JP5408993B2 - 白金族元素の回収方法 - Google Patents
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Description
それらを構成する高融点金属(例えば、ルテニウム(Ru)などの白金族元素などを含む)及びその合金からなる薄膜材料の需要が急激に増加している。半導体をはじめ、様々な産業分野では、特に、白金族元素などの貴金属の薄膜が利用されており、基材表面に薄膜を形成する技術としてスパッタリングが用いられている。スパッタリング技術では、通常、真空チャンバー内に成膜されるべき基材(基板)と薄膜としてつけたい金属(ターゲット材)とを設置し、高電圧をかけてイオン化させた希ガス元素(普通、アルゴン(Ar)を使用)や窒素(普通、空気由来)を該ターゲット材に衝突させる。するとターゲット表面の原子がはじき飛ばされ、基板に到達して製膜することが出来る。
最近では、高品質の薄膜が要求される半導体・液晶・プラズマディスプレイ・光ディスク用の薄膜を製造する手法として広く利用されており、用途に応じて、あらゆる形状、寸法に対応した高純度スパッタリングターゲット材が提供されている。かくして、薄膜材料形成用ターゲット材の使用量が急激に増加している。
また、電子ビーム(EB)溶解により高真空中において再溶解精錬する技術が提案されてい
るが、高融点金属及びその合金からなるターゲット材では、コストが高いことに加え、EB溶解によって合金組成にずれが生じることとなり、さらには溶解したインゴットを加工することも困難であり、産業的に適用ができない。
白金族元素のうち、例えば、ルテニウム(Ru)板などは硬くて脆く、且つ難溶性で、酸に不溶であること、高融点の金属材料であることなどから、Ruスクラップから経済的に許容されるレベルで高純度Ru粉末を得ることは困難である。
本発明は、ターゲット中に配合される成分元素を互いに分離したり、ターゲット使用や再生加工中に必然的に混入する不純物を取り除いて、貴重な金属元素である白金族元素を経済的な手法で、高純度な金属粉末として回収・再生することにある。
かくして、本発明の目的は、スパッタリング を行った後の高純度廃却ターゲットを出
発原料とし、高純度かつ組織微細均一の粉末原料を作製することにある。また、本発明は、得られた金属粉末を原料として用いてターゲット材を安価に製造する、すなわちリサイクルすることが可能な粉末原料を用いたターゲット材の製造方法を提供することである。
〔1〕白金族元素を含む廃材を溶融塩浴中で塩素化し、回収用金属の塩化物を形成し、次に該得られた金属塩化物を還元処理に付して高純度金属粉末を得ることを特徴とする白金族元素金属粉末製造法。
〔2〕廃材がスパッタリングターゲット廃材であることを特徴とする上記〔1〕に記載の製造法。
〔3〕白金族元素が、ルテニウムであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔4〕白金族元素が、パラジウムであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔5〕白金族元素が、ロジウムであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔6〕白金族元素が、オスミウムであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔7〕白金族元素が、イリジウムであることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔8〕白金族元素が、白金であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の製造法。
〔9〕溶融塩が、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載の製造法。
〔10〕塩素化が、塩素ガスを溶融塩浴中に吹き込むことにより行うものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一に記載の製造法。
〔11〕塩素化の反応系の温度が、300〜1000℃、好ましくは500〜800℃、より好ましくは600〜715℃の温度範囲であることを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一に記載の
製造法。
〔12〕該金属塩化物を含む反応系に、還元剤をガス状態で吹き込むことことを特徴とする上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一に記載の製造法。
〔13〕還元剤が、水素、メタノール、水性ガス、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム及びヒドラジンからなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔12〕に記載の製造法。
