まず、空気調和機の全体構成について図1〜図4を用いて説明する。図1は実施例の空気調和機の構成図である。図2は空気調和機の室内機の断面図である。図3は空気調和機の室外機の断面図である。図4は空気調和機の冷媒回路図、(a)は冷房・除湿運転時の冷媒の流れ方向を示す図、(b)は暖房運転時の冷媒の流れ方向を示す図である。
空気調和機1は、室内機2と室外機6とを接続配管8で繋ぎ、室内を空気調和する。室内機2は、筐体ベース21の中央部に室内熱交換器33を置き、熱交換器33の下流側に熱交換器33の幅と略等しい長さの横流ファン方式の室内送風ファン311を配置し、露受皿35等を取り付け、これらを化粧枠23で覆い、化粧枠23の前面に前面パネル25を取り付けている。この化粧枠23には、室内空気を吸い込む空気吸込み口27と、温湿度が調整された空気を吹出す空気吹出し口29とが上下に設けられている。室内熱交換器33の空気流下流には室内送風ファン311が設けられ、室内送風ファン311が回転すると室内空気が室内機2に設けられた空気吸込み口27から室内熱交換器33,室内送風ファン311を通って室内送風ファン311の長さに略等しい幅を持つ吹出し風路290に流れ、吹出し風路290途中に配した左右風向板295で気流の左右方向を偏向され、更に、吹出し口29に配した上下風向板291,292で気流の上下方向を偏向されて室内に吹出す。
筐体ベース21には、室内送風ファン311,フィルタ231,231′、室内熱交換器33,露受皿35,上下風向板291,292、左右風向板295等の基本的な内部構造体が取り付けられ、これらの基本的な内部構造体は、筐体ベース21,化粧枠23,前面パネル25からなる筐体20に内包され室内機2を構成する。
室外機6はベース61に圧縮機75,室外熱交換器73などが搭載され、外箱62に覆われ、室外送風機63で外気を室外熱交換器73に流し、内部を流れる冷媒と熱交換し、送風機カバー635を通って機外に吹出させる。
冷房・除湿運転時には図4(a)のように、冷媒を圧縮機75,冷媒流路切換弁72,室外熱交換器73,冷暖房絞り装置74,除湿加熱器332,除湿絞り装置34,除湿冷却器333,冷媒流路切換弁72の順に流して圧縮機75に戻し、冷房・除湿運転にあわせて冷暖房絞り装置74,除湿絞り装置34を適宜に絞りまたは開放して冷媒を制御し、圧縮機75,室外送風機63,室内送風ファン311を適切な回転数で運転して周知の冷房・除湿運転を行う。
また、暖房運転時には図4(b)のように、冷媒流路切換弁72を切換えて、冷媒を逆向きに流し、同様に周知の暖房運転を行う。
また、前面パネル25の下部一側には、運転状況を表示する表示装置397と、別体のリモコン5からの赤外線の操作信号を受ける受光部396とが配置されている。
化粧枠23の下面に形成される空気吹出し口29は、前面パネル25との分割部に隣接して配置され、奥の吹出し風路290に連通している。2枚の上下風向板291,292は、閉鎖状態で、吹出し風路290をほぼ隠蔽して室内機2の底面に連続する大きな曲面を有するように構成されている。これらの上下風向板291,292は、両端部に設けた回動軸を支点にして、リモコン5からの指示に応じて、駆動モータにより空気調和機1の運転時に所要の角度回動して空気吹出し口29を開き、その状態に保持する。空気調和機1の運転停止時には、これらの上下風向板291,292は空気吹出し口29を閉じるように制御される。
左右風向板295は、下端部に設けた回動軸を支点にして駆動モータにより回動され、リモコン5からの指示に応じて回動されてその状態に保持される。これによって、吹出し空気が左右の所望の方向に吹出される。なお、リモコン5から指示することにより、空気調和機1の運転中に上下風向板291,292,左右風向板295を周期的に揺動させ、室内の広範囲に周期的に吹出し空気を送ることもできる。
可動パネル251は、下部に設けた回動軸を支点として駆動モータにより回動され、空気調和機1の運転時に前側空気吸込み部230′を開くように構成されている。これによって、室内空気は、運転時に前側空気吸込み部230′からも室内機2内に吸引される。空気調和機1の停止時には、前側空気吸込み部230′は閉じるように制御される。
室内機2は、内部の電装品ボックスに制御基板を備え、この制御基板にマイコンが設けられる。このマイコンは、室内温度センサ,室内湿度センサ等の各種のセンサからの信号を受けると共に、リモコン5からの操作信号を受光部396を介して受ける。このマイコンは、これらの信号に基づいて、室内送風ファン311,可動パネル駆動モータ,上下風向板駆動モータ,左右風向板駆動モータ等を制御すると共に、室外機6との通信を司り、室内機2を統括して制御する。
フィルタ231,231′は、吸い込まれた室内空気中に含まれる塵埃を取り除くためのものであり、室内熱交換器33の吸込側を覆うように配置されている。露受皿35は、室内熱交換器33の前後両側の下端部下方に配置され、冷房運転時や除湿運転時に室内熱交換器33に発生する凝縮水を受けるために設けられている。受けて集められた凝縮水はドレン配管37を通して室外に排出される。
次に、上下風向板について図5,図6を用いて説明する。図5は室内機の冷房・除湿運転時の断面図である。図6は室内機の暖房運転時の断面図である。
上下風向板は前述のように上側上下風向板291,下側上下風向板292から構成される。本明細書では主に上側上下風向板291について述べるので、単に上下風向板と記した場合は上側上下風向板を表し、下側上下風向板について述べる時は下側上下風向板と記すこととする。
上下風向板291は空気吹出し口29の上部の横幅いっぱいに設けられ、上下風向板駆動モータ(図示せず)により、吹出し空気を下吹出し、あるいは水平吹出しなどに偏向する。
空気調和機を使用しない運転停止時は図2のように、上側上下風向板291,下側上下風向板292,可動パネル251は制御装置により空気吹出し口29を閉じるように制御される。これにより、上側上下風向板291は吹出し風路290の上方拡大部290eの前方の位置に回動し収納され、風路上方拡大部290eを遮蔽し、下側上下風向板292と協働して吹出し口29を閉じる。
この風路上方拡大部290eのほぼ中央に後述する赤外線検知装置14が設けられている。
このとき、上側上下風向板291は空気調和機の前面と底面の交差部に位置するため、外面となる外側風向面は滑らで曲率の大きい曲面にして空気調和機の外形に合致させる。このようにすることにより、上側上下風向板291、下側上下風向板292は外面となる風向面で空気調和機の前面から底面にかけての外形を連続的に滑らかに形成することができる。
このため、空気調和機を使用しないとき、空気調和機の目とも言うべき赤外線検知装置14も上側上下風向板291によって目隠しされ、空気調和機の外観は不必要な凹凸の無い、柔らかな落ち着いた形状となり、室内の雰囲気を乱すことがない。
空気調和機を冷房運転する時には図5のように上側上下風向板291,下側上下風向板292は吹出し風路290の上壁290a,下壁290bと略平行な姿勢または水平な向きにして使用される。また、吹出された冷風が直接、在室者に当って不快感を生じさせる場合は、適宜、上下風向板291,292や左右風向板295の方向をリモコン5で変更し、在室者の周囲を快適な温湿度に保つ。
極弱い冷房または暖房運転を行う時に上側上下風向板291を図20のようにやや上向きにし、下側上下風向板292を破線で示したようにほぼ閉じる姿勢にし、吹出し風路290の下流に設けた上方に拡大する上方拡大部290eに吹出し気流を流す。これにより、吹出し空気の一部が極弱い風となって上方拡大部290eを通ってふんわりと室内に拡散し、微弱な冷房または暖房を行う。
更に、上方拡大部290eを利用して、吹出した風をすぐさま、吸込み口27から吸込ませるショートサーキット運転を行うことで、熱交換器の乾燥運転や空気調和機内部の脱臭運転などの空気調和機のメンテナンス動作を行わせることも可能となる。
空気調和機を暖房運転する時には、上下風向板291,292は図6のようにほぼ垂直に近い姿勢にして使用される。このようにすることにより、吹出し風路290を流れる温風は空気調和機から下方に向かって吹出し、床面近くまで到達し、足もと近くを暖め、室内を快適な環境にする。
次に、本発明の空気調和機が搭載している赤外線センサについて図7〜図14を用いて説明する。図7は室内機の外観斜視図である。図8は室内機の上下風向板を開いた外観斜視図である。図9は室内機に内蔵された赤外線検知装置の構成図である。図10は検知装置のフレネルレンズ配置図である。図11は検知装置の検知範囲図である。図12は検知装置の外観図、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は取付状態側面図である。図13は検知装置による検知区域図である。図14は検知装置の回路構成図である。
一般に、空気調和機に人検知装置を取り付ける場合、その主たる目的は在室者が居ない時に空気調和機を省エネ運転または、停止し、在室者が少ない時には、その少ない人に向けて風を送るなどの専用運転をして省エネを図ると共に人の移動に伴う煩わしい操作を回避することである。
