JP5418937B2 - インクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体 - Google Patents

インクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェットプリンターの水性インクとして好適に用いられる顔料水分散体に関する。
インクジェットプリンターはノズル等から液状インクを紙などの媒体に吐出させることによって行われ、インクを吐出させる方法としては例えば圧電素子の振動圧力を利用する方法、熱により気泡を形成し成長させることにより生じる圧力を利用する方法等があり、これらの各種の方法による記録装置が、インクジェットプリンターとして製造、販売されている。
インクジェットプリンター用のインクには、(1)紙上で滲みがなく、高濃度、高解像度で均一な画像が得られること、(2)紙上においてインクの乾燥性が良好であること、(3)ノズル先端でのインク乾燥による目詰まりがなく吐出安定性が良好であること、(4)定着性や耐水性など画像の堅牢性が良好であること、(5)長期保存安定性が良好であること、などの特性が要求される。
このインクには主として染料が用いられてきたが、画像の耐水性、耐光性に劣るため、ビジネス文書用等のインクジェットプリンター用インクにはカーボンブラック等の顔料が用いられている。顔料は水溶性でないため界面活性剤などの分散剤を用いて水に対する分散安定性を図っている。しかし、界面活性剤などの分散剤を用いると表面張力の低下を招き、紙に浸透してしまうため、高濃度な画像が得られない問題がある。また、顔料に対して界面活性剤が時間経過とともに脱着してしまうため、長期保存した場合に凝集や沈降現象が生じるなど長期保存安定性が良くないという問題も生じる。
そこで、カーボンブラックを酸化処理してカーボンブラック粒子表面に親水性の官能基を生成させて水分散性能を改善した自己分散型カーボンブラック顔料(例えば、特許文献1)が提案されている。また、近年、印字速度の高速化に伴いコピー用紙等の普通紙に印字してもインクの乾燥が速く、かつ高画質であるインクが強く要求されている。しかし、顔料自体が分散している自己分散型顔料は紙に浸透しにくい分、紙上に着接したインクの乾燥が遅くなる問題がある。
また、紙に浸透させずに紙上においてインクの乾燥性を向上させる方法として、インクジェット方式の記録が複数のカートリッジのノズルを組み合わせて吐出して色を再現させることを利用し、カラーインクにブラックインクを凝集させる成分を含む方法が提案されている。
例えば、特許文献2にはブラックインクと混合されたときにブラックインク中の顔料の分散を不安定化させるカラーインク染料及び添加剤を含むインクセットが、また特許文献3にはブラックインクの印字領域にブラックインクを凝集させるカラーインクを印字するカラーインクセットが提案されている。しかし、いずれの場合もカラーインクとブラックインクを組み合わされていない部分がないよう設計しなければならない制約がある。
また、顔料インク単独で乾燥性を向上させる方法として、特許文献4には酸化処理して生成したカーボンブラック粒子表面の酸性基を塩基性アミノ酸類などで中和して酸性基中の水素基を塩基性アミノ酸で置換したカーボンブラック水性分散体が提案されている。しかし、この方法では長期間保存した時に分散安定性が悪くなる傾向があり、これは塩基性アミノ酸がグリセリン主成分とするインクジェットインキ中で顔料の凝集を引き起こしているものと推定される。
特開平11−148026号公報 特開2001−152059号公報 特開2001−294788号公報 特開2007−045901号公報
本発明者らは上記の問題を解消するために高濃度、高解像度で、保存安定性を損なうことなく、速乾性に優れた、水性顔料分散体を得るために鋭意研究を行い、水性ウレタン樹脂を顔料分散体に加えることにより、保存安定性を損なうことなく、表面張力を低下させないことで紙上での高濃度な画像を実現でき、且つ紙への定着性を高めることでインクの速乾性が実現できることを見出した。
すなわち、界面活性剤の機能を有する分子構造及び造膜性機能を持つ水性ウレタン樹脂を顔料分散体に加えることにより、保存安定性を損なうことなく、紙定着性及び耐水性の向上が図られ、分子中に塩の基又はポリオキシエチレンエーテル鎖の親水性部分と油又は脂肪酸由来の親油性構造を有する水性ウレタン樹脂、顔料及び水からなり、保存安定性および速乾性に優れたインクジェットプリンター水性インクとして好適に使用される顔料水分散体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための本発明に係るインクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体は、塩の基を有する化合物(A)、ひまし油変性ポリオール(B)および脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)を必須構成成分として含み、炭素−炭素三重結合を有さない水性ウレタン樹脂と自己分散型カーボンブラック及び水からなり、
前記水性ウレタン樹脂中のひまし油変性ポリオール(B)の割合が15〜75wt%であり、
表面張力が50〜72mN/mである
ことを構成上の特徴とする。
