以下に、本発明にかかるタイヤ作用力検出装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
(第1実施形態)
図1から図6を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、ハブと、ハブと接続されるホイールと、ホイールに装着されたタイヤとを備えた車両において、タイヤに作用するタイヤ作用力を検出するタイヤ作用力検出装置に関する。図1は、本発明にかかるタイヤ作用力検出装置の第1実施形態の車軸方向の断面を示す図、図2は、本実施形態にかかるタイヤ作用力検出装置の構成を示す図1のA−A断面図、図3は、センサプレートの構成の詳細を示す図2のY視図である。ただし、図3において、後述する図2の回転側回路部30は省略されている。
図1において、符号3は、ハブを示す。ハブ3は、軸部3a、フランジ部3b、および円筒部3cを有している。ハブ3の軸部3aは、円柱形状をなしており、図示しない軸受を介して図示しない車両の車体により回転可能に支持されている。ハブ3は、車軸Xと同軸上に支持されており、車軸X周りに自在に回転することができる。フランジ部3bは、軸部3aと接続されており、車軸Xを中心軸線とする円盤形状をなしている。円筒部3cは、フランジ部3bにおける車軸方向のホイール側(車体側と反対側)に形成されており、ホイール側に向けて突出している。円筒部3cは、車軸Xを中心軸線とする円筒形状に形成されている。
なお、車両には複数の車軸があるが、以下の説明において、車軸方向とは、特に記載していない限り、図1に示す車軸Xの車軸方向をいう。同様に、径方向とは、特に記載していない限り、車軸Xと直交する方向をいう。
ホイール1は、円筒形状をなしており、外周部には図示しないタイヤが装着されている。ハブ3とホイール1との間には、ブレーキロータ2およびセンサプレート4が配置されている。つまり、ハブ3とホイール1とはブレーキロータ2およびセンサプレート4を挟んで車軸方向に対向している。
ブレーキロータ2は、円環形状をなしており、ハブ3とセンサプレート4との間に配置されている。ブレーキロータ2は、ハブ3と一体回転するようにハブ3に対して固定されるものであり、後述するブレーキキャリパ17と共に車両を制動するディスクブレーキを構成している。
センサプレート4は、ホイール1に締結されるホイール側プレート(第二締結部)4bと、ハブ3に締結されるハブ側プレート(第一締結部)4cと、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとを車軸方向に接続するセンシング部(接続部)4aと、回転側回路部30を有している。センサプレート4は、車両の走行に耐えうる強度を有している。
図2に示すように、ホイール側プレート4bおよびハブ側プレート4cは、それぞれ扇形をなしている。ホイール側プレート4bは、周方向に間隔を空けて複数配置されている。同様に、ハブ側プレート4cは、周方向に間隔を空けて複数配置されている。また、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとは周方向に交互に配置されている。言い換えると、1つのホイール側プレート4bの配置領域は、ハブ側プレート4cの配置領域によって周方向に挟まれており、1つのハブ側プレート4cの配置領域は、ホイール側プレート4bの配置領域によって周方向に挟まれている。センシング部4aは、このように周方向の隣接する領域に配置されたホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとを車軸方向に接続している。
図3に示すように、センシング部4aは、梁部4m、ホイール側プレート4bとの接合部4n、およびハブ側プレート4cとの接合部4pを有している。梁部4mは、板状に形成されており、車軸方向と平行に伸びている。梁部4mにおける車軸Xと直交する方向の断面形状は矩形となっている。梁部4mの断面の長辺は、径方向と平行であり、短辺が径方向と直交している。言い換えると、梁部4mは、厚み方向が径方向と直交する板状の部材である。接合部4nは、梁部4mの車軸方向の一端に、接合部4pは車軸方向の他端に設けられている。センシング部4aは、接合部4nがホイール側プレート4bに固定され、接合部4pがハブ側プレート4cに固定されることで、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとを車軸方向に接続している。つまり、センシング部4aは、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとを車軸方向に接続することで、ホイール側プレート4bおよびハブ側プレート4cを介してハブ3とホイール1とを車軸方向に接続している。
センシング部4aは、ホイール側プレート4bの周方向の両端をそれぞれ異なるハブ側プレート4cの周方向の端部と接続している。言い換えると、ホイール側プレート4bの周方向の一端は、隣接する2つのハブ側プレート4cの一方に接続され、ホイール側プレート4bの周方向の他端は、ハブ側プレート4cの他方に接続されている。したがって、周方向に隣接する2つのハブ側プレート4cは、センシング部4aとホイール側プレート4bとを介して接続されている。また、ハブ側プレート4cの周方向の両端は、センシング部4aにより、それぞれ異なるホイール側プレート4bの周方向の端部と接続されている。すなわち、ハブ側プレート4cの周方向の一端は、隣接する2つのホイール側プレート4bの一方に接続され、ハブ側プレート4cの周方向の他端は、ホイール側プレート4bの他方に接続されている。したがって、周方向に隣接する2つのホイール側プレート4bは、センシング部4aとハブ側プレート4cとを介して接続されている。
