以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電子顕微鏡、電子顕微鏡の操作方法、電子顕微鏡操作プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記録した機器を例示するものであって、本発明は電子顕微鏡、電子顕微鏡の操作方法、電子顕微鏡操作プログラム及びコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記録した機器を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
本明細書において電子顕微鏡とこれに接続される操作、制御、入出力、表示、その他の処理等のためのコンピュータ、プリンタ、外部記憶装置その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS−232x、RS−422、RS−423、RS−485、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE−T、100BASE−TX、1000BASE−T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行う。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらに観察像のデータ保存や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
以下の実施例ではSEMについて説明する。但し、本発明の電子顕微鏡はTEMやその他の荷電粒子線装置においても利用できる。また光学顕微鏡、レーザ顕微鏡、原子間力顕微鏡、静電気力顕微鏡、近視野顕微鏡等の内、2つ以上の顕微鏡の機能を備えた複合型顕微鏡に利用してもよい。本発明を具現化した一実施例に係るSEMについて、図1に基づいて説明する。SEMは一般に加速電子の電子線を発生させ試料に到達させるまでの光学系と、試料を配置する試料室(チャンバ)と、試料室内を真空にするための排気系と、像観察のための操作系で構成される。図1の電子顕微鏡100は、このような部材により荷電粒子線による電子顕微鏡画像の観察を行うための電子線撮像部42の構成を示している。また、図1のコンピュータ1にインストールされた電子顕微鏡の操作プログラムで、電子顕微鏡の観察条件の設定や各種操作を行い、観察像の表示を行う表示部28に表示する。
光学系は、加速電子の電子線を発生させる電子銃7、加速電子の束を絞り込んで細束化するレンズ系、試料から発生する二次電子や反射電子を検出する検出器を備える。図1に示す走査型電子顕微鏡100は、光学系として電子線を照射する電子銃7と、電子銃7から照射される電子線がレンズ系の中心を通過するように補正するガンアライメントコイル9と、電子線のスポットの大きさを細く絞る収束レンズ12であるコンデンサレンズと、収束レンズ12で収束された電子線を試料20上で走査させる電子線偏向走査コイル18と、走査に伴い試料20から放出される二次電子を検出する二次電子検出器21と、反射電子を検出する反射電子検出器22を備える。
試料室31には、試料台33、試料導入装置、X線検出用分光器等が備えられる。試料台33(ステージ)は試料台制御部34で制御され、試料台33のX、Y、Z(高さ)方向への移動、回転(R)、傾斜(T)機能を備える。これら5軸は電動駆動される他、一部もしくは全部を手動での駆動とすることもできる。排気系は、加速電子の電子線が気体成分通過中に極力エネルギーを失うことなく試料に到達するために必要で、ロータリーポンプ、油拡散ポンプが主として用いられる。
操作系は二次電子像、反射電子像、X線像等を表示、観察しながら照射電流の調整、焦点合わせ等を行う。二次電子像等の出力は、アナログ信号であれば写真機によるフィルム撮影が一般的であったが、近年は画像をデジタル信号に変換した出力が可能となり、データの保存や画像処理、印刷等の多種多様な処理が可能である。図1のSEMは、二次電子像や反射電子像等の観察像を表示する表示部28と印刷のためのプリンタ29を備える。また操作系は、観察条件として少なくとも加速電圧又はスポットサイズ(入射電子線束の直径)を設定するために必要な設定項目の設定手順を誘導(ガイダンス)する誘導手段を備える。
図1に示すSEMは、コンピュータ1と接続され、コンピュータ1を電子顕微鏡100の操作を行うコンソールとして使用し、また必要に応じて観察条件や画像データを保存したり、画像処理や演算を行う。図1に示すCPUやLSI等で構成される中央演算処理部2は、走査型電子顕微鏡100を構成する各ブロックを制御する。電子銃高圧電源3を制御することにより、フィラメント4、ウェーネルト5、アノード6からなる電子銃7より電子線を発生させる。電子銃7から発生された電子線8は、必ずしもレンズ系の中心を通過するとは限らず、ガンアライメントコイル9をガンアライメントコイル制御部10によって制御することで、レンズ系の中心を通過するように補正を行う。次に、電子線8は収束レンズ制御部11によって制御される収束レンズ12であるコンデンサコイルによって細く絞られる。収束された電子線8は、電子線8を偏向する非点収差補正コイル17、電子線偏向走査コイル18、対物レンズ19、及び電子線8のビーム開き角を決定する対物レンズ絞り13を通過し、試料20に至る。非点収差補正コイル17は非点収差補正コイル制御部14によって制御され、走査速度等を制御する。同様に電子線偏向走査コイル18は電子線偏向走査コイル制御部15によって、対物レンズ19は対物レンズ制御部16によって、それぞれ制御され、これらの作用によって試料上を走査する。試料20上を電子線8が走査することにより、試料20から二次電子、反射電子等の情報信号が発生され、この情報信号は二次電子検出器21、反射電子検出器22によりそれぞれ検出される。検出された二次電子の情報信号は二次電子検出増幅部23を経て、また反射電子の情報信号は反射電子検出器22で検出されて反射電子検出増幅部24を経て、それぞれA/D変換器25、26によりA/D変換され、画像データ生成部27に送られ、画像データとして構成される。この画像データはコンピュータ1に送られ、コンピュータ1に接続されたモニタ等の表示部28にて表示され、必要に応じてプリンタ29にて印刷される。排気系ポンプ30は、試料室31内部を真空状態にする。排気系ポンプ30に接続された排気制御部32が真空度を調整し、試料20や観察目的に応じて高真空から低真空まで制御する。
電子銃7はあるエネルギーをもった加速電子を発生させるソースとなる部分で、W(タングステン)フィラメントやLaB6フィラメントを加熱して電子を放出させる熱電子銃の他、尖状に構成したWの先端に強電界を印加して電子を放出させる電界放射電子銃がある。レンズ系には、収束レンズ、対物レンズ、対物レンズ絞り、電子線偏向走査コイル、非点収差補正コイル等が装着されている。収束レンズは電子銃で発生した電子線をさらに収斂して細くする。対物レンズは最終的に電子プローブを試料に焦点合わせするためのレンズである。対物レンズ絞りは収差を小さくするために用いられる。検出器には、二次電子を検出する二次電子検出器と反射電子を検出する反射電子検出器がある。二次電子はエネルギーが低いのでコレクタにより捕獲され、シンチレータにより光電子に変換されて、光電子倍増管で信号増幅される。一方、反射電子の検出にはシンチレータあるいは半導体型が用いられる。
(試料台33)
