以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に実施形態の電子打楽器の構造について説明するに際し、前後方向もしくは手前側及び奥側、あるいは左右(横)方向というときは、後述する電子打楽器1の演奏者側から見た前後方向もしくは手前側及び奥側、あるいは左右(横)方向を指すものとする。
図3及び図4は本発明の一実施形態の電子打楽器1を示す図であり、図3は電子打楽器1の平面図、図4(A) は電子打楽器1の側面図、図4(B) は後述するパッドの概略断面図である。電子打楽器1は、卓上型の電子楽器であり、概略平板形状に形成されたケース2に収容されている。ケース2の上面の奥側には、複数のパッドP1〜P12で構成された演奏操作部10が配置されており、手前側の角部にはパネル面31を備えた設定操作部30が配置されている。また、図4(A) に示すように、ケース2の後面には、電源接続用あるいは外部機器接続用の複数の端子を備えた端子部3が設けられている。
演奏操作部10は、ケース2の上面を覆うように配置されている。演奏操作部10は、外形が略長方形状で、演奏者側(手前側)から見た前後方向と左右方向に沿って格子状に区画されており、各区画にそれぞれ一つのパッドP1〜P12が配置されている。本実施形態では、演奏操作部10は、前後方向が4区画(4列)、左右方向が3区画(3列)に分割されており、合計12個のパッドP1〜P12が配置されている。
パッドP1〜P12のうち、奥側の横一列に配列された3個のパッドP1,P2,P3と、手前側の横一列に配列された3個のパッドP10,P11,P12はいずれも、図3に示すように、外形が横長の長方形状であり、かつ、図4(A) に示すように、打面Vが左右方向を軸方向とする円筒面状に隆起した立体形状を有している。6個のパッドP1〜P6はいずれも、図3に示すように、外形が略正方形状で、かつ、図4(A) に示すように、打面Vが平面形状を有している。
平面部のパッドP4〜P9は、それらの打面Vが演奏者側を向くようにケース2の手前側に向かって若干下降する傾斜状態で配置されている。そして、奥側3個のパッドP4〜P6は手前側のパッドP7〜P9よりも傾斜角度が大きくなり、奥側3個のパッドP4〜P5と手前側のパッドP7〜P9との間には段差が設けられている。これにより、演奏者がパッドの位置を視認し易くなるとともに、演奏操作性が向上する。パッドP1〜P3,P10〜12は、円筒面状に隆起した打面Vをスティックの腹部分で打撃する演奏操作(リムショット等)に適している。また、パッドP4〜P9は平面形状の打面Vをスティックの先端で打撃する演奏操作に適している。なお、パッドP1〜P12に対する演奏操作はスティックによる打撃に限らず、手など身体の一部で行う打撃でも良いし、ミュート奏法やチョーク奏法に対応して、打撃以外に手などで押さえる操作でもよい。
以下の説明で、12個のパッドP1〜P12を区別しない場合など、符号の「1〜12」は適宜省略する。パッドPの打面は、図4(B) に示すように、ゴムなどの弾性材料からなるシート状の表面材21で構成されている。隣接するパッドPの間には、格子状の溝部12が設けられており、これにより各パッドP1〜12が区画されている。また、表面材21の裏側には、ゴムなどからなる平板状の弾性部材25が配置されており、弾性部材25の下面には、補強板(パッドボディ)23の上に載置された接触センサ(シートスイッチ)22が設けられている。接触センサ22はシート状の感圧センサであり、演奏者による打面Vへの押さえ操作や、打撃位置を検出することができる。
また、接触センサ22を載置している補強板23の下面側には、パッドPの上面側から延びた表面材21の端辺21aが巻き込まれた状態で敷設されている。これにより、補強板23が演奏操作部10の下方に配置した基部24(ケース2の一部などで構成されている)上に表面材21の端辺21aを介して弾性的に支持されている。補強板23の下面側には、補強板23に対して面接触する小板状に形成された打撃センサ26が配置されている。打撃センサ26には、パッドPの打撃による振動を検出して電気信号を出力可能なピエゾ素子などが用いられている。打撃センサ26は、補強板23の下面にピエゾテープ(クッション材)26aで貼付されており、パッドPに対する打撃操作が行われた場合の打撃強さを検出することができる。
