(実施形態)
以下、本発明の一実施形態に係る検査システムについて説明する。検査システムは、マイクロチップ1と、マイクロチップ1と同一の形状を有するマイクロチップ101と、両マイクロチップ1、101が着脱可能に装着される検査装置30と、を備える。
検査装置30の方向について、具体的に図4、及び図5を用いて説明する。図5の上下方向、左右方向、及び前後方向は、検査装置30にマイクロチップ1が装着されて所定の初期回転位置にある状態の方向を表す。図4に示すように、検査装置30は、主軸57と、T型プレート48と、ホルダ47L、47Rと、を含む。T型プレート48は、溝部80を有する。重力の方向と平行な主軸57の延設方向を上下方向とする。溝部80の延設方向を左右方向とする。上下方向と左右方向とに垂直な方向を前後方向とする。図4に示すように、検査装置30のホルダ47L、47Rは、主軸57を軸線として、回転する。この回転により、遠心力CFが両ホルダ47L、47Rに付与される。図4の左側に存在するホルダ47Lは、前後方向に延びる軸46Lを軸線として第1の回動方向LDに角度変更される。同様に、図4の右側に存在するホルダ47Rは、前後方向に延びる軸46Rを軸線として第1の回動方向LDの反対方向である第2の回動方向RDに角度変更される。
図1は、検査システムにおいて使用されるマイクロチップ1を示す斜視図である。本実施形態に係るマイクロチップ1の構造について図1を参照して説明する。マイクロチップ1は検査装置30のホルダ47L、47Rに装着されて種々の角度に変更されるが、図1に示す3つの矢印の方向は、検査装置30にマイクロチップ1が装着されて図5に示す所定の初期回転位置にある状態における、検査装置30の上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
(マイクロチップ1の構造)
マイクロチップ1の構造について図1を参照して説明する。図1に示すように、マイクロチップ1は、板部材2と、カバー部材20と、を備える。
板部材2は、例えば複数の外壁面によって覆われ、前から見て略正方形状の透明な板である。板部材2の前後方向の寸法である厚みは、約1〜10mm程度である。板部材2の上下方向の寸法である縦幅、及び、左右方向の寸法である横幅は、それぞれ約10〜100mm程度である。板部材2は、例えば合成樹脂から形成される。板部材2は、例えば射出成形にて製造される。板部材2は、流路形成面2Aを有する。
所定の流路2Cは、流路形成面2Aに形成される。所定の流路2Cは、板部材2の厚み方向である前後方向に深さを有する。所定の流路2Cは、検査対象の液体(以下、検体と記す)及び試薬を流動可能なように凹所状に形成される。流路形成面2Aは、所定の流路2Cの延びる方向と平行な面である。本実施形態では、所定の流路2Cは、上下方向及び左右方向の2つの方向に延びている。
カバー部材20は、例えば前から見て略正方形の可撓性を有するフィルムである。カバー部材20の厚みは、約0.1〜0.5mm程度である。カバー部材20は、板部材2に形成された所定の流路2Cを覆うことが可能な程度の面積を有する。カバー部材20は、流路形成面2Aを覆うように貼られている。カバー部材20の縦幅、及び横幅は、それぞれ約10〜100mm程度である。カバー部材20は、例えば合成樹脂からなる。カバー部材20は、空気孔3H、4Hを有する。
空気孔3Hは、検体を投入するための開口である検体投入口として機能する。空気孔4Hは、試薬を投入するための開口である試薬投入口として機能する。空気孔3H、及び空気孔4Hは、円形状を有する。空気孔3H、及び空気孔4Hは、予めカバー部材20に穿孔されて設けられている。カバー部材20の空気孔3H、及び空気孔4Hは、前後方向、即ち所定の流路2Cと外部との間において流路形成面2Aに垂直な方向に貫通されて形成される。なお、外部とは、マイクロチップ1の外壁面の外の大気を指す。空気孔3H、及び空気孔4Hが後述する板部材2の検体投入部3、及び試薬投入部4の形成領域内に位置するように、カバー部材20は板部材2に貼り合わされる。なお、図1、図2、図5、図6、図7、及び図14において、カバー部材20の内部の板部材2の流路は、実線で表される。
図6は、カバー部材20と板部材2とが貼り合わされる様子を示す斜視図である。カバー部材20は、板部材2の流路形成面2Aに貼り合わされるカバー面22を有する。接着剤21は、カバー面22の全面に塗布されている。図6に示すように、カバー部材20のカバー面22と、板部材2の流路形成面2Aとが対向させた状態で、カバー部材20は、カバー部材20のカバー面22と板部材2の流路形成面2Aとが近づくように、カバー部材20と板部材2とが貼り合わされる。カバー部材20が可撓性を有するため、ユーザは、液体が漏れないよう流路形成面2Aとカバー面22との間に隙間なく、容易に流路形成面2Aにカバー部材20を貼り合わせることができる。また、カバー部材20は、薄く柔らかい素材であるため、工具等を用いて容易に空気孔を形成することができる。
マイクロチップ1は、下面2Bを備える。下面2Bは、前後方向、及び左右方向に平行、かつマイクロチップ1の下側にある面である。切欠部11は、マイクロチップ1の下面2Bの右角部に設けられる。
図2は、マイクロチップ1の平面図である。図3は、図2に示すA−A線に従うマイクロチップ1の断面図である。図2、及び図3を用いて、マイクロチップ1の内部構造について説明する。板部材2の流路形成面2Aには、所定の流路2Cが形成されている。所定の流路2Cは、検体投入部3と、試薬投入部4と、検体供給路5と、試薬供給路6と、吸光度測定槽7と、遠心分離槽12と、第1流路13と、貯留槽14と、第2流路15と、を備える。
検体投入部3は、空気孔3Hを介して、検体が投入される槽である。検体投入部3は、所定量の検体を収容可能な容積を有する。所定量の検体とは、約0.01〜1ml程度の検体である。検体は、例えば血液である。検体供給路5は、検体投入部3の下端に接続される。検体投入部3は、検体供給路5に近づくにつれ流路形成面2Aに垂直な方向である前後方向の深さが浅くなるよう設けられる。図3に示すように、検体投入部3は、底面3A、3B、側壁面3C、及びカバー面22で囲まれる領域である。底面3Aは、前から見て多角形状に形成される。底面3Aは、検体投入部3に垂直な方向である前後方向に第1の深さD1を有す。第1の深さD1は、例えば3mmである。底面3Bは、前から見て検体供給路5と接続されるよう下側に延びて設けられる。検体投入部3の底面3Bは、検体供給路3から検体供給路5へ検体が流れ込むように、両領域を連結する。底面3Bは、検体投入部3の第1の深さD1を有する所定箇所3Tから、第2の深さD2を有する所定箇所5Tへ深さが徐々に浅くなるよう設けられる。所定箇所3Tは、検体投入部3の中間に位置する箇所である。所定箇所5Tは、検体供給路5の上端に位置する箇所である。側壁面3Cは、検体供給路3の流路形成面2Aに垂直な面である。