観察位置の位置決めは、試料20を載置した試料台33を物理的に移動させて行う。試料台33は試料台制御部34によって制御される。試料台33は試料20の観察位置を調整可能なように様々な方向への移動、調整が可能である。移動、調整の方向は、試料台33の観察位置を移動、調整させるため、試料台33の平面方向であるX軸及びY軸方向、R軸(回転)方向への移動及び微調整が可能である他、試料の傾斜角度を調整するために試料台33のT軸(傾斜)方向の調整、ならびに対物レンズ19と試料との距離(ワーキングディスタンス)を調整するために試料台33のZ軸方向の調整が可能である。
観察像の位置決めや観察視野の移動には、試料台を物理的に移動させる方法に限られず、例えば電子銃から照射される電子線の走査位置をシフトさせる方法(イメージシフト)も利用できる。あるいは両者を併用する方法も利用できる。あるいはまた、広い範囲で一旦画像データを取り込み、データをソフトウェア的に処理する方法も利用できる。この方法では、一旦データが取り込まれてデータ内で処理されるため、ソフトウェア的に観察位置を移動させることが可能で、試料台の移動や電子線の走査といったハードウェア的な移動を伴わないメリットがある。予め大きな画像データを取り込む方法としては、例えば様々な位置の画像データを複数取得し、これらの画像データをつなぎ合わせることで広い面積の画像データを取得する方法がある。あるいは、低倍率で画像データを取得することによって、取得面積を広く取ることができる。
なお本明細書において、電子顕微鏡画像とは、電子顕微鏡等で撮像された主に観察対象の輝度情報を含む、濃淡で表示されるモノクロ画像を指す。また光学画像とは、可視光や紫外光等を利用した光学撮像部で撮像された、主に色情報を含むカラー画像を指す。また光学画像には、可視光カメラによる可視光観察像の他、赤外線カメラによる赤外線観察像も利用できる。また、後述するように光学画像の色情報に基づいて電子顕微鏡画像を着色することも可能である。また、電子線撮像部や光学撮像部が画像を取得するとは、一般にはこれらの部材で撮像する意味であるが、他の部材で撮像された画像を電子顕微鏡に取り込むことも包含する概念で、画像の取得という。
(光学撮像部44)
この電子顕微鏡100は、上述した第2撮像部である電子線撮像部42を用いた電子線観察像の観察以外に、第1撮像部として、可視光による撮像を行う光学撮像部44を装着している。光学撮像部44で撮像された光学画像は、ユーザが任意に利用でき、例えばSEM画像の観察中において視野探しのための広域画像として利用したり、観察対象の試料の確認といった電子線観察の補助的な目的で利用される。これら電子線を用いて撮像する電子線撮像部42と、可視光を用いて撮像する光学撮像部44との複数の撮像系を、本実施の形態に係る電子顕微鏡100は切換可能に構成している。光学撮像部44には、可視波長や赤外波長の光を利用する光学顕微鏡や光学カメラ等の光学観察装置が利用できる。
図2に、このような電子線撮像部42と光学撮像部44とを切り換え可能に構成した電子顕微鏡200のブロック図を示す。この図に示す電子顕微鏡200は、電子顕微鏡画像を取得するための電子線撮像部42と、光学画像を取得するための光学撮像部44と、電子線撮像部42の観察条件を設定するための観察条件設定部650と、光学画像の表示倍率を設定するための光学倍率設定部611Bと、演算部70と、表示部28とを備える。この例では、観察条件設定部650は、電子顕微鏡画像の表示倍率を設定するための電子顕微鏡倍率設定部611Aと、電子線撮像部42及び光学撮像部44で撮像される観察画像の位置合わせを行うための補正部90とを含む。また演算部70は、観察条件設定部650で設定された観察条件に応じて、電子線撮像部42で取得可能な最低倍率を演算する倍率演算部72として機能し、さらに倍率演算部72の演算結果に応じて表示部28における画像表示を光学撮像部44による表示から電子線撮像部42による表示に切り替える切替部46、表示部28における画像表示を光学撮像部44から電子線撮像部42に切り替え可能である旨を告知する告知部74、光学倍率設定部611Bの倍率設定に制限を加える倍率制限部76、補正部90による補正作業の手順及び/又は補正項目の説明を表示する手順説明部78としても機能する。演算部70は、電子線撮像部42から電子顕微鏡画像を、光学撮像部44から光学画像を取得する。また演算部70は観察条件設定部650を接続している。観察条件設定部650は、電子線撮像部42で電子顕微鏡画像を撮像する際の観察条件を設定する。観察条件には、電子顕微鏡の場合は加速電圧やスポットサイズ(入射電子線束の直径)、検出器の種類、真空度等が挙げられ、使用する電子線撮像部42に応じた条件を観察条件設定部650で設定する。演算部70は、コンピュータやCPU、LSI等で構成できる。ただ、各機能を個別の部材で実現するように構成してもよい。例えば、観察条件設定部650に含まれる電子顕微鏡倍率設定部611Aと、補正部90とを個別の部材としてもよい。
光学撮像部44を電子顕微鏡に配置する構成例について、図3〜図5に基づいて説明する。光学撮像部44及び電子線撮像部42は、それぞれが同一の試料20を撮像できるように配置される。図3の例では光学撮像部44及び電子線撮像部42の光軸をそれぞれ同軸に配置しており、図4は平行に、図5はV字状にそれぞれ配置している。図3の構成では、光学撮像部44の光軸と電子線撮像部42の光軸が一致するように配置されているため、同一視野の画像を取得することができ、好ましい。またこの構成では、光学撮像部44の画像信号と電子線撮像部42の画像信号を切り替える際に試料台33を移動させる必要がないため、速やかに切替を行うことができる。またリアルタイムでの観察や動画像の観察も実現できる。また光学撮像部44は、試料室31内に設置することで、試料室31内の減圧若しくは真空状態が維持されるので、切替部46等により撮像系を切り替える際の減圧工程を不要にでき、スムーズな切り替えが実現できる。このような撮像系のスムーズな切り替えは、後述する光学画像から電子顕微鏡画像への切り替えの際の違和感低減と相俟って、シームレスな表示切り替えが実現され、極めて使い勝手のよい電子顕微鏡とできる。ただ、図3の構成では、光学撮像部44と電子線撮像部42のそれぞれの光軸を同軸にするために、電子線撮像部42の光軸上に光学撮像部44の光軸を折り返すためのミラー81等を配置する必要があり、構成が複雑になり高価になるという問題がある。また、同軸構成にすることによる装置の複雑化によって、光学撮像部44、電子線撮像部42の光学設計の自由度が少なくなり、画像性能に影響を及ぼす可能性もある。
これに対して、図4、図5の構成では、このようなミラーが不要であり比較的安価に実現できる。ただ、図4の構成では、切替時に試料台33を平行移動させる、光学撮像部44を設置する等の必要があり、手間がかかる上位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察ができない。さらに光学撮像部44が大気中に設置されている場合は、電子線撮像部42が配置された試料室31を真空に減圧する必要があるため、このための時間と手間がかかる。一方、図5の構成では、一方の光軸が傾斜しているため、同一の視野を得るためには試料台33を水平面から傾斜させる必要がある。この場合も、位置合わせ等の調整が必要でリアルタイムでの観察ができない。このように、図4、図5いずれの構成でもリアルタイムでの光学撮像部44と電子線撮像部42との切り替えが困難となる。そこで、予め光学撮像部44で光学画像をデータとして取得した上で、試料20を電子線撮像部42で観察可能な位置に移動させ、電子顕微鏡画像を表示可能な状態としておく。この状態で表示部28に光学画像を表示させて視野探し等を行うと、切替部46で速やかに電子線撮像撮像部に切り替えできるので、ハードウェア構成を変更することなくリアルタイムに光学画像から電子顕微鏡画像への切り替えが実現できる。このため、切替部46は光学撮像部44で取得された光学画像を保持するためのメモリ部80を備えている。メモリ部80はRAM等の半導体メモリが利用できる。