図3に示すように、設定操作部30のパネル面31には、カーソルスイッチや入力スイッチなどからなる各種操作キー32、ボリューム設定用の摘み33、液晶パネルからなる表示部34、いずれのパッドPが操作されたかを点灯表示するLED35などが配列されている。また、パネル面31の近傍には、演奏音などの各種音声を出力するためのスピーカが内蔵された音声出力部(図示せず)も配置されている。表示部34は、各種の設定操作を行うための操作画面を表示するものである。
図5は電子打楽器1のブロック図であり、この実施形態の電子打楽器1は、制御部を構成するCPU1a、ROM1b,RAM1c、タイマ1dを備えている。また、前記各パッドP1〜P12とこのパッドパッドP1〜P12における接触センサ22及び打撃センサ26からなる演奏操作子1e、前記各種操作キー32及び摘み33等からなる設定操作子1f、前記表示部34及びLED35からなる表示装置1g、音源1h、サウンドシステム1i、記憶装置1j、インターフェース1kを備えている。
記憶装置1jはフラッシュROMからなる記憶手段であり、後述のパッド設定データ(パッド設定情報)とドラムマップ(発音態様情報の組)を含むドラムキットのデータや、自動伴奏データ、ウェーブデータ(サンプリング波形データ)等が記憶される。インターフェース1kは前記の端子部3を介して接続される外部機器1mとの間でデータの授受を行うものである。この外部機器1mとしては、ドラムセットのドラムパッド、コントローラ、フットスイッチなど外部の演奏操作子、USBメモリあるいはMIDI機器等がある。
CPU1aはROM1bに格納されている制御プログラムに基づいてRAM1cのワーキングエリアを使用して全体の制御を行う。例えば、CPU1は、表示装置1gの表示部34の表示の制御を行うとともに、設定操作子1fの操作を検出し、設定操作子1fの操作イベントに応じた処理を行う。これにより、後述のドラムキットのデータの編集、ドラムキット内のパッド設定データの編集、ドラムマップの発音態様情報の設定、トリガーセットアップのデータの設定など、各種の設定処理に関する制御を行う。
また、CPU1は、演奏操作子1(パッドP1〜P12)の操作イベントにより発生するトリガ信号に基づいて、記憶装置1jに記憶されているドラムキットのデータを参照してMIDIノートメッセージ等からなる音源パラメータを生成し、音源1hに音源パラメータを出力する。これにより、音源1hはドラム音(ドラムボイス)や他の楽器の音(ノーマルボイス)、パターンデータによるパターン演奏あるいはウェーブデータによる波形音声等の各種の演奏音を発生する。なお、タイマ1dは、自動伴奏のタイミングやクリック音の発生タイミング等を規定する信号を発生する回路である。
なお、記憶装置1jは「パッド設定情報記憶手段」及び「発音態様マップ記憶手段」に相当し、CPU1aが制御プログラムを実行することで得られるパッド設定データの編集の機能が「パッド設定手段」に相当する。また、CPU1aの制御による機能と音源1hが「楽音発生手段」に相当する。
図6は実施形態の電子打楽器1における発音処理の概要を説明する図である。図において鍵盤の図で示すように、MIDIノートメッセージは音名に対応するノート番号(いわゆるキーコード)であり、MIDIチャンネルが10チャンネル(以下、「MIDIチャンネル」を「ch」とも書く。)の場合には、このノート番号はスネア、タム、ハイハット、…等のようにドラムの音色(種類)に対応している。このドラムの音色を「ドラムボイス」といい、10ch以外の他のchに対応する楽器の音色(種類)を「ノーマルボイス」という。また、これらを総称して「ボイス」という。また、以下の説明で「D1」等の音名と「38」等のキーコードを同等にノート番号として説明する。
いま、パッドP1に2つのドラムボイスが割り当てられているとする。パッドP1を叩くと、パッドP1に対応するトリガー信号により、このパッドP1に割り当てられた2つのノート番号(例えばD1/38とE1/40)が発生し、このノート番号に対応する音色と、この音色の発音態様を決める情報(発音態様情報)が後述のドラムマップから読み出され、音源に送られる。これにより、音源にて、例えばOakCustomのスネア音の音色とVivid 17のシンバル音のドラム音が発生する。この発生する音は、ドラムマップの発音態様情報(例えばボリューム、チューニング、パン等)により制御される。なお、ドラムボイス及びノーマルボイスの波形データは音源の図示しない波形メモリ等に記憶されている。