本発明の顔料水分散体によれば、界面活性剤の機能を有する分子構造及び造膜性機能を持つ水性ウレタン樹脂、すなわち、塩の基を有する化合物(A)、分子中に油又は脂肪酸由来分子を有するポリオール(B)および脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)を必須構成成分として含む水性ウレタン樹脂を顔料及び水に添加することにより、保存安定性を損なうことなく、紙定着性(印字濃度)、速乾性など、優れたインク性能を有するインクジェットプリンターに好適に用いられる水性インクを提供することが可能となる。
本発明の水性ウレタン樹脂は、塩の基を有する化合物(A)、分子中に油又は脂肪酸由来分子を有するポリオール(B)および脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)を必須構成成分として公知任意の方法で製造することができるが、更に、公知任意のポリオール、ジイソシアネート化合物を併用することもできる。
水性ウレタン樹脂は公知の方法である塩の基を有する化合物(A)と、分子中に油又は脂肪酸由来分子を有するポリオール(B)、必要に応じて公知のポリオール(B−1)、と脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)、必要に応じて公知のポリイソシアネート(C−1)とを40〜120℃の温度で反応させることによって得られる。
例えば、塩の基を有する化合物(A)のモル数を(a)、分子中に油又は脂肪酸由来分子を有するポリオール(B)のモル数を(b)、公知のポリオール(B−1)のモル数を(b−1)、脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)のモル数を(c)、公知のポリイソシアネート(C−1)のモル数を(c−1)とすると、本発明のウレタン樹脂は次のような方法にて得ることができる
〔(a)+(b)+(b−1)〕/〔(c)+(c−1)〕≧1
(1)水酸基末端のウレタン樹脂を1段階の反応で得ることができる。
(2)同じモル比にて、〔(a)〕/〔(c)+(c−1)〕或いは〔(a)+(b)〕/〔(c)+(c−1)〕のようにポリオールの一部を第一段階で予め反応しイソシアネート基末端オリゴマーを得る。次いで残余のポリオールを第二段階で反応させることで得ることもできる。必要に応じ、第一段階反応後の反応物にジオール、アミン、アミノアルコールを反応し、分子の伸長をすることができる。
(3)NCO末端(2)のオリゴマー反応物を水に転相後、アミン、アミノアルコールなどにより分子伸張あるいは架橋することができる。
ウレタン樹脂の反応は、無溶媒下或いは有機溶媒中で行うことができ、反応溶媒はイソシアネート基と反応しない公知任意の有機溶媒を用いることができる。ウレタン樹脂が有機溶剤中で製造された場合、必要に応じて水に転送後、製造に用いられた有機溶媒を減圧溜去する。
ポリウレタンの製造反応には、必要に応じて公知任意の触媒を用いることができ、触媒としてはジブチル錫ジサクシネート、ジブチル錫ジラウリレート、オクチル酸第一錫、などの錫系触媒、トリエチレンジアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7)、DBU塩などのアミン系ウレタン触媒、などが代表例としてあげられる。
水性ウレタン樹脂の必須構成成分である塩の基を有する化合物類(A)としては、例えば、塩の基として、リン酸エステル基、スルホン酸基、三級アミノ基、カルボキシル基、或いはそれらの中和塩基等の何れかを有するジオール類、及びジアミン類が適する。具体的例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミノプロピルエーテル、トリメチロールプロパンモノリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ硫酸エステル、二塩基酸成分の少なくとも一部がナトリウムスルホ琥珀酸、或いはナトリウムスルホイソフタル酸であるポリエスレルジオール、Nーメチルジエタノールアミン、ジアミノカルボン酸類、例えばリシン、シスチン及び3,5−ジアミノカルボン酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸ならびに3,5ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、ジヒドロアルカン酸、或いは、カルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール等が例示される。
塩の基有する化合物(A)の必要量は親水性基の種類、組合せで決まる。前記した例の中でも親水性基として特に好ましいものは、分子中にカルボキシル基、スルホン酸塩基から選ばれる何れか一種或いは二種を併せ有するか、またはこれらを有するものの混合物である。とりわけカルボキシル基を導入するのが種々の点でバランスが取り易く、操作しやすい。この場合の固形分酸価は10〜120KOHmg/gの範囲が好ましく、20〜70KOHmg/gの範囲がより好ましい。
前記した、塩の基の代表として挙げた中で、カルボキシル基を中和する塩基性の化合物としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリアルキルアミン類、ジメチルモノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールモノメチルアミン、などのアルキルアルカノールアミン類を挙げることができる。
