JP5417842B2 - イミダゾール化合物およびそれを用いたクロスカップリング反応用触媒組成物 - Google Patents

イミダゾール化合物およびそれを用いたクロスカップリング反応用触媒組成物 Download PDF

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Description

本発明は、新規なイミダゾール化合物に関するものである。また、本発明のイミダゾール化合物と、パラジウム化合物、ニッケル化合物、および鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とからなる触媒組成物は、クロスカップリング反応に対して極めて有用である。
クロスカップリング反応技術は、電子材料、医農薬中間体、各種機能性化合物等を合成する技術として非常に重要な技術である。中でも、塩基および触媒存在下に、ホウ素化合物と有機ハライド化合物とをクロスカップリングさせる反応(鈴木カップリング反応)、有機マグネシウム試薬とハライド化合物とをクロスカップリングさせる方法(熊田カップリング反応)、有機亜鉛試薬とハライド化合物とをクロスカップリングさせる反応(根岸カップリング反応)が、有用で汎用性の高い技術として大きく注目されてきており、この技術を利用して様々な有用な化合物が合成可能である。特に近年では、ビアリール化合物(医農薬中間体や液晶材料等)や置換オレフィン化合物(機能性材料の原料等)の合成において極めて重要となっている。
イミダゾール化合物は、医薬、農薬、機能性材料の中間体として有用であることが知られているが、近年、クロスカップリング反応用触媒の配位子としても利用できることが報告されている(例えば、特許文献1〜2参照)。前述の鈴木カップリング反応において、ニッケル化合物としてビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルを、イミダゾール化合物として1−メチルイミダゾールを触媒成分として利用する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法において、高収率で目的のクロスカップリング体を得るためには、空気に対して極めて敏感で取扱い困難なビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケルと組み合わせる必要があり、量産化の観点では問題があった。また、近年、N−アリールイミダゾールの2位にホスフィン部位を導入した触媒配位子が報告されているが、クロスカップリング反応への適用例は見られなかった(例えば、非特許文献1参照)。
特開2004−91465公報(実施例) 特開2007−505945公報(実施例) M.Abdull Jalil and Ee Bee Hui,Tetrahedoron Letters,47(2006),1473−1475
クロスカップリング反応用触媒の配位子として有用な新規なイミダゾール化合物を提供することにある。
このような状況のもと、本発明者は、新規なイミダゾール化合物を開発すべく鋭意検討した結果、式(1)で表される特定のイミダゾール誘導体が、クロスカップリング反応用触媒の配位子として有効であることを見出した。即ち、本発明は、式(1)で表される新規イミダゾール化合物、その製造方法およびその用途に関するものである。
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明のイミダゾール化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
Figure 0005417842
(式中、R〜Rは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、または置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルケニル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。)
式(1)で表されるイミダゾール化合物において、R〜Rにおける置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルキル基としては特に限定されないが、例えば、直線状、分岐状もしくは環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロエイコシル基等が挙げられ、さらにノルボルナル基、アダマンチル基等の多環式化合物もこの範疇に含まれる。また、任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基等で置換されていてもよい。
〜Rにおける置換基を有していてもよいアリール基としては特に限定されないが、例えば、炭素数6〜18の1〜4環のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレン基、ピレン基、フェナントレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。また、任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基等で置換されていてもよい。
〜Rにおける置換基を有していてもよいヘテロアリール基としては特に限定されないが、例えば、炭素数5〜18の1〜4環のヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、インドール基、ベンゾチオフェン基、キノリン基、イソキノリン基、カルバゾール基、アクリジン基、フェナントロリン基、フェノチアジン基等が挙げられる。また、任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基等で置換されていてもよい。
〜Rにおける置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルケニル基としては特に限定されないが、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、イソプロペニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、シクロウンデセニル基、シクロドデセニル基、シクロトリデセニル基、シクロテトラデセニル基、シクロペンタデセニル基、シクロヘキサデセニル基、シクロヘプタデセニル基、シクロオクタデセニル基、シクロノナデセニル基、シクロエイコセニル基等が挙げられ、さらにノルボルニル基等の多環式化合物もこの範疇に含まれる。また、任意の数の水素原子が、それぞれハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルケニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、エステル基等で置換されていてもよい。
