JP5418643B2 - 真空断熱材 - Google Patents

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Description

本発明は、高性能真空断熱材に関するものである。
近年、高真空を必要とする工業技術への期待が高まりつつある。例えば、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
一般的な断熱材として、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性能を向上するためには断熱材の厚さを増す必要があり、断熱材を充填できる空間に制限があって省スペースや空間の有効利用が必要な場合には適用することができない。
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。これは、スペーサの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材中に挿入し内部を減圧して封止した断熱体である。
真空断熱材内部の真空度を上げることにより、高性能な断熱性能を得ることができるが、真空断熱材内部に存在する気体には大きく分けて次の3つがある。一つは、真空断熱材作製時、排気できずに残存する気体、別の一つは、減圧封止後、芯材や外被材から発生する気体(芯材や外被材に吸着している気体や、芯材の未反応成分が反応することによって発生する反応ガス等)、残りの一つは、外被材を通過して外部から侵入してくる気体である。
これらの気体を吸着するために気体吸着材を充填する方法が考案されている。気体吸着材は保存時の劣化を防ぐため、外部雰囲気と非接触の環境で保存される必要がある。一方、真空断熱材に充填された際は、真空断熱材内部の雰囲気と連通して、気体を吸着する必要がある。気体吸着材と真空断熱材内部を連通させるための方法もまた考案されている(特許文献1参照)。
特許文献1において、密封袋に減圧封止した気体吸着材と磁性体の鋲を予め外被材中に設置しておき、真空封止後に永久磁石で鋲を移動させ、密封袋に貫通孔を生じさせるものである。これにより、気体吸着材と外被材内部が連通し、気体の吸着が可能になる。
特公平4−51752号公報
しかしながら、上記従来の構成では芯材として粉末を用いている。一方、包材内部と外被材内部を連通させるために工数を必要とする。一般に、粉末系芯材の真空断熱材は外被材内部の圧力に対する依存性が小さい。従って外部から気体が侵入しても、熱伝導率の増大が小さくなる。これに対し、包材内部と外被材内部を連通させるために工数によりコストが増大する。これらの理由により、コストの増大に対して熱伝導率低減効果が小さいと
いう課題があった。また、連通する際に鋲を用いたプロセスが必要であるため、真空断熱材の厚さが増大し、外被材に負荷がかかるという課題があった。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、空気吸着材の設置による弊害を解決して、熱伝導率低減の効果が大きい真空断熱材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の真空断熱材は、少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性の包材からなる袋に真空封止された気体吸着材と、外力が加えられた場合に前記包材に孔を開けることが可能な突起物を有する部材とを、ガスバリア性に優れた外被材で被って前記外被材内部を真空封止してなり、前記部材は、前記突起物が前記包材に孔を開けて前記包材内部と前記外被材内部とを連通させるように構成されており、前記包材内部と前記外被材内部との連通が、前記突起物と前記包材との接触によりなされ、前記突起物が樹脂よりなり、前記突起物を有する部材が、圧力負荷時には変形により平板状に近くなることを特徴とするものである。
つまり、低圧力下において粉末系の芯材に比較して熱伝導率が小さい、すなわち断熱性に優れる繊維系の芯材と気体吸着材を用い、気体吸着材の包材内部と真空断熱材の外被材内部の連通を工数の増大を伴わずに行うものである。
このようにすることで、繊維系芯材の低圧力下における優れた断熱性能を維持する。また、工数を増大させないため、コスト増大を抑えることができる。
また、真空断熱材は、他の断熱材に比較して同じ厚さあたりでの断熱性能に優れているため、同じ断熱性能を得るために用いる厚さを少なくすることができる。これは、異なる熱伝導率の断熱材で同等の断熱性を得るために必要な厚さは、それぞれの断熱材の熱伝導率に比例するためである。一方、真空断熱材の厚さは、概ね一気圧下での芯材の厚さと吸着材と、吸着材の特性を発揮させるための機構の厚さの和になる。