また光学撮像部44は、必要時に試料室31内に手動で設置して光学画像の撮像後はこれを取り外し、通常の電子線撮像部42を用いた観察に切り換える構成としてもよい。手動による光学撮像部44の装着は、撮像部を試料室31内に配置して機械的に自動で切り換える方式に比べて着脱の手間はかかるものの、非使用時に試料室31内で光学撮像部44が邪魔になることもなく、また撮像部の自動切換のための機構も不要にできるために試料室31内の構成を簡素化でき、安価かつ簡素な構成で実現できるという利点が得られる。以下、この着脱式の光学撮像部44を電子顕微鏡に装着する様子を、図6に基づいて説明する。
図6に示す電子顕微鏡300は、試料室31の前面を構成する正面のパネル52を引き出し、試料室31を外部に開放している。正面パネル52は、一対のガイドロッド54に従い引き出し自在に電子顕微鏡本体50の正面に連結されている。試料室31内は観察中は真空に減圧されるため、正面パネル52の開放時には試料室31内を常圧とする。正面パネル52の内側、すなわち試料室31の前面の側壁には、水平台56が固定され、水平台56上に試料台33やその移動機構が設けられている。これにより、正面パネル52を引き出すことで試料台33も一緒に引き出すことができ、この状態で試料台33に試料をセットする。図6の例では、試料は試料ホルダ(図示せず)に挿入され、試料ホルダを試料台33にセットすることで試料が試料台33に裁置される。試料台33上には、試料ホルダをセットするための試料ホルダ保持部として、中心にホルダ保持穴58(図7に示す)が形成されている。ホルダ保持穴58は、試料ホルダを挿入できる大きさに構成される。
このように試料が試料台33に裁置された状態で、光学撮像部44を試料台33に装着して光学画像を撮像する。移動可能な試料台33上に光学撮像部44を固定する構成によって、試料台33の位置によらず光学撮像部44は常に試料台33上の所定の位置に保持されることとなる。これによって、試料台33の現在位置を意識することなく試料台33に裁置された試料を確実に補足して、光学画像の撮像を容易に行える。従来の電子顕微鏡では、試料室内の側壁等固定位置に光学撮像部を固定する方式であったため、固定された光学撮像部で試料を撮像できるよう、試料台の位置を調整してやる必要があった。この方式では、試料台の現在位置を把握した上で、丁度光学撮像部の視野に試料台上の試料が入るように計算して試料台の位置を調整する必要があり、極めて煩雑で面倒であった。特に、試料台は5軸、すなわちXY平面、高さ方向のZ軸、回転方向のR軸および傾斜のT軸という多くの移動パラメータを有しており、しかも拡大観察系であるため、撮像位置を合わせることは非常に手間のかかる作業であった。さらに光学画像の撮像後は、荷電粒子線撮像による観察のために、別の撮像部への位置合わせ作業を行わねばならない。電子線観察から一旦光学画像に切り換えた場合は、電子線撮像部での位置合わせから光学撮像部への位置合わせを行った後、再度元の電子線撮像部での位置合わせを行う必要があり、一層の手間も時間もかかる。しかも電子線観察は一視野が数ミクロン単位といった極めて高い倍率で行われるため、たわみやがた等各部の誤差によって、正確に同じ位置が再現できるとは限らず、元の位置に復元しようとしても誤差のために視野が異なってしまうおそれがある。したがって、このような調整作業を可能な限り簡略化することが望ましい。これに対して、本実施の形態のように試料台33上に光学撮像部44を固定する構成によれば、試料台33が移動しても試料台33と光学撮像部44の相対的な位置関係は変化しないため、上記のような位置合わせ作業を不要にでき、光学画像の撮像を極めて容易に行うことが可能となる。
図6に示す光学撮像部44は、保持機構を構成する棒状のロッド62と、光学撮像部44の中心的機能を果たす撮像用のカメラユニット60とを備える。ロッド62は、図6に示すように試料台33上に直立させて、上端に固定されたカメラユニット60を試料台33の上部に離間させて保持する。試料台33の上面には、光学撮像部44を連結するための装着機構として、ロッド62を脱着可能に挿入するための挿入穴64を形成している。挿入穴64は、試料台33の上面に突出させたパイプ66の先端に開口される。一方、ロッド62の先端にはボス68を形成しており、パイプ66の開口端に挿入して保持できる大きさ及び形状に形成される。この構成により、パイプ66にボス68を挿入して保持機構を試料台33上に直立させ、光学撮像部44を保持する。装着機構として予めパイプ66を試料台33から突出させる構成により、ユーザが光学撮像部44を装着する際にパイプ66の位置を容易に視認できるので、装着位置を迷う、あるいは間違えることがなく使い易い電子顕微鏡とできる利点がある。またこのパイプ66自体も着脱可能に構成してもよい。これにより、光学画像の撮像を行わない場合はパイプ66を外して試料室31内をすっきりさせることができる。
(カメラユニット60)
カメラユニット60は、光学画像を撮像する部材であり、光学式カメラやデジタルカメラ等が利用でき、好ましくはCCD又はC−MOS撮像素子を利用する。CCD又はC−MOSで撮像した光学画像は、データの送信、加工、処理等を電気的に行うことができ、扱いが容易となる。カメラユニット60は所望の倍率とし、例えば1〜20倍のいずれかの固定倍率のカメラユニット60を光学撮像部44にセットする。図6の例では、2倍倍率のカメラユニット60を使用している。また、異なる固定倍率のカメラユニット60を備える光学撮像部44を交換して試料台33上にセットすることもできる。カメラユニット60で撮像された光学画像は、演算部70に送出され、表示部28にて表示される。また、カメラユニット60に光学式カメラを用いて撮像する場合は、現像して光学画像を紙媒体等により得ることもできる。
(電子顕微鏡操作プログラム)
次に、電子線撮像部42を操作して電子線画像を撮像する手順について、図8〜図25の電子顕微鏡の操作プログラムのユーザインターフェース画面に基づいて説明する。電子顕微鏡操作プログラムは、図1においてはコンピュータ1にインストールされ実行可能な状態としている。電子顕微鏡操作プログラムをインストールされたコンピュータ1が電子顕微鏡100等の機器とデータの送受信や通信を行い、必要な情報を取得し、設定を行う。通信は、例えばRS−232CケーブルやUSBケーブルを介してシリアル通信で行われる。ただ、この形態に限られず電子顕微鏡等の電子顕微鏡自体に電子顕微鏡操作プログラムを組み込む態様等も適宜採用できる。また、この電子顕微鏡操作プログラムは、電子線観察像の撮像の他、複数の視差画像に基づく3次元画像の生成や、生成された3次元画像に対して表示、操作、計測等の処理を行うためのプログラムを兼用することもでき、この場合は一のプログラムで電子顕微鏡で像観察を行うための操作と、得られた電子線観察像に基づいて3次元画像を再構築する操作を行え、これによって統合された環境でユーザが操作し易いプログラムとできる。ただ、各機能を別個のプログラムで実現することも可能であり、この場合は各プログラムの呼び出しを専用のメニュー画面等から行ったり、各機能を示すボタンにプログラムの呼び出しをリンクさせる等により、プログラムのスムーズな切換を行い、ユーザが操作し易い環境とできる。
なお図18等に示す電子顕微鏡操作プログラムのユーザインターフェース画面の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作し易いレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、電子顕微鏡操作プログラムを組み込んだコンピュータに接続された入力部で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入出力デバイスはコンピュータと有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、電子顕微鏡等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示する表示部28のディスプレイ自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