〔14〕白金族元素を含む廃材を溶融塩浴中で塩素化し、回収用金属の塩化物を形成し、次に該得られた金属塩化物を還元処理に付して高純度金属粉末を得ること、そして、当該得られた金属粉末をホットプレス又はHIPに付してスパッタリングターゲットを製造するこ
とを特徴とする白金族元素金属含有スパッタリングターゲット製造法。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明の白金族元素金属粉末の製造法は、白金族元素を含む廃材(スクラップ)を溶融塩中、特には溶融塩浴中で塩素化し、回収対象金属の塩化物を形成し、次に得られた該金属塩化物を還元処理に付して高純度金属粉末を得ることを特徴とするものである。本発明の技術に従えば、廃棄物から有用物を経済的に有利な手法で且つ簡便で容易に実施可能で
、シンプルな装置構成、製造工程で得るという再生技術が提供されることとなる。
のがあり、該Ru-Cr合金中のCrはコスト低下のための希釈材として添加されているもので
ある。量的には純Ruのものが多くある。こうしたターゲット材は焼結法によって作製されいるが、それから再利用可能な粉末を得ることが求められている。ルテニウムの場合、特には、純度99.5%以上のものを得ることが求められている。
Ru及びCrの塩素化と塩化物の還元について熱力学的に検討した結果を図3に示す。図3Aは塩素化、そして図3Bは還元における標準生成自由エネルギーを示している。また、図4には水溶液中でのRu及びCrの挙動をまとめたものである。すなわち、図4Aは25℃でのルテニウム-水系の電位-pH平衡図(電位-pH平衡ダイアグラム)を示し、図4Bは25℃
でのクロム-水系の電位-pH平衡図を示す。
り、この温度以下で塩素と直接反応すると考えられた。一方、塩素ガスと気相中で反応させれば、生成した塩化ルテニウム(多分RuCl3)は蒸気圧が高いと考えられるので、蒸発し
て捕集が困難になると推定された。こうした中、溶融塩中で反応させれば、RuCl3は溶融
塩に溶けて安定化し、捕集が容易になると考えた。もしCrが含まれていれば、Ruと一緒に総て塩素化され、CrC13となる。
て容易であり、多くの場合水素還元が用いられる。しかし水素は高価とは言えないものの、取り扱いに注意を要し、トータルとして必ずしも安価とは言えない。そこで更に安価かつ簡便なものとしてメタノール(CH30H)を選定した。メタノールは高温では
CH30H = CO + 2H2
の分解反応で水素を発生し、これを還元に用いることが出来る。この還元工程も溶融塩中で行えば、Ruは還元されて沈澱し、一方CrC13はCrC12までしか還元されないので、Ruだけを回収することが出来る。溶融塩中に残るCrC12は活性なアルカリ金属等を用いて還元す
れば固体として回収出来る。Ruの抜けた溶融塩は再び塩素化工程に戻して再利用できる。
融点を示すものを選択できる。そして、塩を構成するカチオンが安定なものを選択するのが好ましい。溶融塩としては、例えば、ルテニウム-クロム(Ru-Cr)合金ターゲット材を被処理材とした場合、RuClXやCrClyをよく溶解するもの、RuClXやCrClyと高融点化合物を形成しないもの(カチオン半径の小さな塩が好適である)が好ましい。本発明において、溶融塩浴としては、例えば、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を溶融した溶融塩を溶融塩浴の溶媒として使用するのが好ましい。
トロンチウム、バリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、例えば、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等が使用できる。
などが含まれているものなどが挙げられる。
もの、LiCl、NaCl及びCsClを溶融させたもの、LiCl、KCl及びCsClを溶融させたものなど
が挙げられ、それらから適宜選択して使用することができる。該溶融塩として、特に好ましいものとしては、LiCl-NaCl系及びLiCl系が挙げられる。例えば、純Ruスパッタリング
ターゲット材やRu-Cr合金スパッタリングターゲット材を処理する場合、LiCl-NaClやLiCl-KClを好適に使用できる。
であり、LiCl-KCl系では、例えば、LiCl:KCl=50mol%〜70mol%程度:30mol%〜50mol%程
度、好ましくは58mol%〜62mol%程度:38mol%〜42mol%程度であり、NaCl-KCl系では、例えば、NaCl:KCl=40mol%〜60mol%程度:40mol%〜60mol%程度、好ましくは48mol%〜 52mol%程度:48mol%〜52mol%程度であり、LiCl-NaCl-KCl系では、例えば、LiCl:NaCl:KCl=45mol%〜60mol%程度:5mol%〜20mol%程度:25mol%〜35mol%程度、好ましくは53mol%〜57mol%程度:13mol%〜17mol%程度:28mol%〜32mol%程度であり、LiCl-NaCl-CsCl系では、例え