これを実現するため、焦電型の赤外線センサなどを使用した人検知センサを複数個つけて、室内を複数の領域に区分し、在室者が空気調和機から見てどの位置に居るかを検知するようにしている。この場合、人検知センサの検知区域の間に非検知領域ができないように、人検知センサの検知区域が互いに重なるように設置することが行われている。
このとき、唯一の人検知センサが反応した場合は、その人検知センサの検知区域に人が居ることが判るが、検知区域が重複する複数の赤外線センサが反応した時には、重複領域に集中して人が居る場合と、互いの排他的領域に人が分散して居る場合と、重複領域と片方の排他的領域に人が分散して居る場合と、重複領域と双方の排他的領域に人が分散して居る場合とが考えられ、これらの領域を区別するため、センサの数を増やすことや他の方式のセンサを取り付けて、互いの能力不足部分を補完することが行われている。
実施例では図8のように赤外線検知装置14を前述の吹出し風路上方拡大部290eの長手方向の中央部に設け、運転停止時には図7のように上側上下風向板291で室内から遮蔽し、室内に違和感を与えないようにした。
赤外線検知装置14は、図9に示すように赤外線センサ410を台座415を介して、基板416に搭載しフレネルレンズ417を被せ、これを左右に配して図12のように構成する。
赤外線センサ410は平滑な受光面411を持ち、受光面411の対向する方向が主検知方向となり、受光面411の中心から主検知方向に向かう中心軸412は検知感度が最も良好な方向となり、その周りに検知感度の良好な検知範囲が広がる。
左右の赤外線センサ410a,cは各前記台座415により、中心軸412の方向が異なるように搭載され、当然その主検知方向も異なるため、図11のように広角に検知範囲を構成でき、さらに赤外線検知装置14を図12(d)のように俯角をもって実装することにより、室内床面の大半をその視野内に収めることができる。
フレネルレンズ417は図10に示すように半球面を成す如く成型され、半球面は複数のセグメントに分割され、各セグメントには室内の特定の方向から来る赤外線を半球面の中心部に集めるように小フレネルレンズが形成されていて、この半球面の中心部に赤外線センサ410の受光面411が配置されるように構成されている。
この小フレネルレンズが赤外線を集光する方向を、座った時の顔の高さ付近の床と平行な面で示すと図13のような検知スポットの分布になり、この範囲を人が移動していくつかの検知スポットを出入りすると赤外線センサ410がこれを検知する。実施例では、家庭の室内で使われることを想定し、赤外線センサ410から6m離れた位置でのひとつの検知スポットの大きさが凡そ人体の大きさと同等(幅0.3〜0.5m,高さ1.6〜1.8m)になるように設定した。
実施例では赤外線センサ410として、焦電型の赤外線センサを用いる。赤外線検知装置14は図14に示すように左人検知センサ140aと右人検知センサ140cと演算制御部132からなり、左右の人検知センサ140a,cは赤外線センサ410a,c,赤外線センサ410a,cの出力を増幅する増幅器130,人の動きを抽出する帯域フィルタ,その出力をデジタル信号へと変換するコンパレータ131や前述の台座415,フレネルレンズ417などから構成されている。
一般に、人が覚醒している時には、生理的に静止し続けることはできず、数分の中で意識的にあるいは無意識のうちに手,脚,顔など体の一部を動かしている。
人検知センサ140a,c内の赤外線センサ410a,cはこの動きを検知し、信号を出力する。赤外線センサ410a,cからの出力は人検知センサ140a,cで、演算制御部132での処理に適した形態に変換されて演算制御部132に読み込まれ、演算処理の結果に応じて、空気調和機の能力、風向などの制御が行われる。
上記のように、赤外線検知装置14を構成すれば、前記焦電型赤外線センサ410a,cから環境や人体の存在,人体の活動に伴ったアナログ信号が出力され、前記増幅器130で増幅され、前記帯域フィルタで人の活動に主として含まれる1Hz近辺の信号が抽出され、前記コンパレータ131により、微小な信号やノイズを除去され、デジタル化された活動パルスに変換される。
活動パルスに変換された信号は前記演算制御部132の読み込みポートから前記演算制御部132入力され、演算処理される。その結果により、人体が存在すると判断した領域に対し、前記上下風向板291,292、左右風向板295を向け、或いは、避けて室内送風ファン311によって、調和された空気が送風される。
次に、室内の人の移動による赤外線センサ410からの信号の変化について図15〜図17を用いて説明する。図15は室内に人が入室する時の動きを示す図である。図16は図15の場合の人検知センサの波形出力、(a)は左赤外線センサ出力のアナログ波形、(b)は左人検知センサ出力のデジタル波形、(c)は右赤外線センサ出力のアナログ波形、(d)は右人検知センサ出力のデジタル波形である。図17は人検知センサの検知領域区分図である。
図15に示すように、室902に人907が位置Pから入室し、位置Q,Rを経て位置Sまで移動したとき、人検知センサ140aの赤外線センサ410aは図16(a)のようなアナログ信号を出力する。人検知センサ140aはこのアナログ出力の絶対値が一定のレベルを越えた時に、活動パルス(実施例ではHiパルス)を出力するように、このアナログ出力を増幅器130,コンパレータ131などで処理して、図16(b)のようなデジタル波形に変換し演算制御部132に出力する。赤外線検知装置14の演算制御部132内部でこのデジタル波形を一定周期で読込み、活動パルスが検出された回数を計数する。所定時間の間の検出回数が、人有りとする在閾値以上の時に、例えば位置Q,Rに人が居る時に、演算制御部132は左人検知センサ140aが人を検知した判断する。同様に赤外線センサ410c,右人検知センサ140cも図16(c),(d)のように信号を出力し、同様に、例えば位置R,Sに人が居る時に、演算制御部132は右人検知センサ140cが人を検知した判断する。
上記の説明では、説明を簡潔にするため、あたかも、人が移動する瞬間毎に人有りの判断が下されるように書いたが、実施例では前記所定時間を30秒にしてあるので、入室と移動の間のほんの数秒の反応だけでは人有りの判断は下されなく、人が移動をやめてからの自然な動きを感知しての反応が大勢を決することになる。このように、前記所定時間を適切に選ぶことにより、単に通過するだけの時に、人有りと判断し、不要な制御をする恐れを大幅に減らすことができる。また、赤外線センサ410を2個使用することで、検知区域を左人検知センサ140aだけが検知する領域、右人検知センサ140cだけが検知する領域、左右の人検知センサ140a,cが検知する領域の3つに区分することができる。
なお、実施例では活動パルスをHiパルスにしているが、逆に、室内に人が不在の時の人検知センサ140の出力をHiにし、人が活動したときの出力をLoにして、Loの活動パルスの検出回数を計数するようにしても良いのは勿論のことである。
赤外線検知装置14を室内機2に取り付け、この検知区域を簡単のため、床面の高さまで下げて図17のように表し、上述のように室内を左右の人検知センサ140a,cが単独で検知する検知領域610A,C、左右の人検知センサ140a,cが重複して検知する検知領域610ACに区分する。なお、説明を簡略にするため領域610Aを(1)、領域610Cを(2)、領域610ACを(3)と略記する場合もある。
左人検知センサ140aのみが検知した場合は、検知領域610Aに人体が存在し、右人検知センサ140cのみが検知した場合は、検知領域610Cに人体が存在し、左人検知センサ140aと右人検知センサ140cの両方が検知した場合は、検知領域610AC又は検知領域610Aと610Cと610ACに人体が存在していると推定する。
ここで、領域の構成について図18を用いて説明する。図18は領域の説明図、(a)はAとCの和の領域、(b)はAとCの排他和の領域、(c)はAからCを除外した差の領域、(d)はCからAを除外した差の領域、(e)はAとCの積の領域である。
実施例では人検知センサ140の出力から人が居ると推定する領域を、左右の人検知センサ140a,cの検知区域の和,排他和,差、又は積で構成する。図18(a)のように左人検知センサ140aの検知区域Aを記号Aで、右人検知センサ140cの検知区域Cを記号Cで示すとき、区域Aと区域Cの和を図18(a)の斜線部、区域Aと区域Cの排他和を図18(b)の斜線部、区域Aと区域Cの差を図18(c)の斜線部、区域Cと区域Aの差を図18(d)の斜線部、区域Aと区域Cの積を図18(e)の斜線部と定義する。このような定義は群論から容易に類推でき、理解しやすい。
次に、上下風向板による垂直方向の室内領域の区分について図19〜図22を用いて説明する。図19は上下風向板で検知領域を区分する説明図である。図20は上下風向板による遠領域検知状態図である。図21は上下風向板による中領域検知状態図である。図22は上下風向板による近領域検知状態図である。