電子顕微鏡操作プログラムを起動すると、図8に示すようなメニュー画面が表示部28に表示される。メニュー画面にはアイコン状のボタンが配置されており、各々のボタンを押下すると、該当する画面に切り替わる。本実施の形態では、後述する光学撮像部と電子線撮像部の位置合わせのための操作を支援するガイダンス機能の他、電子顕微鏡画像を撮像するための観察条件の設定等を誘導するガイダンス機能も備えている。そのような電子線観察を支援するための複数のガイダンス機能として、第一のオート観察モード、第二のオート観察モードを用意し、メニュー画面からいずれかを選択できる。ここでは第一のオート観察モードを高真空観察用のガイダンス機能とし、第二のオート観察モードを低真空観察用のガイダンス機能としている。さらに初心者ユーザに理解し易いよう、「低真空観察」を、電気を通さない試料や水分を含んだ試料の観察に適した「オート観察2」と呼び、通常の高真空観察を「オート観察1」と呼ぶことで、ユーザは真空度や圧力といった概念を意識することなく、単に観察したい試料に応じて適切なガイダンス機能を選択することができ、専門知識のないユーザでも容易に使用できる。また図8のメニュー画面には、手軽に使用したいユーザ向けの簡単操作による観察モード(第一のオート観察モード)に対応する操作画面に移行する「オート観察1」アイコン(第一のオート観察モード設定手段)101、電気を通さない試料や水分を含んだ試料の観察に適している観察モード(第二のオート観察モード)に対応する操作画面に移行する「オート観察2」アイコン(第二のオート観察モード設定手段)102、および全てのパラメータを操作できる観察モード(マニュアル観察モード)に対応する操作画面に移行する「マニュアル観察」アイコン(マニュアル観察モード設定手段)103からなる観察モード設定手段が表示される。またメニュー画面には、観察モード設定アイコンの他に、取り込んだ画像の整理を行うアルバムモード(画像ファイル編集モード)の操作画面に移行する「アルバム」アイコン(画像ファイル編集モード設定手段)104、距離や面積を計測する計測モード操作画面に移行する「計測」アイコン(計測モード設定手段)105、消耗品の交換時に使われるメンテナンスモードの操作画面に移行する「メンテナンス」アイコン(メンテナンスモード設定手段)106、各種初期設定を行う初期設定モードの操作画面に移行する「初期設定」アイコン(初期設定モード設定手段)107、メニュー画面を終了する「終了」アイコン108、および3次元画像の生成、観察を行う3次元画像モードに移行するための「3D」アイコン(3次元画像モード設定手段)109が表示される。「オート観察1」アイコン101あるいは「オート観察2」アイコンを押下することにより、表示部28に表示される表示画面は、図8の画面等専用の画質設定画面に切り替えられる。「マニュアル観察」アイコン103を押下することにより、表示部28に表示される表示画面は、図10等に示すマニュアル観察モードの操作画面に切り替えられる。また「3D」アイコン109を押下すると、3次元画像生成プログラムに切り換えられる。
(オート観察モード)
図8の画面から「オート観察1」アイコン101を押下すると、オート観察モードが開始され、図9に示すオート観察の準備画面に移行する。この画面では、観察の準備として試料を電子顕微鏡にセットする手順を電子顕微鏡のイラストに基づいて説明している。ユーザは表示部28に表示されるこれらの図示及び説明に従い、必要な手順を行う。指示通りの手順が完了すると、「撮影開始」ボタン112を押下する。これにより、自動的に試料のカメラ撮影ウィザードが開始され、図11の画面に移行する。
(マニュアル観察モード)
一方、図8の画面から「マニュアル観察」アイコン103を押下すると、マニュアル観察モードが開始され、図10に示すマニュアル観察モードの画面に移行する。マニュアル観察モードは、ユーザが像観察条件を設定可能なモードである。図10に示す操作画面は、結像された光学画像Kや電子顕微鏡画像D等の観察像を表示する第1表示領域47と、位置表示、広域図、eプレビュー、及び比較画像を表示する第2表示領域48と、観察像の画像補正を設定する画像補正設定手段601と、検出器、加速電圧、真空度、及びスポットサイズ等の観察条件を個別に設定する個別条件設定手段603と、以前に記憶された画像ファイルに対応する観察条件から一の条件を設定するファイル対応条件設定手段604と、プレビュー機能を設定するプレビュー設定手段と、視野設定部として、観察像等の倍率を設定する倍率設定部611と、観察視野の移動を設定する観察視野移動設定部612と、コントラスト及び明るさを設定するコントラスト・明るさ設定手段613と、非点収差の調整を設定する非点収差調整設定手段614と、光軸の調整を設定する光軸調整設定手段615とを備える。マニュアル観察モードでは、画像補正設定手段601において、シャープネスを設定するシャープネス設定手段601aと、ハイライトを設定するハイライト設定手段601bと、ガンマ補正を設定するガンマ補正設定手段601cと、観察像の輝度分布を示す輝度分布図(ヒストグラム)601dと、オーバーレンジ抽出設定手段601eとが表示される。オーバーレンジ抽出設定手段は、オーバーレンジした領域を抽出して表示するよう設定するものである。具体的には、観察像が表示された状態で、オーバーレンジ抽出設定手段601eの一態様である「オーバーレンジチェック」欄をチェックすると、観察像のアンダー領域あるいはオーバー領域なったオーバーレンジ領域を他の中間色領域と異なる態様で表示される。また、上記と同様に個別条件設定手段603によって観察条件を個別に設定することもできる。個別条件設定手段603で設定可能な項目としては、「検出器」ボックス603a、「加速電圧」ボックス603b、「真空度」ボックス603c、「スポットサイズ」ボックス603d等が用意されているが、非点収差調整設定手段、光軸調整設定手段等を含めてもよい。また、「ファイルから読み出す」ボタン(ファイル対応条件設定手段)404によって、以前に記憶された画像ファイルに対応する観察条件から一の条件を設定することができる。さらに、プレビュー設定手段の一態様である「eプレビュー設定」ボタン605によって、上述したプレビュー機能が実行される。
さらに、この電子顕微鏡操作プログラムは、光学画像Kと電子顕微鏡画像Dとを手動で切り替えるための切替ボタン616を設けている。図10の例では、第2表示領域48の上部には光学画像Kに切り替える光学画像切替ボタンとして「カメラ」ボタン616aが設けられている。この「カメラ」ボタン616aを押下すると、光学カメラで撮像された光学画像Kを第1表示領域47に表示できる。また「カメラ」ボタン616aの右側では電子顕微鏡画像Dへの切替ボタン616bが設けられている。電子線撮像部42の撮像が可能な状態では「観察ON」と表示されており、この状態で電子顕微鏡切替ボタン616bを押下すると、電子顕微鏡画像Dの表示に切り替えられる。なお、この例では切替ボタン616による選択によらず、倍率設定部611は共通のインターフェースを採用している。すなわち、電子顕微鏡切替ボタン616bを押下した状態では、倍率設定部611は電子顕微鏡倍率設定部611Aとして機能し、光学画像切替ボタンを押下した状態では、倍率設定部611は光学倍率設定部611Bとして機能する。