図1は実施形態の電子打楽器1における要部機能構成を示す図である。本体パッドP1〜P12の打撃により、打撃されたパッドPに対応するトリガー信号が得られる。5つの外部トリガー入力端子には、他のドラムセットの外部パッド、コントローラ、フットスイッチ等を接続することができ、これらの外部要素からもトリガー信号を入力することができる。なお、これらのパッドP1〜P12、外部トリガー入力端子(あるいはこれに接続される外部要素)の個々のものを「パッドソース」という。これらのパッドソースからのトリガー信号はトリガーセットアップ機能により処理される。すなわち、プリセットまたはユーザ設定により、各パッドソース毎にトリガーデータが設定されており、対応するトリガー信号に対する入力感度等の処理を行う。そして、トリガーセットアップ機能で設定された感度に基づいてトリガー入力が検出されると、ドラムキットの各種データに基づいて音源に対する音源パラメータが生成される。
ドラムキットは複数のプリセットキット(例えば30種類)及び複数のユーザ設定データ(例えば最大200種類)があるが、図1では1つのドラムキットの内容を示している。まず、一つのドラムキットは、「01〜12」及び「13〜HH」で示す17組のパッド設定データ(パッド設定情報)を持っている。「01〜12」は12個のパッドP1〜P12にそれぞれ対応し、「13〜HH」は5つの外部トリガー入力端子に対応している。各パッド設定データは、「01」の例を示すように、A,B,C,Dの4つのレイヤーで構成されている。そして、各レイヤーのそれぞれにドラムボイス(10chの場合)またはノーマルボイス(10ch以外の場合)を割り当てることができる。
また、各パッド設定データは、上記ボイスの設定の他に例えばサンプリング波形等からなるウェーブデータ、伴奏パターンなどの演奏情報からなるユーザパターンデータあるいはプリセットパターンデータを設定することができる。ウェーブデータやユーザパターンは、インポート機能にて例えばUSBメモリ等により外部から入力することができ、また、ユーザパターンは当該電子打楽器1において録音することもできる。また、ドラムキットは、後述のドラムマップのデータ、キットMIDIのデータ、エフェクトのデータ及びその他のデータをセットとして持っている。
以上の構成により、トリガー入力が検出されたパッドソースに対応するパッド設定データが参照され、そのパッド設定データの各レイヤーに割り当てられたボイス(音色名)やウェーブデータ、パターンデータがドラムマップまたはキットMIDIのデータ、エフェクトのデータとともに音源パラメータとして音源に与えられる。また、この音源パラメータは外部にMIDI出力することもできる。音源は、音源パラメータに基づいてデジタル楽音信号を生成し、このデジタル楽音信号に対してエフェクト機能で各種効果が付与され、オーディオ出力される。
図2はドラムキットのキット構成の詳細を示す図であり、Kit01 ,…からなる複数のキットがあり、例えば「Kit01 」で示す一つのドラムキットの詳細を示している。ドラムキットには前述のように Pad01,…からなるパッドソースに対応する複数(17個)のパッド設定データがある。パッド設定データは前記のように4つのレイヤー(Layer A ,Layer B,Layer C,Layer D)のレイヤー構造の場合と、ウェーブデータ、ユーザパターン及びプリセットパターンに対応するパターン情報( Pattern情報)を記憶する場合がある。なお、この実施形態では、パッド設定データとして、コントロールチェンジ(CC情報)またはプログラムチェンジ(PC情報)のMIDIメッセージを記憶することもできる。これは、一つのパッドソースに共通なパッドソースコモンデータ(PAD SOURCE COMMON )として記憶しているメッセージタイプのデータ(MIDI Message Type )によって決まる。メッセージタイプが「note」の場合は、このパッド設定データはレイヤー構造またはパターン情報となる。
メッセージタイプが「CC」の場合はコントロールチェンジに関するCC情報であり、メッセージタイプが「PC」の場合はプログラムチェンジに関するPC情報である。CC情報は、コントロールチェンジの機能を示すコントロールナンバ(CC No )と、MIDIチャンネル(MIDI ch )、コントロール値(CC Value)等である。PC情報は、プログラムチェンジの機能を示すプログラムナンバ(PC No )と、MIDIチャンネル(MIDI ch )、バンクセレクトメッセージのMSBとLSB(Bank MSB/LSB)等である。
