JP5421664B2 - 炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品に関する。
従来より、車両の軽量化及び成形加工の容易さの観点から、金属材料に代えて樹脂材料を使用した自動車用部品が提案され使用されている。このような自動車用部品の一例として、自動車用の燃料タンクが挙げられる。自動車用の燃料タンクでは、樹脂材料として高密度ポリエチレン等が使用されたものが知られているが、こうした樹脂材料は、これまで使用されてきた金属材料と異なり、ガソリンや軽油等の炭化水素系化合物を比較的透過しやすい性質がある。炭化水素系化合物は、光化学スモッグ等といった大気汚染を発生させる原因となる化合物の一つであり、かつ引火性を有するため、環境保全及び安全上の観点から、自動車用部品に使用される樹脂材料には、こうした炭化水素系化合物の透過量の少ないことが求められている。
自動車部品に使用される樹脂材料に対して、炭化水素系化合物の透過を防止する性質を付与するために、例えば特許文献1には、一以上のスルホン化工程及び一以上の中和工程を含み、少なくとも一つの中和工程を1種以上のポリアミン化合物と接触させることにより実施することを特徴とするプラスチック製品の表面処理方法が記載されている。
また、特許文献2には、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物(EVOH)を中間層とし、両最外層に熱可塑性樹脂を積層した積層体からなる炭化水素系化合物用の容器が記載されている。
また、特許文献3には、テトラクロロシラン、テトラメチルシラン等のプラズマ重合性モノマーをプラズマ重合法により重合させて、樹脂製容器の内面に被膜を形成させる方法が記載されている。
特開平8−53557号公報 特開平2000−264326号公報 特開平3−107458号公報
しかし、特許文献1に記載された表面処理方法では、Fガスによるタンク内面のフッ素化処理や、SOガスによるタンク内面のスルホン化処理が必要であり、こうした処理で使用される有害ガスの取り扱い上の安全性確保や、タンク製造工程での環境負荷物質の回収が問題である。また、特許文献2に記載された積層体は、物性の異なる樹脂の積層体を用いて成形するため、バリア層を均一にすることが難しい。また、特許文献3に記載された方法は、有機珪素化合物等の有害ガスを使用したり、プラズマCVD装置等の特殊な装置を使用してプラズマ重合性モノマーをプラズマ重合法により重合させる方法であり、また真空で処理する必要があり、生産性も低い。
さらに、特許文献3のようにプラズマCVD法によって無機物質からなる透過抑止層を樹脂の表面に形成させる方法では、カソリンタンクやガソリン移送用のチューブのように開口部の小さい部品の内面にプラズマCVD処理を施すことが困難なため、例えばガソリンタンクであれば、分割成形によりガソリンタンクを半分に割ったような部品を作製してから、その内面にプラズマCVD処理を施し、最後にこれらの部品を接合してガソリンタンクを完成させることになる。
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、有害ガス等といった取り扱いの困難な薬品を使用すること無く、炭化水素化合物に対して高い透過防止性能を有する被膜が樹脂の表面に形成された被覆成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、樹脂からなる成形品の表面にポリシラザンを含むコーティング液を塗布してコーティング膜を形成させ、当該コーティング膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて被膜を形成させることにより得られた被覆成形品によれば、上記課題を全て解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)樹脂製基材の表面に、ポリシラザンを含有する硬化性組成物をシリカに転化させてなるシリカ層が形成された炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品である。
また本発明は、(2)前記樹脂製基材と前記シリカ層との間に、さらに樹脂及びポリシラザンを含有する硬化性組成物を転化させてなる樹脂・シリカハイブリッド層が形成された前記(1)項記載の炭化水素化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品である。
また本発明は、(3)前記被覆成形品は、前記炭化水素系化合物が通過するための開口部を有するチューブ又は容器であり、前記被覆成形品の内面における前記樹脂製基材の表面に前記シリカ層が形成された前記(1)項又は(2)項記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品である。
また本発明は、(4)前記炭化水素系化合物が燃料油である前記(1)項〜(3)項のいずれか1項記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品である。
また本発明は、(5)自動車用部材である前記(1)項〜(4)項のいずれか1項記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品である。