実施例では、前述の空気調和機の左右方向の室内の検知領域の区分に加えて、空気調和機の奥行き方向の室内についても上下風向板291を用いて検知領域を区分する。上側上下風向板291は前述のように、吹出し風路290の下流に設けた、上方に拡大する上方拡大部290eに吹出し気流を導く作用を有している。在室者の有無を検知するときに、この上側上下風向板291を、人検知センサ140の視野を部分的に遮るような位置に回動させて停める。上側上下風向板291を停止させる位置は図19に示すごとく、上側上下風向板291の図象の先端に付けた符号i,j,k,mの位置でこれらの位置を夫々上側上下風向板位置491i,j,k,mのごとくに呼ぶ。
上側上下風向板位置491iでは人検知センサ140の全視野が上側上下風向板291に隠され、在室者の有無を検知することはできない。上側上下風向板位置491jでは人検知センサ140の視野のうち、検知範囲591jのみが検知可能であり、上側上下風向板位置491kでは検知範囲591kのみが検知可能となる。上側上下風向板位置491mでは検知範囲591m=全視野が検知可能となる。
上側上下風向板291を使用して在室者の位置を検知しようとする場合は、まず、図20のように上側上下風向板291を上側上下風向板位置491jで停止させ、人検知センサ140で在室者の有無を検知する。このとき在室者が検知されると、在室者は検知範囲591jに居ることが判る。
次に、図21のように上側上下風向板291を上側上下風向板位置491kで停止させ、人検知センサ140で在室者の有無を検知する。このとき在室者が検知されると、在室者は検知範囲591jを含む検知範囲591kに居ることが判る。更に、先の検知動作で検知範囲591jに人が検知されなかった場合は検知範囲591kから検知範囲591jを除外した範囲に人が居ると判る。
次に、図22のように上側上下風向板291を上側上下風向板位置491mで停止させ、人検知センサ140で在室者の有無を検知する。このとき在室者が検知されると、在室者は検知範囲591kを含む検知範囲591mに居ることが判る。更に、先の検知動作で検知範囲591kに人が検知されなかった場合は検知範囲591mから検知範囲591kを除外した範囲に人が居ると判る。
次に、人検知センサ140で検知した在室者の有無から、奥行き方向の存在エリアを推定する方法について図23〜図25を用いて説明する。図23は鉛直面で見た上下風向板による遠近方向の検知領域区分図である。図24は上下風向板による床面の検知領域区分図である。図25は左右の赤外線センサと上下風向板による検知領域区分図である。
前述の3つの検知動作によって得られた結果を、空気調和機から見て室内の奥行き方向の区分に対応させると、図23のように、上側上下風向板291を上側上下風向板位置491jで停止させて在室者の有無を検知する場合は、人検知センサ140の視野が検知範囲591jに限られるので、検知領域691Jの在室者を検知することになる。
また、上側上下風向板291を上側上下風向板位置491kで停止させて在室者の有無を検知する場合は、人検知センサ140の視野が検知範囲591kに広がるので、検知領域691J,Kの在室者を検知することになる。
更に、上側上下風向板291を上側上下風向板位置491mで停止させて在室者の有無を検知する場合は、人検知センサ140の視野がまったく遮られず、検知範囲591mに広がるので、全ての検知領域691J,K,Mの在室者を検知することになる。
上記の検知領域を床面での広がりで見ると図24のようになり、室内の奥行き方向に検知領域を区分することができる。
このように、前述の図11に示した複数の人検知センサ140a,cを用いて室内を左右方向に区分し、上側上下風向板291を用いて室内を前後方向に区分することにより、図25に示すように室内を前後左右に交差検知エリア710JA〜MCの9領域に区分し、在室者の居る方向とその奥行き範囲を知ることができ、これを用いて、空気調和機を適切に制御することができる。
なお、上述の説明では説明を簡単にするため、検知領域の境界を検知範囲の境界が床面に達する位置に置いたが、実際に、人検知センサ140が検知しやすい人の顔,首筋の位置や、人が立上がっているのか、椅子に座っているのか、床に座っているのか,寝ているのかなどの違いにより、検知領域の境界線は厳密には求められない。しかし、大まかには人が室内の遠いところに居る,中位のところに居る,近くに居る、のような区分けは十分可能であり、空気調和機の空気調和範囲も目的とした場所を中心とした広がりを持つので前述のような区分けに応じた空気調和でも十分な効果を持つことができる。
次に、人の検知方法について図26,図27を用いて説明する。図26は検知手順要部フローチャートである。図27は入力信号カウントタイムチャートである。
実施例の空気調和機は室内に居る人の位置を推定し、その位置に応じた適切な空調が成されるよう、空気調和機を制御する。図26は人の居る位置を判定するフローチャートであり、これを参照しながら人の居る位置を推定する方法に付いて以下説明する。
ステップS1において、赤外線検知装置14で室内の人を検知する所定時間の検知区間に入り、前述のように人検知センサ140からの演算制御部132への入力信号を一定の周期で読込み、所定時間中の出力がHiである回数を数えて、活動パルスの検出回数を求める。実施例では図27のように、10msの周期で、30秒間読込み、左人検知センサ140aからの入力信号がHiの時に左人検知センサのHi回数を1増加させる。なお、図中では左人検知センサ140a,右人検知センサ140cを左センサ,右センサと略記している。
同様に、右人検知センサ140cからの入力信号がHiの時に右人検知センサのHi回数を1増加させ、所定時間が経過する直前の回数を各人検知センサの検出回数とする。なお、実施例では読込み周期を10msにしているが、フレネルレンズの分解能や人の移動速度をどの位に想定するかによって、この周期の適正範囲は変化し、家庭の室内用として考えると、50ms以下の周期であれば、室内での速い動きの検知にも支障は無い。また、読込み周期を10msより短くしても、人の動きを検知する正確さは周期10msの場合とほぼ同じで、人の動きの検知には支障は無いが、演算制御部132が取扱うデータの量が大量になり、周期を短くしても効果は無い。
次に、人の居る位置の特定方法について図26,図28〜図32を用いて説明する。図28は在領域仮判定法である。図29は人検知センサの活動パルスの検出回数と在領域の対応図A、(a)は不在の場合、(b)は左の領域に人が居る場合、(c)は右の領域に人が居る場合である。図30は在領域の仮判定を示す表である。図31は両方の人検知センサが在の場合の領域選択説明図、(a)は領域(3)に集中して人が居る場合、(b)は領域(1)+(2)+(3)に分散して人が居る場合である。図32は人検知センサの活動パルスの検出回数と在領域の対応図B、(a)は中央の領域に集中して人が居る場合、(b)は全部の領域に分散して人が居る場合である。
図26のステップS2において、上記の各人検知センサ140の活動パルスの検出回数を図28のように在閾値と比較し、左人検知センサ140aの活動パルスの検出回数が在閾値以上の時に、左人検知センサ140aが人を検知したと認定し、右人検知センサ140cの活動パルスの検出回数が在閾値以上の時に、右人検知センサ140cが人を検知したと認定する。
このとき、図29(a)のように左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数が共に在閾値未満である時は室内に人は不在であると認定する。また、図29(b)のように左人検知センサ140aの活動パルスの検出回数が在閾値以上で、右人検知センサ140cの活動パルスの検出回数が在閾値未満である時は人が居る在領域を領域610Aとする。また、図29(c)のように左人検知センサ140aの活動パルスの検出回数が在閾値未満で、右人検知センサ140cの活動パルスの検出回数が在閾値以上である時は人が居る在領域を領域610Cとする。
また、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数が在閾値以上である場合は、
(i)中央の領域610ACに人が居る
(ii)領域610Aと領域610Cに人が居る
(iii)領域610Aと領域610ACに人が居る
(iv)領域610ACと領域610Cに人が居る
(v)領域610Aと領域610ACと領域610Cに人が居る
の5つの場合が考えられる。これを空気調和機を制御する観点から纏めると、(i)のように中央の領域610ACに集中して人が居て、狭い領域をスポット的に空気調和すれば良い場合と、(ii)(iii)(iv)(v)のように広く室内に分散して人が居て、室内全体を広範に空気調和する必要がある場合とに分けられる。以下、これらを(i)中央の領域610ACに人が居る場合と、(v)領域610Aと領域610ACと領域610Cに分散して人が居る場合とで代表する。
上述の関係を纏めると図30のようになり、左右の人検知センサ140a,cが共に人を検知した場合については2通りの領域が人の在領域候補として浮上してくる。