また、パッドソースコモンデータには、スタックオルタネートモード(Stack Alternate mode )のデータが記憶される。このスタックオルタネートモードのデータは、「スタックモード」か「オルタネートモード」かを示すデータである。「スタックモード」は当該パッドを叩くとこのパッドに割り当てられた複数のボイスが同時に発音するモード、「オルタネートモード」はこのパッドに割り当てられた複数のボイスが、当該パッドを叩くたびに順次切り換えて発音するモードである。なお、この「オルタネートモード」での発音順番はユーザが設定することができる。
前記のように一つのパッドソースに対応するパッド設定データは、レイヤー構造の場合、パターン情報の場合、CC情報の場合、PC情報の場合があるが、これらは排他的に選択されるものである。本発明はレイヤー構造の場合に関連するものであり、以下、このレイヤー構造の内容について説明する。
4つのレイヤー(Layer A,Layer B,Layer C,Layer D)の各レイヤーは、その全てあるいは選択的に、それぞれ、ノート番号、MIDIチャンネル(MIDI ch )、ゲートタイム、…等のデータを記憶することができ、これらのデータ及びドラムマップ(またはキットMIDI)により各レイヤーにボイスが割り当てられる。MIDIチャンネル(MIDI ch )が「10ch」の場合は、ノート番号はドラムボイスに対応し、MIDIチャンネル(MIDI ch )が「10ch以外」の場合は、ノート番号はノーマルボイスの音高に対応する。
また、前記のように各ドラムキットには、そのドラムキット(その全パッド設定データ)に共通なドラムマップ(Drum Map)のデータ、キットMIDI(Kit-MIDI)のデータ、エフェクト(Effect)のデータ及びその他のデータがある。
ドラムマップ(Drum Map)のデータは、ドラムボイスの発音態様に関するデータであり、音名「C♯−1」〜「A♯5」に対応するノート番号毎に、音色名(ボイスを指定する情報)、ボリューム、チューニング、パン(定位)、…等のデータをセットとして持っている。そして、このドラムマップはレイヤー中のMIDIチャンネルが「10ch」の場合に参照される。このドラムマップのデータは、ユーザによって設定(編集)可能となっている。
キットMIDI(Kit-MIDI)のデータは、ノーマルボイスの発音に関するデータであり、「10ch」以外のMIDIチャンネル「1ch〜9ch、11ch〜16ch」毎に、ボリューム、パン、PC(プログラムチェンジ)、…等のデータをセットとして持っている。そして、このキットMIDI情報の多くは、レイヤー中のMIDIチャンネルが「10ch」以外の場合に参照され、対応するチャンネルのPCによってノーマルボイスの種類(音色)が決まる。
エフェクト(Effect)のデータは、ドラムキット毎に効果のタイプを選択するバリエーション(Variation )、コーラス、リバーブ、その他各種のデータである。その他のデータは、レイヤーの有効/無効を設定するレイヤースイッチ(LayerSW )のデータ、ミュート関連(Mute関連)のデータ、ハイハット関連(HH関連)のデータ、トリガーセットアップリンク(trigSetupLink )等である。なお、トリガーセットアップリンクは、各キット毎に各パッドの感度等の設定データであるトリガーデータを参照する参照先を示すデータである。
(コピーパッド機能)ここで、以上の構成を有する一つのドラムキットの編集時に、パッドソース単位のパッド設定データのコピーを行う「コピーパッド機能」について説明する。このコピーパッド機能では、一つのパッドソース(コピー元)に対応するパッド設定データを他のパッドソース(コピー先)に対応するパッド設定データとしてコピーする。なお、コピー元のパッド設定データが、パターン情報またはCC情報またはPC情報の場合には、それらのデータ及びパッドソースコモンのデータをそのままコピー先のパッド設定データとしてコピーする。
コピー元のパッド設定データがレイヤー構造のデータである場合は以下のようにする。なお、コピー元のレイヤーのMIDIチャンネルが10ch以外の場合にはそのレイヤーの全データをそのままコピー先の対応するレイヤーにコピーする。この段落及び次の段落の以下の説明はコピー元のレイヤーのMIDIチャンネルが10chの場合である。コピー元のパッド設定データの各レイヤーに割り当てられているMIDIチャンネル、ゲートタイム等の、ノート番号以外の全データをコピー先の対応するレイヤーにコピーする。「対応するレイヤー」とは、例えばコピー元がレイヤーAならコピー先もレイヤーAということである。このとき、コピー先のレイヤーにノート番号が割り当てられていない場合には、コピー元のノート番号の代わりに後述のノート優先順位テーブルを参照して優先順位の低いノート番号で、かつ、当該ドラムキットの全レイヤーに割り当てられていないノート番号を取得し、取得したノート番号をコピー元のノート番号に代えてコピー先のノート番号として割り当てる。さらに、コピー元の各レイヤーのノート番号に対応するドラムマップ中の音色名、ボリューム、チューニング、パン等のデータ(発音態様情報)を、コピー先の各レイヤーのノート番号(すなわち既に割り当てられていたノート番号あるいは新たに割り当てたノート番号)にそれぞれ対応させてドラムマップ中にコピーする。なお、パッドソースコモンのデータはそのままコピー先のパッド設定データとしてコピーする。
