JP5418031B2 - 火花点火式エンジンの制御方法および制御装置 - Google Patents

火花点火式エンジンの制御方法および制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、気筒内の混合気に点火用の火花を放電する点火プラグを備えた火花点火式エンジンを制御する方法および装置に関する。
従来、下記特許文献1に示されるように、高圧縮比かつリーン空燃比で運転する第1の運転モードと、低圧縮比かつ理論空燃比で運転する第2の運転モードとを有したエンジンにおいて、上記第1の運転モードから第2の運転モードへと変更する期間の始期に、吸気弁の制御に基づく吸入空気量の急減により空燃比をステップ状に低下(リッチ化)させ、その後、上記運転モードの変更期間中に、圧縮比を次第に低下させるとともに、吸入空気量が次第に増大するように吸気弁の動作を制御し、かつ燃料供給量を次第に増大させることが行われている。
この特許文献1に開示されたエンジンによれば、運転モードの変更期間の始期に、吸入空気量が急減されることで空燃比のリッチ化が図られるため、圧縮比が低下する前の高圧縮比下でも、筒内圧が過大になることがなく、ノッキング等の異常燃焼が抑制される。そして、その後の運転モードの変更期間中に、圧縮比を次第に低下させつつ、吸入空気量および燃料供給量を増大させることにより、ノッキング等を抑制しつつ負荷に応じた高いエンジン出力を確保できるという利点がある。
特開2004−239175号公報
ところで、エンジンの分野では、近年の厳しいエネルギー事情等を背景にして、より熱効率が高く燃料消費量の少ないエンジンを開発することが求められている。熱効率をより高めるための対策としては、上記特許文献1に開示されたエンジンよりもさらに幅広い運転領域で空燃比をリーン化することが考えられるが、高負荷域でもリーンな空燃比を維持するには、過給等により多量の空気を気筒内に送り込む必要がある。しかしながら、気筒内に多量の空気を送り込むと、気筒内の高温・高圧化が進み、結局ノッキング等の異常燃焼や、筒内圧の急上昇による燃焼騒音等の問題を招いてしまうおそれがある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、空燃比のリーン化による熱効率の向上を図りながら、高負荷域での異常燃焼や燃焼騒音等の問題を有効に回避することが可能なエンジンの制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、気筒内の混合気に点火用の火花を放電する点火プラグを備えた火花点火式エンジンを制御する方法であって、上記混合気の空燃比をエンジン負荷の全域で理論空燃比よりもリーンに設定し、あらかじめ設定された第1負荷よりもエンジン負荷が低いときは圧縮比を所定値に設定する一方、上記第1負荷以上にエンジン負荷が増大すると、圧縮比を上記所定値よりも低い値に設定するとともに、その低下量を負荷の増大に応じて徐々に大きくし、上記第1負荷よりも高い第2負荷よりもエンジン負荷が低いときは、混合気の燃焼開始時期を所定の時期に設定する一方、上記第2負荷以上にエンジン負荷が増大すると、混合気の燃焼開始時期を上記所定の時期よりも遅角させるとともに、その遅角量を負荷の増大に応じて徐々に大きくすることを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、エンジン負荷の全域で空燃比をリーン化することにより、熱効率を大幅に向上させて燃費性能を効果的に改善することができる。ただし、空燃比のリーン化を高負荷側まで継続すると、負荷の増大に伴って吸入空気量を大幅に増大させる必要があり、それによる筒内の高温・高圧化によりノッキングが起きるおそれがある。このような問題に対し、本発明では、所定の第1負荷以上で圧縮比を低下させるようにしたため、上記のような高負荷域でのノッキングの発生を効果的に防止することができる。さらに、上記第1負荷よりも高負荷側の第2負荷以上になると、筒内圧の急上昇により大きな燃焼騒音が生じるおそれがあるが、本発明では、上記第2負荷以上で燃焼開始時期を遅らせることにより、上記のような燃焼騒音の発生をも防止することができる。このように、本発明によれば、空燃比のリーン化による熱効率の向上をエンジン負荷の全域で達成しつつ、高負荷域でのノッキングの発生や燃焼騒音の増大を効果的に防止できるという利点がある。
本発明において、好ましくは、エンジン負荷が上記第2負荷以上に増大すると、上記点火プラグによる点火時期を、トルクが最大となる点火時期であるMBTに対し所定クランク角だけ遅らせる(請求項2)。
このようにすれば、混合気の燃焼開始時期を遅らせる操作を、点火プラグによる点火時期を遅角させることで適正に実施できるという利点がある。
この場合、より好ましくは、上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、点火時期を上記MBTに維持しつつ、負荷の増大に応じて圧縮比を低下させる(請求項3)。
このようにすれば、第1負荷から第2負荷までの負荷域で、熱効率をできるだけ高い値に維持しつつ、ノッキングの発生を効果的に防止できるという利点がある。
また、上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、負荷の増大に応じて圧縮比を低下させ、かつ点火時期を上記MBTよりも遅らせる一方、上記第2負荷以上の負荷域では、より大きな遅角幅で上記点火時期をMBTから遅らせるようにしてもよい(請求項4)。
このようにした場合でも、上記第1負荷以上の負荷域におけるノッキングの発生や燃焼騒音の増大を効果的に防止することができる。
本発明において、好ましくは、上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、吸気弁の閉じ時期を変更することで圧縮比を低下させる(請求項5)。
このようにすれば、吸気弁の閉じ時期を変更するだけの比較的簡単な構成で、適正にエンジンの圧縮比を調整できるという利点がある。
本発明において、好ましくは、少なくとも上記第1負荷以上の負荷域では過給機を用いて過給を行う(請求項6)。
このようにすれば、高負荷域でのエンジン出力を過給により十分に確保しながら、空燃比のリーン化を高負荷域まで継続して熱効率をより向上させることができるという利点がある。
本発明において、好ましくは、理論空燃比に対する空気過剰率λをエンジン負荷の全域でλ=2以上に設定する(請求項7)。
このようにすれば、エンジンの熱効率を十分に向上させつつ、燃焼温度を大幅に低下させてNOx排出量を効果的に削減できるという利点がある。
この場合、より好ましくは、上記空気過剰率λをエンジン負荷の全域でλ=2〜3に設定する(請求項8)。
このようにすれば、エンジンの排気損失および冷却損失の両方をバランスよく低減することができ、実現可能な範囲で熱効率を十分なレベルに高めることができる。