図10に示すマニュアル観察モードの画面例においては、第2表示領域48の右側に「試料のカメラ撮像」ボタン114が設けられている。ユーザは図10の画面から任意のタイミングで「試料のカメラ撮像」ボタン114を押下すると、自動的に試料のカメラ撮影ウィザードが開始され、図11の画面に移行する。
(カメラ撮影ウィザード)
以下、位置合わせ作業をユーザに誘導する動作の一形態であるカメラ撮影ウィザードについて説明する。ここでは、手順説明部78が必要な設定項目を対話形式で誘導する。図11に示す例では、手順説明部78は位置合わせに必要な工程を4段階に分けて、それぞれ「撮影準備」、「照明の調整と撮影」、「撮影した画像の位置と大きさの微調整」、「撮影開始」とし、各工程で必要な設定項目やその手順等を各々表示部28の表示を切り替えて説明している。手順説明部78は、各工程毎に観察画像や図表等を表示するイメージ領域116と、説明を表示する説明領域118に分割して説明している。まず図11に示すカメラ撮影ウィザードの開始画面は、「撮影準備」工程を説明している。ここでは、電子顕微鏡に光学式カメラを装着して、位置調整用の静止画の撮影を行うための準備手順が説明される。具体的には、表示部28の右側にイメージ領域116としてSEMのイラストと操作手順を示し、さらに左側の説明領域118で撮影準備に必要な手順を順番に「1.試料室を大気状態にして試料ステージを引き出して下さい」、「2.光学式カメラをビューポートから外して下さい」、「3.カメラ指示棒をステージ位置に切り替えて下さい」、「4.カメラ指示棒を試料ステージの指示棒固定金具に差し込んで下さい」と段階毎に説明している。ユーザはこの指示に従って必要な設定を行うことができるので、確実に設定を行える。特に、別途マニュアル等を用意することなく、画面での指示に従うことで操作できるので、ユーザの経験や熟練度によらず使いやすい環境が実現される。また、テキスト情報の表示や静止画のみならず、アニメーション等の動画や音声ガイダンス等を利用することもでき、より視覚的に分かりやすい手順の説明を行うこともできる。図11の例では、ユーザは画面上のイメージ領域116の図示及び説明領域118の説明にしたがってSEMの観察用ステージに光学式カメラをセットする。作業が終了すると、「撮影準備」工程を終了して「照明の調整と撮影」工程に移行する。ここでは「次へ」ボタン120を押下すると、図12の画面に移行する。
(「照明の調整と撮影」工程)
「照明の調整と撮影」工程は、第1撮像部である光学式カメラを用いて位置合わせのための第1基準画像として、所定の倍率で所定の視野を撮像するよう設定された第1基準画像を取得する工程である。まずセットされた光学式カメラを用いて試料を観察する状態で、図12の画面から光量調整部122で明るさの調整を行う。ここでは試料台33や試料の照り返しの軽減等を行い、照明の光量を適切に調整する。照明光量は、光量調整部122の一形態として、表示領域の左側に設けられた光量スライダを操作することで調整できる。また、光量を自動的に調整することも可能であり、この場合はユーザによる明るさの調整作業はスキップできる。調整終了後に「次へ」ボタン124を押下すると、静止画像の撮影が実行される。この例では、「次へ」ボタン124が第1基準画像の撮像を実行するための撮像トリガとして機能する。なお、撮像時の倍率は、位置合わせ作業の倍率と一致させるよう、予め所定値に固定されており、ユーザによる倍率調整を不可能とすることで誤操作を防止している。撮像中は、図13に示すように撮像中であることを示すメッセージ126が表示部28に表示される。撮像終了後、自動的に位置合わせ作業に移行される。この例では図14の画面に移行する。
(「撮影した画像の位置と大きさの微調整」工程)
明るさの調整された第1基準画像の撮像後、「撮影した画像の位置と大きさの微調整」工程に移行し、撮像された第1基準画像に基づいて第2撮像部である電子線撮像部との位置合わせを行う。なお本明細書において位置合わせとは、異なる撮像部で撮像された画像間のずれの補正を意味し、座標や大きさ(倍率)の補正を含む。図14の例では、撮影した光学式カメラの画像をSEMの座標系にあわせるため、座標及び大きさのずれを補正する。補正項目としては大きさ、位置(オフセット)、回転のずれ、歪み等の補正が挙げられる。なお図14の例では、歪みの補正は行っていない。ただ、SEMとTEM等、使用される撮像部の種別や観察目的に応じて、補正項目を適宜変更することも可能であることはいうまでもない。またこの例では、SEMの座標軸に光学式カメラの座標軸を合わせる構成としている。すなわち、SEMの座標軸を固定した上で、光学式カメラで撮像された第1基準画像をSEMの座標軸と一致させるように、第1基準画像の位置や傾き、大きさを調整している。この構成では、SEMの座標軸を基準とし、かつ撮像済みの光学画像をソフトウェア的に調整するのみで、2つの異なる撮像部の位置合わせを行うことができ、簡単かつ安価に実現できる利点が得られる。特に、倍率レンジが異なる撮像部の場合は、仮に高倍率側の撮像部に多少のずれや歪みがあっても、低倍率の撮像部を高倍率の撮像部に合わせることで、このようなずれが問題となり難い。
また、光学式カメラの精度が高く設置条件が安定している場合や要求される精度が高くない場合等は、位置合わせ作業を一度行うのみでも足りる。この場合は各電子顕微鏡の初期設定として位置合わせ作業を行い、その補正量を記憶しておくことで、常に位置合わせがなされた状態でSEM画像と光学カメラ像とを切り替えて表示でき、観察の度に位置合わせ作業を行う必要を排除でき、さらに使いやすい環境が実現できる。一方で、採用される撮像部の種別や精度、観察目的等に応じて、両方の撮像部の座標軸を所定の基準座標に一致させるよう構成することもできる。これによって2つの撮像部に対して調整作業を行う手間がかかるものの、より厳密な位置合わせが可能となる。
(補正部90)
電子線撮像部42及び光学撮像部44で撮像される観察画像の位置合わせは、補正部90により行われる。ここでは、補正部90として座標位置の補正を行う位置補正部91、大きさの補正を行う大きさ補正部92、回転(傾き)の補正を行う回転補正部93を備えている。図14の例では、位置補正部91は表示領域の周囲で縦横辺に、大きさ補正部92及び回転補正部93は表示領域の左側に、それぞれ設けられる。これらの補正部90はスライダ状に構成されており、ユーザはスライダを直接操作して各補正項目の補正量を感覚的に調整できる。ただ、数値を指定して補正する方式、あるいはマウスのドラッグやホイールボタン等で調整可能とする方式も可能であることはいうまでもない。
(ガイド部94)
補正部90を用いた位置合わせ作業を容易にするために、本実施の形態では基準位置を示すガイド部94を設けている。ガイド部94は、第1基準画像K1に含まれる何らかの第1基準パターンと、第2撮像部であるSEMで同倍率にて同視野の第2基準画像を撮像した場合に、この第2基準画像に含まれることとなる第2基準パターンとを一致させるために、予めSEMで撮像された第2基準画像における第2基準パターンの位置を、表示領域上で第1基準画像K1に重ねて表示するものである。なお、上述の通り第1基準画像K1の撮像時における倍率は、第1基準パターンが含まれる倍率に設定される。逆に、第1基準画像K1に含まれるパターン中から第1基準パターンを選択することもできる。また第2基準画像は、実際に撮像する必要はなく、第2基準画像を撮像した際に第2基準パターンが存在するであろう位置に、第2基準パターンと合致するガイド部94を表示させれば足りる。補正部90は、第2基準パターンの位置を予め記憶しておき、第2基準パターンに沿ってガイド部94を表示させる。
