JP5418371B2 - 真空成膜装置 - Google Patents
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Description
「基材11が搬送される方向(X方向)に直行する方向(Y方向)から、被成膜面110に向けて」とは、プラズマガン3のプラズマを放出する部分の所定の点と、被成膜面110の所定の点とを結んだ直線が、Y方向の成分を有することを指す。
「成膜ドラムの中心軸(Y方向)を含んで鉛直方向(Z方向)に伸びる仮想平面に沿って配設される」とは、プラズマガン3の放射方向軸がY成分とZ成分のみを有しておりX成分を含まないことを指す。
「真空成膜装置1の平面視において成膜ドラム13の幅より外側に位置するように配設される」とは、プラズマガン3の位置のY成分が、成膜用ドラム13の幅となるY1とY2とを結んだ線分と重ならないことを意味する。
基材巻き出し部12の周面にロール状に巻かれた基材11は、基材巻き出し部12が矢印A方向に、基材巻き出し部12の中心軸を中心に回転することにより、白抜き矢印F(図1に記載)の方向に巻き出される。
一方、蒸着材料2は、加熱装置171により加熱され、図4(b)に示すように蒸発する。そして、反応ガス(窒素)は、図4(b)に示すように、蒸発した蒸着材料2に混合するように反応ガス供給部18から供給される。蒸発した蒸着材料2と反応ガスとは反応しSiOxNyとなる。SiOxNyは図4(b)中にひし形で表した。なお、図4(b)は、Arプラズマを省略して図示している。
成膜用ドラム13上で基材11を搬送中、前処理工程を受けた被成膜面110上には徐々にSiOxNyが衝突していき薄膜が形成され始める。そして、図2(b)に示すように蒸着材料2を配置するための坩堝170の上面と対向する位置まで基材11が搬送されたときに、薄膜の形成は最も盛んになる。基材11が坩堝170の上面と対向する位置からさらに+X方向に送られると、徐々に形成される薄膜の量が少なくなる。この基材11の被成膜面110に薄膜が形成される工程を成膜工程という。なお、成膜工程においても、被成膜面110には、Arプラズマが衝突しているが、上記の通り、図4(b)にはArプラズマを省略して図示している。
本実施形態の真空成膜装置1では、プラズマガン3から照射された電子は、電気的にア−ス(接地)された防着箱19に吸収され消滅する。時間の経過とともに防着箱19の表面には蒸発材料2が付着していくが、防着箱19はアースされているためイオン化された蒸発材料2は付着しにくく蒸発材料2が絶縁物であっても長時間に亘って電子を吸収する。また、プラズマガン3自体も電子の帰還電極を有するため電子の流れに問題が生じない。そのためプラズマガン3は安定した稼動を続け十分な量のイオン化エネルギ−を照射することができる。また、防着箱19がアース(接地)され、その電位がゼロに保たれることで、防着箱19の表面への蒸発材料2の堆積を減じる効果があり、堆積物が剥離・落下して蒸発源17やプラズマガン3を故障させる機会を減らす事ができる。一方、絶縁物である基材11の被成膜面110には、電子が帯電しイオン化され活性化された蒸発材料2が引き寄せられるため、プラズマアシスト効果により基材上に高品質な薄膜を成膜することが可能である。
本実施形態の真空成膜装置1は、薄膜が形成される前の被成膜面110にArプラズマが照射される前処理工程と、蒸発した蒸着材料2等をArプラズマで活性化しながら、被成膜面110に薄膜を形成する成膜工程と、形成直後の薄膜に対してArプラズマを照射する後処理工程とを逐次一体的に備えるため、基材11の搬送速度を10m/分以上200m/分以下の非常に速い条件に設定しても、緻密で密着性の高い膜になり、薄膜形成によるバリア性の向上効果を充分に得ることができる。
なお、本発明においてバリア性が高いとは、40℃、100%RHにおける水蒸気透過度がおよそ1.0g/m2/day以下になることを指す。
