JP5421802B2 - バグフィルター用ろ過布 - Google Patents
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しかし、特許文献1及び2に開示されるろ過布は、ダストによる磨耗等の使用時の負荷によって、繊維の脱落、破損等を生じやすく、実用上問題がある。
しかし、特許文献3に開示されるろ過布は、不織布を3層積層するために工程数が増え、製造プロセスが煩雑になり、そしてコストが増大するデメリットを有する。また、実際には、フラットカレンダー等により圧着する際に、通気性を確保するために線圧を抑える必要があり、充分なろ過布強度が得られない問題点がある。
従って、本発明は、集じん性能に優れ、ダスト払い落とし性が良好であり、そしてダスト払い落としを複数回行った後に低い圧力損失を維持することができるバグフィルター用ろ過布を提供することを目的とする。本発明はまた、プリーツ形態を維持するための剛性を有するバグフィルター用ろ過布を提供することを目的とする。
[態様1]
ろ過層Aと、基材層Bとを含むバグフィルター用ろ過布であって、
ろ過層Aは、スパンボンド法により形成され、平均繊度1.0dtex未満の長繊維を含み、そして3〜100g/m2の坪量を有する不織布から成り、
基材層Bは、スパンボンド法により形成され、平均繊度1.0dtex以上の長繊維を含み、そしてろ過層Aの坪量より大きな坪量を有する不織布から成り、そして、
ろ過層Aは、ろ過層Aがダスト捕集側となるように基材層Bに積層され、そして基材層Bに部分的に熱圧着されており、そして
上記ろ過布が、0.20〜0.50の充填率を有することを特徴とする、
上記バグフィルター用ろ過布。
JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験に従って初期集じん性能測定を行い、エージング・安定化処理を行い、次いで払い落としを30回行った後に、400Pa以下の残留圧力損失を有する、態様1に記載のバグフィルター用ろ過布。
[態様3]
ろ過層Aの長繊維及び/又は基材層Bの長繊維が、ポリフェニレンスルフィドを含む、態様1又は2に記載のバグフィルター用ろ過布。
ろ過層Aの長繊維の結晶化度と、基材層Bの長繊維の結晶化度とが、それぞれ、18%以上である、態様1〜3のいずれか1つに記載のバグフィルター用ろ過布。
[態様5]
ろ過層Aの長繊維の結晶化度が、25%以上である、態様4に記載のバグフィルター用ろ過布。
態様1〜5のいずれか1つに記載のバグフィルター用ろ過布を含むカートリッジフィルター。
本発明のバグフィルター用ろ過布はまた、プリーツ形態を維持するための剛性を有する。
本発明のバグフィルター用ろ過布は、ろ過層Aと、基材層Bとを含む。
ろ過層Aは、スパンボンド法により形成され、平均繊度1.0dtex未満の長繊維を含み、そして3g/m2〜100g/m2の坪量を有する不織布から構成される。スパンボンド法により形成された不織布は、長繊維を含むので、繊維の脱落、毛羽等が発生しにくく、使用時の磨耗等の負荷に対する強度が優れるため、短繊維を含む不織布と比較して、バグフィルター用ろ過布として好適である。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、上記熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンスルフィド及び他の芳香族スルフィドのコポリマー、混合物等を用いることができる。
ろ過層Aの場合と同様に、スパンボンド法により形成された不織布は長繊維を含むので、繊維の脱落、毛羽等が発生しにくく、使用時の磨耗等の負荷に対する強度が優れるため、短繊維を含む不織布と比較して、バグフィルター用ろ過布として好適である。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、上記熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンスルフィド及び他の芳香族スルフィドのコポリマー、混合物等を用いてもよい。
本発明のバグフィルター用ろ過布は、平均繊度1.0dtex未満の長繊維を含むろ過層Aが、集じん性能及びダスト払い落とし性を付与し、そして平均繊度1.0dtex以上の長繊維を含む基材層Bが、圧力損失値を阻害せず、後述のプリーツ形態維持性を付与する。