ここで、吸着材の特性を発揮させるための機構とは、吸着材の不使用時には大気との接触を防ぐ包材と、包材内部と外被材内部を連通するための突起物を有する部材である。従って、突起物を有する部材の薄型化がなされれば、真空断熱材の薄型化が可能になる。
突起物を有する部材は、大気圧負荷時には平板状に近くなるため真空断熱材の厚さ増大に対する寄与度が小さい。従って、粉末の気体吸着材を用いることにより薄型化された真空断熱材を得ることができる。
平板状とは、ある部材が、互いに平行で曲率が0の二枚の面で定義される空間内に収まり、この部材において最も離れた二点間の距離が、平面の距離の10倍以上であるものである。従って、必ずしも、ある部材の表面の曲率がこの部材全体で一様であることを意味しない。また、真空断熱材を薄くするため、互いに平行で曲率が0の二枚の面の距離は3mm以下が望ましい。
本発明によれば、繊維系芯材の低圧力における優れた断熱性を維持し、気体吸着材の設置によるコストの増大を抑え、費用対効果に優れた真空断熱材を得ることができる。
本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図 (a)同実施の形態の真空断熱材に使用した突起物を有する部材の断面図(b)同実施の形態の真空断熱材に使用した突起物を有する部材の上面図 同実施の形態の真空断熱材の真空封止前の空気吸着デバイスを示す断面図 同実施の形態の真空断熱材の真空封止後の空気吸着デバイスを示す断面図 (a)本発明の実施の形態2における真空断熱材に使用した突起物を有する部材の断面図(b)同実施の形態の真空断熱材に使用した突起物を有する部材の上面図 (a)本発明の実施の形態3における真空断熱材に使用した突起物を有する部材の断面図(b)同実施の形態の真空断熱材に使用した突起物を有する部材の上面図 同実施の形態における真空断熱材の真空封止前の気体吸着デバイスの断面図
第1の発明は、少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性の包材からなる袋に真空封止された気体吸着材と、外力が加えられた場合に前記包材に孔を開けることが可能な突起物を有する部材とを、ガスバリア性に優れた外被材で被って前記外被材内部を真空封止してなり、前記部材は、前記突起物が前記包材に孔を開けて前記包材内部と前記外被材内部を連通させるように構成されており、前記包材内部と前記外被材内部の連通が、前記突起物と前記包材の接触によりなされ、前記突起物を有する部材が樹脂よりなることを特徴とするものである。
繊維材料を含む芯材を用いて作製した真空断熱材の熱伝導率は、粉末材料のみからなる芯材を用いて作製した真空断熱材の熱伝導率に比較して、低圧力領域では小さく、高圧力領域では大きい。従って、繊維材料を含む芯材を用いて作製した真空断熱材は、その外被
材内部の圧力を低く維持することが重要である。
本発明の真空断熱材は、外被材内に気体吸着材を有しているため、外被材内部は圧力が低く維持され、繊維材料を含む芯材を用いた真空断熱材の熱伝導率は低く維持される。
ここで繊維材料を含む芯材とは、芯材の重量に対して繊維を1パーセント以上100パーセント以下含むものであって、繊維材料と繊維材料以外の複合体であっても良い。
ガスバリア性に優れた包材とは、気体難透過性の製袋可能なフィルムまたはシート状の部材である。例えば、ポリプロピレンフィルム、アルミニウム箔、低密度ポリエチレンの順にラミネートしたフィルムなどがあげられる。また、袋とは気体吸着材を包み込むことにより、周囲の空間と独立させるものであり、4方をヒートシールした袋、ピロー袋、ガゼット袋等がある。また、気体透過度が10[cm/m・day・atm]以下であることが好ましく、より望ましくは10[cm/m・day・atm]以下となるものである。
突起物を有する部材とは、周囲の曲率に比較して、曲率が著しく大きい部分を有するものである。曲率が大きい部分は、同一の力をより小さい面積で受けるため、単位面積あたりに加わる力が大きくなる。従って曲率が大きい部分が包材に押し付けられた際、包材に貫通孔が生じやすくなる。
ガスバリア性に優れた外被材とは、芯材、包材、気体吸着材、突起物を有する部材を包み込むことにより、周囲の空間と独立させるものである。また、気体透過度が10[cm/m・day・atm]以下であることが好ましく、より望ましくは10[cm/m・day・atm]以下となるものである。
孔を開ける方法は、突起物が外被材に接触することによりなされるものである。
連通とは、包材内部と包材外部で隔てられていた空間を一続きの空間にすることである。
