JP5411560B2 - 耐酸鋼材および燃焼・焼却設備の排ガス関連低温部材 - Google Patents
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Description
C :0.05〜0.30質量%、
Si:0.05〜1.0質量%、
Mn:0.1〜2.0質量%、
P :0.03質量%以下、
S :0.01質量%以下、
Al:0.005〜0.10質量%、
Cu:0.05〜2.0質量%、
Ni:0.05〜2.0質量%、
Cr:0.05〜0.3質量%、
Ti:0.005〜0.05質量%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなると共に、Cの含有量[C]とCrの含有量[Cr]の比:[C]/[Cr]が0.20〜5.0であり、かつ、面積率でフェライトを20%以上を含むと共にパーライトもしくはベイナイトを5%以上含む組織であることを特徴とする。
Cは、耐食性向上に寄与するCr炭化物を生成するのに必要であることに加えて、材料の強度確保のためにも必要な元素である。このような効果を得るためには、Cを0.04質量%(質量%を、以下、%という)以上含有させる必要がある。しかし、Cを過剰に含有させると、酸溶液中でのカソードサイトとして作用するセメンタイトの生成量が多くなって、腐食反応を促進して、耐食性が劣化することに加えて、靱性も劣化する。このようなCの悪影響を避けるためには、C含有量は0.30%以下とする必要がある。こうしたことから、C含有量の範囲は0.04〜0.30%とした。尚、C含有量の好ましい下限は0.045%であり、より好ましくは0.05%以上とするのが良い。また、C含有量の好ましい上限は0.29%であり、より好ましくは0.28%以下とするのが良い。
Siは、脱酸と強度確保のための必要な元素であり、0.05%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、1.0%を超えて過剰に含有させると溶接性が劣化する。尚、Si含有量のより好ましい下限は0.08%であり、さらに好ましい下限は0.10%である。また、Si含有量のより好ましい上限は0.95%であり、さらに好ましい上限は0.90%である。
Mnは、Siと同様に脱酸および強度確保のために必要であり、0.1%に満たないと構造部材としての最低強度を確保できない。しかし、2.0%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化する。尚、Mn含有量のより好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましい下限は0.20%である。また、Mn含有量のより好ましい上限は1.9%であり、さらに好ましい上限は1.8%である。
Pは、過剰に含有させると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、Pの許容される含有量は0.03%までである。P含有量は出来る限り少ない方が好ましく、より好ましい上限は0.028%であり、さらに好ましくは0.025%以下とするのが良い。
Sは、Pと同様に含有量が多くなると靭性や溶接性を劣化させる元素であり、許容される含有量は0.01%までである。Sのより好ましい上限は0.009%であり、さらに好ましくは0.008%以下とするのが良い。
Alは、Si、Mnと同様に脱酸および強度確保のために必要である。これらの効果を発揮させるためには、0.005%以上が必要である。しかし、0.10%を超えて添加すると溶接性を害するため、Al添加量の範囲は0.005〜0.10%とした。尚、Al含有量のより好ましい下限は0.008%であり、さらに好ましい下限は0.010%である。また、Al含有量のより好ましい上限は0.09%であり、さらに好ましい上限は0.08%である。
Cuは、フェライトに固溶して、アノードの活性度を低下させることに加えて、鋼材表面に緻密なさび皮膜を形成する作用も有しており、耐食性の向上に必要な元素である。このような効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させることが必要であるが、過剰に含有させると溶接性や熱間加工性が劣化することから、2.0%以下とする必要がある。Cu含有量の好ましい下限は0.06%であり、より好ましい下限は0.07%である。また、Cu含有量の好ましい上限は1.95%であり、より好ましい上限は1.90%である。
Niは、フェライトに固溶して、アノードの活性度を低下させることに加えて、鋼材表面に緻密なさび皮膜を形成する作用も有しており、耐食性の向上に必要な元素である。また、Niは母材靱性を向上させるのにも有効であり、さらに、Cuによる赤熱脆性を防止するのにも必要な元素である。こうした効果を発揮させるためには0.05%以上含有させることが好ましい。しかしながら、添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化することから、2.0%以下とすることが好ましい。Niを含有させるときのより好ましい下限は0.06%であり、0.07%以上がさらに好ましい。Niを含有させるときのより好ましい上限は1.95%であり、1.90%以下がさらに好ましい。
