JP5410215B2 - 医療用針 - Google Patents
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Description
本発明で医療用針とは、供血者から血液を採取して、保存するための採血バッグに装着される採血針、AVF針[動脈静脈管(arteriovenousfistula:特表2006−519079号参照)と呼ばれる皮下血管へのアクセス用の針(以下、「皮下血管用アクセス針」とういう)]等を含む。
以下、採血針の例について説明する。
特許文献2には、さらに刺通抵抗を改良するため、シランカップリング剤を含む化合物によって被覆された針の外表面を、反応性シリコーンと非反応性シリコーンの混合物で処理された穿刺針であって、前記反応性シリコーンが、アミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有アルコキシシラン、および両末端にシラノール基を有するシリコーンを反応させて得られた化合物であることを発明特定事項とした穿刺針の発明が記載されている。
さらに特許文献2には、針とは、ステンレス、ニッケル−チタンなどの弾性を有する金属製針や、PPS樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、PP樹脂、POM樹脂などの合成樹脂製針であり、具体的には注射針、採血針、留置針、翼状針、混注針、瓶針、縫合針等であると記載されている。
さらに特許文献2の実施例には、「(21G)注射針」を、シランカップリング剤と反応性シリコーンと非反応性シリコーンの混合物で処理したと記載されているが、詳細な針の形態とコーティング部位等の情報は全く開示されていない。
図9は、現在実際に市販されている採血針51の概略図で、針管52の基部52Mを、針基53に植設し、前記針管52を(前記針基53に植設していない)針管露出部52.1の当該針管露出部外面52.11と当該針管露出部内面52.12に、それぞれシリコーン系高分子をコーティングしている。これらにより、シリコーン系高分子をコーティングしないものよりも、刺通特性を改善できる。
これらの原因は、定かではないが針管52の構成材料である金属表面の露出が原因ではないかと想定される。すなわち、シリコーン系高分子で、表面が全て覆われておらず、直接、血液が金属材料と接触すると血液の滞留・凝固が発生すると想定される。
[1]本発明は、医療用針(1)が採血針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記針管露出部外面(2.11)及び前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管(2)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子でコーティングし、
当該針管(2)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記針管露出部外面(2.11)、前記針管露出部内面(2.12)
及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、
前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、医療用針(1)を提供する。
[2]本発明は、医療用針(11)が皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管(2)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該針管(2)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記針管露出部内面(2.12)及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、
前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、
医療用針(11)を提供する。
[3]本発明は、医療用針(21)が二重管構造を有する皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記金属製の針管(2)は、外管(2O)と内管(2I)を有し、
前記外管(2O)は、前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記外管(2O)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該外管(2O)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記内管(2I)は、前記針管露出部外面(2.11)並びに前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記内管(2I)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、当該内管(2I)を、血管に穿刺したときに、当該内管(2I)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記外管(2O)の針管露出部内面(2.12)及び前記針管植設部内面(2.22)、並びに
前記内管(2I)の前記針管露出部外面(2.11)、前記針管露出部内面(2.12)、及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、医療用針(21)を提供する。
[4]本発明は、医療用針(21)が二重管構造を有する皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記金属製の針管(2)は、外管(2O)と内管(2I)を有し、