成膜工程では、蒸発した蒸着材料2、反応ガス、反応物(SiOxNy)が、Arプラズマにより活性化され、反応物が被成膜面110に衝突することで薄膜が形成される。本工程ではArプラズマが蒸着材料2や反応ガスをイオン化することで、反応物の生成が促進される。この反応物の生成の促進は、素早く被成膜面110に緻密な薄膜が形成されることに寄与する。そして、Arプラズマが反応物を活性化することでも、薄膜の形成が促進される。また、上記前処理工程で、成膜工程における被成膜面110と蒸着材料2との密着性が向上され、さらに、上記の通りArプラズマにより薄膜の形成も促進されていることから、基材11の搬送速度が速い条件であっても、充分な量の緻密な薄膜を形成することができる。
後処理工程では、図4(c)に示すように、被成膜面110に形成された薄膜に対してArプラズマが照射される。Arプラズマが照射されることで、薄膜はさらに改質し、非常に緻密な膜になる。このように1台のプラズマ照射によってプラズマ前処理とプラズマアシストによる成膜とプラズマ後処理が行なえる点に本発明の特徴がある。
上記前処理工程、成膜工程、後処理工程を逐次連続的に経て得られる薄膜付基材(蒸着フィルム)は、基材の搬送速度を速い条件に設定したとしても、充分なバリア性を有する。また、本実施形態の真空成膜装置により製造された蒸着フィルムは柔軟性も充分に高い。
図5(a)に示されるような従来の真空成膜装置の場合には、後処理工程が不十分なため、薄膜を充分緻密にすることができない。その結果、バリア性が充分に高い蒸着フィルムにはならない。
図5(b)に示されるような従来の真空成膜装置の場合には、前処理工程を行うことができない。このため、蒸着材料2と被成膜面110との密着性向上効果が得られなくなる。
また、プラズマガン3を上記仮想平面からずらした位置に配置した場合(図2中のプラズマガン3を+x方向又は−x方向に移動させた場合)、前処理工程による効果の程度、後処理工程による効果の程度を調整することができる。即ち、プラズマガン3を+x方向又は−x方向に移動させることで、前処理工程による効果、後処理工程による効果を調整し最適化することができる。
なお、このような最適化は、2台のプラズマガン3、3が、基材11の流れ方向(X方向)に蒸発源17を挟んで並ぶように、防着箱19の底面に配置されることでも行うことができるが、上記のようにして行えば、一台のプラズマガン3で最適化を行うことができる。ただし、成膜用ドラム13の幅(Y方向の長さ)が大きい場合には、上記のような2台のプラズマガン3、3の使用が好ましい。
図6に記載された真空成膜装置によれば、図6(b)に示すように両側からプラズマを照射することができるため、より均一に緻密な薄膜を被成膜面上に形成することができる。しかし、図6(b)に示すように、二個のプラズマガン3、3からのプラズマ照射が重なる領域(図6(b)中にΔYで示す領域)では、照射されるプラズマが強過ぎて、熱じわが発生する可能性が高い。このため、図6に示す真空蒸着装置の場合には、図1から4に記載の真空成膜装置と比較して好適な成膜条件の範囲が非常に狭い。
なお、成膜用ドラム13の幅(Y方向の長さ)が大きい場合には、図6(b)に示すような2台のプラズマガン3、3の使用が好ましい。
図7に記載された真空成膜装置によれば、予めプラズマ照射によりイオン化された反応ガスを蒸着材料に混合することができるため、被成膜面110に形成される薄膜の膜質が向上しやすくなる。
プラズマガン:帰還電極を有する圧力勾配型プラズマガン
真空成膜装置:実施例1〜5、比較例1では図1から4に記載の真空成膜装置を使用した。実施例6〜12では図7に記載の真空成膜装置を使用した。
蒸着材料 :SiO
基材 :ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム12μm
