以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための拡大観察装置及び拡大観察方法を例示するものであって、本発明は拡大観察装置及び拡大観察方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本明細書において拡大観察装置とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
なお本明細書において、電子顕微鏡画像とは、電子顕微鏡等の電子線撮像手段で撮像された主に観察対象の輝度情報を含む、濃淡で表示されるモノクロ画像を指す。また光学画像とは、可視光や紫外光等を利用した光学系撮像手段で撮像された、主に色情報を含むカラー画像を指す。また光学画像には、可視光カメラによる可視光観察像の他、赤外線カメラによる赤外線観察像も利用できる。また、後述するように光学画像の色情報に基づいて電子顕微鏡画像を着色することも可能である。さらに、電子線撮像手段や光学系撮像手段が画像を取得するとは、一般にはこれらの部材で撮像する意味であるが、他の部材で撮像された画像を電子顕微鏡に取り込むことも包含する概念であり、このような概念を包括する意味で画像の取得という。
以下の実施例では、本発明を具現化した拡大観察装置の一例として、電子顕微鏡の一であるSEMを採用した例を説明する。但し、本発明はTEMやSTEM、その他の荷電粒子線装置においても利用できる。この場合、電子線系撮像手段は荷電粒子線系撮像手段に置換できる。また近視野顕微鏡、原子間力顕微鏡、静電気力顕微鏡等に適用することもできる。さらに光学系撮像手段としては、光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等に適用することもできる。
図1〜図8は、本発明の実施の形態に係る拡大観察装置である。これらの図において、図1は拡大観察システムの概要を示す概略図、図2Aは拡大観察装置の外観斜視図、図2Bは変形例に係る拡大観察装置の外観斜視図、図2Cは図2Bの拡大観察装置を右側から見た外観斜視図、図3は拡大観察装置の試料室内を示す正面断面図、図4は図3のIV−IV線から見た側面断面図、図5は図4のV−V線における断面図、図6は試料台の水平面移動機構を説明するための右斜め前方から見た一部断面斜視図、図7は図6を上から見た一部断面平面図、図8は図6を右斜め後方から見た一部断面斜視図を、それぞれ示す。
(拡大観察システム)
図1に示す拡大観察システム1000は、拡大観察装置100と、減圧ポンプVPと、電源ユニットPUと、表示手段2とを備える。拡大観察装置100は、試料を気密に保持するチャンバユニット14と、試料室21内を減圧する減圧ユニット15とで構成される。チャンバユニット14には観察手段10として、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の2本が装着されている。減圧ユニット15は、外部の減圧ポンプVPに接続されて、試料室21内を高真空、低真空等所定の真空度に減圧する排気系ポンプ70を構成する。また各観察手段10は表示手段2に接続されており、取得した画像データを表示手段2に送出する。表示手段2はディスプレイを備えており、電子線撮像手段11で撮像された電子顕微鏡画像や光学系撮像手段12で撮像された光学画像を、ディスプレイ上に表示できる。
(電源ユニットPU)
コントローラ1や拡大観察装置100、減圧ポンプVPは、電源ユニットPUに接続されている。電源ユニットPUは、図示しない外部の商用電源に接続されて拡大観察装置100等に電力を供給する。この例では、電源ユニットPUはコントローラ1からの指示に基づいて拡大観察装置100に所定の電圧を供給し、拡大観察装置100の動作をコントローラ1で制御し、取得した画像を表示手段2に表示する。
(コントローラ1)
コントローラ1は、専用の機器の他、汎用のコンピュータに拡大観察装置操作プログラムをインストールしたものも利用できる。また必要に応じて、コントローラ1や表示手段2を操作するための外付けのコンソールCSや、電子線撮像手段11の電子銃47に高加速電圧を印加するための高加速電圧ユニットHU等を付加することもできる。さらに図1の例では、コントローラ1が電源ユニットPUを介して拡大観察装置100等の制御を行っているが、電源ユニットをコントローラに統合して直接制御することもできる。
(表示手段2)
図1の例では、コントローラ1に表示手段2を備えている。表示手段2は、電子顕微鏡画像や光学画像を表示するディスプレイ部102を備える。これらの画像は、同時に一画面に表示させたり、切り替えて表示させることができる。表示の切り替えは、コンソールCSから手動で行う。表示手段2にはCRTやLCD、有機EL等のモニタが利用できる。なお図1の例では、表示手段2とコントローラ1を一体に統合しているが、これらを別部材で構成することも可能である。またコンソールCSも、コントローラ1や表示手段2に組み込んでもよい。例えばタッチパネル式の表示手段を利用できる。さらに図1に示す各部材の接続例は一例であって、異なる接続形態や配線を利用することも可能である。また、必要に応じてワイヤレス接続も可能であることはいうまでもない。
図1に示す拡大観察システム1000は、デジタルマイクロスコープ等の光学式レンズを用いた拡大観察と、SEM等の電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡観察を組み合わせたものである。すなわち、電子顕微鏡の試料室21内に光学系撮像手段12を付加している。光学系撮像手段12は第一の観察手段として、可視光や赤外光等により光学画像を撮像する。例えば可視波長や赤外波長の光を利用する光学顕微鏡や光学カメラ等が利用できる。撮像した光学画像はユーザが任意に利用でき、例えばSEM画像等の電子顕微鏡画像の観察中において視野探しのための広域画像として利用したり、観察対象の試料の確認といった電子線観察の補助的な目的で利用される。これら電子線等の荷電粒子を用いて撮像する電子線撮像手段11と、可視光等を用いて撮像する光学系撮像手段12を含む複数の撮像系すなわち観察手段10を、切換可能に構成している。
なお観察手段10の内、光学系撮像手段12は、図9に示すように、SEMを構成する拡大観察装置100から外して、デジタルマイクロスコープ用のスタンドSTに接続し、このスタンドSTのステージに載置された試料の観察を行うこともできる。この構成は、光学式レンズを用いたデジタルマイクロスコープ等の拡大観察システムから見れば、交換可能なヘッド部の一として、SEM等の電子線撮像手段11を接続可能にしたと捉えることもできる。すなわち、従来のデジタルマイクロスコープは、図9に示すスタンド式のカメラユニットのように、主に光学式の観察手段のみをカメラユニット又はレンズユニットとして接続可能としていたところ、本実施の形態ではSEMのような電子線撮像手段11も接続可能とし、さらに電子線撮像手段11を設けた試料室21内での光学画像を撮像するためのカメラユニットとして、光学系撮像手段12を利用することができる。この場合は、図9における電子線撮像手段11を備える拡大観察装置100自体が、拡大観察システムの交換式ヘッド部の一となる。これにより、拡大観察システムで使用する交換可能なカメラ乃至レンズの一として、SEMや光学レンズ等のヘッド部分を選択的に装着し、所望の用途に応じた適切な観察手段を接続して観察を行うことが可能となり、拡大観察の利用範囲が光学系のみならず、電子顕微鏡系等に拡張でき、様々な拡大観察が実現可能となる。
一方、電子線撮像手段11を備える拡大観察装置を主としてみれば、これにデジタルマイクロスコープを付加したものと捉えることもできる。いずれにしても、同一の試料に対して、光学画像と電子顕微鏡画像とを撮像できるという利点が得られる。特に、同一の視野で同一の倍率にて、異なる観察手段で取得されたこれらの画像を対比できることは、各観察像の利点を生かした種々の観点からの観察を可能とでき、拡大観察で得られる情報量を飛躍的に増大できる。
(観察手段10)
この拡大観察装置は、試料室21内の試料を観察する観察手段10を複数備えている。図2Aに示す拡大観察装置100では、第一の観察手段として電子顕微鏡画像を撮像可能な電子線撮像手段11を、第二の観察手段として光学画像を撮像可能な光学系撮像手段12を、各々胴部24から突出させる姿勢に固定している。各撮像手段は、使用/非使用を後述する表示切替手段36で切り替え可能に構成されている。図2Aの例では、胴部24の円筒状側面に表示切替手段36として押しボタンを設けている。また各撮像手段は、交互に使用する他、同時に使用するよう構成してもよい。さらに図2Aの例では、電子線撮像手段11の右側に光学系撮像手段12を配置しているが、これらの配置を入れ換えても同様の効果が得られることはいうまでもない。
(倍率調整手段)
また各観察手段10は、拡大倍率を各々調整するための倍率調整手段を備える。具体的には、電子線撮像手段11は、電子顕微鏡倍率を調整するための電子顕微鏡倍率調整手段68を備え、一方光学系撮像手段12は、光学倍率を調整するための光学倍率調整手段95を備える。各倍率調整手段は、例えば図2Aに示すように各々の鏡筒の外周に回転自在に設けられたリングを回転させることで、倍率を調整する。特に電子顕微鏡倍率調整手段68を、光学倍率調整手段95と同様、鏡筒周囲で回転するリング状に構成することで、各観察手段の倍率調整の操作感を統一し、優れたユーザインターフェースが提供される。また各リングの表面には滑り止め加工を設けることが好ましい。電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な倍率範囲としては、例えば20倍〜10000倍とする。また、光学倍率調整手段95で調整可能な倍率範囲としては、例えば50倍〜500倍とする。さらに光学ズームにデジタルズームを併用することで、より高倍率の画像を得ることもできる。
(焦点調整手段)
さらに各観察手段10は、各々の光軸に沿って焦点距離を調整するための焦点調整手段を備えてもよい。例えば電子線撮像手段11は、その光軸に沿って焦点距離を調整するための顕微鏡焦点調整手段37を、光学系撮像手段12は、その光軸に沿って焦点距離を調整するための光学焦点調整手段38を、各々備えることができる。光学焦点調整手段38は、光学レンズ自体を機械的に光軸方向に上下させて焦点位置を調整する。図2Aの例では、焦点調整手段として、各観察手段の近傍に、ダイヤル式の摘みを各々設けており、摘みの回転量で焦点位置を調整できる。なお電子線撮像手段11で、電子顕微鏡画像を撮像する際の、電子銃から電子線を照射する軸を、本明細書においては「光軸」と呼ぶ。
なお電子線撮像手段11に光学系撮像手段12を併用することで、色情報のないモノクロ画像が中心となる電子顕微鏡画像に対し、色情報を含むカラー画像の光学画像を取得できる。光学系撮像手段12には、可視光や紫外光等を利用した可視光観察像の他、赤外線カメラによる赤外線観察像も利用できる。また、光学画像の色情報に基づいて電子顕微鏡画像を着色することも可能である。例えば電子顕微鏡画像に光学画像を合成して、高倍率、高精度のカラー画像を得ることができる(詳細は後述)。
(拡大観察装置100)
次に、拡大観察装置100の概要を説明する。拡大観察装置100の外観は、図2A〜図4等に示すように、円筒状のチャンバユニット14に、箱形の減圧ユニット15を連結した形状となる。チャンバユニット14は、図4に示すように平板状の水平板を構成するベース部22に載置される。ベース部22の上面には、固定板23を垂直姿勢に突出させるよう固定している。この固定板23は、胴部24の一方の開口端を閉塞する端面板として機能する。また固定板23の背面には減圧ユニット15に固定されている。さらに固定板23の前面には、胴部24を回転させるための回動手段30を備えている。図4の構成においては、固定板23は、回動手段30を介して胴部24の片側端面を気密に閉塞して、試料室21の減圧状態を維持しつつ、同時に胴部24を回転自在としている。胴部24の回転を許容するため、固定板23は、胴部24をベース部22上に片持ちで保持しつつ、ベース部22上に浮かせるよう離間しており、ベース部22との胴部24との間には隙間が設けられる。さらに胴部24の開口端縁も、固定板23と非接触として、胴部24の回転を阻害しないように隙間を設けている。またこのような片持ち式の支持構造は、胴部24の一方の端面を蓋部27で開閉自在とし、他方の端面を回動手段を介して固定板23に連結して、試料室21の開閉と回転とを両立できる。
チャンバユニット14は胴部24と一対の端面板で構成され、拡大観察装置100の本体部となる。胴部24は、その外形を略円筒状としている。胴部24の内部空間は2枚の端面板で気密に閉塞され、減圧可能な試料室21を構成する。端面板の一方は開閉式の蓋部27とし、他方は胴部24に固定される固定板23となって試料室21を気密に閉塞する。固定板23には図5の断面図に示すように、減圧ユニット15に試料室21内の空気を吸引するための吸引口25が開口されている。さらに固定板23には、後述する二次電子検出器61、試料室内観察手段13等が設けられている。
(減圧ユニット15)
試料室21は、吸引口25を介して減圧ユニット15と接続される。減圧ユニット15は排気系を構成し、加速電子の電子線が気体成分通過中に極力エネルギーを失うことなく試料に到達するよう、減圧環境を実現する。減圧ユニット15には、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ(Turbo-Molecular Pump:TPM)等が利用でき、高真空から低真空排気まで所望の真空度に調整できる。真空度の調整可能範囲としては、例えば10−6Torr〜10−10Torrとする。この減圧ユニット15はチャンバユニット14の背面に気密に連結されている。なお吸引口25は、固定部分である固定板23に設けることが好ましいが、後述する回転部分側に形成しても良いことはいうまでもない。
(減圧ユニット操作パネル16)
また減圧ユニット15は、減圧ユニットの動作を操作するための減圧ユニット操作パネル16を設ける。図2Aの例では、胴部24の脇に減圧ユニット操作パネル16を設けており、ボタン操作で真空引きや大気導入の開始を操作する。また減圧ユニット操作パネル16は、真空引きの動作中や動作完了を示すためのインジケータを設けている。この例ではインジケータとして2つのLEDを設けており、点灯パターンの組み合わせで試料室21の状態を、大気状態、真空引き中、真空状態、大気導入中の4つに区分して表示する。
(脚部26)
またこの拡大観察装置100は、ベース部22の底面の四隅から脚部26を突出させている。脚部26を介して、拡大観察装置100は接地面に水平に載置される。このため脚部26は、各々の高さを調整できる調整手段を設けることが好ましい。これにより、接地面の傾斜によらず水平姿勢に試料台33を維持して、安定して拡大観察を行える利点が得られる。調整手段は、例えばネジの進行によってその突出量を調整できる機構等、既知の構成が適宜利用できる。図4の側面図に示す例では、脚部26はチャンバユニット14側のベース部22に設けられている。ただ、減圧ユニット15に脚部を設けてもよい。
(胴部24)
胴部24は中空の円筒状で、その両端面を端面板で封止して気密な試料室21を構成する。また端面板の少なくともいずれか一方は、開閉自在な蓋部27とする。胴部24の円筒状側面には、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11が装着される。具体的には、第一の位置41に電子線撮像手段11が、第一の位置41と離間した第二の位置42に光学系撮像手段12が、各々装着されている。
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11は、各々内部にレンズを内蔵する筒状に構成されている。光学系撮像手段12は、筒状とした光学レンズ鏡筒の内部に光学レンズが複数枚組み込まれている。同様に電子線撮像手段11も、電子レンズ鏡筒の内部に電子レンズが組み込まれている。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11は、図3の断面図に示すように、内部を円筒状とした試料室21の中心軸から半径方向に突出する姿勢で、胴部24の外面に固定されている。言い換えると各観察手段10の電子レンズ鏡筒及び光学レンズ鏡筒は、各々回転中心に向かう姿勢に固定されており、電子線撮像手段11の電子銃47の光軸と光学系撮像手段12の光軸は、回動手段30の回転軸を中心として径方向に放射状に延長されている。
(蓋部27)
端面板の一方は、開閉自在な蓋部27とする。蓋部27は、胴部24の開口端を閉塞する閉塞板28と、閉塞板28を開放位置、閉塞位置に切り替えるための蓋開閉手段と、閉塞板28を蓋開閉手段上で回転自在に支承蓋する蓋回転軸142と、閉塞板28を調芯するよう保持する保持機構140とを備える。図4の側面図の例では、蓋部27は、胴部24端面を閉塞する円盤状の閉塞板28と、蓋開閉手段として閉塞板28の回転を支承する蓋開閉アーム29で構成される。図4においては左側が正面側であり、この図に示すように、蓋開閉アーム29の下端がベース部22先端にヒンジ部138によりピボット式に軸支されており、蓋開閉アーム29を倒すことで閉塞板28が下方向に開放され、蓋開閉アーム29を直立させて閉塞板28を胴部24端面に位置させて閉塞する。閉塞板28を開放した状態で、ユーザは試料室21内に備えられた試料台33上に試料を載置できる。図6に示す例では、閉塞板28の中心を軸支する蓋開閉アーム29を、ベース部22の先端にヒンジ部138により折曲自在に固定している。これにより、蓋開閉アーム29を手前に倒して閉塞板28を開放位置とできる。この構造によれば、閉塞板28を胴部24に密着させて回転させつつ、ヒンジ部138を閉塞板28の下方に固定することで、閉塞板28の開閉方向は胴部24の回転位置に依らず、下方向となるように一定とできる。
さらに胴部24の端面を蓋部27で開閉式とすることで、試料室21内部を大きく開放でき、サイズの大きな試料でも容易にセットできる利点も得られる。特に試料台33を傾斜させない構成と相俟って、試料を単に試料台33上に載置するだけで済み、試料を試料台33上で滑らないように固定する必要がないため、試料の出し入れ、設置作業を極めて簡単にできるという優れた利点が得られる。
なお、試料台への載置を容易にするために、蓋部を開放した状態で試料台33を手前に引き出すスライド式に構成してもよく(例えば、後述する図16A、図16B参照)、これによって試料台33へのユーザのアクセスが容易となる反面、引き出し構造が必要となる上、蓋部の前面に蓋部をスライドさせるための空間を確保する必要がある。蓋部27を含め端面板や胴部24は、高真空を維持できる十分な耐性を備える部材で構成される。
(固定部分)
胴部24は、円筒状側面の少なくとも一部を回動手段30で回転可能としている。このため、胴部24及び端面板は、胴部24の回転運動に伴って回転する回転部分と、回転せず静止状態のままの固定部分とに分けられる。いいかえると、回動手段30によって固定部分と回転部分とに区分される。例えば、試料台33を駆動する試料台駆動手段34である水平面移動機構74及び高さ調整機構80や、蓋部27、試料室内観察手段13、ベース部22及び固定板23等は、固定部分となる。一方、各観察手段10や、これに付随あるいは協働させる照明部の光源ポート97等は、回転部分側に設けられる。
(回動手段30)
さらに胴部24は、一方の観察手段の光軸の方向を、他方の観察手段の光軸の方向と略一致させるように各観察手段を移動可能な移動手段として、回動手段30を備える。回動手段30は、円筒状胴部24の中心軸を回転軸として、観察手段10を固定した側面を円周に沿って回転させる。このような回動手段30は、例えばベアリングや、胴部24の回転軸方向に設けたギヤを、固定側であるベース部22又は減圧ユニット15側に設けたギヤとの噛合によって回転させる方式が利用できる。また、回動手段30を回転させるために必要な外力すなわち回転の抵抗力は、ユーザが手動で回転できる程度としつつ、観察手段10が所望の位置となるように胴部24を回転させた状態で手を離すと、該姿勢を維持できる程度の抵抗力を備えることが好ましい。このような回転の抵抗力乃至摩擦力に維持できるよう、ベアリングの油量やギヤのウェイト等を調整する。この構成により、複数の観察手段10を容易に同一の位置に切り替え可能であり、視野の変更等も生じない。また、回動によって観察手段10を傾斜できるので、マルチアングル機構で簡単に高倍率での傾斜観察が可能なるという利点も得られる。
また上述の通り、電子線撮像手段11を回動させる回動面と、光学系撮像手段12を回動させる回動面とは略一致させている。これにより、各撮像手段の光軸が交差する位置となるため、一方の撮像手段を他方の撮像手段の位置まで回動させるだけで、同じ視野の観察画像を取得でき、位置の切り替えによる視野合わせや焦点の調整といった、同じ視野での撮像を行うべく異なる撮像手段に切り替えるためのユーザの操作を極めて容易にできる利点が得られる。
また、回動手段30によって観察手段10を回転させつつ、試料は固定姿勢とするために、試料台33は固定部分側に固定される。図4の例では、この試料台33を駆動する試料台駆動手段34である水平面移動機構74及び高さ調整機構80は、胴部24背面の端面板を通じて固定されている。
従来は、同一の試料に対して観察手段を切り替えるために、図10〜図12に示すように観察手段10X又は試料台33Xを平行移動させる機構が採用されていた。この構成で傾斜観察を行うには、試料台33X側を回転あるいは傾動させる方式であったため、視点を変更する際、観察手段10Xと試料SAxの位置関係の把握がユーザに容易でなく、移動方向等に混乱を生じる場合が少なからずあった。これに対して本実施の形態では、あくまでも観察対象を固定し、見る側の視点を変更するという自然な形での観察方式としているため、物理的に位置関係の把握が容易であり、視点の移動や変更に際しての調整作業に誤解や混乱が生じ難い、初心者でも理解しやすい、といった利点が得られる。
観察手段10である光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、胴部24側面の回転によって同時に移動できる。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との移動機構を一の回動手段30で共通化することで、2つの観察手段10の移動のための機構を簡素化できる利点が得られる。また回転によって、各観察手段10を同一の位置に容易に切り替え可能であり、試料を回転軸の位置に静止させることで、視野の変更等も生じない。さらに図13の各観察手段10と試料台33との距離を示す模式正面図に示すように、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11の各観察手段10は、回転移動によって、その回転軸に位置する試料までの距離をほぼ一定に維持できるため、一旦焦点距離を調整しておけば、位置を変更しても常にフォーカスを合わせた状態となるため、回転角度すなわち視点のみを変化できるという合焦状態での傾斜観察に好適な環境が実現される。
好ましくは、蓋部27は固定部分側に開閉自在に固定する。例えば、図4の側面図に示すように、蓋部27の閉塞板28を胴部24の開放端に着脱自在に装着しつつ、閉塞板28の回転軸を蓋開閉アーム29で支承して、蓋開閉アーム29の下端をベース部22の先端に折曲自在に固定している。これによって、上述の通り胴部24の回転位置によらず蓋部27を開閉する方向を一定に維持できる。この場合、蓋部27は胴部24端面の正面側を閉塞し、背面の端面板は胴部24と一体に固定しつつ、その一部を貫通するように試料台33を駆動する試料台駆動手段34を固定部分である減圧ユニット15に固定している。すなわちこの例では、蓋部27の閉塞板28は、胴部24を閉塞する状態では回転部分と一体となり、蓋開閉アーム29は固定部分に固定されている。
(引張バネ135)
また蓋開閉アーム29とベース部22との折曲部分であるヒンジ部138の近傍には、引張バネ135を設けている。引張バネ135は、ヒンジ部138を折曲しやすくなる方向に付勢している。すなわち、蓋開閉アーム29を開放状態の水平姿勢から、閉塞状態の垂直姿勢に直立させ易くする。さらに引張バネ135は、垂直姿勢とした後も後述する保持機構140のロック状態を解除するロック解除機構として、蓋開閉アーム29を胴部24側に付勢している。
蓋部27を回転部分側に固定すると、胴部24の回転位置によって蓋部27の開閉方向が変化してしまい、ユーザはその都度開閉方向を確認しなければならないという弊害が生じる。また蓋部27が剛性の高い重い金属製の場合は、蓋部27の方向によってはユーザが手動で開閉し難くなったり、開閉を支承するヒンジへの負荷が大きくなることも考えられる。よって、このような開閉姿勢の変化を回避するために、蓋部27の固定位置を固定部分側とすることが有効となる。また、蓋部27を開閉する向きを常に一定方向とすることで、蓋部27の開閉構造を簡素化できる利点も得られる。