図14の例では、表示部28の表示領域上にガイド部94としてグリッド線を重ねて表示し、このグリッド線に第1基準パターンを合わせるように補正部90を操作することで、位置合わせを行う。ここでは、試料台33の枠のパターンをガイド部94として利用している。具体的には、図14に示すように試料台33の水平端に相当する水平線94Aを青色の実線でガイド部94として表示し、第1基準画像K1に表示された第1基準パターンである試料台33の水平端がガイド部94と一致するように、補正部90を操作する。さらに、円形の試料ホルダ35の枠のパターンもガイド部94として利用している。具体的には、図14に示すように試料ホルダ35の外枠の円環状に沿う形状に赤色の実線と波線の同心円94Bで表示し、第1基準パターンである試料ホルダ35の外枠の円環状をこのガイド部94に一致させるよう補正部90を調整する。このように、複数のパターンを組み合わせたガイド部94を利用することで、位置合わせ作業を容易にできる。特に、水平方向や垂直方向、円形等のパターンを組み合わせることで、基準位置を合わせ易くできる。また複数のパターンを組み合わせる場合は、各パターンの表示色や線種(実線、波線、二重線等)を変化させることで、各パターンの区別を容易にできる。
また、以上のように試料台33や試料ホルダ35といった、SEMで使用される部材を位置合わせ用の基準パターンとして利用することで、特別なガイド部材を付加することなく汎用の電子顕微鏡に本実施の形態を容易に適用できる。ただ、別途ガイド部材を用意する構成としてもよく、例えば位置合わせが容易な形状に形成された標準試料をセットし、これに基づいて位置合わせを行うように構成してもよい。この方法であれば、規格外や特殊な形状の試料台33を使用するSEM等においても本発明を適用できる。また、試料台33や試料ホルダ35に刻印等を形成して、これを基準パターンとすることもできる。
なお、図14で示したSEMの例では試料ホルダ35として、標準的に使用されるφ32mm又はφ15mmのステージを使用可能である。したがって、いずれの試料ホルダ35を使用しても位置合わせが行えるように、両方の試料ホルダ35に対応したガイド部94を表示させている。上述の通り、いずれのパターンをガイド部として利用するかに応じて、基準画像の倍率が決定され、あるいは倍率に応じてガイド部は設定される。図14の例ではガイド部94となる試料台33の枠及び試料ホルダ35が第1基準画像K1に含まれるように、光学式カメラの視野及び倍率が設定される。好ましくは、光学撮像部である光学式カメラをセットしたデフォルトの姿勢及び倍率で、光学式カメラで撮像される対象物をガイド部94の基準パターンとして利用することで、余分な操作を省いて確実にガイド部94を第1基準画像に含めることができる。
また手順説明部78は、図14の例ではイメージ領域116として表示部28の左側に第1基準画像K1を表示しつつ、説明領域118として左下部に、各ガイド部94の意味や説明を表示している。これにより、ユーザは行うべき操作の意味や目的を容易に把握できるので、操作に不慣れであっても迷うことなく必要な動作を行うことができ、確実に位置合わせ作業をこなすことができる。また説明領域118で表示されるガイド部94のイメージを、補正部90で調整した補正量に連動させて変化させることもできる。すなわち、赤線等で表示されるガイド部94と、第1基準画像K1に表示される基準パターンの対応関係をリアルタイムに変化させる構成としてもよい。これによって、両者の位置関係が現在どのようになっているかを容易に把握でき、必要な補正量をユーザはイメージ領域116のみならず説明領域118の図示でも確認することができる。特に説明領域118の図示では、余計な画像が表示されず必要なガイド部94と基準パターンのみが表示されているため、これらの位置関係を確認しやすい。さらに、図14の例ではイメージ領域116に第1基準画像K1とガイド部94とを重ねて表示しているが、イメージ領域116における表示を、第1基準画像自体でなく、第1基準画像から基準パターンを抜き出した状態で表示させることもできる。第1基準画像から基準パターンを抜き出すには、イメージからベクトル情報を抽出する画像処理が利用できる。なお、この例のように説明領域にイメージを表示することも可能であることはいうまでもなく、逆にイメージ領域に説明文を付加することも可能である。
なお、以上の位置合わせ作業と第1基準画像の撮像工程は、入れ替えて行うこともできる。すなわち、先に位置合わせを行った状態で明るさの調整を行い、第1基準画像を撮像することもできる。
(「撮影開始」工程)
以上のようにして位置合わせ作業を終了すると、第1撮像部である光学式カメラを外して第2撮像部であるSEMの観察に移行できる状態とする。図14の画面から「次へ」ボタン128を押下すると、図15に示す「撮影開始」工程の画面に移行する。図15は、第1基準画像の位置合わせの完了とSEM観察準備の画面であり、光学式カメラでの撮影、補正作業を終了し、SEM観察の準備を行う。ここでは、手順説明部78は光学式カメラをSEMから取り外す手順を説明している。具体的には、イメージ領域116にSEMの操作手順を順番に示すと共に、説明領域118で光学式カメラを試料台33から引き抜き、指示棒を戻してビューポートに取り付けること、及び試料台33を元に戻して真空引きを開始する操作を指示している。以上の作業が終了すると、SEM観察画面に移行する。
(SEM観察)
図15の画面から「完了」ボタン130を押下すると、図16の画面に移行する。図16は、第2撮像部であるSEMのマニュアル観察モードの画面を示している。ここでは、第1表示領域に位置合わせされた状態で第1基準画像K1を表示している。また左上の第2表示領域にも同じ第1基準画像が広域画像として表示されている。第2表示領域上から、第1表示領域47における観察位置が確認でき、また第2表示領域上からも観察位置を指定して、指定された位置に第1表示領域47の表示をジャンプさせることもできる。ユーザは、この状態から視野探しを行ってSEM観察に移行し、電子顕微鏡画像を撮像する。
ここでは、後述するように表示倍率を上げていくと、図17に示すように第1表示領域47の表示を自動的に電子顕微鏡画像Dに切り替えることができる。一方で、SEM観察中にSEM観察の最低倍率まで倍率を下げた場合には、第1表示領域47で表示される電子顕微鏡画像が図16に示すように第1基準画像K1に自動的に切り替わるように構成することもできる。
以上の手順説明部78による誘導は、操作終了後に次の画面に移行するように誘導するというウィザード形式を採用した。ただ、この方式に限られず、例えばフローチャートを表示して各工程毎に必要な処理を説明していく方式や、設定項目やボタンにマウスカーソルを合わせたときに次の手順を表示するポップアップ方式、ツールチップ方式やバルーン表示による説明、メッセージ領域やステータスバーにおける説明、仮想アシスタントによる説明等、種々の方式を単独もしくは組み合わせて採用できる。また、各工程で操作が必要な項目のみ操作可能とし、操作が不要な項目については設定変更できないような制限を課して誤動作を防止することもできる。さらに各工程の操作は、手動で行う他、自動化できる項目は自動化してもよい。
(視野探し作業)
観察対象の試料の視野探しは、一般に低い倍率から徐々に高倍率に倍率を上げながら行われる。この場合、低倍率で撮像された光学画像を広域画像として利用できる。光学カメラ等の光学撮像部44は、電子線撮像部42に比べてより低倍率での撮像が可能であり、低倍率画像は視野が広く情報量が多いので、視野探しには好適に利用できる。一方で、光学画像は高倍率での撮像に限界があるため、ある段階で電子顕微鏡画像に切り替える必要がある。光学撮像部44から電子線撮像部42に切り替える時に、視野を見失わず、違和感が無いようにするためには、できるだけ倍率を一致させることが好ましい。