突起物により応力を集中して包材の内部と外被材の内部を連通するため、突起物以外では連通しないように包材の強度を大きくすることができる。このため、真空断熱材に適用するまで包材を取り扱う際の破損を防ぐことができ、歩留まりを向上することができる。
ここで、接触とは二つ以上の物体間に、別の物体或いは空間が存在しない状態のことであり、突起物が包材に接触することで、突刺し力、切断力等が働き、包材に割れが生ずることを含む。
破損とは、真空断熱材に適用する前に、包材内部と包材外部の連通が意図せずしてなされることである。
樹脂成型によると突起物を有する部材の形状自由度が大きくなる。従って、包材の強度に適した突起物を作製することができ、包材の設計自由度も大きくなる。この結果、真空断熱材の用途に応じて適切な設計が可能である。また、必要最小限の強度で作製できるため、外被材内部の圧力と大気圧の差により変形するように作製でき、薄型化された真空断熱材を得ることができる。
樹脂の種類は、突起物の硬さを確保でき、ガス発生が少ないものであればよく、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、AS樹脂、ABS樹脂などを用いることができ、コストを考慮するとポリプロピレンが望ましい。
また、真空断熱材は、他の断熱材に比較して同じ厚さあたりでの断熱性能に優れているため、同じ断熱性能を得るために用いる厚さを少なくすることができる。これは、異なる熱伝導率の断熱材で同等の断熱性を得るために必要な厚さは、それぞれの断熱材の熱伝導率に比例するためである。一方、真空断熱材の厚さは、概ね一気圧下での芯材の厚さと吸着材と、吸着材の特性を発揮させるための機構の厚さの和になる。
ここで、吸着材の特性を発揮させるための機構とは、吸着材の不使用時には大気との接触を防ぐ包材と、包材内部と外被材内部を連通するための突起物を有する部材である。従っ
て、突起物を有する部材の薄型化がなされれば、真空断熱材の薄型化が可能になる。
突起物を有する部材は、大気圧負荷時には平板状に近くなるため真空断熱材の厚さ増大に対する寄与度が小さい。従って、粉末の気体吸着材を用いることにより薄型化された真空断熱材を得ることができる。
平板状とは、ある部材が、互いに平行で曲率が0の二枚の面で定義される空間内に収まり、この部材において最も離れた二点間の距離が、平面の距離の10倍以上であるものである。従って、必ずしも、ある部材の表面の曲率がこの部材全体で一様であることを意味しない。また、真空断熱材を薄くするため、互いに平行で曲率が0の二枚の面の距離は3mm以下が望ましい。
また、第2の発明は、芯材が、繊維集合体からなるものである。
一般に、真空断熱材の熱伝導率は、芯材による熱伝導と、外被材内の残留ガスによる熱伝導の和により決定する。例えば、芯材が粉末を含む場合は、芯材内部に存在する気体の平均自由工程が短いため、気体による熱伝導率は非常に小さく、芯材による熱伝導が支配的である。
一方、芯材が繊維の場合は、繊維同士の接点が少ないため、芯材の熱伝導率は非常に小さくなるが、気体の平均自由工程が大きいため、わずかな圧力上昇で、気体による熱伝導率が支配的になってしまう。
従って、芯材が繊維のみからなるときは、このような効果が大きいため繊維芯材では外被材内部を低圧に保つことが、真空断熱材の熱伝導率を低減するために非常に有効な手段となる。
ここで、繊維集合体とは、繊維のみからなる集合体であって、バインダーや酸、熱等で成型されていても良い。
また、第の発明は、突起物を有する部材が、ポリプロピレンであるものである。
ポリプロピレンは、低コストであるため、突起物を有する部材のコストを低減することができる。また、樹脂を真空断熱材に適用する際は、ガス発生が問題となるが、ポリプロピレンからのガス発生は少なく、真空断熱材の特性を妨げることがない。
また、第の発明は、突起物を有する部材が、繊維強化プラスチックであるものである。
強化のための繊維としてガラス繊維を用いた場合は、繊維からのガス発生が少なく、また、樹脂を強化する効果も高い。ガラス繊維により強化された樹脂を用いることにより、突起物の強度を確保することができ、よりスムーズに包材内部と外被材内部の連通をすることができる。
繊維とは、3次元空間において、一方向が他の方向に比較して著しく長いものであり、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維があるが、ガス発生の少なさ、プラスチックを強化する能力、コストから総合的に判断して、ガラス繊維が望ましい。
また、第の発明は、突起物を有する部材が、金属と樹脂の複合体であるものである。