このように、周方向に互い違いに配置されたホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとがセンシング部4aによりそれぞれ接続されることで、一体のセンサプレート4が構成されている。したがって、センシング部4aは、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとの総数と同じ数だけ配置されている。本実施形態では、ホイール側プレート4bおよびハブ側プレート4cはそれぞれ4個設けられており、センシング部4aは8個配置されている。ホイール側プレート4bは、周方向に90度ずつの等間隔で配置されており、ハブ側プレート4cも周方向に90度ずつの等間隔で配置されている。また、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとは位相を45度ずらして配置されている。つまり、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとは交互に45度ずつの等間隔で配置されている。このように、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとが周方向に交互に配置されていることで、センサプレート4の軽量化が可能となっている。
ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとは、車軸方向に離間した状態でセンシング部4aにより接続されており、ホイール側プレート4bと、ハブ側プレート4cとの間で、センシング部4aを介して力やモーメントが相互に伝達される。
センシング部4aは、その変形に基づいてタイヤ作用力が検出される変形部材と、ホイール1とハブ3との間で力やモーメントを伝達する伝達部材の両方の機能を果たすものである。タイヤ作用力を検出する観点からは、センシング部4aは、単数であってもよい。たとえば、センシング部4aは、車軸Xを中心軸線とする1本の梁状部材であってもよい。一方で、ホイール1とハブ3との間で力を伝達する観点からは、センシング部4aは、複数であることが好ましく、たとえば、周方向に配置された4本以上の梁構造であることが好ましい。なお、センシング部4aの断面形状は、円形、楕円形、四角形(たとえば矩形)、多角形などの形とすることができ、中空または中実のいずれでもよい。本実施形態では、センシング部4aが8本の中実の矩形である。
モーメントの入力に対して強度を確保するために、センシング部4aの位置は、センサプレート4における径方向の外側に配置されている。タイヤは、センサプレート4よりも大径であるため、タイヤ作用力によりセンシング部4aにかかる荷重が大きなものとなる場合があるが、センシング部4aがセンサプレート4における径方向の外側に配置されることで、センサプレート4の適切な強度を確保しつつ、タイヤ作用力を精度良く計測することが可能とされている。
図1に示すように、ホイール側プレート4bには、ホイール側プレート4bを車軸方向に貫通する貫通孔4jが形成されている。また、ホイール側プレート4bにおけるホイール1と車軸方向に対向する部分には、ホイール接触面4hが形成されている。ホイール接触面4hは、ホイール1におけるホイール接触面4hと対向する部分の形状と対応する形状に形成されている。具体的には、ホイール接触面4hは、車軸方向と直交する平面形状に形成されている。つまり、ホイール1とホイール接触面4hとは、車軸Xと直交する面において互いに当接している。ホイール側プレート4bとホイール1とは、ホイール1に車軸方向に形成された貫通孔1aとホイール側プレート4bの貫通孔4jとに挿入されたホイール固定ボルト7と、ホイール固定ボルト7に螺合するホイール固定ナット8とにより締結される。
ホイール側プレート4bにおける径方向内側の端部には、ホイール同軸突起4eが形成されている。ホイール同軸突起4eは、ホイール側に向けて突出しており、その外周面は、車軸Xを中心とする円弧状に形成されている。ホイール同軸突起4eの外周面にホイール1の内周面が嵌合することで、ホイール1の軸合わせ(径方向の位置決め)がなされる。
ハブ側プレート4cには、ハブ側プレート4cを車軸方向に貫通する貫通孔4kが形成されている。また、ハブ側プレート4cにおけるブレーキロータ2と車軸方向に対向する部分には、ブレーキロータ接触面4iが形成されている。ブレーキロータ接触面4iは、ブレーキロータ2におけるブレーキロータ接触面4iと対向する部分の形状と対応する形状に形成されている。具体的には、ブレーキロータ接触面4iは、車軸方向と直交する平面形状に形成されている。つまり、ブレーキロータ2とブレーキロータ接触面4iとは、車軸Xと直交する面において互いに当接している。ハブ3には、車軸方向の貫通孔3dが、ブレーキロータ2には、車軸方向の貫通孔2aがそれぞれ形成されている。ハブ3と、ブレーキロータ2と、ハブ側プレート4cとは、貫通孔3d,2a,4kに挿入されたブレーキロータ固定ボルト5と、ブレーキロータ固定ボルト5に螺合するブレーキロータ固定ナット6とにより締結されている。
ハブ側プレート4cにおける径方向内側の端部には、ハブ同軸突起4fが形成されている。ハブ同軸突起4fにおいて車軸Xと径方向に対向する内周面は、ハブ3の円筒部3cの外径と対応する径の円弧状に形成されている。ハブ同軸突起4fにより、センサプレート4をハブ3の円筒部3cに嵌合させるときの軸合わせがなされる。
ホイール側プレート4bがホイール1に、ハブ側プレート4cがハブ3にそれぞれ締結されていることで、図示しないタイヤに作用するタイヤ作用力(接地力)は、ホイール1からホイール側プレート4b、センシング部4a、ハブ側プレート4cを介してハブ3に伝達される。
図2に示すように、ホイール側プレート4bの貫通孔4jと、ハブ側プレート4cの貫通孔4kとは、周方向の位相をずらして配置されており、ホイール固定ボルト7とブレーキロータ固定ボルト5との干渉が抑制されている。具体的には、ホイール側プレート4bの貫通孔4jと、ハブ側プレート4cの貫通孔4kとは45度位相をずらせて(位相角45度)で配置されている。ホイール固定ボルト7とブレーキロータ固定ボルト5との干渉が抑制されることで、センサプレート4の車軸方向の幅の増加が抑制されている。