ば、LiCl:NaCl:CsCl=45mol%〜55mol%程度:5mol%〜15mol%程度:35mol%〜45mol%程度
、好ましくは48mol%〜52mol%程度:8mol%〜12mol%程度:38mol%〜42mol%程度であり、LiCl-KCl-CsCl系では、例えば、LiCl:KCl:CsCl=45mol%〜55mol%程度:25mol%〜35mol%程
度:15mol%〜25mol%程度、好ましくは48mol%〜52mol%程度:28mol%〜32mol%程度:18mol%〜22mol%程度であり、それらは好ましいものとして挙げられる。
溶融塩用物質は、主として粉末状、粒状又はペレット状で使用され、加熱溶融させて塩浴とするのが、処理が行いやすく好適である。溶融塩形成用物質の加熱温度としては、所定組成のものが溶融した状態でそれを安定して保持できる温度であればよく、例えば、約300℃〜約1000℃、好ましくは約450℃〜約800℃、より好ましくは約500℃〜約715℃である
。当該加熱温度は、所望の結果が得られる限り特に限定されず、適宜適切なものとしてよい。
本発明では、当該溶融塩を溶媒(又は媒質)とし、その中に廃材を投入し、塩素化を行うことにより、所望の貴金属の塩化物を得ることができる。例えば、純Ruスパッタリングターゲット材を処理した場合、所望の金属塩化物としては、RuClXが挙げられ、例えば、Ru-Crスパッタリングターゲット材を処理した場合、金属塩化物としては、RuClXと共にCrClyが挙げられ、所望の金属塩化物としては、RuClXが挙げられる。
は約450℃〜約800℃、より好ましくは約500℃〜約715℃の温度範囲で行うことができる。当該温度は、所望の結果が得られる限り特に限定されず、適宜適切なものとしてよい。ルテニウムの場合、塩化ルテニウム、例えば、RuCl3の融点は>500℃で、昇華点は常圧で約715℃であることから、該融点以上で且つ該昇華点以下の温度とすることが好適で、溶融
塩中での塩素化処理は、例えば、約500℃〜約715℃、好ましくは約550℃〜約710℃、より好ましくは約600℃〜約705℃の温度範囲で行うことができる。温度の維持は、加熱された気体を系内導入することにより維持されるものであってもよい。
本塩素化処理時間は、系内に導入する塩素ガスの流量に応じて、適宜、適切な値を選択することができる。本塩素化処理は、通常は、常圧下で行われるが、適宜、加圧下あるいは減圧下で行っても良い。
うちの少なくとも一つが挙げられる。典型的な場合、該還元処理はメタノール含有アルゴンなどを系内に吹き込むことで実施できる。
上記溶融塩中での塩素化処理で得られた生成物を含有する溶融塩混合物は、一旦、次の工程の還元処理前に不溶性のものを除去するために、ガラスフィルターなどのろ過フィルター又はろ過装置を通すことが好適である。ろ過装置としては、当該分野で知られたものの中から適宜適したものを選択してそれを利用してよい。
約500℃〜約715℃、より好ましくは約500℃〜約700℃、さらに好ましくは約550℃〜約650℃の温度範囲で行うことができる。当該温度は、所望の結果が得られる限り特に限定されず、適宜適切なものとしてよい。上記塩素化処理のところで説明した各元素の塩化物の融点や沸点を勘案して、該融点より高い温度で且つ該沸点より低い温度で処理するのが好ましい。温度の維持は、加熱された気体を系内導入することにより維持されるものであってもよい。本還元処理時間としては、所望の金属塩化物が十分に還元されてその金属微粒子又は金属粉末を形成するように設定できるが、適宜、その塩化物の一部が金属になるような範囲であることも可能であり、これに限定されるわけではないが、例えば、約0.1時間
〜約24時間、好ましくは約0.5時間〜約12時間、さらに好ましくは約0.7時間〜約6時間、
もっと好ましくは約0.8時間〜約3.0時間の処理時間、具体的な処理時間としては、例えば、約2.0時間の処理時間で行うことができる。本還元処理時間は、系内に導入する還元剤
、例えば、メタノールガスの流量に応じて、適宜、適切な値を選択することができる。本還元処理は、通常は、常圧下で行われるが、適宜、加圧下あるいは減圧下で行っても良い。
、メタノール、水性ガス及び塩化水素のうちの少なくとも一つであってよい。
本還元処理で析出する金属は、ろ過処理を施すことより、金属粉末として回収される。所望の金属粉末を除去した残留混合物は、さらに、必要に応じて、残留する有用金属を取得するために処理されることができる。本発明の塩素化工程及び/又は還元工程は、バッチ式、半バッチ式、あるいは連続式で運用されることができる。
