116は、これら第一記憶手段131及び第二記憶手段132に記憶された情報に基づき、電子顕微鏡画像の位置情報と、光学画像の色情報とを合成して合成画像を生成し、表示手段2に表示する。さらに合成画像の位置情報、又は該合成画像の位置情報と、合成前の電子顕微鏡画像の位置情報との対応関係を示す対応情報を、第三記憶手段133に保持する。
この状態で、合成画像に基づく計測を行うには、まずユーザは計測点指定手段130を操作して、表示手段2上に表示される合成画像に対して、画面上にて計測点を指定する。その上で、計測手段134は指定された計測を行う。例えば2点間の距離や高度差、傾斜角度、あるいは指定された閉領域の面積演算等である。ここで計測に際しては、合成画像の元となった電子顕微鏡画像の位置情報を利用する。このため、第一記憶手段131には、予め電子顕微鏡画像を保持する際に、電子顕微鏡画像の位置情報を記憶しておく。位置情報は、観察対象の試料の構造を示す情報であり、座標位置や形状の輪郭等である。この情報を利用することで、画像上で指定された計測点に対応する正確な位置を取得できる。
合成画像の形状が元の電子顕微鏡画像と正確に一致する場合は、合成画像上の位置情報をそのまま計測に利用できる。一方、合成画像の形状が元の電子顕微鏡画像と正確に一致しない場合は、合成画像上の座標位置に対応する電子顕微鏡画像上の座標位置を、第三記憶手段133を参照して取得した上で、該電子顕微鏡画像座標を用いた計測を行う。これにより、光学画像との画像合成によって形状や座標位置にずれが生じた場合でも、より正確な座標位置情報を有する電子顕微鏡画像上での座標位置に変換することで、高精度な計測を行うことが可能となる。
(操作手段105C)
また、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11の両方を共通の操作手段105Cで制御し、かつ両方の観察手段で得た画像の計測時に必要な情報、例えば倍率、観察手段の光軸と試料の位置関係等の情報を、制御手段で一括処理することで、カラー合成画像の計測作業は格段に利便性を向上できる。共通の操作手段105Cは、例えば外付けのコントローラ1を共通化して一のコントローラ1で光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を切り替えて操作可能とする。また、コンピュータにインストールした拡大観察装置の操作プログラムで、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を切り替えて操作可能とする構成も好ましい。加えて、上述の通り観察手段の切り替えを回動式とすることで、試料の同一位置を観察できるよう両方の観察手段を容易に切り替え、移動可能としたことで、カラー合成画像の合成作業を一層簡単に行える利点も得られる。
また図26や図134の構成においては、同一の視野を同一の方向(傾斜角度)から観察するために、胴部24を回転する。なお、一方の観察手段が元あった位置に、他方の観察手段が位置していることを認識する手段としては、胴部24にさらに回転エンコーダ等の回動位置検出手段264を設置して、回転角度を電気的に知る方法、又は胴部24と固定側に、それぞれ目盛と目印を付けておき、目視で回転角度を知る方法等が利用できる。
なお、以上の例では図26や図134に示すような回動式の移動機構を備える試料室の形態について説明したが、本発明は上記構成に限られず、一の試料室に複数の観察手段を備える様々な構成が利用できる。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を有する試料室21構成の変形例を図135〜図138に示す。各例において、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11は、それぞれが同一の試料SAを撮像できるように配置される。
図135の例では、観察手段10の切り替えを旋回式のリボルバで行っている。また図136の例では、観察手段10を平行移動によって切り替えている。また上記は試料台33を固定して観察手段10側を移動させる構成であるが、これに限らず観察手段10側を移動させる構成としてもよい。例えば図137では、試料台33を平行移動させる構成、図138では試料台33を傾斜させる構成を、それぞれ示している。さらに図139の例では、ハーフミラーによって観察手段10の光軸を選択する構成としている。このように、本実施の形態は、複数の観察手段10を備える様々な形態において適宜利用できる。