次に、上記の2通りの在領域候補から、在領域を選別する方法について述べる。領域610ACに人が居る場合は、同一人の動きを、左右の人検知センサ140a,cが検知するので、左右の人検知センサ140a,cは図31(a)のようにほぼ同じ反応を示し、活動パルスの検出回数もほぼ同じ検出回数になるので、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数の差が所定の差(s)未満のときは図32(a)のように人が居る在領域を領域610ACとする。
また、領域610Aと領域610ACと領域610Cに分散して人が居る場合は、左右の人検知センサ140a,cが人を検知するが、人の動きの量や時刻は、個人々で異なるため、複数の別々の人の動きを検知した結果は当然のことながら違ってきて、活動パルスの検出回数の差は大きくなる。従って、活動パルスの検出回数の差が前述の所定の差(s)以上のときは図32(b)のように人が居る在領域を領域610Aと領域610ACと領域610Cとする。
このとき、単純な活動パルスの検出回数差以外に、例えば片方の人検知センサ140の活動パルスしか検出していない回数が所定未満であった場合は(a)中央の領域610ACに人が居るとし、所定以上であった場合は(b)領域610Aと領域610ACと領域610Cに人が居るとしても良い。
このように、所定時間の検知区間の、左右の人検知センサ140a,cの出力を一定周期で読込み、Hiの時の回数を数えて、活動パルスの検出回数を求め、検出回数に応じて、人の在否と在領域を定める。
この結果、人の在否と在領域を図29(a)の不在,図29(b)の領域(1),図29(c)の領域(2),図32(a)の領域(3),図32(b)の領域(1)+(2)+(3)の5通りに区分することができる。
この場合、(1),(2),(3)は単位領域であり、(1)+(2)+(3)は複数の単位領域の組合せ(1)+(2),(1)+(3),(2)+(3),(1)+(2)+(3)を代表した領域である。
次に、最終的な在領域の判定方法の概略について図33を用いて説明する。図33は2段階推定法説明図である。
上述した検知区間の開始から、次の検知区間の開始までの区間を仮判定区間と言い、この検知区間で求めた人の在否と在領域を仮判定結果と言う。この仮判定区間を所定の回数繰返し、それらの仮判定結果に応じて、最終判定を行う。つまり、図33のように、仮判定区間の中にこれより短い所定時間の検知区間が有り、検知区間での検知結果から仮判定を行い、所定回数の仮判定結果から最終判定を行う。
このため、最終判定の結果はこれらの所定回数の仮判定区間を含んだ長い時間間隔の検知結果を反映したものとなり、人の移動傾向を長い時間で捉えて、確実に人の居る位置を求め、この最終判定結果に応じて空気調和機を制御する。
これは、空気調和機で室内の快適性を維持する場合、頻繁に空気調和機の状態を変えると、制御が安定せず、在室者を不快にさせることが多いので、人の居る場所が変わった場合は、その変化を捉えて、自然な感じで新しい居場所を中心とした空気調和に移るようにし、制御が頻繁に変わらないよう、安定させるためである。
次に、在室者の活動量の検知について図26,図34,図35を用いて説明する。図34は活動量の大きさの段階の仮判定法、(a)は人が(1)又は(2)に居る場合、(b)は人が(3)に居る場合、(c)は人が(1)+(2)に居る場合である。図35は活動量の大きさの段階の仮判定結果、(a)は人が単一の領域に居る場合、(b)は人が複数の領域に居る場合又は不在の場合である。
図26のステップS2では、前述の人の在否と在領域の仮判定結果の他に、室内の人の活動量の大きさの段階を求める。室内の人の活動量の大きさの段階は小,中,大の3段階に区分し、凡そ、次のように定めると良い。
活動量の大きさの段階「大」:人が(1)+(2)+(3)に分散して、←広範囲で人が
存在し、反応が大きい。 動いている。
活動量の大きさの段階「中」:人が(1)+(2)+(3)に分散して、←広範囲で人が
存在し、反応が少ない。 ほどほどに動
いている。
又は、
人が(1),(2)または(3)に ←狭範囲で人が
存在して、反応が多い。 動いている。
活動量の大きさの段階「小」:人が(1),(2)または(3)に ←狭範囲で人が
存在して、反応が少ない。 ほどほどに
動いている。
活動量の大きさの段階を3段階にしたのは、家庭用の空気調和機では凡その建築構造と、広さに応じて在室者の人数も考慮して、所要の冷房・暖房能力を簡便に求めるようにしているので、広範囲で数人が動いている活動量の大きさの段階大の状態が空気調和機の定格能力にほぼ見合って居る。一方、活動量が小さい場合に省エネ運転するニーズがあるが、このために設定温度を上下させる範囲は快適性が失われないように最大で2℃程度迄である。これらのことから、活動量の段階を多く区分しても設定温度の変化が細分化されるだけで省エネの効果に大きな差は生じない。このため制御を複雑にしないように活動量の大きさの段階は3段階程度に区分するのが現実的である。
室内の人の活動量の大きさの段階を上記のように区分するため、前述の在領域の仮判定結果と活動パルスの検出回数に応じて図34に従って図35のように区分する。
図34(a)は在領域が(1)又は(2)の場合で、左右の人検知センサ140a,cのどちらの活動パルスの検出回数も活動量閾値1未満である場合は活動量の大きさの段階を「小」とし、活動量閾値1以上である場合は活動量の大きさの段階を「中」とする。
図34(b)は在領域が(3)の場合で、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数の平均が活動量閾値1未満である場合は活動量の大きさの段階を「小」とし、活動量閾値1以上である場合は活動量の大きさの段階を「中」とする。
図34(c)は在領域が(1)+(2)+(3)の場合で、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数の合計が活動量閾値2未満である場合は活動量の大きさの段階を「中」とし、活動量閾値2以上である場合は活動量の大きさの段階を「大」とする。尚、人が不在の場合は最も低い活動量の大きさの段階とし、活動量の大きさの段階は「小」とする。
上記を纏めると人の在否と在領域と、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数に応じて、在領域が(1),(2)または(3)の場合は図35(a)のように仮判定結果が求められ、また、在領域が(1)+(2)+(3)又は不在の場合は図35(b)のように仮判定結果が求められる。
次に、1回の仮検知で人が居ることが明らかな場合について図26,図36、図37を用いて説明する。図36は即決判定法、(a)は人が単一の領域に居る場合、(b)は人が複数の領域に居る場合である。図37は即決判定結果纏め図、(a)は人が単一の領域に居る場合、(b)は人が複数の領域に居る場合又は不在の場合である。
図26のステップS3では、仮判定区間での活動パルスの検出回数が即決条件に合致するか否か判定する。即決条件は人の居る領域が一回の仮判定結果から確実に明らかであるための条件であり、前述の人の在否と在領域の仮判定結果と、活動パルスの検出回数に応じて図36に従って図37のように判定する。
図36(a)は在領域が(1),(2)又は(3)の場合で、左右の人検知センサ140a,cのどちらかの活動パルスの検出回数が在閾値より大きい即決閾値1を超える場合は即決条件成立とし、即決閾値1未満である場合は即決条件不成立とする。
図36(b)は在領域が(1)+(2)+(3)の場合で、左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数の合計が即決閾値1より更に大きい即決閾値2を超える場合は即決条件成立とし、即決閾値2未満である場合は即決条件不成立とする。
上記を纏めると在領域と左右の人検知センサ140a,cの活動パルスの検出回数に応じて、在領域が(1)、(2)または(3)の場合は図37(a)のように即決条件に合致するか否かが求められ、また、在領域が(1)+(2)+(3)の場合は図37(b)のように即決条件に合致するか否かが求められ、不在の場合は即決条件不成立とする。
即決条件成立の場合はステップS7に進み、即決条件不成立の場合はステップS4に進む。
ステップS4では、所定回数であるN回(実施例の場合N=4)の仮判定が実行されたか否か判定する。仮判定の実行回数が所定回数未満である場合はステップS1に戻り、次回の仮判定区間に入り、再度、人の在否と在領域の仮判定を実行する。
ステップS4で仮判定の実行回数が所定回数に達した場合は仮判定を終了し、最終判定を行うべくステップS5に進み、N回の仮判定結果が全て不在であったか否か判定する。
ステップS5でN回の仮判定結果が全て不在であった場合は、ステップS6に進み、室内が引続き不在になる可能性が大きいとし、設定温度を大きく変化させ、省エネを一段と強化した後述する不在省エネ運転制御を行い、ステップS1に戻り、次回の判定区間に入り、初回の仮判定区間における検知動作を実行する。
ステップS5で在領域の仮判定結果が1回以上ある場合はステップS8に進み、N回の仮判定結果と前回の最終判定結果から今回の人の在否と在領域及び活動量の大きさの段階の最終判定を行い、ステップS9に進む。
ステップS3で即決条件が成立した場合は、ステップS7で即決条件が成立した仮判定区間の仮判定結果を最終判定結果として採用し、ステップS9に進む。