ただ、本実施の形態は蓋部の開閉方向を限定せず、蓋部を側方に開閉させたり、十分な強度が維持される場合は蓋部を上方向に開閉させる方式を採用することも妨げない。あるいは、蓋部を回転軸方向で装置の外方に移動させるスライド式とすることもできる。この場合は、蓋部は胴部の底面と平行状態を維持したまま、手前に引き出される。またこの構成では、蓋部と同時に試料台を引き出すこともでき、上述のように試料台へのアクセスを容易にできる利点が得られる。また蓋部の開閉方式に依らず、試料台を単独で試料室の外部に引き出し自在としてもよい。試料台を引き出す構成は、例えば試料台及びこれを駆動する試料台駆動手段のアームを手前側に突出自在とすることで実現できる。
なお、後述するように試料台は傾動や揺動をしないように水平姿勢を維持しつつ、平面内の移動や回転を可能としているが、本明細書においてこのような試料台を水平姿勢に「固定」するとは、試料台を回転軸回りに胴部に対して揺動、傾斜させないという意味で使用する。すなわち、回転軸の軸方向に試料台をスライドさせることは「固定」の概念に含まれる。
(回動手段の変形例)
上述した図4の構成を、主に回転部分と固定部分の区分けで示した模式側面図を図14に示す。この構成では、胴部24全体が一方の端面板(図14において右側に位置する背面側)に対して回動し、端面板と胴部24との間に胴部24の回動を行わせるための回動手段30が構成されている。ただ、蓋部や胴部等の回転部分、固定部分の構成例は、このような構成に限られず、種々の形態が利用できる。図15〜図16Bに、変形例に係る回動手段の例を示す。これらの図において、図15は固定部分に蓋部27Bを設けた試料室21Bの模式側面断面図、図16Aは蓋部27Cを試料台33Cと一体とした試料室21Cで蓋部27Cを閉塞した状態を、図16Bは蓋部27Cを開放した状態を、それぞれ示している。なおこれらの図では、説明のため減圧ユニット等の図示を省略している。
図15の例では、胴部24の正面側(図において左側)を端面板で閉塞し、背面側(図において右側)に開閉式の蓋部27Bを設けている。この構成では、蓋部27Bは胴部24の回転によって回転しない、固定部分となっている。さらに図16A、図16Bの例では、固定部分に設けた蓋部27Cに、試料台33Cを一体的に固定している。この構成においては、好ましくは図16A、図16Bに示すように、蓋部27Cに試料台33Cを固定し、蓋部27Cを装置背面から引き出すことで、蓋部27Cを開放すると共に、蓋部27Cに固定された試料台33Cも試料室21C外に引き出される。この構成であれば、試料台33Cへのアクセスが容易となり、試料の載置や取り出し、交換作業が容易となる。
また図14及び図15の例では、胴部の全体を回転させているが、胴部の一部のみを回転させるような構造とすることもできる。例えば図17の斜視図に示すように胴部24Dを2つに分け、端面板の一方側(図において右側の背面側)を固定部分(図中斜線で示す)とし、他方(正面側)側を回転部分とすることで、円筒状側面の一部(正面側)を回転させている。また図18の斜視図の例では、胴部24Eを3分割し、両端面を固定部分(図中斜線で示す)とし、側面の中間部分である、観察手段10を固定した一部のみを摺動させる構成としている。これによって、端面板や蓋部27Eを固定部分側とでき、特に蓋部27Eの開閉構造を容易にできる利点が得られる。
なおこのような構成において、端面板や胴部24の一部に固定部分を設ける場合、この固定部分に、試料台33を駆動させる試料台駆動手段34を支持させる。具体的には、図4等に示すように、端面板に開口を設け、開口の内側であって固定板23上に試料台33を駆動する試料台駆動手段34を設けている。すなわち固定部分である開口内から試料台駆動手段34のアームを試料室21内に挿入し、アームの先端に試料台33をX、Y、Z方向に駆動させる状態に支持する。また図18の例では、他の固定部分である正面側の端面板に試料台駆動手段34を設けてもよい。あるいは、胴部24及び両端面板を、これらを支持するベース部22上にて回転軸回りに回転自在に支承させてもよい。この場合は、端面板の一部のみに試料台33を支持させることができる。
なお、いずれの構成においても回動手段が回転しても試料室21内の減圧状態が維持できるよう、気密を維持したまま回動できる構造が求められる。特に胴部24は複数の観察手段10を備え相当の重量がある上、固定板23で片持ち姿勢にて回転させるため、十分な機械的強度も求められる。そこで図4に示す例では、端面板を構成する固定板23と胴部24との間の回転面において、ベアリングとして回転精度が高くかつ荷重負荷耐性に優れたクロスローラベアリング31を使用している。さらに回転面での気密性を維持するため、Oリング32を介在させている。これにより、胴部24内部の試料室21の気密性を維持しつつ、安定的な回転機構が実現できる。
(回動手段の気密封止機構)
また一方、閉塞板28を閉塞位置として試料室21内を減圧すると、減圧による試料室21内外の圧力差によって閉塞板28は胴部側に吸引され、引き寄せられることになる。この結果、図19に示すように、回動手段の気密封止する界面に配置されたOリング32が挿入溝136のテーパ壁面137で変形されて、この部分の気密性が達成されつつ、回動手段による回動面の摩擦力を抑制できる。
従来の構造ではOリングを配置するため、図20に示すように、気密封止する界面に垂直な壁面を有する凹状の挿入溝136xを形成していた。この構造では、挿入溝136に配置された真空密閉用のOリング32xを上下方向から狭持して潰すため、接触面積が大きくなり、その分相当な摩擦力が発生して、回動手段による回転の抵抗力が大きくなるという問題があった。
そこで、このように封止界面でOリングを物理的に狭持して変形させるのでなく、減圧による吸い付きを利用してOリングを変形させ、摩擦抵抗を軽減している。具体的には、図19に示すように、挿入溝136の側面を、Oリング32の外形に沿うように傾斜させたテーパ壁面137としている。また封止界面においてはOリング32の機械的な狭持は、行わないか、あるいは比較的弱い力に止め、減圧時に発生する吸引力でテーパ壁面137にOリング32を密着するよう弾性変形させて、気密性を発揮させる。また封止部材はOリングに代えて、リップパッキン等他の弾性部材を利用できる。
(蓋部の回転軸支承構造)
さらに蓋部27の閉塞板28は、試料室21を気密に閉塞しつつ、胴部24と一体となって回転させる構造が要求される。すなわち、胴部24の回転時に閉塞板28を支承する機構が必要となるが、同時に蓋部27の回転軸を胴部24の回転軸と完全に一致させることは容易でない。すなわち、閉塞板28と胴部24とが一体となって回転するには、胴部24の回転軸と閉塞板28の回転軸が一致していなければならず、そのような姿勢に閉塞板28を正確に保持する必要がある。その一方で、保持する力が強すぎると、蓋部の閉塞板28の回転が阻害されることとなる。特に胴部24の回転に従って閉塞板28も回転するように同調できないと、ギスギス感が生じて回転の動きが悪くなってしまう。いわば正確な位置に閉塞板28を保持しつつも、その位置での回転は許容するという背反する特性が要求される。
一方、閉塞板の開閉機構を回転部分側に設ければ、このような問題は生じないものの、図21A、図21Bに示すように蓋28xの開閉の方向が真空チャンバ24xの回転位置によって変化するという問題があった。この構成で常に一定の方向に蓋28xを開閉させようとすれば、真空チャンバ24xを必ず所定の回転位置に一旦戻した状態で蓋28xを開閉させる必要があり、使い勝手が悪くなる。特に、従来のように試料台側を傾斜させて傾斜観察を行う構成では、このような胴部の回転作業自体が本来不要であったため、胴部側を回転式とした構成においては一層使い勝手を悪くする印象が強くなる。また一方で、試料台を傾斜させずに水平姿勢に維持する構成においては、胴部の回転位置に依らず試料台が常時水平姿勢であるため、尚更胴部を所定位置(例えば正面観察の姿勢)に戻す必然性は低い。さらに一方、胴部に閉塞板の開閉機構を設けると、閉塞板を開放した状態ではその重量によって閉塞板が不安定な状態となり、胴部を不用意に回転できなくなるため、試料を試料台に載置して傾斜観察の視野確認を表示手段で確認しながら載置位置を調整することが困難になるという問題もあった。
さらに閉塞板を引き出し式に開閉する構成も考えられるが、この構成では図22に示すように、手前側に蓋28yを引き出すためのスペースを確保しなければならない。またこの場合は、蓋28yの背面に試料台33yが固定されるため、蓋28yを開放した状態では試料台33yも手前に移動される結果、光学系撮像手段で試料を観察できなくなり、試料の載置位置を光学系撮像手段で確認しながら調整することができないという問題がある。
したがって、このような不利益を生じさせずに、胴部の回転位置に依らず閉塞板の開閉方向を常時一定に維持するには、閉塞板の開閉機構を回転部分でなく固定部分側に設ける必要がある。ただ、この構造を採用すると上述の通り、回転軸の支承部分で、回転の軸合わせと回転の容易さを両立させることが困難になるという問題があった。
そこで本実施の形態では、蓋部の蓋回転軸142を保持、開放する保持機構140を設けることで、このような位置決め保持と回転の抵抗力低減という矛盾する特性を両立させている。以下、蓋回転軸142と保持機構140の詳細を、図23A及び図23Bに基づいて説明する。これらの図において、図23Aは開放位置における蓋回転軸142のロック状態を、図23Bは閉塞位置における蓋回転軸142のロック解除状態を、各々示している。
(蓋回転軸142)
蓋回転軸142は、閉塞板28を蓋開閉手段で支持しつつ、胴部24の開口端を閉塞した状態では、閉塞板28の回転中心となる。すなわち、固定部分である蓋開閉アーム29と、回転部分である閉塞板28との間に介在して、これらを連結する部材である。
(保持機構140)
また保持機構140は、閉塞板28の位置に応じて蓋回転軸142のロック状態と解除とを切り替える部材である。すなわち、閉塞板28が開放位置にあるときは、閉塞板28を所定の姿勢に保持するロック状態となる。所定の姿勢とは、閉塞板28を閉塞位置としたとき、その回転軸が胴部24の回転軸と略一致するように、軸合わせあるいは調芯した姿勢である。すなわち、閉塞板28を開放位置から閉塞位置に移動させたときに回転軸が一致される姿勢に、閉塞板28を位置決めした状態に保持機構140は保持する。さらに閉塞板28が開放位置から閉塞位置に切り替えられると、保持機構140はこのロック状態を解除する。この結果、閉塞板28は胴部24と一体となって回転される。
蓋回転軸142と保持機構140の具体例を示す図23A及び図23Bの例では、蓋回転軸142を蓋開閉アーム29の先端から閉塞板28に向かう姿勢に突出させている。また閉塞板28は、蓋回転軸142と面する部位に、これを支承するための軸受凹部143を形成している。軸受凹部143は略凹状で、その開口部の内径を蓋回転軸142よりも大きくしている。このようにして蓋回転軸142と軸受凹部143との間に隙間を設け、これを遊びとすることで閉塞板28の胴部24への固定後の回転を蓋回転軸142で阻害せず、スムーズな回転を実現できる。
また軸受凹部143の開口部分には、開口端側の内径を狭くし、軸受凹部143の底面側に向かって末広がりに傾斜させた傾斜面144を形成している。図23A及び図23Bの例では、軸受凹部143の開口端部分に、中心を残して開口端を覆うようにストッパ145を固定している。ストッパ145は、蓋開閉アーム29と面する表面側を平板状として後述するコイルスプリング146を支承し易くし、軸受凹部143内部の裏面側を、開口端縁に向かって狭く形成した傾斜面144としている。
一方、蓋回転軸142の一端には、軸受凹部143に挿入された状態で、傾斜面144に沿った傾斜方向となるよう、開口端縁側の外形を細く、軸受凹部143の底面に向かって外形を大きくしたテーパ面147を形成している。テーパ面147及び傾斜面144は、両者を接触させた状態で閉塞板28と胴部24の回転軸が調芯される姿勢となるよう設計される。また好ましくは、テーパ面147の傾斜を傾斜面144よりも緩やかとなるように形成することで、確実にこれらの当接面で摩擦力を生じてロック状態を作り出すことができる。
さらに保持機構140は、蓋回転軸142と閉塞板28とが当接するように付勢された弾性部材を備えている。弾性部材には、例えばコイルスプリング146を利用できる。コイルスプリング146は、閉塞板28が開放位置にある姿勢で傾斜面144がテーパ面147に当接するように付勢する第一付勢手段として機能する。コイルスプリング146の内部に蓋回転軸142を挿通するように配置して、ストッパ145の表面を押圧することで、ストッパ145内面側で傾斜面144と蓋回転軸142のテーパ面147とを当接させる。これにより、摩擦力で蓋回転軸142と閉塞板28との保持状態を作り出すことができる。すなわち、閉塞板28が閉塞状態でないときは保持機構140で傾斜面144がテーパ面147に当接するよう付勢して保持状態を作り出す。そして保持状態においては上述の通り蓋回転軸142と閉塞板28とが芯合わせされて、位置決めされた状態に維持される。このため、閉塞板28を閉塞位置としたとき、胴部24の開口部分が正確に閉塞され、両者の回転軸が正確に位置決めされ、また位置ずれによる気密性の低下を回避できる。さらに閉塞板28を閉塞位置として試料室21内を減圧すると、減圧による試料室21内外の圧力差によって閉塞板28は胴部24側に吸引され、開口端のOリング32を潰して密着されて気密状態が達成される。
さらに、閉塞位置とすることで、蓋開閉アーム29とベース部22との折曲部分であるヒンジ部138に設けた引張バネ135が、蓋開閉アーム29を胴部24側に引き寄せる。引張バネ135は、閉塞板28が閉塞位置にある姿勢で第一付勢手段の付勢力に対向する応力を付与する第二付勢手段として機能する。引張バネ135による引張力は、コイルスプリング146による押出力よりも強くなるよう選択されている。この結果、蓋開閉アーム29がコイルスプリング146の反発力に抗して胴部24側に引き寄せられ、蓋開閉アーム29に固定された蓋回転軸142も胴部24側に押し出される。この結果、図23Bに示すように、蓋回転軸142のテーパ面147と閉塞板28の傾斜面144との接触が解除され、この界面で隙間が生じ、あるいはこの界面での摩擦が低減され、いずれにしても保持機構140の保持状態が解除される。このため、蓋回転軸142での摩擦力を低減でき、弱い力でも閉塞板28を回転できるようになって、胴部24の回転に追従して回転できるようになる。
このように、閉塞板28が閉塞位置にないときは閉塞板28の回転軸が胴部24の回転軸と略一致するように保持機構140で保持して調芯して、閉塞板28を閉塞位置に切り替える際の軸合わせと気密状態の達成とを確実ならしめ、さらに閉塞板28が一旦閉塞されると保持状態を解除することで、胴部24のスムーズな回転を保持機構140で阻害しないように回転の抵抗力を低減でき、信頼性と操作性を両立できるという優れた利点が得られる。
換言すると、保持機構140は試料室21の開放状態では閉塞板28を調芯した位置に保持しつつ、減圧状態では胴部24側に閉塞板28を引き渡す格好とすることで、蓋回転軸142の摩擦抵抗を軽減し、スムーズに胴部24を回転できる構成を実現している。
また保持機構は上記構成に限られず、閉塞状態で閉塞板を開放し、それ以外では閉塞板を把持可能な構造が適宜利用できる。例えば穴に球状部材を設け、蓋開閉アーム側にこの球状部材を捕捉するキャッチャーを設ける構造が利用できる。
以上のように、蓋部27を蓋開閉アーム29先端の蓋回転軸142上で回転自在とした円盤状の閉塞板28で構成し、さらに蓋開閉アーム29を固定部分であるベース部22に設けることで、閉塞板28の開閉方向は、胴部24の回転位置に依らず常時一定となる。図24に示す例では、開口端の下方に蓋開閉アーム29のピボットが位置されており、閉塞板28の開閉方向を一定として、ユーザは開閉動作をスムーズに行える。
さらに本明細書において回転乃至回動とは、必ずしも完全な円運動である必要はなく、円弧状の移動軌跡を含む。例えば図25の模式側面断面図に示すように、胴部24Fを半円状に構成して、湾曲側面に沿って電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12を移動させて試料室21F内を傾斜観察を可能とする例も包含する。同様に、胴部の円筒状側面には、完全な円筒のみならず、部分的な円筒、例えば断面が半円や円弧となるものも含む意味で使用する。
(取っ手35)
また胴部24は、手動で回転し易いように取っ手35を設けることもできる。図2Aに示す取っ手35は、観察手段10と同様、胴部24の円筒状側面から突出する姿勢に固定されたチャンバチルトノブである。取っ手35の先端には、ユーザが手で把持し易いようグリップ部分を設けている。ユーザは取っ手35のグリップ部分を把持して胴部24を所望の方向に回転できる。取っ手35は、両手で把持できるように、離間させて2つ設けている。好ましくは、胴部24の側面から突出する2つの観察手段である電子線撮像手段11と光学系撮像手段12を設けた位置の外側に、2つの取っ手35を設け、2つの観察手段の両側から挟み込むようにして配置する。このようにして、取っ手35同士の間に2つの観察手段を位置させることで、円周方向に突出した観察手段の端部が回動時に外部の部材と接触して破損したりする事態を、これら観察手段よりも外部に配置された取っ手35によって保護する効果も得られる。また、取っ手35の突出長さを、電子線撮像手段11や光学系撮像手段12よりも長く突出させることで、これら観察手段の保護効果をさらに高めることができる。加えて、図2B、図2Cに示す変形例のように、取っ手35Bの先端に設けたグリップ部分を外側に折曲させることで、ユーザがより把持し易くできる。また、取っ手35の形状は棒状とする他、L字状やコ字状、半円状等に形成してもよい。あるいは、取っ手を1本のみ設けてもよい。あるいはまた、観察手段が十分な強度で胴部に固定されている場合は、観察手段を取っ手に兼用することもできる。
(表示切替手段36)
また拡大観察装置は、使用する撮像手段を切り替える表示切替手段36を備える。表示切替手段36の例としては、ハードウエア的な切替スイッチが利用できる。図2Aの例では、表示切替手段36として胴部24の円筒状側面で、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の手前に、各々押しボタンを設けている。また各ボタンの前面にはLEDランプ等の表示灯17が設けられている。この表示切替手段36は、いずれか押しボタンを押下すると、該押しボタンの背面の観察手段が選択されて、表示手段でリアルタイム表示される動画表示が、該観察手段で取得した画像に自動的に切り替わると共に、該当する表示灯17が点灯して、該観察手段が選択中であることを示す。このように、押しボタンの押下というメカニカルな切り替え操作によりユーザに対し切り替え操作を感覚的に知覚させ、さらに押しボタンの押し込み位置と表示灯17の点灯/消灯とで、現在の選択状態を視覚的に把握させることができる。なお図2Aの例では、いずれかの押しボタンを択一的に選択でき、非選択の押しボタンは自動的にOFFに切り替わる。言い換えると、表示切替手段36によりいずれか一方の観察手段を選択して、選択された観察手段のみ操作するよう構成されており、2つの観察手段を同時に使用することはできない。ただ、このように観察手段を交互に使用する構成の他、同時に使用可能に構成してもよい。
また、表示切替手段36による観察手段の切り替えには、各観察手段に設けられた切替スイッチを操作するハードウエア的な操作の他、ソフトウエア的な切り替えを採用することも可能である。例えば表示手段の画面上で、選択したい観察手段の観察上を表示しているウィンドウを選択してアクティブにすると、自動的に観察手段の選択状態が切り替わるように構成してもよい。
また表示切替手段36は、このようなハードウエア的な構成の他、拡大観察装置100の操作プログラムを操作する等、電子的あるいはソフトウエア的に切り替え指示を送る構成としてもよい。あるいは、ハードウエアによる切替スイッチと、操作プログラム等のソフトウエアによる切替スイッチとを兼用してもよい。例えば胴部24を回動手段30で回動時させると、自動的に観察手段10を切り替えるように促すこともできる。また回動操作のための取っ手35に、切替スイッチを設けることもできる。特に、観察手段10の切り替え操作は、観察手段10を物理的に移動させる、すなわち回動手段30を操作させるタイミングで行うことが多いため、回動時に把持する取っ手35に、観察手段10の表示切替手段36を設けることで、この切り替え操作も回動操作とほぼ同時に実行することができ、操作性を向上できる。例えば、取っ手35のハンドル部35bの端面や側面に、ユーザがハンドル部35bを把持した状態で親指や人差し指で押し易い位置に、表示切替手段36として押しボタンスイッチを設ける。また、押しボタンスイッチはトグル式に電子線撮像手段と光学系撮像手段とを切り替える他、各観察手段に切り替えるための専用のボタンを設けてもよい。例えば右側の取っ手35には観察手段の内、右側に配置されたもの、例えば光学系撮像手段には光学系撮像手段への切替スイッチを、左側の取っ手35には左側に配置されたもの、例えば電子線撮像手段には電子線撮像手段への切替スイッチを、それぞれ設けることができる。
(試料室21)
試料室21内は、減圧状態を維持できるような封止構造としている。試料室21の内壁には、各種の部材を配置、或いは接続するためのポートを開口している。各ポートは、試料室21内を減圧状態に維持できるよう、気密に封止される。このような気密封止を実現するために、接合箇所にはOリング等のパッキンが利用される。
(第一の位置41及び第二の位置42)
観察手段10の内、第一の観察手段を構成する電子線撮像手段11は胴部24の円筒状側面の第一の位置41に固定されており、また第二の観察手段を構成する光学系撮像手段12は同じく胴部24の円筒状側面で、第一の位置41と近接した第二の位置42に固定されている。図3の例では、電子線撮像手段11を固定している第一の位置41と、光学系撮像手段12を固定している第二の位置42との距離は、固定値である。すなわち、円筒状胴部24を回転させると、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが一緒に回動されることになる。これにより、各観察手段10の移動機構を共通にして簡素化できる。
第二の位置42は、光学系撮像手段12の先端が電子線撮像手段11の電子銃47の光軸と干渉しない位置とする。好ましくは、非干渉としつつ極力接近させた位置とする。これにより、図3に示すように光学系撮像手段12を電子線撮像手段11と近付けることができ、この結果、双方の観察手段10の位置まで回動させるための回転量を最低限に抑え、撮像位置の切り替え作業をスムーズにかつ迅速に行える。また、観察手段10の位置を近付けることで、図26(a)〜(c)に示すように、両者の回動移動可能な範囲の重複範囲(後述する重複回動範囲)を大きくできる利点も得られる。
このため第一の位置41と第二の位置42とが回動中心と成すオフセット角度は、小さい程好ましく、具体的には30°〜50°の範囲とすることが好ましい。図3の例では、光学系撮像手段12の光軸と電子線撮像手段11の光軸が、40°の角度差となるように、各々が胴部24に固定されている。また回動手段30は、オフセット角度以上の範囲で回転させることが可能であり、これによって一方の観察手段を他方の観察手段の位置まで回転させることができる。回動手段30で回動可能な範囲は、回動規制手段で規制される最大回動範囲である。また回動規制手段を解除することで、さらに広範囲の回動範囲規制値まで回動させることも可能である。
なおこの例では、電子線撮像手段11は胴部24に交換不能な状態で固定されている一方、光学系撮像手段12は着脱式に固定している。これにより、光学系撮像手段12を図9に示すように拡大観察装置100から外して、デジタルマイクロスコープ用のスタンドSTに付け替えることが可能となる。この着脱構造を実現するため、第二の位置42には光学系撮像手段装着部が設けられる。
(光学系撮像手段装着部)
胴部24の円筒状側面には、第二の位置42に光学系撮像手段12を着脱自在に装着するための光学系撮像手段装着部を設けている。光学系撮像手段装着部は、光学系撮像手段12の光学レンズ鏡筒を差し込み可能に開口されたポートを有しており、ポート部分には光学系撮像手段12を装着するためのマウント39が設けられる。マウント39は、図3に示すように有底筒状で、その内径は光学系撮像手段12を装着できるよう、光学系撮像手段12の外形よりも若干大きく設計される。またマウント39の筒状内面には、ネジ溝等、光学系撮像手段12を挿入し固定するための構造を設ける。
さらにマウント39の底面には開口窓が設けられ、装着された光学系撮像手段12の光学レンズを阻害しないよう、透光性ウィンドウが嵌め込まれている。さらにマウント39は、試料室21内の気密性を維持しつつ装着できるよう、Oリングを介して封止される。Oリングはマウント39と胴部24との接合面及びマウント39と透光性ウィンドウとの接合面に、各々設けられる。図3の例では、光学系撮像手段装着部は、第一Oリング、ポート、第二Oリング、透光性ウィンドウの4部品により、真空封止している。