空気孔3Hは、検体投入部3から検体投入部5に検体ELが流れる際の遠心力CFの方向において、検体投入部3の対向する壁面のうち、遠心力CFの上流側の壁面内側に沿って形成される。さらに、空気孔3Hは、回転停止時の重力方向GFにおいて、検体投入部3の対向する壁面のうち、重力方向GFの上流側の壁面内側に沿って形成される。回転停止時とは、例えば図5に示すような所定の初期回転位置にマイクロチップ1がある状態である。
検体供給路5は、検体投入部3の下端から下向きに延びる流路であり、本実施形態では、検体供給路5の延設方向は上下方向に平行である。図3に示すように、検体供給路5は、側壁面、底面5A、カバー面22とで囲まれる領域である。底面5Aは、検体供給路5の流路形成面2Aに沿う方向の面である。側壁面は、検体供給路5の流路形成面2Aに垂直な面である。底面5Aは、検体投入部5に垂直な方向である前後方向に第2の深さD2を有す。第2の深さD2は、例えば1mmである。検体供給路5の深さは検体投入部3の深さより浅く設けられているため、より微量の検体を精度よく計量することができる。検体供給路5の対向する側壁面の間の左右方向の幅は、検体投入部3内の検体が、下向きにかかる重力により遠心分離槽12に流出しない程度に、検体投入部3の左右方向の幅と比較して狭く設定される。検体供給路5の左右方向の幅は、例えば0.1mm程度である。
遠心分離槽12は、検体供給路5の下端に設けられる。遠心分離槽12は、検体供給路5の下端から右下に延びて設けられる。遠心分離槽12は、検体供給路5から供給され、貯められた検体が遠心力の付与により、比重分離する槽で、比較的比重の小さい第1成分と比較的比重の大きい第2成分とに遠心分離される槽である。第1成分は、例えば血漿である。第2成分は、例えば血球である。第1流路13は、前から見て遠心分離槽12の左上側に接続される。第2流路15は、前から見て遠心分離槽12の右上側に接続される。遠心分離槽12の右上端と左上端とは、左右方向に平行に配置されている遠心分離槽12の容積は、右上端及び左上端から下側の空間の容積を指す。遠心分離槽12の右上端から右側の容積は、遠心分離槽12の右上端から左側の容積より大きい。右側の容積が左側の容積より大きいため、ホルダ47L、47Rの角度が変更されたとしても、遠心分離槽12から第2成分が漏れ出ることはない。
第1流路13は、貯留槽14の左上端に接続される。第1流路13は、遠心分離槽12から流れ出た余剰液を貯留槽14に導入するための流路である。第1流路13は、遠心分離槽12からの余剰液が遠心力により貯留槽14に流れやすいように、遠心分離槽12の左上端から左下に延びて設けられる。
貯留槽14は、四角形状を有する。貯留槽14は、遠心分離槽12内にて遠心分離された液体を第2流路15に流す際に、余剰液が貯留槽14から遠心分離槽12に逆流しないよう、第1流路13の下端から右側に配置される。貯留槽14は、第1流路13から流入した余剰液を貯留可能な程度の容積を有する。
第2流路15は、吸光度測定槽7の左上端に接続される。第2流路15は、遠心分離槽12にて分離された第1成分を吸光度測定槽7に導入するための流路である。第2流路15の上流側部分は、検体供給路5から遠心分離槽12に流すために遠心力を付与した際に検体が吸光度測定槽7に流出しないように、右上に延びている。さらに、第2流路15の下流側部分は、遠心分離槽12から吸光度測定槽7に検体を流すために遠心力を付与した際に、検体が吸光度測定槽7に流れやすいように、右下に延びている。
試薬投入部4は、空気孔4Hを介して、試薬が投入される槽である。試薬投入部4は、所定量の試薬を収容可能な容積を有する。所定量の試薬とは、約0.01〜1ml程度の試薬である。検体投入部3、及び試薬投入部4について、マイクロチップ1を前から見た場合、左側に検体投入部3が、右側に試薬投入部4が形成される。試薬供給路6は、試薬投入部4の下端に接続される。本実施形態においては、試薬投入部4は、検体投入部3と同一の形状を有する。
試薬供給路6は、試薬投入部4の下端から下向きに延びる流路である。吸光度測定槽7は、試薬供給路6の下端に接続される。試薬供給路6の左右方向の幅は、試薬投入部4内の試薬が、下向きにかかる重力により吸光度測定槽7に流出しない程度に、試薬投入部4の左右方向の幅と比較して狭く設定される。試薬供給路6の左右方向の幅は、例えば0.1mm程度である。本実施形態においては、試薬供給路6は、検体供給路5と同一の形状を有する。
吸光度測定槽7は、液体の吸光度を測定するための槽である。吸光度測定槽7は、左右方向に長い四角形状を有する。吸光度測定槽7は、第2流路15から供給される検体、及び試薬供給路6から供給される試薬を所定量滞留可能な容積を有する。
切欠部11は、マイクロチップ1とホルダ47L、47Rとが回転加速時に慣性力が後側に付与されるような所定の姿勢で装着されるために形成される。所定の姿勢は、流路形成面2Aが重力の方向に沿い、空気孔3H、4Hが所定の流路2Cよりホルダ47Rの回転方向の下流側にある状態である。切欠部11は、後述するホルダ47Rの底面47RBの突出部48Rに嵌合するようマイクロチップ1の下面2Bに形成される。切欠部11は、図2においてマイクロチップ1の右下角部に形成される。切欠部11は、前から見て正方形に形成される。
(検査装置30の詳細な構成)
図4は、マイクロチップ1、101が装着される検査装置30の正面図である。図4を参照して、検査装置30について説明する。なお、図4に示す3つの矢印の方向は、図1に示す上下方向、左右方向、及び前後方向に相当する方向を表す。
検査装置30は、ターンテーブル33と、ホルダ47L、47Rと、制御装置200と、を含む。上記のように構成されたマイクロチップ1、101は流路形成面2Aが重力に沿う状態でホルダ47R、47Lに装着される。検査装置30は、制御装置200の制御により、ホルダ47L、47Rを所定の角度αに保持した状態で、ターンテーブル33を回転させて遠心力CFをマイクロチップ1、101に付与する。
ターンテーブル33は、重力に沿うように延びる主軸57を軸線として、回転可能に設けられる。ターンテーブル33は、円盤状に形成される。
図4に示すように、ホルダ47L、47Rは、角度αを0°から90°まで設定できるように構成される。ホルダ47L、47Rは、ターンテーブル33上に固定される。ターンテーブル33が回転されると、ターンテーブル33に固定されたホルダ47L、47Rが回転される。
ホルダ47Rは、前から見て右側に設けられる。図7に示すように、ホルダ47Rは、マイクロチップ1より1回り大きく形成され、蓋としての上面47RC、側面、及び底面47RBで囲まれた箱状の部材である。