ステップS9において、前述したように、上側上下風向板291を赤外線センサ410の遮蔽板として利用した室内の奥行き方向の領域区分での人検知を行い、ステップS10に進む。
ステップS10において、後述するように、在領域の履歴を更新し、上述の最終判定結果、奥行き方向の人検知結果、在領域の履歴などに応じて空気調和機を制御し、ステップS1に戻り、次回の判定区間に入り、初回の仮判定区間における検知動作を実行する。
以上のステップについて図38を用いて簡略に説明する。図38は繰返し制御説明図である。
図38のように、人の位置の最終判定は普段は一定の時間を持つ判定区間毎に行われ、空気調和機の制御は最終判定の度に更新又は維持される。
この判定区間の中に所定の複数(N:実施例ではN=4)の仮判定区間が有り、各仮判定区間では、仮判定区間より短い所定時間の検知区間の間、人検知センサ140の出力を読込み、読込んだデータを処理して前述の仮判定を行う。
仮判定は各仮判定区間毎に行われ、各仮判定の結果と前回の最終判定結果に応じて、今回の人の居る位置を最終判定する。
また、仮判定の基となる仮判定区間中の人検知センサ140の出力が普段より大きい場合は、図38に点線矢印で示したように、以降の仮判定区間を省略し、即決最終判定として、その仮判定区間の仮判定結果を採用し、最終判定結果とする。
なお、制御の対象となる機器としては空気調和機に内蔵される圧縮機,冷媒回路制御装置,送風ファン,左右風向板,上下風向板,表示装置等のほか、換気装置,空気清浄装置,脱臭装置,静電霧化装置,陰イオン発生装置,加湿装置,酸素富化装置,侵入検知装置など多様な機器があり、人の在否に応じて機器の運転/停止,能力の変更,暖房/冷房/除湿の切換え,吹出し空気の方向変更,侵入者を検知した場合の威嚇/警報/通報などを行うことができる。
次に最終判定の方法について図39〜図41を用いて説明する。図39は在領域判定例、(b)は在領域重み付け係数である。図40は活動量の大きさの段階判定例である。図41は在領域・活動量の大きさの段階判定結果の例である。
図39において、○印は各仮判定区間で仮判定された在領域であり、( )内はその在領域に与えられた重み付けポイントである。
実施例の空気調和機の人の在否と在領域の区分は前述のように不在,(1),(2),(3),(1)+(2)+(3)の5通りであり、各仮判定毎に仮判定結果の区分(在領域とされた領域又は不在の区分)に重み付けしたポイントを与える。図39の例では、1回目の仮判定結果の領域(1)にα1のポイントを与え、2回目の仮判定結果の領域(3)にα2、3回目の仮判定結果の領域(1)にα3、4回目の仮判定結果の領域(1)+(2)にα4、5回目の仮判定結果の領域(1)にα5,…,N回目の仮判定結果の領域(1)にαNのポイントを与えている。また、前回の最終判定結果の領域(1)にβのポイントを与えている。
所定のN回の仮判定区間を終了すると人の在否と在領域の区分毎に与えられたポイントの積算が行われ、与えられたポイントの合計が最大(この例では30点)である領域(1)が今回の在領域であると最終判定される。
このとき、各仮判定で与えられるポイントを、図39(b)のように、回を追うごとに所定値だけ増加するポイントにすると最新の仮判定結果が重視され、空気調和機の制御が合理的に為される。
図40において、○印は各仮判定区間で在領域が最終判定された在領域(この例では(1))と同じであった時の活動量の大きさの段階であり、( )内はその活動量の大きさの段階に与えられた重み付けポイントである。
次に、上述の最終判定結果の在領域である領域(1)での活動量の大きさの段階を判定する。活動量の大きさの段階は前述のように3段階に区分され、在領域の各仮判定結果が領域(1)である仮判定時の活動量の大きさの段階に重み付けしたポイントを与える。図40の例では、在領域の仮判定結果が領域(1)である1回目,3回目,5回目,…,N回目の活動量の大きさの段階の区分にポイントを与える。1回目は活動量の大きさの段階「小」にγ1、3回目は同じく活動量の大きさの段階「小」にγ3、5回目は活動量の大きさの段階「中」にγ5,…,N回目は活動量の大きさの段階「小」にγNのポイントを与えている。活動量の大きさの段階の区分毎に与えられたポイントの合計を算出し、与えられたポイントの合計が最大(この例では27点)である活動量の大きさの段階「小」が今回の活動量の大きさの段階であると最終判定される。
このとき、各仮判定で与えられるポイントに、在領域の仮判定時と同様に、回を追うごとに所定値だけ増加するポイントにすると同様に、最新の仮判定結果が重視され、空気調和機の制御が合理的に為される。
図41において、○印は各仮判定区間で仮判定された在領域であり、「中」,「小」の文字は仮判定時の活動量の大きさの段階であり、点数は重み付けのポイントである。
図41はN=4とし、仮判定毎に1点ずつポイントを増加するようにした場合(α1=γ1=1,α2=γ2=2,…)の、人の在否と在領域の最終判定と活動量の大きさの段階の最終判定の例である。在領域は領域(1)が前回ポイントで2点、仮判定区間1で1点、仮判定区間4で4点の計7点で最大となり、領域(1)に最終判定される。
活動量の大きさの段階は仮判定区間4の活動量の大きさの段階「中」の4点が領域(1)の中で最大となり、活動量の大きさの段階「中」に最終判定される。
この時、人の在否と在領域の前回の最終判定結果に与えるポイントを今回の仮判定結果に与えるポイントの中間に設定(実施例ではβ=2)すると制御が円滑になって都合が良い。
このように、実施例の空気調和機は、空気吸込み口及び空気吹出し口を有する筐体と、前記筐体内に配置された熱交換器と、室内空気を前記空気吸込み口より吸込み、前記熱交換器を通してから前記空気吹出し口より吹出す送風ファンと、前記送風ファンの吹出し風路に設けた左右風向板と、上下風向板と、赤外線センサを有し、室内を複数の領域に区分して在室者の有無を推定する赤外線検知装置と、を備え、
人の在否と在領域を判定する判定区間に所定の複数の仮判定区間を定め、
前記仮判定区間の赤外線センサの出力に応じて、前記仮判定区間毎に、人の在否と在領域を仮判定し、前記所定の複数の仮判定の結果に重み付けし、その重み付けされた結果を基に、人の在否と在領域を最終判定する。
これにより、赤外線センサの出力に基づく人検知センサのデジタル出力信号に応じて在領域を最終判定して、在領域に応じて室内を空気調和する。このとき、判定区間を長く取って、室内の長期的な変化を検知するので、短期的な変化に惑されての誤動作が無くなる。また、判定区間を複数の仮判定区間に分け、仮判定区間毎に室内の状況を把握するので、室内の情報を満遍なく捉えることで、情報の偏りが無く、情報を正確に捉えることができる。
また、仮判定区間ごとの仮判定結果に時系列的な重みをつけて、人の居る領域を最終判定するので、現在、人の居る場所の傾向を確実の捉えることができると共に、前回の最終判定から今回の最終判定までの間に少なくとも一回の仮判定区間が設けられているので、空気調和機の制御が間をおいて穏やかに変わり、在室者を不快にすることが無い。
このように、確実な判定ができる十分な判定区間と、室内の快適性を損なわない、穏やかな変化を確保できる制御間隔とが両立すると共に、人の移動の傾向も確実に捉えるようにしたので、人の新しい居場所を中心とした空気調和運転に自然な感じで移ることができる。
このため、在領域変化の傾向を捉え、安定的に、且つ、確実に在領域を判定し、室内を適正に制御する空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記重み付けされた結果と前回の最終判定結果を基に、人の在否と在領域を最終判定する。
これにより、各仮判定区間毎の仮判定結果に加えて、前回の最終判定結果も考慮して今回の最終判定を行うので、確実な判定と、前回の制御からの急変が回避された穏やかに変化する制御で、室内では安定した空調が行われ続け、室内の快適性が維持される。
このため、穏やかに変化する制御で、室内の快適性を維持し続ける空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記複数の領域の数よりも少ない数の複数の前記赤外線センサを備え、前記領域は前記複数の赤外線センサの検知区域の和,排他和,差、又は積で区分される領域である。
これにより、各領域が1又は複数の人検知センサの視野(検知区域)に捉えられ、各領域の人の動きに反応して、その領域の境界の形成に関係する検知区域を持つ赤外線センサの出力が変化する。このように、人の動きに反応して赤外線センサの出力が変化し、この赤外線センサの出力の変化を捉えて、各人検知センサから活動中を示すパルスが出力されるので、この活動パルスの検出回数を求め、解析することで、室内の人の在否と在領域を決めることができる。
この時、図17の(1)又は、(2)に人が居る場合は、唯一の赤外線センサが反応するので、その赤外線センサの検知区域から他の赤外線センサの検知区域を除外した領域である(1)又は、(2)が人の居る領域となる。
図17の(3)の重複領域に人が居る場合は、同一人の動きを、両方の赤外線センサが検知するので、赤外線センサはほぼ同じ反応を示し、両方の人検知センサが出力する活動パルスの検出回数もほぼ同じとなるので、両人検知センサの活動パルスの検出回数の差が所定の差未満のときは(3)に人が居ると判定できる。