また、本発明は、気筒内の混合気に点火用の火花を放電する点火プラグを備えた火花点火式エンジンを制御する装置であって、上記点火プラグによる火花放電を制御する点火制御手段と、エンジンの圧縮比を可変的に設定する圧縮比調整手段とを備え、上記混合気の空燃比が、エンジン負荷の全域で理論空燃比よりもリーンな空燃比に設定され、あらかじめ設定された第1負荷よりもエンジン負荷が低いときは圧縮比を所定値に設定する一方、上記第1負荷以上にエンジン負荷が増大すると、圧縮比を上記所定値よりも低い値に設定するとともに、その低下量を負荷の増大に応じて徐々に大きくする制御が上記圧縮比調整手段により実行されるとともに、上記第1負荷よりも高い第2負荷よりもエンジン負荷が低いときは、上記点火プラグによる点火時期を、トルクが最大となる点火時期であるMBTに設定する一方、上記第2負荷以上にエンジン負荷が増大すると、上記点火プラグによる点火時期を上記MBTよりも遅角させるとともに、その遅角量を負荷の増大に応じて徐々に大きくする制御が上記点火制御手段により実行されることを特徴とするものである(請求項9)。
本発明による場合でも、上述した制御方法による場合と同様の作用効果を得ることができる。
以上説明したように、本発明の火花点火式エンジンの制御方法および制御装置によれば、空燃比のリーン化による熱効率の向上を図りながら、高負荷域での異常燃焼や燃焼騒音等の問題を有効に回避することができる。
本発明の一実施例にかかる火花点火式エンジンの全体構成を示す図である。 エンジン本体の断面図である。 エンジンの制御系を示すブロック図である。 エンジンの圧縮比、空気過剰率、点火時期、燃焼期間、および過給量の制御例を示す図である。 エンジンの熱効率を左右する各種損失要因と、その損失要因に関連する各種制御パラメータを示す図である。 エンジンの運転領域とその代表点を示す図である。 代表点での図示熱効率の演算結果を圧縮比や空気過剰率等の各種パラメータとの関係で示す図である。 代表点での排気損失の演算結果を圧縮比や空気過剰率等の各種パラメータとの関係で示す図である。 代表点での冷却損失の演算結果を圧縮比や空気過剰率等の各種パラメータとの関係で示す図である。 空気過剰率を複数の異なる値に設定した場合の熱伝達係数の特性を示す図である。 空気過剰率を複数の異なる値に設定した場合の冷却損失積算値の特性を示す図である。 代表点での筒内圧、圧力上昇率、排気温度、およびL−W積分値の値をクランク角との関係で示す図である。 エンジンを最高負荷まで運転した場合の最大筒内圧、最大圧力上昇率、排気温度、およびL−W積分値の変化を示す図である。 エンジンの高負荷域で圧縮比や空気過剰率等の各種パラメータを変化させた場合に、最大筒内圧、最大圧力上昇率、排気温度、L−W積分値がどのように変化するかを示す図である。 図14と同じ条件で各種パラメータを変化させた場合の図示熱効率の変化を示す図である。 図14と図15の結果をまとめた表である。 図14よりもさらに高負荷域で圧縮比や空気過剰率等の各種パラメータを変化させた場合に、最大筒内圧、最大圧力上昇率、排気温度、L−W積分値がどのように変化するかを示す図である。 図17と同じ条件で各種パラメータを変化させた場合の図示熱効率の変化を示す図である。 図17と図18の結果をまとめた表である。 図14〜図19の結果から得られる望ましい制御例およびそれに基づく図示熱効率の変化を示す図である。
A.実施例
(1)エンジンの基本構成
図1は、本発明の一実施例にかかる火花点火式エンジンの全体構成を示す図であり、図2は、そのエンジン本体1の構成を示す断面図である。これらの図に示されるエンジンは直列多気筒エンジンであり、そのエンジン本体1には複数の気筒(図示の例では4つの気筒1A〜1D)が設けられ、各気筒1A〜1Dにはそれぞれピストン2(図2)が嵌挿されている。ピストン2はコネクティングロッド4を介してクランク軸3と連結されており、上記ピストン2の往復運動に応じて上記クランク軸3が軸回りに回転するようになっている。
上記ピストン2の上方には燃焼室5が形成され、燃焼室5に吸気ポート6および排気ポート7が開口し、各ポート6,7を開閉する吸気弁8および排気弁9がエンジン本体1の上部に設けられている。なお、図例のエンジンはいわゆるダブルオーバーヘッドカムシャフト式(DOHC)エンジンであり、各気筒につき上記吸気弁8および排気弁9がそれぞれ2つずつ設けられている。そして、これら吸気弁8および排気弁9の上方に、クランク軸3と連動して回転するカム軸40,41(図2)が設けられ、各カム軸40,41にそれぞれ取り付けられた複数のカム40a,41aにより、上記吸排気弁8,9が個別に開閉駆動されるようになっている。
上記エンジン本体1には、吸気弁8の閉じ時期を変更可能にするバルブタイミング可変機構(Variable Valve Timing Mechanism)としてのVVT42が設けられている。
上記VVT42は、例えば位相式の可変機構からなり、上記クランク軸3に対する吸気用のカム軸40の回転位相を、エンジンの運転状態に応じて変更し得るように構成されている。このVVT42の構造は従来から種々知られているためその詳細な説明は省略するが、例えばタイミングベルトを介してクランク軸の回転が伝動されるカムプーリとカム軸との間に、両者を相対回転可能とする位相変更用部材が組み込まれ、この部材が油圧もしくは電動で駆動される構造となっている。
なお、バルブタイミング可変機構として、バルブリフト量を変更することで吸気弁8の閉じ時期を変更する可変機構を設けてもよい。また、このようなバルブリフト量の可変機構と、上述した位相式の可変機構とを組み合わせて用いることにより、有効圧縮比の変更制御と吸排気弁8,9のオーバーラップ量の制御とを同時に行い得るようにしてもよい。
ここで、当実施例のエンジンは、一般的なガソリンエンジンと異なり、その圧縮比がかなり高めに設定されている。具体的には、一般的なガソリンエンジンの幾何学的圧縮比が約9〜11程度であるのに対し、当実施例のエンジンは、幾何学的圧縮比が約18に設定されている。なお、吸気弁8の閉タイミングに基づき定まる実質的な圧縮比(有効圧縮比)については、後述するように、圧縮比18以下の範囲で可変的に設定される。
図1および図2に示すように、上記エンジン本体1には、燃焼室5に直接燃料を噴射するインジェクタ10と、燃焼室5に点火用の火花を放電する点火プラグ11とが、各気筒につきそれぞれ1つずつ設けられている。なお、図示の例では、燃焼室5を吸気側の側方から臨むようにインジェクタ10が設けられるとともに、燃焼室5を上方から臨むように点火プラグ11が設けられている。
上記点火プラグ11は、火花放電用の電力を生成する点火回路装置12と電気的に接続されており、この点火回路装置12からの給電に応じて、上記点火プラグ11から所定のタイミングで火花が放電されるようになっている。
また、図2に示すように、上記エンジン本体1には、そのクランク軸3の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ61と、エンジンの冷却水の温度を検出する水温センサ62とが設けられている。
上記エンジン本体1の吸気ポート6および排気ポート7には、吸気通路13および排気通路19がそれぞれ接続されている。
上記吸気通路13は、燃焼用の空気を燃焼室5に供給するための通路であり、図1に示すように、気筒別に分岐した複数の分岐通路部14と、その上流側に共通に設けられた共通通路部15とを有している。
上記排気通路19は、上記燃焼室5で生成された既燃ガス(排気ガス)を排出するための通路であり、上記吸気通路13と同様、気筒別に分岐した複数の分岐通路部20と、その下流側に共通に設けられた共通通路部21とを備えている。