中でも、Rはシクロヘキシル基、t−ブチル基、1−アダマンチル基、フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基が好ましく、特にt−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基であるイミダゾール化合物は、合成収率、ホスフィン化剤の入手容易さ、およびクロスカップリング反応における触媒活性の観点から好ましい。
また、本発明のイミダゾール化合物は、下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物との反応を行い、その反応で得られた化合物と下記式(4)で表される化合物とを−100〜150℃の温度範囲で反応させることにより製造することができる。
Figure 0005417842
Figure 0005417842
Figure 0005417842
(式中、R〜Rは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、または置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルケニル基を表す。mは、0〜3の整数を表す。)
なお、R〜Rは、式(1)で示したものと同様である。
本発明における式(3)で表される化合物の使用量は、式(2)で表される化合物に対して0.5〜5.0モル当量である。収率の向上および副生物の抑制の観点から0.9〜1.1モル当量が好ましい。
本発明における式(4)で表されるホスフィン化合物の使用量は、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物から調製される化合物に対して0.5〜5.0モル当量である。収率の向上および副生物の抑制の観点から0.9〜1.1モル当量が好ましい。
本発明の製造方法における反応温度は、通常−100〜150℃の範囲である。しかし、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物との反応において、続く式(4)で表される化合物との反応においても、反応初期は低温で行い、徐々に温度を上げて反応を継続させることが好ましい。反応初期は−100〜−50℃の範囲であり、最終的には0〜150℃、好ましくは室温〜100℃の範囲が用いられる。
本発明の反応は、溶媒存在下に実施することができる。使用される溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されないが、例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、含窒素系溶媒、含硫黄系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。通常、これらの溶媒を単独に或いは混合して使用することができる。また、共溶媒として、水等の溶媒も使用することができる。
反応終了後は、酸洗浄、水洗浄、アルカリ洗浄を適宜組み合わせることにより、副生した無機物や未反応原料等を除去し、さらにクロマトグラフィーや蒸留、再結晶等の通常の精製技術により、目的とするイミダゾール化合物を得ることができる。
本発明の式(1)で表されるイミダゾール化合物は新規物質であり、このイミダゾール化合物と、パラジウム化合物、ニッケル化合物、および鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とからなる触媒組成物は、クロスカップリング反応に対して高い活性を示す。
パラジウム化合物としては特に限定されないが、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、硝酸パラジウム、パラジウム−炭素、パラジウム−活性アルミナ、トリスジベンジリデンアセトン、ジクロロ(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム等が挙げられる。
ニッケル化合物としては特に限定されないが、本発明の触媒組成物におけるニッケル化合物とは、ニッケル元素を有効成分とする化合物のことを言い、例えば、0〜2価のニッケル塩およびそれらの化合物から誘導された錯体化合物を示す。ニッケル塩の具体例としては特に限定されるものではないが、例えば、ニッケル(0)粉末、フッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、沃化ニッケル(II)等のハロゲン化物、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、過塩素酸ニッケル(II)、硫化ニッケル(II)等の無機塩、ギ酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、フマル酸ニッケル(II)、乳酸ニッケル(II)、グルコン酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、スルファミン酸ニッケル(II)、アミド硫酸ニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機酸ニッケル塩が挙げられる。また、ニッケル塩から誘導された錯体化合物としては、式(5)
NiZ (5)
(式中、Yは、同一または異なっていてもよく、ホスフィン配位子、アミン配位子またはカルボニル配位子を表し、それぞれの配位子は架橋されていてもよい。eは、0〜6の整数を表す。Niは、0〜2価である。Zは、同一または異なっていてもよく、ハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の炭化水素基である。fは、Niの価数に相当する数を表す。)
で表される化合物が挙げられ、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(アリル)ニッケル(0)、テトラカルボニルニッケル(0)、トリカルボニル(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、二窒化ビス[ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(0)]、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、(シクロドデカトリエン)ニッケル(0)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、臭化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、沃化トリス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(I)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二臭化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二沃化[1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)、二塩化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二臭化