一方で、この切替は可能な限り低倍率の段階で行うことが好ましい。なぜなら、光学画像と電子顕微鏡画像の間には多少の光軸ずれがあるが、低倍率で切替えた方が視野範囲に対するずれ量を小さくできるからである。また光学画像と電子顕微鏡画像とでは画像の質や見え方が異なるので、違和感が生じて慣れないと同じ視野を観察していても気付かないことがある。また低倍率で切り替えた方が視野が広くなり、2つの画像の共通点を認識するための比較ポイントが多くなるため2つの画像の対応関係が分かり易いという利点もある。逆に、肉眼で見えないような高倍率で切り替えると、2つの画像が切替わった時に、どの部分がどの部分に相当するのかの対応関係が分かり難くなる。さらに、光学カメラは高倍率の観察が不得手であり、高倍率で表示しようとすれば画質が低下することとなる。一例として、図19に倍率150倍で表示した光学画像K、図20に同じく倍率150倍で表示した電子顕微鏡画像Dの例を示す。図19と図20は、同じ試料を倍率で表示しているが、同じ画像であるかどうかの確認が極めて困難である。このように、光学画像から電子顕微鏡画像への切り替えを高倍率で行うことは適切でなく、可能な限り低倍率で行うことが好ましい。
このように、光学画像と電子顕微鏡画像の切り替え時には、両者の表示倍率の差が開いていたり、あるいは高い倍率で切替えると、2つの画像の連続性のイメージが掴みにくくなり、その結果試料サンプル上の目標ポイントを見失いやすくなり、視野探しに支障となるおそれがある。このような問題を解決するには、光学画像と電子顕微鏡画像とを可能な限り同じ倍率で切り替えるようにすることが挙げられる。また、同じ倍率での切り替えに限られず、近い倍率での切り替えも可能である。特に表示倍率を連続的にズームアップしている場合は、同じ倍率で切り替える場合も、倍率を数段階飛ばした(若干倍率の開いた)離散的な倍率に切替える場合でも違和感が少ないので、いずれにも適用できる。
さらに、光学画像と電子顕微鏡画像の倍率制御を関連付けて行うことで、個別の倍率設定を容易にできる。従来は、光学撮像部と電子線撮像部とは個別に表示倍率を設定する必要があったため、光学画像と電子顕微鏡画像の表示倍率を一致させようとすれば、ユーザが手動で各倍率設定部を調整する必要があった。これに対して、本実施の形態では、切替部46が自動的に電子顕微鏡画像の表示倍率を光学画像に応じて設定することができる。すなわち、ユーザが光学画像の表示倍率を光学倍率設定部611Bで調整する一方、光学画像から電子顕微鏡画像への切り替え時には、切替部46が自動的に電子顕微鏡倍率設定部611Aを調整して、光学画像の表示倍率と同じ、あるいはこれに近い値に調整することができる。これによって、ユーザは電子線画像の倍率設定を行うことなく、切り替え時には自動で最低な倍率に調整された電子線画像を表示部28にて表示させることができる。
また、たとえ同じ倍率で表示が切替わるように設定したとしても、電子線撮像部で設定可能な最低倍率で電子顕微鏡画像に切替えることは困難であった。それは、電子線撮像部で観察可能な倍率は電子顕微鏡の観察条件によって変化するからである。一例として、SEMにおける電子銃の加速電圧と、観察試料及び対物レンズ19間のワーキングディスタンス(WD)との関係で、SEMで観察可能な最低倍率を表1に示す。(単位:倍)
この表1に示すように、SEMは、ワーキングディスタンスが長いほど、また電子銃の加速電圧が低いほど、より低倍率での表示が可能となる。このため、観察中にSEMの最低表示倍率は随時変動し、これを把握することは困難である。そこで、本実施の形態では、倍率演算部72が観察条件に応じてその時点における電子線撮像部42で撮像可能な最低倍率を演算し、この倍率に基づいて切替部46が切り替え倍率を設定する。倍率演算部72は、観察条件設定部650で設定された観察条件に基づいて、最低倍率を切替倍率として取得する。この演算は、上記表1のような表を参照して行う他、計算式等から求めることもできる。演算部70は、光学倍率設定部611Bで設定された光学画像の表示倍率を監視し、この値が切替倍率になった時点で切替部46の切替処理等、所定の処理を行う、これにより、ユーザはこのような最低倍率の変動を意識することなく、観察条件に応じた最低倍率にて光学画像から電子顕微鏡画像に切り替えて表示することができ、視野探し作業をスムーズに行うことができる。
また、電子線撮像部42で取得可能な最低倍率を倍率演算部72に自動的に演算させることで、光学画像での観察中に、電子顕微鏡側が電子線撮像部42で観察可能な倍率に達したことがユーザに認識できるような制御を行う。例えば、光学画像での倍率拡大中に電子線撮像部42で観察可能倍率に達したとき、切替部46が自動的に電子顕微鏡画像に切り替える方法や、光学画像でズームアップ中に電子線撮像部42で観察可能倍率に達したとき、告知部74が表示部28の画面上に何らかのメッセージを表示する方法、又は光学画像でズームアップ中に電子線撮像部42で観察可能倍率に達したとき、倍率制限部76が光学画像がそれ以上の倍率に拡大表示しないように制限を設けてユーザに告知する方法、あるいは光学画像での観察中に、電子線撮像部42で観察可能倍率に達していない倍率で電子顕微鏡画像に切り替える場合は、電子顕微鏡画像を縮小表示するようにして同じ倍率で切り替わったように見せる方法等が利用できる。これにより、ユーザが切り替えのタイミングを意識しなくとも、切り替え可能な倍率に達した時点で必要な処理を行い電子顕微鏡画像への切り替えが促進されるので、操作し易い環境が実現される。
(切替部46)
切替部46が切替処理を行う様子を、図18、図21に基づいて説明する。図18は光学画像Kを第1表示領域47に表示し、倍率設定部611で表示倍率を拡大した状態を示している。第1表示領域47では光学倍率設定部611Bを倍率15倍に設定して光学画像Kを表示している。この状態で、電子線撮像部42の最低表示倍率に達していると切替部46が判断すると、図21に示すように自動的に第1表示領域47が光学画像Kから電子顕微鏡画像Dに切り替えて表示される。図21の例でも、倍率15倍で撮像された電子顕微鏡画像Dを表示しており、図18とほぼ同じ視野での画像が取得でき、ユーザは視野を見失ったり大きな違和感を感じることなく、引き続き電子顕微鏡倍率設定部611Aを操作して電子顕微鏡画像Dの倍率を調整することができる。なお切替部46は、電子顕微鏡画像Dの表示中に表示可能な最低倍率以下が電子顕微鏡倍率設定部611Aで指定された場合、自動的に光学画像Kに戻るように制御することもできる。
(告知部74)
次に告知部74の動作について、図22に基づき説明する。光学画像Kの観察時における表示倍率が、電子線撮像部42の最低表示倍率に達すると、告知部74は電子顕微鏡画像Dへの切替が可能であることを告知する動作を行う。告知動作は、ユーザに告知するための動作であり、例えば表示画面上にテキストやアイコン等でメッセージを表示する、音声案内や警告音、表示灯の表示、点滅、音声ガイド、振動等の手段が利用でき、またこれらを適宜組み合わせることもできる。図22の例では、第1表示領域47に、「SEM観察可能倍率」の告知メッセージ82を自動的に表示している。これによってユーザは図18の光学画像Kから図21に示すような電子顕微鏡画像Dへの表記切替を促されるので、電子顕微鏡切替ボタン616bを操作して手動で切り替えることができる。なお告知部74は、電子顕微鏡画像Dの表示中に表示可能な最低倍率以下が電子顕微鏡倍率設定部611Aで指定された場合、「SEM観察不可能倍率」等のメッセージを表示して光学画像Kに戻るようにユーザに促すこともできる。
(倍率制限部76)
