JP5407987B2 - スラブの縦割れ検知方法 - Google Patents

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Description

本発明は、連続鋳造によって鋳造されるスラブの縦割れの発生を鋳造中に検知する、スラブの縦割れ検知方法に関するものである。
連続鋳造プロセスでは、鋳型(モールド)に溶鋼を注入し所定断面に成形した後、それを鋳型下方より連続的に引き抜いて鋳片(スラブ)が製造されている。しかし、溶鋼の初期凝固状況により、製造される鋳片の品質、連続鋳造の操業が大きく左右される。
例えば、鋳片の品質については、潤滑剤として用いられるパウダーの不均一流入等により、初期凝固中に鋳型内に局所的な抜熱不良の部分があると、その部分だけ凝固殻の厚みが薄くなり、この薄い部分が縦割れの核となって、2次冷却帯において成長し、最終的に鋳片表面の長手方向(鋳込み方向)に縦割れが発生する。
縦割れが発生してしまった鋳片は品質不良として手入れを必要とするため、手入れに要する費用の増大、下工程である圧延工程での操業計画の遅延等の事態を招き、生産性が著しく妨げられる。
しかし鋳造中に縦割れの発生をいち早く知ることができれば、鋳型内の溶鋼攪拌を促進して凝固殻の不均一を解消し、縦割れの核の生成を防いだり、2次冷却帯を緩冷却にして縦割れの核の成長を抑制したり、または鋳片を熱間のうちに表面溶削できるように重量保証して鋳片の切り合わせに反映させるなどといった処置を施すことにより、縦割れの被害を最小限に押さえることが可能である。
これまでの鋳造中の縦割れ検知技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。この技術は、鋳型温度を測定すると共に、その測定値を基に移動平均温度を演算した後、この移動平均温度より低い前記測定鋳型温度とその移動平均温度からその温度差を求める演算を鋳造方向の温度測定素子別に行い、該鋳造方向上流側の温度測定素子で測定した鋳型温度を基に演算した前記温度差と、該上流側温度測定素子と下流側温度測定素子の設置距離と鋳片の引抜速度から求めた時間後に該下流側温度測定素子で測定した鋳型温度を基に求めた前記温度差の積算値を演算し、この積算値が所定値以上になったときに鋳片の縦割れの核発生として検知するものである。
特開2002−236119号公報
しかしながら、上記した特許文献1に開示された技術では、モールドパウダーの流入や溶鋼の流動の際にも温度降下が生じるため、誤検知が多く発生するという問題があった(後述する実施例を参照)。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、鋳造中にスラブの縦割れを正確に検知することができる、スラブの縦割れ検知方法を提供することを課題とする。
上記課題は次の発明により解決される。
[1]連続鋳造によって鋳造されるスラブの縦割れの発生を鋳造中に検知する、スラブの縦割れ検知方法であって、
鋳造中のモールド温度をモールド幅方向に複数配置した熱電対で測定する温度測定ステップと、
測定した温度とその温度時系列データの移動平均値との偏差を導出する温度標準化ステップと、
求めた偏差と前記幅方向の左右両隣の偏差との二乗平均値を算出する二乗平均値算出ステップと、
モールド内上下2段の幅方向同位置における前記二乗平均値を積算して評価値とする評価値算出ステップと、
前記評価値が予め決めた閾値以上であれば縦割れありと判定する判定ステップと、
を有することを特徴とするスラブの縦割れ検知方法。
本発明によれば、対象とする測定点の温度とモールド幅方向との左右両隣の温度との偏差を考慮するようにしているので、鋳造中にモールドパウダーの流入や溶鋼の流動があっても正確にスラブの縦割れができ、これによりいち早く縦割れの被害を最小限に押さえる処置を施すことができる。
本発明に係るスラブの縦割れ検知方法の処理手順例を示す図である。 本発明に至った考え方を模式的に説明する図である。 縦割りが生じた際の移動平均値との偏差の幅方向分布を模式的に説明する図である。 評価値の算出を示す図である。 本発明を適用した実施例を示す図である。
図2は、本発明に至った考え方を模式的に説明する図である。図中、1はモールド、2は熱電対、および3は縦割れをそれぞれ表す。
モールド1の同じ高さ位置に、幅方向に亘って所定の間隔をおいて熱電対2を複数配置し、鋳込みの経過に伴って同じ時間タイミング毎に各熱電対でモールドの各温度を測定している様子を図2の上側で表している。モールド1に縦割れ3が生じた場合には、縦割れに近い熱電対(楕円で囲った)での測定温度がその他の熱電対での測定温度と比べて低くなる、図2の下側で示す「モールドの幅方向温度分布」が得られるという知見により、本発明を想到した。