本発明の水性ウレタン樹脂の必須成分(A)以外の親水性成分としては、ジオール、トリオールを出発物質としてエチレンオキサイドを付加して得られるポリオキシエチレンエーテルジオール、ポリオキシエチレンエーテルトリオール等のポリオキシエチレンエーテル鎖の数平均分子量が400〜3000のポリオール等を挙げる事ができる。
更に、ポリオキシエチレンエーテル鎖の数平均分子量が400〜3000のジオールの末端がアクリレートであって、もう一方の末端がメトキシ基等のアルコキシル基になっているアルコキシポリオキシエチレングリコールアクリレートのアクリロイル基と、ジアルカノールアミン、モノアルカノールアミンとのマイケル付加反応によって得られるジオール、或いはアミノアルコールなども例示される。
なお、必須成分以外の親水成分として挙げたポリオキシエチレンエーテル鎖の数平均分子量が400〜3000のポリオール成分は、水性ウレタン樹脂成分中の0〜30重量%であることが好ましい。
次に、分子中に油又は脂肪酸由来の分子を有するポリオール(B)としては、ひまし油脂肪酸とグリコールによって得られるジオール、ひまし油と脂肪酸から得られるジオールなどのひまし油変性ポリオール、ひまし油(2.7官能)、油のアルコリシスによって得られるポリオールやC6以上の直鎖または分岐アルキル、アルケニルジオールとC7以上の直鎖または分岐アルキル、アルケニル二塩基酸からなる親油性ポリエステルジオールなども油脂由来の成分と同効の親油性ジオール化合物として挙げられる。
親油性ポリエステルジオール成分として挙げたC6以上のジオールとしては、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどが挙げられる。ジオール同効化合物としてC6以上の分子鎖を持つモノエポキシ化合物を挙げることができる。
前記したC7以上の二塩基酸としては、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(スベリン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)などが挙げられる。ドデセニル無水コハク酸、などのアルキル無水コハク酸などもその同効化合物として挙げることが出来る。
脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)としては、例えば、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート「リジントリイソシアネート、前記脂肪族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂肪族イソシアネートのアダクト体」、イソホロンジイソシアネート、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4−ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、脂環族トリイソシアネート「前記脂環族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂環族イソシアネートのアダクト体」、などが挙げられ、これらの二種類以上のイソシアネート化合物を混合して用いることが出来る。
必須成分として挙げた化合物以外の公知任意のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、等のポリオールを挙げることが出来る。
更には、各種ポリマーポリオール類が挙げられる。例えば、前記したポリオール類、及びこれらの同効成分として、エチルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、或いは、アルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン製)等とアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸等の脂肪族二塩基酸、乃至は無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸、乃至は無水ヒドロフタル酸、ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸等との縮合反応で得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。更に、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンの開環重合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
更に、ポリエーテルポリオールなどの高分子ポリオール類として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルキレンオキシド付加物、及びポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール及びこれらの二種以上の混合物が挙げられる。