本発明の技術では、白金族元素を含む廃材を好適に処理できる。当該廃材としては、スパッタリングターゲット廃材が包含され、例えば、ルテニウム(Ru)又はRu合金を含有するスパッタリングターゲット廃材、パラジウム(Pd)又はPd合金を含有するスパッタリングターゲット廃材、ロジウム(Rh)又はRh合金を含有するスパッタリングターゲット廃材、オスミウム(Os)又はOs合金を含有するスパッタリングターゲット廃材、イリジウム(Ir)又はIr合金を含有するスパッタリングターゲット廃材、白金(Pt)又はPt合金を含有するスパッタリングターゲット廃材が挙げられる。代表的なスパッタリングターゲット材としては、純Ru、Ru-Cr合金、純Pt、Pt-Rh合金、Pt-Pd合金、Pt-Ir合金、Pt-Co合金、Pt-Co-Cr合金、Pt-Ni合金、純Pd、純Rh、純Os、純Irなどが包含され、純金属のものは3N〜8Nのものであってよい。
などを用いた粉砕を挙げることができる。鉄系不純物が許容される場合、または後工程で実質的に除去可能な場合は、これらの装置・器具は慣用の超硬質材料を用いたものでよいが、例えば、Ruの特性などの白金族元素の特性に影響を与えないもの及び/又は硬度が大きい材質、例えば、タングステン(W)またはW化合物からなる装置・器具、あるいは、Wま
たはW化合物で打撃面を被覆した装置・器具などを好適に用いることができる。W化合物の例としては炭化タングステン(WC)が挙げられる。コストおよび炭素その他の混入がないという点で純W製装置・器具が最も好ましい。もっとも、WCなどの粉砕器具に由来する炭素
は、溶融塩中での処理で除去可能である。粗粉砕は、原料とする廃材の大きさによっては数段階に分けて粗粉砕を繰り返しても良い。通常は概ね0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1mmの粗粒となる程度まで粉砕を行なう。
後の廃却ターゲットをロールクラッシャで平均粒径1mmに解砕して、粗粒とする。粉砕中
における金属不純物元素の混入を防ぐために、クラッシャ表面に超硬質材料コーティングしたものを使用する。得られた粉砕物を本発明の高純度Ru粉末製造プロセスで処理しせしめることができる。
本発明の方法により塩素化並びに還元して作製した金属粉末原料では、高純度化、粒度調整を図ることができ、例えばターゲット材として用いる場合にはスパッタリング時のスプラッシュ等の問題に対し、非常に有効なものとなる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
ターの下部には石英製の液溜めが取り付けられており、ガスの送気を止めて逆にフィルター上部を加圧すると溶融塩はフィルターを通過して下部の液溜めに捕集される。溶融塩の凝固後に接続している細い石英管をバーナーで封じ切れば、塩を石英管に封入した状態で保管することが出来る。
とした。
ところで、Ru試料の表面にはRuO2の極めて薄い皮膜があり、単にCl2ガスを流しただけ
では塩素化は進行し難い。そこで塩素化の初期段階のみRuO2の還元のためArガスにメタノールを含ませる。この様にすると、最初は無色透明だった溶融塩はCl2ガス流入後、RuCl3の生成に伴って直ちに暗赤色に変わり、以後塩素化の進行と共にその色を増す。そのため、溶融塩中の様子の観察は困難であるが、Ru試料と流したCl2ガスの化学量論比、および
ガスの出口に設けた塩素吸収剤の発熱から反応の終点を知ることが出来る。
機会が減少したためである。尚、Cl2の残留は塩素吸収管の発熱によって判定できる。
最終的に180分間の塩素化でのRu粉末の反応率は約80%であった。この場合、Ru粉末の
装入量がかなり多く、生成したRuCl3のために塩の体積がかなり増加(10〜20%)してい
た。RuがRuCl3に変換されると質量で約2倍になるので、上記の条件はやや極端で、実際にはもっと低濃度の方が良さそうである。ここでは能力を見るために敢えて高濃度で行った。塩素化の最終段階では総てを反応させずに残し、次のステップに進むようにする。
を液溜めに落下させ、凝固後に封じ切り、RuCl3を含む塩を石英管中で保管した。
次に還元である。
洗浄し、封じ切った液溜めを新しく取り付けた石英製反応管にRuCl3を含む塩を装入し
、フィルターの下部からArガスを流しながら塩を加熱溶融し、しかる後に石英反応管上部から差し込んだ石英管を通じてメタノールを含んだArガスを流す。
当初は下部より流すArガスにメタノールを含ませたが、この場合、フィルター上面で溶融塩がガスと接触する場所でRuの析出が起こり、フィルターを閉塞してしまうためにフィルターから遠い場所で還元させるためにこの様に変更したものである。
失し、再び透明になる。この様にして還元反応の終点を確認した後、再びArガスの流れる方向を逆転させ、溶融塩を液溜めに落下させる。フィルター上部に残ったRu粉末は水洗して機械的に掻き出す。得られたRu粉末は凝集して固まりになっていることが多いので、これを乳鉢等で粉砕する操作を行う。