Crは、フェライトに固溶してアノード反応抑制し、セメンタイト中でCr炭化物を生成してカソード反応を抑制すると考えられ、耐食性向上に必要な元素である。これらの効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させることが必要であるが、過剰に含有させると、腐食先端のpH低下を招いてかえって耐食性を劣化させることに加えて、溶接性や熱間加工性を劣化させる元素である。このようなCrの悪影響を出さないためには、含有量は0.3%以下とする必要がある。Cr含有量のより好ましい下限は0.055%であり、0.06%以上とすることが更に好ましい。Cr含有量のより好ましい上限は0.28%であり、0.26%以下とすることが更に好ましい。
Tiは、CuやNiと同様にフェライトに固溶して、アノードの活性度を低下させることに加えて、鋼材表面に緻密なさび皮膜を形成する作用も有しており、耐食性の向上に必要な元素である。このような効果を発揮させるためには0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化することから、0.05%以下とすることが好ましい。Tiを含有させるときのより好ましい下限は0.006%であり、さらに好ましい下限は0.007%である。Tiを含有させるときのより好ましい上限は0.045%であり、さらに好ましい上限は0.04%である。
本発明の第2発明に係る耐酸鋼材では、更にMg:0.0003〜0.005%、Ca:0.0003〜0.005%の1種以上を含有させる。この理由等について、以下説明する。MgおよびCaは、酸溶液中、特に塩化物を含む酸溶液中において、錆び中のpHを上昇させる作用を有しており、カソード反応を抑制して耐食性を向上するのに有効な元素である。こうした作用は、0.0003%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、0.005%を越えて添加すると加工性と溶接性とを劣化させる。このような理由で、添加量は各々0.0003〜0.005%の範囲が適正である。MgとCa添加量のより好ましい下限は各々0.0004%であり、さらに好ましい下限は各々0.0005%である。また、MgとCa添加量のより好ましい上限は各々0.0045%であり、さらに好ましい上限は各々0.004%である。
本発明の第3発明に係る耐酸鋼材では、更にNb:0.001〜0.1%、Zr:0.001〜0.1%、Hf:0.001〜0.1%の1種以上を含有させる。この理由等について、以下説明する。Nb、ZrおよびHfは酸化物として表面に緻密なさび皮膜を形成して耐食性に寄与する元素であり、特に硫酸塩を含む酸溶液中での耐食性を著しく向上させるのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには0.001%以上含有させることが好ましい。しかしながら、添加量が過剰になると溶接性や熱間加工性が劣化することから、0.1%以下とすることが好ましい。Nb、Zr、Hfのより好ましい下限は各々0.003%であり、さらに好ましい下限は各々0.005%である。また、Nb、Zr、Hfのより好ましい上限は各々0.095%であり、さらに好ましい上限は各々0.09%である。
本発明の第4発明に係る耐酸鋼材では、さらにB:0.0001〜0.005%、V:0.001〜0.1%の1種以上を含有させる。この理由等について以下説明する。BおよびVは強度向上に有効な元素である。このような作用を得るためには、Bは0.0001%以上、Vは0.001%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に勧誘させると母材靭性が劣化するため、Bを含有させる場合には0.005%以下、Vを含有させる場合には0.1%以下とする必要がある。尚、Bを含有させる場合のより好ましい下限は0.0002%であり、さらに好ましい下限は0.0003%である。また、B添加量のさらに好ましい上限は0.0045%以下であり、さらに好ましい上限は0.004%である。Vを含有させる場合のより好ましい下限は0.002%であり、さらに好ましい下限は0.003%である。また、V添加量のさらに好ましい上限は0.095%以下であり、さらに好ましい上限は0.09%である。