前記外管(2O)は、前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記外管(2O)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該外管(2O)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記内管(2I)は、前記針管露出部外面(2.11)並びに前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記内管(2I)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子でコーティングし、当該内管(2I)を、血管に穿刺したときに、当該内管(2I)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記外管(2O)の前記針管露出部内面(2.12)、及び前記針管植設部内面(2.22)、並びに
前記内管(2I)の前記針管露出部外面(2.11)、及び前記針管露出部内面(2.12)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、医療用針(21)を提供する。
[5]本発明は、前記人体に偽害性のない高分子は、少なくとも血液抗凝固性を有し、潤滑性の低い高分子である[1]から[4]のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)を提供する。
[6]本発明は、前記人体に偽害性のない高分子は、前記針管(2)と前記シリコーン系高分子との両方に対して親和性を有するシランカップリング剤である[1]から[5]のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)を提供する。
[7]本発明は、前記シリコーン系高分子は、シリコーン系高分子、構造上シリコーンユニットを含む高分子またはシリコーン系高分子を添加させた高分子の中から選ばれる高分子で、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンや変性シリコーン、シリコーン変性樹脂、これらの群から選ばれる少なくとも一つ、または二つ以上の混合物である[1]から[6]のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)を提供する。』
〈1〉針管2を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子でコーティングしているので、針管2を、血管に穿刺したときに、針管2を構成する金属材料が、直接、血液と接触することがなく、従来のようにシリコーン系高分子をコーティングした領域とコーティングしていない領域の境界域の近傍で、血液の滞留・凝固等の発生を阻止することが可能である。
〈2〉皮下血管用アクセス針の場合、針管露出部外面2.11は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングしているので、従来(特許文献1、2)のようにシリコーン系高分子をコーティングした場合と比較して、針管2は穿刺部に安定して固定することができる。穿刺部に一度刺通した後でも、穿刺部から滑って容易に抜け落ちることがない。
〈3〉さらに、人体に偽害性のない高分子は、針管2表面へコーティングする場合、一回よりも複数(二回以上)にわたって、コーティングすることにより、針管2表面へのシリコーン系高分子のコーティング量を増加させることができる。このためシリコーン系高分子を針管2表面へ確実に安定してコーティングできる。このため〈1〉の効果を有効に発現できる。
本発明の医療用針(採血針、皮下血管用アクセス針を含む)(1、11、21)は、図1から図6に例示するように、金属製の針管2の基部2Mを、針基3に植設し、
針管2は、針基3に植設していない針管露出部2.1と、針基3に植設した針管植設部2.2とを有する。
針管露出部2.1の針管露出部外面2.11と、針管露出部内面2.12に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子をコーティングしている。
針管植設部2.2の針管植設部外面2.21は、無コーティングとするか、または人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子をコーティングしている。
針管植設部2.2の針管植設部内面2.22は、人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子をコーティングしている。
針管2を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子でコーティングし、針管2を、血管に穿刺したときに、針管2を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないようにしている。
なお、図2から図3、図5から図6の針管2の断面図では、針管2にコーティングする人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子のコーティング状態が理解しやすいように、針管2、人体に偽害性のない高分子、シリコーン系高分子の厚みは、誇張して記載している。
本発明でシリコーン系高分子とは、シリコーン系高分子、構造上シリコーンユニットを含む高分子またはシリコーン系高分子を添加させた高分子の中から選ばれる高分子が好適である。本発明で好適に使用されるシリコーン系高分子は、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンや変性シリコーン、シリコーン変性樹脂等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも一つ、または二つ以上の混合物が使用される。
コーティング(層)の厚さは、経時変化等に応じて任意に採用できるものであるが、好ましくは1〜10μm以下である。