図1は、本発明に係るスラブの縦割れ検知方法の処理手順例を示す図である。先ず、温度測定ステップ(Step01)では、鋳造中のモールド内各温度を図2で示したように複数配置した熱電対で、所定の測定タイミングで測定する。
なお、現在の測定温度とともに、次ステップでの測定温度の時系列データによる移動平均値を計算するために、それ以前の測定タイミング(m回前までの)における測定温度を記憶しておくものとする。mの好ましい回数は、20回から30回程度である。
また、本発明では、図2に示すような幅方向横一列の測定位置のみでなく、後述する図4に示すようなモールド内上下2段、すなわち幅方向横二列の測定位置としている。なお、より多段での測定位置を設定してもよい。
次に、温度標準化ステップ(Step02)では、測定した温度とその温度時系列データの移動平均値との偏差を導出することにより、各熱電対での温度データを標準化する。これは、熱電対ごとに絶対温度差が存在するため、熱電対ごとの差を無くすために行う処理である。
n(=1、2、・・・Nmax:熱電対の総数)番目の熱電対の現時刻0での温度T0(n)、および所定の時間間隔で測定したm回前までの温度時系列データ(T−1(n), T−2(n),・・・,T−m(n))を用いて、移動平均値Tma(n)は次の(1)式のように求めることができる。
そして、次の(2)式のように、現在の測定温度T0(n)と移動平均値Tma(n)との偏差ΔT(n)を求める。図3は、縦割りが生じた際の移動平均値との偏差の幅方向分布を模式的に説明する図である。例えば、縦割れ発生位置に最も近い位置にある熱電対をp番目の熱電対とすると、そこでの偏差ΔT(p)は、左右両隣の偏差ΔT(p -1)、ΔT(p +1)に比べ大きく変化することを表している。
次に、二乗平均値算出ステップ(Step03)では、求めた偏差ΔT(n)と幅方向左右両隣の偏差ΔT(n-1)、ΔT(n+1)との二乗平均値W(n)を次の(3)式のように求める。モールドパウダーの流入や溶鋼の流動があっても左右両隣の熱電対温度も同様の温度挙動を示すため、二乗平均値さらには次のステップで求める評価値が大きくならず閾値を超えないため、誤検知を発生させずに縦割れを検知することが可能である。
なお、この処理は、左右両隣を特定できない両端(n=1およびNmax)の2点を除く各点で行う。縦割れを確実に検知するために、幅方向に設置する熱電対の間隔としては50mm以下とすることが好ましい。
次に、評価値算出ステップ(Step04)では、モールド内上下2段の幅方向同位置における二乗平均値を積算して評価値とする。上下2段の熱電対温度の計測タイミングは、上下の熱電対の間隔を鋳造速度で割って算出された時間だけ、下段の熱電対温度の計測を遅らせる。
図4は、評価値の算出を示す図であり、上段および下段の二乗平均値をそれぞれWu(n)およびWd(n)とすると、評価値E(n)は次の(4)式で表せる。
そして、判定ステップ(Step05)では、求めた評価値E(n)が予め決めた閾値と比べて、評価値E(n)が閾値以上であれば縦割れあり(Step06)と判定し、それ以外であれば縦割れなし(Step07)と判定する。
図5は、本発明を適用した実施例を示す図である。モールド幅方向に44mmピッチに27個の熱電対を上下間隔250mmで上下2段に配列した場合の検知結果の一例を示すものである。
図5の(c)は、鋳造後に実測した縦割れの位置を示しており、(a)は従来方法(上下の二乗平均値の積算値を評価値としたもの)および(b)は本発明による検知結果を示している。モールドパウダーの流入や溶鋼の流動があったものの、本発明により検知した位置は実測と一致しているが、従来方法では誤検知した箇所が多数認められ、本発明の有効性が確認できた。
1 モールド
2 熱電対
3 縦割れ

Claims (1)

  1. 連続鋳造によって鋳造されるスラブの縦割れの発生を鋳造中に検知する、スラブの縦割れ検知方法であって、
    鋳造中のモールド温度をモールド幅方向に複数配置した熱電対で測定する温度測定ステップと、
    測定した温度とその温度時系列データの移動平均値との偏差を導出する温度標準化ステップと、
    求めた偏差と前記幅方向の左右両隣の偏差との二乗平均値を算出する二乗平均値算出ステップと、
    モールド内上下2段の幅方向同位置における前記二乗平均値を積算して評価値とする評価値算出ステップと、
    前記評価値が予め決めた閾値以上であれば縦割れありと判定する判定ステップと、
    を有することを特徴とするスラブの縦割れ検知方法。
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