ホルダ47Lは、前から見て左側に設けられる。ホルダ47Rと同様に、ホルダ47Lは、マイクロチップ101より1回り大きく形成され、蓋としての上面、側面、及び底面47LBで囲まれた箱状の部材である。
ホルダ47R、47Lは、マイクロチップ1の流路形成面2A、及びマイクロチップ101の流路形成面102Aが上下方向に沿う状態でマイクロチップ1、101を保持する。ターンテーブル33を回転させると、遠心力CFが、ホルダ47R、47L内のマイクロチップ1、101の流路形成面2A、102Aに平行な方向にそれぞれ付与される。
制御装置200は、後述する主軸モータ35、及び角度変更モータ51等とケーブル96を介して接続される。制御装置200は、後述するCPU207、RAM206、及びROM205等を備える。ROM205は、後述する図10に示す検査プログラム205aを記憶する。制御装置200は、検査プログラム205aに従って、ターンテーブル33の回転、及びホルダ47L、47Rの所定角度への角度変更等を制御する。
(検査装置30の回転機構)
検査装置30の回転機構について図4を用いて説明する。検査装置30の回転機構は、主軸モータ35と、回転力伝達機構31と、ターンテーブル33と、を含む。
主軸モータ35は、重力の方向に沿って延びる主軸57を中心にターンテーブル33及びターンテーブル33に固定されたホルダ47L、47Rを回転させるための駆動源である。主軸モータ35は、検査装置30のフレーム52の内部に固定されている。主軸モータ35は、回転可能な軸36を備える。
フレーム52は、直方体形状である。フレーム52は、主軸モータ35、及び角度変更モータ51等からの駆動力を伝達する駆動部品が設けられる。フレーム52の内部は、前記駆動部品を収納可能な程度の体積を有する。
回転力伝達機構31は、モータプーリ37と、主軸プーリ38と、ベルト39と、主軸57と、を備える。回転力伝達機構31は、フレーム52の内部に固定されて配置される。
モータプーリ37は、軸36に固定される。ベルト39は、モータプーリ37及び主軸プーリ38間に掛け渡されている。主軸プーリ38は、主軸57に固定される。
主軸57は、検査装置30のフレーム52に回転可能に支持され、上方に延設されてフレーム52の上板32の中央部を突き抜けて設けられる。主軸57は、ターンテーブル33と接続される。ターンテーブル33は、主軸57を中心に回転可能に設けられる。
検査装置30の回転機構の動作について説明する。主軸モータ35の軸36が回転されると、モータプーリ37、ベルト39及び主軸プーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達されてターンテーブル33が回転する。ターンテーブル33が回転すると、遠心力CFがターンテーブル33に固定されたホルダ47L、47Rに付与される。
(検査装置30の角度変更機構)
検査装置30の角度変更機構について図4を用いて説明する。検査装置30の角度変更機構は、角度変更モータ51と、第1回動力伝達機構62と、第2回動力伝達機構63と、ホルダ47L、47Rと、を含む。
角度変更モータ51は、ホルダ47L、47Rを軸46L、46Rを中心として角度変更させるための駆動源である。角度変更モータ51は、フレーム52に固定される。角度変更モータ51は、回転可能な軸58を備える。
第1回動力伝達機構62は、カム板59と、突起70と、T型プレート48と、ガイドレール56と、軸受41と、第2軸40と、を含む。第1回動力伝達機構62は、フレーム52の内部に固定されて配置される。
カム板59は、前から見て円盤状である。カム板59は、軸58に固定される。カム板59は、前方に突出した突起70を備える。突起70は、前から見て円形状である。
ガイドレール56は、上下方向に延びてフレーム52に固定される。T型プレート48は、ガイドレール56に沿って、上下方向に移動可能に形成される。T型プレート48は、溝部80を備える。溝部80は、左右方向に延びる溝であり、突起70が嵌合するように形成される。図4に示す状態が、T型プレート48が1番下まで下がった状態である。図5に示す状態が、T型プレート48が1番上まで上がった状態である。
軸受41は、T型プレート48に接続される。軸受41は、第2軸40の下端部に備えられる。軸受41は、第2軸40を回動可能に保持する。
主軸57の内部は中空になっている。第2軸40は、主軸57の内部に、内軸として設けられる。第2軸40は、ラックギア43に接続される。
第2回動力伝達機構63は、ラックギア43と、ガイド部材42と、上部プレート61と、ピニオンギア44と、L型プレート60と、ギア45と、軸46L、46Rと、を含む。第2回動力伝達機構63は、フレーム52の外部に配置される。
ラックギア43は、上下方向に延びる板状の部材である。ギアが、ラックギア43の左右の側端部に各々刻まれている。ラックギア43の両側端部のギアは、1対のピニオンギア44に噛合している。
ガイド部材42は、ラックギア43を摺動可能に保持する。
1対のL型プレート60は、1対のギア45を備える。1対のギア45は、1対の軸46L、46Rを備える。
1対の軸46L、46Rは前後方向に延びる。マイクロチップ1、101がホルダ47R、47Lに収納された場合に、1対の軸46L、46Rの延設方向と、流路形成面2A、102Aと、は直交する。一対のギア45は、両ピニオンギア44にそれぞれ噛合している。一対のギア45は、L型プレート60に1対の軸46L、46Rを中心として角度変更可能に設けられる。
ホルダ47L,47Rは、両ギア45の軸46L、46Rにそれぞれ固定される。
検査装置30の角度変更機構の動作について説明する。角度変更モータ51の軸58が回転すると、カム板59が回転する。カム板59が回転すると、カム板59に備えられた突起70が軸58を中心に回転する。突起70が軸58を中心に回転すると、突起70が溝部80内を左右方向に摺動しながら、上下方向に移動する。突起70が上下方向に移動すると、T型プレート48がガイドレール56に沿って上下方向に移動する。T型プレート48が上下方向に移動すると、軸受41に支持された第2軸40が上下動する。第2軸40が上下動すると、ラックギア43が上下動する。ラックギア43が上下動すると、両ピニオンギア44が回転する。両ピニオンギア44が回転すると、両ギア45が回転する。両ギア45が回転すると、両ギア45に固定されたホルダ47L,47Rが、両ギア45の軸46L、46Rを中心にして角度変更する。