人体に偽害性のない高分子とは、少なくとも血液抗凝固性(抗血栓性ともいう、いわゆる生体適合性)がよくて、潤滑性の低い(摩擦性が高い)材料を意味し、これらの条件を充足するものであれば、何でもよい。
潤滑性の低い(摩擦性が高い)とは、表面のすべり性が悪く滑り抵抗の高いものである。
そのなかで、高分子を直接金属材料表面にコーティングする前に、プレコーティングされるいわゆる「プライマー」と称されている高分子が好ましい。
「プライマー」は、針管2とシリコーン系高分子との両方に対して親和性を有する、例えば、シランカップリング剤(特にエポキシ系シランカップリング剤(KBM403:信越化学製、アミノ系シランカップリング剤 KBP―41:信越化学製)等を好適に使用することができる。なおエポキシ系,アミノ系シランカップリング剤と同等の性能を有するものであれば例えばメルカプト系等のシランカップリング剤等も好適に用いることができる。
− グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3 − グリシドキシプロピルジメトキシシラン、2 − ( 3 , 4 − エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3
− メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N − 2 ( アミノエチル) 3 − アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N − 2 ( アミノエチル) 3
− アミノプロピルトリメトキシシラン、3 − アミノプロピルトリエトキシシラン、3 − メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N − フェニル− 3 − アミノプロピルトリメトキシシラン3
− クロロプロピルトリメトキシシラン等が好適に使用される。
アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートのごときアルミニウム系カップリング剤: クロム系カップリング剤; 有機リン酸系カップリング剤も適宜使用可能である。
針管2 の構成材料(金属) とシリコーン系高分子との両方に対して親和性を有するシランカップリング剤等のプライマーは、通常、水、適当な有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒に溶解し、これを処理溶液として、針管2表面に塗布・乾燥することにより、前処理が行われる。有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又は当該アルコールと水との混合溶媒や、ベンゼン、トルエン、キシレン等が好ましく用いられる。当該処理溶液中のプライマー濃度としては、比較的希薄溶液が用いられ、0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
コーティング(層)の厚さは、経時変化等に応じて任意に採用できるものであるが、通常、0.1〜200μm、好ましくは0.1〜50μm、1から10μmである。
図1、図2、図3は、穿刺時の抵抗が低いことが望まれる採血針1の一例を示したもので、採血針1は、針管露出部外面2.11、並びに針管露出部内面2.12から針管植設部内面2.22にわたって、人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子をコーティングし、針管植設部外面2.21は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングするのが好ましい。
シリコーン系高分子を針管2の外表面全域にコーティングすると、針管2外面と針基3内面の接着が困難になるため、針管2外面と針基3内面の接着(触)部分(針管植設部外面2.21)は、シリコーン系高分子をコーティングすることなく、針基2との接着を阻害しない人体に偽害性のない高分子のみをコーティングするのが良い。
針管露出部外面2.11は、穿刺時の抵抗を下げるため(潤滑性を向上させるため)少なくともシリコーン系高分子をコーティングするのがよい。
採血針1は、針管2の被コーティング対象部位に、表1に示すように、人体に偽害性のない高分子、シリコーン系高分子をコーティングするのが好ましい。
なお表1(表2から表5も同じ)に記載の各記号は、それぞれ、「◎」はコーティング必須、「○」は、コーティングしたほうがベター、「×」はコーティング不適を意味する。
シリコーン系高分子を直接コーティングしてもよいが、直接コーティングするよりは、人体に偽害性のない高分子をコーティングした後に、シリコーン系高分子をコーティングしたほうが、結果的にシリコーン系高分子のコーティング量を増加させることができるので、好ましい。
例えば、所定量Aを一度コーティングし、さらにその上からさらに所定量AまたはA´をもう一度(回)以上コーティングするのが好ましい。
詳細は、後述の実施例で説明する。
図4、図5は、本発明の医療用針[皮下血管用アクセス針11]の第1の実施例を示す概略図と断面図である。
本発明の皮下血管用アクセス針は、AVF針の他に、「ダルニードル」(登録商標;二プロ株式会社)(エッジを鈍く丸みを帯びた形状に加工した内筒針で、ボタンホール穿刺に使用される針)(二プロ社製)と称される、これらと同等の使用目的、機能を有するその他の医療用針等も含む。
皮下血管用アクセス針11は、前記採血針1のように、穿刺(刺通)抵抗の低下(潤滑性の向上)よりは、むしろ皮下血管のアクセスポートへの固定性の向上(穿刺部からの抜けにくさ)が求められる。
針管植設部外面2.21は、前記段落[0014]で説明したように、何もコーティングしなくてもよいが、人体に偽害性のない高分子をコーティングするのが好ましい。
針管露出部外面2.11をシリコーン系高分子でコーティングすると、潤滑性が良くなり穿刺時の抵抗が少なくなるが、針管2が穿刺部(皮下血管のアクセスポート)より抜けやすくなるため、針管2の抜け防止(潤滑性、滑り性を抑えて、摩擦抵抗を大きく)するためには、針管露出部外面2.11は、人体に偽害性のない高分子のみコーティングするのが好ましい。