実施例1〜5、比較例1のプラズマの照射条件(出力、加速電圧、Arガス流量)、真空度、基材の搬送速度は、表1に記載の通りである。
薄膜の膜厚の測定は、蛍光X線分析装置RIX2000(株式会社リガク製)を用いて、ケイ素(Si)のピーク強度を測定し、その測定値を薄膜の膜厚として換算することにより行った。
水蒸気透過度の測定は、水蒸気透過率測定装置PERMATRAN3/31(MOCON社製)を用いて、40℃、100%RH雰囲気下で測定した。
酸素透過度の測定は、酸素透過率測定装置OXTRAN2/20(MOCON社製)を用いて、23℃、90%RH雰囲気下で測定することにより行った。
実施例6〜12のプラズマの照射条件(出力、加速電圧、Arガス流量)、真空度、基材の搬送速度は、表3に記載の通りである。
酸化度は、ESCA(英国 VG Scientific社製、型式:LAB220i−XL)を用いて測定した。X線源としては、Ag−3d−5/2ピーク強度が300Kcps〜1McpsとなるモノクロAlX線源、及び、直径約1mmのスリットを使用した。測定は、測定に供した試料面の法線上に検出器をセットした状態で行い、適正な帯電補正を行った。測定後の解析は、上述のESCA装置に付属されたソフトウエアEclipseバージョン2.1を使用し、Si:2p、N:1s、C:1s、O:1sのバインディングエネルギーに相当するピークを用いて行った。このとき、各ピークに対して、シャーリーのバックグラウンド除去を行い、ピーク面積に各元素の感度係数補正(C=1に対して、N=1.770、Si=0.865、O=2.850)を行い、原子数比を求めた。得られた原子数比について、Si原子数を1とし、他の成分であるOとNの原子数を算出して成分割合とした。
実施例1〜12の結果から、反応ガスとして窒素を使用すると、水蒸気バリア性が向上する傾向にあることが確認された。
実施例12の結果から、搬送速度を速い条件に変更しても、薄膜の水蒸気バリア性は低いことが確認された。
また、実施例2〜4、実施例7〜8の結果から、予めプラズマ照射によりイオン化された反応ガスを蒸着材料に混合することで、より緻密な膜が得られる傾向にあることが確認された。
10 真空容器
11 基材
110 被成膜面
12 基材巻き出し部
13 成膜用ドラム
14 基材巻き取り部
15、16 搬送ロール
17 蒸発源
170 坩堝
171 加熱装置
18 反応ガス供給部
19 防着箱
2 蒸着材料
3 プラズマガン
Claims (5)
- 真空容器内の上部に、成膜用ドラムに巻き掛けられた基材がその被成膜面を下向きにして配設され、前記真空容器内の前記成膜用ドラムより下部に、電気的に接地された防着板が略水平に配設されるとともに、
前記防着板は、前記防着板の前記被成膜面と対向する位置に開口を備え、
前記真空容器内の前記防着板より下部には、蒸着材料を蒸発させる蒸発源と、この蒸発源から蒸発した上記蒸着材料に向けてプラズマを照射するプラズマガンとが、上記被成膜面の下方に配置されており、
前記プラズマガンは、帰還電極を備え、前記基材の流れ方向に対して直交する方向から、前記被成膜面に向けて配置されている真空成膜装置。 - 前記プラズマガンは、前記成膜用ドラムの中心軸を含んで鉛直方向に伸びる仮想平面に沿って配置される請求項1に記載の真空成膜装置。
- 前記プラズマガンは、前記真空成膜装置の平面視において前記成膜用ドラムの幅より外側に位置するように配置される請求項1又は2に記載の真空成膜装置。
- 前記プラズマガンは、圧力勾配型のプラズマ発生装置であり、加速電圧が40Vから200Vの範囲内であり、出力が3KWから12KWの範囲内である請求項1から3のいずれかに記載の真空成膜装置。
- 前記蒸発源は、誘導加熱装置を有する請求項1から4のいずれかに記載の真空成膜装置。
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