ホルダ47L、47Rの角度について図4を用いて具体的に説明する。ホルダ47Lは、左側のギア45の軸46Lを中心として、角度α0=0°からα1=90°まで回転する。軸46Lは、ホルダ47Lに保持されたマイクロチップ101の流路形成面102Aに直交する。ホルダ47Lの角度α=0°からα=90°への角度変更方向を第1の回動方向LDとする。同様に、ホルダ47Rは、右側のギア45の軸46Rを中心として、角度α=0°からα=90°まで回転する。軸46Rは、ホルダ47Rに保持されたマイクロチップ1の流路形成面2Aに直交する。ホルダ47Rの角度α0=0°からα1=90°への角度変更方向を第2の回動方向RDとする。
さらに、ホルダ47L、47Rは、同一の角度で回転する。角度α0=0°の状態では、図4に示すように、ホルダ47Lの底面47LBが検査装置30の左側に向けられる。図5は、本実施形態に係るマイクロチップ1、101がホルダ47R、47Lに装着される様子を示す検査装置30の正面図である。同様に、角度α0=0°の状態では、ホルダ47Rの底面47RBがホルダ47Lの底面47LBとは反対側である検査装置30の右側に向けられる。角度α1=90°の状態では、図5に示すように、ホルダ47Lの底面47LB及びホルダ47Rの底面47RBが検査装置30の下側に向けられる。
図6は、カバー部材20と板部材2とが貼り合わされる様子を示す斜視図である。カバー部材20は、板部材2の流路形成面2Aに貼り合わされるカバー面22を有する。カバー面22は、全面に接着剤21が塗布されている。図6に示すように、カバー部材20のカバー面22と、板部材2の流路形成面2Aとが対向した状態で、カバー部材20は、カバー部材20のカバー面22と板部材2の流路形成面2Aとが近づくように、カバー部材20と板部材2とが貼り合わされる。
(マイクロチップ1、101のホルダ47R、47Lへの装着方法)
図5は、マイクロチップ1、101のホルダ47R、47Lへの装着時の様子を示す正面図である。図7は、マイクロチップ1をホルダ47Rに装着する様子を示す斜視図である。図5、及び図7を用いて、マイクロチップ1、101のホルダ47R、47Lへの装着方法について説明する。なお、図5、及び図7のマイクロチップ1,101においては、検体及び試薬が予め投入され、カバー部材20が予め貼られている。
図7に示すように、マイクロチップ1の挿入状態は、流路形成面2Aがホルダ47Rの前側に向き、マイクロチップ1の下面2Bとホルダ47Rの底面47RBとを対向させた状態とする。突出部48Rは、前後方向に渡って底面47RBから上向きに延びて設けられる。そして、マイクロチップ1は、マイクロチップ1の下面2Bとホルダ47Rの底面47RBとが近づくように、下向きにホルダ47Rに挿入され、下面2Bの切欠部11と底面47RBの突出部48Rとが嵌合する。その後、ホルダ47Rの蓋47RCが閉じられる。このようにして、マイクロチップ1が、ホルダ47Rへ装着される。
同様に、マイクロチップ101の挿入状態は、マイクロチップ101の流路形成面102Aが図5のホルダ47Lの後側に向き、マイクロチップ101の下側と図5のホルダ47Lの底面47LBとを対向させた状態とする。そして、マイクロチップ101は、マイクロチップ101の下側と図5のホルダ47Lの底面47LBとが近づくように、図5の下向きにホルダ47Lに挿入され、ホルダ47Lの蓋が閉じられる。このようにして、マイクロチップ101が、ホルダ47Lへ装着される。
図8は、検査装置30の上面図である。図9は、回転方向93への回転時のマイクロチップ1を示し、図3と同様にA−A線に従うマイクロチップ1の断面図である。図8を用いて、検査装置30の光源90及び受光部91について説明する。図8に示すように、検査装置30は、光源90と、受光部91と、を備える。
光源90は、光路92R上に測定光92を出射する。測定光92は、例えば波長650nm程度の赤色光である。光源90は、例えばレーザダイオードである。
受光部91は、光源90が出射する測定光92の光路92R上に設けられる。具体的には、光源90及び受光部91は、測定光92の入射方向がマイクロチップ1の流路形成面2Aと垂直な方向である前後方向に配置される。受光部91は、測定光92を受光する。受光部91は、例えばフォトダイオードである。
図8、及び図9に示すように、ターンテーブル33は、回転方向93へ回転する。回転方向93は、マイクロチップ1の空気孔3H、4Hが所定の流路2Cより回転方向93の下流側になるような向きである。回転により、遠心力CFが、マイクロチップ1,101に付与される。
図9に示すように、マイクロチップ1は、切欠部11と突出部48Rとの嵌合により、所定の装着姿勢に規制される。所定の装着姿勢は、流路形成面2Aが重力GFの方向に沿い、空気孔3H、4Hが所定の流路2Cよりホルダ47Rの回転方向93の下流側にあるよう、マイクロチップ1が配置される姿勢である。
(制御装置200の電気的構成)
図10は、制御装置200の電気的構成を示すブロック図である。図10を参照して、制御装置200の電気的構成について説明する。制御装置200は、構成部分として、光源制御部201と、回転制御部203と、角度設定部204と、ROM205と、RAM206と、CPU207と、HDD208と、表示部209と、操作部210と、システムバス211と、を備える。システムバス211は、制御装置200の各構成部分に接続される。CPU207は、ROM205及びRAM206と共に、コンピュータを構成する。制御装置200は、例えばパーソナルコンピュータである。制御装置200は、ケーブル96を介して検査装置30と接続される。ケーブル96は、例えばUSBケーブルである。
光源制御部201は、光源90に接続される。光源制御部201は、CPU207からの指令により、測定光92を受光部91へ向けて出射するよう光出射信号を光源90へ出力する。
回転制御部203は、主軸モータ35に接続される。回転制御部203は、ROM205に記憶される検査プログラム205aに従って動作するCPU207からの指令により、ターンテーブル33が所定の角速度で回転方向93へ回転されるように角速度制御信号を主軸モータ35に出力する。
角度設定部204は、角度変更モータ51に接続される。角度設定部204は、ROM205に記憶される検査プログラム205aに従って動作するCPU207からの指令により、ホルダ47L、47Rが所定の角度αに回転されるように角度制御信号を角度変更モータ51に出力する。
ROM205は、後述するフローチャートに従った処理を実現するための検査プログラム205aを記憶する。検査プログラム205aは、CPU207によりRAM206を用いて実行される。
RAM206は、CPU207がROM205に記憶されるプログラムを実行する際に参照する各種変数などを記憶しておく一時記憶領域として機能する。
HDD208は、各種データ及びプログラムを記憶するハードディスク装置である。各種データは、例えば検査対象の物質の濃度等である。