皮下血管用アクセス針11は、表2のように、人体に偽害性のない高分子とシリコーンを、針管2の被コーティング対象部位にコーティングするのが好ましい。
皮下血管用アクセス針21は、(針管)内管2Iと(針管)外管2Oの二重管(ダブルルーメン)構造である。
このような二重管(ダブルルーメン)構造の皮下血管用アクセス針21では、(針管)外管2Oの役割は、図4、図5の皮下血管用アクセス針11の針管2と同じであるが、(針管)内管2Iの役割は、単に血液の流路であるから、(針管)内管2Iには、潤滑性の性能は要求されておらず、抗血栓性の性能のみ要求されている。
このため、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子のコーティングは、以下のように行うのが好ましい。
内管2Iは、図4の皮下血管用アクセス針11のように針管植設部がある場合(内管2Iを、図4のように針基3に植設する場合)は、表4のように針管露出部外面2.11、並びに針管露出部内面2.12から針管植設部内面2.22にわたって、人体に偽害性のない高分子及び/又はシリコーン系高分子をコーティングし、針管植設部外面2.21は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングするのが好ましい。
針管植設部がない場合(内管2Iを、図4のように針基3に植設せず、例えば外管2O基部等の内側に、例えば複数の連結片等を介して固定し、外管2Oのみを図4のように針基3に植設している場合)は、表5のように内管2Iの内面及び外面の全領域にわたって、シリコーン系高分子、より好ましくは、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするのが好ましい。
人体に偽害性のない高分子(プライマー)は、エポキシ系シランカップリング剤(KBM403:信越化学製)を使用した。
シリコーン系高分子は、KF−8013(シリコーン分50%のトルエン溶液:信越化学製)を使用した。
〈1〉エポキシ系シランカップリング剤(KBM403:信越化学製)1.0gをトルエン60mlに溶解し、1.0質量%溶液を調整した。
針基3に植設する前の針管2基部(長さ25mm)を、前記プライマーの1.0質量%溶液に0.5秒間浸漬した。引き上げて、エアーブロー後(0.2MP、1秒)、250°Cで、1分間乾燥させた。
〈2〉前記工程〈1〉を繰り返し、二回目のプライマーコーティングを行った。
〈3〉針管2を図1のように針基3に植設して、採血針1を組み立てた。
〈4〉KF-8013(シリコーン系高分子)5gを、n-へプタンーイソプロピルアルコール混合液(7:3)45mlに溶解し、5質量%溶液を調整した。
針基3に植設する前の針管2基部(長さ25mm)を、前記シリコーン溶液5質量%に0.5秒間浸漬した。引き上げて、エアーブロー後(0.2MP、1秒)(150°C、1分間)で乾燥させた。
針管2内面について測定ポイントを図7 のように設定した。(符号)1から10の各測定ポイントにおいてX線分析装置(EDX キーエンス社製)にて、Si、C、O、Fe、Ni、Cr、Mnの7つの元素を定量し、針管2内面にコーティングされたSi質量%を計測した。
なお、測定ポイント6と7については、Siが計測される境界の針基3側と針管2先側とした。測定ポイント1から6は、針管植設部2.2、測定ポイント7から10は、針管露出部2.1である。
これに対して一回のみプライマーコーティングしたもの(P1)は、測定ポイント2から6においてSiが、2質量%以下であった。
さらに、針管2基部M[測定ポイント1から5:(針管2の接続長は20mm)]の平均Si量(質量%)は、
SUS無垢(プライマー無コーティグ)内面で、1.4質量%、
P1(プライマー一回コーティング)内面で、1.76質量%、
P2(プライマー二回コーティング)内面で、3.0質量%で、P2(プライマーを二回コーティング)のほうが、平均Si量が多かった。
以上より、プライマーを二回コーティングしたほうが、プライマーの表面に、さらにシリコーン系高分子をコーティングする場合、シリコーン系高分子のコーティング量をより多くすることができることが確認できた。
本試験では内面にプライマーを一回コーティングと二回コーティングした場合の採血針1を使用して、400ml採血を行い、血液抗凝固性について、内面観察した。
Si量測定方法に法り、針基3から針管2の先までの内面10点(測定ポイント1で10回)をSEMを使用して観察した。
P1(プライマーを一回コーティング)とP2(プライマーを二回コーティング)をそれぞれ、n=10順備し、400mlバッグにて市販の自動採血機(川澄化学製)を用いて採血を行い、抜針後の採血針を速やかに細胞固定後SEM試料とした。
測定ポイント1で、血小板付着の有無を、観察した。
2 針管
2M 基部(針管)
2.1 針管露出部
2.11 針管露出部外面
2.12 針管露出部内面
2.2 針管植設部
2.21 針管植設部外面
2.22 針管植設部内面
3 針基
5 針キャップ
6 翼
11、21 医療用針(皮下血管用アクセス針)
2I (針管)内管
2O (針管)外管
PM プライマー(人体に偽害性のない高分子)
SI シルコーン系高分子
Claims (7)
- 医療用針(1)が採血針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記針管露出部外面(2.11)及び前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管(2)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子でコーティングし、
当該針管(2)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記針管露出部外面(2.11)、前記針管露出部内面(2.12)
及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、