図139の例では光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11の光軸をそれぞれ同軸に配置しており、図137は平行に、図138はV字状にそれぞれ配置している。特に図139の構成では、光学系撮像手段12の光軸と電子線撮像手段11の光軸が一致するように配置されているため、同一視野の画像を取得することができ、好ましい。またこの構成では、光学系撮像手段12の画像信号と電子線撮像手段11の画像信号を切り替える際に試料台33を移動させる必要がないため、速やかに切り替えを行うことができる。またリアルタイムでの観察や動画像の観察も実現できる。また光学系撮像手段12は、試料室21内に設置することで、試料室21内の減圧若しくは真空状態が維持されるので、表示切替手段36等により撮像系を切り替える際の減圧工程を不要にでき、スムーズな切り替えが実現できる。このような撮像系のスムーズな切り替えは、シームレスな表示切り替えが実現され、極めて使い勝手のよい電子顕微鏡とできる。ただ、図139の構成では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11のそれぞれの光軸を同軸にするために、電子線撮像手段11の光軸上に光学系撮像手段12の光軸を折り返すためのミラー等を配置する必要があり、構成が複雑になり高価になるという問題がある。また、同軸構成にすることによる装置の複雑化によって、光学系撮像手段12、電子線撮像手段11の光学設計の自由度が少なくなり、画像性能に影響を及ぼす可能性もある。
これに対して、図136〜図138の構成では、このようなミラーが不要であり比較的安価に実現できる。ただ、図137の構成では、切り替え時に試料台33を平行移動させる、光学系撮像手段12を設置する等の必要があり、手間がかかる上位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察が阻害される。さらに光学系撮像手段12が大気中に設置されている場合は、電子線撮像手段11が配置された試料室21を真空に減圧する必要があるため、このための時間と手間がかかる。一方、図138の構成では、一方の光軸が傾斜しているため、同一の視野を得るためには試料台33を水平面から傾斜させる必要がある。この場合も、位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察ができない。このように、図137、図138いずれの構成でもリアルタイムでの光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との切り替えが困難となる。これを解消するには、予め光学系撮像手段12で光学画像をデータとして取得した上で、試料SAを電子線撮像手段11で観察可能な位置に移動させ、電子顕微鏡画像を表示可能な状態としておくことが考えられる。この状態で表示手段2に光学画像を表示させて視野探し等を行うと、表示切替手段36で速やかに電子線撮像手段11に切り替えできるので、ハードウエア構成を変更することなくリアルタイムに光学画像から電子顕微鏡画像への切り替えが実現できる。このため、該構成においては光学系撮像手段12で取得された光学画像を保持するためのメモリ部を利用する。メモリ部はRAM等の半導体メモリが利用できる。
(1コントローラに2ヘッドを装着する構成例)
さらにまた、上記の例では同一の試料室21や試料台33に複数の観察手段を設ける例を説明したが、異なる試料を観察する拡大観察装置に対しても本実施の形態を適用できる。例えば図140の例では、それぞれ別個に構成された光学顕微鏡12Bと電子顕微鏡11Bに対し、これらを制御するコントローラ1Bを共通としている。これにより、コントローラ1B側で、表示手段2に表示される光学画像、電子顕微鏡画像の倍率表示を、統一的な倍率に換算して表示したり、一方の画像の倍率を換算倍率に直して他方の観察手段に設定したり、あるいは換算倍率に設定できない場合は、設定可能な倍率の内で換算倍率に最も近い倍率に設定するといったことが可能となる。この場合は、電子顕微鏡11Bの試料台33Dに載置される試料SA4と、光学顕微鏡12Bの試料台33Eに載置される試料SA5という、異なる試料を観察することになる。また以上の例では観察手段として光学系撮像手段と電子線撮像手段の2つを用いたが、3以上の観察手段を切り替え自在に設けることも可能であることはいうまでもない。