このように胴部24の筒状側面に気密に設けられたマウント39に光学系撮像手段12を装着自在とすることで、気密性を維持しつつ光学観察を行うことができる。さらに、マウント39に装着される光学系撮像手段12を交換することも容易に行えるため、光学観察の自由度が飛躍的に増す。特に従来のSEM等の電子顕微鏡においては、光学観察が可能な光学レンズを備えるものは存在したが、あくまでも電子顕微鏡の視野探し等に利用することを想定した補助的な意味合いが強く、本格的な光学レンズを備えるものは殆ど利用されていなかった。これに対し本実施の形態では、光学レンズを交換可能としたことで、電子顕微鏡と併用する光学観察においてもその選択肢を広げ、観察の自由度を大きく拡大できる利点が得られる。
すなわち従来は、視野探しを光学系撮像手段12で行い、その後の詳細な観察は電子線撮像手段11で行うという位置付けに過ぎなかった。また、同じ視野の光学画像と電子顕微鏡画像とを同倍率で表示し、これらを併用して対比、切り替えを行おうとすれば、両者が同じ視野となるように位置合わせする作業が非常に面倒であった。これに対して本実施の形態では、光学系撮像手段12と電子顕微鏡の拡大倍率を重複させ、かつ回転式に移動させつつ、その回転軸に試料を配置することで、同じ視野範囲で光学画像と電子顕微鏡画像との取得が飛躍的に容易となった。
第一の位置41と第二の位置42は、図3に示すように、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが相互に干渉しない程度に近接させて固定されている。具体的には観察手段10の先端部分が試料室21内部で物理的に干渉する虞があり、また一方の光軸が他方の鏡筒で遮られる虞もある。特に図3に示すように、電子線撮像手段11は試料室21内部まで突出している一方、光学系撮像手段12はマウント39に固定される都合上、試料室21内部への侵入量が相対的に少なく、その光軸が電子線撮像手段11の先端に阻害される虞がある。このため、このような物理的、光学的な干渉が生じないように、これらを離間させる必要がある。
一方でこれらを離間させすぎると、今度は胴部24を回転させて互いの位置まで移動させる際の移動距離が長くなる上、相互の観察手段10が共に位置することのできる軌跡の重複すなわち重複回動範囲が狭くなる不都合がある。そこで、これらが干渉しない程度に近接して配置することで、一方の観察位置に他方の観察手段10を移動させる際の移動量を必要最小限に抑えて無駄な移動量を無くし、切り替えを速やかに行う利点が享受できる。
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との固定位置は、円筒状胴部24の回転軸と略直交する略同一平面上としている。これにより、回転移動された光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、常に同じ円周上で移動するため、両者の軌跡が一致し、同一視野の観察画像を得ることが可能となる。特に電子線撮像手段11を回動させる回動面と、光学系撮像手段12を回動させる回動面とを略一致させることで、各観察手段10の光軸の移動範囲が一致するため、一方の観察手段10を他方の観察手段10の位置まで回動させるだけで、同じ視野の観察画像を取得でき、位置の切り替えによる視野合わせや焦点の調整といった、同じ視野での撮像を行うべく異なる観察手段10に切り替えるためのユーザの操作を極めて容易にできる利点が得られる。
また、同一平面上に光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを固定することで、胴部24の長さを短くでき、回転軸方向における装置のコンパクト化を図り、拡大観察装置の外形を小型化できる利点も得られる。このような試料台33側を固定して観察手段10側を傾斜させる構造によって、異なる傾斜角度(観察角度)での傾斜観察を容易に行え、マルチアングルでの高倍率傾斜観察が可能となる。
また電子線撮像手段11を固定する第一の位置41と、光学系撮像手段12を固定する第二の位置42とは、異なる位置であるため、各観察手段10で試料を撮像する傾斜角度も、第一の位置41と第二の位置42とで異なる。この結果、同時に撮像できる電子顕微鏡画像と光学画像とは、異なる傾斜角度で得られたものとなるが、胴部24を回転させることでお互いの位置まで容易に移動させることができる。すなわち、光学系撮像手段12があった位置まで電子線撮像手段11を移動させたり、逆に電子線撮像手段11の位置に光学系撮像手段12を移動させることが、胴部24を回動させるという極めて簡単な操作により速やかに、かつ正確に行える。このことは、特に従来の電子顕微鏡と比べて大きな利点となる。
本実施の形態によれば、同じ傾斜角度での観察画像を、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とで得ようとすれば、一旦一方の観察手段(例えば光学系撮像手段12)で観察画像(例えば光学画像)を撮像した上で、円筒状胴部24を回転させ、他方の観察手段(例えば電子線撮像手段11)を、先ほど一方の観察手段で撮像した位置まで回動させる。回動は、回転運動の中心軸すなわち回転軸に沿った円弧状の軌跡となるため、どの位置であっても常に観察手段の光軸は回転軸に向かう姿勢で維持される。よって、一旦焦点距離を調整しておけば、回動によっても本質的にはその焦点距離が維持されるため、合焦のための操作は極めて容易である。
言い換えると、最初に一方の観察手段で観察画像を撮像する際、他方の観察手段でも合焦位置に調整しておけば、回動の前後で合焦状態が維持されるため、回動後速やかに観察画像を取得できる。このように本実施の形態によれば、2つの異なる観察手段10を用いて、同じ位置での観察画像を速やかに、かつ容易に取得できるという極めて優れた特長が得られるのである。
また図26や図60の構成においては、同一の視野を同一の方向(傾斜角度)から観察するために、胴部24を回転する。なお、一方の観察手段が元あった位置に、他方の観察手段が位置していることを認識する手段としては、胴部に回転エンコーダや角度センサ等の回動位置検出手段を設置して、回転角度を電気的に知る方法、または胴部と固定側に、それぞれ目盛と目印を付けておき、目視で回転角度を知る方法等が利用できる。
なお、二つの観察手段は、いずれも回動手段30によって提供可能ないかなる回動位置においても、回動手段30の回動中心を通る光軸を持つように、胴部24に固定されている。そして、回動手段30を用いて、一方の観察手段(例えば電子線撮像手段11)の位置を、観察者の望む位置に回動させて固定することにより、特定の視野方向から、試料台に載置された試料の特定の箇所の拡大観察が可能となる。
ここで、本実施例でいう「略同一の観察位置」とは、上述したような手法にて位置決めされた一方の観察手段にて、試料台に載置された試料の特定の箇所の画像を取得した後、他方の観察手段(例えば光学系撮像手段12)を一方の観察手段が位置していた回動位置に回動させて固定することにより、略同一の特定の視野方向から、試料台に載置された試料の特定の箇所の拡大観察を行う場合における、一方と他方の観察手段が位置決めされた位置のことを意味する。
また、このように二つの観察手段に対して略同一の観察位置を提供し、且つ二つの観察手段が略同一の倍率にて画像を取得する場合、その前提として、試料台の位置ならびに試料台上に載置された、試料台に対する試料の位置が略同一であることにより、各々の観察手段にて取得する画像の倍率ならびに試料の特定の箇所の画像が可能となり、その後の二つの画像の比較観察がより良いものとなることはいうまでもない。
言い換えれば、一方の観察手段によって試料を特定の視野方向から特定の倍率で観察したときの試料の観察視野範囲と、他方の観察手段によって試料を特定の視野方向と同一方向から観察可能となるように、回動手段30によって胴部24を回転させた後、他方の観察手段によって試料を特定の視野方向と同一方向から特定倍率と同倍率で観察したときの試料の観察視野範囲とが、ほぼ同一であることを意味する。なお、回動手段30の機械誤差により、ここでいう略同一の観察位置が、完全に同一の観察位置にならない場合があることは言うまでもない。
(回動可能範囲)
光学系撮像手段12と電子線撮像手段11が各々回動できる範囲は、少なくとも一部が重複するよう、すなわち互いの観察手段10がお互いの位置に移動できるように構成する。図26(a)〜(c)は、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11がそれぞれ回動できる範囲を概念的に示した模式図であり、図26(a)は電子線撮像手段11と光学系撮像手段12の重複回動範囲を、図26(b)は電子線撮像手段11の回動可能範囲を、図26(c)は光学系撮像手段12の回動可能範囲を、それぞれ示している。また各図において実線は電子線撮像手段11の回動可能範囲を、破線は光学系撮像手段12の回動可能範囲を、それぞれ示している。上述の通り光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とは、胴部24の回転により一緒に回動されるため、各々の観察手段10が回動できる回動可能範囲は、胴部24の回転可能範囲に依存する。
(重複回動範囲)
より正確には、胴部24の回転可能範囲から、第一の位置41と第二の位置42との角度差すなわちオフセット角度を減算した角度が、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とが重複する重複回動範囲である。例えば、胴部24の回転可能範囲が150°で、オフセット角度が40°の場合は、150°−40°=110°が、重複回動範囲となる。重複回動範囲が広い程、様々な傾斜角度で電子顕微鏡画像、光学画像を共に撮像することができ、好ましい。理想的には、重複回動範囲を試料台33の上面をすべてカバーできる0°〜180°とする。この場合は、ほぼすべての傾斜角度で電子顕微鏡画像、光学画像を取得できる。ただ、胴部24から突出する各観察手段10が拡大観察装置の載置面と抵触すると回動が阻止されるため、各観察手段10が胴部24から突出する長さや、拡大観察装置を床面に載置するための脚部26の高さ等により物理的な制約を受けることになる。このため重複回動範囲は、60°〜180°程度となる。好ましくは、180°もしくはこれに近い重複回動範囲を実現できるよう、各観察手段10の突出長さや脚部26の長さを設定する。なお本明細書において傾斜角度は、電子線撮像手段11が垂直姿勢にある状態を0°として計算している。例えば図26(b)の例では、電子線撮像手段11の回動可能範囲が、垂直姿勢から左に90°、右に60°で、合わせて150°である。また光学系撮像手段12の回動可能範囲は、電子線撮像手段11から右に40°傾斜して固定されているため、その回動可能範囲は、図26(c)に示すように、垂直姿勢から左に50°、右に100°で、合わせて150°である。
以上のように、各観察手段10(光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11)は、回転移動(回動)によって、その回転軸に位置する試料までの距離をほぼ一定に維持できるため、一旦焦点距離を調整しておけば、位置を変更しても常にフォーカスを合わせた状態で、回転角度すなわち視点のみを変化させることができるという優れた利点が得られる。
(電子線撮像手段11の概要)
次に、電子線撮像手段11の概要について、図27に基づいて説明する。図27は、電子線撮像手段11のシステム構成を示すブロック図であり、ここでは静電型の静電レンズを用いたSEMを利用している。このSEMは、一般に加速電子の電子線を発生させ試料SAに到達させるまでの電子レンズ系と、試料SAを配置する試料室21(チャンバ)と、試料室21内を真空にするための排気系と、像観察のための操作系で構成される。また図27の電子線撮像手段11は、荷電粒子線による電子線観察像である電子顕微鏡画像の観察を行うため、電子顕微鏡制御部40で各部材を制御する。さらに図27のコントローラ1で実行される電子顕微鏡の操作プログラムで、電子顕微鏡の像観察条件の設定や各種操作を行い、観察像の表示を行う表示手段2に表示する。
(電子レンズ系)
電子レンズ系は、加速電子の電子線EBを発生させる電子銃47、加速電子の束を絞り込んで細束化する電子レンズ系、試料SAから発生する二次電子や反射電子を検出する検出器を備える。図27に示す電子線撮像手段11は、電子レンズ系として電子線EBを照射する電子銃47と、電子銃47から照射される電子線EBが電子レンズ系の中心を通過するように補正する光軸調整器としてガンアライナ49と、電子線EBのスポットの大きさを細く絞る集束レンズ52であるコンデンサレンズと、集束レンズ52で集束された電子線EBを試料SA上で走査させる電子線偏向走査手段58と、走査に伴い試料SAから放出される二次電子を検出する二次電子検出器61と、反射電子を検出する反射電子検出器62を備える。
(排気系)
試料室21には、試料台33、試料導入装置、X線検出用分光器等が備えられる。試料台33(ステージ)は試料台制御部34で制御され、試料台33のX、Y、Z(高さ)方向への移動、回転(R軸)機能を備える。これら4軸は電動駆動される他、一部もしくは全部を手動での駆動とすることもできる。排気系は、上述した減圧ユニット15で構成される。
(操作系)
操作系は二次電子像、反射電子像、X線像等を表示、観察しながら照射電流の調整、焦点合わせ等を行う。二次電子像等の出力は、アナログ信号であれば写真機によるフィルム撮影が一般的であったが、近年は画像をデジタル信号に変換した出力が可能となり、データの保存や画像処理、印刷等の多種多様な処理が可能である。図27のSEMは、二次電子像や反射電子像等の観察像を表示する表示手段2と印刷のためのプリンタ69を備える。また操作系は、像観察条件として少なくとも加速電圧又はスポットサイズ(入射電子線束の直径)を設定するために必要な設定項目の設定手順を誘導(ガイダンス)する設定誘導手段を備える。
(電子線撮像手段11の詳細)
次に、電子線撮像手段11の詳細について、図27に基づき説明する。図27のSEMは、コントローラ1及び表示手段と接続され、コントローラ1で電子線撮像手段11の操作を行い、結果を表示手段に表示し、また必要に応じて像観察条件や画像データを保存したり、画像処理や演算を行う。図27に示すCPUやLSI等で構成される中央演算処理部60は、電子線撮像手段11を構成する各ブロックを制御する。電子銃高圧電源43を制御することにより、フィラメント44、ウェーネルト45、アノード46からなる電子銃47より電子線EBを発生させる。電子銃47から発生された電子線EBは、必ずしも電子レンズ系の中心を通過するとは限らず、ガンアライナ49を光軸調整器50によって制御することで、電子レンズ系の中心を通過するように補正を行う。次に、電子線EBは集束レンズ制御部51によって制御される集束レンズ52であるコンデンサレンズによって細く絞られる。集束された電子線EBは、電子線EBを偏向する非点収差補正器57、電子線偏向走査手段58、対物レンズ59、及び電子線EBのビーム開き角を決定する対物絞り53を通過し、試料SAに至る。非点収差補正器57は非点収差補正器制御部54によって制御され、走査速度等を制御する。同様に電子線偏向走査手段58は電子線偏向走査手段制御部55によって、対物レンズ59は対物レンズ制御部56によって、それぞれ制御され、これらの作用によって試料SA上を走査する。試料SA上を電子線EBが走査することにより、試料SAから二次電子、反射電子等の情報信号が発生され、この情報信号は二次電子検出器61、反射電子検出器62によりそれぞれ検出される。検出された二次電子の情報信号は二次電子検出増幅部63を経て、また反射電子の情報信号は反射電子検出器62で検出されて反射電子検出増幅部64を経て、それぞれA/D変換器65、66によりA/D変換され、画像データ生成部67に送られ、画像データとして構成されて第一記憶手段131に保持される。第一記憶手段131に保持された画像データはコントローラ1に送られ、コントローラ1に接続されたモニタ等の表示手段2にて表示され、必要に応じてプリンタ69にて印刷される。排気系ポンプ70は、試料室21内部を真空状態にする。排気系ポンプ70に接続された排気制御部72が真空度を調整し、試料SAや観察目的に応じて高真空から低真空まで制御する。
(電子銃47)
電子銃47はあるエネルギーをもった加速電子を発生させるソースとなる部分で、W(タングステン)フィラメントやLaB6フィラメントを加熱して電子を放出させる熱電子銃の他、尖状に構成したWの先端に強電界を印加して電子を放出させる電界放射電子銃がある。一方電子レンズ系は、電子顕微鏡倍率調整手段68で制御されて電子顕微鏡倍率を調整する。電子レンズ系には、集束レンズ52、対物レンズ59、対物絞り53、電子線偏向走査手段58、非点収差補正器57等が装着されている。集束レンズは電子銃47で発生した電子線EBをさらに収斂して細くする。対物レンズ59は最終的に電子プローブを試料SAに焦点合わせするためのレンズである。対物絞り53は収差を小さくするために用いられる。検出器には、二次電子を検出する二次電子検出器61と反射電子を検出する反射電子検出器62がある。二次電子はエネルギーが低いのでコレクタにより捕獲され、シンチレータにより光電子に変換されて、光電子倍増管で信号増幅される。一方、反射電子の検出にはシンチレータあるいは半導体型が用いられる。なお、本発明では二次電子や反射電子の信号検出に限定されず、オージェ電子、透過電子、内部起電力、カソードルミネッセンス、X線、吸収電子等の信号検出器を適用することもできる。あるいは、反射電子検出器を省略してもよい。
(電子レンズ系)
(静電レンズ)
以上の電子線撮像手段11であるSEMは、電子レンズとして静電型の電子レンズである静電レンズを採用している。静電型のSEMは軽量であるため、本実施の形態のように傾斜させる構造に適している。静電レンズの概要を、図28のブロック図に示す。この図に示すように静電レンズは、電子レンズ鏡筒内の各電子レンズを、静電レンズ制御部40Aで電気的に制御する構造となっている。電子レンズ鏡筒内には、電子銃47Aと、第一コンデンサレンズ52Aと、第二コンデンサレンズ57Aと、電子線偏向走査手段58として、電子線EB1を走査させるための走査電極58Aと、対物レンズ59Aとが備えられる。電子銃47Aは、電子線源であるフィラメント44Aと、電子線集束用の円筒電極であるウェーネルト45Aと、アノード46Aとで構成される。また静電レンズ制御部40Aは、フィラメント44A及びウェーネルト45Aを制御して電子銃47Aより電子線EB1を発生させる電子銃高圧電源43Aと、第一コンデンサレンズ52Aを制御する第一レンズ制御部51Aと、第二コンデンサレンズ57Aを制御する第二レンズ制御部54Aと、走査電極58Aを制御する走査電極制御部55Aと、対物レンズ59Aを制御する対物レンズ制御部56Aとを備える。このように静電レンズは、複数の電極を組み合わせて、正電場の電子線EB1に対する集束作用を利用して電子線EB1を試料SAに向けて照射し、試料SAから放出される二次電子SE1を二次電子検出器61Aで検出している。この構造の静電レンズは収差が大きいものの、構造を簡素化して電子線撮像手段11の軽量化を図ることができ、これにより観察手段10の回動を安定的に行え、信頼性を向上できる利点が得られる。なお図28の例では、電子線偏向走査手段58を1段の走査電極58Aで構成しているが、複数段の電極で構成することもできる。
(電磁レンズ)
ただ、本発明は電子線撮像手段11を静電レンズに限定するものでなく、他の電子レンズも適宜採用できる。例えば、十分な機械的強度を維持できるのであれば、電子レンズとして磁界型の電子レンズである電磁レンズを利用してもよい。電磁レンズは高倍率化に有利であるという利点が得られる。電磁レンズの概要を、図29に示す。この図に示す電磁レンズも、電子レンズ鏡筒内の各電子レンズを、電磁レンズ制御部40Bで電気的に制御する構造である。電子レンズ鏡筒内には、電子銃47Bと、第一コンデンサレンズ52Bと、第二コンデンサレンズ57Bと、電子線EB2を走査させるための走査コイル58Bと、対物レンズ59Bとが備えられる。電子銃47Bは、電子線源であるフィラメント44Bと、電子線集束用の円筒電極であるウェーネルト45Bと、アノード46Bとで構成される。また電磁レンズ制御部40Bは、フィラメント44B及びウェーネルト45Bを制御して電子銃47Bより電子線EB2を発生させる電子銃高圧電源43Bと、第一コンデンサレンズ52Bを制御する第一レンズ制御部51Bと、第二コンデンサレンズ57Bを制御する第二レンズ制御部54Bと、走査コイル58Bを制御する走査コイル制御部55Bと、対物レンズ59Bを制御する対物レンズ制御部56Bとを備える。このように電磁レンズは、電子線EB2を試料SA2に向けて照射し、試料SA2から放出される二次電子SE2を二次電子検出器61Bで検出している。上述した静電レンズが電場を利用するのに対し、電磁レンズでは電磁石による磁場を利用して電子線EB2を照射している。
また磁界型電子レンズは一般に電磁石を用いた電磁レンズが利用されるが、磁界発生手段として、電磁石でなく永久磁石を用いることで、レンズ構造の簡素化、小型化、軽量化等を図ることもできる。ただし、この場合は電磁石のように磁力の調整ができないため、焦点距離が固定値となる。本明細書では便宜上、このようなレンズも電磁レンズと呼ぶ。
(検出器)
図3に示す例では、検出器として、二次電子検出器(SED)61を使用している。ただ、これに代えて、あるいはこれに加えて他の検出器を利用することもできるのは上述の通りである。なお二次電子検出器61は、図3の例では固定部分に設けている。好ましくは、背面側に位置する端面板に設ける。これにより、試料台33と二次電子検出器61はいずれも固定部分にあるため、その位置関係が不変で、安定した二次電子の検出が可能となる。特に試料台を傾斜させる傾斜観察においては、二次電子が試料台の影とならずに確実に捕捉できる利点が得られる。すなわち、従来の試料台側を傾斜させて電子銃及び二次電子検出器を固定する構成では、試料表面が二次電子検出器から見たときに試料台の影になってしまうことがあり、この結果二次電子の検出感度が低下するという問題があった。これに対して上述のように試料台側を固定して電子銃側を傾斜させる構成では、傾斜観察においても試料台が傾斜しないため、このような影になる問題が生じず、この結果傾斜観察においても安定した観察結果を得ることができる利点が得られる。ただ、この構成に限らず、検出器を回転部分側に設けてもよい。
(試料台33)
さらに図6〜図8に示すように、試料室21内には、観察対象の試料を載置するための試料台33を配置している。試料台33は、上面を平坦な円形状のテーブルとしている。なお図6〜図8の一部断面斜視図の例では、説明のため試料台33を半円状に切り欠いた状態を示している。試料台33は、円筒状の試料室21の中心軸とほぼ一致させる位置に配置する。厳密には、試料台33は水平姿勢を維持したまま上下に昇降可能であることから、試料台33の試料載置面が2つの観察手段10の光軸の交点に一致させることができるように、移動機構を調整している。
これによって、回転軸のほぼ中心に試料を配置して、各観察手段10が中心軸に向かう姿勢に保持されて試料を観察するため、回転軸に沿って各観察手段10を回動させても、常にその光軸の向かう先を試料として、試料を視野に捉えやすくできる上、その焦点距離(ワーキングディスタンス:WD)も一度調整すれば、観察手段10を回動させても常に一定のワーキングディスタンスにて維持されるため、合焦点状態をほぼ維持しつつ、異なる角度からの観察を可能とすることができる。すなわち、観察手段10を移動させたことによる視野のロストを極減することができるので、特に操作に不慣れな初心者ユーザであっても容易に操作できるという優れた利点が得られる。
(試料台駆動手段34)
観察位置の位置決めは、試料SAを載置した試料台33を物理的に移動させて行う。試料SAの移動は、試料台33を駆動する試料台駆動手段34を構成する水平面移動機構74及び高さ調整機構80で行う。これらの試料台駆動手段34は、試料台制御部34によって制御される。試料台33は試料SAの観察位置を調整可能なように様々な方向への移動、調整が可能である。具体的には、試料台33を水平面内で移動させるための水平面移動機構74を備える。水平面移動機構74は、試料台33の平面方向であるX軸及びY軸方向への移動及び微調整を行うXY移動機構75を備える。また水平面移動機構74に、R軸方向への回転、すなわちXY平面と直交するZ軸の回りに回転可能なR軸回転機構76を付加できる。R軸回転機構76の回転量は、回転調整手段により調整される。なお、R軸方向への回転移動と区別するため、本明細書ではXY方向への移動を線状移動と呼ぶ。この試料台駆動手段34は、試料に対して観察位置の位置決めを行う観察位置決め手段として機能する。
(水平面移動機構74)
また図6〜図7に示すように、水平面移動機構74のXY移動機構75は、試料台33をX軸方向、Y軸方向に移動させる移動量を手動で調整するためのX軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Yを、胴部24の右側で手前側に突出するように設けている。さらにR軸回転機構76は、試料台33をR軸方向に移動させる移動量を手動で調整するための回転調整手段であるR軸操作摘み74Rを、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Yと並べて、胴部24の右側で手前側に突出するように設けている。これらの図に示すように、試料台33のX軸方向、Y軸方向及びR軸方向への移動は、各々操作摘みの後端に張設された無限軌道のベルト駆動及びギヤ駆動により、各操作摘みの回転量に応じて回転力が伝達され、試料台33が所定量移動する。