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二沃化[1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)、二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリエチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリ−i−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリ−i−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリ−i−プロピルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(トリ−n−ブチルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(メチルジフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二臭化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、二沃化ビス(ジメチルフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、沃化(フェニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジメチルビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、テトラメチレンビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、メチル(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、塩化(ヒドリド)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、二塩化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、二臭化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、二沃化(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、ジエチル(2,2’−ビピリジル)ニッケル(II)、二塩化ビス(トリエチルアミン)ニッケル、二臭化ビス(トリエチルアミン)ニッケル、二沃化ビス(トリエチルアミン)ニッケル、二塩化ビス(ピリジン)ニッケル、二臭化ビス(ピリジン)ニッケル、二沃化ビス(ピリジン)ニッケル、二塩化(N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル、二臭化(N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル、二沃化(N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル等が挙げられる。上記したニッケル化合物は単独に或いは混合して使用してもよい。なお、経済性および化合物入手の容易さの観点から、ハロゲン化ニッケルもしくはそれらの化合物から誘導された錯体、二塩化(N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル化合物を用いることが好ましい。
鉄化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、硝酸鉄等が挙げられる。
本発明の触媒組成物は、上記したパラジウム化合物、ニッケル化合物、および鉄化合物から選ばれる少なくとも一種に、本発明のイミダゾール化合物を添加することにより得られる。また、これらの金属化合物とイミダゾール化合物を別々に反応系中に加えても、系中で触媒が調製され、本発明の触媒組成物が得られる。各々の化合物の組成比は、これらの金属化合物1.0モルに対し、イミダゾール化合物1.0〜10.0モルの範囲により適宜選択することができる。より好ましくは、これらの金属化合物1.0モルに対し、イミダゾール化合物1.0〜5.0モルの範囲である。
本発明の触媒組成物は、溶媒存在下に調製することができる。使用される溶媒は、これらの金属化合物およびイミダゾール化合物に対して不活性であれば特に限定されないが、例えば、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、含窒素系溶媒、含硫黄系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。通常、これらの溶媒を単独に或いは混合して使用することができる。
本発明者は、上記の触媒組成物が、有機合成反応において非常に高い活性を示すことを見出した。特に、塩基の存在下に、ホウ素化合物とハライド化合物とをクロスカップリングさせる反応(鈴木カップリング反応)、有機マグネシウム試薬とハライド化合物とをクロスカップリングさせる反応(熊田カップリング反応)、有機亜鉛試薬とハライド化合物とをクロスカップリングさせる反応(根岸カップリング反応)において、極めて高い活性を示すことを見出した。
本発明のイミダゾール化合物は新規物質であり、このイミダゾール化合物と、パラジウム化合物、ニッケル化合物、および鉄化合物から選ばれる少なくとも一種とからなる触媒組成物は、クロスカップリング反応に対して高い活性を示す。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
なお、本実施例で用いた分析機器を以下に列記する。
[ガスクロマトグラフィー分析]
ガスクロマトグラフィー分析装置:島津製作所製 GC−2014
[NMR測定]
NMR測定装置:VARIAN Gemini−200
[質量分析]
質量分析装置:日立製作所製 M−80B
実施例1(化合物1の合成)
Figure 0005417842
窒素ガスで置換された200mLシュレンク管に、1,2−ジメチルイミダゾール 1.44g、脱水テトラヒドロフラン20mLを仕込み、室温で溶解させた。その後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液 9.4mLをゆっくり滴下し、1時間熟成させた後、脱水テトラヒドロフラン30mLに溶解させた1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキシド 1.86gをゆっくり滴下した。その後、ゆっくりと室温まで昇温した。再び−78℃まで冷却し、別途調整したジフェニルホスフィノリチウム−THF溶液全量を同温度でゆっくりと滴下した後、室温まで昇温し、さらに60℃で2時間反応させた。反応液を放冷し、溶媒を留去した後、ジエチルエーテルに溶解させ、水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮により目的物を白色固体として4.20g得た。
FDMS:308(M