本発明の効果を得るためには、Cの含有量[C]とCrの含有量[Cr]の比、即ち、[C]/[Cr]を適切に調整する必要がある。Crは鋼中において、一部はフェライトに固溶し、一部は炭化物を生成する。[C]/[Cr]比が0.20に満たない場合には、Crの量に対するCの量が少ないため、耐食性向上に寄与するCr炭化物が生成せず、セメンタイトのカソード反応抑制効果が得られない。また、[C]/[Cr]比が5.0を超えると、Cの量に対すCrの量が少ないため、Crはすべて炭化物となって、フェライトへ固溶するCrがなくなるため、Cr固溶によるフェライトのアノード反応抑制効果が得られない。このような理由から、[C]/[Cr]比は0.20〜5.0とすることが必要である。なお、[C]/[Cr]比のより好ましい下限は0.22であり、より好ましい上限は4.8である。
本発明の効果はフェライトおよびセメンタイトの腐食反応性を制御することにより得られるものであり、鋼材にはこれらが含まれる必要がある。アノード反応抑制効果が作用するフェライトは面積率で20%以上必要であり、これに満たない場合には腐食抑制効果が不十分となる。また、カソード反応抑制効果が作用するセメンタイトは、パーライトもしくはベイナイトとして面積率で5%以上存在する必要があり、これに満たない場合には腐食抑制効果が不十分となる。セメンタイトはカソード反応サイトとなるため、腐食抑制の観点からはできる限り少ない方が好ましい。この点から、パーライトもしくはベイナイトとして35%以下とすることが望ましい。フェライトが多すぎる場合には、固溶したCr濃度が低くなるため、Cr固溶によるアノード反応抑制効果が得られ難くなる可能性がある。この点から、フェライトは95%以下とすることが望ましい。
本発明に係る耐酸鋼材は、例えば以下の方法により、製造することができる。転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼に対して、RH真空脱ガス装置を用いて、成分調整・温度調整を含む二次精錬を行う。その後、連続鋳造法、造塊法等の通常の鋳造方法で鋼塊とする。なお脱酸形式としては、機械特性や溶接性の観点でキルド鋼を用いることが好ましく、さらに好ましくはAlキルド鋼が推奨される。
表1〜2に示す種々の成分組成の鋼材を真空溶解炉により溶製し、50kgの鋼塊とした。得られた鋼塊を1150℃に加熱した後、熱間圧延を行って、板厚10mmの鋼素材とした。このとき、熱間圧延終了温度は650〜850℃の範囲、熱間圧延終了後から500℃までの冷却速度を0.1〜15℃/秒以下の範囲で適宜調整した。
腐食試験として、(1) 1mol/L 塩酸、(2) 1mol/L 硫酸、(3) 0.5mol/L塩酸+0.5mol/L硫酸、3種の酸溶液に浸漬する浸漬腐食試験を実施した。試験溶液はすべて30℃であり、浸漬時間はすべて24時間である。試験溶液を入れたビーカーをウォーターバスにより30℃に保持し、そのビーカーに、ナイロン糸を用いてテストピースをつるして浸漬させた。いずれの試験溶液も比液量は試験片1個につき、1L(リットル)とした。
各酸溶液中での浸漬腐食試験結果を表3に示す。腐食速度については、No.1の鋼材の腐食速度を100としたときの相対値で示している。即ち、この相対値が、例えば35のものは、No.1の鋼材の腐食速度の35%の腐食速度であることを示すものである。総合評価としては、各酸溶液中の腐食速度相対値(No.1=100)がすべて50以下のものを○、すべて30以下のものを◎、すべて20以下のものを◎◎とした。各酸溶液中の腐食速度相対値が50超100未満のものを△、100のものを×とした。
Claims (5)
- 硫酸および/または塩酸に曝される環境で使用される鋼材であって、
C :0.05〜0.30質量%、
Si:0.05〜1.0質量%、
Mn:0.1〜2.0質量%、
P :0.03質量%以下、
S :0.01質量%以下、
Al:0.005〜0.10質量%、
Cu:0.05〜2.0質量%、
Ni:0.05〜2.0質量%、
Cr:0.05〜0.3質量%、
Ti:0.005〜0.05質量%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなると共に、Cの含有量[C]とCrの含有量[Cr]の比:[C]/[Cr]が0.20〜5.0であり、かつ、面積率でフェライトを20%以上を含むと共にパーライトもしくはベイナイトを5%以上含む組織であることを特徴とする耐酸鋼材。 - さらに、Mg:0.0003〜0.005質量%、Ca:0.0003〜0.005質量%の1種以上を含有する請求項1記載の耐酸鋼材。
- さらに、Nb:0.001〜0.1質量%、Zr:0.001〜0.1質量%、Hf:0.001〜0.1質量%の1種以上を含有する請求項1または2記載の耐酸鋼材。
- さらに、B:0.0001〜0.005質量%、V:0.001〜0.1質量%の1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐酸鋼材。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の耐酸鋼材を用いて構成された燃焼・焼却設備の排ガス関連低温部材。
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