(操作摘み)
さらに高さ調整機構80は、試料台33をZ軸方向に移動させる移動量を調整するためのZ軸操作摘み80Zを、固定板23の背面から上方に突出するように設けている。このように、各操作摘みを回転式に統一することで、ユーザは試料台33の移動を統一された操作感によって調整できる。なお、図6〜図7等の例では、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Y、R軸操作摘み74Rを、いずれも胴部24の右側で鉛直面から突出する姿勢に設けられている。ただ、このような配置や位置に限られるものでなく、拡大観察装置の任意の位置に、任意の配置で設けることも可能であることはいうまでもない。例えば、図2B、図2Cに示す変形例に係る拡大観察装置では、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Y、R軸操作摘み74Rを水平面に並べて配置している。また各摘みには、回転時に指で摘んで連続回転を容易にする突起を設けてもよい。さらにZ軸操作摘み80Zは、その回転軸が側面から突出する姿勢に、摘み部分が垂直姿勢となるように固定することで、ユーザは感覚的に高さ方向の調整であることを摘みの姿勢から把握でき、他の摘みと区別し易くできる。
(非傾動)
この試料台33は水平面内での移動のみを可能としており、従来の試料台では可能であった傾斜角度(T軸方向)の調整を排除している。いいかえると、試料台駆動手段34は試料台33を傾斜させるための傾動手段を有しない。このように試料台33の傾動動作を禁止した非傾動状態にて、試料台33を水平姿勢に固定することで、試料台33上面に載置した試料が傾斜により移動したり滑り落ちる事態を回避できる。また、従来必要であった、両面テープ等で試料を試料台に固定する作業を無くすと共に、このような粘着材の貼付、剥離によって試料が破損する事態も回避できるという優れた利点が得られる。
また、試料台33の傾動に代えて、観察手段側を傾斜させる、すなわち回動させることにより、傾斜観察における視野の変化をユーザが把握しやすいといった利点も得られる。すなわち、従来は電子銃等の観察手段側を固定し、試料側を傾斜させていたたため、視野の変化が観察対象の変化となって現れ、試料がどのような姿勢であり、どの方向から見ているのか、また所望の視野を得るためにはどの軸をどの方向に調整すればいいのか等を把握することが容易でなく、微調整の操作には熟練を要していた。これに対し、試料を固定して観察手段側を移動(回動)させる構成では、ユーザ自身の手で観察手段を物理的に傾斜し、さらに試料の位置が固定されているため、両者の位置関係を容易に把握できるのである。換言すると、一般の観察と同様、固定された試料に対してユーザ自身の視点を移動させるという動作に近い構成のため、ユーザ自身が観察手段を手動で調整することと相俟って、相対的な位置関係が極めて明確となる。また、視野の変更に際しても、試料と観察手段の相対位置が把握できることから、どの軸をどの方向に移動させれば所望の視野に調整できるかの理解も容易となり、操作に熟練していないユーザであっても直感的に把握できるメリットがある。
(回転移動)
さらに試料台33をR軸方向に回転移動させるR軸回転機構76は、着眼点を中心に回転するユーセントリック式としたR軸維持機構77を備える。一般に電子顕微鏡、特に減圧チャンバを気密に閉塞するSEMにおいては、試料台33の移動方向のうち水平面内での回転軸すなわち回転伝達軸に関して、以下のような問題がある。まず、従来の回転機構はその回転伝達軸を試料台のXY方向に対して固定しているため、ユーセントリックすなわち着眼点中心の移動方式とならない。このため、試料台を回転させると、試料台のXY方向の位置によって移動量が大きく異なる。具体的には回転伝達軸から離れる程、移動量が大きくなり、見たいものが画面から外れ遠くに動いてしまう事態が生じる。このため、観察視野における中心を回転伝達軸として回転させる着眼点中心、いわゆるユーセントリックな回転移動が求められるが、これを実現するためには、XYステージの下に回転する試料台を設ける必要がある。しかしながら通常の機械機構による構成で、線状移動とユーセントリックな回転移動を両立させようとすれば、XYステージの線状移動のための駆動伝達機構と回転移動のための駆動伝達機構の両立が困難となり、場合によっては駆動軸が固定されず、無作為に移動する結果、適切な駆動伝達ができなくなるという問題がある。
これに対して、ユーセントリックな回転機構をユニバーサルジョイントで構成することが考えられる。図30A及び図30Bに、このようなユニバーサルジョイント及びウォーム系の機構によってユーセントリック回転機構を実現する例を示す。図30Bは、試料台を図30Aの位置からXY方向に所定量、図の例では左及び上方に移動させた状態を示している。なおこれらの図においては、回転機構を示すため試料台の図示を省略している。この試料台は、図30A、図30Bいずれの姿勢においても、試料台を回転移動できるように、図31に示すような伸縮(スプライン)型のユニバーサルジョイントUJでウォームギヤを駆動し、試料台を回転させる。しかしながらこの構成では、図30Aから図30Bに示すようにユニバーサルジョイントUJが曲がっても回転するように構成する必要があるところ、図31のようなユニバーサルジョイントUJでは可動範囲が限られるため、腕が曲がっても回転する機能の曲がり具合の限度を考慮すれば、全長をある程度長くする必要があり、機構が大型化するという問題があった。さらにこのような伸縮型のユニバーサルジョイント/ウォーム系の機構部品はコストが高いという問題もあった。
そこで、このような問題を解決するために図32及び図33に示す水平面移動機構74は、試料台33の回転伝達軸が、XY移動機構75によるXY方向への移動に連れ動きせず、実際に回転する試料台33は後述するXYサブステージ78と同調して移動するものの、回転させたいタイミングでのみXYサブステージ78上の回転台を回転させるように接触するR軸維持機構77を備えている。これによって、試料台33を回転したときに視野が大きく移動しない着目中心回転を実現している。すなわち、回転する試料台33が視点中心で常時回転するため、見たい点の回転で視野が大きく消失されるような挙動を生じない。またユニバーサルジョイントやスプライン機構を排除して、コストを低減すると共に、装置全体を小型化できる。
ここでR軸維持機構としては、回転調整手段をユーザが回転させると、上下動と回転とを同時に行うメリーゴーランド式の動作とすることが考えられる。この構成は、上下動と回転とを個別に操作する必要がないので、ユーザによる回転調整手段の操作を一動作に纏めて簡素化できる利点を有する。反面、回転しながら従動部材を持ち上げるように動かせてしまうと、部品の一部が微視的に早く接触し、確実に試料台を持ち上げるよりも前に回転力が加えられる結果となり、横滑りするような挙動を示し、正確な移動が阻害される虞がある。
一方、一旦試料台を完全に持ち上げた後、これを回転させるという二動作に分けた操作方法も考えられる。しかしながらこの構成では、ユーザの操作に際して、試料台を持ち上げる操作ボタンを押しながら、回転のための別のノブを回す必要が生じ、操作が面倒或いは困難になるという問題がある。
そこで、このR軸維持機構77では分配機構79を設けて、ユーザが操作する回転調整手段の原駆動を2分岐させ、原動車の回転動を「上下動」と「回転動」に各々変換した上で、これらを同期駆動する。さらに分岐した一方の駆動は間欠動作として、もう一方で上昇させたタイミングでのみ、回転を伝達するようにする。すなわちXY方向への線状移動時には回転伝達軸を試料台33と接触させない。この結果、XY方向への移動を回転駆動部材で妨げることなく、正確なXY方向への移動が可能となる。一方、回転移動時には試料台33を持ち上げるようにして接触させて回転させる。
以下、このR軸維持機構77を備えるR軸回転機構76の具体的な構造を図34〜図41に基づいて説明する。ここで図34及び図35並びに図36は、水平面移動機構74の構成例を示す一部断面斜視図であり、図34は水平面移動機構74を斜め上方から、図35は側面から、図36は斜め下方から、それぞれ見た状態を示す一部断面斜視図である。この水平面移動機構74は、XY移動機構75と、R軸回転機構76を備えている。またR軸回転機構76は、試料台33を上下に移動させるための上下動機構と、R軸方向に回転させるための回転動機構を備えている。さらにR軸回転機構76は、回転調整手段による伝達力を、上下動機構による試料台33の上下移動に変換した上下動伝達力と、回転動機構によるR軸方向の回転に変換した回転伝達力とに分配する分配機構79とを備える。分配機構79は、図34、図37等の例では第一アイドルギヤ154で実現される。
水平面移動機構74は、R軸回転機構76の回転量を調整する回転調整手段としてR軸操作摘み74Rと、回転調整手段と同軸に固定された水平かさ歯車151と、水平かさ歯車151と歯合する垂直かさ歯車152と、垂直かさ歯車152から下方に延長され同軸に回転する第一ギヤ153と、第一ギヤ153と歯合するよう隣接された第一アイドルギヤ154と、第一アイドルギヤ154と歯合するよう隣接された第二アイドルギヤ155と、第二アイドルギヤ155と同軸に固定されたリフトプレート156と、リフトプレート156上面に垂直姿勢を保持したまま上下動可能に支承された昇降軸157と、昇降軸157を挿入する昇降筒158と、昇降軸157の下端に回転自在に装着された球体159と、昇降軸157の上端に固定された昇降板160と、試料台33とを備える。
図32の例では、XY移動機構75はその上面にXYサブステージ78を固定しており、図33、図34に示すようにXYサブステージ78を、X軸操作摘み74X、Y軸操作摘み74Yを操作することでXY方向に線状移動させる。このXYサブステージ78の上面に試料台33を載置することで、試料台33はXYサブステージ78を介してXY移動機構75により線状移動される。また回転移動させる際は、試料台33をXYサブステージ78から分離させた上で回転させている。これによって、試料台33の、XY方向の移動とR軸を中心とする回転とを両立させつつ、ユーセントリックな回転を実現している。試料台33をXYサブステージ78と分離するために、R軸維持機構77は図32に示すように試料台33の背面側に昇降軸157を突出自在に配置している。
また試料台33の背面側には、略中心に昇降軸157の上端を挿入するための昇降穴161を開口しており、さらにその周囲はXYサブステージ78の上面に試料台33を載置させるためのXY載置面162を形成している。図32の例では、試料台33の断面を、両側から折り返すような形状として、昇降穴161からXY載置面162の内側に内部空間163を形成している。なおここでは、昇降穴161を形成するために、試料台33の下面に別部材を固定している。また昇降軸157の上端に固定された昇降板160は、昇降穴161よりも大きな皿状に形成している。このため、昇降穴161を介して試料台33の内部空間163に昇降板160を挿入し、これが抜けないように連結している。またこのとき、XY移動機構75による線状移動を阻害しないよう、昇降軸157の降下位置で、昇降板160がXY載置面162と接触しないように、昇降軸157の上下移動距離や試料台33の内部空間163の厚さ、又はXYサブステージ78の上面高さ等が設定される。このように回転運動を伝達する昇降軸157は、線状移動時は試料台33に接触させず、回転移動の際に接触させるよう上下動させている。
(上下動機構)
以下、上下動機構の詳細を、図38及び図39に基づいて説明する。図38は上下動機構の底面図を、図39は正面側左斜め上方から見た一部断面斜視図を、それぞれ示している。これらの図においては、説明のため回転動機構に関わる部材の図示を省略し、上下動機構に関わる部材のみを表示している。これらの図に示す上下動機構は、第一ギヤ153と、第一アイドルギヤ154と、第二アイドルギヤ155と、リフトプレート156と、球体159と、昇降筒158と、昇降軸157と、昇降板160と、試料台33とで構成される。
第一ギヤ153は、図38に示すように中心の第一ギヤ軸153Aを回転軸として回転自在としている。第一ギヤ軸153Aは、回転軸を垂直方向に延長して水平かさ歯車151を固定している。この第一ギヤ153は、上述の通り側面に突出したR軸操作摘み74Rの回転を、水平かさ歯車151と垂直かさ歯車152による歯合を介して垂直方向に下ろして、試料台33の下方で水平面での回転運動とし、隣接する第一アイドルギヤ154に伝達する。
第一アイドルギヤ154は、第一アイドルギヤ軸154Aを回転軸として回転自在としている。この第一アイドルギヤ154は、隣接する第二アイドルギヤ155に回転力を伝達する。また第一アイドルギヤ154は、後述する図41に示すように第一アイドルギヤ軸154Aに対する対称位置にジェネバピン154Bを圧入すると共に、第一アイドルギヤ154と同軸に第一アイドルギヤ軸154Aを回転軸として一体的に回転する内輪プレート164を固定している。これらのジェネバピン154Bと内輪プレート164により、後述するジェネバギヤ165との間でジェネバ機構を構成している。
第二アイドルギヤ155は、第二アイドルギヤ軸155Aを回転軸として回転自在としている。また上面にリフトプレート156を固定しており、リフトプレート156は第二アイドルギヤ軸155Aを回転軸として、第二アイドルギヤ155と共に回転する。この構成により、第一ギヤ153の回転は第一アイドルギヤ154を介してリフトプレート156に伝達される。なお図38の例では、第一ギヤ153と第一アイドルギヤ154及び第二アイドルギヤ155は、好ましくは同型のギヤを用いることでコスト削減が図られる。
リフトプレート156は、図39に示すように底面を平坦としつつ、上面の第二アイドルギヤ軸155Aを挟む左右の帯状の領域を平坦面156Aとし、さらにその左右領域を各々平坦面156Aから連続するように傾斜させたスロープ段状の傾斜面156Bとしている。また図39の例では、各傾斜面156Bも帯状に形成して、円周側の縁端に第二平坦面156Cを設けている。このリフトプレート156は、円周方向に沿って厚さ、すなわち傾斜面156Bの高さを部分的に変化させるよう、上面を波打ちプレート状に形成している。ここでは、リフトプレート156を1/2回転させると、その上面に載置した昇降軸157を上下に一周期分移動させるよう、厚さ変化を半径に対して線対称としている。
リフトプレート156の上面には、昇降軸157が上下動自在に配置される。昇降軸157は棒状に形成され、円筒状の昇降筒158に挿入されている。昇降筒158は、後述するステージ回転ギヤ170(図34〜図36)の中心に固定されており、固定された昇降筒158の内部で、昇降軸157が上下動する(なお図39の例では説明のためステージ回転ギヤ170を図示していない)。また昇降筒158の内面で昇降軸157をスムーズに上下動、回転動できるように、ベアリング166を設けている。この昇降軸157は、最も上昇された上昇位置と、最も下降された下降位置との間を往復移動する。また昇降筒158はリフトプレート156に対して垂直姿勢に保持されており、昇降軸157の下端をリフトプレート156の上面で押し上げられて上昇する。昇降軸157の下端には球体159が押さえ輪167を介して装着されている。押さえ輪167は、昇降軸157の先端で球体159を回転自在に支承する。球体159は、昇降軸157が上昇位置にあるときリフトプレート156上をスムーズに回転できるよう、真円球状に形成される。これにより、回転面であるリフトプレート156上面との摩擦抵抗を低減しつつ、昇降軸157を傾斜面に沿って上下動できる。また昇降軸157は、後述するように回転動機構によって試料台33を回転動させる回転伝達軸を兼用している。
さらに昇降軸157の上端には、昇降板160が固定されている。昇降板160は、試料台33の裏面に開口された昇降穴161に挿入されて、試料台33を下面から持ち上げる。また持ち上げた状態で後述する回転動機構により回転できるよう、昇降板160と昇降穴161の接触面は摩擦抵抗を大きくするような加工を施すことが好ましい。例えば図32の例では、昇降板160の上面の周囲にゴム等の弾性シートを貼付している。
この上下動機構は、以下のようにして試料台33を上下動させる。まずユーザが回転調整手段であるR軸操作摘み74Rを回転させると、水平かさ歯車151と垂直かさ歯車152を介して水平方向から縦方向の回転軸に変換され、第一ギヤ153が回転される。第一ギヤ153の回転は図38に示すように隣接する第一アイドルギヤ154に伝達される。また第一アイドルギヤ154の回転は、さらに隣接する第二アイドルギヤ155に伝達される。第二アイドルギヤ155の回転は、図39に示すように第二アイドルギヤ155の上面に同軸に固定されたリフトプレート156の回転となり、その上面に載置された昇降軸157の下端に固定された球体159を上方に押し上げる。この結果、昇降軸157が傾斜面156Bに沿って上昇、降下され、昇降軸157の上面に固定された昇降板160を介して試料台33が周期的に上下動される。さらに、リフトプレート156による昇降軸157の上下動によって、回転する試料台33が確実に支承されて持ち上げられている間のみ、回転駆動力が伝達されるような構成としている。
(回転動機構)
次に回転動機構の詳細を、図40及び図41に基づいて説明する。図40は回転動機構の底面図を、図41は側面右斜め上方から見た一部断面斜視図を、それぞれ示している。このため図40と図41では各ギヤの配置が上下に反転して表示されている。これらの図においては、説明のため上下動機構に関わる部材の図示を省略し、回転動機構に関わる部材のみを表示している。これらの図に示す回転動機構は、第一ギヤ153と、第一アイドルギヤ154と、ジェネバギヤ165と、第三アイドルギヤ168と、第四アイドルギヤ169と、ステージ回転ギヤ170で構成される。なおここで第三アイドルギヤ168やステージ回転ギヤ170も、第一ギヤ153や第二アイドルギヤ155の同型のギヤを使用すれば、製造コスト削減を図ることができる。
第一ギヤ153と第一アイドルギヤ154については、上述した上下動機構と共通である。第一アイドルギヤ154はジェネバギヤ165との間でジェネバ機構を構成している。ジェネバ機構は、連続回転運動を断続回転に変換する機構であり、ここでは原動車である第一アイドルギヤ154の連続回転運動を従動車であるジェネバギヤ165の断続回転運動に変換する。このため第一アイドルギヤ154の上面には、図41に示すように第一アイドルギヤ軸154Aに対して対称な位置にジェネバピン154Bが2本、突出するよう固定されている。さらに第一アイドルギヤ軸154Aと同軸に内輪プレート164が固定されている。このように第一アイドルギヤ154は、回転調整手段による伝達力を、上下動伝達力と、R軸方向の回転のための回転伝達力とに分配する分配機構79を実現する。
ジェネバギヤ165は、ジェネバギヤ軸165Aを中心に回転自在としており、第一アイドルギヤ154のジェネバピン154Bを受けるためのスロット165Bを側面に8つ開口している。またジェネバギヤ165の側面はスロット165B同士の間に内輪プレート164と当接する当接面165Cを形成している。さらにジェネバギヤ165の上面にはジェネバギヤ軸165Aで同軸に固定された小径な第一減速ギヤ171が設けられている。このようにジェネバギヤ165は多段ギヤとして、第一アイドルギヤ154の回転をジェネバ機構により間欠的に伝達されて、第一減速ギヤ171を介して第三アイドルギヤ168に回転速度を落として伝達する。
内輪プレート164は、当接面165Cと当接する部位を当接面165Cの曲面に沿う円弧状面164Bとして、他の部分を切り欠いた長方形状としている。このジェネバ機構は、ジェネバピン154Bがスロット165Bに案内されるとジェネバギヤ165が45°回転し、スロット165Bからジェネバピン154Bが離れると、次のジェネバピン154Bが案内される間は回転を停止することで、間欠回転を実現している。またジェネバギヤ165が回転を停止している間は、内輪プレート164の円弧状面164Bが当接面165Cと当接して、次のジェネバピン154Bが案内されるまでの間のジェネバギヤ165の回転止め状態を安定させている。このため内輪プレート164は、ジェネバギヤ165の停止期間中は円弧状面164Bを当接面165Cに沿って摺動させ、ジェネバギヤ165の回転期間中は切り欠き部分がジェネバギヤ165に面するように、内輪プレート164の切り欠き部分やジェネバギヤ165のスロット165Bを位置合わせして回転位置を設定している。図41の例では、内輪プレート164の切り欠き部分は、第一アイドルギヤ154上でジェネバピン154Bを設けた位置に面した側としている。また第一アイドルギヤ154及び内輪プレート164は、直径方向に線対称となる。さらにジェネバギヤ165も各スロット165B及び当接面165Cを対称形状に形成している。これにより、回転方向に依らず間欠回転が継続される。
第三アイドルギヤ168は第三アイドルギヤ軸168Aを回転中心として回転自在としている。この第三アイドルギヤ168も多段ギヤとして、その上面には小径の第二減速ギヤ172が第三アイドルギヤ軸168Aと同軸に一体的に設けられている。
さらに第二減速ギヤ172は隣接する第四アイドルギヤ169と歯合される。この第四アイドルギヤ169も、さらに隣接されたステージ回転ギヤ170と歯合する。ステージ回転ギヤ170は、図34及び図36に示すように、その中心に昇降筒158を固定している。昇降軸157の内部には昇降軸157を摺動自在に挿入しており、昇降筒158を介して昇降軸157が上下動する。すなわち、ステージ回転ギヤ170及びこれに固定された昇降筒158は上下動することなく、内部を挿通する昇降軸157のみが上下動する。さらにこの昇降軸157は、昇降筒158の回転に伴って回転するよう構成されている。また昇降軸157はスプリング173により下方すなわちリフトプレート156側に付勢されている。昇降軸157は重力によって下降するため、スプリングが無くても機能するところ、昇降軸が引っかかり等により降下しなくなる事態を回避するため、スプリング173によって昇降軸157を下向きに付勢している。
この回転動機構は、回転調整手段であるR軸操作摘み74Rを回転させると、図40及び図41に示すように、回転伝達力が水平かさ歯車151、垂直かさ歯車152、第一ギヤ153、第一アイドルギヤ154、ジェネバギヤ165、第一減速ギヤ171、第三アイドルギヤ168、第二減速ギヤ172、第四アイドルギヤ169を介してステージ回転ギヤ170に伝達される。ステージ回転ギヤ170が昇降筒158を回転軸として回転されると、これに伴って昇降軸157が回転され、昇降軸157の上端に固定された昇降板160を介して試料台33を回転させる。また昇降板160の回転時には、昇降軸157はリフトプレート156によって上昇位置に持ち上げられている。さらにその後リフトプレート156が降下されると、試料台33のXY載置面162がXYサブステージ78上に載置されて回転動機構を分離し、さらにジェネバ機構によってジェネバギヤ165の回転が停止されて、試料台33の回転が停止される。この状態で続けて回転調整手段を回転させると、再び昇降軸157が上昇されて試料台33との連結を回復し、試料台33の回転が再開される。このように、回転調整手段を回転させ続けると、試料台33は連続的に回転せず、間欠的に回転されることとなる。
また試料台33を回転させる際は試料台33を僅かに持ち上げているため、試料と観察手段とのワーキングディスタンスが変化し、観察像の焦点が甘くなるが、視野が回転される様子を表示手段で動画で更新させると、ぶれや残像が生じるため、さほど気にならない。また試料台33の静止状態では試料台33をXYサブステージ78上に載置させて、元のワーキングディスタンスに戻す。このため、回転調整手段を回転させる際は、調整を終えた時点で昇降軸157が降下位置となるように、ユーザは手動でR軸操作摘み74Rの回転位置を調整する。また、この作業を自動化するために、昇降軸157が上昇位置ではR軸操作摘み74Rが停止しないような機構を設けることも好ましい。例えば、永久磁石による反発力等で所定の回転位置でのみR軸操作摘みが静止するようにして、昇降軸の上昇位置に対応する回転角度でR軸操作摘みを静止できないようにする。
このように、R軸維持機構77は線状移動時、回転移動時に、各移動機構と試料台33との連結状態、すなわち回転伝達軸の連結を切り替える。さらに連結状態を切り替える部材を、昇降式の昇降軸157と兼用することで、このような連結の切り替えと回転とを一部材で実現でき、構成を簡素化できる利点も得られる。ここでジェネバ機構によって間欠回転される昇降軸157は、回転移動時に昇降軸157が上昇位置にあるようにジェネバ機構が設定される。逆にいえば、昇降軸157が下降位置にあるとき、あるいは上昇中、下降中といった移動時には、回転されないように、ジェネバギヤ165の回転位置と昇降プレートの傾斜面の回転位置とをリンクさせている。この結果、確実に昇降板160で試料台33を持ち上げている間にのみ試料台33を回転させることとし、不完全な支承状態での回転による位置ずれやすべりを阻止して、確実かつ正確な回転動作が実現でき、微視的な操作を確実ならしめる。