H−NMR(200MHz,CDCl)δ(ppm):1.90(quintet,2H,J=8.0Hz), 2.16(t,2H,J=6.8Hz), 2.78(t,2H,J=7.4Hz), 3.47(s,3H), 6.75(s,1H), 6.90(s,1H), 7.30−7.47(m,10H)
(ジフェニルホスフィノリチウムの調製法)
窒素ガスで置換された100mLシュレンク管に、10wt%ジフェニルホスフィン−ヘキサン溶液 28.3g、脱水テトラヒドロフラン20mLを室温で仕込んだ。その後、0℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液 9.4mLをゆっくり滴下し、1時間熟成させてジフェニルホスフィノリチウムを調製した。
実施例2(鈴木カップリング反応における触媒性能試験)
実施例1で得られた化合物1を配位子として46.3mg(5.0mol%)、塩化ニッケル(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)錯体 36.9mg(5.0mol%)、4−クロロトルエン 0.38g(3.0mmol)、フェニルボロン酸0.44g(3.6mmol)、無水リン酸3カリウム 1.91g(9.0mmol)、テトラヒドロフラン10mLを30mL反応管に仕込み、窒素雰囲気下、還流温度で12時間攪拌した。反応終了後、10%HCl水溶液を加えて後処理し、分液操作にて得られた有機層をさらに飽和NaCl水溶液で洗浄した。得られた有機層をn−ドデカンを内部標準物質とするガスクロマトグラフィー定量分析にて分析した結果、目的物である4−メチルビフェニルが、収率92%(4−クロロトルエン基準)の割合で生成していた。
実施例3(鈴木カップリング反応における触媒性能試験)
実施例2において、塩化ニッケル(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)錯体をニッケル(1,5−シクロオクタジエン)に変更した以外は、実施例2の方法に準じて反応を行ったところ、目的物である4−メチルビフェニルが、収率90%(4−クロロトルエン基準)の割合で生成していた。
比較例1(Tetrahedoron Lettersの追実験)
窒素ガスで置換された200mLシュレンク管に、1−メチルイミダゾール 1.23g、脱水テトラヒドロフラン20mLを仕込み、室温で溶解させた。その後、−78℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液 9.4mLをゆっくり滴下し、1時間熟成させた後、脱水テトラヒドロフラン30mLに溶解させた1,3−プロパンジオールサイクリックスルフェート 2.07gをゆっくり滴下した。その後、ゆっくりと室温まで昇温した。再び−78℃まで冷却し、別途調整したジフェニルホスフィノリチウム−THF溶液全量を同温度でゆっくりと滴下した後、室温まで昇温し、さらに60℃で2時間反応させた。反応液を放冷し、溶媒を留去した後、ジエチルエーテルに溶解させ、水で洗浄した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮したが、有機層に目的物は確認されなかった。
(ジフェニルホスフィノリチウムの調製法)
窒素ガスで置換された100mLシュレンク管に、10wt%ジフェニルホスフィン−ヘキサン溶液 28.3g、脱水テトラヒドロフラン20mLを室温で仕込んだ。その後、0℃まで冷却し、1.6M n−ブチルリチウム−ヘキサン溶液 9.4mLをゆっくり滴下し、1時間熟成させてジフェニルホスフィノリチウムを調製した。
比較例2(鈴木カップリング反応における触媒性能試験)
実施例2において、配位子に1−メチルイミダゾールを使用した以外は、実施例2の方法に準じて反応を行ったところ、目的物である4−メチルビフェニルが、収率79%(4−クロロトルエン基準)の割合で生成していた。
比較例3(鈴木カップリング反応における触媒性能試験)
実施例2において、配位子に1−メチル−2−(ジフェニルホスフィノエチル)イミダゾールを使用した以外は、実施例2の方法に準じて反応を行ったところ、目的物である4−メチルビフェニルが、収率23%(4−クロロトルエン基準)の割合で生成していた。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表されるイミダゾール化合物。
    Figure 0005417842
    (式中、R〜Rは、同一または異なっていてもよく、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよいヘテロアリール基、または水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルケニル基を表す。nは、1〜4の整数を表す。)
  2. が、それぞれ独立して、シクロヘキシル基、t−ブチル基、1−アダマンチル基、フェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、および2,4,6−トリメチルフェニル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のイミダゾール化合物。
  3. が、炭素数1〜12のアルキル基であることを特徴とする請求項1乃至2に記載のイミダゾール化合物。
  4. が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、およびシクロヘキシル基のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載のイミダゾール化合物。
  5. およびRが、水素原子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のイミダゾール化合物。
  6. 下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物との反応を行い、その反応で得られた化合物と下記式(4)で表される化合物とを−100〜150℃の温度範囲で反応させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のイミダゾール化合物の製造方法。
    Figure 0005417842
    Figure 0005417842
    Figure 0005417842
    (式中、R〜Rは、同一または異なっていてもよく、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよいヘテロアリール基、または水酸基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシ基、及びエステル基からなる群より選択される置換基を有していてもよい直線状、分岐状もしくは環状のアルケニル基を表す。mは、0〜3の整数を表す。)
  7. パラジウム化合物、ニッケル化合物、および鉄化合物から選ばれる少なくとも一種と、請求項1乃至5のいずれかに記載のイミダゾール化合物とからなることを特徴とするクロスカップリング反応用触媒組成物。
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