突起物を有する部材が、金属と樹脂の複合体であるため、それぞれの材料特性に応じた構成で設計することができる。つまり、確実に包材内部と外被材内部を連通するため、高い強度が必要である突起物を金属、外被材を保護するために柔軟性が必要な部分を樹脂とすることにより、優れた特性を有する真空断熱材を得ることができる。
ここで、金属は突起物の強度を確保するため、一定の強度を有するものが望ましく、鉄、銅等の単一元素からなる金属、ステンレスやりん青銅等の合金も用いることができるが、特に指定するものではない。
樹脂の種類は、突起物の硬さを確保でき、ガス発生が少ないものであればよく、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、AS樹脂、ABS樹脂などを用いることができ、コストを考慮するとポリプロピレンが望ましい。
また、第の発明は、突起物を有する部材が、包材に固定されているものである。
突起物を有する部材が包材に固定されているため、真空断熱材に吸着材を設置する際の工数を減らすことができ、コストを低減することができる。
突起物を有する部材を包材に固定する方法は、特に指定するものではないが、突起物を有する部材にフック状の部分を設ける、両面に粘着物を塗布した面状の部材で貼り付ける等の方法を用いることができる。
また、第の発明は、突起物の長さが、大気圧下での気体吸着材の厚さより短いものである。
突起物の長さが、大気圧下での気体吸着材の厚さより短いため、突起物は包材の内部で留まる。従って、突起物は真空断熱材の外被材にダメージを与えず、信頼性に優れた真空断熱材を得ることができる。
以下、本発明の真空断熱材の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の真空断熱材1は、芯材2と、突起物を有する部材3と、予め包材4の中に真空封止された気体吸着材5を、外被材6中に設置後真空封止し、包材4内部と外被材6内部を連通させたものであり、詳しくは、少なくとも繊維材料を含む芯材2と、ガスバリア性の包材4からなる袋に真空封止された気体吸着材5と、外力が加えられた場合に包材4に孔を開けることが可能な突起物を有する部材3とを、ガスバリア性に優れた外被材6で被って外被材6内部を真空封止してなり、部材3は、外被材6を介して気体吸着材5側に押された場合に変形して突起物が包材4に孔を開けて包材4内部と外被材6内部を連通させるように構成されている。
芯材2はガラス繊維集合体を熱成型により板状としたものであり、包材4はガスバリア性を有するラミネートフィルム、吸着材5は粉末状のCuZSM−5、外被材6はガスバリア性を有するラミネートフィルムである。
図2は本発明の実施の形態1における真空断熱材に使用した突起物を有する部材3の概略図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
突起物を有する部材3は、厚さが0.25mmのりん青銅からなる板を折り曲げ、板ばねとしたものの、中央部付近を切り欠いて曲げることにより突起物を作製している。また、折り曲げ部には切り欠き部7を有している。
図3は本発明の実施の形態1における真空断熱材の真空封止前の気体吸着材と部材とからなる空気吸着デバイスを示す断面図である。図4は本発明の実施の形態1における真空断熱材の真空封止後の気体吸着材と部材とからなる空気吸着デバイスを示す断面図である。
図4は大気圧が加わることにより、突起物が包材に貫通孔を生じさせ、包材内部と外被材内部を連通させてなることにより、気体吸着材が外被材内部の気体を吸着可能になった状態を示す。
以上のように構成された真空断熱材1についてその動作、作用を説明する。
まず、図3に示されている通り、気体吸着デバイスでは、気体吸着材5は包材4に真空封止されている。また、突起物を有する部材3は包材4に、突起物以外の部分で接触している。従って、包材4に貫通孔は生じないため、気体吸着材5は外部の空気に接触しない。従って、真空断熱材に適用するまで気体吸着材5の吸着能力は維持される。
真空断熱材1を真空封止する際、芯材2の上に気体吸着デバイスを置く。この際、包材4を芯材2に接触する配置とした。これらを、予め3方をシールした外被材6内部に挿入し、真空に排気した後、開口部を熱溶着により封止した。
外被材6内部は減圧されているため、芯材2、突起物を有する部材3に外被材内部の圧力と外部の圧力の差に相当する圧力が加わる。突起物を有する部材3の材料であるりん青銅は外力が加わると弾性変形する。この変形により、応力が加わっていない状態においては、包材4と距離があった突起物は、包材4に近づく。さらに突起物は包材4に接触して突刺力を加えるため、包材4には貫通孔が生じる。このようにして、包材4内部と外被材6内部は連通し、吸着材5による気体の吸着が可能になる。