図17の(1)と(3),(1)と(2),(2)と(3)又は、(1)と(2)と(3)に人が居る場合は、両方の赤外線センサが検知するが、人の動きの量は、個人々で異なるため、複数の別々の人の動きを検知した結果は当然のことながら違ってきて、両方の人検知センサが出力する活動パルスの検出回数の差は大きくなる。従って、両人検知センサの活動パルスの検出回数の差が前述の所定の差以上のときは(1)+(2)+(3)に人が居ると判定する。
また、この人の不在と存在を区別する検出回数を適切に定めて在閾値とすることで、各領域での在不在を区別することができる。
このため、在の仮判定レベルを超える信号を出力した赤外線センサの組合せに応じて在領域を適正に選定する空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記複数の仮判定の結果に対する重み付けは時系列的に近い回ほど大きくし、前記前回の最終判定結果に対する重み付けは今回最初の仮判定結果に対する重み付けより大きく、今回最後の仮判定結果に対する重み付けより小さくする。
これにより、現在から一番近い仮判定結果が最も重視され、単純に人が移動し、新しい場所に居続ける場合は、今回か次回の判定で新しい場所が在領域と判定され、新しい場所を中心とした空気調和運転が行われる。しかし、一時的に新しい場所に移動したが、直ぐにもとの場所に戻ったような場合は、元の場所での前回の最終判定結果や、複数の仮判定結果が積算されて、元の場所に優位な最終判定を与えるので、元の場所を中心とした空調運転が継続される。
このため、在領域変化の傾向を確実に捉え、適切に在領域を判定し、室内を制御する空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記複数の仮判定結果に対する重み付けを、前記仮判定区間を追う毎に所定値増加させる。
これにより、製品の開発中の検討時点で、所定値を変更したことによる、様々な場面における影響を推測しやすくなり、開発期間を短縮できる。また、製品の特殊な使用場面で、この一台だけの所定値を変更する必要に迫られた時に、変更の影響を予測しやすいので、好都合である。
このため、在領域変化の傾向を適切に判定に反映させ、室内を適正に制御する空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記赤外線センサの出力に基づいてデジタル出力される活動パルスを一定の周期で読込んで、所定時間内の検出回数を計数し、この検出回数と、領域に応じて定めた活動量閾値と、の大小によって、前記在領域の人の活動量の大きさを段階的に区分し、前記検出回数に応じて、前記仮判定区間毎に、人の活動量の大きさの段階を仮判定し、前記所定の複数の仮判定結果を基に、今回の人の活動量の大きさの段階を最終判定する。
これにより、活動量の大小に応じて空気調和機の能力を加減することで、省エネ運転をすることができる。また、確実な判定と、人の活動量の大きさの段階に穏やかに応じた制御で、室内の快適性を維持する。
このため、在室者の活動量に応じて、空気調和機を制御し、快適性向上や、省エネ運転などを実現する空気調和機を提供することができる。
また、実施例の空気調和機は、前記人の在否と在領域の最終判定結果と、前記在領域の人の活動量の大きさの段階の最終判定結果に応じて、圧縮機,冷媒回路制御装置,送風ファン,左右風向板,上下風向板または表示装置の少なくとも1つ以上を制御する。
これにより、在室者の活動量の大小に応じて冷房・暖房などの能力を加減したり、除湿の湿度設定を変更したり、在室者が居ない状態が所定時間続いた時に、温度設定を省エネとなるように変更したり、更に不在が続いた時に空気調和機を停止したり、在領域を重点的にスポット空調したり、在領域を避けて送風したり、空調の能力をアップしたり、送風の強さを加減したりと言った空気調和機を普通に使う上で行われる制御を人の手を煩わすことなく行うことができ、また、これらの運転状態の変化に応じて自動的に表示を変更して報せるなど、操作性、利便性に優れた空気調和機になる。
このため、在室者の活動量に応じて、空気調和機を制御し、快適運転や、省エネ運転を行う空気調和機を提供することができる。
次に、図26ステップS9の遠中近の判定について図19,図22,図42,図43を用いて説明する。図42は遠中近判定法である。図43は室内機の冷房・除湿運転時の上下風向板部拡大断面図である。
前述した各仮判定区間中の検知区間では室内全体の在室状況を検知するため、上側上下風向板291の位置を空気調和機から近い位置〜遠い位置までを見渡せるように、人検知センサ140から遠ざけて、図19の上側上下風向板位置491mである近い位置に置いて検知範囲591mの人の在否を検知する。
ステップS9では、更に、上側上下風向板291の位置を図19の上側上下風向板位置491j,491kである遠い位置,中間の位置に置いて検知範囲591j,591kの人の在否を検知する。
ステップS8で、最終判定結果が不在となった場合は、遠い位置、中間の位置での検知動作を省略する。これは、近い位置〜遠い位置までの範囲に人が居ないと言うことであり、奥行き方向の検知動作をしても無駄であるからである。
ステップS8で、室内に人が居ると判定された場合は、上側上下風向板291を遠い位置に回動して検知動作を行う。遠い位置での検知動作で人を検知した場合は、遠方に人が居ると判断して、次の中間の位置での検知動作を省略する。
これは、空気調和機は室内を空調するもので、遠方に人が居る場合は、この遠方の人が満足するように空調するには、遠方まで風が届くように空調する必要が有り、これにより、中間や近くに居る人もほぼ不満の無い空調になるので、中間や近くに人が居ても居なくても同じ制御になり、次の中間の位置での検知動作を省略できるためである。
遠い位置での検知動作で人を検知しなかった場合は、中間の位置での検知動作を行う。中間の位置での検知動作で人が検知された場合は、中間に人が居ると判断し、中間の位置での検知動作で人を検知しなかった場合は、近くに人が居ると判断する。
上記の最終判断を簡潔に記述すると図42に示すようになり、上側上下風向板291の遠い位置で人を検知した場合は人が遠い位置に居ると判断し、遠い位置で人を検知せず、中間の位置で人を検知した場合は人が中間の位置に居ると判断し、遠い位置でも中間の位置でも人を検知しなかった場合は人が近い位置に居ると判断する。
人が居る位置の遠い〜近いの最終判断に応じて、室内送風ファン311や上下風向板291,292などを適切な強さ、方向に制御する。
なお、冷房・除湿運転時は上側上下風向板291を図43のように吹出し風路290の上壁290aや下壁290bと略平行にするのが一般的である。この場合、人の検知動作中は上側上下風向板291を図22のように下げる必要が有り、上下風向が変化する。実施例では、この影響を少なくするため、仮判定区間の長さ5分に対して検知区間の長さ(=所定時間)を30秒と短くした。30秒と言う短時間では空気調和機の冷凍サイクルはその保有している熱容量のため、大きな変化は見せず、室内への冷房・除湿能力の変化も大きくない。また、外気との熱平衡によって定まる室内温度への影響も小さく、近年増加している能力可変型の空気調和機の場合は冷房・除湿能力が熱負荷に応じて補償されるので、室内温度への影響は無く、快適性が保たれる。
他方、上下風向はこの間、乱されるので、在室者に若干の影響を与えるが、時間が短いことから、一般に行われる自動風向板の揺動制御と同等以下の軽い変化であり、快適性を阻害することは無い。また、仮判定区間の中の検知区間以外の時間は上側上下風向板291に対する位置の制約は無いので、任意の方向に向けたり、自動的に揺動させたりすることもでき、利便性を損なうことが無い。
次に、ステップS10の過去在領域履歴について図44を用いて説明する。図44は過去の在領域履歴の判定法、(a)は蓄積された過去データの例、(b)は人の居る領域の順位の例である。
ステップS10では、最新の複数回の在領域の最終判定結果を蓄積し、在領域を蓄積回数で順位付けする。これは、図44(a)のように、在領域の最終判定結果が出される度に、過去の複数回(実施例では255回)の在領域の最終判定結果の蓄積データの最古のデータを破棄し、今回の最終判定結果を追加して更新する。更に、図44(b)のように、在領域毎に蓄積回数を数え、蓄積回数で在領域の順位付けを行い、蓄積回数の一番多い在領域を1番とする。この時、この領域の特性は「いつも居る場所」と言って良い。蓄積回数の一番少ない在領域は4番とし、その特性は「いつも居ない場所」と言って良い。
これにより、いつも人が居る場所、いつも人が居ない場所が判り、オンタイマーで運転を始めるとき、人が居なくても、在順位の一番高い場所に向けて風を送るとか、直接風が当たるのを回避したい場合に、今居る場所を除いた在順位の低い場所に向けて風を送るとかの運転が自動的に行え、煩わしさがない。
次に、人検知の応用例について図45〜図47を用いて説明する。図45は風向の変化シーケンスである。図46は活動量の大きさの段階に基づく省エネ制御の例である。図47は送風方向の例、(a)は左コーナー送風、(b)は右コーナー送風、(c)は正面送風、(d)はワイド送風である。