以上のようにしてR軸維持機構77は、回転調整手段を用いた単一の操作で上下動と回転動を実現している。この例では、回転動を間欠動作としつつ、上下動の上下動伝達力を生じるリフトプレート156は連続回転させているが、リフトプレート156の厚さを部分的に一定とした平坦面156A、156Cを設けることで、上下動も実質的には間欠動作となる。そしてこれらの間欠動作をリンクさせて、試料台33が上昇位置にある期間でのみ回転伝達力が伝達される。この結果、試料台33の運動は、上昇、回転、下降の繰り返しとなり、各動作が重複しないため、ユーセントリック式の回転運動を確実かつ正確に実現できる。試料台33のXY方向の位置に依らず、ユーセントリック式の回転を実現することで、観察視野内に回転軸となるR軸を存在させ、回転による視野の変化量を低減して視野変化の把握を容易にできる。またR軸は、好ましくは観察視野の中心近傍に配置することで、回転の様子を最も判りやすくユーザに伝えることができる。好ましくは、図32に示すように、観察手段を鉛直姿勢に保持した状態で光軸が昇降軸157と一致するように配置する。
なお、これらの図においてはギヤ同士の接触面は、説明の簡略化のため平滑面として図示しているが、実際にはギヤ同士を歯合させるように平歯車の歯合面としている。ただ、この例に限られるものでなく、異なる歯合面を採用したり、ベルト駆動にする等、回転運動を伝達可能な既知の機構が適宜利用できることは言うまでもない。
以上のように、R軸回転機構として、試料台をR軸方向に回転させるための試料台回転動機構と、試料台と試料台回転動機構とを連結する連結状態と、連結を解除した非連結状態とに切り換え可能な回転機構連結手段とを備え、XY移動機構で試料台をXY方向に移動させる際は、回転機構連結手段により試料台と試料台回転動機構との連結を非連結状態とすることで、試料台の回転動を禁止し、一方試料台回転動機構で試料台をR軸方向に回転させる際は、回転機構連結手段により試料台と試料台回転動機構とを連結状態とすることで、試料台のXY方向への移動を禁止するよう構成すれば、試料台のXY方向への移動とR軸方向への回転とを切り分けることができ、試料台がXY方向のどのような位置にあっても、回転時には常に着眼点を中心としたユーセントリック式回転を実現できる。
(第二実施例)
なお上記の例では、単一の動作で昇降板の上下動と回転動とを実現しているが、これらを独立した操作系で実現することもできる。特に上記の例では、昇降板の上下動と回転動とを個別に行うために、ジェネバギヤを用いた間欠動作によって試料台の昇降と微動回転との繰り返しを実現しているが、昇降板の上下動と回転動とを切り分けるための機構が複雑となる。また、交互に上下動と回転動とを行う間欠動作のため、一回の動作量が少ないという問題もある。例えば試料台を大きく回転させようとすれば、回転操作量が多く必要となるし、また回転を迅速に行いたい場合にも不適であった。さらに、操作を行うユーザからみて、一の操作によって試料台の上下動と回転動とを行える利点がある一方で、各々の動作が間欠的に交互に行われる関係上、今現在においてどちらの動作が対象となっているのかを感覚的に把握し難く、次の動作が回転動なのかどうかを判断できないという問題もあった。
そこで、操作系をより単純化して、昇降板を上下に移動させる上下動機構と、R軸方向に回転させるための回転動機構とを分離させ、それぞれに対して個別に操作可能とすることもできる。このような例を、第二実施例として、図67〜図69に示す。これらの図において、図67は上下動操作部174を非連結位置とした非連結状態を示す模式断面図、図68は上下動操作部174を連結位置とした連結状態を示す模式断面図、図69は上下動機構175と回転動機構176の構成を示す模式図を、それぞれ示す。この例では、回転機構連結手段は、試料台33Fの、試料載置面の背面に開口された昇降穴161Fに向かって、昇降板160Fを上下に移動させるための上下動機構175である。また試料台33Fの回転動機構176は、試料台33Fの昇降穴161Fを、昇降板160Fで上下動機構175により押し上げた状態で、昇降板160FをR軸方向に回転させるための回転動機構である。この例では、昇降板160Fを上下に移動させるための上下動機構175と、昇降板160FをR軸方向に回転させるための回転動機構176とを個別に設けている。またこれらの操作手段も共通化せず、回転動機構176を操作するR軸操作手段74RFと、上下動機構175を操作する上下動操作部174とを個別に設けている。
上下動操作部174は、回転動機構176と昇降板160Fとの連結を、連結状態と、連結を解除した非連結状態とに切り替える。連結状態では、回転動機構176による昇降板160Fの回転動の操作が可能となる。上下動操作部174を操作して、回転動機構176と昇降板160Fとの連結状態が解除されると、昇降板160Fの回転動の操作が不能となる。ユーザは、まず図67に示すように上下動操作部174で回転動機構176と昇降板160Fとを非連結状態として、XY移動機構75Fを操作して試料台33FをXY方向に移動させ、観察位置を決定する。そしてX方向の位置が決まると、図68に示すように上下動操作部174で回転動機構176と昇降板160Fとを連結状態として、回転動機構176を操作して昇降板160Fを回転させ、回転角度を調整することができる。
図67〜図68の例では、上下動操作部174としてレバー状の上下動操作レバーを備えている。この上下動操作レバーは、回転軸を中心に回転して、連結位置と非連結位置とに切り替え可能としている。また上下動操作レバーの回転動は、ベルト等の伝達手段を介して中間回転部177に伝達される。中間回転部177は、ギヤや回転シャフト等の複数の伝達機構を介してさらにカム状切替部178に回転動作を伝達する。カム状切替部178は、回転側面を部分的にカム状に突出させており、シーソー部179の一端を押し出してシーソー部179を揺動させる。シーソー部179の他端は、リフトプレート156Fの底面に当接される姿勢に、回転軸を中心に揺動自在に固定されている。リフトプレート156Fの上面には昇降軸157Fが固定されており、図68に示すようにリフトプレート156Fの底面がシーソー部179で押し上げられることにより、昇降軸157Fが上昇して昇降板160Fが押し上げられ、試料台33Fを昇降穴161Fから上方に持ち上げる。これによってXY移動機構75Fとの連結状態が解除されるため、XY移動ができなくなる一方で、R軸回転機構と連結状態となり、試料台33Fの回転動が可能となる。
またユーザが、図67に示すように上下動操作レバーを非連結位置とした状態では、昇降板160Fが降下位置にあるため回転動機構176は試料台33Fと非連結状態となる。その一方で試料台33FのXY載置面162FがXYサブステージ78F上に載置されているため、XY移動機構75Fによって試料台33FをXY方向に線状移動させることができる。そしてユーザがX軸操作摘み、Y軸操作摘みの操作によりXY方向の位置決めをした後、図68に示すように上下動操作部174である上下動操作レバーを連結位置に切り替えると、上下動操作レバーの操作に従って中間回転部177が回転し、さらにカム状切替部178が回転されて、カム状切替部178でシーソー部179の一端が押し出され、その反作用でシーソー部179の他端がリフトプレート156Fの底面を押し上げる。これによってリフトプレート156F上面に固定された昇降軸157Fが押し上げられて、昇降軸157F上端に固定された昇降板160Fが上昇され、昇降穴161Fを介して試料台33F底面を押し上げる。この状態では、回転動機構176が試料台33Fと連結状態となり、回転調整手段を構成するR軸操作手段74RF、ここではR軸操作摘みを回転させると、試料台33Fの回転動が可能となる。一方、試料台33FのXY載置面162FがXYサブステージ78F上から離間される結果、試料台33FとXY移動機構75Fとの連結が解除されるので、X軸操作摘み、Y軸操作摘みを操作してもXY移動機構75Fによって試料台33FをXY方向に線状移動させることができない。このようにして、実施例2においては試料台33Fの上下動とR軸を中心とする回転とを切り分けることで、試料台33FのXY方向の移動と回転動とを両立させつつ、ユーセントリックな回転を実現している。
(高さ調整機構80)
また試料台33は、その水平位置を調整するための高さ調整機構80として、対物レンズ59と試料との距離(ワーキングディスタンス)を調整するために、鉛直方向であるZ軸方向の調整を可能としている。また高さ調整機構80の移動軌跡に、電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12の焦点可変範囲を含めることで、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12の焦点調整が可能となる。この場合、高さ調整機構80は、電子線撮像手段11の焦点距離を調整するための顕微鏡焦点調整手段37と、光学系撮像手段12の焦点距離を調整するための光学焦点調整手段38に兼用、あるいは各観察手段10が各々焦点調整手段を有している場合は、これらと併用することができる。また、いずれか一方の観察手段10が焦点調整手段を有しない焦点固定式の場合は、その焦点調整手段として機能することは言うまでもない。例えば、電子線撮像手段11が顕微鏡焦点調整手段37を備えており、光学系撮像手段12が焦点固定式の場合に、高さ調整機構80を光学焦点調整手段38として利用できる。
なお観察像の位置決めや観察視野の移動には、試料台を物理的に移動させる方法に限られず、例えば電子銃から照射される電子線の走査位置をシフトさせる方法(イメージシフト)も利用できる。あるいは、このような仮想的な移動を物理的な移動と併用してもよい。あるいはまた、広い範囲で一旦画像データを取り込み、データをソフトウエア的に処理する方法も利用できる。この方法では、一旦データが取り込まれてデータ内で処理されるため、ソフトウエア的に観察位置を移動させることが可能で、試料台の移動や電子線の走査といったハードウエア的な移動を伴わないメリットがある。予め大きな画像データを取り込む方法としては、例えば様々な位置の画像データを複数取得し、これらの画像データをつなぎ合わせることで広い面積の画像データを取得する方法がある。あるいは、低倍率で画像データを取得することによって、取得面積を広く取ることができる。
(光学系撮像手段12)
次に、光学系撮像手段12について説明する。まず、光学系撮像手段12の光学レンズ系の構成例を、図42Aに示す。この光学レンズは、光学レンズ鏡筒内に配置された光学撮像素子92と、光学レンズ群98を構成する光学ズームレンズ93及び対物レンズ94とを備える。各レンズは、複数枚の光学レンズで構成できる。倍率の調整は、光学ズームレンズ93を手動または電動で駆動してレンズ間の間隔を調整することで行われる。電動駆動の場合は、光学ズームレンズ93の位置を移動させるモータを備えており、モータの回転によって光学ズーム倍率を調整する。このような光学倍率を調整するため、光学系撮像手段12は光学倍率調整手段95を備える。また焦点位置を可変とする場合は、これを調整するための光学焦点調整手段38を備えてもよい。焦点位置を固定式とする場合は、光学焦点調整手段を省略できる。さらに、試料台33に載置された試料SA3を照明するための照明部96を配置している。
光学撮像素子92には、CCDやCMOS等が利用できる。光学撮像素子92は、試料SA3に光学系を介して入射される光の反射光または透過光を、2次元状に配置された画素毎に撮像信号を電気的に読み取って光学画像を結像する。光学撮像素子92によって電気的に読み取られた画像データは、情報処理手段101に送出されて処理される。
(光学撮像システム)
図1に示す拡大観察システム1000の構成では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を制御するコントローラが、各々別個に設けられている。ここでは、電子顕微鏡画像手段はコントローラ1で制御され、光学系撮像手段12は表示手段に組み込まれた情報処理手段101で制御される。本実施の形態においては、コントローラ1で画像合成等の画像処理を行うよう構成している。ただ、各観察手段を制御する別個のコントローラを設ける構成の他、一のコントローラで複数の観察手段を制御するよう構成してもよい。共通のコントローラを使用することで、必要な部材を低減できる上、ユーザも一のコントローラのみを操作することで複数の観察手段を制御できる。さらに各観察手段の操作についても、統一された環境やユーザインターフェースを提供することで、より操作性が向上される。
図42Bに、表示手段2の情報処理手段101で光学系撮像手段12を制御する光学撮像システムのブロック図を示す。この図に示す光学系撮像手段12は、試料SA3を撮像する光学撮像素子としてCCD等の受光素子と、CCDを駆動制御するCCD制御回路91と、照明部96から試料台33上に載置された試料SA3に対して照射された光の透過光や反射光をCCD上に結像させる光学レンズ群98とを備える。光学レンズ群98は、図42Aに示す構成が利用できる。また試料SA3を載置する試料台33を駆動する試料台駆動手段34として、水平面移動機構74及び高さ調整機構80を備えることも、図4等で説明した通りである。また光学焦点調整手段として、光学レンズ群98を光軸方向に移動させる機構を設けたり、あるいは高さ調整機構を、光軸方向における相対距離を変化させ焦点を調整する光学焦点調整手段として兼用してもよい。
一方表示手段2は、撮像素子によって電気的に読み取られた画像データを記憶するメモリ等の第二記憶手段103(図59の第二記憶手段132に相当)と、撮像素子によって電気的に読み取られた画像データに基づいて画像を表示するディスプレイ部102と、ディスプレイ部102上に表示される画面に基づいて入力その他の操作を行う操作手段105(図59等の操作手段105cに相当)と、操作手段105によって入力された情報に基づいて画像処理その他各種の処理を行う情報処理手段101と、情報処理手段101が光学系撮像手段12からの情報を授受するためのインターフェイス104とを備える。ディスプレイ部102は、高解像度表示が可能なモニタであり、CRTや液晶パネル等が利用される。
第二記憶手段103は、例えば光学焦点調整手段によって焦点を調整したときの試料台33と光学レンズ群98の光軸方向における相対距離に関する焦点距離情報を、光軸方向とほぼ垂直な面内における試料SA3の2次元位置情報と共に記憶する。またディスプレイ部102によって表示された画像上で任意の点、領域を操作手段105で設定すると、設定された領域に対応する試料SA3の一部または全部に関する第二記憶手段103に記憶された焦点距離情報に基づいて、該領域に対応する試料SA3の光軸方向における平均高さを情報処理手段101で演算する。このようにして拡大観察装置は、光学レンズ群98を介して入射する試料台33上に載置された試料SA3からの反射光または透過光を撮像素子で電気的に読み取り、指定された領域に対応する試料SA3の光軸方向における平均高さ又は深さを演算できる。さらに情報処理手段101は、後述する電子顕微鏡画像と光学画像とを合成する画像合成手段116として機能させることもできる。
操作手段105はコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータに固定されている。一般的な操作手段105としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの操作手段105は、拡大観察用プログラムの操作の他、拡大観察装置自体やその周辺機器の操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示するディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、または音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。図42Bの例では、操作手段105はマウス等のポインティングデバイスで構成される。
また、表示手段2にはコンピュータ70を接続可能であり、コンピュータ70に別途拡大観察用プログラムをインストールして、コンピュータ70側からも拡大観察装置を操作することもできる。あるいは表示手段そのものをコンピュータで実現することもできる。この場合、コンピュータに接続したモニタが、表示手段のディスプレイ部として機能する。
(画素ずらし手段99)
さらに光学系撮像手段12は、画素ずらしによってCCDの持つ解像度以上の高解像度を得るための画素ずらし手段99を備えることができる。画素ずらしとは、例えば画素ピッチの半分だけ被写体をずらして撮影した画像と、ずらす前の画像とを合成することにより高解像度化を図るものである。代表的な画像ずらしの機構としては、撮像素子を移動させるCCD駆動方式、LPFを傾斜させるLPF傾斜方式、レンズを移動させるレンズ移動方式等がある。図42Bにおいては、試料台33に固定された試料SA3から光学レンズ群98を介してCCDに入射される反射光または透過光の入射光路を、少なくとも一の方向に、その方向におけるCCDの一画素の間隔よりも小さい距離で光学的にシフトさせる光路シフト部14を備える。画素ずらしを実現するための機構や手法は、上記の構成に限られず、既知の方法や将来開発される方法が適宜利用できる。
CCDは、x方向およびy方向に2次元状に配置された画素毎に受光量を電気的に読み取ることができる。CCD上に結像された試料SA3の像は、CCDの各画素において受光量に応じて電気信号に変換され、CCD制御回路91においてさらにデジタルデータに変換される。情報処理手段101は、CCD制御回路91において変換されたデジタルデータを受光データとして、光軸方向(図42B中のz方向)とほぼ垂直な面内(図42B中のx、y方向)における試料SA3の2次元位置情報としての画素の配置情報(x、y)と共に第二記憶手段103に記憶する。ここで、光軸方向とほぼ垂直な面内とは、厳密に光軸に対して90°をなす面である必要はなく、その光学系および撮像素子における解像度において試料の形状を認識できる程度の傾きの範囲内にある観察面であればよい。
以上のように図1の拡大観察システム1000の構成では、光学系撮像手段12を表示手段2に組み込まれた情報処理手段101で制御する一方、電子線撮像手段11はコントローラで制御する。すなわち観察手段毎に別個にコントローラを設けているが、この構成に限られず、一のコントローラで複数の観察手段を制御する構成とすることもできる。
(照明部96)
図42Bに示す照明部96は、試料SA3に落射光を照射するための落射照明を例示している。特に観察手段10を傾斜させずに正面から観察する際は、視点すなわち観察手段の光軸と照明を略一致させることができ、最も明るい画面とすることができる。ただ、これに限らず、透過光を照射するための透過照明を利用することもできる。照明部96は、光ファイバ106を介して表示手段2と接続される。表示手段2は、光ファイバ106を接続するコネクタを備えると共に、コネクタを介して光ファイバ106に光を送出するための光源107を内蔵する。光源107にはハロゲンランプやキセノンランプ、LED等が用いられる。
照明部96は、図4、図7等に示すように、試料室21内の光源ポート97に設置される。光源ポート97に接続される照明部96は、その照明光が試料台33に向けられるように照明光の光軸が設定される。照明光の光軸は、各観察手段10と同様に回転軸に向かう姿勢に設定する。これにより、傾斜観察に際して試料台33を固定しつつ各観察手段10を傾斜させても、照明光が試料台33の影に隠れてしまう事態を低減できる。より好ましくは、照明部96は図4に示すように、各観察手段10を設けた回転面とは異なる面上に位置させ、かつ光軸が該回転面と交差する角度に設定される。このように照明光を傾斜させることで、照明光により試料に影が生じる方向が回転面と平行とならず、交差するため、傾斜観察において影の暗い部分を少なくできる効果が期待できる。
さらに試料室21の内面は、反射性とすることが好ましい。これにより、照明光を試料室21内部で可能な限り反射させ、乱反射により照明の陰影を少なくできる効果が得られる。例えば試料室21の内面をAgコート等反射率の高い金属で被覆する。
光源ポート97は、回転部分側に設けられる。これにより、胴部24の回動に沿って照明部96も回転するため、光学系撮像手段12と照明部96の位置関係を一定に維持でき、光学系撮像手段12の位置によらず半径方向に同じ角度で照明を照射し続ける結果、光学系撮像手段12の回動によって照明状態が変化しないという利点が得られる。
(試料室内観察手段13)
さらに本実施の形態では、第三の観察手段として、試料室21内の環境を観察するための試料室内観察手段13を設けている。試料室内観察手段13は、追加の光学系撮像手段として、少なくとも試料台33と、試料台33に載置された試料及び電子線撮像手段11の先端部を視野に含む光学画像を試料室内画像として取得可能である。これにより、試料室21内での試料や光学系撮像手段12、電子線撮像手段11の位置関係を容易に把握できる。特に、試料の載置位置の確認に有利となる。例えば試料台33を試料室21から手前に引き出す構成では、載置作業自体は容易であるものの、図22に示すように、載置する位置によって観察手段でどのように見えるかを事前に確認できない。これに対して、試料室内観察手段13を設けることで、図43に示すように、ユーザは試料室内観察手段13の光学画像である試料室内画像をリアルタイムで確認しながら、真空引きの前に試料を試料台33上の所望の位置に置くことができる。すなわち、載置場所を確認しながら試料を載置できるという利点が得られる。このような試料室内観察手段13は、CCDやCMOS等の撮像素子で構成でき、チャンバビューカメラ(CVC)等とも称呼される。
図43は閉塞板28の開放状態で試料の位置決めを行う様子を示す模式断面図であり、この図に示すように、閉塞板28の開閉に伴って試料台33を移動させないことで、すなわち閉塞板28の開閉動作と試料台33の移動とを独立させることで、試料の試料台33への載置位置が閉塞板28の開閉前後で変化しない。このため、試料室21を解放したまま、試料室内観察手段13で試料台33の観察が可能となり、試料の位置や表示状態を示す試料室内画像を表示手段上で確認したり、最適な載置位置に手動で微調整できるという優れた利点が得られる。このように試料室内観察手段13を用いて、試料室21を閉塞する前に載置状態を予め確認できることは、試料の位置決め作業を飛躍的に省力化できる利点が得られる。すなわち、従来は試料台に試料をセットし、試料室内を真空引きした後でなければ、その観察像を確認できなかった。観察像を表示させた後、さらに位置を調整するには試料室内を一旦大気圧に戻して再度試料室を開き、位置を直した上で再度真空引きを行って観察を行うという、試行錯誤の繰り返しで位置決めを行うこととなり、極めて繁雑な作業であった。これに対して上記構成では、真空引きの前に光学画像を確認しながら試料置きを実行できる。すなわち試料室を開いたままで光学画像を表示できるので、光学画像上の見え方を確認しながら試料の位置の微調整を行えるため、意図通りの位置に容易に試料を位置決めできる。このように試料の位置決め作業を大幅に省力化でき、また真空引き回数を最小限として前処理の時間を短縮化できるという優れた利点が得られる。なお、試料室内の観察は試料室内観察手段に限られず、光学系撮像手段を用いることも可能である。
試料室内観察手段13は、その光軸を好ましくは回転軸と略平行とする。これにより、胴部24の回転移動を上方から把握でき、円弧状の軌跡として回転状態を把握しやすくできる。また光軸を回転軸と平行となるように偏芯させたオフセット配置により、光学画像内に回転軸を含めることができ、回転を一層容易に把握し易くできる。試料室内観察手段13の光軸の偏芯量は、好ましくは胴部24の回転軸を基準として、円筒状半径の±10%程度とする。なお本明細書において、試料台33が回転軸と略一致するとは、このようなオフセット位置を包含する意味で使用する。またここでの平行とは、回転軸に対して約20°までの角度差を有するものを含む意味で使用する。また試料室内観察手段13を偏芯配置する場合、より好ましくはその光軸を、回転軸よりも上方に位置させる。これにより、回転軸と一致させた試料の観察面も試料室内画像の下方に含めることができ、試料と電子銃との位置関係を確実に把握できる。
試料室内観察手段13の固定位置は、電子線撮像手段11を胴部24と共に回動させる場合、試料台33や試料台33上の試料との干渉の有無や干渉のおそれを確認しながら回動させるために、回動しない固定部分側とすることが望ましい。
ただ、回転部分側に試料室内観察手段13を設けることも可能である。この場合は、胴部24の回転角度情報を角度センサ等で取得し、画像の回転を補正する制御を行うことで、回転運動を相殺した静止画を得ることができる。例えばコントローラ1によって回動部の回転量と視野の移動量を計算し、視野の移動分だけ観察視野の表示部分を逆方向に移動させるよう、画像処理する。これにより、試料室内画像を、胴部の回転による傾きを相殺するように補正した回転補正画像として表示できるので、回転位置によらず表示手段2に表示される画像の視野を一定に保持できる。