上記吸気通路13の共通通路部15のうち、後述するコンプレッサ27よりも上流側には、上記共通通路部15を通過する吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ60が設けられている。
また、上記共通通路部15には、吸入空気量を調節するスロットル弁16が設けられている。このスロットル弁16は、アクチュエータ17により開閉駆動される電子制御式のスロットル弁である。すなわち、運転者により踏み込み操作される図外のアクセルペダルの開度がアクセル開度センサ63(図3)により検出され、その検出開度やエンジンの運転状態等に応じて、後述するECU50(図3)が適切なスロットル弁16の開度を演算するとともに、その開度に応じた駆動信号が上記アクチュエータ17に入力されてスロットル弁16が開閉駆動されるようになっている。
上記排気通路19の共通通路部21には、三元触媒を内蔵した触媒コンバータ24が設けられており、上記排気通路19を通過する排気ガス中の有害成分が上記触媒コンバータ24の作用により浄化されるようになっている。
図1に示すように、当実施例のエンジンには、吸気を加圧するための過給機25が設けられている。
上記過給機25は、排気通路19の共通通路部21に設けられたタービン26と、吸気通路13の共通通路部15に設けられたコンプレッサ27と、これらタービン26およびコンプレッサ27どうしを連結する連結軸28と、この連結軸28を回転駆動する電動モータ29とを有している。そして、上記タービン26が排気ガスのエネルギーに応じて回転すると、これと連動してコンプレッサ27が高速回転することにより、上記吸気通路13を通過する空気(吸入空気)が加圧されて燃焼室5へと圧送されるとともに、必要に応じて上記電動モータ29が駆動されてコンプレッサ27の回転がアシストされるようになっている。
なお、上記コンプレッサ27は比較的大型のインペラからなり、このような大型のコンプレッサ27により吸気を加圧する上記過給機25は、特に排気ガスのエネルギーが大きい高回転または高負荷域で高い過給性能を発揮する。また、必要に応じて上記電動モータ29による回転アシストが行われることにより、優れた応答性で吸気が加圧されるようになっている。
上記吸気通路13の共通通路部15におけるコンプレッサ27よりも下流側には、過給により温度上昇した空気を冷却するためのインタークーラ18が設けられている。
図3は、エンジンの制御系を示すブロック図である。本図に示されるECU50は、エンジンの各部を統括的に制御するための制御装置であり、周知のCPU、ROM、RAM等から構成されている。
上記ECU50には、各種センサ類からの検出信号が入力される。すなわち、ECU50は、上記エアフローセンサ60、エンジン回転速度センサ61、水温センサ62、およびアクセル開度センサ63と電気的に接続されており、これら各種センサ類からの検出信号が上記ECU50に逐次入力されるようになっている。
また、上記ECU50は、上記インジェクタ10、点火プラグ11用の点火回路装置12、スロットル弁16用のアクチュエータ17、過給機25用の電動モータ29、およびVVT42とも電気的に接続されており、これらの装置にそれぞれ駆動用の制御信号を出力するように構成されている。
上記ECU50が有するより具体的な機能について説明すると、上記ECU50は、その主な機能要素として、バルブタイミング制御手段51、インジェクタ制御手段52、点火制御手段53、および過給制御手段54を有している。
上記バルブタイミング制御手段51は、上記VVT42の動作を制御することにより、吸気弁8の閉じ時期をエンジンの運転状態に応じて適宜変更するものである。すなわち、吸気弁8は、通常、吸気下死点の遅角側の近傍(吸気下死点をわずかに過ぎたタイミング)で閉じられるが、エンジンの運転状態によっては、上記バルブタイミング制御手段51によりVVT42が駆動されて上記吸気弁8の閉じ時期が吸気下死点よりも大幅に遅く設定される。これにより、圧縮行程の実質的な開始時期が遅らされ、エンジンの圧縮比(有効圧縮比)がその分低下する。このことから、当実施例では、エンジンの圧縮比を可変的に設定するための手段(本発明にかかる圧縮比調整手段)が、上記吸気弁8の閉じ時期を変更するVVT42と、その動作を制御するバルブタイミング制御手段51とにより構成されている。なお、上述したように、当実施例のエンジンの幾何学的圧縮比が約18であることから、上記VVT42およびバルブタイミング制御手段51からなる圧縮比調整手段は、有効圧縮比を約18以下の範囲で可変的に設定する。
上記インジェクタ制御手段52は、上記インジェクタ10による燃料の噴射動作を制御することにより、上記インジェクタ10から燃焼室5に噴射される燃料の噴射時期や噴射量(噴射時間)を制御するものである。そして、上記インジェクタ制御手段52の制御により運転状態に応じた規定量の燃料が上記インジェクタ10から噴射され、噴射された燃料が吸入空気と混合されることにより、燃焼室5に所望の空燃比の混合気が生成されるようになっている。
また、上記インジェクタ制御手段52は、必要に応じてインジェクタ10からの燃料の噴射時期を変更したり、燃料噴射の回数を複数回に分割したりすることにより、燃焼室5での混合気の燃焼期間(燃焼反応の始点から終点までのクランク角範囲)を制御する役割をも果たしている。例えば、上記インジェクタ10からの燃料噴射が複数回に分割されると、燃焼室5での気流に乱れが生じてミキシングが促進され、燃焼期間が短縮される。そして、このような燃料の噴射制御が必要に応じて適宜実行されることにより、燃焼期間が所望のクランク角範囲に収められるようになっている。
上記点火制御手段53は、上記点火回路装置12から点火プラグ11への給電を制御することにより、上記点火プラグ11が火花放電を行うタイミング(点火時期)等を制御するものである。
上記過給制御手段54は、上記過給機25用の電動モータ29を必要に応じて駆動することにより、運転状態に応じた適正な過給特性が得られるように過給機25を制御するものである。
(2)エンジンの燃焼制御の具体例
図4(a)〜(e)は、以上のように構成されたECU50の制御により、エンジンの圧縮比(有効圧縮比)ε、理論空燃比に対する空気過剰率λ、点火プラグ11による点火時期θig、混合気の燃焼期間Δθ、および過給機25による過給量QCが、エンジン負荷(アクセル開度に基づく要求トルク)に応じてどのように変化するかを示す図である。これらの図において、横軸の負荷の値X1,X2は、上記ε、λ等の制御パラメータのいずれかが変更される負荷の閾値を示しており、また、Xmはエンジンの最高負荷を示している。なお、以下では、上記閾値X1,X2をそれぞれ第1負荷、第2負荷と称するとともに、無負荷から第1負荷X1までの範囲を負荷域A、第1負荷X1から第2負荷X2までの範囲を負荷域B、第2負荷X2から最高負荷Xmまでの範囲を負荷域Cと称する。
まず、図4(a)を用いて圧縮比εの制御について説明する。圧縮比εは、無負荷から第1負荷X1までの負荷域Aではε=18一定に維持されるが、上記第1負荷X1以上の負荷域Bに移行すると、負荷の増大とともに圧縮比εが徐々に下げられ、第2負荷X2でε=14とされる。そして、第2負荷X2以上になると、最高負荷Xmに至るまでε=14のまま一定に維持される。