図4に示すように、真空包装後は、突起物を有する部材は平板状に近くなり、真空断熱材の厚さ増大への寄与度が小さくなる。
本実施の形態において、空気吸着デバイスとは圧力の非負荷時には、気体吸着材と周囲の空間を隔てることにより、気体吸着材の劣化を防ぎ、圧力負荷時には、気体吸着材と周囲の空間が連通し、空気吸着材が外部の気体を吸着できるようにする機構であり、突起物を有する部材3、気体吸着材5、包材4からなる。
なお、本実施の形態では、金属としてりん青銅を用いたが、りん青銅に限定するものではなく、ばね材として用いられるものであれば他の金属であっても用いることが可能である。また、ばね材と異なる場合であっても厚さを薄くして変形を容易にすることにより、使用することが可能である。
また、突起物と包材の接触と貫通孔の生成が大気圧と外被材内部の圧力差によりなされたが、これに限定するものではなく、真空封止後に機械的に応力を加えても良い。
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2における真空断熱材に使用した突起物を有する部材の概略図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
図5において、突起物を有する部材3はガラス繊維で強化されたポリプロピレン樹脂であり、ガラス繊維は20重量パーセント含まれている。また、折り曲げ部は他の部分と比較して薄くなっている。このような構成の突起物を有する部材3を用いて真空断熱材を作製した。突起物を有する部材3以外の構成要素および真空封止方法は、実施の形態1と同等である。
突起物を有する部材3には外被材内部の圧力と外部の圧力の差に相当する圧力が加わる。突起物を有する部材3はガラス繊維により強化されているため、本来はこの圧力では変形が小さいため突起物は包材4に押し付けられない。しかし、折り曲げ部が他の部分より薄くなっているため、この部分により大きく変形して、突起物が包材に押し付けられる。
ここで、突起物はガラス繊維により強化されたポリプロピレンであり十分な強度を有するため、包材には貫通孔が生じる。このようにして、包材4内部と外被材内部は連通し、気体吸着材5による気体の吸着が可能になる。
本実施の形態では、樹脂としてポリプロピレンを用いたが、これに限定するものではなく、包材に貫通孔を生じさせることができるものであればよい。
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3における真空断熱材に使用した突起物を有する部材の略図であり、(a)は断面図であり、(b)は上面図である。図7は本発明の実施の形態3における真空断熱材の真空封止前の気体吸着材と部材とからなる気体吸着デバイスの断面図である。
図6において、突起物を有する部材3の突起物は銅により構成されており、突起物以外の部分はポリプロピレンで構成されている。また、応力が加わっていない状態で包材に接触する部分の一方がフック状になっている。
図7において、突起物を有する部材3は、フック状の部分で包材4に固定されているため、突起物を有する部材3と包材4は一体の部材として取り扱うことが可能である。
このような構成の突起物を有する部材3を用いて真空断熱材を作製した。突起物を有する部材3以外の構成要素および真空封止方法は、実施の形態1と同等である。突起物を有
する部材3には外被材内部の圧力と外部の圧力の差に相当する圧力が加わる。突起物を有する部材3の突起物以外の部分は、ポリプロピレンであり容易に変形するため、突起物は包材4に押し付けられる。突起物は銅製であり十分な強度を有するため包材4には貫通孔が生じる。このようにして、包材4内部と外被材6内部は連通し、気体吸着材5による気体の吸着が可能になる。
本実施の形態では、金属として銅を用いたが、これに限定するものではなく、包材に貫通孔を生じさせることができるものであればよい。
(実施例1)
芯材はガラス繊維の集合体を加圧加熱成型して板状にして作製し、厚さが5mmとなるようにした。
気体吸着材として粉末状のCuZSM−5を用いた。包材として厚さが15μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム、厚さが6μmのアルミニウム箔、厚さが50μmの低密度ポリエチレンフィルムをラミネートしたフィルムを用いた。このフィルムを3方シールして袋状にし、希ガス雰囲気中で気体吸着材を内包させたものを真空チャンバーに設置後、1Paまで減圧後、封止した。