図44A及び図44Bは、試料室21内における試料台33と観察手段10の相対移動を示す模式断面図である。上述の通り、試料台33は水平姿勢を維持しつつ高さ調整機構80により上下動するのみで、試料台33の載置面を傾斜させる傾動や揺動を禁止している。この構造で傾斜観察を実現するために、観察手段10側を傾斜させるよう構成している。このように、試料側を固定して観察手段10側を傾斜させることで、ユーザは観察手段10で撮像されて表示手段2に表示される観察像において、傾斜姿勢の位置関係を容易に把握できる利点が得られる。逆に言えば、従来のようにカメラ側を固定して試料台33を傾斜させる構造、すなわち図45A及び図45Bに示すようなユーセントリック構造では、現在観察中の画像において、傾斜観察の傾斜角度を変更する際、どの方向に傾斜を調整すれば、所望の画像が得られるか、その位置関係を把握することが容易でなかった。これに対し、観察対象である試料側を固定し、観察の視点となる観察手段10側、すなわち目線そのものを移動させる構成とすることで、実際にユーザが試料を観察する際と同様の目線を動かすという感覚で位置関係を把握でき、この結果角度調整すべき方向も速やかに把握できるという利点が得られる。
また、試料台33を傾斜させないことで、試料が試料台33から滑り落ちる虞もなくなり、試料を試料台33に固定するための構造、例えば粘着テープによる固定作業も不要にでき、さらに粘着テープを剥離する際に試料を破損する虞も無くすことができるといった、作業性や安全性の向上が図られる。
さらに従来のユーセントリック構造では、試料台33を傾斜させたまま試料台33の高さ(Z軸)を変更すると、図45Bに示す黒塗りの位置から斜線ハッチングに示す位置に試料台33が移動する結果、傾斜姿勢で固定された光学系撮像手段12の光軸が相対的に試料台33上を移動することとなって、観察視野が意図せず移動してしまうという問題があった。特に光学系撮像手段12に焦点位置を調整するための光学焦点調整手段を備えない焦点固定式の場合は、試料台33の高さ調整のみでワーキングディスタンスを変化させる必要があり、合焦位置によっては観察視野が電子顕微鏡と一致しなくなる虞がある。
また、観察手段10と試料との間の角度を変更した場合、角度を変更する度に、観察手段10と試料との間の焦点距離が変わるため、焦点位置の補正を行わなければならない。加えて、二つの観察手段10で、同一の試料に対して同一の傾斜角度で、傾斜観察の画像を取得したい場合、一方の観察手段10で用いた角度を記憶すると共に、他方の観察手段10側に試料台33を移動させた上で、先の角度を再現し、焦点位置を合わせる必要があった。
これに対して本実施の形態では、図44A及び図44Bに示すように、観察手段10を鉛直位置に回転移動させることで、試料台33の高さによらず観察視野を一定に保持できるという利点が得られる。なお、本実施の形態においては使用したい観察手段10を鉛直姿勢とすることで、いいかえると選択した観察手段10の光軸を、高さ調整手段の移動方向(Z軸)と略一致させることで、高さ調整による観察視野の移動を回避できる。この結果、ユーセントリックなワーキングディスタンスは1箇所のみとなる。このように、観察手段10を鉛直姿勢にして観察すると、観察手段10の光軸と試料台33の上下移動の軸が一致し、ワーキングディスタンスを調整しても視野が移動しないので、ユーセントリック位置の調整がし易いという利点が得られる。
ただ、観察手段10を傾斜姿勢としても試料の観察が可能であることはいうまでもない。また、この場合には試料台33の高さ調整による観察視野の移動が生じるが、画像処理によってこの移動分を相殺することも可能である。例えばコントローラ1によって、高さの変化と視野の移動量を計算し、視野の移動分だけ観察視野(表示中の光学画像乃至電子顕微鏡画像)の表示部分を逆方向に移動させるよう、コントローラ1で画像処理する。これにより、高さの移動によらず表示手段2に表示される画像の視野を一定に保持できる。この結果、試料台33の角度や観察位置によらず、観察手段10を切り替えても観察視野が変化しない拡大観察装置が実現できる。
特に従来は、電子顕微鏡観察を優先するため、光学系撮像手段12による観察を犠牲にし、さらに電子顕微鏡の分解能(最高倍率)を優先する結果、傾斜観察を制限する設計思想が採用されていた。この結果、折角電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とを共に備えていても、両者を最大限に活用し、光学画像や傾斜観察を制限無くユーザが利用できる環境が実現されているとは言い難い状況であった。
具体的には、電子顕微鏡の分解能は、電子線撮像手段11の対物レンズ先端から試料までの距離であるワーキングディスタンスが短いほど良くなる。しかしながら、傾斜させた角度から試料を観察する場合は、ワーキングディスタンスが短すぎると電子線撮像手段11の対物レンズに試料が接触してしまうという問題があった。したがって、従来はワーキングディスタンスを、試料の大きさと希望する傾斜角度で決定される、対物レンズに衝突しない最短距離に設定して観察していた。この結果、従来の電子顕微鏡では、試料の大きさと希望する傾斜角度によって決定されるワーキングディスタンスで観察することになる。このように種々のワーキングディスタンスで快適に観察するためには、どのワーキングディスタンスであっても、試料台33の傾斜角度を変化させた際に観察視野が変化しないことが望まれる。このような背景から、従来の電子顕微鏡では、どのワーキングディスタンスであっても、試料台33を傾斜させても視野が動かないような構成、すなわち図45Bに示すように、電子顕微鏡の光軸上で、試料台33のZ軸の位置によらず視野ずれしないユーセントリック式とした試料台33の傾斜機構が採用されていた。
この構造によれば、図45A、図45Bの黒塗りした位置に試料表面が位置するように予め調整することで、試料台33を傾斜回転させる1動作のみで、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11で同一視野、同一傾斜角度での観察が可能となる。しかしながら、視野探しや位置調整は被写界深度の浅い光学系撮像手段12で行う必要があるものの、位置調整をする際に視野が電子線撮像手段11との間でずれる結果、調整し難いという問題があった。
このような状況に鑑み、本実施の形態では上述の通り、図44A及び図44Bに示すように試料台33側を固定し、観察手段10側を傾斜させる構造を採用している。この結果、傾斜させるのは試料台33でなく観察手段10側となるため、試料台33の高さによらず、容易に同じ観察位置、傾斜角度での画像に切り替えることが可能となる。これにより、電子顕微鏡観察と、光学顕微鏡観察の双方を重視し、かつ傾斜観察も重視した、従来よりも使い勝手のよい拡大観察が実現できる。
さらに従来の電子顕微鏡では、電子レンズ、光学レンズが取り付けられている部材に、高さ調整機構80としてZステージが構成され、そのZステージ上に、試料台33を傾斜、回転させる機構が構成されていた。さらに電子レンズ、光学レンズは、固定側に取り付けられていた。
これに対して本実施の形態に係る拡大観察装置では、電子レンズ、光学レンズが取り付けられている部材に、試料台33を回転させる機構が構成され、さらにその上に、高さ調整機構80が構成されている。すなわち、回転軸の機構と、Z軸の移動機構が従来とは逆に構成されている。また、電子レンズ、光学レンズは、回転側に取り付けられている。
(光軸と試料台33の移動方向の一致)
本実施の形態に係る拡大観察装置においては、回動手段30により電子線撮像手段11及び光学系撮像手段12を回転移動させることで一の観察位置に双方の観察手段10を切り替えて配置できる。すなわち、このような切り替えによって、双方の観察手段10の光軸を一致させた撮像が可能となる。一方、試料台33は水平姿勢を維持したまま上下に、すなわち鉛直方向に高さ調整機構80で移動可能としている。この結果、観察手段10を鉛直姿勢に位置させることで、光軸を試料台33の移動方向と一致させることが可能となる。
これにより、円筒状側面に沿って回転させた電子線撮像手段11や光学系撮像手段12で傾斜観察を可能としつつ、回転軸と試料台33の高さ方向、すなわち試料台33上に載置された試料の観察面の高さとを一致させて、視野変化のない観察が可能となる。また各観察手段10の光軸を一致させた、略同一の視野、略同一の傾斜角度、略同一の倍率での観察像を取得でき、取得された2つの観察像を比較観察できる。
(焦点の可変範囲の中に回転軸)
高さ調整手段は、その高さを調整可能な高さ可動範囲に、回動手段30の回転軸が含まれるように設定している。これにより、回転軸の中心に試料台33を位置させて、観察手段10を回転軸に沿って回転させても、各位置における観察手段10から試料台33までの距離を一定に維持できるので、焦点距離を一旦調整した後は、観察手段10を移動させても合焦距離を維持しまままとでき、常に合焦状態で視野角を変更でき、傾斜観察に際して極めて有利となる。
より正確には、このようなセットバックを示す図46の模式断面図に示すように、試料の表面の観察位置すなわち試料の上面である観察面が、回転軸と一致するように、試料の高さ分だけ試料台33を回転軸から降下させることで、上記ワーキングディスタンスの保持状態を達成できる。このため高さ調整機構80は、試料台33を回転軸と一致させた位置から所望の範囲下方に降下可能としている。これにより、観察面の高さに応じて試料台33を降下させて、観察面を正確に回転軸に一致させることが可能となる。
このため、試料台33のZ軸方向の移動においては、試料台33の上端ストローク位置は、少なくとも回転軸を含む位置までは上昇可能とし、さらに少なくともその回転軸から下方位置に移動可能に設定する。
(セットバックの調整)
試料表面を回転軸に合わせるには、電子レンズより被写界深度の浅い光学レンズを使用する。光学レンズの取り付け位置は、予めその焦点位置が回転軸と一致するように調整される。光学レンズの光軸と試料台33の試料載置面が垂直となるように、胴部24を回転させて、光学レンズの画像の焦点が合うように、試料台33のZ軸位置を調整する。この際、光学レンズと試料の距離のみ変化して、視野は移動しないので、調整は容易となる。次に、電子レンズの焦点調整を上記と同様の手順で行う。これにより、胴部24をどのように回転、傾斜させても、電子顕微鏡と光学顕微鏡の視野がずれることはない。
(焦点調整手段の有無 固定焦点式)
また、観察手段10の焦点距離が固定式の場合は、この構成によって試料台33の高さを調整することで、焦点位置にワーキングディスタンスを正確に調整できる。あるいは、観察手段10が焦点調整手段を備える場合は、これで調整可能な焦点距離範囲に、回動手段30の回転軸が含まれるように設定する。例えば電子線撮像手段11は、その光軸に沿って焦点距離を調整可能な顕微鏡焦点調整手段37を備えている場合が多く、この場合は図47に示すように予め焦点位置の可変範囲に回転軸を含むように設定しておき、顕微鏡焦点調整手段37で焦点距離を調整して、電子レンズの焦点位置を回転軸の位置に一致させる。また光学系撮像手段12が、その光軸に沿って焦点距離を調整可能な光学焦点調整手段38を備えている場合も同様に、図48に示すように焦点位置の可変範囲に回転軸を含むように予め設定しておき、焦点位置が回転軸と一致するように光学焦点調整手段38を調整する。
(実施の形態2)
上述の例では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを組み合わせた例を説明したが、常にこれらを併用する構成のみならず、必要に応じて付加する構成とすることもできることはいうまでもない。例えば上述の通り、光学系撮像手段12をマウント39を介して着脱した構成とすることで、図27のブロック図に示したような拡大観察システムを構成できる。このように電子顕微鏡撮像として使用しつつ、必要に応じて光学系撮像手段12を付加できる構成とすることで、観察用途に応じたオプションを追加、除去可能な、柔軟性、拡張性に富む利便性に優れた拡大観察システムを構築できる利点が得られる。
(倍率換算機能)
さらに拡大観察装置は、異なる観察手段において倍率の決定基準が異なる場合に、これらを統一した倍率で表示したり、該倍率に自動調整する倍率換算機能を備える。一般に、拡大観察装置で観察する際に、どの程度拡大して観察するかは、倍率でその度合いを示すことが多い。しかしながら倍率は、表示範囲の大きさによってその定義が変わるので、観察手段毎に異なることが多い。一般に倍率は、次式で定義乃至算出される。
倍率=観察像の表示範囲/観察している視野範囲
上式において、表示範囲は観察手段の設計者が決定するパラメータであり、ユーザが決定するものではない。一方で観察視野範囲とは、観察手段の能力で決まる設定可能な視野範囲の中から、ユーザが所望する視野範囲を任意に選択するものである。以下、電子線撮像手段11の視野範囲と表示範囲を示す図49、及び光学系撮像手段12の視野範囲と表示範囲を示す図50に基づいて、倍率決定方法を説明する。
(電子顕微鏡倍率)
例えば、走査型電子顕微鏡を構成する電子線撮像手段11において表示範囲とは、図49に示すように、一般的には写真PHのサイズ(例えば124mm×94mm)である。また観察視野範囲とは、電子銃や電子レンズから試料に照射される電子線が試料上を走査する範囲の実寸法である。
(光学倍率)
これに対してデジタルマイクロスコープ等の光学系撮像手段12では、図50に示すように、照明光によって照明された試料SAからの反射光が、光学レンズを通って、CCDやCMOS等の光学撮像素子に結像する構造となる。その表示範囲は一般的にはディスプレイ部102のモニタサイズ(例えば15インチモニタ画面サイズ)となる。またモニタサイズも、ディスプレイ部102がLCDかCRTか等によって変化する。さらに観察視野範囲は、(光学撮像素子の有効撮像範囲)/(光学レンズの光学倍率)となる。このように光学倍率は、物体の大きさに対する拡大率となる。
なお倍率決定の方法は上記に限られない。特殊な例として、例えば観察視野範囲から取得した画像データのすべてを表示範囲に表示するのではなく、ある一部分を表示することが考えられる。このような方法は、例えば画像周囲にピンぼけや歪み等が見られる場合、これらの部分をカットして表示することが考えられる。あるいは、解像度は粗くなるものの、いわゆるデジタルズームによって見かけ上の倍率を上げることもある。このような場合は、倍率が上昇することになる。
一方、観察視野範囲を縦横またはXY方向に移動して、複数の画像データを取得し、それらを連結して広い視野範囲を表示範囲に表示することもある。例えば、観察可能な最低倍率よりも更に低い画像を得たり、あるいは後でデジタルズームしたい場合等のために高解像度画像を得ることもある。このような場合は倍率が低下する。
以上のように、2種類以上の観察手段で、同じ観察視野範囲の観察画像を取得したい場合に、それぞれの観察手段の倍率の定義が異なっている場合は、同じ「倍率」で画像取得しても、希望通りの同じ観察視野範囲の観察画像の取得ができずに不便であった。すなわち、同じ視野範囲を拡大観察したとしても、大きな画面に表示する拡大観察装置は倍率が高くなり、小さな表示画面上に表示する拡大観察装置では倍率は低くなる。この結果、倍率のみを基準とした場合、観察手段によって実際に表示されるサイズが一定しないことになり、比較観察等を行うに際しては好ましくない。
このような状況のため、従来は対応策として、予め寸法の判明している試料を観察して、各観察手段の倍率定義を確認するキャリブレーション作業を事前に行う方法や、倍率定義の相違を考慮し、同じ観察視野範囲が観察できるような倍率を、ユーザが手動で計算する方法や、さらには同一の拡大観察装置内でなく、別個の電子顕微鏡と光学式デジタルマイクロスコープを使用する方法等、が採られてきたが、いずれも手間がかかるという問題があった。
これに対して本実施の形態では、双方の観察手段で、同一の観察視野範囲に対して同じ表示サイズとなるように、統一的な倍率を定義する。換言すると、同じ表示範囲を、観察視野範囲で除算した値を倍率として定義する。このように、異なる観察手段であっても、設計者が同一の表示範囲を定義して、倍率換算機能を持たせることで、ユーザは異なる観察手段であっても同じように定義された倍率を利用できる。これにより、いずれか一方の観察手段で倍率が設定されたら、該倍率と共に他方の観察手段の倍率に換算した値が表示される。あるいは、他方の観察手段の倍率表示を変更し、一方の観察手段の倍率に換算して表示あるいは併記してもよい。
なお倍率の基準は、いずれか一方の観察手段に換算した換算倍率を倍率換算手段で換算する他、いずれの観察手段の倍率とも異なる第三の基準の倍率に変換することも可能である。この場合は、第三の基準の倍率で統一して光学画像と電子顕微鏡画像を表示する。
(倍率換算機能)
図51に、倍率換算機能を備える拡大観察装置のブロック図を示す。この図に示す拡大観察装置は、光学系撮像手段12と、電子線撮像手段11と、コントローラ1と、表示手段2と、操作手段105Bとを備える。コントローラ1はMPU等の演算部を備えており、一方の観察手段で規定された基準に従って他の観察手段の倍率を換算する倍率換算手段111、及び観察モードを選択するモード選択手段110として機能する。この例では、観察モードとして、表示手段2で電子顕微鏡画像と光学画像とを比較観察可能な比較モードと、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を表示可能な合成モードを備えており、モード選択手段110で選択する。なお合成モードは必ずしも必須でなく、比較モードのみを実装することも可能である。この場合は、モードを選択するためのモード選択手段も必須でない。
操作手段105Bは入力デバイスで構成され、ユーザはこれを操作することで電子顕微鏡倍率を設定する。これにより、電子顕微鏡倍率を設定、調整する電子顕微鏡倍率調整手段68の操作を行うことができる。なお操作手段105Bは、図51の例ではコントローラ1に接続されているが、表示手段2に接続された操作手段105やコンソールCSと共通化することもできる。
(倍率換算手段111)
また表示手段2のディスプレイ部102は、後述するように換算倍率表示手段123と、倍率範囲表示手段126と、予定倍率表示手段124と、判定告知手段125と、状態表示手段121と、非選択表示手段122として機能する。換算倍率表示手段123は、一方の観察手段で取得され表示手段に表示された画像の倍率を取得した上で、倍率換算手段で換算した換算倍率に他方の観察手段を設定可能かどうかを判定し、設定可能な場合は該換算倍率を、設定不可能な場合は設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を、各々表示手段に表示する。倍率範囲表示手段126は、電子顕微鏡画像の調整可能な電子顕微鏡倍率範囲と、光学画像の調整可能な光学倍率範囲とを、同じ基準の倍率に換算して表示手段上に一次元状に表示する。また倍率範囲表示手段126は、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を示すことができる。予定倍率表示手段124は、一方の観察手段で取得された画像と同一表示サイズで、他方の観察手段により画像を取得するための換算倍率を表示する。判定告知手段125は、倍率換算手段で換算した換算倍率に他方の観察手段の倍率を設定することが不可能と判定された場合に、設定不可能な旨を表示する。状態表示手段121は、動画表示と静止画表示のいずれの状態であるかを区別する状態表示を行う。
(光学倍率調整手段95)
図51に示す光学系撮像手段12は、光学倍率調整手段95と、光学倍率読取手段112を備えている。また光学倍率調整手段95は、光学レンズ鏡筒の側面で回転自在なリング状に設けられており、リングの回転量で倍率を調整する。なお図51の例では、光学ズームレンズを内蔵した光学レンズ鏡筒のイメージを示しており、光学レンズ鏡筒の外周に設けられた光学倍率調整手段95と、設定された倍率を読み取る光学倍率読取手段112を設けている。光学倍率読取手段112は演算部と電気的に接続され、その出力を演算部の倍率換算手段111に送出する。
この構成により、ユーザは電子線撮像手段11の倍率調整を操作手段105Bから行い、一方で光学顕微鏡の光学倍率を光学倍率調整手段95で調整する。ユーザが光学倍率調整手段95を操作して光学倍率を調整すると、その光学倍率を光学倍率読取手段112で読み取り、倍率換算手段111に送出される。倍率換算手段111は光学倍率と対応する電子顕微鏡倍率に光学倍率を換算して、表示手段2に表示させる。ユーザは、換算倍率に従って操作手段105Bを操作し、換算倍率での電子顕微鏡画像が得られるよう電子線偏光走査器58等の条件を設定する。なお、倍率換算手段111で換算された換算倍率の表示は、表示手段2上に常に表示させる他、表示と非表示とを切り替えるよう構成してもよい。
また一方で、倍率換算手段111が換算倍率を電子線撮像手段11に送出して、電子顕微鏡倍率を自動的に調整するよう電子線走査や偏向器等を設定してもよい。この場合は、ユーザが電子顕微鏡倍率調整手段68を手動で調整する作業が不要となり、利便性が高まる。例えば、ユーザが表示手段2に表示させる画像を光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えると、自動的に表示中の光学画像の光学倍率を光学倍率読取手段112が読み取り、倍率換算手段111で、対応する電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率に換算する。そしてこの電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を取得して、表示手段2に自動的に表示させる。例えば、撮像済みの電子顕微鏡画像を拡大/縮小して、該電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を生成したり、あるいは新たにこの電子顕微鏡倍率の電子顕微鏡画像を撮像するために、電子線撮像手段11に必要な設定情報を送出することもできる。このようにして、光学画像に対応する、同じ大きさでの電子顕微鏡画像を、表示手段2上に表示させることが可能となる。また、このような観察手段の切り替えによる倍率の自動連動機能は、ON/OFFを選択式にすることもできる。例えば、倍率連動機能をOFFした場合には、光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えた際、前回、電子線撮像手段での観察で用いた倍率で表示させ、一方倍率連動機能をONした場合には、光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えた際、自動的に対応する倍率での電子顕微鏡画像を表示させることができる。
なお図51の例では、電子顕微鏡倍率調整手段68を操作手段105Bで実現しているが、図2A等で示したように、電子レンズ鏡筒の側面で回転自在としたリング状に構成することもできる。このように光学倍率調整手段95と同様の倍率調整手段を電子線撮像手段11にも設けることで、操作感の統一性が得られユーザの使い勝手を向上できる。
光学ズームレンズの倍率は、光学レンズ鏡筒内の光学レンズ系の内、光学倍率を決定するレンズ群の位置によって変化する。レンズ群を移動させるため、光学レンズ鏡筒には光学倍率調整手段95として、光学レンズ鏡筒の側面に沿って回転自在なズームリングが設けられる。ユーザは光学レンズ鏡筒の側面に沿ってズームリングを回転させることで、光学レンズを光学レンズ鏡筒内部で移動させ、光学倍率を調整できる。このためズームリングには、回転位置によって決まる倍率を把握できるよう、倍率を数値や目盛りで表示することが好ましい。例えば光学ズームレンズ側に矢印を、光学レンズ鏡筒側に倍率を、各々刻印や印刷により表示して、ユーザは矢印を所望の倍率に一致させるように回転位置を調整する。なお、矢印と数値の配置は、光学ズームレンズと光学レンズ鏡筒を逆にしてもよいことはいうまでもない。
また光学倍率調整手段95は、ユーザが手動で回転して操作する他、電動により回転させる機構を採用してもよい。調整された倍率は、光学倍率読取手段112によって検出される。なお電動等によって光学倍率調整手段を手動によらず自動調整する機構を設けた場合は、上記構成と逆に、電子顕微鏡画像の倍率を電子顕微鏡倍率読取手段等によって取得して、対応する光学画像の倍率に倍率換算手段で換算し、この換算倍率となるように光学倍率調整手段に情報を送出して、光学系撮像手段の撮像倍率を自動調整することも可能となる。
(光学倍率読取手段112)
光学倍率読取手段112は、光学レンズ鏡筒に設置された光学ズーム倍率読み出し器等で構成できる。光学倍率読取手段112は、ズームリング113の回転位置を電気的に検知し、それによって倍率を認識する。これにより、例えばユーザの手動により設定された光学ズームレンズの倍率を拡大観察装置側で認識でき、これに応じた倍率換算等の処理をスムーズに行うことができる。