また本発明は、(6)樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であって、成形された前記樹脂製基材の内面にポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成させ、前記ポリシラザン膜をシリカに転化させて前記樹脂製基材の表面にシリカ層を形成させる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法である。
また本発明は、(7)樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であって、成形された前記樹脂製基材の内面に樹脂及びポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布して樹脂ポリシラザン膜を形成した後、当該樹脂ポリシラザン膜の表面にポリシラザンを含有し、かつ樹脂を含有しない硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成し、前記樹脂ポリシラザン膜及び前記ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて前記樹脂製基材の表面に樹脂・シリカハイブリッド層及びシリカ層を形成させる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法である。
本発明によれば、有害ガス等といった取り扱いの困難な薬品を使用すること無く、また、スパッタやプラズマCVDのような特殊な装置を使用して真空で処理することも無く、炭化水素化合物に対して高い透過防止性能を有する被膜が樹脂の表面に形成された被覆成形品が提供される。
本発明の被覆成形品の第一実施形態又は第二実施形態である燃料油の貯蔵タンク1の一例を示す斜視図である。 図1に示す燃料油の貯蔵タンク1の壁面2の第一実施形態における部分拡大断面図である。 図1に示す燃料油の貯蔵タンク1の壁面2の第二実施形態における部分拡大断面図である。 本発明の被覆成形品の第三実施形態である燃料油の移送用チューブ1aの一例を示す斜視図である。 ガソリン透過性の評価に使用した治具を示す断面図である。
<第一実施形態>
以下、本発明の被覆成形品の第一実施形態である燃料油の貯蔵タンク1について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の被覆成形品の第一実施形態又は第二実施形態である燃料油の貯蔵タンク1の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す燃料油の貯蔵タンク1の壁面2の第一実施形態における部分拡大断面図である。
<燃料油の貯蔵タンク(被覆成形品)>
本実施形態の燃料油の貯蔵タンク(以下、単に「貯蔵タンク」とも呼ぶ。)1は、ガソリン、ガスホール、軽油、灯油、重油等の燃料を貯蔵するために使用される。このような貯蔵タンク1としては、自動車用のガソリンタンクやディーゼル車用の軽油タンクが挙げられる。後に詳しく説明するが、本実施形態の燃料油の貯蔵タンク1は、主として樹脂で構成されており、その内面にポリシラザンを転化して形成させたシリカ層22が形成されている。このため、本実施形態の貯蔵タンク1は、従来使用されてきた金属製の燃料油の貯蔵タンクよりも軽量でありながら、内容物である燃料油の透過を防止する。したがって、本実施形態の貯蔵タンク1を自動車用のガソリンタンクやディーゼル車用の軽油タンクとして使用することにより、燃費が改善される。
本実施形態の貯蔵タンク1は、図1に示すように、貯蔵タンク1の内部と外部とを仕切る壁面2と、燃料油を貯蔵タンク1の内部に注入するための注入管3と、燃料ポンプ(図示せず)を取り付けるための燃料ポンプ取り付け口4と、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する取り付け孔5とを備える。また、図2に示すように、貯蔵タンク1の壁面2は、基材21と、基材21の表面に設けられたシリカ層22とを備える。シリカ層22は、壁面2の表面のうち、貯蔵タンク1の内面側の表面に設けられる。以下、基材21及び基材21の表面に設けられたシリカ層22について説明する。
<基材>
本実施形態の貯蔵タンク1における基材21としては、樹脂やゴムが使用される。このような樹脂やゴムとしては、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム等のゴムが例示されるが、特に制限されない。
基材21は、その表面にシリカ層22が形成されるにあたり、予め成形されていることが好ましい。後に説明するが、シリカ層22は、ガラスと同様の構造を有するセラミック層であり、衝撃に対する耐性がやや低い。この点、基材21が予め成形されていることにより、成形加工時の変形や衝撃によってシリカ層22に亀裂や部分剥離が生じることを防止できる。基材21は、樹脂からなるので、従来燃料タンク等に使用されてきた金属材料に比べて極めて軽量である。したがって、こうした基材21の表面にシリカ層22を形成させて燃料タンク等に使用することにより、自動車等の軽量化を図ることができ、燃費の改善等に役立つ。