図45では人検知結果を利用して、人の居る方向に風を向けるスポット空調的な運転と、部屋の広い範囲に風を送る部屋全体の空調運転を交互に繰返す制御をする。
これは、外の非空調空間から部屋に入室した当初、集中的に冷風・温風に当たりたいと言うニーズに応えるためである。
このとき、風を受ける時間が短く設定してあるので、風に当たる時間を延長したい場合は、空気調和機に向けて手を振るなどして、大きな動きをすることで前述の仮判定区間を省略した在領域の最終判定で、風に当たる時間を延長できる。これを逆に、風を受ける時間を長く設定してあると、もう風に十分当ったので、部屋全体の空調に戻って貰いたいと思っても、風から逃れようとして移動すると、移動を検知して風が追いかけてきて逃れられず、リモコンを操作して風向を変えるか、じっと我慢して時間が経過するのを待つだけになって、使い勝手が悪い。
また、部屋の広い範囲に風を送る代わりに、人が居る方向以外の方向に風を向けるようにしても良い。この場合、人が居る方向以外の方向としては、人の居る在領域の隣で、前述の在順位が低い領域に風を向けると、隣の領域に向かう風の巻き込みや壁に当った風の反射などの柔らかな風を間接的に受け、風を直接受けない時でも快適性が持続される。
図46では活動量の大きさの段階の結果を利用して、活動量の大きさの段階に応じて自動的に省エネ運転することで、快適性と省エネのバランスの取れた運転をする制御である。
これは、使用者が省エネモードでの運転を設定した場合、在室者の活動量の大きさの段階に応じて、室内設定温度,設定湿度を変更して省エネを図るものであり、暖房時は活動量の大きさの段階が大きいほど設定温度を低め(実施例では最大で2度下げ)に、冷房時は活動量の大きさの段階が小さいほど高め(実施例では最大で2度上げ)に変更して運転し、除湿時は活動量の大きさの段階が小さいほど設定湿度を高め(実施例では最大で15%上げ)に変更して運転する。
これにより、暖房運転時は、活動量が多く人体の発熱量が多いほど、低めの室温にし、活動量が少なく人体の発熱量が少ないほど、低下させる室温の幅を小さくして省エネと快適性のバランスをとる。冷房運転時は、活動量が少なく人体の発熱量が少ないほど、高めの室温にし、活動量が多く人体の発熱量が多いほど、高める室温の幅を小さくして省エネと快適性のバランスをとる。除湿運転時は、活動量が少なく人体の発熱量が少ないほど、高めの湿度にし、活動量が多く人体の発熱量が多いほど、高める湿度の幅を小さくして省エネと快適性のバランスをとる。
また、図26のステップS6で、不在が続いた場合に行う、不在省エネ運転制御として、暖房時は最も大きい活動量の大きさの段階に応じた制御をし、冷房・除湿時は最も小さい活動量の大きさの段階に応じた制御を行うようにすると、在室者の比較的長い中座の時の待機空調として、省エネに適い、在室者が戻ってきた時には、待機空調から短時間で室内を快適空間に変えることができ、在室者の満足度が損なわれることが無い。
実施例では、不在の時間(第2の所定時間)が20分間続いた場合に、この不在省エネ運転制御を行うようにした。
図47は、在領域の最終判定結果に応じて、風向を変更する場合の室内機2を上から見た時の風向の例を示し、例えば、領域(1)に風向を向ける場合は図47(a)のように左右風向板295を制御し、領域(2)は(b)、領域(3)は(c)、領域(1)+(2)+(3)は(d)のように左右風向板295を制御する。
なお、上記の説明の中で使用してきた在閾値,即決閾値1,2,活動量閾値1,2の値をリモコン5の特殊操作で変更できるように構成すると、より省エネ運転を志向したいとか、より快適性を重視したいとかの使用者の意向がある場合に、これらの閾値の値を変更することができ、使用者の意向に応じて制御の応答性を調節し、省エネ又は、満足感を高めることができる。
また、この閾値を着脱可能な記憶装置に記憶し、閾値の変更を着脱可能な記憶装置の交換で行っても同様の効果がある。この場合は、閾値の変更にとどまらず、多様な環境に対応した制御の変更が可能になるのは言うまでも無い。
このように、実施例の空気調和機は、前記活動量閾値を変更可能に構成する。
これにより、例えば、この閾値を着脱可能な記憶装置、又は操作部から書換え可能な記憶装置に記憶し、着脱可能な記憶装置の交換、又は書換え可能な記憶装置の書換えにより前記閾値を変更する。こうすることで、より省エネ運転を志向したいとか、より快適性を重視したいとかの使用者の意向がある場合や、家庭の一般的な部屋に比べて、部屋の大小、在室者の多少、部屋の縦横比、家具の配置,使用時間の長短などが違って、空気調和機の使用形態が特殊になる場合に、該閾値の値を変更することができる。閾値の値を大きい方に変更すると、検知感度が鈍くなり、空気調和機の頻繁な運転変更が抑制され、閾値の値を小さい方に変更すると、検知感度が鋭くなり、空気調和機の運転変更の頻度が増加する。
このため、空気調和機の設置環境や使用者の意向に応じて制御の応答性を調節し、省エネ又は、満足感を高める空気調和機を提供することができる。
次に、3個の赤外線センサの配置を換えた実施例3について図51〜図53を用いて説明する。図51は実施例3の赤外線検知装置の検知領域模式図である。図52は検知装置の検知領域区分図である。図53は検知装置の在領域推定図、(a)は領域区分の模式図、(b)はaとbの差が大きい場合の在領域、(c)はaとbの差が小さい場合の在領域である。
実施例3は図51のように、実施例2の人検知センサ140a〜cの配置を変えたもので、隣り合う左人検知センサ140aと中人検知センサ140b及び中人検知センサ140bと右人検知センサ140cの検知範囲が一部重複するようにし、且つ、両端の左人検知センサ140aと右人検知センサ140cの検知範囲も一部重複するようにし、更に、全ての人検知センサ140a〜cの検知範囲も一部重複するように配置したものである。また、中央の人検知センサ140bの中心軸の方向を両端にある左側人検知センサ140aと右側人検知センサ140cの中心軸の方向より下向きにして、中央の人検知センサ140bで、より空気調和機に近い領域、風の行き易い中央部領域を重点的に検知できるようにしてある。
図52は、この場合の検知領域の区分図であり、検知領域は実施例2の5領域から7領域に増加していて、人の居る位置をより細かく区分して検知することができる。
1個又は2個の人検知センサ140a〜cのみが人を検知している場合の在領域の仮判定は実施例1と同様に行えば良い。
図53は、3個の人検知センサ140a〜c全てが人を検知している場合の活動パルスの検出回数と在領域の関係を示したものである。説明を簡単化するため実施例2と同様の略記を行い、検知領域610ACをAC、検知領域610ABCをABCと表す。
3個の人検知センサ140a〜cの2個ずつに、実施例1と同様の考え方で在領域を仮判定してゆくことにより、図53(b)のように、aとbの差が所定差sを超える場合で、bとcの差が所定差sを超えた場合及び、bとcの差が所定差s以下の場合でcとaの差が所定差sを超えた時に在領域を全領域であるA+B+C+AB+BC+AC+ABCとする。
また、aとbの差が所定差sを超える場合で、bとcの差が所定差s以下の場合に、cとaの差が所定差s以下の時に在領域をA+B+AB+BC+AC+ABCとする。
図53(c)のように、aとbの差が所定差s以下の場合で、bとcの差が所定差sを超えた場合は、cとaの差が所定差sを超えた時に在領域を全領域であるA+B+C+AB+BC+AC+ABCとする。
また、aとbの差が所定差s以下の場合で、bとcの差が所定差sを超えた場合に、cとaの差が所定差s以下の時に在領域をB+C+AB+BC+AC+ABCとする。
また、aとbの差が所定差s以下の場合で、bとcの差が所定差s以下の場合は、cとaの差が所定差sを超えた時に在領域をA+C+AB+BC+AC+ABCとする。
また、aとbの差が所定差s以下の場合で、bとcの差が所定差s以下の場合に、cとaの差が所定差s以下の時に在領域をAB+BC+AC+ABCとする。
このように、仮判定することにより、3個の人検知センサ140a〜c全てが人を検知したときに、部屋全体に分散して人が居るか、左寄りに分散して人が居るか、右寄りに分散して人が居るか、遠方に分散して人が居るか、中央部に分散して人が居るかなどを大まかに区別することができる。
このようにして、人の居る領域をより細分化して実施例1と同様に空気調和機を制御することができる。
次に、本発明の異なった形状の空気調和機への適用について図54を用いて説明する。図54は縦型空気調和機概略図である。
上記実施例の説明は、横流ファンを使用した壁掛形の空気調和機を例にとったが、本発明はこれに限定されるものではなく、左右風向板,上下風向板を備えた空気調和機であれば、送風ファンは横流ファンに限らずターボファン,シロッコファン,プロペラファンなどでも良く、形態も壁掛け型に限るものではない。すなわち、天井据付型,床置き型,窓据付型等の形態に拘らず適用できるものであり、左右風向板,上下風向板のいずれか又は両方で赤外線センサの視野を部分的に遮蔽して、人検知動作を行うことで在室者の有無と在室者の位置を推定することができる。