熱圧着の手段としては、特に制限されないが、加熱平板間プレス、加熱ロール間プレス等が挙げられる。生産性を考慮すると、加熱ロール間プレスが好ましい。上記熱圧着の温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より高く、そして上記熱可塑性樹脂の融点から10℃〜80℃低いことが好ましい。熱圧着の圧力は、本発明のバグフィルター用ろ過布の強度を高めるために、少なくとも線圧20N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましく、50N/mm以上であることが最も好ましい。
なお、上記圧着面積率は、ろ過層Aの総面積に対する、ろ過層Aの熱圧着された部分の面積の合計の比率を意味する。上記圧着面積率は、顕微鏡などを用いて不織布表面を観察することにより、ろ過層Aの総面積に対する、ろ過層Aの熱圧着された部分の面積の合計の比率を算出することによって求めることができる。
本明細書において、「充填率」は、実施例の「(3)充填率」に従って算出された値を意味する。
なお、本明細書において、「残留圧力損失」は、払い落とし直後にろ過布を通過するガスの圧力損失を意味する。
なお、本明細書において、JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験は、2005年版JISハンドブックに記載されるものを意味する。
さらに、ろ過層A内の長繊維の結晶化度は、25%以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、「結晶化度」は、実施例の「(4)結晶化度」に従って算出された値を意味する。
なお、ろ過布の物性値、実施例における物性値は以下の方法により測定したものである。
試料の任意の10ヶ所を、2500倍のマイクロスコープ倍率にて撮影して、50点の繊維の直径を測定し、それらの平均値を平均繊維径とする。次いで、平均繊維径から、平均繊度[dtex]を計算により求める。
JIS L 1906 5.2「単位面積あたりの質量」項に準じて測定する。
JIS L 1906に従って、荷重10kPa(100gf/cm2)の加圧子を用いて厚みd[mm]を求める。次いで、充填率[単位:無次元]を、次の式(1):
S/(ρ×d×103) 式(1)
(式中、Sは坪量[g/m2]であり、ρは長繊維を構成する熱可塑性樹脂の密度[g/cm3]である)
により算出する。
なお、実施例では、ポリフェニレンスルフィドの密度を1.35g/cm3とし、ポリエチレンテレフタレートの密度を1.38g/cm3とした。
示差熱分析計(TAインスツルメント社製:DSC2920)を用いて、5.0mgの試料を下記条件で測定し、次の式(2)により、結晶化度[%]を算出する。
なお、実施例では、ポリフェニレンスルフィドの完全結晶の融解熱量を146.2J/gとし、ポリエチレンテレフタレートの完全結晶の融解熱量を141.0J/gとした。
測定雰囲気:窒素ガス150mL/min、昇温速度:20℃/min
測定範囲:30〜350℃
結晶化度[%]
=100×[(融解部熱量)−(冷結晶部熱量)]/(完全結晶の融解熱量) 式(2)
なお、上記熱量の単位は、全て[J/g]である。
VDI−3926 Part Iに規定される装置を用い、JIS Z 8909−1に規定される測定条件に従って集じん性能試験を行う。
代表的な数値は、以下の通りである。
ダスト:JIS Z 8901に規定される試験用粉体第10種
入口ダスト濃度:5g/m3
ろ過速度:2m/min
パルス用圧縮エアータンク圧力:500kPa
払い落とし圧力損失:1000Pa
パルス噴射時間:50ms
(5−1)初期圧力損失
ダストを供給せず、初期集じん性能測定開始前に、上記ろ過速度で送風した際のろ過布の圧力損失を、初期圧力損失とする。
(5−2)初期性能評価後の残留圧力損失
JIS Z 8909−1の7.2 c)に規定される「ろ布の初期集じん性能測定」に従い、1000Paの払い落とし圧力損失制御のもとで集じん及び払い落としを30回行った後に、ダスト供給なしで、上記ろ過速度で送風した際の圧力損失を、初期性能評価後の残留圧力損失とする。
JIS Z 8909−1の7.2 c)に規定される「ろ布の初期集じん性能測定」に従い、1000Paの払い落とし圧力損失制御のもとで集じん及び払い落としを30回行った期間中の集じん率を、初期性能評価時の集じん率とする。
(5−4)エージング・安定化処理後の評価開始時の圧力損失