突起物を有する部材は、長さが30mm、幅が12mm、厚さが0.25mmのりん青銅の板を長さ方向に4箇所で折り曲げ、包材に設置する面と、包材に接触しない面との距離が圧力非負荷時には3mmとなるようにした。突起物は長さ方向と幅方向に対する中央部を切り欠いて曲げることにより作製しし、長さは2mmとした。これにより、圧力非負荷時は包材と突起物は1mmの隙間が開くようにした。
外被材は厚さが15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、厚さが25μmの2軸延伸ナイロンフィルム、厚さが6μmのアルミニウム箔、厚さが50μmの低密度ポリエチレンフィルムをラミネートしたフィルムを用いた。予め3方をシールして袋状にした外被材内に、芯材、包材、突起物を有する部材の順に重ねて挿入して真空チャンバーに設置し、10Paまで減圧後封止した。
このようにして作製した真空断熱材の熱伝導率を測定すると、0.0015W/mKと優れた結果が得られた。(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合の熱伝導率0.0020W/mKと比較して低減していることがわかる。このことから、気体吸着材は外被材内部の気体を吸着していることがわかる。
また、真空断熱材の厚さを測定すると、突起物を有する部材の部分は6.0mmであり、それ以外の部分は5.0mmであった。この結果から、突起物を有する部材は、大気により、厚さが3mmから1mmまで減少する方向に変形し、突起物が包材に押し付けられたと考えられる。さらに、この真空断熱材を100℃で1ヶ月間エージングした後に熱伝導率を測定しても、その値は変わらなかった。
(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合、100℃で1ヶ月エージングした場合の熱伝導率0.0080W/mKと比較して低く抑えられている。このことから、シール層を通して侵入する気体を空気吸着材が吸着していることがわかる。熱伝導率測定後に真空断熱材を解体して、包材を観察した結果、突起物との接触により生じた貫通孔の存在が確認された。
(実施例2)
突起物を有する部材は、ガラス繊維を20重量パーセント含むポリプロピレン樹脂を、射出成型により実施の形態1と同様の形状に成型した。折り曲げ部の厚さは0.1mmで、折り曲げ部以外の厚さは0.2mmである。突起物を有する部材以外の構成要素および真空断熱材の作製方法は実施の形態1と同等である。
このようにして作製した真空断熱材の熱伝導率を測定すると、0.0015W/mKと優れた結果が得られた。(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合の熱伝導率0.0020W/mKと比較して低減していることがわかる。このことから、気体吸着材は外被材内部の気体を吸着していることがわかる。
また、真空断熱材の厚さを測定すると、突起物を有する部材の部分は5.8mmであり、それ以外の部分は5.0mmであった。実施の形態1の場合に比較して突起物を有する部分の厚さが0.2mm薄くなっている。これは、ポリプロピレンが銅に比較して柔らかく、大気圧が加わることでより容易に変形するためである。さらに、この真空断熱材を100℃で1ヶ月間エージングした後に熱伝導率を測定しても、その値は変わらなかった。
(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合、100℃で1ヶ月エージングした場合の熱伝導率0.0080W/mKと比較して低く抑えられている。このことから、シール層を通して侵入する気体を空気吸着材が吸着していることがわかる。熱伝導率測定後に真空断熱材を解体して、包材を観察した結果、突起物との接触により生じた貫通孔の存在が確認された。
(実施例3)
突起物を有する部材は、ポリプロピレン樹脂で射出成型したものに銅の突起物を取り付けることにより作製した。折り曲げ部の厚さは0.1mmで、折り曲げ部以外の厚さは0.2mmである。突起物を有する部材以外の構成要素および真空断熱材の作製方法は実施の形態1と同等である。
このようにして作製した真空断熱材の熱伝導率を測定すると、0.0015W/mKと優れた結果が得られた。(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合の熱伝導率0.0020W/mKと比較して低減していることがわかる。このことから、気体吸着材は外被材内部の気体を吸着していることがわかる。
また、真空断熱材の厚さを測定すると、突起物を有する部分は5.7mmであり、それ以外の部分は5.0mmであった。実施の形態1の場合に比較して突起物を有する部分の厚さが0.3mm、実施の形態2に比較して0.1mm薄くなっている。これは、ポリプロピレン樹脂がガラス繊維を含まないため、より柔らかいためであると考えられる。