必須成分として挙げた化合物以外の公知任意のジイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート、芳香脂肪族トリイソシアネート「キシリレンジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香脂肪族イソシアネートのアダクト体」、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート「トリフェニルメタントリイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香属イソシアネートのアダクト体」、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの3官能以上のポリイソシアネート、コスモネートLL(三井化学(株)製:カルボジイミド化した4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)、これらの二種類以上のイソシアネート化合物を混合して用いることが出来る。
本発明のインクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体は、以上のようにして作製した水性ウレタン樹脂を、水に分散した顔料を加えて攪拌して得られる。水性ウレタン樹脂の割合としては、顔料水分散体中に、固型分換算で顔料あたり0.1〜15wt%とすることが好ましく、更に0.5〜3wt%であることが望ましい。水性ウレタン樹脂の配合量が少ないと効果が十分でなく速乾性を改善することができない。一方、配合量が多すぎると高濃度な画像が得られない。
本発明で用いる顔料としてはカーボンブラック、特に自己分散型カーボンブラックが好ましく、例えば、東海カーボン(株)製の自己分散型カーボンブラックである商品名AquaBlack 162、AquaBlack164、AquaBlack174等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。
通常市販されているインクジェットプリンター水性インクには、顔料水分散体以外に湿潤剤、定着剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤などの添加剤を加えるため表面張力は低下する。そのため、インクジェットインクとして表面張力を低めに設計することは容易であるが、高めに設計することが困難である。しかし、表面張力を低下させない方が紙上での高濃度な画像を実現するには有利である。本発明の顔料水分散体の表面張力は50〜72mN/mと比較的高いため、設計の自由度の高いインクジェットインク用顔料水分散体が提供できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何ら制約されるものではない。
実施例1
還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器にひまし油変性ジオール(Mn732 豊国製油(株)製)202部、ひまし油変性ジオール(Mn431 豊国製油(株)製)32部、ジメチロールプロピオン酸79部、ポリオキシエチレンエーテルグリコール(PEG#600日本油脂(株)製)43部、プロピレングリコール13部、1,6,−ヘキサメチレンジイソシアネート76部、水添MDI(ジシクロヘキサンメタン−ジイソシアネート)155部、メチルエチルケトン(MEK)400部を加えて75℃迄昇温し、昇温後1時間にジブチル錫ラウリレートを0.3部加える。更に75℃にて保温してNCO%が0.1%以下まで反応して得られた反応物(固形分酸価55)を45℃以下まで冷却し、撹拌しながらアンモニア水(NH25%aq)40部、純水1400部を加え転相した。撹拌しながら20〜60℃にてMEKを減圧溜去して、不揮発分33%、PH6.7の水性ウレタン樹脂「WU−1」を得た。
得られた「WU−1」を、AquaBlack 174(不揮発分20%)に対して固型分換算1.0wt%加えた。すなわち、得られた「WU−1」3部とAquaBlack174を500部加え、その後、室温で2時間攪拌して、水性ウレタン樹脂を含有した顔料水分散体を作製した。
実施例2
還流冷却管、及び窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ひまし油変性ジオール(Mn732 豊国製油(株)製)258部、ジメチロールプロピオン酸79部、ポリオキシエチレンエーテルグリコール(PEG−1000日本油脂製)26部、プロピレングリコール20部、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート86部、イソホロンジイソシアネート131部、メチルエチルケトン(MEK)400部を加えて75℃迄昇温し、昇温後1時間にジブチル錫ラウリレートを0.3部加える。更に75℃にて保温してNCO%が0.1%以下まで反応した。得られた反応物を45℃以下まで冷却し、撹拌しながらアンモニア水(NH25%aq)59部、純水1400部を加え転相した。撹拌しながら20〜60℃にてMEKを減圧溜去して、不揮発分33%の水性ウレタン樹脂「WU−2」を得た。
得られた「WU−2」をAquaBlack 174(不揮発分20%)に対して固型分換算1.0wt%加えた。すなわち、得られた「WU−2」3部とAquaBlack174を500部加え、その後、室温で2時間攪拌して水性ウレタン樹脂を含有した顔料水分散体を作製した。
実施例3
実施例1と同じ「WU−1」をAquaBlack 174(不揮発分20%)に対して固型分換算で0.5wt%加えた。すなわち、得られた「WU−1」3部とAquaBlack174を1000部加えた。その後、室温で2時間攪拌して、水性ウレタン樹脂を含有した顔料水分散体を作製した。