JIS Z 8909−1の7.2 e)に規定される「エージング・安定化処理をしたろ布の集じん性能測定」に従ってエージング・安定化処理されたろ過布に、ダストを供給せず、すなわち、0サイクルにおいて、上記ろ過速度で送風した際の圧力損失を測定し、エージング・安定化処理後の評価開始時の圧力損失とする。
JIS Z 8909−1の7.2 e)に規定される「エージング・安定化処理をしたろ布の集じん性能測定」に従ってエージング・安定化処理されたろ過布に、払い落としを30回行った後に、ダスト供給なしで、上記ろ過速度で送風した際の圧力損失を、エージング・安定化処理後に払い落としを30回行った後の残留圧力損失とする。
JIS Z 8909−1の7.2 e)に定める「エージング・安定化処理をしたろ布の集じん性能測定」に従ってエージング・安定化処理されたろ過布に、1000Paの払い落とし圧力損失制御のもとで払い落としを30回行った期間中の集じん率を、エージング・安定化処理後の集じん率とする。
ASTM−D1238−82法に準じて、荷重5kg、温度315.6℃の条件において測定する。単位は[g/10min]である。
(7)層間剥離
層間剥離は、熱圧着により一体化したろ布の層間を手で剥離させる操作を行った際に、容易に剥離する場合は層間剥離有りと判定し、そうでない場合は層間剥離無しと判定した。
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と称する)ポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量0.5g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度8×103m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度31%、平均繊度0.6dtexの長繊維ウェブ(a)を得た。
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型PPSポリマーを溶融し、ノズル径0.75mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量3.5g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度7×103m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度19%、平均繊度5.2dtexの長繊維ウェブ(b)を得た。
ろ過層Aとしてのウェブ(a)、及び基材層Bとしてのウェブ(b)を、坪量が、それぞれ、20g/m2及び200g/m2となるように積層し、次いで、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、ろ過層A側をフラットロールに接する面として、線圧50N/mmで部分的に熱圧着し、ろ過布(1)を得た。
ろ過布(1)の性能を、表1にまとめる。
基材層Bとしての長繊維ウェブ(b)の坪量を150g/m2に変更した以外は実施例1に従って、ろ過布(2)を得た。
ろ過布(2)の厚みは0.39mmであり、充填率は0.33であった。ろ過布(2)に対して、JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験を行ったところ、初期圧力損失が25Paであり、エージング・安定化処理後に払い落としを30回行った後の残留圧力損失が130Paであり、そしてエージング・安定化処理後の集じん率が99.98%であった。ろ過布(2)は、圧力損失、集じん率ともに良好な結果を示した。
ろ過布(2)の性能を、表1にまとめる。また、図1にろ過布(1)及び(2)の断面の模式図を示す。なお、図1において、符号、1,2及び3は、それぞれ、バグフィルター用ろ過布、ろ過層A及び基材層Bである。
製造例1において得られた長繊維ウェブ(a)を、坪量が150g/m2となるように調整し、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧50N/mmにより、長繊維ウェブ(a)の内部を部分的に熱圧着し、ろ過布(3)を得た。ろ過布(3)の厚みは0.30mmであり、そして充填率は0.37であった。ろ過布(3)に対して、JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験を行ったところ、初期圧力損失が148Paであり、エージング・安定化処理後に払い落としを30回行った後の残留圧力損失が863Paであり、そしてエージング・安定化処理後の集じん率が99.93%であった。