基材21を成形する方法は、公知の成形方法を特に制限なく使用することができる。このような成形方法としては、貯蔵タンク1の壁面2の形状を一体的に形成することのできるブロー成形(中空成形)法や、射出成形法等が例示される。これらの中でも、貯蔵タンク1に貯蔵された燃料油が漏出する原因となる接合部を少なくすることができる点で、ブロー成形法が好ましい。
<シリカ層>
次に、本実施形態の貯蔵タンク1におけるシリカ層22について説明する。既に説明したように、シリカ層22は、基材21の表面に形成され、ガソリン、ガスホール、軽油、灯油、重油等といった燃料油の透過を防止する機能を有する。
シリカ層22は、基材21の表面にポリシラザンを含有するコーティング液(硬化性組成物)を塗布することによりポリシラザン膜(コーティング膜)を形成し、当該ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させることにより形成される。ポリシラザンを含有するコーティング液には溶剤が含まれ、当該コーティング液を基材21の表面に塗布した後、溶剤が除去されることによりポリシラザン膜が形成される。シリカ層22は、単層から構成されるものであってもよいし、多層から構成されるものであってもよい。
[ポリシラザンを含有するコーティング液]
次に、シリカ層22を形成するために使用される、ポリシラザンを含有するコーティング液について説明する。上記のように、ポリシラザンを含有するコーティング液には、ポリシラザンと溶剤とが含まれる。
上記コーティング液に使用されるポリシラザンは、「−(SiH−NH)−」(ただし、Hの全部又は一部が置換基で置換されていてもよい。)を繰り返し単位とするポリマーであり、鎖状ポリシラザン、環状ポリシラザン等が挙げられる。鎖状ポリシラザンとしては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、ポリメチルヒドロシラザン、ポリN−メチルシラザン、ポリN−(トリエチルシリル)アリルシラザン、ポリN−(ジメチルアミノ)シクロヘキシルシラザン、フェニルポリシラザン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリシラザンは、1種、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記例示されたポリシラザンの中でも、基材21に対して密着性の高いシリカ層22を得ることができるという観点や、シリカへの転化反応を良好に進行させることができるという観点からは、ペルヒドロキシポリシラザンが好ましく使用される。
上記コーティング液に使用される溶剤は、ポリシラザンと反応せず、均一なポリシラザン溶液を形成させることができるものであれば、特に限定されない。このような溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記コーティング液におけるポリシラザンの濃度は、0.01〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。上記コーティング液におけるポリシラザンの濃度が0.01質量%以上であることにより、燃料油の十分な透過防止性能を有するシリカ層22が得られ、上記コーティング液におけるポリシラザンの濃度が50質量%以下であることにより、良好な塗布性を有するコーティング液が得られる。
上記コーティング液には、ポリシラザン膜が化学反応によりシリカ層22に転化されることを促進させるための触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物、アンモニア水、ピリジン等の塩基、酢酸、無水酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸等のようなカルボン酸やその酸無水物、トリクロロ酢酸等の有機酸、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、三塩化鉄、三塩化アルミニウム等のルイス酸等が挙げられる。
コーティング液には、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を含有させることができる。例えば、紫外線吸収剤、セラミックス又は樹脂からなるフィラー、フッ素化化合物、薬剤成分、光触媒、感光性成分、光沢剤等が挙げられる。
[シリカ層の形成]
上記コーティング液を使用して、基材21の表面にシリカ層22を形成させる。基材21の表面にシリカ層22を形成させるには、まず、基材21の表面にコーティング液を塗布することによりポリシラザン膜を形成させ、当該ポリシラザン膜をシリカに転化させてシリカ層22を形成させればよい。以下、基材21の表面にシリカ層22を形成させる方法を説明する。
基材21にコーティング液を塗布する方法は、例えば、はけ塗り法、スプレー法、ローラーコーター法、グラビアコーター法、浸漬法、流し塗り法等、公知の方法が挙げられる。基材21の表面にコーティング液を塗布することにより、これらの表面にポリシラザン膜が形成される。なお、コーティング液の塗布に先立って、必要に応じて塗布面の研磨や洗浄を行ってもよい。コーティング液を塗布した後、コーティング液に含まれていた溶剤を除去するために乾燥工程を設けることが好ましい。