理論空燃比に対する空気過剰率λについては、図4(b)に示すように、エンジン負荷の全域(無負荷から最高負荷Xmまでの範囲)でλ=3もしくはこれよりやや低い値に設定される。なお、図例では、負荷域Aの高負荷側ほど、空気過剰率がλ=3から徐々に低下し、負荷域B,Cで再度λ=3まで増大するようになっている。これは、負荷に応じて燃料噴射量が増やされる一方、これに完全に比例するように過給量QCを増やせないからである。例えば、第1負荷X1以下の負荷域Aでは、過給性能がそれ程高くないため(図4(e)参照)、負荷に応じて燃料噴射量が増やされと、空気過剰率λは徐々に低下(リッチ化)する。一方、十分な過給性能が発揮される負荷域B,Cでは、燃料噴射量に見合うだけの十分な空気が燃焼室5に送り込まれるため、空気過剰率λが再度増大してλ=3に戻される。このように、空気過剰率λは、ある程度の範囲で変動するが、最低でもλ=2を下回ることはなく、特に図示の例では、エンジン負荷の全域でλ=3に比較的近い値に維持される。
点火プラグ11による点火時期θigについては、図4(c)に示すように、無負荷から第2負荷X2までの負荷域AおよびBで、最大のトルクが得られる点火時期としてのMBT(Minimum Advance for Best Torque)に維持される一方、上記第2負荷X2以上の負荷域Cに移行すると、負荷の増大に応じて点火時期θigが徐々に遅角され、最高負荷XmでMBTに対し4°遅角される。なお、最大のトルクが得られる上記点火時期MBTは、理論上ある1つのクランク角に特定されるが、本明細書でいうMBTとは、理論上求まるMBTの値に厳密に限定する趣旨ではなく、例えば±1°程度の誤差を許容する所定の幅をもった値であるものとする。
混合気の燃焼期間Δθについては、図4(d)に示すように、エンジン負荷の全域でΔθ=20°に維持される。
最後に、過給機25による過給量QCについては、図4(e)に示すように負荷に応じて徐々に増大されるが、特に、圧縮比εが低下し始める第1負荷X1以上(負荷域BおよびC)になると、優れた過給性能が発揮されて過給量QCが大幅に増大される。
B.実施例の検証
(1)全体指針
本願発明者による研究によれば、図4(a)〜(e)に示したような制御特性に沿ってエンジンを制御すれば、エンジンの熱効率をできる限り高い値に維持しながら、ノッキングの発生や燃焼騒音の増大を防止することが可能である。以下に、このような結論を得るに至った本願発明者による研究の内容について説明する。
図5に示すように、エンジンの熱効率を改善するには、排気損失、冷却損失、ポンプ損失、機械抵抗という4つの損失要因の少なくとも1つを低減する必要がある。本願発明者は、このうちの排気損失と冷却損失に着目し、これら両損失に関連する制御パラメータとして、圧縮比ε、点火時期θig、燃焼期間Δθ、および比熱比をいかに制御すれば熱効率をより効果的に改善できるかについて考察した。なお、上記比熱比については、混合気の空気過剰率λに密接に関連するものであるため、以下では、上記比熱比に代えて空気過剰率λを制御すべきパラメータとして取り上げる。
(2)部分負荷域での熱効率の検証
図7は、エンジンの部分負荷域に設定された代表点R(図6参照)において、圧縮比ε、理論空燃比に対する空気過剰率λ、および混合気の燃焼期間Δθをそれぞれ変化させた場合における熱効率(図示熱効率)の演算結果を示す図である。なお、ここでの演算結果は、図6に示すように、エンジン回転速度Ne=2000rpm、図示平均有効圧力Pi=300kPaという代表点Rでエンジンを運転した場合の熱効率を示すものであり、また、点火時期θigについては、MBT(トルクが最大となる点火時期)で一定とする。
図7では、混合気の燃焼期間Δθを10°,20°,35°,60°に設定した場合の熱効率を左から順に示している。本図によれば、図示熱効率の最大値は、Δθ=60°の場合で約46%、Δθ=35°の場合で約47%であるのに対し、Δθ=10°,20°の場合で約48%である。このことから、熱効率をより高めるには、燃焼期間Δθを10°〜20°程度に設定すればよいことが分かる。
ただし、燃焼期間Δθ=10°,20°の場合の熱効率を詳細に比較すると、図示熱効率の最大値(48%)の範囲がΔθ=10°の方が少し広いだけで、全体的な分布はどちらも大差ないことが分かる。すなわち、燃焼期間Δθを20°から10°に短縮しても、熱効率の改善効果はほとんど得られない。これは、燃焼期間が短くなると筒内圧力・温度の上昇率が大きくなり、それによって冷却損失が増えるためと考えられる。しかも、燃焼期間Δθを10°程度まで短くするのは、実際の制御上困難な面も想定される。このようなことから、Δθ=20°が目標とすべき燃焼期間であると言える。
上記のようにΔθ=20°とした場合、対応するグラフ(左から2番目のグラフ)によると、図示熱効率の最大値(48%)が得られる圧縮比εおよび空気過剰率λの値は、ε=18、λ=5である。
しかしながら、上記グラフによると、圧縮比ε=18のときに、空気過剰率λを変化させることで熱効率が顕著に改善されるのは、λ=3程度までであり、λ=3を超えた範囲では、λを変化させても熱効率は緩やかにしか変化しないことが分かる。例えば、圧縮比ε=18において空気過剰率λをλ=2→3に増大させると、熱効率は45%から47%に上昇する(つまり2%改善する)が、さらにλ=3→5まで空気過剰率を大幅に増大させても、熱効率は48%までしか上昇しない(つまり約1%しか改善されない)。
このように、空気過剰率がλ=3を超えると、熱効率の改善は大きく鈍ってしまう。次に、この理由について考察する。図8および図9は、図7と同じ条件でエンジンを運転した場合に生じる排気損失および冷却損失の演算結果を示す図である。
まず、エンジンの排気損失については、図8に示すように、燃焼期間Δθが短く、圧縮比εが高く、空気過剰率λが大きい方が少ない損失で済むことが分かる。これは、燃焼期間Δθが短く圧縮比εが大きい方が、燃焼が終了した後の膨張期間が長くなり、より多くの仕事を取り出せるため、排気に捨てられるエネルギーが少なく済むからであり、また、空気過剰率λが大きい方が(つまり空燃比がリーンな方が)、排気ガスの温度が低くなり、やはり排気に捨てられるエネルギーが少なく済むからである。
すなわち、図8によれば、同一の燃焼期間、同一の圧縮比であれば、空気過剰率λが大きいほど排気損失は少なくことが分かる。このことから、図7に見られた熱効率の頭打ち現象(λ=3を超えると熱効率の改善が鈍る減少)は、排気損失が原因で起きるものではないと考えられる。
一方、エンジンの冷却損失については、図9に示すように、燃焼期間Δθが短く、圧縮比εが高い方が損失が増大している。また、空気過剰率λについては、λ=3以下の範囲では、λが大きくなるほど冷却損失は低減するものの、λ=3を超えると、冷却損失が増大に転じていることが分かる。このように、空気過剰率λは、λ=3よりも大きくなるとかえって冷却損失の増大を招くものであり、このことから、図7に見られた熱効率の頭打ち現象は、冷却損失が原因で起きているものと考えられる。
次に、空気過剰率λ>3で冷却損失が増大する原因について考察する。冷却損失をFcとすると、Fcは下式(1)によって求めることができる。
Fc=αS(T−Tw)・・・・(1)
ここに、α:熱伝達係数、S:燃焼室表面積、T:ガス温度、Tw:燃焼室壁温、である。