タイヤの進行方向をx軸、車軸方向をy軸、鉛直方向(x軸およびy軸とそれぞれ直交する方向)をz軸としたときに、タイヤには、前後力Fx、横力Fy、上下力Fz、横力Fyよるモーメント(以下、「オーバーターニングモーメント」と記述する)Mx、回転トルクMy、セルフアライニングトルクMzのタイヤ作用力が作用する。ここで、センサプレート4の直径は、タイヤ直径よりも小径であるため、モーメントの入力によりセンサプレート4に発生する応力が大きなものとなる。上記6分力のうち、特に、オーバーターニングモーメントMxによる応力が最も大きい。本実施形態のセンサプレート4では、たとえば、オーバーターニングモーメントMxによる応力(あるいはセルフアライニングトルクMzによる応力)は、回転トルクMyによる応力と比較しても2倍程度であり、他の力(前後力Fx、横力Fy、上下力Fz)による応力と比較すると10倍程度の大きさとなる。
上記のタイヤ作用力を計測するセンサとして、図2に示すように、センシング部4aには、センサ(検出手段)4dが設けられている。センサ4dは、センシング部4aに作用する荷重(応力)あるいは荷重によるセンシング部4aの変形に反応するセンサであり、タイヤ接地力に対応して出力が変化する。センサ4dとしては、たとえば、歪ゲージや圧電素子等を用いることができる。以下の説明では、センサ4dが歪ゲージである場合について説明する。センサ4dとしての歪ゲージは、センシング部4aの変形と共に変形(伸縮)するようにセンシング部4aに固定されている。具体的には、センサ4dは、各センシング部4aにおける周方向と直交する面(径方向に沿った面)に2個ずつ固定されている。これにより、センシング部4aが変形すると、センサ4dの検出結果に基づいてその歪量(変形量)を検出することができる。なお、本実施形態では、センサ4dは、各センシング部4aに2個ずつで合計16個配置されているが、センサ4dの設置数はこれには限定されず、計測制度と搭載スペースを考慮して増減することができる。
図1および図2に示すように、センサプレート4の外周部には、回転側回路部30が配置されている。回転側回路部30は、回転側ホルダ10、送信回路9、電源受信コイル11、信号送信アンテナ12、センサ配線13を含んで構成されている。回転側ホルダ10は、車軸Xを中心軸線とする円筒形状をなしており、内部には、送信回路9、電源受信コイル11、信号送信アンテナ12、センサ配線13が配置されている。回転側ホルダ10は、ホイール側プレート4bおよびハブ側プレート4cの外周部に固定されており、ホイール側プレート4bおよびハブ側プレート4cと一体に回転する。送信回路9は、電源受信コイル11を介して供給される電力により作動するものであり、各センサ4dおよび信号送信アンテナ12と電気的に接続されている。各センサ4dに接続されたセンサ配線13は、回転側ホルダ10内を通って送信回路9に接続されており、各センサ4dの歪量は、送信回路9により取得される。取得された各センサ4dの歪量を示す信号は、信号送信アンテナ12により後述する信号受信アンテナ16に送信される。回転側ホルダ10は、信号送信に影響しない樹脂等の材質で形成されており、送信回路9、電源受信コイル11、信号送信アンテナ12、センサ配線13がインサート、接着剤モールド等の防水処理をされた状態で内蔵されている。
上記のようにセンサプレート4が構成されていることで、ホイール固定ナット8とブレーキロータ固定ナット6を取り外すだけでセンサプレート4の取り外しが可能となる。したがって、ボルトの数とピッチが合う車両間で互換性があり、容易に取り付け、取り外しが可能となる。また、車両の改造を要することなくセンサプレート4を車両に取り付け可能である。
車体におけるセンサプレート4の近傍には、ブレーキキャリパ17が固定されている。ブレーキキャリパ17は、ブレーキロータ2と共に車両を制動するディスクブレーキを構成するものであり、ブレーキロータ2の径方向外側に配置されている。ブレーキキャリパ17には、固定側回路部31が固定されている。固定側回路部31は、固定側ホルダ14、電源送信コイル15、および信号受信アンテナ16を含んで構成されている。固定側ホルダ14は、回転側ホルダ10の径方向外側に配置され、回転側ホルダ10と径方向に対向している。固定側ホルダ14は、回転側ホルダ10との径方向の隙間が周方向で一定となるように、車軸Xを中心軸線とする円弧形状に形成されている。図1に示すように、固定側ホルダ14の内部には、電源送信コイル15および信号受信アンテナ16が配置されている。固定側ホルダ14は、信号受信に影響しない樹脂等の材質で形成されており、電源送信コイル15および信号受信アンテナ16は、固定側ホルダ14にインサート、接着剤モールド等の防水処理をされた状態で内蔵されている。なお、固定側回路部31の取り付け箇所は、ブレーキキャリパ17には限定されず、車両におけるタイヤ回転と連動して回転しない部品であればよい。
固定側ホルダ14の信号受信アンテナ16には、受信回路18が電気的に接続されており、信号受信アンテナ16で受信した各センサ4dの歪量を示す信号は、受信回路18を介して車両制御コンピュータ19に入力される。車両制御コンピュータ19は、周知のマイクロコンピュータによって構成されており、入力される各センサ4dの歪量を示す信号に基づいて、タイヤ作用力を検出(算出)する。車両制御コンピュータ19には、タイヤの回転角度位置を検出する図示しない位置センサが接続されている。車両制御コンピュータ19は、位置センサにより検出されたタイヤの回転角度位置と、各センサ4dの検出結果に基づいて算出される各センシング部4aに作用する応力とに基づいて、タイヤ作用力を算出する。
本実施形態のセンシング部4aは、断面形状において、径方向に長く、周方向に短い長方形となっている。このように、曲げに対する幅方向の長さ(径方向の長さ)に対して、曲げに対する厚み方向の長さ(周方向の長さ)を短くすることで、車軸方向の荷重に対して十分な断面積を確保しつつ、回転トルクMyによる曲げ応力が作用したときの変形量を大きなものとし、回転トルクMyの計測精度を向上させている。
本実施形態のタイヤ作用力検出装置1−1は、センサプレート4、回転側回路部30、固定側回路部31、受信回路18、および車両制御コンピュータ19を含んで構成される。