ここで、貯蔵タンク1は、中空の容器であり、コーティング液は、基材21の表面のうち、貯蔵タンク1の内面側の表面、すなわち、貯蔵タンク1の内面に塗布される。この場合、貯蔵タンク1の内面にコーティング液を塗布するための作業用の開口部は、燃料油の注入管3等といったごく限られた大きさになる。そのため、所定の量のコーティング液を注入管3等から貯蔵タンク1の内部に供給した後、貯蔵タンク1の内面に満遍なくコーティング液が行き渡るように貯蔵タンク1を揺動する方法や、スプレー法により貯蔵タンク1の内面にコーティング液を吹き付ける方法等により、貯蔵タンク1の内面(すなわち、基材21の表面)にコーティング液が塗布される。このような製造方法を採用することにより、ごく限られた範囲にしか開口部を持たない成形品であっても、その内面にシリカ層22を形成させて被覆成形品とすることが可能である。
ポリシラザン膜の厚さは、特に限定されず、シリカ層22が形成された貯蔵タンク1に求められる温度変化に対する伸び縮み耐久性等から、必要とされるシリカ層22の厚さを適宜決定し、そのような厚さのシリカ層22が得られるようなポリシラザン膜の厚さとすればよい。シリカ層22の厚さとしては、0.05〜10μmが好ましく、0.1〜2μmがより好ましい。
ポリシラザン膜を形成させた後に、当該ポリシラザン膜をシリカ層22に転化させる。ポリシラザン膜をシリカ層22に転化させる処理方法は、(1)焼成法、(2)大気圧プラズマ法、(3)マイクロ波法が好ましく例示されるが、ポリシラザンをシリカに転化させることのできる処理方法であれば特に制限なく使用することができる。転化処理が施されることにより、ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンは、架橋、縮合、あるいは、条件によっては酸化、加水分解してシリカに転化し、セラミックス被膜であるシリカ層22を形成する。次に、ポリシラザン膜をシリカ層22に転化させるための上記例示した処理方法について説明する。
(1)焼成法
焼成法は、ポリシラザン膜を加熱することにより、ポリシラザン膜をシリカ層22に転化させる方法である。焼成温度は、通常60〜400℃程度であるが、ポリシラザンの分子量、構造、触媒の有無等によって適宜変更される。ポリシラザン膜を形成させるのに使用したコーティング液に触媒が含まれている場合は、より低温で焼成させてもよい。焼成時間は、焼成温度、ポリシラザン膜の厚さ等によって変動するが、通常0.5〜2時間程度である。
焼成雰囲気は、酸素中、空気中あるいは不活性ガス中等のいずれであってもよいが、空気中がより好ましい。空気中での焼成によりポリシラザンの酸化、あるいは空気中に共存する水蒸気による加水分解反応が進行する。このような処理により、シリカ層22が形成される。
(2)大気圧プラズマ法
大気圧プラズマ法は、酸素雰囲気下、大気圧プラズマ装置によりプラズマ処理を行なう方法であり、ポリシラザン膜の表面に過酸化水素水を滴下して、ポリシラザン膜の表面に過酸化水素水層を形成させてから大気圧プラズマ処理を行なうことが好ましい。このような処理を行なうことにより、ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンがシリカに転化し、シリカ層22が形成される。
(3)マイクロ波法
マイクロ波法は、基材21の表面に形成されたポリシラザン膜にマイクロ波を照射する方法である。ポリシラザンをシリカに転化するには水分が必要と考えられており、この水分は、ポリシラザン膜の表面に水を滴下して供給されたものであってもよいし、空気中に含まれる水分であってもよい。マイクロ波の照射により、水や水蒸気が加熱、活性化されて、ポリシラザンをシリカに転化する反応が進行する。この際、過酸化水素水を併用することが好ましい。このような処理を行なうことにより、ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンがシリカに転化し、シリカ層22が形成される。
上記本実施形態の貯蔵タンク1によれば以下のような効果が奏される。
本実施形態の貯蔵タンク1は、樹脂製の基材21の表面に、ポリシラザンを含有する硬化性組成物をシリカに転化させてなるシリカ層22が形成され、燃料油の貯蔵に使用されるものである。そのため、本実施形態の貯蔵タンク1は、樹脂製の基材21が有する軽量、加工容易性という特徴を有しつつ、燃料油が樹脂製の基材21を透過するのをシリカ層22によって抑制することができる。このような効果により、本実施形態の貯蔵タンク1を自動車等の燃料タンクとして使用すると、自動車等の軽量化を実現しつつ、燃料タンクからの燃料の透過による大気汚染を防止することができる。
なお、従来、樹脂からなる基材の表面にシリカ層を形成させる方法として、TEOS(テトラエトキシシラン)等を珪素源として、プラズマCVD法によりシリカ層を形成させる方法があった。しかし、プラズマCVD法は特殊な装置が必要であり、真空で処理する必要もあるので生産性も悪い。またプラズマCVD法により貯蔵タンクの内面にシリカ層を形成させる場合、貯蔵タンクを半分に分割したような形状の部品を2つ成形し、当該部品の内側面にそれぞれプラズマCVD法によりシリカ層を形成させてから、これら2つの部品を接合する必要がある。この点、本実施形態の貯蔵タンク1は、貯蔵タンクの形状を一体的に成形してから、その内面にシリカ層22を形成させて製造することもできる。