上記式(1)において、燃焼室表面積Sは、型式が同じエンジンであれば常に同一の値であり、また、燃焼室壁温Twは、エンジンの冷却水により常に100℃程度に維持されるため、基本的に大きく変わることはない。
一方、熱伝達係数α、ガス温度Tについては、燃焼条件により変化する値である。このうち、ガス温度Tは、空気過剰率λが大きいほど低い値をとるため、これに比例して冷却損失Fcも低下するはずである。以上のことから、空気過剰率λ>3で冷却損失Fcが増大するのは、熱伝達係数αに起因するものと考えられる。
ここで、上記熱伝達係数αは、下式(2)により求めることができる。
α=0.013D-0.20.8-0.53{2.28Up+c(P−Pm)}0.8・・・・(2)
ここに、D:シリンダボア、P:筒内圧力、Up:平均ピストン速度、c:燃焼初期条件係数、Pm:モータリング圧力、である。
上記式(2)を基にして、空気過剰率λ=1,3,6における熱伝達係数αをクランク角との関係で算出した結果を図10に示す。なお、この図10は、図7〜図9と同様に、回転速度Ne=2000rpm、図示平均有効圧力Pi=300kPa(図6の代表点R)で運転した場合の演算結果を示しており、上記空気過剰率λ以外のパラメータは、圧縮比ε=18、点火時期θig=MBT、燃焼期間Δθ=20°である。
図10に示すように、熱伝達係数αは、空気過剰率λが大きいほど増大していることが分かる。これは、空気過剰率λが増大して空燃比がリーン化すると、上記式(2)の右辺における筒内圧Pが上昇し、これに比例して熱伝達係数αが増大するためである。なお、筒内圧Pが高くなるほど熱伝達係数αが増大するのは、燃焼室壁面に沿って形成される温度境界層(温度が急変する流体の層のことであり、一種の断熱材の役割を果たす)の厚みが薄くなり、熱伝達が促進するためと考えられる。
図11は、上記熱伝達係数αの演算結果(図10)と上記式(1)とに基づいて算出した冷却損失積算値ΣdFcの値を示す図である。なお、この図11では、冷却損失積算値ΣdFcの値がマイナス側に大きいほど冷却損失Fcが大きいことを表わしている。本図によれば、空気過剰率λ=1,3,6における各冷却損失Fcは、λ=1のときが最も大きく、λ=3のときが最も小さい。λ=1のときの冷却損失Fcが大きいのは、理論空燃比での燃焼であり、燃焼温度が高いからである。
一方、空気過剰率をλ=3からλ=6まで大きくすると、冷却損失Fcはかえって増大している。すなわち、空気過剰率λを大きくし過ぎると、上述したように、筒内圧が過大になって熱伝達係数αが大幅に増大するため、これが冷却損失Fcの増大を招いているものと考えられる。
以上のことから、空気過剰率をλ=3を超えて大きくすることは、かえって冷却損失Fcの増大を招くという点で好ましくないと言える。もちろん、空気過剰率λが大きいほど、排ガスの温度が下がって排気損失が低減されるが(図8参照)、結局のところ上記冷却損失Fcの増大によって相殺されてしまう。図7に示したように、λ>3でエンジンの熱効率の改善が鈍ってしまうのはこのためである。
加えて、空気過剰率λ>3という極めてリーンな空燃比を実現するのは、吸気充填性能等の点から考えても現実的に困難である。このことから、空気過剰率λについては、実用性と熱効率改善との両面から、λ=3を目標とすべきであると言える。
なお、上記空気過剰率λ以外の他のパラメータについては、図7で説明したように、圧縮比ε=18、燃焼期間Δθ=20°、点火時期θig=MBTを目標とすべきである。
ここで、以上のような燃焼条件(ε=18、λ=3、θig=MBT、Δθ=20°)でエンジンを運転することによる実用上の問題の有無を図12に基づき考察する。図12は、図6の代表点Rにおいて、上記燃焼条件に基づきエンジンを運転したときの筒内圧P、筒内圧Pの上昇率(圧力上昇率)dP/dθ、排気温度Tex、およびL−W積分値Σ1/τの値をクランク角との関係で示す図である。このうち、排気温度Texとは、エンジンの排気ポート7からの排出ガス温度のことであり、図示のT−V線図におけるE点の温度(つまり排気弁9が開くときの温度)がこれに相当する。また、L−W積分値Σ1/τとは、エンジンの分野において“Livengood-Wu積分”と呼ばれる値のことであり、エンドガス(未燃焼混合気)の化学反応進行速度に関連し、ノッキングの発生を予測するために用いられる。
図12では、上記筒内圧P、圧力上昇率dP/dθ、排気温度Tex、およびL−W積分値Σ1/τの上限値を一点鎖線で示している。具体的に、図12では、筒内圧Pの上限値を12〜15MPaの範囲の所定値に、圧力上昇率dp/dθの上限値を0.4〜0.5MPa/°の範囲の所定値に、排気温度Texの上限値を1500K程度に設定している。これは、エンジンの信頼性や燃焼騒音を考慮してのものである。また、L−W積分値Σ1/τについては、1.0を超えるとノッキングが起きるので、Σ1/τ=1.0を上限値としている。
図12によれば、筒内圧P、圧力上昇率dP/dθ、排気温度Tex(E点の温度)、およびL−W積分値Σ1/τのいずれの値についても、上限値以下に収まっており、このことから、上記燃焼条件(ε=18、λ=3、θig=MBT、Δθ=20°)での運転は、実用上十分耐え得るものであることが理解できる。
以上、図7〜図12を用いて説明したように、エンジンの部分負荷域における代表点R(回転速度Ne=2000rpm、図示平均有効圧力Pi=300kPa)では、圧縮比ε=18、点火時期θig=MBT、燃焼期間Δθ=20°、空気過剰率λ=3という条件でエンジンを運転することが、実用性を考慮しつつ熱効率を効果的に改善できるという点で最も望ましいことが分かった。
(3)負荷拡大に関する検証
次に、圧縮比ε=18、空気過剰率λ=3、点火時期θig=MBT、燃焼期間Δθ=20°という上記代表点Rでの燃焼条件を高負荷域まで継続することが可能かどうかについて考察する。図13は、エンジンの運転状態が図6のラインL(等回転速度線)に沿って変化した場合に、エンジンの最大筒内圧Pmax、最大圧力上昇率dP/dθmax、排気温度Tex、およびL−W積分値Σ1/τが負荷(横軸の図示平均有効圧力Pi)に応じてどのように変化するかを示す図である。なお、以下では、これらPmax、dp/dθmax、Tex、Σ1/τを総称して燃焼指標値ということがある。これら燃焼指標値のうち、最大筒内圧Pmaxとは、図12に示した筒内圧Pの最大値のことであり、最大圧力上昇率dp/dθmaxとは、圧力上昇率dp/dθの最大値のことである。また、図13において、各グラフの最も右側のプロットにおける図示平均有効圧力Piの値(約1200kPa)は、エンジンの最高負荷(図6の最高負荷ラインM上の値)を表わしている。無負荷から最高負荷までの範囲で上記燃焼指標値(Pmax、dp/dθmax、Tex、Σ1/τ)が上限値を超えなければ、エンジンは問題なく運転可能と判断できる。