表示部209は、ROM205に記憶された検査プログラム205aに従って動作するCPU207からの指令により、HDD208に記憶された各種データを参照して検査結果である対象物質の濃度を表示する。表示部209は、例えば液晶ディスプレイである。
操作部210は、ユーザの操作に応じた操作信号を制御装置200に供給する装置である。操作部210は、例えばキーボードである。ユーザの操作とは、例えば検査プログラム205aの実行を開始させる操作である。
(検査プログラム205aに従う処理)
図11は、検査装置30の検査プログラム205aに従う処理手順を示すフローチャートである。図11に示すフローチャートを参照して、本実施形態の検査装置30のCPU207が実行する検査プログラム205aについて説明する。検査プログラム205aは、サブルーチンとして、分離・液体混合プログラムS20と、測定プログラムS30とを含む。本実施形態においては、検査とは、分離・液体混合工程、又は測定工程の上位概念であると定義する。
検査装置30のCPU207は、操作部210が操作されると、検査装置30のROM205に記憶された検査プログラム205aを読み出してその実行を開始する(S10)。
CPU207は、後述する分離・液体混合プログラムS20を実行する。具体的には、ホルダ47L、47Rが所定の角度αに保持され、ターンテーブル33が所定の角速度で回転されて、ホルダ47L、47Rに遠心力CFが付与される(S20)。その結果、検体と試薬とが混合された混合液体が、マイクロチップ1の測定領域10に保持される。
CPU207は、後述する測定プログラムS30を実行する。具体的には、複数回にわたって、ホルダ47L、47Rが交互に光路92R上へ誘導され、測定光92が光源90から出射され、受光部91によって透過光が受光される(S30)。透過光から、検査対象の液体の濃度が算出される。
CPU207は、マイクロチップ1、101に注入された検体の対象物質の濃度を、制御装置200の表示部209に表示させる(S40)。
CPU207は、検査プログラム205aを終了する(S50)。
(分離・液体混合プログラムS20の詳細なフローチャート)
図12は、ホルダ47L、47Rの角度αを変更してマイクロチップ1、101に異なる方向の遠心力CFを付与する分離・液体混合プログラムS20に従う処理手順を示すフローチャートである。図14は、分離・液体混合プログラムS20に従う処理時のマイクロチップ1の様子を示す正面図である。分離・液体混合プログラムS20について、図12、及び図14を用いて説明する。
図14に示す3つの矢印の方向は、検査装置30にマイクロチップ1,101が装着されて図5に示す所定の初期回転位置にある状態における、上下方向、左右方向、及び前後方向を表す。
マイクロチップ1、101がホルダ47R、47Lに装着され、操作部210が操作されると、分離・液体混合プログラムS20の実行を開始する(S201)。
S202において、検査装置30のホルダ47Rは角度α1に設定される。角度α1の状態のマイクロチップ1及び検査装置30について図14(a)を用いて説明する。図14(a)は、遠心力CFを付与する前に、検査装置30が所定の初期回転位置(α1=90°)にある状態におけるマイクロチップ1の平面図である。下向きにかかる重力GFにより検体EL、及び試薬M1が流れない程度に検体供給路5及び試薬供給路6のそれぞれの左右方向の幅が狭く設定されているために、図14(a)に示すように、遠心力CFを付与する前の状態では、検体投入部3内の検体EL、及び試薬投入部4内の試薬M1は、検体供給路5及び試薬供給路6を流れない(S202)。
角度α1から角度α0へ変更した状態のマイクロチップ1及び検査装置30について説明する。図4に示す検査装置30の状態となるよう(α0=0°)、CPU207は、ホルダ47Rが角度α0に回転されるように、角度設定部204からステッピングモータ35へ角度制御信号を出力させる。角度変更モータ51は、角度制御信号に従い、ホルダ47Rが角度α0に回転するよう駆動する(S203)。
図14(b)は、角度αがα0=0°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。この処理S203により、図14(b)に示すように、検体投入部3から投入された検体ELは、重力GFにより、検体投入部3内を移動する。同様に、図14(b)に示すように、試薬投入部4から投入された試薬M1は、重力GFにより、検体投入部3内を移動する。
図14(a)(b)(c)に示すように、空気孔3H、4Hは、検体EL及び試薬M1が漏れない位置に配置されることが望ましい。具体的には、回転停止時に、検体投入部3、及び試薬投入部4の重力方向GFにおいて検体EL及び試薬M1の液面より上部が望ましい。さらに、回転時に、検体投入部3、及び試薬投入部4の遠心力方向CFにおいて検体EL及び試薬M1の液面より上部が望ましい。
遠心力CFの付与が開始された状態のマイクロチップ1及び検査装置30について説明する。CPU207は、マイクロチップ1が装着されたホルダ47L、47Rの角速度が所定の角速度ωに達するまで角加速度β1〔rad/s2〕で加速するように、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、ターンテーブル33が回転するよう駆動する(S204)。
図14(c)は、遠心力CFの向きに対する角度αがα0=0°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。この処理S204により、図14(c)に示すように、遠心力CFにより、検体ELが検体供給路5から遠心分離槽12に流れる。流れる検体ELが遠心分離槽12の容積を超えると、検体ELの余剰液が第1流路13を経由して、貯留槽14に流れ溜まる。遠心分離槽12内の検体ELは、遠心力CFが付与され続けると、第1成分EL1と、第2成分EL2と、に分離される。また、試薬M1が、試薬供給路6から吸光度測定槽7に流れる。
遠心力CFを付与した状態で、角度α0から角度α1へ変更した状態のマイクロチップ1及び検査装置30について説明する。CPU207は、ホルダ47Rが角度α1=90°に回転されるように、角度設定部204からステッピングモータ35へ角度制御信号を出力させる。角度変更モータ51は、角度制御信号に従い、ホルダ47Rが角度α1=90°に回転するよう駆動する(S205)。