前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、ことを特徴とする医療用針(1)。 - 医療用針(11)が皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管(2)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該針管(2)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記針管露出部内面(2.12)及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、
前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、
ことを特徴とする医療用針(11)。 - 医療用針(21)が二重管構造を有する皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記金属製の針管(2)は、外管(2O)と内管(2I)を有し、
前記外管(2O)は、前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記外管(2O)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該外管(2O)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記内管(2I)は、前記針管露出部外面(2.11)並びに前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記内管(2I)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、当該内管(2I)を、血管に穿刺したときに、当該内管(2I)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記外管(2O)の針管露出部内面(2.12)及び前記針管植設部内面(2.22)、並びに
前記内管(2I)の前記針管露出部外面(2.11)、前記針管露出部内面(2.12)、及び前記針管植設部内面(2.22)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、ことを特徴とする医療用針(21)。 - 医療用針(21)が二重管構造を有する皮下血管用アクセス針であり、
金属製の針管(2)の基部(2M)を、針基(3)に植設し、
前記針管(2)は、前記針基(3)に植設していない針管露出部(2.1)と、前記針基(3)に植設した針管植設部(2.2)とを有し、
前記金属製の針管(2)は、外管(2O)と内管(2I)を有し、
前記外管(2O)は、前記針管露出部外面(2.11)に人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管露出部内面(2.12)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記針管植設部外面(2.21)は、人体に偽害性のない高分子のみをコーティングし、
前記針管植設部内面(2.22)に、人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記外管(2O)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子でコーティングし、
当該外管(2O)を、血管に穿刺したときに、当該針管(2)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記内管(2I)は、前記針管露出部外面(2.11)並びに前記針管露出部内面(2.12)に、それぞれ人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングし、
前記内管(2I)を構成する金属材料の実質的に血液と接触する全ての領域を、前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子でコーティングし、当該内管(2I)を、血管に穿刺したときに、当該内管(2I)を構成する金属材料が、直接、血液と接触しないように形成し、
前記外管(2O)の前記針管露出部内面(2.12)、及び前記針管植設部内面(2.22)、並びに
前記内管(2I)の前記針管露出部外面(2.11)、及び前記針管露出部内面(2.12)に、
前記人体に偽害性のない高分子及びシリコーン系高分子をコーティングするに際し、前記人体に偽害性のない高分子を複数回に分けて、コーティングし、さらに、当該人体に偽害性のない高分子に前記シリコーン系高分子をコーティングした、ことを特徴とする医療用針(21)。 - 前記人体に偽害性のない高分子は、少なくとも血液抗凝固性を有し、潤滑性の低い高分子であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)。
- 前記人体に偽害性のない高分子は、前記針管(2)と前記シリコーン系高分子との両方に対して親和性を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)。
- 前記シリコーン系高分子は、シリコーン系高分子、構造上シリコーンユニットを含む高分子またはシリコーン系高分子を添加させた高分子の中から選ばれる高分子で、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンや変性シリコーン、シリコーン変性樹脂、これらの群から選ばれる少なくとも一つ、または二つ以上の混合物であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医療用針(1、11、21)。』
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