ここで、本実施形態のタイヤ作用力検出装置1−1のように、ハブ3とホイール1とを接続するセンシング部(接続部)4aの変形に基づいてタイヤ作用力を検出する場合、タイヤ作用力の計測精度を向上させるためには、センシング部4aが変形しやすいことが有利である。言い換えると、同じタイヤ作用力に対して、センシング部4aの変形量(歪量)が大きい方が、タイヤ作用力の計測精度を向上させる点では有利である。たとえば、センシング部4aの断面積を小さくするなど、センシング部4aの剛性を低くすれば、タイヤ作用力の計測精度を向上させることができる。しかしながら、センシング部4aの剛性を低くしてしまうと、センシング部4aに過大な応力が作用したり、センシング部4aに過大な変形が生じたりする虞がある。
本実施形態のタイヤ作用力検出装置1−1では、センシング部4aに過大な荷重が作用することを抑制する過荷重防止部(支持部材)4gが設けられている。過荷重防止部4gは、図1に示すように、ホイール側プレート4bにおける車体側(車軸方向におけるホイール側と反対側)に固定されており、ブレーキロータ2に向けて車軸方向に突出している。言い換えると、過荷重防止部4gは、車軸方向のハブ3とホイール1との間にセンシング部4aと並列に配置され、かつ、過荷重防止部4gの基端部はホイール側プレート4bに固定されており、先端部がハブ3側に向けて突出し、ハブ3側のブレーキロータ2と車軸方向に対向している。過荷重防止部4gは、ホイール側プレート4bにおける径方向外側の端部に設けられている。
図2に示すように、過荷重防止部4gの車軸方向と直交する方向の断面形状は、矩形であり、具体的には、径方向が長辺、周方向が短辺の長方形である。過荷重防止部4gは、ホイール側プレート4bにおける周方向の中央部に配置されている。したがって、過荷重防止部4gは、周方向において互いに隣接するセンシング部4a同士の中間部に位置している。
図3には、タイヤに横力Fyが作用していない(オーバーターニングモーメントMxが生じていない)状態のセンサプレート4が示されている。オーバーターニングモーメントMxが生じていない状態では、過荷重防止部4gとブレーキロータ2とは離間している。過荷重防止部4gとブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δtにおける初期値(オーバーターニングモーメントMxが生じていない状態の大きさ)は、オーバーターニングモーメントMxの入力による変形変位以内の大きさとされている。すなわち、オーバーターニングモーメントMxが0であるときには、上記隙間Δtは正の値であり、過荷重防止部4gとブレーキロータ2とは車軸方向に離間している。
オーバーターニングモーメントMxが発生して、ホイール側プレート4bに対してハブ側プレート4cに向かう軸方向の荷重が作用すると、過荷重防止部4gとブレーキロータ2とは車軸方向に接近し(オーバーターニングモーメントMxの入力による変形変位が生じ)、上記隙間Δtは初期値よりも減少する。オーバーターニングモーメントMxが増加して、隙間Δtの初期値に相当する変形変位が生じる(隙間Δtが0となる)と、過荷重防止部4gは、ブレーキホイール2に当接する。このときの変形変位は、オーバーターニングモーメントMxの入力による変形変位の最大値よりも小さな値である。すなわち、設計上の最大値よりも小さなオーバーターニングモーメントMxにおいて、過荷重防止部4gはブレーキロータ2に当接する。これにより、後述するように、オーバーターニングモーメントMxの入力による荷重が作用したときのみ過荷重防止部4gがブレーキロータ2と接触して車軸方向の応力を緩和することが可能となり、かつ、回転トルクMyのみが作用したときには、過荷重防止部4gとブレーキロータ2とは離間しているため、回転トルクMyの計測精度への影響はない。
図4は、オーバーターニングモーメントMxが作用したときのセンサプレート4を示す図である。オーバーターニングモーメントMxが作用すると、車軸Xを挟んで一方側のホイール側プレート4bには、ブレーキロータ2へ向かう車軸方向の荷重が作用し、他方側のホイール側プレート4bには、ブレーキロータ2から離間する車軸方向の荷重が作用する。ここで、ブレーキロータ2へ向かう車軸方向の荷重とは、ハブ3とホイール1とを車軸方向に互いに近づける荷重のことである。図4において、符号20は、ブレーキロータ2へ向かう車軸方向の荷重(以下、単に「車軸方向の荷重20」と記述する)を示す。
各センシング部4aのうち、車軸方向の荷重20が作用するホイール側プレート4bを支持しているセンシング部4aには、圧縮応力が作用する。圧縮応力が作用したセンシング部4aは、車軸方向に収縮し、ホイール側プレート4bとハブ側プレート4cとが車軸方向に近づく。これにより、過荷重防止部4gとブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δtが減少する。すなわち、車軸方向の荷重20(ハブ3とホイール1とを車軸方向に互いに近づける荷重)によりセンシング部4aが車軸方向に変形することで、過荷重防止部4gとブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δtが減少する。
この隙間Δtは、オーバーターニングモーメントMxが大きくなるほど減少し、オーバーターニングモーメントMxが所定値以上となると、0となる。すなわち、オーバーターニングモーメントMxが所定値以上となると、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接し、オーバーターニングモーメントMxによる車軸方向の荷重20を受ける。つまり、オーバーターニングモーメントMxが小さく、車軸方向の荷重20が小さい場合には、過荷重防止部4gはブレーキロータ2から離間して、センシング部4aが車軸方向の荷重20を支持し、オーバーターニングモーメントMxが大きく、車軸方向の荷重20が大きい場合には、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接して、センシング部4aと過荷重防止部4gとで車軸方向の荷重20を支持する。これにより、タイヤ作用力の6分力のうち特に大きなオーバーターニングモーメントMxによりセンシング部4aに作用する荷重を軽減させ、センシング部4aに過大な応力が作用したり過大な変形が生じたりすることを抑制することができる。