図14(d)は、遠心力CFの向きに対する角度αがα1=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。この処理S205により、図14(d)に示すように、第1成分EL1は、遠心分離槽12から第2流路15を経由して吸光度測定槽7へ流れ、吸光度測定槽7に溜まった試薬M1と混合される。検体ELの第1成分EL1と試薬M1との混合液体B1は、遠心力CFにより、吸光度測定槽7において遠心力CFの向かう方向に引き寄せられる。遠心分離槽12が第2流路15側(マイクロチップ1を前から見て右下側)に延びているため、比重の重い第2成分EL2は、遠心分離槽12に滞留する。貯留槽14は第1流路13の下端から右側に第1流路13から流れた余剰液を貯留可能な程度の容積を有するため、貯留槽14内の余剰液は、遠心分離槽12に逆流することはない。
遠心力CFの付与が終了した状態のマイクロチップ1及び検査装置30について説明する。CPU207は、マイクロチップ1が装着されたホルダ47L47Rの角速度が所定の角速度ωから角加速度β2〔rad/s2〕で減速し、ターンテーブル33の回転が停止するように、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。角加速度β1は、角加速度β2より大きい。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、ターンテーブル33の回転が減速して停止するよう駆動する(S206)。なお、本実施形態における角加速度β1、β2は、角加速度の絶対値を指す。
図14(e)は、ターンテーブル33の回転が停止し、角度αがα1=90°の状態にあるマイクロチップ1の平面図である。この処理S207により、混合液体B1は、重力GFにより、吸光度測定槽7の下側に留まる。回転が停止してまもなく、図14(e)に示すように、すべての混合液体B1は、吸光度測定槽7の下側に溜まる。
CPU207は、分離・液体混合プログラムS20の実行を終了する(S207)。
(測定プログラムS30の詳細なフローチャート)
図13は、複数回にわたって、ホルダ47R、47Lが交互に光路92R上へ誘導され、光源90から測定光92が出射され、受光部91によって透過光が受光される測定プログラムS30に従う処理手順を示すフローチャートである。測定プログラムS30について、図13を用いて説明する。
CPU207は、前述した分離・液体混合プログラムS20が終了すると、測定プログラムS30を開始する(S301)。
CPU207は、代数Nに初期値である1を代入する。代数Nは、マイクロチップ1、101の透過光を何回測定したかを示す値である(S302)。代数Nは、制御装置200のRAM206に記憶される。
CPU207は、代数Nが透過光の測定必要回数Nmax以下か否かを判断する(S303)。測定必要回数Nmaxは、予め制御装置200のROM205に記憶されている。測定必要回数Nmaxは、例えば1〜20程度の数である。代数Nが透過光の測定必要回数Nmax以下である場合(Yes)、S304へ進む。代数Nが透過光の測定必要回数Nmaxより大きい場合(No)、S309へ進む。
CPU207は、S304に従って、ホルダ47R内のマイクロチップ1の吸光度測定槽7が検査装置30の光源90から出射される測定光92の光路92R上に位置するように、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、回転方向93にターンテーブル33が回転するよう駆動する(S304)。
CPU207は、光路92R上に位置するマイクロチップ1の吸光度測定槽7の混合液体B1に光源90から測定光92が出射されるように、光源制御部201から光源90へ光出射信号を出力させる。光源90は、光出射信号に従い、測定光92を出射する。受光部91は、吸光度測定槽7を通過した透過光を受光する。制御装置200のRAM206は、受光部91にて受光された透過光の強度を記憶する(S305)。
S304と同様に、CPU207は、ホルダ47L内のマイクロチップ101の吸光度測定槽が検査装置30の光源90から出射される測定光92の光路92R上に位置するように、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、回転方向93に180度の角度だけターンテーブル33が回転するよう駆動する(S306)。
マイクロチップ1と同様に、CPU207は、光路92R上に位置するマイクロチップ101の吸光度測定槽内の混合液体に光源90から測定光92が出射されるように、光源制御部201から光源90へ光出射信号を出力させる。光源90は、光出射信号に従い、測定光92を出射する。受光部91は、吸光度測定槽を通過した透過光を受光する。制御装置200のRAM206は、受光部91にて受光された透過光の強度を記憶する(S307)。
CPU207は、代数Nに1を加える(S308)。S308後、処理はS303へ戻る。
CPU207は、制御装置200のRAM206に記憶された透過光の値から吸光度を算出し、既知の濃度をもつ複数の検査液の吸光度を測定して、対象物質の濃度と吸光度との検量線を用いて、対象物質の濃度を算出する(S309)。
CPU207は、測定プログラムS30の実行を終了する(S310)。
(S204の詳細なフローチャート)
図15は、S204に従う処理時のマイクロチップ1を示し、図3と同様にA―A線に従うマイクロチップ1の断面図である。S204について、図15を用いて説明する。
CPU207は、前述したS203が終了すると、S204を開始する。図14(b)は、S204の処理に従ってホルダ47Rを回転させる直前の状態を示す図である。図14(b)に示すように、重力GFの方向により、検体ELは検体投入部3の下方に滞留しているため、検体ELはA―A線上に存在しない。
CPU207は、回転停止時から予め定められた所定の角速度ωになるまで角加速度β1〔rad/s2〕で回転方向93へターンテーブル33の回転が加速されるよう、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、所定の角速度ωになるまで角加速度β1で回転方向93へターンテーブル33の回転が加速するよう駆動する。図15(a)は、加速中のマイクロチップ1の状態を示す断面図である。図15(a)に示すように、検体ELは、回転方向93の上流側への慣性力94により、検体投入部3の底面3A、3B側に引き寄せられる。また、検体供給路5の延設方向への遠心力CFにより、検体供給路5側に引き寄せられる。慣性力94及び遠心力CFにより、検体ELは、検体投入部3の底面3A、3Bを伝いながら、検体供給路5へ導かれる。このため、回転方向93の下流側にあるカバー部材20の空気孔3Hから検体ELが漏れ出ることを防止することができる。