図13によると、上記燃焼指標値のうち、最大圧力上昇率dp/dθmaxおよび排気温度Texについては、エンジン負荷の全域で上限値以下に収まっており、運転上特に問題とならないことが分かる。一方、最大筒内圧PmaxおよびL−W積分値Σ1/τについては、エンジンの高負荷域で上限値を超えており、特にノッキングに関係する上記L−W積分値Σ1/τについては上限値を大きく超えている。これは、空気過剰率λ=3というリーンな空燃比を高負荷域まで継続すると、筒内にかなり多量の空気を送り込む必要が生じ、筒内の高温・高圧化、およびそれに起因したノッキングの発生が避けられなくなるためと考えられる。以上のことから、部分負荷域と同じ燃焼条件を高負荷域まで継続すると、最大筒内圧PmaxおよびL−W積分値Σ1/τ(特にL−W積分値)が問題となり、これを回避するには燃焼条件を変更する必要があることが分かる。
次に、上記最大筒内圧PmaxおよびL−W積分値Σ1/τを上限値以下に収めるためにエンジンの燃焼条件をどのように変更すればよいかについて検討する。上述したように、図13の各グラフは、圧縮比ε=18、空気過剰率λ=3、点火時期θig=MBT、燃焼期間Δθ=20°という燃焼条件での計算結果である。そこで、これらε、λ、θig、Δθの各パラメータを変更したときの燃焼指標値(Pmax、dp/dθmax、Tex、Σ1/τ)を算出し、それぞれ上限値を超えない範囲に収めまるかどうかを検討する。
図14は、L−W積分値Σ1/τが上限値の1.0に達する点(つまり図示平均有効圧力Pi≒800kPaの点)よりも高負荷側で、上記各パラメータε、λ、θig、Δθを負荷に応じて一定の割合で変化させ、そのときのPmax、dp/dθmax、Tex、Σ1/τの変化を示す図である。図中、●印の破線は圧縮比εを低下させた場合を、▲印の破線は空気過剰率λを増大させて空燃比をリーン化した場合を、▼印の破線は点火時期θigをリタード(遅角)させた場合を、■印の破線は燃焼期間Δθを短縮した場合をそれぞれ示している。これらの線図によれば、図示平均有効圧力Piが約800kPaから900kPaまで上昇すると、各パラメータは、圧縮比εを低下させた場合はε=18→16.5に、空気過剰率λを増大させた場合はλ=3→5に、点火時期θigをリタードさせた場合はθig=MBT→MBT−6°に、燃焼期間Δθを短縮した場合はΔθ=20°→10°に、それぞれ変化する。また、図中の実線は、上記ε、λ、θig、Δθを変更せずに一定に維持した場合を示している。
図14によると、最大筒内圧Pmaxについては、空燃比をリーン化する(空気過剰率λを増大させる)と上限値を超えてしまうが、これ以外の場合は上限値以下に収まっている。最大圧力上昇率dp/dθmaxについては、燃焼期間Δθを短縮すると上限値を超えてしまうが、これ以外の場合は上限値以下に収まっている。排気温度Texについては、ε、λ、θig、Δθのいずれを変更した場合でも上限値以下に収まっている。L−W積分値Σ1/τについては、空燃比をリーン化した場合には上限値を超えてしまうが、それ以外の場合は上限値以下に収まっている。
図15は、図14と同様にε、λ、θig、Δθを変化させた場合の図示熱効率の変化を示す図である。本図によれば、エンジンの熱効率は、空燃比をリーン化した場合(空気過剰率λを増大させた場合)が最も高く、以下、燃焼期間Δθの短縮、圧縮比εの低下、点火時期θigのリタードの順に熱効率が悪化することが分かる。
図16は、図14と図15の結果をまとめた表である。本図に示すように、圧縮比εの低下、空気過剰率λの増大(リーン化)、燃焼期間Δθの短縮、点火時期θigのリタードという4つの選択肢のうち、空気過剰率λの増大または燃焼期間Δθの短縮については、熱効率の順位において1位または2位と優れているものの、これらを選択すると、L−W積分値Σ1/τ、最大筒内圧Pmax、および最大圧力上昇率dp/dθmaxのいずれかの点で問題が生じる。このため、圧縮比εの低下か点火時期θigのリタードのいずれかを選択する必要があるが、熱効率の順位から考えると、圧縮比εの低下(3位)を選択した方が、点火時期θigのリタード(4位)を選択するよりも得策である。以上のことから、図示平均有効圧力Piが約800kPaを超える領域では、まず圧縮比εを低下させればよいことが分かった。
次に、さらに高負荷側まで圧縮比εを低下させ続けた場合にエンジンが運転可能かどうかを検討する。図17は、エンジンを最高負荷まで運転した場合の各燃焼指標値(Pmax、dp/dθmax、Tex、Σ1/τ)を示す図である。この図17において、図示平均有効圧力Pi≒1100kPaよりも低負荷側では、先の図14で圧縮比εの低下(●印の破線)を選択したときと同じ割合で圧縮比εが下げられており、Pi≒1100kPaのときの圧縮比εはε=14.2である。また、この点での他のパラメータは、代表点Rのときと同じくλ=3.0、θig=MBT、Δθ=20°である。なお、図中の実線は、代表点Rでの燃焼条件、つまり、ε=18、λ=3、θig=MBT、Δθ=20°という条件を変更しなかった場合の各燃焼指標値を示している。
図17によれば、図示平均有効圧力Pi≒1100kPaのときに最大圧力上昇率dp/dθmaxが上限値に達しており、これ以上負荷が高まってdp/dθがさらに増大すると、筒内圧の急上昇による燃焼騒音(例えばディーゼルノックに似た比較的大きな騒音)が発生するおそれがある。すなわち、図示平均有効圧力Piが約1100kPaを超える範囲では、図14と同じ割合で圧縮比εを低下させても良好な燃焼状態を得ることはできず、圧縮比εをより急な割合で低下させるか、もしくはこれ以外のパラメータとして、空気過剰率λ、点火時期θig、燃焼期間Δθのいずれかを変更する必要があることが分かる。なお、図示平均有効圧力Pi≒1100kPaでまずdp/dθmaxが上限値に達してしまうのは、圧縮比εが14程度まで低下したことで、トルクが最大となる点火時期MBTが進角側に移動するためである。
図17において、図示平均有効圧力Pi≒1100kPaよりも高負荷側では、圧縮比ε、空気過剰率λ、点火時期θig、燃焼期間Δθの各パラメータを負荷に応じて一定の割合で変化させている。具体的に、●印の破線は圧縮比εを急低下(Pi≒1100kPa以下のときよりも急な割合で低下)させた場合を、▲印の破線は空気過剰率λを増大させて空燃比をリーン化した場合を、▼印の破線は点火時期θigをリタード(遅角)させた場合を、■印の破線は燃焼期間Δθを延長した場合をそれぞれ示している。これらの線図によれば、エンジンの最高負荷に相当する約1200kPaまで図示平均有効圧力Piが上昇すると、各パラメータは、圧縮比εを低下させた場合はε=14.2→8.5に、空気過剰率λを増大させた場合はλ=3→5に、点火時期θigをリタードさせた場合はθig=MBT→MBT−4°に、燃焼期間Δθを延長した場合はΔθ=20°→21°に、それぞれ変化する。
図17によると、最大筒内圧Pmaxについては、空燃比をリーン化する(空気過剰率λを増大させる)と上限値を超えてしまうが、これ以外の場合は上限値以下に収まっている。最大圧力上昇率dp/dθmaxについては、ε、λ、θig、Δθのいずれを変更した場合でも上限値以下に収まっている。排気温度Texについても、ε、λ、θig、Δθのいずれを変更した場合でも上限値以下に収まっている。L−W積分値Σ1/τについては、燃焼期間Δθを延長した場合には上限値を超えてしまうが、それ以外の場合は上限値以下に収まっている。
図18は、図17と同様にε、λ、θig、Δθを変化させた場合の図示熱効率の変化を示す図である。本図によれば、エンジンの熱効率は、空燃比をリーン化した場合(空気過剰率λを増大させた場合)が最も高く、以下、燃焼期間Δθの延長、点火時期θigのリタード、圧縮比εの低下の順に熱効率が悪化することが分かる。