得られたRu粉末の粒度は数〜数十μmであり、純度は最高99.96〜99.98%程度と、要求
されるスペックを十分に満たすものであった。Ru-18Cr合金ターゲット円板スクラップを
塩素化並びに還元処理して得られた生成物の金属組織の顕微鏡写真を図8に示す。図2に、本発明に従ってRu又はRu合金を含有する廃却スパッタリングターゲットを処理する場合の溶融塩中での塩素化及びその後の還元反応を実施するために適した反応装置の全体の構成を示す。
、Ru-10Cr>Ru>Ru-60Crというものであった。本切削で少量の切子を得た。純Ruターゲット円板を旋盤で研削したもの(切子)の金属組織を写した写真を図6に示す。Ru-40Cr合
金ターゲット円板を旋盤で研削したもの(切子)の金属組織を写した写真を図7に示す。
切子を用いて上記塩素化処理を行った(Ru試料(a))。600℃、LiCl-NaCl塩中で塩素化
したところ、約30%塩素化していた。本得られた塩化物をH2還元したところ、約4%(原
料比)のRuを得た。
同様に、切削切子を用いて塩素化処理を行った(Ru試料(b))。600℃、LiCl-NaCl塩中
で塩素化したところ、約65%塩素化していた。本得られた塩化物をH2還元したところ、約17%(原料比)のRuを得た。
水溶液のNaHSO3還元でもRuを得た。図9には、水溶液中でRuCl3を還元して得られたRu
生成物の金属組織の顕微鏡写真が示してある。
次に、フィルター面積を大きくした図1に示したのと同様の反応用装置を作製して、以下の実験で使用した。
上記と同様に、切削切子を用いて塩素化処理を行った(Ru-40Cr試料(d))。600℃、LiCl-NaCl塩中で塩素化したところ、約46%塩素化していた。
さらに、別の切削切子を用いて塩素化処理を行った(Ru-40Cr試料(e))。700℃、LiCl-NaCl塩中で塩素化したところ、約65%塩素化していた。
3点曲げの要領で応力印加したところ、ほぼ真っ二つにおれた。また、更に折ることもできた。Ru-10Cr合金ターゲット円板の破砕試験の状況を示す写真を図5に示す。図5Bは
、図5Aの部分拡大写真である。小さい破片はタガネでも破砕を行うことが可能であった。クラシャーを使用することで、破砕できると考えられた。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (13)
- 白金族元素を含む廃材を溶融塩浴中で塩素化し、回収用金属の塩化物を形成し、次に該得られた金属塩化物を含有する溶融状態の溶融塩混合物を還元処理に付して溶融している溶融塩中で回収用金属塩化物を還元し高純度金属粉末を得ることを特徴とする白金族元素金属粉末製造法。
- 廃材がスパッタリングターゲット廃材であることを特徴とする請求項1記載の製造法。
- 白金族元素が、ルテニウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 白金族元素が、パラジウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 白金族元素が、ロジウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 白金族元素が、オスミウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 白金族元素が、イリジウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 白金族元素が、白金あることを特徴とする請求項1又は2記載の製造法。
- 溶融塩が、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一記載の製造法。
- 塩素化が、塩素ガスを溶融塩浴中に吹き込むことにより行うものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一記載の製造法。
- 塩素化の反応系の温度が、300〜1000℃、好ましくは500〜800℃、より好ましくは600〜715℃の温度範囲であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一記載の製造法。
- 該金属塩化物を含む溶融している溶融塩混合物中に、還元剤をガス状態で吹き込むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一記載の製造法。
- 還元剤が、水素、メタノール、水性ガス、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム及びヒドラジンからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項12に記載の製造法。
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