この一例として、横流ファンを縦方向に設置した図54に示すような空気調和機にも本発明を適用でき、この場合、左右方向の検知を左右風向板の位置を変えて行い、遠近方向の検知を上下に配置した赤外線センサで行うなどの工夫を加えることで同様の効果を実現することができる。
以上説明したように、請求項1記載の空気調和機によれば、空気吸込み口及び空気吹出し口を有する筐体と、前記筐体内に配置された熱交換器と、室内空気を前記空気吸込み口より吸込み、前記熱交換器を通してから前記空気吹出し口より吹出す送風ファンと、前記送風ファンの吹出し風路に設けた左右風向板と、上下風向板と、赤外線センサを有し、室内を複数の領域に区分して在室者の有無を推定する赤外線検知装置と、を備え、
人の在否と在領域を判定する判定区間に所定の複数の仮判定区間を定め、
前記仮判定区間の赤外線センサの出力に応じて、前記仮判定区間毎に、人の在否と在領域を仮判定し、前記所定の複数の仮判定の結果に重み付けし、その重み付けされた結果を基に、人の在否と在領域を最終判定する。
これにより、赤外線センサの出力に基づく人検知センサのデジタル出力信号に応じて在領域を最終判定して、在領域に応じて室内を空気調和する。このとき、判定区間を長く取って、室内の長期的な変化を検知するので、短期的な変化に惑されての誤動作が無くなる。また、判定区間を複数の仮判定区間に分け、仮判定区間毎に室内の状況を把握するので、室内の情報を満遍なく捉えることで、情報の偏りが無く、情報を正確に捉えることができる。
また、仮判定区間ごとの仮判定結果に時系列的な重みをつけて、人の居る領域を最終判定するので、現在、人の居る場所の傾向を確実の捉えることができると共に、前回の最終判定から今回の最終判定までの間に少なくとも一回の仮判定区間が設けられているので、空気調和機の制御が間をおいて穏やかに変わり、在室者を不快にすることが無い。
このように、確実な判定ができる十分な判定区間と、室内の快適性を損なわない、穏やかな変化を確保できる制御間隔とが両立すると共に、人の移動の傾向も確実に捉えるようにしたので、人の新しい居場所を中心とした空気調和運転に自然な感じで移ることができる。
このため、在領域変化の傾向を捉え、安定的に、且つ、確実に在領域を判定し、室内を適正に制御する空気調和機を得ることができる。
また、請求項2記載の空気調和機によれば、前記重み付けされた結果と前回の最終判定結果を基に、人の在否と在領域を最終判定する。
これにより、各仮判定区間毎の仮判定結果に加えて、前回の最終判定結果も考慮して今回の最終判定を行うので、確実な判定と、前回の制御からの急変が回避された穏やかに変化する制御で、室内では安定した空調が行われ続け、室内の快適性が維持される。
このため、穏やかに変化する制御で、室内の快適性を維持し続ける空気調和機を得ることができる。
また、請求項3記載の空気調和機によれば、前記複数の領域の数よりも少ない数の複数の前記赤外線センサを備え、前記領域は前記複数の赤外線センサの検知区域の和,排他和,差、又は積で区分される領域である。
これにより、各領域が1又は複数の人検知センサの視野(検知区域)に捉えられ、各領域の人の動きに反応して、その領域の境界の形成に関係する検知区域を持つ赤外線センサの出力が変化する。このように、人の動きに反応して赤外線センサの出力が変化し、この赤外線センサの出力の変化を捉えて、各人検知センサから活動中を示すパルスが出力されるので、この活動パルスの検出回数を求め、解析することで、室内の人の在否と在領域を決めることができる。
この時、図17の(1)又は、(2)に人が居る場合は、唯一の赤外線センサが反応するので、その赤外線センサの検知区域から他の赤外線センサの検知区域を除外した領域である(1)又は、(2)が人の居る領域となる。
図17の(3)の重複領域に人が居る場合は、同一人の動きを、両方の赤外線センサが検知するので、赤外線センサはほぼ同じ反応を示し、両方の人検知センサが出力する活動パルスの検出回数もほぼ同じとなるので、両人検知センサの活動パルスの検出回数の差が所定の差未満のときは(3)に人が居ると判定できる。
図17の(1)と(3),(1)と(2),(2)と(3)又は、(1)と(2)と(3)に人が居る場合は、両方の赤外線センサが検知するが、人の動きの量は、個人々で異なるため、複数の別々の人の動きを検知した結果は当然のことながら違ってきて、両方の人検知センサが出力する活動パルスの検出回数の差は大きくなる。従って、両人検知センサの活動パルスの検出回数の差が前述の所定の差以上のときは(1)+(2)+(3)に人が居ると判定する。
また、この人の不在と存在を区別する検出回数を適切に定めて在閾値とすることで、各領域での在不在を区別することができる。
このため、在の仮判定レベルを超える信号を出力した赤外線センサの組合せに応じて在領域を適正に選定する空気調和機を得ることができる。
また、請求項4記載の空気調和機によれば、前記複数の仮判定の結果に対する重み付けは時系列的に近い回ほど大きくし、前記前回の最終判定結果に対する重み付けは今回最初の仮判定結果に対する重み付けより大きく、今回最後の仮判定結果に対する重み付けより小さくする。
これにより、現在から一番近い仮判定結果が最も重視され、単純に人が移動し、新しい場所に居続ける場合は、今回か次回の判定で新しい場所が在領域と判定され、新しい場所を中心とした空気調和運転が行われる。しかし、一時的に新しい場所に移動したが、直ぐにもとの場所に戻ったような場合は、元の場所での前回の最終判定結果や、複数の仮判定結果が積算されて、元の場所に優位な最終判定を与えるので、元の場所を中心とした空調運転が継続される。
このため、在領域変化の傾向を確実に捉え、適切に在領域を判定し、室内を制御する空気調和機を得ることができる。
また、請求項5記載の空気調和機によれば、前記複数の仮判定結果に対する重み付けを、前記仮判定区間を追う毎に所定値増加させる。
これにより、製品の開発中の検討時点で、所定値を変更したことによる、様々な場面における影響を推測しやすくなり、開発期間を短縮できる。また、製品の特殊な使用場面で、この一台だけの所定値を変更する必要に迫られた時に、変更の影響を予測しやすいので、好都合である。
このため、在領域変化の傾向を適切に判定に反映させ、室内を適正に制御する空気調和機を得ることができる。
また、請求項6記載の空気調和機によれば、前記赤外線センサの出力に基づいてデジタル出力される活動パルスを一定の周期で読込んで、所定時間内の検出回数を計数し、この検出回数と、領域に応じて定めた活動量閾値と、の大小によって、前記在領域の人の活動量の大きさを段階的に区分し、前記検出回数に応じて、前記仮判定区間毎に、人の活動量の大きさの段階を仮判定し、前記所定の複数の仮判定結果を基に、今回の人の活動量の大きさの段階を最終判定する。
これにより、活動量の大小に応じて空気調和機の能力を加減することで、省エネ運転をすることができる。また、確実な判定と、人の活動量の大きさの段階に穏やかに応じた制御で、室内の快適性を維持する。
このため、在室者の活動量に応じて、空気調和機を制御し、快適性向上や、省エネ運転などを実現する空気調和機を得ることができる。
また、請求項7記載の空気調和機によれば、前記人の在否と在領域の最終判定結果と、前記在領域の人の活動量の大きさの段階の最終判定結果に応じて、圧縮機,冷媒回路制御装置,送風ファン,左右風向板,上下風向板または表示装置の少なくとも1つ以上を制御する。
これにより、在室者の活動量の大小に応じて冷房・暖房などの能力を加減したり、除湿の湿度設定を変更したり、在室者が居ない状態が所定時間続いた時に、温度設定を省エネとなるように変更したり、更に不在が続いた時に空気調和機を停止したり、在領域を重点的にスポット空調したり、在領域を避けて送風したり、空調の能力をアップしたり、送風の強さを加減したりと言った空気調和機を普通に使う上で行われる制御を人の手を煩わすことなく行うことができ、また、これらの運転状態の変化に応じて自動的に表示を変更して報せるなど、操作性,利便性に優れた空気調和機になる。
このため、在室者の活動量に応じて、空気調和機を制御し、快適運転や、省エネ運転を行う空気調和機を得ることができる。
また、請求項8記載の空気調和機によれば、前記活動量閾値を変更可能に構成する。
これにより、例えば、この閾値を着脱可能な記憶装置、又は操作部から書換え可能な記憶装置に記憶し、着脱可能な記憶装置の交換、又は書換え可能な記憶装置の書換えにより前記閾値を変更する。こうすることで、より省エネ運転を志向したいとか、より快適性を重視したいとかの使用者の意向がある場合や、家庭の一般的な部屋に比べて、部屋の大小,在室者の多少,部屋の縦横比,家具の配置,使用時間の長短などが違って、空気調和機の使用形態が特殊になる場合に、該閾値の値を変更することができる。閾値の値を大きい方に変更すると、検知感度が鈍くなり、空気調和機の頻繁な運転変更が抑制され、閾値の値を小さい方に変更すると、検知感度が鋭くなり、空気調和機の運転変更の頻度が増加する。
このため、空気調和機の設置環境や使用者の意向に応じて制御の応答性を調節し、省エネ又は、満足感を高める空気調和機を得ることができる。