上記で、燃料油の貯蔵タンク1を第一実施形態として、本発明の被覆成形品について説明したが、このような被覆成形品の製造方法も、本発明の一つである。この製造方法は、樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であり、成形された樹脂製基材の内面にポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成させ、当該ポリシラザン膜をシリカに転化させて、樹脂性基材の表面にシリカ層を形成させるものである。当該製造方法については、上記、本発明の第一実施形態の説明で詳細に述べたので、ここでは説明を省略し、本発明の被覆成形品の製造方法を使用した場合の効果を中心に説明する。なお、基材の内面にシリカ層が形成されるが、シリカ層は、基材に隣接して設けられると限らない。すなわち、シリカ層は、基材の表面に何らかの層が設けられ、その層の表面に設けられてもよい。
本発明の被覆成形品の製造方法によれば、以下の効果が奏される。
本発明の被覆成形品の製造方法は、基材21の表面にポリシラザンを含有するコーティング液を塗布してポリシラザン膜を形成し、その後、当該ポリシラザン膜を、例えば加熱するだけで、基材21の表面にシリカ層22を形成させることできる。したがって、コーティング液の塗布ができればシリカ層22の形成が可能であり、複雑な形状の成形品にも対応することができる。本発明の被覆成形品の製造方法によれば、成形済みのタンクやチューブの内面に対して容易にシリカ層22を形成させることができるので、燃料油の貯蔵タンク等の製造に好ましく使用することができる。
<第二実施形態>
次に、本発明の被覆成形品の第二実施形態である燃料油の貯蔵タンク1について説明する。なお、以下に述べる第二実施形態の説明においては、上記の第一実施形態と同様である部分の説明を省略し、上記の第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。図3は、図1に示す燃料油の貯蔵タンク1の壁面2の第二実施形態における部分拡大断面図である。
第二実施形態の燃料油の貯蔵タンク1の壁面2は、図3に示すように、基材21と、基材21の表面に設けられたシリカ層22とを備え、さらに、基材21とシリカ層22との間に、樹脂・シリカハイブリッド層23を備える。すなわち、基材21の表面には、樹脂・シリカハイブリッド層23及びシリカ層22が順に設けられる。樹脂・シリカハイブリッド層23及びシリカ層22は、壁面2の表面のうち、貯蔵タンク1の内面側の表面に設けられる。以下、基材21の表面に設けられた樹脂・シリカハイブリッド層23について説明する。
<樹脂・シリカハイブリッド層>
樹脂・シリカハイブリッド層23は、基材21の表面に形成され、その内部に樹脂とシリカとを含む層である。樹脂・シリカハイブリッド層23は、基材21とシリカ層22との密着性を向上させる他、基材21の表面に存在する微細な凹凸を埋めてその表面を平坦にし、シリカ層22を良好な状態で形成させるための基礎となる。したがって、樹脂・シリカハイブリッド層23は、基材21とシリカ層22との間に設けられる。
樹脂・シリカハイブリッド層23は、基材21の表面に樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液(硬化性組成物)を塗布することにより、樹脂及びポリシラザンを含む膜である樹脂ポリシラザン膜を形成し、当該樹脂ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させることにより形成される。樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液には溶剤が含まれ、当該コーティング液を基材21の表面に塗布した後、溶剤が除去されることにより樹脂ポリシラザン膜が形成される。
[樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液]
次に、樹脂・シリカハイブリッド層23を形成するために使用される、樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液について説明する。樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液には、樹脂とポリシラザンと溶剤とが含まれる。ここで、このコーティング液に含まれるポリシラザン及び溶剤については、先に説明したポリシラザンを含有するコーティング液におけるポリシラザン及び溶剤と同様であるので、説明を省略する。
樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液に使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセチルセルロース、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アルキド樹脂、ガムロジン等が例示される。これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン、アセチルセルロース、シリコーン樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が特に好ましい。コーティング液中の樹脂の濃度は、0.01〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。コーティング液中の樹脂の濃度が50質量%以下であることにより、基材との密着性を図ることができる。
樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液には、本発明の効果を損なわない範囲で、先に説明したポリシラザンを含有するコーティング液と同様に、適宜添加剤を含有させることができる。これらの添加剤については、先に説明したポリシラザンを含有するコーティング液におけるものと同様のものを使用することができるので、ここでの説明を省略する。
次に、基材21の表面に形成した樹脂ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させる処理方法について説明する。樹脂ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンがシリカに転化させることにより、樹脂ポリシラザン膜は、樹脂・シリカハイブリッド層23となる。基材21の表面に形成した樹脂ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化する処理方法は、先に説明した第一実施形態においてポリシラザン膜をシリカ層22に転化させる方法と同様に、(1)焼成法、(2)大気圧プラズマ法、(3)マイクロ波法が好ましく例示されるが、ポリシラザンをシリカに転化させることのできる処理方法であれば特に制限なく使用することができる。これらの処理方法については、第一実施形態の説明で既に述べた通りであるので、ここでの説明は省略する。
形成された樹脂・シリカハイブリッド層23の表面には、シリカ層22が形成される。シリカ層22は、上記樹脂・シリカハイブリッド層23と異なり、樹脂を含有しない。樹脂・シリカハイブリッド層23の表面にシリカ層22を設ける方法は、既に述べた第一実施形態における基材21の表面にシリカ層22を設ける方法と同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、基材21の表面に樹脂・シリカハイブリッド層23及びシリカ層22を形成するにあたり、(1)基材21の表面に樹脂ポリシラザン膜及びポリシラザン膜を設けて、これらの膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて、樹脂・シリカハイブリッド層23とシリカ層22とを一度に形成する方法と、(2)基材21の表面に樹脂ポリシラザン膜を設けてから、樹脂ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて樹脂・シリカハイブリッド層23を形成し、その後、樹脂・シリカハイブリッド層23の表面にポリシラザン膜を形成し、これをシリカ層22に転化する方法とが挙げられるが、いずれの方法を採用してもよい。
上記(1)のように、基材21の表面に樹脂ポリシラザン膜及びポリシラザン膜を形成する場合、基材21の表面に樹脂及びポリシラザンを含有するコーティング液を塗布して、当該コーティング液に含まれる溶剤を除去して樹脂ポリシラザン膜を形成し、その後、この樹脂ポリシラザン膜の表面に、ポリシラザンを含有し、かつ樹脂を含有しないコーティング液を塗布して、当該コーティング液に含まれる溶剤を除去してポリシラザン膜を形成すればよい。
上記本実施形態の貯蔵タンクによれば、上述の第一実施形態の貯蔵タンク1で奏される効果に加えて、さらに以下のような効果が奏される。
本実施形態の貯蔵タンク1は、基材21とシリカ層22との間に、樹脂・シリカハイブリッド層23を有する。そのため、本実施形態の貯蔵タンク1では、基材21の表面におけるシリカ層22の密着性が向上する。
上記で、燃料油の貯蔵タンク1を第二実施形態として、本発明の被覆成形品について説明したが、このような被覆成形品の製造方法も、本発明の一つである。この製造方法は、樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であり、成形された樹脂製基材の内面に樹脂及びポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布して樹脂ポリシラザン膜を形成した後、当該樹脂ポリシラザン膜の表面にポリシラザンを含有し、かつ樹脂を含有しない硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成し、これらの樹脂ポリシラザン膜及びポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて、前記樹脂製基材の表面に樹脂・シリカハイブリッド層及びシリカ層を形成させるものである。当該製造方法については、上記、本発明の第二実施形態の説明で詳細に述べたので、説明を省略する。また、当該製造方法によって奏される効果については、上記本発明の第一実施形態における製造方法の説明で述べたものと同様であるので、説明を省略する。
<第三実施形態>
次に、本発明の被覆成形品の第三実施形態である燃料油の移送用チューブ1aについて説明する。なお、以下に述べる第三実施形態の説明においては、上記の第一実施形態及び第二実施形態と同様である部分の説明を省略し、上記の第一実施形態及び第二実施形態と異なる部分を中心に説明する。図4は、本発明の被覆成形品の第三実施形態である燃料油の移送用チューブ1aの一例を示す斜視図である。