また、突起物に銅を用いているため包材に貫通孔を生成する機能は優れており、熱伝導率測定後に真空断熱材を解体して、包材を観察した結果、突起物との接触により生じた貫通孔の存在が確認された。
(実施例4)
突起物を有する部材は、ガラス繊維を20重量パーセント含むポリプロピレン樹脂を、射出成型により作製した。包材に接触する部分の一方はフック状になっており、包材に取り付けることができる。真空断熱材作製の工程で、フック状の部分を包材に取り付けて外被材内部に設置した。このようにすることで、突起物を有する部材と包材のずれを防ぐことができる。突起物を有する部材以外の構成および真空包装工程は実施の形態1と同等である。
(実施例5)
突起物を有する部材は、長さが30mm、厚さが12mm、厚さが0.25mmのりん青銅の板を長さ方向に4箇所で折り曲げ、包材に設置する面と、包材に接触しない面との距離が圧力非負荷時には3mmとなるようにした。突起物は長さ方向と幅方向の中央部を切り欠いて曲げることにより作製して、長さは1mmとした。気体吸着材を封入した包材に大気圧を負荷した際の厚さは、1.2mmであった。これら以外の構成要素は実施の形態1と同等である。
真空断熱材の作製は以下の通り行った。予め3方をシールして袋状とした外被材に芯材を設置し、包材を芯材と重なり合わないように設置した。さらに、突起物を有する部材を包材に重ねて設置した。さらに、外被材内部を10Paまで減圧後封止した。このようにして作製した真空断熱材の熱伝導率を測定すると、0.0015W/mKと優れた結果が得られた。(比較例1)に示すように、気体吸着材を用いない場合の熱伝導率0.0020W/mKと比較して低減していることがわかる。このことから、気体吸着材は外被材内部の気体を吸着していることがわかる。
また、真空断熱材の厚さを測定すると、芯材部は5.0mmであり、突起物を有する部材の場所は1.5mmであった。このように、突起物を有する部材により、真空断熱材の最大厚さは増大しない。従って、真空断熱材をより薄型化することが可能である。また、低い熱伝導率が得られていることから外被材に貫通孔は生じていないことがわかる。これは、突起物が、包材内部に留まり、外被材に接触しないためである。
(比較例1)
気体吸着材、包材、突起物を有する部材を用いず、これら以外の構成、作製方法は(実施例1)と同様にして真空断熱材を作製した。このようにして作製した真空断熱材の熱伝導率を測定すると、0.0020W/mKであり、気体吸着材を用いた場合の熱伝導率0.0015W/mKに比較して大きくなっていることがわかる。
また、本比較例で作成した真空断熱材を100℃で1時間エージングした後の熱伝導率は0.0080W/mKであり、これは、外被材を介して侵入した気体により熱伝導率が大きくなったためである。
以上のように、本発明にかかる真空断熱材は、薄型の真空断熱材をより安価に得ることができるため、住宅の断熱等の分野にも適用できる。
1 真空断熱材
2 芯材
3 突起物を有する部材
4 包材
5 気体吸着材
6 外被材
7 切り欠き部

Claims (7)

  1. 少なくとも繊維材料を含む芯材と、ガスバリア性の包材からなる袋に真空封止された気体吸着材と、外力が加えられた場合に前記包材に孔を開けることが可能な突起物を有する部材とを、ガスバリア性に優れた外被材で被って前記外被材内部を真空封止してなり、前記部材は、前記突起物が前記包材に孔を開けて前記包材内部と前記外被材内部とを連通させるように構成されており、前記包材内部と前記外被材内部との連通が、前記突起物と前記包材との接触によりなされ、前記突起物が樹脂よりなり、前記突起物を有する部材が、圧力負荷時には変形により平板状に近くなることを特徴とする真空断熱材。
  2. 前記芯材が、繊維集合体からなることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
  3. 前記突起物を有する部材が、ポリプロピレンである請求項1または2に記載の真空断熱材。
  4. 前記突起物を有する部材が繊維強化プラスチックである請求項1または2に記載の真空断熱材。
  5. 前記突起物を有する部材が、金属と樹脂の複合体である請求項1からのいずれか一項に記載の真空断熱材。
  6. 前記突起物を有する部材が、包材に固定されている請求項1からのいずれか一項に記載の真空断熱材。
  7. 前記突起物の長さが、大気圧下での気体吸着材の厚さより短い請求項1からのいずれか一項に記載の真空断熱材。
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