実施例4
実施例1と同じ「WU−1」をAquaBlack 174(不揮発分20%)に対して固型分換算で3.0wt%加えた。すなわち、得られた「WU−1」9部とAquaBlack174を500部加えた。その後、室温で2時間攪拌して、水性ウレタン樹脂を含有した顔料水分散体を作製した。
比較例1
水性樹脂として、ジョンソンポリマー社製スチレン-アクリル樹脂「ジョンクリル61J」(不揮発分30%)をAquaBlack 174(不揮発分20%)に対して固型分換算で1.0wt%加えた。すなわち、「ジョンクリル61J」1部とAquaBlack174を150部加えた。その後、室温で2時間攪拌して、スチレン−アクリル樹脂を含有した顔料水分散体を作製した。
比較例2
AquaBlack174(不揮発分20%)のみとして、樹脂など添加しない場合を比較例2とした。
これらの顔料水分散体について、以下の方法によりインク性能を評価した。
<表面張力>
ASTM D1590に基づき、協和界面科学社製CBVP-Zにて表面張力を測定し、その結果を表1に示した。表1より、実施例1〜4の表面張力は50mN/mを超えているが、比較例1の表面張力は50mN/mを下回っている。なお、樹脂など添加しない自己分散型カーボンブラック顔料のみの比較例2は72.0mN/mで、水の表面張力とほぼ同じである。
Figure 0005418937
<保存安定性>
各顔料水分散体をガラス製サンプル瓶(100ml)に入れ密封して、70℃で4週間放置し、放置前後での顔料水分散体の粘度と粒子径を測定した。なお、粘度は回転振動式粘度計(VM-100A-L山一電機(株)製)にて、粒子径はヘテロダインレーザドップラー方式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、UPA model9340)にて測定し、その結果を表2に示した。実施例及び比較例とも、70℃で4週間放置後も粘度や平均粒径に殆ど変化は見られなかった。
Figure 0005418937
<印字濃度>
各顔料水分散体について、カーボンブラック固型分6.0wt%、グリセリン15.0wt%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10.0wt%、1,5-ペンタンジオール2.5wt%、サーフィノール465(日信化学工業(株)製アセチレングリコール系界面活性剤)1.0wt%となるよう混合し、モノエタノールアミンでpH=7.5に調製し、純水で100wt%にしてインク化した。その後、インクジェットプリンタEM−930C(セイコーエプソン(株)製)を用いて3紙(Xerox4200紙、Ricopy6200紙、コクヨOA再生紙)にベタ印刷し、マクベス濃度計 (コルモーゲン社製RD-927)を用いて光学濃度を測定し、その結果を表3に示した。
表3より、樹脂など添加しない自己分散型カーボンブラック顔料のみの比較例2が一番高い値を示しているが、実施例1〜4での値は殆ど低下していない。一方、比較例1の場合大きく低下していることが認められる。
Figure 0005418937
<速乾性>
前項の印字濃度試験と同一条件でベタ印刷をし、10秒後、20秒後にその印刷部分に新品の同紙を置いて300gの重りを乗せて10秒放置後に取り外し、後者の用紙にインクが付着しているかどうかを下記の基準で評価して、その結果を表4に示した。
○:10秒後でも付着が見られない。
△:10秒後に付着が見られるが、20秒後には付着が見られない。
×:20秒後にも付着が見られる。
表4より、実施例1、2、4及び比較例1は、全紙で10秒後でも付着が見られなかった。実施例3は、Ricopy6200で10秒後付着が見られた。比較例2は乾燥しにくく、Ricopy6200やコクヨ再生紙では20秒でも付着してしまった。
Figure 0005418937
以上で示したように、界面活性剤の機能を有する分子構造及び造膜性機能を持つ、分子中に塩の基又はポリオキシエチレンエーテル鎖の親水性部分と油又は脂肪酸由来の親油性構造を有する水性ウレタン樹脂を顔料分散体に加えた場合、保存安定性や印字濃度が損なわれず、速乾性に優れていることが確認できた。

Claims (3)

  1. 塩の基を有する化合物(A)、ひまし油変性ポリオール(B)および脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(C)を必須構成成分として含み、炭素−炭素三重結合を有さない水性ウレタン樹脂と自己分散型カーボンブラック及び水からなり、
    前記水性ウレタン樹脂中のひまし油変性ポリオール(B)の割合が15〜75wt%であり、
    表面張力が50〜72mN/mである
    ことを特徴とする、インクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体。
  2. 水性ウレタン樹脂の割合が固型分換算で顔料に対し0.1〜15wt%である、請求項1記載のインクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体。
  3. 塩の基を有する化合物(A)がジアルカノールアルカン酸又はジアルカノールアルカン酸のラクトン付加物である、請求項1記載のインクジェットプリンター水性インク用顔料水分散体。
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