本実施形態における移送用チューブ1aは、図3に示すように、側壁2aによって移送用チューブ1aの内部と外部とを仕切られた中空の筒状体であり、燃料油の移送に使用される。側壁2aは、樹脂製の基材21aと、基材21aの表面のうち移送用チューブ1aの内面側の表面に形成されたシリカ層22aとを備える。基材21aの表面にシリカ層22aを形成させる方法は、上記、第一実施形態の貯蔵タンク1の場合と同様である。
このような燃料油の移送用チューブ1aは、樹脂製であるので、金属製のチューブに比べて重量が小さく、柔軟性に優れる。また、移送用チューブ1aの内面に設けられたシリカ層22aによって、移送用チューブ1aの内部からの燃料油の透過が抑制される。したがって、例えば、本実施形態の移送用チューブ1aを自動車等で燃料を移送するためのチューブとして使用することができる。
<変形例>
以上、本発明の被覆成形品について、実施形態を示して具体的に説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。
例えば、上記実施形態の貯蔵タンク1や移送用チューブ1aは、燃料油に対して使用されるが、本発明の被覆成形品は、その用途が燃料油に限定されるものではなく、炭化水素系化合物に対して使用することが可能である。このような炭化水素系化合物としては、天然ガス、液化石油ガス、原油、ナフサ、ベンゼン、トルエン、キシレン等が例示されるが、限定されない。
また、上記第三実施形態の移送用チューブ1aは、基材21aの表面にシリカ層22aが形成されるが、上記第二実施形態の燃料油の貯蔵タンク1と同様に、基材21aとシリカ層22aとの間に、樹脂・シリカハイブリッド層を有してもよい。この場合、樹脂・シリカハイブリッド層は、上記第二実施形態の燃料油の貯蔵タンク1と同様の方法で形成される。
また、上記実施形態は、貯蔵タンク1や燃料油の移送用チューブ1aに係るものだが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、樹脂製の基材の表面に、ポリシラザンを転化させてなるシリカ層が形成された被覆成形品であればよい。このような被覆成形品としては、自動車、航空機、船舶等に使用される各種のパーツの他、炭化水素系化合物の地下タンクや屋外タンク、炭化水素系ガスのガスタンク、炭化水素系ガスのガスボンベ等といった貯蔵タンク類や、炭化水素系化合物のパイプライン等といった移送設備が例示されるが、限定されない。自動車、航空機、船舶等に使用される上記パーツとしては、燃料タンク、燃料配管等が例示されるが、特に限定されない。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ペルヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、NAX120、ペルヒドロポリシラザン含量20質量%)を、ペルヒドロポリシラザンの濃度が5質量%となるようにジブチルエーテル(和光純薬株式会社製)に溶解させ、コーティング液Aを調製した。このコーティング液Aを直径45mm、厚さ2mmの円形をしたポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB330)製シートに塗布し、乾燥させることにより、当該ポリエチレンシートの表面にポリシラザン膜A1を形成させた。
その後、オーブンにて95℃1時間焼成し、厚さ0.5μmのシリカ層をポリエチレンシートの表面に形成させることにより、実施例1の被覆成形品を得た。
[実施例2]
ペルヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、NAX120、ペルヒドロポリシラザン含量20質量%)を、濃度が5質量%となるようにジブチルエーテル(和光純薬株式会社製)に溶解させ、コーティング液Bを調製した。このコーティング液Bを直径45mm、厚さ2mmの円形をしたポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB330)製シートに塗布し、乾燥させることにより、当該ポリエチレンシートの表面にポリシラザン膜B1を形成させた。
その後、ポリシラザン膜B1の表面に過酸化水素水(過酸化水素濃度3質量%)を滴下して、過酸化水素水層を形成させた。次に、キャリアガスであるアルゴンガスに酸素ガスを7容量%混合して反応ガスとし、当該反応ガスを1000sccmで大気圧プラズマ装置(NUエコ・エンジニアリング株式会社製)の大気圧プラズマ領域を通過させてから、ポリシラザン膜B1の表面に5分間吹きつけて、厚さ0.5μmのシリカ層をポリエチレンシートの表面に形成させた。
同様の手順にて、シリカ層を形成させたポリエチレンシートの面と反対側の面にもシリカ層を形成させ、ポリエチレンシートの両面にシリカ層を形成させることにより、実施例2の被覆成形品を得た。
[実施例3]
アクリル系樹脂(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、BR101)を、濃度が5質量%になるようにジブチルエーテル(和光純薬株式会社製)に溶解させ、樹脂溶液を調製した。そして、この樹脂溶液と、実施例2のコーティング液Bとを1:1の質量比で混合して、コーティング液C1を調製した。また、ペルヒドロポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、NAX120、ペルヒドロポリシラザン含量20質量%)を、濃度が5質量%になるようにジブチルエーテル(同上)に溶解させ、コーティング液C2を調製した。次に、直径45mm、厚さ2mmの円形をしたポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB330)製シートの表面にコーティング液C1を塗布、乾燥させることにより、樹脂ポリシラザン膜C1を形成させ、さらに樹脂ポリシラザン膜C1の表面にコーティング液C2を塗布、乾燥させることにより、ポリシラザン膜C2を形成させた。したがって、ポリエチレンシートの表面には、樹脂ポリシラザン膜C1及びポリシラザン膜C2が形成されていることになる。