ろ過布(3)は、エージング・安定化処理後に払い落としを30回行った後の残留圧力損失が非常に高いため、バグフィルター用ろ過布として適していなかった。
ろ過布(3)の性能を、表1にまとめる。
メルトフローレートが70g/10minである直鎖型PPSポリマーを溶融し、ノズル径0.25mmの紡糸口金から単孔あたりの吐出量1.6g/minで押し出し、エジェクターで吸引しながら紡糸速度8×103m/minで延伸し、移動する多孔質帯状体の上に捕集・堆積させて、結晶化度21%、平均繊度2.0dtexの長繊維ウェブ(c)を得た。
長繊維ウェブ(c)を、坪量が150g/m2となるように調整し、260℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積率11.4%)ロールとフラットロールとの間で、線圧50N/mmで、長繊維ウェブ(c)内部を部分的に熱圧着し、ろ過布(4)を得た。
ろ過布(4)の性能を、表1にまとめる。また、図2にろ過布(3)及び(4)の断面の模式図を示す。なお、図2において、符号、1及び2は、それぞれ、バグフィルター用ろ過布及びろ過層Aである。
260℃に加熱した2つのフラットロールの間で、線圧50N/mmで全面を熱圧着した以外は実施例1に従って、ろ過布(5)を得た。ろ過布(5)の厚みは0.31mmであり、そして充填率は0.52であった。
ろ過布(5)は、ろ過層Aと基材層Bとの間で容易に剥離し、バグフィルター用ろ過布として適していなかった。
ろ過布(5)の性能を、表1にまとめる。
260℃に加熱した2つのフラットロールの間で、線圧100N/mmで全面を熱圧着した以外は実施例1に従って、ろ過布(6)を得た。ろ過布(6)の厚みは0.26mmであり、そして充填率は0.63であった。ろ過布(6)に対して、JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験を行ったところ、初期圧力損失が736Paと高い数値を示したため、ここで試験を終了した。ろ過布(6)は、圧力損失が高く、バグフィルター用ろ過布として適していなかった。
ろ過布(6)の性能を、表1にまとめる。また、図3にろ過布(5)及び(6)の断面の模式図を示す。なお、図3において、符号、1,2及び3は、それぞれ、バグフィルター用ろ過布、ろ過層A及び基材層Bである。
2 ろ過層A
3 基材層B
Claims (5)
- ろ過層Aと、基材層Bとを含むプリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布であって、
該ろ過層Aは、スパンボンド法により形成され、平均繊度1.0dtex未満のポリフェニレンスルフィド長繊維を含み、そして3〜70g/m2の坪量を有する不織布から成り、
該基材層Bは、スパンボンド法により形成され、平均繊度2.0dtex以上のポリフェニレンスルフィド長繊維を含み、そして100〜400g/m 2 の坪量を有する不織布から成り、そして、
該ろ過層Aは、該ろ過層Aがダスト捕集側となるように該基材層Bに積層され、そして該基材層Bに部分的に熱圧着されており、
該ろ過布は、0.20〜0.50の充填率を有し、そして
該ろ過布の総厚みは、0.10〜1.00mmである、
ことを特徴とする、前記プリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布。 - JIS Z 8909−1に規定される集じん用ろ布試験に従って初期集じん性能測定を行い、エージング・安定化処理を行い、次いで払い落としを30回行った後に、400Pa以下の残留圧力損失を有する、請求項1に記載のプリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布。
- 前記ろ過層Aの長繊維の結晶化度と、前記基材層Bの長繊維の結晶化度とが、それぞれ、18%以上である、請求項1又は2に記載のプリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布。
- 前記ろ過層Aの長繊維の結晶化度が、25%以上である、請求項3に記載のプリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリーツ加工されたバグフィルター用ろ過布を含むカートリッジフィルター。
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