このような光学倍率読取手段112の一例を、図52の断面図に示す。この図は光学系撮像手段12の光学レンズ鏡筒の横断面図であり、光学レンズ鏡筒の外周にズームリング113が回転自在に装着されている。光学レンズ鏡筒の外周には、球状の突出電極114を弾性的に突出させるよう設けている。またズームリング113の内周側には、ズームリング113の位置に応じた光学倍率を出力するための倍率出力電極115を、円周に沿って複数、離間して設けている。各倍率出力電極115は、突出電極114と接触することで、対応する光学倍率の情報を、例えば抵抗に発生する電圧信号として出力する。このように、各倍率出力電極115をスイッチとして作用させることで、倍率出力電極115の位置に該当する倍率が選択されたことが検知される。すなわち光学倍率読取手段112はスイッチのON/OFFによって、現在の光学倍率を認識し、これを演算部に送出する。またズームリング113の内面に、突出電極114を受ける凹面を形成することで、所定倍率にズームリング113を保持する位置決めの機能を奏することもできる。さらに、各電極の位置に、倍率の数値や目盛りを表示することで、ユーザによる倍率調整作業を容易に行える。ただ、表示手段2上に倍率表示を行う場合は、このような物理的な倍率表示は必ずしも必要でない。
また、光学倍率読取手段112はこのような電極の接触による位置検出に限られない。例えばズームリングと光学レンズ鏡筒との界面にフォトインタラプタを設ける等して、非接触で行うこともできる。あるいは、定位置での離散的な倍率検出の他、ロータリーエンコーダ等を利用して連続的に倍率を読み取るよう構成してもよいことはいうまでもない。
なお、図51の例では、光学系撮像手段12に光学倍率調整手段95を光学倍率読取手段112を備えているが、光学倍率読取手段を設けないこともできる。この場合は、ユーザがズームリング等に表示された目盛りを読み取ることで、ユーザは大まかな光学倍率を知ることができる。また、光学倍率調整手段を設けず、固定倍率とすることもできる。この場合は、光学系撮像手段を着脱式とすることで、倍率の異なる光学系撮像手段に交換して光学倍率を変化できる。
なおディスプレイ部102上に倍率を数値で表示させるのに変えて、あるいはこれに加えて、視野範囲を示すこともできる。例えば「倍率100倍」といった表示でなく、「表示視野範囲4mm×3mm」といった表示形態も利用できる。
(換算倍率の表示)
倍率換算手段111は、以上のようにして電子線撮像手段11又は光学系撮像手段12のいずれか一方で取得された画像の倍率を認識し、該画像と略同一の表示サイズの画像を他方の観察手段で取得するための倍率を、他方の観察手段の基準に基づく倍率に換算する。
一般的な電子顕微鏡観察では、先に光学系撮像手段12を用いて低倍率にて試料の視野を決定した上で、電子線撮像手段11で高倍率の画像を取得する。このため、まず光学系撮像手段12で取得した光学画像を表示手段2上で表示する際に、この光学画像の光学倍率を表示すると共に、これを電子顕微鏡倍率に換算した換算倍率を併記する。よってユーザは、電子線撮像手段11を操作して換算倍率の電子顕微鏡画像を取得すれば、同一の表示サイズで電子顕微鏡画像を撮像できる。この結果、同一の表示サイズで光学画像と電子顕微鏡画像を表示手段2で表示させて比較観察を容易に行える。特に、上述した回動式の移動機構を備える試料室21の構成(図26)を併用することで、同一視野での光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との切り替えを容易にできることと相俟って、比較観察を一層容易に行える利点が得られる。
また換算倍率は、光学倍率を電子顕微鏡倍率に換算する場合のみならず、逆に電子顕微鏡倍率を光学倍率に換算した換算倍率を使用してもよい。特に、先に電子顕微鏡画像を取得した後に光学画像を取得する場合には好適となる。あるいは、異なる基準の倍率を併用するのでなく、一の基準で統一した倍率にしたがって、光学画像及び電子顕微鏡画像の倍率表示を行うよう構成してもよい。
また、単に換算倍率を表示手段2に表示させるのみならず、上述の通り換算倍率に従って観察手段10の倍率設定まで自動化することも可能である。例えば、取得した光学画像の光学倍率に基づいて倍率換算した電子顕微鏡倍率を、電子線撮像手段11の電子顕微鏡倍率調整手段68に自動的に設定するよう構成してもよい。または、該電子顕微鏡倍率の画像を取得できるよう、撮像条件のパラメータを自動設定する。これによれば、光学系撮像手段12で取得した画像と同じ表示サイズの電子顕微鏡画像を、ほぼ自動的に取得できる。また取得の実施まで行わずとも、撮像条件のパラメータ設定画面を表示手段2に表示させ、ユーザが微調整可能としてもよい。
(近接倍率への自動変更)
また、換算倍率での画像取得が困難あるいは不可能な場合は、この換算倍率に近い倍率を選択して表示手段2に倍率を表示させたり、画像取得、画像表示等を行うこともできる。すなわち、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12とでは、設定可能な倍率の範囲が異なるため、一方の観察手段では設定できても、他方の観察手段では設定できない倍率が存在する。このような場合でも、設定可能な範囲の中から、できるだけ近い倍率を選択して、倍率の表示、画像の取得、あるいは画像の表示等を行うこともできる。
(倍率範囲表示手段126)
図53に、倍率範囲表示手段126で光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を示す表示例を示す。表示手段2上にこのような倍率範囲表示手段126を表示させることで、各観察手段の倍率範囲を視覚的に把握でき、また現在の倍率が重複範囲外にある場合は、どの方向にどれだけ拡大、縮小すればよいかを確認できる。特に電子顕微鏡倍率範囲は、加速電圧やワーキングディスタンス等の条件によって変化するので、現在の観察条件における重複範囲を視覚的に把握できるようにすることで、ユーザは速やかに必要な倍率設定の指標を得ることができる。
この例では、電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な電子線撮像手段11の倍率の範囲と、光学倍率調整手段95で調整可能な光学系撮像手段12の倍率の範囲とが、倍率換算手段111で換算された換算倍率において、少なくとも部分的に重複している。これにより、電子顕微鏡画像と光学画像とを同一のサイズで取得でき、比較観察に有利となる。
また図53の例においては、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲とを、同一基準の換算倍率の軸上に並べ、一次元状に重ねたゲージ式に表示している。ただ、重複する倍率範囲は、各観察手段の観察可能倍率の値のみで決定する必要はなく、目的とする比較観察や、合成処理が可能な倍率範囲を、重複倍率として捉えることもできる。
例えば画像の合成に際しては、同じサイズの画像同士を合成することが好ましいが、必ずしもこれに限定するものでない。例えば、電子顕微鏡画像に光学画像の色情報を付加してカラー化する例を考えると、倍率換算して電子顕微鏡画像の倍率と同じ倍率の光学画像を取得できない場合は、光学系撮像手段12で取得可能な最も近い倍率の光学画像を取得し、該光学画像から色情報を取得することができる。このように、各観察手段の観察可能倍率は、各観察手段の像観察条件によっても変化するので、それに対応して重複倍率の有無も捉えることができる。例えば、SEMでは加速電圧が低いほど、より低倍率まで観察可能となる。またSEMではレンズと試料の距離であるワーキングディスタンスが長いと、より低倍率まで観察可能となる。
なお、倍率が重複しない場合に、最も近接する倍率とは、必然的に設定可能な最大倍率もしくは最小倍率となるが、必ずしも最大、最小倍率のみに限定するものでなく、最大倍率や最小倍率に近い倍率でも同様の効果が得られることは言うまでもない。したがって本発明において最も近接する倍率とは、一点の倍率のみを意味するのでなく、該倍率と実質的に等しい倍率(例えば誤差の範囲)も含む。
さらに、各観察手段の観察可能倍率は各観察手段の像観察条件等により変化するので、それに対応して倍率範囲の重複も変化させることがさらに好ましい。例えば電子線撮像手段11では、加速電圧が低いほどより低倍率での観察が可能となる。また電子線撮像手段11では電子レンズと試料とのワーキングディスタンスが長いと、より低倍率まで観察可能となる。一方で光学系撮像手段12は交換式とすることで、光学倍率の設定可能な範囲を変化できる。
また倍率範囲が重複しない条件で観察手段を切替える場合は、倍率換算手段111で、最も近接する他方の倍率を算出して、切替後の倍率とする。あるいは、観察手段の切替前に、観察していた最後の倍率を記憶しておき、その倍率を切替後の倍率とすることもできる。
(モード選択手段110)
この拡大観察装置は、複数の観察モードをモード選択手段110で選択可能としている。観察モードとしては、比較モードや合成モード等が挙げられる。電子線撮像手段11で取得した電子顕微鏡画像と、光学系撮像手段12で取得した光学画像を、比較観察したり、合成処理する際には、2つの観察手段10で取得する画像は、同じ観察視野範囲の画像であることが望ましい。また表示倍率も近似させることが望ましい。
(合成モード)
合成モードでは、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を生成し、ディスプレイ部102上に表示する。例えば、図54に示すような電子顕微鏡画像EIと、図55に示すような光学画像OIの2枚の画像を重ねて、図56に示すような、各画素の情報を演算した1枚の合成画像データに合成する。特に、電子顕微鏡画像EIの輝度情報と、光学画像OIの色情報を合成してカラー合成画像GIにすることで、高精細なカラー画像が得られる。なお合成前の各画像に、歪み等のレンズ収差や、2画像間に位置ズレがある場合は、合成処理前に、歪み補正、位置ズレ補正等を行うことが好ましい。
(画像合成手段116)
このような画像合成は、後述する図59に示す画像合成手段116により行われる。画像合成手段116でカラー画像を合成し、表示手段2上に表示させることで、試料表面の形態と色の関係が明確となり、画像の認識が格段に向上する。また、表示手段2に表示された画像に対し、種々の計測を行うに際しても、このようなカラー画像を利用することでその利便性が向上される。
合成画像の生成方法としては、例えば光学画像から得た色情報と、電子顕微鏡画像から得た輝度情報を、各座標のピクセルごとに合成する方法が挙げられる。あるいは、電子顕微鏡画像から画像の輪郭情報を抽出し、光学画像を重ねて、上記輪郭内の代表色を光学画像から抽出し、輪郭内の範囲を代表色で塗り潰す方法が利用できる。この方法では、微視的には忠実な色再現はできないが、元画像2枚の誤差で、観察対象物が完全に合致しない場合は、観察対象物の輪郭から色がはみ出ることなく合成できる。
また、濃淡画像である電子顕微鏡画像を基準とし、この上に光学画像に基づいてユーザが手動で、あるいは自動で着色する方法でもカラー画像を合成できる。この場合は、電子顕微鏡画像状の着色すべき部位と対応する、光学画像上の部位の色情報を取得して、この色に着色する。また、ユーザが手動で指定する場合は、例えば光学画像上でスポイト状に色を含む位置を指定して、色情報を取得することができる。
画像合成の手法はこのように既存の、あるいは将来開発される種々の方法が利用できる。例えば特許文献3に記載されるように、画像合成手段で、電子顕微鏡画像をコントラスト情報像とブライトネス情報像に分離して、コントラスト情報像のみを抽出し、更にカラーの光学画像をコントラスト情報像と色彩情報像に分離して、色彩情報像のみを抽出し、抽出されたコントラスト情報像からなる電子顕微鏡画像と色彩情報像からなる光学画像とを合成できる。あるいは、日本電子顕微鏡学会第52回学術講演会予稿集第153頁に掲載される方法が利用できる。
なお画像合成に際しては、電子顕微鏡画像の倍率と光学画像の2枚(又はそれ以上)の倍率は、同じに設定することが望ましい。この場合は、一般に光学系撮像手段12の最大倍率が電子線撮像手段11の最大倍率よりも低いことから、合成画像を得られる倍率範囲が光学倍率範囲に制限されることとなる。ただ、必ずしも同じ倍率でなくとも画像合成を利用できる。例えば光学画像をデジタルズーム等により仮想的に高倍率に拡大したり、電子顕微鏡画像を光学画像の倍率に縮小すること等により、双方の倍率を略一致させることができる。このように電子顕微鏡画像に色情報を付加するという観点からは、電子顕微鏡画像上の対応する部位の色情報が取得できる程度の鮮明さを持った光学画像であれば利用できる。もちろん、表示サイズが近い程、より鮮明で高精細な合成画像の作成に有利となるので好ましい。
ここで、光学画像は顕微鏡画像と同時に撮像されたものに限られず、異なるタイミングで予め取得した光学画像の画像ファイルを読み込んで着色処理に利用することもできる。
なお比較モードと合成モードのファイル形式は、光学系撮像手段12で取得した光学画像ファイル、電子線撮像手段で取得した電子顕微鏡画像ファイル、及び合成後の画像ファイル共に、ビットマップ形式やjpg等、汎用的な画像ファイル形式が好適に利用できる。
(比較モード)
一方、比較モードは比較観察のための観察モードであり、表示手段2で電子顕微鏡画像と光学画像とを同時に、あるいは切り替えて表示する。このため表示手段2のディスプレイ部102を二画面に分割して、電子顕微鏡画像表示領域117と光学画像表示領域118を設けてもよい。図57に、表示手段2の表示例を示す。この図では、表示手段2を左右に二分割し、左側に光学画像を、右側に電子顕微鏡画像を表示している。各画像の左上には、各々の基準に従った固有の倍率が表示されている。
本実施の形態においては、SEM等の電子線撮像手段11とデジタルマイクロスコープ等の光学系撮像手段12の2つの観察手段を備えた装置で、両方の観察手段で同一視野範囲の観察が容易にできるように、両方の観察手段で同じ倍率、同じ視野範囲となるように、倍率を定義する。例えば一方の観察手段での観察像を撮像又は保存したときの倍率を、ユーザが他方の観察手段でも設定できるように、他方の観察手段の倍率に換算した換算倍率を表示手段2上に表示する。あるいは、観察手段が自動的に他方の観察手段の倍率を同一基準の倍率に設定するように制御させてもよい。なお倍率の統一は、いずれか一方の観察手段に合わせる他、これらと異なる基準で新たに定義された倍率を用いてもよい。
次に、電子線撮像手段11と光学系撮像手段12で、同一の位置、同一の傾斜角度から、同一の視野範囲の画像を取得する動作の流れを説明する。まず光学系撮像手段12において、光学ズームレンズで観察視野範囲を設定する。具体的にはユーザが、光学ズームレンズに搭載されている光学ズーム倍率調整機構であるズームリング113を回転させて光学倍率を調整する。次に光学系撮像手段12で光学画像を撮像する。
一方で光学倍率読取手段112で、光学ズームレンズのズームリング113の回転位置を読み出す。読み出した回転位置を倍率換算手段111に送出することで、対応する光学倍率を倍率換算手段111により算出する。
ここで撮像手段を、光学系撮像手段12から電子線撮像手段11に切り替える。具体的には、光学系撮像手段12の光学ズームレンズ鏡筒の位置に、電子線撮像手段11の電子レンズ鏡筒を回動手段30で移動させる。また必要に応じて表示切替手段36を操作し、表示内容や操作系を切り替える。
次に、一方の観察手段の倍率を拡大観察装置が内部的に認識して、自動的に他方の観察手段の倍率を制御する例では、電子顕微鏡倍率調整手段68は電子線偏向走査手段制御部55に送る偏向量を自動的に計算する。さらに電子レンズ鏡筒で、光学系撮像手段12と同じ視野範囲を自動的に観察する。
一方、光学倍率読取手段を備えない等、表示手段2上に表示された一方の観察手段の倍率を見て、ユーザ自身が他方の観察手段の倍率を設定する場合についても説明する。まず表示手段2上に表示された光学系撮像手段12の倍率を確認する。そして表示された倍率を見て、電子顕微鏡倍率調整手段68にて、電子顕微鏡倍率を設定する。電子顕微鏡倍率調整手段68は、電子線偏向走査手段制御部55に送出すべき偏向量を計算する。これにより、電子線撮像手段11で光学系撮像手段12と同じ視野範囲を観察できる。
以上のようにして、同一表示サイズの光学画像及び電子顕微鏡画像を取得できる。なお上記の例では、先に光学画像を撮像した上で電子顕微鏡画像を撮像している。これは光学系撮像手段12ではカラー画像が取得できる反面、電子線撮像手段11よりも最大倍率が一般に低いため、まず低倍率で観察視野を決定した後、より高倍率の電子線撮像手段11に切り替えて拡大画像を取得するためである。ただ、観察手段の使用順序はこれに限定されるものでなく、逆に電子顕微鏡画像を先に取得した上で、光学画像を後から取得する手順においても本発明を利用できることは言うまでもない。次に、このような手順の例を説明する。
まず、電子レンズ鏡筒で観察視野範囲を設定する。具体的には、電子顕微鏡倍率調整手段68で倍率を設定して、電子顕微鏡画像を撮像する。一方で電子顕微鏡倍率読み取り手段により、撮像した電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率を算出する。
次に、観察像を電子線撮像手段11から光学系撮像手段12に切り替える。具体的には、電子レンズ鏡筒の位置に光学ズームレンズを回動手段30で移動させる。
ここで、一方の観察手段の倍率を拡大観察装置が内部的に認識して、自動的に他方の観察手段の倍率を制御する場合は、コントローラ1の倍率換算手段111は同一表示サイズとなるよう光学画像の換算倍率を演算する。例えば光学系撮像手段12が電動式の光学倍率読取手段112を備えている場合は、該光学倍率調整手段95に送出する回転信号を計算する。これに従い、光学系撮像手段12で電子線撮像手段11と同じ視野範囲を観察できる。
また一方で、表示手段2上に表示された一方の観察手段の倍率を見て、ユーザ自身が他方の観察手段の倍率を設定する例では、表示手段2上に表示された電子顕微鏡倍率を確認する。次に表示された倍率とるように、ズームリング113にて、光学ズームレンズの倍率を設定する。さらに電子レンズ鏡筒で光学系撮像手段12と同じ視野範囲を観察する。
なお表示手段上に表示される、光学倍率と電子顕微鏡倍率は、いずれか一方のみを表示させてもいいし、両方の倍率を表示させてもよい。またこれらの倍率を常時表示させる他、画像撮像時や倍率変更時等必要なタイミングでのみ表示させてもよい。
(リアルタイム観察)
さらにこの拡大観察装置は、観察手段でリアルタイムに画像を簡易的に取得し、表示手段2に表示される画像を逐次更新するリアルタイム観察(ライブ画像又は動画ともいう)と、所望の視野にて高精細な画像を撮像し、得られた高精細画像を表示する撮像(静止画ともいう)を切り替え可能としている。
拡大観察装置は、観察手段でリアルタイムに画像を簡易的に取得し、表示手段2に表示される画像を逐次更新する。この状態では、視野や像観察条件の変更に応じて表示手段2の表示内容が変化するため、便宜的に動画表示と呼ぶ。そしてユーザが所望の視野、像観察条件に調整して高精細な画像を撮像すると、得られた高精細画像が表示手段2上に表示される。この状態では、表示手段2の表示内容は更新されない静止画表示となる。動画表示と静止画表示は、適宜切り替えることが可能である。
(簡易画像)
なお、リアルタイム観察において表示手段で表示される画像を逐次更新する場合は、画像取得に要する時間を短縮化するため、撮像を簡易的に行う簡易画像を取得、表示する。簡易画像を得るには、例えば撮像時のフレームレートを上げることが挙げられる。通常、電子線撮像手段11で高精細な画像を描画するには、一画像あたり30秒〜1分間必要になる。さらに一枚の画像ではS/N比が悪いため、通常の撮像時には一画像1/4秒程度のフレームレートで10画像以上取得して、平均をかけて表示している。したがって、一画像を得るには2秒以上かかることになる。印刷用の詳細な観察像に至っては30秒以上かかることもある。そこで本実施の形態では、平均をかける枚数を8枚や4枚に少なくしたり、試料に対する電子線の走査範囲を狭くする等の制限をかけたり、走査を間引く等の処理によってフレームレートを上げて、画像を取得するまでの時間を短縮している。
(状態表示手段121)
また表示手段2上に、動画表示と静止画表示のいずれの状態であるかを区別するための状態表示手段121を設けてもよい。例えば動画表示から静止画表示に切り替わると、倍率を点滅表示させることで、ユーザは現在の状態が動画表示か静止画表示のいずれであるかを視覚的に容易に区別できる。また図58に示すように、テキスト表示で「動画」、「静止画」等と表示させてもよい。この方法であれば拡大観察装置の操作に詳しくない初心者ユーザでも混乱無く状態を判別できる。
また、高精細画像の撮像有無に拘わらず、現在選択中の観察手段で取得した画像を動画表示とし、非選択の観察手段に関しては静止画表示とすることもできる。静止画表示される画像は、観察手段をOFF又は切り替える時点で取得した画像、すなわち該観察手段で最後に取得した画像等をメモリで保持して表示させることができる。この構成は、複数の観察手段を同時に使用できない、いずれか選択した観察手段のみを操作可能な場合には好適となる。特に、複数の観察手段で取得した画像を一画面で同時に表示する場合は、動画表示されている画像が現在選択されていること、及び静止画表示されている画像が現在非選択であること、を把握できる。例えば図57の例では、表示手段2の左側に表示される光学画像が動画表示されており、右側に表示される電子顕微鏡画像が静止画表示されている。このため、現在操作可能な観察手段がいずれであるかを、速やかに把握できる。
なお光学系撮像手段と電子線撮像手段の両方の画像を、同時に動画として表示させてもよい。この場合、光学系撮像手段又は電子線撮像手段のいずれか一方の拡大倍率を変化させたとき、その倍率変化に連動させて、他方の電子線撮像手段又は光学系撮像手段の倍率を変更させることもできる。
(非選択表示手段122)
また非選択の観察手段については、表示手段2上で表示されている画像を選択できないことを示す非選択表示手段122を設けてもよい。例えば、非選択の観察手段に関する画像を、表示手段2上でグレーアウトさせたり、網掛けで表示させたり、鍵等のアイコンやマークを表示させる等により、現在は該画像を操作できないことをユーザに視覚的に示すことができる。またこのような非選択表示は、観察手段を切り替えて選択状態とすることで自動的に解除される。これにより、いずれか一の観察手段のみを操作可能な態様においては、非選択の観察手段に関する画像の操作ができないことでユーザが混乱しないよう、告知することができるので、操作性が向上する。
また一方の観察手段で画像を撮影した後、他方の観察手段に切り替える際、元の観察手段で撮影した画像は静止画として表示し続けても良いし、表示をOFFとすることもできる。本実施の形態では、表示手段2の画面を2分割して、一方が観察中(動画)の際は、他方の画像は観察手段を切り替えた時点での静止画を表示するように構成している。これにより、観察手段を切り替えて、画像のデータ処理等の負荷を軽減し効率よく操作できる。ただ、両方の画像を常時動画として表示し続けるよう構成してもよいことはいうまでもない。
(換算倍率表示手段123)
表示手段2上には、現在表示されている画像の倍率が表示される。動画表示においては、その時点で表示中の画像のリアルタイムの倍率を、また静止画表示においては表示中の静止画の倍率を、各々表示する。さらに換算倍率表示手段123として、表示中の画像の倍率決定基準に従って、該画像を取得した観察手段と異なる観察手段で画像を取得する場合の倍率に換算した倍率を表示することもできる。また、他方の観察手段での倍率決定基準に従って倍率を換算したり、別の基準を用いて倍率を決定してもよい。すなわち、異なる観察手段で取得した画像を統一的な倍率で表示させるものである。また換算倍率表示手段123は、固有の倍率と換算倍率を併記して表示させることもできる。さらに換算倍率表示手段123は、換算倍率に一方の観察手段を設定不可能な場合は、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を表示することもできる。
(予定倍率表示手段124)
さらに、現在表示中の画像の倍率表示に加え、将来適用される倍率を表示する予定倍率表示手段124を設けてもよい。例えば、比較観察においては異なる観察手段で同一表示サイズの画像を取得する必要がある。このため、一方の画像で設定された倍率と同一の換算倍率で、他方の観察手段の画像を手動で、あるいは自動的に取得するための、目標となる倍率を予定倍率として、表示手段2上に表示させる。この例を図58に基づいて説明する。
この図では、図57と同様、表示手段2を左右に二分割し、左側の光学画像表示領域118に動画表示で光学画像を、右側の電子顕微鏡画像表示領域117に静止画表示で電子顕微鏡画像を、各々固有の倍率と共に表示している。図58の例では、さらに静止画である電子顕微鏡画像に、予定倍率表示手段124を付加している。すなわち、動画表示された光学画像の倍率(図58では800倍)と、同一の換算倍率(800倍)を予定倍率として、電子顕微鏡画像表示領域117の右上に設けた予定倍率表示手段124に表示している。ユーザは、観察手段10を光学系撮像手段12から電子線撮像手段11に切り替えた後、この予定倍率となるよう、電子顕微鏡画像の撮像条件を設定、撮像を行う。あるいは、後述するように自動で撮像条件を設定したり、さらには撮像や表示、保存等も適宜自動化することもできる。