過荷重防止部4gは、オーバーターニングモーメントMxが所定値未満である場合や、オーバーターニングモーメントMxが作用していない場合には、ブレーキロータ2から離間している。この状態では、過荷重防止部4gは、オーバーターニングモーメントMxや回転トルクMy等のタイヤ作用力の計測精度には影響しない。たとえば、タイヤに対してオーバーターニングモーメントMxが作用せず、回転トルクMyのみが作用している場合には、過荷重防止部4gは、回転トルクMyの計測精度には影響を与えない。
また、以下に図5および図6を参照して説明するように、過荷重防止部4gは、ブレーキロータ2に当接した場合であっても回転トルクMyの計測精度に与える影響が小さくなるように構成されている。過荷重防止部4gの断面形状を径方向に長くすることで、引張圧縮剛性と曲げ剛性の特性の違いから、オーバーターニングモーメントMxの入力による応力に対する緩和能力を大きく、かつ、回転トルクMyの計測精度への影響を少なくすることができる。図5は、オーバーターニングモーメントMxおよび回転トルクMyが作用したときのセンサプレート4を示す図、図6は、センシング部4aおよび過荷重防止部4gの形状について説明するための図である。
図5において、符号21は、回転トルクMyによりホイール側プレート4bに作用する周方向の荷重(以下単に「周方向の荷重21」と記述する)を示す。軸方向の荷重20と周方向の荷重21の両方がホイール側プレート4bに作用している場合、軸方向の荷重20により過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接すると、過荷重防止部4gは、軸方向の荷重20のみならず周方向の荷重21も受けることとなる。これにより、過荷重防止部4gが設けられていない場合と比較して、センシング部4aにおける軸方向および曲げ方向の応力がそれぞれ異なる値となる。
まず、軸方向の剛性および応力について説明する。オーバーターニングモーメントMxの入力に対しては、センシング部4aおよび過荷重防止部4gにおいて引張圧縮となるため、応力は引張圧縮剛性と反比例する。すなわち、ヤング率Eが同じであれば、応力は断面積に反比例する。本実施形態では、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接すると、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接していない場合と比較して、軸方向の荷重20を支持する断面積が増加する。過荷重防止部4gの引張圧縮剛性は、EA(E:ヤング率、A:車軸方向と直交する方向の断面積)で表すことができる。図6に示すように、過荷重防止部4gの断面形状が、径方向の長さがb、周方向の長さがhの長方形である場合、過荷重防止部4gの断面積Aは、下記式(1)で表される。
A = bh (1)
同様に、センシング部4aの断面積をAs、ヤング率を過荷重防止部4gと同じEとすると、センシング部4aの引張圧縮剛性はEAsである。センシング部4aの断面形状を径方向の長さbs、周方向の長さhsの長方形とすると、センシング部4aの断面積Asは、下記式(2)で表される。
As = bshs (2)
過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接すると、過荷重防止部4gが設けられていない場合と比較して、オーバーターニングモーメントMxの入力による応力は低減する。オーバーターニングモーメントMxの入力によるセンシング部4aの車軸方向の応力において、過荷重防止部4gが設けられていない場合の応力に対する、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接している場合の応力の比(以下、単に「車軸方向の応力比P1」と記述する)は、下記式(3)で表される。
P1 = (As/(As+A)) (3)
つまり、過荷重防止部4gが車軸方向の荷重20を受けることにより、応力が(As/(As+A))倍に低減される。これにより、過荷重防止部4gが設けられていない場合と比較して、センシング部4aに作用する応力およびセンシング部4aの変形量が低減する。
次に、曲げにおける剛性および応力(歪量)について説明する。過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接することで、曲げ剛性にも変化が生じる。過荷重防止部4gの曲げ剛性は、EI(E:ヤング率、I:断面2次モーメント)で表される。過荷重防止部4gの断面において、曲げに対する幅方向の長さがb、曲げに対する厚み方向の長さがhであるため、断面2次モーメントIは、下記式(4)で表される。
I = bh3/12 (4)
同様に、センシング部4aの断面2次モーメントIsは、下記式(5)で表される。
Is = bshs 3/12 (5)
回転トルクMyの入力に対しては、センシング部4aおよび過荷重防止部4gにおいて曲げとなるため、応力(歪量)は曲げ剛性に反比例するが、ヤング率Eは一定値のため、応力は断面2次モーメントに反比例することとなる。過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接すると、過荷重防止部4gが設けられていない場合と比較して、回転トルクMyの入力による応力(歪量)は低減する。回転トルクMyの入力によるセンシング部4aの曲げ応力(歪量)において、過荷重防止部4gが設けられていない場合の応力(歪量)に対する、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接している場合の応力(歪量)の比(以下、単に「曲げ応力比P2」と記述する)は、下記式(6)で表される。
P2 = Is/(Is+I) (6)
つまり、過荷重防止部4gが周方向の荷重21を受けることにより、応力(歪量)が(Is/(Is+I))倍に低減される。
本実施形態では、オーバーターニングモーメントMxの入力による応力が緩和され、かつ、回転トルクMyの計測精度に対する影響が軽微となるように過荷重防止部4gが構成されている。具体的には、過荷重防止部4gは、車軸方向の変形におけるセンシング部4aの剛性EAsに対する過荷重防止部4gの剛性EAの比(以下、単に「車軸方向の剛性比」と記述する)が、車軸方向と直交する方向(特に、径方向と直交する方向)の曲げ変形におけるセンシング部4aの剛性EIsに対する過荷重防止部4gの剛性EIの比(以下、単に「曲げ剛性比」と記述する)と比較して大きくなるように構成されている。