図19は、図17と図18の結果をまとめた表である。本図に示すように、圧縮比εの低下、空気過剰率λの増大(リーン化)、燃焼期間Δθの延長、点火時期θigのリタードという4つの選択肢のうち、空気過剰率λの増大または燃焼期間Δθの延長については、熱効率の順位において1位または2位と優れているものの、これらを選択すると、最大筒内圧PmaxまたはL−W積分値Σ1/τの点で問題が生じる。このため、圧縮比εの低下か点火時期θigのリタードのいずれかを選択する必要があるが、熱効率の順位から考えると、点火時期θigのリタード(3位)を選択した方が、圧縮比εの低下(4位)を選択するよりも得策である。以上のことから、図示平均有効圧力Piが約1100kPaを超える領域では、点火時期θigをリタードさせればよいことが分かった。
(4)検証結果のまとめ
以上、図5〜図19に基づく検証の内容から、以下のような結論を得ることができる。
(a)エンジン回転速度Ne=2000rpm、図示平均有効圧力Pi=300kPaという代表点R(図6)での熱効率の演算結果等によると、エンジンの部分負荷域では、圧縮比ε=18、空気過剰率λ=3、点火時期θig=MBT、燃焼期間Δθ=20°という燃焼条件で運転することが、実用性および熱効率の両面から最も有効的である。
(b)ただし、上記のような燃焼条件(ε=18、λ=3、θig=MBT、Δθ=20°)をエンジンの高負荷域まで継続すると、ノッキングの発生や燃焼騒音の増大といった問題が生じる。これを回避するには、エンジンの高負荷域で、圧縮比ε、空気過剰率λ、点火時期θig、および燃焼期間Δθの各パラメータのいずれかを変更する必要がある。
(c)上記ε、λ、θig、Δθのうちどのパラメータを変更するかは種々考えられるが、ノッキング等を回避しつつ熱効率の損失を最小限に抑える観点からすると、図示平均有効圧力Pi≒800〜1100kPaの範囲で、負荷に応じて圧縮比εを徐々に低下させるとともに、図示平均有効圧力Pi≒1100〜1200kPaの範囲で、負荷に応じて点火時期θigを徐々にリタードさせることが望ましい。
(d)図20に、上記(c)のような制御を行った場合の各パラメータε、λ、θig、Δθの値と、それに基づく図示熱効率の変化を示す。本図に示される条件でエンジンを運転することにより、熱効率をできるだけ高い値に維持しながら、ノッキングの発生や燃焼騒音の増大を有効に回避することができる。
C.実施例のまとめと効果
以上の説明から理解できるように、上記A.の実施例における各パラメータε、λ、θig、Δθ等の制御(図4)は、上記B.の検証から得られた結果(図20)に基づき導き出されたものである。なお、両者の対応関係としては、図20において圧縮比εを低下させ始める図示平均有効圧力Pi=800kPaが、図4の第1負荷X1に相当し、点火時期θigをリタード(遅角)させ始める図示平均有効圧力Pi=1100kPaが、図4の第2負荷X2に相当する。以下に、上記A.で述べた実施例の特徴とその効果についてまとめて説明する。
上記実施例では、図4に示したように、混合気の空燃比をエンジン負荷の全域で理論空燃比よりもリーン(空気過剰率λ>1)に設定し、あらかじめ設定された第1負荷X1以上にエンジン負荷が増大すると、負荷の増大に応じて圧縮比εを低下させるとともに、上記第1負荷X1よりも高い第2負荷X2以上にエンジン負荷が増大すると、点火プラグ11による点火時期θigをMBT(トルクが最大となる点火時期)に対し遅角させるようにした。このような構成によれば、空燃比のリーン化による熱効率の向上を図りながら、高負荷域での異常燃焼や燃焼騒音等の問題を有効に回避できるという利点がある。
すなわち、上記実施例では、エンジン負荷の全域で空燃比をリーン化したことにより、熱効率を大幅に向上させて燃費性能を効果的に改善することができる。ただし、空燃比のリーン化を高負荷側まで継続すると、負荷の増大に伴って吸入空気量を大幅に増大させる必要があり、それによる筒内の高温・高圧化によりノッキングが起きるおそれがある(図14のL−W積分値Σ1/τのグラフ参照)。このような問題に対し、上記実施例では、所定の第1負荷X1以上で圧縮比εを低下させるようにしたため、上記のような高負荷域でのノッキングの発生を効果的に防止することができる。さらに、上記第1負荷よりも高負荷側の第2負荷X2以上になると、筒内圧の急上昇(dp/dθの増大)により大きな燃焼騒音が生じるおそれがあるが(図17のdp/dθmaxのグラフ参照)、上記実施例では、上記第2負荷X2以上で点火時期θigをリタード(遅角)させることにより、上記のような燃焼騒音の発生をも防止することができる。このように、上記実施例によれば、空燃比のリーン化による熱効率の向上をエンジン負荷の全域で達成しつつ、高負荷域でのノッキングの発生や燃焼騒音の増大を効果的に防止できるという利点がある。
特に、上記実施例のように、理論空燃比に対する空気過剰率λをλ≒3に設定した場合には、図7〜図9等に基づき説明したように、エンジンの排気損失および冷却損失の両方をバランスよく低減することができ、実現可能な範囲で熱効率を十分なレベルに高めることができる。また、エンジン負荷の全域でλ≒3というかなりリーンな空燃比を維持することにより、燃焼温度を十分に低下させて燃焼室5からのNOx排出量を大幅に削減することができ、高価なNOx触媒等を設けることなく排気ガスをクリーンに維持できるという利点がある。
また、上記実施例では、第1負荷X1から第2負荷X2までの負荷域Bで圧縮比εを低下させる操作を、吸気弁8の閉じ時期を吸気下死点に対し遅らせることで行うようにしたため、吸気弁8の閉じ時期を変更するだけの比較的簡単な構成で、適正にエンジンの圧縮比εを調整できるという利点がある。
例えば、ピストン2のストローク量(圧縮上死点の位置)を変更することにより、エンジンの幾何学的圧縮比を変更することも考えられるが、このようにすると、ピストン2のストローク量を変更可能にするための機構として、クランク軸3の周辺に各種リンク機構等を設ける必要が生じ、構造が複雑化するという問題がある。これに対し、上記実施例では、VVT42およびバルブタイミング制御手段51からなる圧縮比調整手段により吸気弁8の閉じ時期を吸気下死点に対し遅らせ、これによって圧縮比εを調整するようにしたため、より簡単な構成で圧縮比εを調整できるという利点がある。
また、上記実施例では、図4に示したように、圧縮比εが下げられる第1負荷X1以上の負荷域(負荷域BおよびC)で、過給機25による過給量QCを大幅に増大させるようにしたため、高負荷域でのエンジン出力を過給により十分に確保しながら、空燃比のリーン化を高負荷域まで継続して熱効率をより向上させることができるという利点がある。
なお、上記実施例では、空気過剰率λ≒3(λ=3もしくはこれよりやや低い値)という大幅にリーンな空燃比をエンジン負荷の全域で維持するために、特にエンジンの高負荷域でかなり多量の空気を筒内に送り込む必要があることから、大型のコンプレッサ27や回転アシスト用の電動モータ29等を備えた高性能な過給機を上記過給機25として用いるようにしたが、エンジンの運転状態に応じて過給量をより細やかに制御するために、過給特性の異なる複数の過給機をエンジンに設け、これらの過給機をエンジンの運転状態に応じて適宜使い分けるようにしてもよい。