CPU207は、ターンテーブル33の回転が所定の角速度ω〔rad/s〕の状態で維持されるよう、回転制御部203から主軸モータ35へ角速度制御信号を出力させる。主軸モータ35は、角速度制御信号に従い、所定の角速度ωで回転方向93へターンテーブル33の回転が維持されるように駆動する。図15(b)は、角速度が所定の角速度ωに到達した直後のマイクロチップ1の状態を示す断面図である。図15(b)に示すように、遠心力CFにより、検体ELが、さらに検体供給路5側に引き寄せられる。
CPU207は、S204の実行を終了する。図15(c)は、S204実行終了直後、即ち図14(c)の状態を示す断面図である。図15(c)に示すように、S204の実行を終了してまもなく、すべての検体ELは、検体投入部3及び検体供給路5の下流側に送液される。
このように、角速度を加速させた際に、回転方向93の下流側にあるカバー部材20の空気孔3Hから検体ELが漏れ出ることを防止することができる。検体投入部3及び検体供給路5と同様の形状を有する試薬投入部4及び試薬供給路6も、同様の作用が起こる。即ち、試薬M1が、加速による慣性力により試薬投入部4の底面を伝い、空気孔4Hから試薬ELが漏れ出ることを防止することができる。
(マイクロチップの流路及び槽に関する変形例)
なお、本実施形態では、検体は、血液として説明したが、これに限ることはない。具体的には、検体は、血清、血漿であってもよく、所望の検査に応じて利用者によって適宜選択可能である。
本実施形態においては、吸光度測定槽7は、左右方向に長い四角形状であったが、これに限らず、多角形状、円等の曲線形状であってもよい。
本実施形態においては、空気孔3H、4Hは、円形状であったが、慣性力94により液体が漏れ出ない程度の大きさであれば多角形状等であってもよい。
本実施形態においては、空気孔は、検体投入部3及び試薬投入部4の形成領域内に形成されたが、空気孔は、例えばカバー部材20の第1流路13、吸光度測定槽7の形成領域内に形成されていてもよい。空気孔が第1流路13の形成領域内に形成される場合、第1流路13の変曲点近傍に形成されていることが望ましい。変曲点とは、遠心分離槽12から貯留槽14に検体ELが流れる際の遠心力CFの方向において、対向する壁面のうち、遠心力CFの上流側の壁面の変曲点を指す。さらに、変曲点とは、検体ELが貯留槽14に流出した後に回転停止時の重力方向GFにおいて、対向する壁面のうち、重力方向GFの上流側の壁面の変曲点を指す。回転停止時とは、例えば吸光度測定時である。変曲点近傍は空気が滞留しやすいために、空気孔から効率的に空気を大気中に放出することができる。空気孔が第1流路13の変曲点近傍に形成されていることにより、検体ELが遠心力CFの付与により貯留槽14に送液される際に、空気孔から漏れにくくなる。また、空気孔が吸光度測定槽7の形成領域内に形成される場合、空気孔は、吸光度測定槽7の遠心力CFの付与される方向と反対側、具体的には図2において、吸光度測定槽7の第2流路15との接続部分より左側に形成されることが望ましい。さらに、空気孔が吸光度測定時のマイクロチップ1において重力GFの方向と反対側、具体的には吸光度測定槽の上側に形成されることが望ましい。空気孔が吸光度測定槽7の左上側に形成されていることにより、検体ELが遠心力CFの付与により吸光度測定槽7に送液される際に、空気孔から漏れにくくなる。
本実施形態においては、空気孔3H、4Hは、マイクロチップ1の流路形成面2Aに垂直な方向に貫通されて形成されていた。しかしながら、これに限らず、加速時の慣性力と反対側、即ち空気孔が所定の流路より回転方向の下流側にあるならば、空気孔の貫通する方向は流路形成面と交差する関係にあってもよい。
本実施形態においては、検体投入部3の底面3A及び試薬投入部4の底面は、多角形状に形成されていたが、円形等の他の形状であっても構わない。
本実施形態においては、また、底面3Bは、検体供給路5、即ち下方に近づくにつれ直線的に前後方向に浅くなっていた。しかしながら、検体投入部3の深さは、一定であっても構わない。
本実施形態においては、切欠部11はマイクロチップ1の底面2Bの右角部に設けられたが、マイクロチップ1の向きを所定の姿勢に規制可能な姿勢規制手段であるならば、他の形態であってもよい。例えば、マイクロチップの外壁面に突出部を有し、ホルダ側の内壁面に切欠部を有していてもよい。また、切欠部は、2つ以上あってもよい。また、切欠部は、マイクロチップの流路形成面2Aと垂直な側面のうち一つの側面の下端から、上向きに延設されて設けられていてもよい。
本実施形態に係るマイクロチップ1においては、試薬供給路6と通過領域8とが、直接接続されたが、試薬供給路6と通過領域8との間に、計量部及び余剰槽が設けられていてもよい。計量部は、試薬を所定量計量するための槽である。計量部は、試薬を所定量計量可能な容積を有する。余剰槽は、計量部にて計り取られた余剰液を貯めるための槽である。余剰槽は、計量部で所定量計量して流れ出た所定量の余剰液を溜めることが可能な容積を有する。試薬供給路6と通過領域8との間に、計量部及び余剰槽が設けられていることにより、検体と混合される試薬の量を計量することができる。その結果、予めマイクロチップ1、101に注入する試薬を計量しなくても、所定の角度にホルダを回転させるだけで、検体及び試薬を適切な量で混合することができる。
本実施形態に係るマイクロチップ1においては、前から見て、左側に検体投入部3、右側に試薬投入部4が設けられたが、右側に検体投入部3、左側に試薬投入部4、即ち流路及び槽を本実施形態と反対の位置に配置しても良い。
本実施形態においては、マイクロチップ1、101共に、検体ELの検体投入部は1つあったが、それぞれのマイクロチップ1、101内に検体投入部は、2つ以上あっても構わない。本実施形態においては、マイクロチップ101の検体ELは、1つの試薬M1と混合されたが、複数の試薬と混合させてもよい。
(マイクロチップの流路及び槽以外の変形例)
本実施形態においては、板部材2及びカバー部材20の材質は特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料を用いることができる。また、シリコン、ガラス、石英等の無機材料を用いても良い。
本実施形態においては、板部材2は、略正方形状の透明な板であったが、流路形成面に流路が形成できる程度の面積を有していれば、八角形等の多角形、又は円形、楕円形等の面取りされている形であってもよい。ホルダ47L、47Rは、前記種々の板部材の形状に合わせて収納可能に形成されていればよい。板部材2は、測定光が透過可能な部材であれば、透明でなくてもよい。
本実施形態においては、空気孔3H、及び空気孔4Hは、予めカバー部材20に穿孔されて設けられている。しかしながら、これに限らず、ユーザが、液体をマイクロチップに投入する際に、針等を用いて穿孔してもよい。また、ユーザは、カバー部材20を流路形成面2Aに貼り合わせる前に、液体をマイクロチップに投入してもよい。