まず、車軸方向の剛性比をS1とすると、車軸方向の剛性比S1は、下記式(7)で表される。
S1 = EA/EAs = A/As (7)
上記式(7)を用いて上記式(3)を変形すると、車軸方向の応力比P1は、下記式(8)で表される。
P1 = 1/(1+S1) (8)
次に、曲げ剛性比をS2とすると、曲げ剛性比S2は、下記式(9)で表される。
S2 = EI/EIs = I/Is (9)
上記式(9)を用いて上記式(6)を変形すると、曲げ応力比P2は、下記式(10)で表される。
P2 = 1/(1+S2) (10)
上記式(8)および式(10)からわかるように、車軸方向の剛性比S1が曲げ剛性比S2よりも大きい場合、曲げ応力比P2は、車軸方向の応力比P1と比較して大きな値となる。言い換えると、車軸方向の剛性比S1が曲げ剛性比S2よりも大きい場合、車軸方向の応力の低下割合と比較して、曲げ応力(歪量)の低下割合が小さくなる。つまり、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接した場合の、車軸方向の応力の低下度合いと比較して、曲げ応力の低下度合いが小さくなり、曲げ応力の計測精度に与える影響は、車軸方向の応力の計測精度に与える影響と比較して小さくなる。
ここで、本実施形態のようにセンシング部4aおよび過荷重防止部4gの断面形状が矩形である場合について、車軸方向の剛性比S1が曲げ剛性比S2よりも大きくなる条件について見てみる。上記式(7)と式(9)から、車軸方向の剛性比S1と曲げ剛性比S2との差は、下記式(11)となる。
S1−S2 = A/As−I/Is (11)
上記式(11)に上記式(1)、式(2)、式(4)、および式(5)を代入すると、下記[数1]を得る。
上記[数1]から、過荷重防止部4gの厚み方向の長さhが、センシング部4aの厚み方向の長さhsと比較して小さければ、上記[数1]が正の値となる、すなわち、車軸方向の剛性比S1が曲げ剛性比S2と比較して大きくなることがわかる。つまり、過荷重防止部4gおよびセンシング部4aがそれぞれ断面形状が矩形の梁部である場合、過荷重防止部4gの厚み方向の長さhを、センシング部4aの厚み方向の長さhsと比較して小さくすることで、車軸方向の剛性比S1を曲げ剛性比S2と比較して大きくし、曲げ応力比P2を車軸方向の応力比P1と比較して大きな値とすることができる。
なお、以下に説明するように、過荷重防止部4gのヤング率とセンシング部4aのヤング率とが異なる場合であっても、同様である。
過荷重防止部4gのヤング率をE、センシング部4aのヤング率をEsとした場合、車軸方向の応力比P1は、下記式(12)で表される。
P1 = EsAs/(EsAs+EA) (12)
また、曲げ応力比P2は、下記式(13)で表される。
P2 = EsIs/(EsIs+EI) (13)
また、車軸方向の剛性比S1および曲げ剛性比S2は、それぞれ下記式(14)、式(15)で表される。
S1 = EA/EsAs (14)
S2 = EI/EsIs (15)
上記式(14)を用いて上記式(12)を変形すれば、車軸方向の応力比P1は、上記式(8)で表すことができる。また、上記式(15)を用いて上記式(13)を変形すれば、曲げ応力比P2は、上記式(10)で表すことができる。また、上記式(14)と式(15)、および上記式(1)、式(2)、式(4)、式(5)から、車軸方向の剛性比S1と曲げ剛性比S2との差は、下記[数2]で表される。
上記[数2]から、センシング部4aのヤング率Esと過荷重防止部4gのヤング率Eとが異なる場合であっても、過荷重防止部4gの厚み方向の長さhが、センシング部4aの厚み方向の長さhsと比較して小さければ、車軸方向の剛性比S1が曲げ剛性比S2と比較して大きくなることがわかる。すなわち、過荷重防止部4gの厚み方向の長さhを、センシング部4aの厚み方向の長さhsと比較して小さくすることで、車軸方向の剛性比S1を曲げ剛性比S2と比較して大きくし、曲げ応力比P2を車軸方向の応力比P1と比較して大きな値とすることができる。
ここで、例として、過荷重防止部4gの断面形状の幅方向の長さb=20mm、厚み方向の長さh=1mm、センシング部4aの幅方向の長さbs=20mm、厚み方向の長さhs=5mmとしたときの、オーバーターニングモーメントMx、および回転トルクMyに対する応力(歪量)の影響について計算する。車軸方向の応力比P1および曲げ応力比P2は、それぞれ以下のようになる。
P1 = (As/(As+A))=0.83
P2 = (Is/(Is+I))=0.99
すなわち、オーバーターニングモーメントMxの入力に対する応力は17%低減し、回転トルクMyの入力に対する歪量は1%の低減となる。つまり、オーバーターニングモーメントMxの入力による応力が緩和され、かつ、回転トルクMyの計測精度に対する影響がわずかなものとなる。よって、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接した状態においても、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接していない場合とほぼ同様の精度で、センサ4dの検出結果に基づいてタイヤに作用する回転トルクMyを計測することができる。
このように、本実施形態のタイヤ作用力検出装置1−1には、センシング部4aに最も大きな応力を発生させるオーバーターニングモーメントMxによる荷重(車軸方向の荷重20)に対して、荷重が増加した場合にその荷重をセンシング部4aと共に支持する過荷重防止部4gが設けられている。これにより、センシング部4aに過大な応力が作用したり、過大な変形が生じたりすることが抑制される。これにより、強度に余裕ができるため、タイヤ作用力検出装置1−1の信頼性の向上、センサプレート4の小型化、計測精度と強度のバランス改善が可能となる。