(倍率判定手段119)
さらに拡大観察装置は、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11とを同一の換算倍率に設定できるかどうかを判定する倍率判定手段119を備えることができる。倍率判定手段119は、例えば倍率換算手段111に実現させる。本実施の形態では、倍率換算手段111を構成するMPUが倍率判定手段119の機能も果たす。例えば、光学倍率調整手段95で調整可能な光学倍率範囲と電子顕微鏡倍率調整手段68で調整可能な電子顕微鏡倍率範囲とが、換算倍率において重複している場合は、同一表示サイズで表示させることができ、比較観察に有利となる。この場合に倍率判定手段119が、現在動画表示で観察中の画像に設定された倍率に、他方の観察手段を換算倍率で設定可能かどうかを判定し、その判定結果を判定告知手段125で告知する。
(判定告知手段125)
例えば他方の観察手段で設定可能な場合に、該他方の観察手段の表示領域において、「OK」や「○」といった文字、記号等を表示したり、図58に示すように予定倍率表示手段124の枠を太線で表示したり、二重枠やハイライト、点滅表示等を単独、組み合わせて使用したり、あるいは一方の動画表示された表示領域において倍率を青色で表示、あるいは倍率の背景を青色に着色することができる。これによりユーザは、同一表示サイズでの観察が可能であることを容易に把握できるので、観察手段を切り替えた後、該倍率での観察を行えるように設定作業等を進めることができる。
さらに判定告知手段125は、一方の観察手段で観察中に、同じ表示サイズとなる換算倍率に他方の観察手段の倍率を設定することが不可能と判定された場合に、設定不可能な旨を表示する警告機能を備えることもできる。具体的には、倍率判定手段119による判定結果が、倍率設定不可能であった場合に、該他方の観察手段の表示領域において、換算倍率表示手段123を赤色で表示したり、「×」や「−」、「倍率設定不可」等の文字や記号を表示したり、警告音を発したり、表示領域自体をグレーアウトや網掛けで表示したり、選択不可能とする。このようにしてユーザは、倍率を変更している内に、光学顕微鏡倍率範囲と電子顕微鏡倍率範囲との重複範囲を外れてしまっても、同一表示サイズでの観察が不可能となったことを認識できるので、設定可能な判定結果が得られるよう他の倍率に変更する等の対応を採ることができる。このように判定告知手段125は、倍率判定手段119の判定結果に応じて他の表示と区別できる各種の装飾方法が適宜利用できる。また、上述した図53に示すゲージ状の倍率範囲表示手段126と併用することで、現在の倍率が重複範囲に対してどの位置にあるかを視覚的に把握できるので、一層好ましい。
(誘導手段120)
さらに他方の観察手段を換算倍率に設定することが不可能と判定された場合に、設定可能な倍率に変更するよう促す誘導手段120を備えることもできる。例えば、メッセージ表示や音声ガイダンスを用いて、ユーザに対して双方の観察手段で設定可能な倍率に変更するように、倍率変更操作を促す。また誘導すべき内容は、単に倍率を表示する他、該倍率に設定するために必要な操作やパラメータ設定まで指示することもできる。この方法は、特に倍率設定のための操作に不慣れな初心者ユーザに対して有効となる。
また倍率判定手段119で倍率設定不可能と判定された場合に、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を換算倍率表示手段123に表示させることもできる。この場合、換算倍率表示手段123は、設定可能と判定した場合はそのまま換算倍率を表示し、設定不可能と判定した場合は、設定可能な近い倍率を、各々表示する。さらに、単に倍率を表示するのみに止まらず、換算倍率表示手段123で表示する換算倍率に、観察手段の倍率調整手段を設定したり、画像の取得、保存等を自動的に行うよう構成してもよい。例えば、観察手段を切り替えるタイミングで、これをトリガとして倍率設定を実行する。このような自動化によって、比較観察や画像合成に際してユーザの設定作業を省力化した使い易い拡大観察装置が実現できる。
なお、上記の例では換算倍率表示手段が、換算倍率を表示手段上に表示させているが、換算倍率の表示は、ON/OFFすなわち表示状態と非表示状態とを切り替えることも可能である。また換算倍率の表示をしない場合でも、表示倍率を設定可能な一番近い倍率として自動的に表示させることが可能である。
また予定倍率表示手段124には、観察手段を切り替えた際に適用される、あるいは適用すべき倍率が常に表示されている。なお図58の例では、静止画表示される表示領域のみに予定倍率表示手段124を設けているが、これに限らず、例えば動画表示される表示領域にも予定倍率表示手段を設けてもよい。この場合は、換算倍率表示手段と同じ倍率が予定倍率表示手段に表示されることになる。
いずれの倍率基準に合致させるかは、先に使用した観察手段の基準を用いることが好ましい。一般には上述の通り、まず光学画像を用いて広視野範囲の中から目標を定め、電子顕微鏡画像で精細な情報を得ることが多い。このため光学画像の基準に合わせて、倍率を統一的に表示することで、ユーザは混乱無く同一表示サイズの画像を統一された倍率表示にて取得できる。勿論、ユーザが指定した観察手段の基準を利用したり、他の基準を利用することも可能であることは言うまでもない。
(判定告知手段125が警告を発するタイミング)
また、判定告知手段125がユーザに対して警告や確認を発するタイミングは、観察中常時、すなわち画像の倍率が重複範囲を外れた時点で速やかに行う他、必要なタイミングで発することもできる。
例えば観察中の倍率を変更した結果、重複範囲外となった場合に、直ちに告知するのみならず、画像の取得時や保存時といった重要な局面でのみ、確認の意味を込めて警告を発するよう構成することができる。または観察手段を切り替える際や、倍率調整手段で倍率を設定した際、等のタイミングで行ってもよい。また、いずれか一のタイミングに限られず、複数のタイミングで判定告知手段125は通知を発するように構成してもよい。
(判定告知手段125による警告の内容)
また、判定告知手段125が発する警告の例としては、例えば倍率が重複範囲を外れているため、他方の観察手段で同一の換算倍率での観察ができないことを通知したり、又は現在の倍率では重複倍率を外れているものの、このまま処理を続行するか中止するかの判断を促すダイヤログを表示すること、等が挙げられる。あるいは、現在設定されている倍率は重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)設定可能な倍率の内最も近い倍率に設定するか、(B)前回の観察で設定した倍率を使用するか、(C)処理を中止するか、の選択を促すダイヤログを表示させてもよい。あるいはまた、現在の倍率では重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)設定可能な最も近い倍率に設定するか、(B)処理を中止するか、を選択させるダイヤログを表示させてもよい。さらには、現在の倍率では重複範囲を外れているが、他方の観察手段に切り替えた際の倍率を、(A)前回の観察倍率に設定するか、(B)処理を中止するか、を確認選択させるダイヤログを表示させることもできる。
一方、このような警告を行う方法としては、例えば図27のコンピュータにインストールされ、表示手段2に表示されて操作される拡大観察装置操作プログラム上に、ダイヤログ画面を表示して確認や選択を促す方法や、同じく表示手段2に表示されているプログラム上に、判定告知手段125として予め専用のメッセージ領域やコメント領域を設けておき、この部分に該当するメッセージ等を表示して告知する方法等が利用できる。
また、上記の告知に従い、ユーザが倍率を変更した結果、観察中の倍率が重複範囲内となった場合にも、その旨の判定告知手段125で告知を行うことができる。その告知のタイミングとしては、例えば倍率が重複範囲外から範囲内に切り替わった時点で速やかに告知する。また上述のように、一方の画像の撮影時、保存時や観察手段の切り替え時等のタイミングで告知してもよい。告知の方法としては、例えば重複範囲内の倍率になった時点で、換算倍率表示手段123の書式を変更する。具体的には、倍率の表示色や背景色を赤色から青色に変更したり、網掛けやグレーアウトを解除する。または、プログラム上で撮影ボタンや保存ボタンを、選択禁止状態やグレーアウトを解除して選択や押下等の操作が可能なアクティブ状態に復帰させる。あるいは、重複範囲内で同倍率での撮像画可能になったことを示すメッセージを、ダイヤログや専用のコメント領域で表示する。このようにして、同一表示サイズでの撮像が可能な状態に切り替わったことを、判定告知手段125により必要なタイミングでユーザに告知できるので、ユーザは比較観察の可否を速やかに把握することができる優れた操作環境が得られる。
このように拡大観察装置は、内部空間で減圧可能な試料室と、第一の観察手段として、試料室内の電子顕微鏡画像を取得するための電子線撮像手段と、電子線撮像手段で取得される電子顕微鏡画像の電子顕微鏡倍率を調整するための電子顕微鏡倍率調整手段と、第二の観察手段として、試料室内の光学画像を取得可能な光学系撮像手段と、光学系撮像手段で取得される光学画像の倍率であって、電子顕微鏡倍率と異なる基準で決定される光学倍率を調整するための光学倍率調整手段と、電子線撮像手段で取得された電子顕微鏡画像と、光学系撮像手段で取得された光学画像を、切り替えて、又は同時に表示するための表示手段と、観察モードとして、表示手段で電子顕微鏡画像と光学画像とを比較観察可能な比較モードと、電子顕微鏡画像と光学画像とを合成した合成画像を表示可能な合成モードを選択可能なモード選択手段110と、電子線撮像手段又は光学系撮像手段のいずれか一方で取得された画像の倍率を認識し、該画像と略同一の表示サイズの画像を他方の観察手段で取得するための倍率を、他方の観察手段の基準に基づく倍率に換算するための倍率換算手段111とを備え、比較モード又は合成モードにおいて、電子線撮像手段又は光学系撮像手段のいずれか一方で取得された画像を表示手段に表示すると共に、該画像と略同一のサイズで他方の観察手段で画像を取得するための倍率を、倍率換算手段111で換算し、該換算倍率、又は該換算倍率に設定不可能な場合は、設定可能な倍率の内で該換算倍率と最も近い倍率を表示手段に表示可能に構成している。これにより、使用する観察手段に依らず統一的な倍率で表示できるので、同一表示サイズの画像を比較する比較観察や、画像を合成した合成画像を得る合成モードに際して、同一表示サイズの画像を取得し易くできる。
なお、比較モードにおいては、電子顕微鏡画像と光学画像の倍率を同一に合わせることが好ましく、このため倍率換算手段で、電子線撮像手段又は光学系撮像手段のいずれか一方で取得された画像の倍率を、他方の観察手段で取得した場合の倍率に換算している。ただ、対比観察は必ずしも完全に同一の倍率や視野に合わせる必要はなく、観察の用途や目的に応じてユーザが適宜選択する。同様に、合成モードにおいても、電子顕微鏡画像と光学画像の倍率を同一に合わせることは必ずしも必須でなく、異なる倍率であっても画像合成は可能である。特に電子顕微鏡画像が高倍率で、光学画像が低倍率の場合は、視野の狭い電子顕微鏡画像の輝度情報や輪郭情報に、視野の広い光学画像中から対応する領域の色情報を抽出して、拡大或いは引き延ばして合成すると、色情報が若干ぼけるものの、実用上は問題なく利用できる。このように、合成する画像の倍率が一致しないことで多少の画質低下が生じるとしても、問題なく使用できるレベルで画像合成を行うことは可能である。このため、倍率換算手段で換算された電子顕微鏡画像の倍率と対応する換算倍率に、光学系撮像手段を設定可能かどうかを判定するのみならず、倍率判定手段はこの換算倍率を基準とする合成可能な所定範囲の倍率に、光学系撮像手段を設定可能かどうかを判定することもできる。ここで合成可能な所定範囲の倍率とは、求められる合成画像の精度に依存するが、例えば倍率差が20倍以下であれば、実用上は問題のない合成画像が得られる。また、上記と逆に、高倍率の光学画像と、低倍率の電子顕微鏡画像とを合成することも理論的には可能であるが、この場合は合成画像の品質が低下するので、上述の通り、倍率の一致しない画像同士の画像合成は、電子顕微鏡画像が光学画像よりも高倍率の場合に適用することが好ましい。
(計測機能)
さらに拡大観察装置は、表示手段2上に表示される画像上で、指定した2点間の距離や指定した領域内の面積等を計測可能な計測機能を備えている。計測機能においては、電子顕微鏡画像、光学画像、あるいは合成画像のいずれかを表示手段2上に表示させて、マウス等のポインティングデバイスで画像上の任意の点を指示して、計測を実行させる。点の指定は、ユーザが指定した位置をそのまま計測点として利用する他、指定位置に近接するエッジ情報を画像中から検出して、そのエッジ位置を計測点とする、スナップ機能が好適に利用できる。
計測機能で利用する画像には任意のものが利用できるが、電子顕微鏡画像又は合成画像を用いることが好ましい。光学画像は色情報と輝度情報を各画素ごとに有しているが、その色情報、輝度情報の境界線は不明瞭となる傾向がある。特に高倍率での計測は、光学画像では分解能が不足する傾向にあり、計測対象である試料の輪郭やエッジがぼやけてしまい、特にスナップ機能を利用する場合は、計測時に正しい計測点の指定が困難になるためである。一方、電子顕微鏡画像は、輝度情報を各画素毎に有しているが、色情報は有していない。反面、輝度情報の境界線は明瞭であり、高倍率でも構造物のエッジが比較的、明瞭に観察できる。しかしながら、色情報を持った自然な見え方ではなく、試料の電子発生効率に依存した白黒のコントラスト画像であるため、求める計測対象物を直感的に認識し難いという問題がある。そこで、高精細でかつ色情報も有する合成画像が最も利用し易い。
合成画像は例えば、光学画像の色情報と、電子顕微鏡画像の輝度情報を合成する。しかしながら、合成前の2枚の元画像は、各々が独自の座標系を有しているため、図55に示すような基準位置や基準長が、厳密に一致しない。これらを何らかの方法で補正をしても、その誤差を完全に無くすことはできない。このため、2枚の元画像は正確に同一の倍率、観察位置とならず、倍率、観察位置共に多少の誤差を含んでいる。このような合成画像を用いて計測を行うと、座標位置や倍率の誤差によって、計測の精度が低下するという問題があった。例えば2点間の距離を測定する場合、各位置の指定に際して誤差が生じるため、2点を指定する測定では誤差が累積されることになる。
これに対して本実施の形態では、合成画像から計測を行うに際して、元画像である電子顕微鏡画像の位置情報を利用して計測を行う。すなわち、元画像である光学画像の位置情報や、画像合成の際に生じる倍率、観察位置の誤差の累積といった合成に起因する誤差を排除して、計測対象物の境界線を正確に指定することが可能となる。
図59に、このような合成画像における計測機能を備えた拡大観察装置のブロック図を示す。この図に示す拡大観察装置は、電子顕微鏡画像を取得するための電子線撮像手段11と、光学画像を取得するための光学系撮像手段12と、操作手段105Cと、コントローラ1と、表示手段2とを備える。
操作手段105Cは、電子顕微鏡画像の表示倍率を設定するための電子顕微鏡倍率調整手段68、光学画像の表示倍率を設定するための光学倍率調整手段95、表示手段上に表示される合成画像に対して表示手段の画面上にて計測点を指定する計測点指定手段130として機能する。
またコントローラ1は、電子顕微鏡画像を保持する第一記憶手段131、光学画像を保持する第二記憶手段132、合成画像に関する位置情報を記憶する第三記憶手段133、画像表示を切り替える表示切替手段36、合成画像を生成する画像合成手段116、倍率換算手段111、モード選択手段110、倍率判定手段119、誘導手段120、計測手段134を備える。表示切替手段36は、表示手段2における画像表示を光学系撮像手段12による表示から電子線撮像手段11による表示に切り替える。このようなコントローラ1は、コンピュータやCPU、LSI等で構成できる。ただ、各機能を個別の部材で実現するように構成してもよい。例えば、観察条件設定手段や光学倍率読取手段を操作手段と別に設けることができる。さらに表示手段が、換算倍率表示手段123、倍率範囲表示手段126、予定倍率表示手段124、判定告知手段125、状態表示手段121として機能することは上述の通りである。
操作手段105Cは、電子線撮像手段11の像観察条件を設定するための観察条件設定手段として機能する。ユーザは観察条件設定手段を操作して、電子線撮像手段11で電子顕微鏡画像を撮像する際の像観察条件を設定する。像観察条件には、電子顕微鏡の場合は加速電圧やスポットサイズ(入射電子線束の直径)、検出器の種類、真空度等が挙げられ、使用する電子線撮像手段11に応じた条件を観察条件設定手段で設定する。観察条件設定手段で設定された像観察条件は、コントローラ1を介して電子線撮像手段に送出される。同様に光学系撮像手段の撮像条件も設定される。コントローラ1は、電子線撮像手段11から電子顕微鏡画像を、光学系撮像手段12から光学画像を取得し、各々第一記憶手段131、第二記憶手段132に保持する。モード選択手段110で合成モードが選択されると、画像合成手段116は、これら第一記憶手段131及び第二記憶手段132に記憶された情報に基づき、電子顕微鏡画像の位置情報と、光学画像の色情報とを合成して合成画像を生成し、表示手段に表示する。さらに合成画像の位置情報、又は該合成画像の位置情報と、合成前の電子顕微鏡画像の位置情報との対応関係を示す対応情報を、第三記憶手段133に保持する。
この状態で、合成画像に基づく計測を行うには、まずユーザは計測点指定手段130を操作して、表示手段上に表示される合成画像に対して、画面上にて計測点を指定する。その上で、計測手段134は指定された計測を行う。例えば2点間の距離や高度差、傾斜角度、あるいは指定された閉領域の面積演算等である。ここで計測に際しては、合成画像の元となった電子顕微鏡画像の位置情報を利用する。このため、第一記憶手段131には、予め電子顕微鏡画像を保持する際に、電子顕微鏡画像の位置情報を記憶しておく。位置情報は、観察対象の試料の構造を示す情報であり、座標位置や形状の輪郭等である。この情報を利用することで、画像上で指定された計測点に対応する正確な位置を取得できる。
合成画像の形状が元の電子顕微鏡画像と正確に一致する場合は、合成画像上の位置情報をそのまま計測に利用できる。一方、合成画像の形状が元の電子顕微鏡画像と正確に一致しない場合は、合成画像上の座標位置に対応する電子顕微鏡画像上の座標位置を、第三記憶手段133を参照して取得した上で、該電子顕微鏡画像座標を用いた計測を行う。これにより、光学画像との画像合成によって形状や座標位置にずれが生じた場合でも、より正確な座標位置情報を有する電子顕微鏡画像上での座標位置に変換することで、高精度な計測を行うことが可能となる。
(操作手段105C)
また、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11の両方を共通の操作手段105Cで制御し、かつ両方の観察手段で得た画像の計測時に必要な情報、例えば倍率、観察手段の光軸と試料の位置関係等の情報を、制御手段で一括処理することで、カラー合成画像の計測作業は格段に利便性を向上できる。共通の操作手段105Cは、例えば外付けのコントローラ1を共通化して一のコントローラ1で光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を切り替えて操作可能とする。また、コンピュータにインストールした拡大観察装置の操作プログラムで、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を切り替えて操作可能とする構成も好ましい。加えて、上述の通り観察手段の切り替えを回動式とすることで、試料の同一位置を観察できるよう両方の観察手段を容易に切り替え、移動可能としたことで、カラー合成画像の合成作業を一層簡単に行える利点も得られる。
なお、以上の例では図26や図60に示すような回動式の移動機構を備える試料室の形態について説明したが、本発明は上記構成に限られず、一の試料室に複数の観察手段を備える様々な構成が利用できる。光学系撮像手段12と電子線撮像手段11を有する試料室21構成の変形例を図61〜図64に示す。各例において、光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11は、それぞれが同一の試料SAを撮像できるように配置される。
図61の例では、観察手段10の切り替えを旋回式のリボルバで行っている。また図62の例では、観察手段10を平行移動によって切り替えている。また上記は試料台33を固定して観察手段10側を移動させる構成であるが、これに限らず観察手段10側を移動させる構成としてもよい。例えば図63では、試料台33を平行移動させる構成、図64では試料台33を傾斜させる構成を、それぞれ示している。さらに図65の例では、ハーフミラーによって観察手段10の光軸を選択する構成としている。このように、本実施の形態は、複数の観察手段10を備える様々な形態において適宜利用できる。
図65の例では光学系撮像手段12及び電子線撮像手段11の光軸をそれぞれ同軸に配置しており、図63は平行に、図64はV字状にそれぞれ配置している。特に図65の構成では、光学系撮像手段12の光軸と電子線撮像手段11の光軸が一致するように配置されているため、同一視野の画像を取得することができ、好ましい。またこの構成では、光学系撮像手段12の画像信号と電子線撮像手段11の画像信号を切り替える際に試料台33を移動させる必要がないため、速やかに切り替えを行うことができる。またリアルタイムでの観察や動画像の観察も実現できる。また光学系撮像手段12は、試料室21内に設置することで、試料室21内の減圧若しくは真空状態が維持されるので、表示切替手段36等により撮像系を切り替える際の減圧工程を不要にでき、スムーズな切り替えが実現できる。このような撮像系のスムーズな切り替えは、シームレスな表示切り替えが実現され、極めて使い勝手のよい電子顕微鏡とできる。ただ、図65の構成では、光学系撮像手段12と電子線撮像手段11のそれぞれの光軸を同軸にするために、電子線撮像手段11の光軸上に光学系撮像手段12の光軸を折り返すためのミラー等を配置する必要があり、構成が複雑になり高価になるという問題がある。また、同軸構成にすることによる装置の複雑化によって、光学系撮像手段12、電子線撮像手段11の光学設計の自由度が少なくなり、画像性能に影響を及ぼす可能性もある。
これに対して、図62〜図64の構成では、このようなミラーが不要であり比較的安価に実現できる。ただ、図63の構成では、切り替え時に試料台33を平行移動させる、光学系撮像手段12を設置する等の必要があり、手間がかかる上位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察が阻害される。さらに光学系撮像手段12が大気中に設置されている場合は、電子線撮像手段11が配置された試料室21を真空に減圧する必要があるため、このための時間と手間がかかる。一方、図64の構成では、一方の光軸が傾斜しているため、同一の視野を得るためには試料台33を水平面から傾斜させる必要がある。この場合も、位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察ができない。このように、図63、図64いずれの構成でもリアルタイムでの光学系撮像手段12と電子線撮像手段11との切り替えが困難となる。これを解消するには、予め光学系撮像手段12で光学画像をデータとして取得した上で、試料SAを電子線撮像手段11で観察可能な位置に移動させ、電子顕微鏡画像を表示可能な状態としておくことが考えられる。この状態で表示手段2に光学画像を表示させて視野探し等を行うと、表示切替手段36で速やかに電子線撮像手段11に切り替えできるので、ハードウエア構成を変更することなくリアルタイムに光学画像から電子顕微鏡画像への切り替えが実現できる。このため、該構成においては光学系撮像手段12で取得された光学画像を保持するためのメモリ部を利用する。メモリ部はRAM等の半導体メモリが利用できる。
(1コントローラに2ヘッドを装着する構成例)
さらにまた、上記の例では同一の試料室21や試料台33に複数の観察手段を設ける例を説明したが、異なる試料を観察する拡大観察装置に対しても本実施の形態を適用できる。例えば図66の例では、それぞれ別個に構成された光学顕微鏡12Bと電子顕微鏡11Bに対し、これらを制御するコントローラ1Bを共通としている。これにより、コントローラ1B側で、表示手段に表示される光学画像、電子顕微鏡画像の倍率表示を、統一的な倍率に換算して表示したり、一方の画像の倍率を換算倍率に直して他方の観察手段に設定したり、あるいは換算倍率に設定できない場合は、設定可能な倍率の内で換算倍率に最も近い倍率に設定するといったことが可能となる。この場合は、電子顕微鏡11Bの試料台33Dに載置される試料SA4と、光学顕微鏡12Bの試料台33Eに載置される試料SA5という、異なる試料を観察することになる。また以上の例では観察手段として光学系撮像手段と電子線撮像手段の2つを用いたが、3以上の観察手段を切り替え自在に設けることも可能であることはいうまでもない。