さらに、倍率制限部76の動作について説明する。倍率制限部76は、光学画像Kの観察時において、光学倍率設定部611Bの表示倍率を電子線撮像部42の最低表示倍率以上に上げられないように制限を課す。これによってユーザは、電子顕微鏡画像Dへの切り替えを促され、速やかに電子線撮像部42での観察に移行するよう手動で撮像系を切り替えることができる。また、この際に倍率操作に制限がかけられていることを告知する動作を行うこともできる。例えば図23に示すように、「これ以上倍率を上げることができません。SEM観察に切り替えてください」と倍率制限メッセージ84を第1表示領域47が光学画像Kに表示する。これによってユーザにより確実に動作制限がかけられていることを伝えることができる。なお倍率制限部76も、電子顕微鏡画像Dの表示中においても、電子顕微鏡倍率設定部611Aをそれ以上低い倍率に設定できないように制限をかけたり、警告メッセージを表示する等して光学画像Kに戻るようにユーザに促すこともできる。さらに、このような制限状態を解除するための解除ボタン等を設けることも可能であることはいうまでもない。
(動作タイミングの設定)
なお、必ずしも電子線撮像部42で撮像可能な最低倍率を閾値として、電子顕微鏡画像から光学画像への表示切り替え等の動作を行う構成に限られない。言い換えると、電子線撮像部42の最低表示倍率と光学撮像部44の切替倍率とを必ずしも一致させる必要はない。例えば、最低倍率に対して切替倍率に一定のマージンを設定することが可能である。例えば、電子線撮像部42で撮像可能な最低倍率に対して、所定の比率を乗じた倍率を切替倍率とする。比率は、例えば電子線撮像部42への負荷の軽減や表示速度の向上、表示部28の解像度等の観点から設定される。これにより、電子顕微鏡の仕様や性能、使用条件等に応じた柔軟な切替設定を行うことが可能となる。
さらに、光学倍率設定部611Bで設定可能な表示倍率と、電子顕微鏡倍率設定部611Aで設定可能な表示倍率とが重複しない場合においても、最低倍率と切替倍率とを異なる値とできる。図24に、電子線撮像部42で表示可能な倍率すなわち電子顕微鏡倍率設定部611Aで設定可能な倍率の領域(電子顕微鏡表示可能領域)と、光学撮像部44で表示可能な倍率すなわち光学倍率設定部611Bで設定可能な表示倍率の領域(光学表示可能領域)との関係を示す。例えば、図24(a)に示すように電子線撮像部42で表示可能な最低倍率が、光学倍率設定部611Bで設定可能な最高の表示倍率よりも低い場合は、最低倍率を切替倍率として光学撮像部44から電子線撮像部42の表示に切り替えることができる。
一方、電子線撮像部42の観察条件によっては、図24(b)に示すように、電子線撮像部42で表示可能な最低倍率が、光学倍率設定部611Bで設定可能な最高の表示倍率よりも高い場合は、電子顕微鏡画像を光学画像の表示倍率と完全に一致させることができない。この場合は、光学画像の最高倍率に達した時点で、これを切替倍率として電子顕微鏡画像の最低倍率での表示に切り替える。これにより、切り替え時に倍率が連続的に変化せず離散的な表示となるものの、表示倍率の差を最小限に抑えて切り替え時の違和感を可能な限り低減することができる。特に、電子顕微鏡での観察においては表示倍率を連続的に上げる場合に限られず、段階的に倍率を上げる場合があり、このような離散的な表示倍率の拡大時においてはこのような倍率の変化による違和感が少ない。また、このように倍率が離散的に大きくなる場合には、同一倍率での切り替えができない旨のメッセージを表示部28に表示したり、音声や点滅、振動等の警告動作を発してユーザに告知することも可能である。
さらに、図24(b)に示すように光学表示可能領域と電子顕微鏡表示可能領域との重複がない場合や、光学画像での観察中に電子線撮像部42で表示可能倍率に達していない低倍率で電子顕微鏡画像に切り替える場合に、電子顕微鏡画像を縮小表示することで光学画像の倍率を一致させることもできる。この場合は、光学画像の表示倍率と電子顕微鏡画像の表示倍率との比率に基づいて電子顕微鏡画像を縮小する結果、電子顕微鏡画像の表示領域が狭くなる。狭くなった表示領域は光学画像に重ねて中心に配置される。この例を図18及び図25に基づき説明する。図18は倍率15倍の光学画像Kを表示しており、図25は最低倍率である30倍の電子顕微鏡画像を50%に縮小して、実質15倍で表示すると共に、光学画像Kの中心に貼り付けて表示したものである。このように、光学画像Kが部分的に電子顕微鏡画像D1に置き換えられたように表示されることとなる。この状態から、電子顕微鏡倍率設定部611Aを操作して電子顕微鏡画像D1の表示倍率を上げていくと、徐々に電子顕微鏡画像D1の領域が大きく拡大されていき、最終的に電子線撮像部42で表示可能な電子顕微鏡画像の最小表示倍率(図25の例では30倍)となった時点で、すべての表示領域が電子顕微鏡画像D1で置換され、画面全体の視野が電子顕微鏡画像D1になる。これによって、光学撮像部44から電子線撮像部42への切り替え時に表示倍率が離散的に大きくなる事態を回避し、切り替えの違和感を低減できる。
さらに上記の方法は、切替倍率での切り替えによらず、ユーザが任意のタイミングで切替ボタン616を操作して画像表示を切り替える場合にも適用できる。すなわち、ユーザが光学画像を観察中に所望のタイミングで電子顕微鏡画像を参照したい場合に、表示中の光学画像の表示倍率と等しい電子顕微鏡画像を電子線撮像部42が自動的に取得して表示する。この際、光学画像の表示倍率が電子線撮像部42で撮像可能な最低倍率よりも低い場合は、上記の通り電子顕微鏡画像を縮小して、擬似的に光学画像の表示倍率と同じ倍率になるように表示することができる。ただ、この構成においても電子顕微鏡画像の表示倍率と光学画像の表示倍率との差が大きい場合は、電子顕微鏡画像の表示領域が小さくなるため、ある程度の表示領域(例えば表示領域の1/10程度)が確保できる場合に限って上記の電子顕微鏡画像縮小を実行し、それ以外の場合は画像表示ができない旨の表示等を行うように構成してもよい。以上の方法によれば、電子線撮像部42で撮像可能な最低倍率の制限をある程度緩和でき、使い勝手のよい電子顕微鏡観察が実現できる。
なお、光学倍率設定部611Bで設定可能な表示倍率は一般に光学撮像部44で表示可能な倍率範囲全体であるが、上述したマージン設定の観点から、設定可能な倍率を表示可能な倍率よりも狭くすることもできる。これは、機械的な負担や負荷を考慮して設定される場合の他、ユーザに対するガイダンス的な意味合いから設定される場合も含む。例えば、後述するように光学撮像部44での表示から電子線撮像部42での表示に切り替え可能な倍率となった場合に、倍率設定動作に制限を設ける場合が該当する。
また、光学画像と電子顕微鏡画像との違和感を軽減するために、電子画像に着色する機能等を付加することもできる。着色機能は、光学画像中から任意の色を選択して色情報を抽出し、電子顕微鏡画像に着色処理を行う。これにより、濃淡のみの電子顕微鏡画像に素材感を表現することができる。また、仮想的に配置した光源から光反射状態を擬似的に再現する機能や、高さに応じて等高線状に色を変化させる機能等を備えることもできる。
なお、本実施の形態では第1撮像部を光学式カメラ、第2撮像部をSEMの電子線撮像部としているが、両者を入れ替えることも可能であることはいうまでもない。また、光学式カメラとSEMの組み合わせに限られず、(1)デジタルマイクロスコープやデジタルカメラと、SEMやTEMといった赤外や可視領域の波長を用いる光学観察装置と電子顕微鏡の組み合わせ、(2)デジタルマイクロスコープやデジタルカメラとAFMといった赤外や可視領域の波長を用いる光学観察装置と走査型プローブ顕微鏡との組み合わせ、あるいは(3)SEMとTEMといった異なる電子顕微鏡同士の組み合わせ等とすることもできる。さらに、同じタイプの撮像部を組み合わせることも可能であり、例えば表示可能な倍率レンジの異なるSEM同士の組み合わせにも適用できる。さらに、本発明は2種の撮像部の組み合わせに限られず、3種以上の撮像部を組み合わせた電子顕微鏡とすることも可能であることはいうまでもない。