たとえば、センシング部4aの剛性が同じであっても、過荷重防止部4gが荷重を受けることでセンシング部4aにかかる荷重が減少するため、タイヤ作用力検出装置1−1の信頼性が向上する。また、センシング部4aのみでオーバーターニングモーメントMxによる車軸方向の荷重20を受ける場合と比較して、センシング部4aの剛性を低く(たとえば、断面積を小さく)することができる。これにより、センサプレート4の小型化が可能となる。センシング部4aを低剛性とできることで、過荷重防止部4gがブレーキロータ2に当接するまでの相対的に小さなオーバーターニングモーメントMxの領域では、オーバーターニングモーメントMxを含むタイヤ作用力を高い精度で計測することができる。
また、過荷重防止部4gは、車軸方向の剛性比S1が、曲げ剛性比S2と比較して大きくなるように構成されている。すなわち、過荷重防止部4gは、車軸方向の荷重20に対する剛性が高く、センシング部4aで発生する車軸方向の応力(歪量)を低減させることができると共に、周方向の荷重21による曲げに対する剛性が低いため、センシング部4aで発生する曲げ応力(歪量)には大きな影響を与えない。その結果、過荷重防止部4gが車軸方向の荷重20を支持している状態であっても、センサ4dの検出結果に基づいてタイヤに作用する回転トルクMyを精度良く検出することができる。
なお、本実施形態では、センサプレート4が、ハブ3やホイール1とは独立しているが、センサプレート4の少なくとも一部がハブ3あるいはホイール1と一体に形成されてもよい。たとえば、センシング部4aが、ハブ3と一体に形成されてもよい。言い換えれば、センサプレート4は、ハブ3とホイール1とを車軸方向に接続し、ハブ3とホイール1との間で力を伝達する接続部と、接続部の変形を検出する検出手段とを備えていればよい。
(第1実施形態の第1変形例)
第1実施形態の第1変形例について説明する。図7は、本変形例にかかるセンサプレート4の構成を示す図である。上記第1実施形態では、過荷重防止部4gが、センシング部4aと同数であったが、過荷重防止部4gの数は、これには限定されない。過荷重防止部4gの数は、オーバーターニングモーメントMxによる応力と、回転トルクMyによる歪量とのバランスが設計基準を満たすように自由に設定されることができる。
たとえば、本変形例では、周方向に隣接するセンシング部4a同士の間に、それぞれ3枚の過荷重防止部4gが配置されている。これにより、オーバーターニングモーメントMxによる車軸方向の荷重20によるセンシング部4aの応力を更に低減させることができる。
図7に示すように、周方向に隣接するセンシング部4a同士の間には、3枚の過荷重防止部4gが周方向に隣接して配置されている。過荷重防止部4gの形状は、上記第1実施形態の過荷重防止部4gと同様であり、その断面形状は、径方向の長さ(幅)がb、周方向の長さ(厚さ)がhである。3枚の過荷重防止部4gは、互いに並行であり、かつ、等間隔に周方向に配置されている。3枚のうち中央の過荷重防止部4gは、隣接するセンシング部4a同士の中間部に位置している。
過荷重防止部4gが3枚設けられていることで、車軸方向の応力比P1は、下記式(16)で表される。
P1 = As/(As+3A) (16)
また、曲げ応力比P2は、下記式(17)で表される。
P2 = Is/(Is+3I) (17)
上記第1実施形態と同様に、過荷重防止部4gの断面形状の幅方向の長さb=20mm、厚み方向の長さh=1mm、センシング部4aの幅方向の長さbs=20mm、厚み方向の長さhs=5mmとした場合、上記式(16)から車軸方向の応力比P1=0.63、上記式(17)から曲げ応力比P2=0.98となる。すなわち、オーバーターニングモーメントMxによる応力は37%低減し、回転トルクMyによる応力(歪量)の低減は2%のみとなる。よって、回転トルクMyによる応力への影響をわずかなものとしつつ、さらにセンシング部4aに生じる車軸方向の応力を緩和することができる。
このように、過荷重防止部4gにおける車軸方向と直交する方向の断面積Aを増加させる場合に、1つの過荷重防止部4gの厚み方向の長さ(周方向の長さ)hを増やす代わりに、過荷重防止部4gの数を増やすことで、回転トルクMyによる応力への影響の度合いが増加することを抑制しつつ、車軸方向の応力を緩和することができる。過荷重防止部4gの断面積Aを3倍に増加させる場合に、過荷重防止部4gの厚み方向の長さhを3倍とすると、上記式(4)から断面2次モーメントIが27倍に増加してしまう。これに対して、本変形例のように、厚み方向の長さhを変えずに過荷重防止部4gの枚数を3枚とすれば、断面2次モーメントIの増加は3倍に抑えることができる。つまり、大きな断面積Aを確保しつつ、断面2次モーメントIを低減させるためには、厚み方向の長さhを小さくした過荷重防止部4gを複数配置すればよい。
なお、本変形例では、過荷重防止部4gの数を上記第1実施形態と異ならせたが、過荷重防止部4gの位置を変更してもよい。過荷重防止部4gの位置についても、過荷重防止部4gの数と同様に、オーバーターニングモーメントMxによる応力と、回転トルクMyによる歪量とのバランスが設計基準を満たすように自由に設定されることができる。
(第1実施形態の第2変形例)
第1実施形態の第2変形例について説明する。図8は、本変形例のセンサプレート4の構成を示す図である。上記第1実施形態では、過荷重防止部4gが、ホイール側あるいはハブ側の一方(例えばホイール側プレート4b)に固定され、車軸方向の荷重20が小さい場合に他方(例えば、ブレーキロータ2)から離間し、車軸方向の荷重20が大きい場合に他方に当接したが、これに代えて、過荷重防止部4gが、車軸方向の荷重20が小さい場合にホイール側およびハブ側のいずれからも離間し、車軸方向の荷重20が大きい場合にホイール側およびハブ側にそれぞれ当接するようにしてもよい。
図8に示すように、本変形例の過荷重防止部41は、センシング部4aと連結され、センシング部4aに支持されている。過荷重防止部41は、例えば、周方向および径方向において上記第1実施形態の過荷重防止部4gと同様の位置に配置される。また、過荷重防止部41の車軸方向と直交する方向の断面形状は、上記第1実施形態の過荷重防止部4gと同様の形状とすることができる。過荷重防止部41は、車軸方向のハブ3とホイール1との間にセンシング部4aと並列に配置され、ホイール側の端部はホイール側プレート4bと車軸方向に対向し、車体側の端部はブレーキロータ2と車軸方向に対向している。