また、上記実施例では、エンジン負荷の全域で理論空燃比に対する空気過剰率λをλ≒3に維持するようにしたが、例えばコスト面等の問題から過給機25による過給量を十分に確保できないような場合には、負荷域の全部または一部において、空気過剰率λをλ=2程度に設定してもよい。図7の左から2番目のグラフ(Δθ=20°のときのグラフ)に示したように、空気過剰率λを3→2程度に低下させたとしても、例えば圧縮比18の場合で図示熱効率は2%ほどしか低下しないため、従来と比べれば熱効率を十分に向上させることが可能である。
また、上記実施例では、エンジン負荷の全域で点火プラグ11を用いた火花点火による燃焼を行うものとしたが、例えば、従来からある一般的なガソリンを燃料として用いた場合には、特にε=18というかなり高めの圧縮比に設定されるエンジンの部分負荷域(図4の負荷域A)において、混合気が圧縮上死点付近で自着火してしまい、火花点火による燃焼(火花点火により形成された火種からその周囲へと火炎を伝播させる燃焼)を実行できないことも想定される。そこで、このような場合には、少なくとも一部の運転領域において、点火プラグ11を用いることなく、混合気の自着火による燃焼(圧縮自己着火燃焼)を行わせるようにしてもよい。
一方、ε=18といった高圧縮比下でも確実に火花点火による燃焼を行わせようとすれば、従来のガソリンとは異なる性状の燃料を用いればよい。具体的に、高圧縮比下でも火花点火による燃焼を行うことが可能な燃料としては、例えば、水素、もしくは、水素が添加されたガソリン等が有望視される。または、従来通りの性状のガソリンを燃料として用いたい場合には、圧縮比εの最大値を18からある程度低下させてもよい。
また、上記実施例では、第1負荷X1から第2負荷X2までの負荷域Bで、点火時期θigをMBTに維持しつつ、負荷の増大に応じて圧縮比εを徐々に低下させるようにしたが、上記負荷域Bでは、圧縮比εの低下に加えて、さらに点火時期θigをMBTに対し遅角させるようにしてもよい。なお、この場合、上記第2負荷X2以上の負荷域Cでは、上記負荷域Bのときよりも大きな遅角幅で上記点火時期θigをMBTに対しリタードさせるとよい。このようにした場合でも、高負荷域でのノッキングの発生や燃焼騒音の増大を防止することが可能である。
ただし、上記実施例に示したように、負荷域Bにおいて、点火時期θigをMBTに維持しつつ圧縮比εを低下させるようにした方が、エンジンの熱効率が損なわれるのを最小限に抑制できるという点で有利である。
1A〜1D 気筒
8 吸気弁
11 点火プラグ
25 過給機
42 VVT(圧縮比調整手段の一要素例)
51 バルブタイミング制御手段(圧縮比調整手段の一要素例)
53 点火制御手段
X1 第1負荷
X2 第2負荷
B (第1負荷から第2負荷までの)負荷域
C (第2負荷以上の)負荷域
θig 点火時期
ε 圧縮比
λ 空気過剰率

Claims (9)

  1. 気筒内の混合気に点火用の火花を放電する点火プラグを備えた火花点火式エンジンを制御する方法であって、
    上記混合気の空燃比をエンジン負荷の全域で理論空燃比よりもリーンに設定し、
    あらかじめ設定された第1負荷よりもエンジン負荷が低いときは圧縮比を所定値に設定する一方、上記第1負荷以上にエンジン負荷が増大すると、圧縮比を上記所定値よりも低い値に設定するとともに、その低下量を負荷の増大に応じて徐々に大きくし、
    上記第1負荷よりも高い第2負荷よりもエンジン負荷が低いときは、混合気の燃焼開始時期を所定の時期に設定する一方、上記第2負荷以上にエンジン負荷が増大すると、混合気の燃焼開始時期を上記所定の時期よりも遅角させるとともに、その遅角量を負荷の増大に応じて徐々に大きくすることを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  2. 請求項1記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    エンジン負荷が上記第2負荷以上に増大すると、上記点火プラグによる点火時期を、トルクが最大となる点火時期であるMBTに対し所定クランク角だけ遅らせることを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  3. 請求項2記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、点火時期を上記MBTに維持しつつ、負荷の増大に応じて圧縮比を低下させることを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  4. 請求項2記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、負荷の増大に応じて圧縮比を低下させ、かつ点火時期を上記MBTよりも遅らせる一方、
    上記第2負荷以上の負荷域では、より大きな遅角幅で上記点火時期をMBTから遅らせることを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    上記第1負荷から第2負荷までの負荷域では、吸気弁の閉じ時期を変更することで圧縮比を低下させることを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    少なくとも上記第1負荷以上の負荷域では過給機を用いて過給を行うことを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    理論空燃比に対する空気過剰率λをエンジン負荷の全域でλ=2以上に設定することを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  8. 請求項7記載の火花点火式エンジンの制御方法において、
    上記空気過剰率λをエンジン負荷の全域でλ=2〜3に設定することを特徴とする火花点火式エンジンの制御方法。
  9. 気筒内の混合気に点火用の火花を放電する点火プラグを備えた火花点火式エンジンを制御する装置であって、
    上記点火プラグによる火花放電を制御する点火制御手段と、
    エンジンの圧縮比を可変的に設定する圧縮比調整手段とを備え、
    上記混合気の空燃比が、エンジン負荷の全域で理論空燃比よりもリーンな空燃比に設定され、
    あらかじめ設定された第1負荷よりもエンジン負荷が低いときは圧縮比を所定値に設定する一方、上記第1負荷以上にエンジン負荷が増大すると、圧縮比を上記所定値よりも低い値に設定するとともに、その低下量を負荷の増大に応じて徐々に大きくする制御が上記圧縮比調整手段により実行されるとともに、
    上記第1負荷よりも高い第2負荷よりもエンジン負荷が低いときは、上記点火プラグによる点火時期を、トルクが最大となる点火時期であるMBTに設定する一方、上記第2負荷以上にエンジン負荷が増大すると、上記点火プラグによる点火時期を上記MBTよりも遅角させるとともに、その遅角量を負荷の増大に応じて徐々に大きくする制御が上記点火制御手段により実行されることを特徴とする火花点火式エンジンの制御装置。
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