次に、ポリシラザン膜C2の表面に過酸化水素水(過酸化水素濃度3質量%)を滴下して、過酸化水素水層を形成させた。その後、基材であるポリエチレンフィルムごと電子レンジ(株式会社日立製作所製、HITACHI MR−M220型)の内部に載置して、マイクロ波(500W)を1分間照射することにより、合計厚さ1.5μmの樹脂・シリカハイブリッド層及びシリカ層(樹脂・シリカハイブリッド層1μm、シリカ層0.5μm)をポリエチレンシートの表面に形成させ、実施例3の被覆成形品を得た。
[比較例1]
シリカ層を形成させていない直径45mm、厚さ2mmの円形をしたポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、HB330)製シートを比較例1の成形品とした。
[ガソリン透過性評価]
図4に示すステンレス製の評価用治具を使用して、実施例1〜3及び比較例1の(被覆)成形品のガソリン透過性評価を行った。図5は、ガソリン透過性の評価に使用した治具を示す断面図である。
図5に示すように、空間A及びBを有するステンレス製の評価用治具の空間Aにガソリン5ccを供給した上で、空間A及び空間Bの間に(被覆)成形品を挟んだ状態で所定の評価温度にて所定期間放置した。その後、被覆成形品を通過して空間Bに移動したガソリンの空間Bにおける空気中濃度を、ガス吸引機(株式会社ガステック製、GV−100)及びガソリン検知管(株式会社ガステック製、NO.101L)を使用して測定した。ガソリンの濃度測定における吸引時間は、1分間である。なお、被覆成形品は、表面に形成されているシリカ層をガソリンの存在する空間Aの方に向けて載置されている。また、被覆成形品1の上下をOリングで挟んだ上で評価用治具をボルトで締めることにより、空間A及びBを密閉した。評価結果を表1に示す。
Figure 0005421664
表1に示す通り、実施例1〜3の被覆成形品を使用すると、比較例1のポリエチレンシートを使用した場合よりも、空間Aから空間Bに移動するガソリンの量が著しく小さくなることがわかる。このことから、本発明の被覆成形品が高いガソリン透過防止性能を有することが理解される。
1 燃料油の貯蔵タンク(被覆成形品)
1a 燃料油の移送用チューブ(被覆成形品)
2 壁面
21 基材
22 シリカ層
23 樹脂・ポリシラザンハイブリッド層

Claims (6)

  1. 樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であって、成形された前記樹脂製基材の内面にポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成させ、前記ポリシラザン膜をシリカに転化させて前記樹脂製基材の表面にシリカ層を形成させる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
  2. 樹脂製基材からなる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法であって、成形された前記樹脂製基材の内面に樹脂及びポリシラザンを含有する硬化性組成物を塗布して樹脂ポリシラザン膜を形成した後、当該樹脂ポリシラザン膜の表面にポリシラザンを含有し、かつ樹脂を含有しない硬化性組成物を塗布してポリシラザン膜を形成し、前記樹脂ポリシラザン膜及び前記ポリシラザン膜に含まれるポリシラザンをシリカに転化させて前記樹脂製基材の表面に樹脂・シリカハイブリッド層及びシリカ層を形成させる炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
  3. 前記被覆成形品が、前記炭化水素系化合物が通過するための開口部を有するチューブ又は容器であり、前記被覆成形品の内面における前記樹脂製基材の表面に前記シリカ層が形成される、請求項1記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
  4. 前記被覆成形品が、前記炭化水素系化合物が通過するための開口部を有するチューブ又は容器であり、前記被覆成形品の内面における前記樹脂製基材の表面に、前記樹脂・シリカハイブリッド層と、前記シリカ層とがこの順で形成される、請求項2記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
  5. 前記炭化水素系化合物が燃料油である、請求項1〜4のいずれか1項記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
  6. 前記被覆成形品が自動車用部材である請求項1〜5のいずれか1項記載の炭化水素系化合物の貯蔵又は移送用の被覆成形品の製造方法。
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