図8には、タイヤに横力Fyが作用していない(オーバーターニングモーメントMxが生じていない)状態のセンサプレート4が示されている。オーバーターニングモーメントMxが生じていない状態では、過荷重防止部41は、ブレーキロータ2およびホイール側プレート4bのそれぞれから車軸方向に離間している。過荷重防止部41とブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δtにおける初期値(オーバーターニングモーメントMxが生じていない状態の大きさ)は、オーバーターニングモーメントMxの入力による変形変位以内の大きさとされている。また、過荷重防止部41とホイール側プレート4bとの車軸方向の隙間は、過荷重防止部41とブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δtと同様の大きさに設定されている。
過荷重防止部41とセンシング部4aとは、連結部材42により連結されている。連結部材42は、過荷重防止部41とセンシング部4aとを車軸方向と直交する方向に連結している。過荷重防止部41は、連結部材42を介してセンシング部4aに支持されていることで、ホイール側プレート4bおよびブレーキロータ2のいずれとも接触しない状態で、ホイール側プレート4bとブレーキロータ2との隙間に静止していることができる。
オーバーターニングモーメントMxが発生して、ホイール側プレート4bに対してハブ側プレート4cに向かう車軸方向の荷重20が作用すると、センシング部4aが車軸方向に変形してホイール1とブレーキロータ2との車軸方向の隙間が減少する。これにより、過荷重防止部41とブレーキロータ2との車軸方向の隙間Δt、および過荷重防止部41とホイール側プレート4bとの車軸方向の隙間は、それぞれ減少する。オーバーターニングモーメントMxが所定値以上となると、過荷重防止部41とホイール側プレート4b、および過荷重防止部41とブレーキロータ2がそれぞれ当接し、過荷重防止部41がセンシング部4aと共に車軸方向の荷重20を受ける。これにより、タイヤ作用力の6分力のうち特に大きなオーバーターニングモーメントMxによりセンシング部4aに作用する荷重を軽減させ、センシング部4aに過大な応力が作用したり過大な変形が生じたりすることを抑制することができる。
(第2実施形態)
図9を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。図9は、本実施形態のセンサプレートの構成を示す図である。
本実施形態の過荷重防止部43が、上記第1実施形態の過荷重防止部4g,41と異なる点は、少なくとも車軸方向の荷重20が作用しないときに過荷重防止部43がハブ側およびホイール側のそれぞれと接触している点である。また、車軸方向の荷重20が小さい場合と大きい場合とで、車軸方向の荷重20の変化量に対する過荷重防止部43の車軸方向の変形量の比が異なる。言い換えると、過荷重防止部43の実質的な剛性は、車軸方向の荷重20が小さい場合と大きい場合とで異なる。車軸方向の荷重20が小さい場合には、大きい場合と比較して、同じ車軸方向の荷重20の変化量に対して、過荷重防止部43の変形量が大きい。
車軸方向の荷重20が作用すると、センシング部4aおよび過荷重防止部43が車軸方向に変形し、ハブ3とホイール1との車軸方向の隙間が減少する。車軸方向の荷重20が小さい場合には、過荷重防止部43はハブ側およびホイール側のそれぞれと接触して車軸方向の荷重20を支持するものの、その支持する荷重の大きさは小さい。よって、センシング部4aの変形に与える影響は小さく、タイヤ作用力の計測精度に与える影響は小さい。一方、車軸方向の荷重20が大きい場合には、過荷重防止部43は大きな荷重を支持することができ、センシング部4aに過大な応力が作用したり、センシング部4aに過大な変形が生じたりすることを抑制できる。
本実施形態の過荷重防止部43は、図9に示すように、車軸方向の互いに異なる領域に配置され、かつ剛性が互いに異なる第一構成部(第一支持部材構成部)43aと第二構成部(第二支持部材構成部)43bとを有する。第一構成部43aの剛性は、第二構成部43bの剛性と比較して大きい。過荷重防止部43において、第一構成部43aはホイール側に、第二構成部43bは車体側にそれぞれ配置されている。第一構成部43aにおけるホイール側の端部は、ホイール側プレート4bにおける車体側に固定されている。また、第二構成部43bにおける車体側の端部は、ブレーキロータ2に当接している。なお、第二構成部43bにおける車体側の端部がブレーキロータ2に固定されていてもよい。
車軸方向の荷重20が小さい場合には、第一構成部43aおよび第二構成部43bがそれぞれの剛性に応じて収縮する。第一構成部43aの剛性と比較して第二構成部43bの剛性が小さいことで、車軸方向の荷重20が小さい場合には、第一構成部43aと比較して第二構成部43bの収縮の度合いが大きい。第二構成部43bの収縮量が一定以上となると、第二構成部43bがそれ以上収縮しないあるいは収縮しにくくなり、主として第一構成部43aが収縮する。つまり、車軸方向の荷重20が大きい場合には、車軸方向の荷重20が小さい場合と比較して、過荷重防止部43の収縮において、第一構成部43aの剛性がより大きく影響する。これにより、車軸方向の荷重20が大きい場合には、小さい場合と比較して、同じ車軸方向の荷重20の変化量に対して、過荷重防止部43の変形量が小さくなる。言い換えると、車軸方向の荷重20が大きい場合には、小さい場合と比較して、過荷重防止部43の実質的な剛性が大きくなる。よって、車軸方向の荷重20が大きい場合には、過荷重防止部43は大きな荷重を支持することができ、センシング部4aに過大な応力が作用したり、センシング部4aに過大な変形が生じたりすることを抑制できる。
なお、第一構成部43aと第二構成部43bの車軸方向における配置は、本実施形態の配置には限定されない。例えば、第二構成部43bが過荷重防止部43における車軸方向の中央部に配置されてもよく、ホイール側の端部に配置されてもよい。