本実施形態においては、カバー部材20は、可撓性のフィルムだけではなく、フィルムよりも剛性の高いシート状の物質であっても構わない。また、板部材2と同程度以上の硬度を有し、同質の材料からなる基板であってもよい。基板は、例えば特開2006−234600号公報に記載されて公知である。また、本実施形態においては、カバー部材20のカバー面22に塗布された接着剤21により、板部材2の流路形成面2Aと貼り合わされた。しかしながら、これに限らず、カバー部材20が基板である場合、例えばカバー部材に流路形成面に係合可能な係合部を設けることで、カバー部材20と板部材2とを固着してもよい。
本実施形態においては、板部材2は射出成形にて製造したが、真空成形等の他の各種樹脂成形法、または機械切削等により製造してもよい。
(検査装置の変形例)
本実施形態においては、分離・液体混合プログラムS20終了後に、ホルダ47Rを光路92R上へ回転方向93に誘導する工程S304を行ったが、主軸モータ35とは異なる、回転停止位置を制御可能なモータを用いて分離・液体混合プログラムS20終了時に、ホルダ47Rが光路92R上で止まるよう制御してもよい。
本実施形態において、光源90及び受光部91と角度変更機構及び回転機構とは、一体的に装置に組み込まれていたが、光源90及び受光部91と角度変更機構及び回転機構とは、別体に設けられていてもよい。
本実施形態において、光源90はレーザダイオードであったが、LED等指向性のある光を出射可能な光源であればよい。
本実施形態においては、制御装置200は、検査装置30の駆動機構とケーブル96を介して接続される別体の構成として設けられたが、駆動機構の内部に組み込まれて一体に設けられていてもよい。
本実施形態においては、ホルダ47は、ホルダ47Lと、ホルダ47Rと、を備えていたが、ホルダ47は1つ、又は3つ以上あっても構わない。
本実施形態において、ホルダ47は、箱形状であった。しかしながら、箱形状に限らず、ホルダは。例えば万力のように、マイクロチップ1の前面及び後面を把持する形状であってもよい。
本実施形態の傾斜角度や遠心力の方向は単なる例示であり、測定する条件に合わせて予め決定すれば良い。例えば、本実施形態では、マイクロチップ1の角度αが、0°から90°あったが、角度αの範囲の制約は無く、0°から180°や0°から360°回転できる構成としても良い。
本実施形態においては、角加速度β1は、角加速度β2より大きい。しかしながら、空気孔3H、4Hが所定の流路2Cより回転方向93の下流側にあり、検体及び試薬が、検体及び試薬を送液可能な程度の遠心力を付与できるのであれば、角加速度β1は角加速度β2より小さくてもよい。
本実施形態においては、光源から出射される測定光の入射方向と流路形成面とが垂直になるよう配置されたが、流路形成面は入射方向と垂直になる配置に限定されることはない。例えば、光源が測定領域内の混合液体に測定光を入射し、受光部が透過光を受光することが可能であるならば、流路形成面と入射方向とのなす角度が鋭角又は鈍角であってもよい。
本実施形態においては、ターンテーブル33は、円盤状であったが、上下方向を軸として回転可能に設けられていれば多角形状等種々の形状であっても構わない。
本実施形態においては、1対の軸46L、46Rの延長方向と、流路形成面2A、102Aと、は直交していたが、流路形成面は回転軸と直交する配置に限定されることはない。例えば、1対の軸46L、46Rを中心として所定の角度に変更した際に遠心力CFの向きを所望の方向に切り替えられるのであれば、流路形成面2A、102Aと1対の軸46L、46Rの延長方向とのなす角度が鋭角又は鈍角であってもよい。
本実施形態においては、ホルダ47L、47R内のマイクロチップ1、101の流路形成面2A、102Aに平行な方向にそれぞれ遠心力CFが付与されたが、流路形成面は遠心力CFの方向と平行な配置に限定されることはない。例えば、遠心力CFを付与することで各種流路及び槽内で所望の方向にマイクロチップ内の液体を流動させることができるのであれば、流路形成面は遠心力CFの方向と交差する関係に配置されてもよい。
また、上述した説明では、実施形態および変形例について別々の例として説明したが、これに限ることはない。即ち、それぞれを組み合わせた構成として、実施形態および一部の変形例を適宜組み合わせて利用してもよい。
最後に、上述した実施形態は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
(発明と実施形態との対応)
本実施形態における所定の流路2Cは、本発明における流路の一例である。本実施形態における流路形成面2Aは、本発明における平行な面、又は流路形成面の一例である。本実施形態における空気孔3H、4Hは、本発明における空気孔の一例である。本実施形態におけるマイクロチップ1、101は、本発明における検査対象受体の一例である。本実施形態における検体EL、試薬M1、又は混合液体B1は、本発明における検査対象の液体の一例である。本実施形態における主軸57は、本発明における主軸の一例である。本実施形態における前後方向は、本発明における平行な面に交差する方向の一例である。本実施形態におけるホルダ47L、47Rは、本発明におけるホルダの一例である。本実施形態における主軸モータ35、回転制御部203、角度変更モータ51、及び角度設定部204は、順に本発明における回転駆動源、回転制御部、角度変更源、及び角度設定部の一例である。本実施形態における角度αは、本発明における角度の一例である。本実施形態における軸46L、46Rの軸線は、本発明における軸線の一例である。
本実施形態における検体投入部3は、本発明における検体投入部の一例である。
本実施形態における吸光度測定槽7は、本発明における吸光度測定槽の一例である。本実施形態における回転方向93は、本発明における回転方向の一例である。本実施形態における光路92Rは、本発明における測定光が入射する位置の一例である。本実施形態における測定光92、光源90、受光部91及び検査装置30は、順に本発明における測定光、光源、受光部、及び検査システムの一例である。本実施形態における角加速度β1、所定の角速度ω、及び角加速度β2は、順に本発明における第1角加速度、所定の角速度、及び第2角加速度の一例である。
本実施形態における板部材2、カバー部材20、及び接着剤21は、本発明における基材、カバー部材、及び接着剤の一例である。
本実施形態における切欠部11は、本発明における切欠部、及び姿勢規制手段の一例である。
本実施形態におけるS204は、本発明における回転制御ステップの一例である。本実施形態におけるS205は、本発明における角度制御ステップの一例である。