すなわち、このコピーパッドの後は、コピー元とコピー先とでは、レイヤー中のノート番号だけが異なり、他のデータは全て同じになる。また、ドラムマップにおいては、ノート番号の異なるものでも、コピー元に対応するデータとコピー先に対応するデータとして同じ2組の発音態様情報が生成されることになる。したがって、この状態では、コピー元のパッドを叩いたときとコピー先のパッドを叩いたときとで、同じ音が発音される。一方、このようにノート番号を異なるようにしているので、例えばドラムマップ中のコピー元に対応するデータ(発音態様情報)を編集した場合、例えば音色名を変更したり、チューニングを変更したりした場合でも、この編集結果はコピー先のパッドソースによる発音に影響しない。なお、本実施例では、異なるパッドソースに同一のノート番号をレイヤーに割り当ていることもできる。この場合は、同一のノート番号を有するので、ドラムマップ中の当該ノート番号に対応する発音態様情報を編集すると、同一のノート番号が割り当てられたパッドソースの発音に影響する。
図7はノート優先順位テーブルを示す図であり、このノート優先順位テーブルはROM1bに記憶されている。図に矢印で示すように上側のノート番号ほど優先順位が高いノート番号である。この優先順位の高いノート番号はプリセットキット、初期設定用のイニシャルキットあるいはプリセットパターンで使用されているノート番号であり、優先順位の低いノート番号は、プリセットキット、イニシャルキットあるいはプリセットパターンで使用されていないノート番号である。このノート優先順位テーブルを参照して優先順位の低いノート番号から割り当てていくことにより、プリセットキット、イニシャルキットあるいはプリセットパターンの破綻を防ぐことができる。
次に、ノート番号の割り当て及び解放について説明する。なお、以下の説明で「空きノート番号」とは、MIDIチャンネルが10chの「13(C♯−1)〜94(A♯5)」(ドラムマップのノート番号)のうちどのパッドソースのどのレイヤーにも割り当てられていないノート番号のことである。また、「ノート数」とは、10chとして割り当てられているノート番号の個数であって、コピー先では重複するノート番号となっているものは数えないようにしたノート番号の個数である。
10chに設定されているレイヤーに関して、コピー先とコピー元のノート数が異なっている場合、次のようにする。ノート数が「コピー元>コピー先」の場合は、空きノート番号をコピー先に割り当てる。ノート数が「コピー元<コピー先」の場合は、コピー先の余ったノート番号を解放する。
ノート番号の取得と解放はノート優先順位テーブルにより優先順位を考慮してノート番号を決定して行う。ノート番号の取得時には空きノート番号の中で優先順位の最も低いものを取得する。なお、空きノート番号が無い場合はエラーとする。ノート番号の解放時には割り当てられているノート番号の中で優先順位の最も高いものを解放対象とする。なお、解放されたノート番号はすぐに空きノート番号となるとは限らない。すなわち、仮に一つのドラムキット内で複数のレイヤーに重複して割り当てられているノート番号があった場合、そのうちの一つが解放されても、他のノート番号が依然として割り当てられていればそれは空きノート番号とはならない。これらのノート番号の割り当て状況を把握するには、ノート番号に対応して割り当て先のパッドソースの情報を記憶しておくなどしてもよいし、各パッドソースの状況そのものを検索してもよい。
(具体例1)図8に示すように、コピー元はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Bに割り当てられていて、コピー先はドラムボイス(10ch)が1つのレイヤーAに割り当てられているとする。この場合、コピー先のレイヤーBにノート番号が必要となる(「ノート数」不足となる)ので、優先順位の低い空きノート番号「D0」が取得され、レイヤーBに割り当てられてられるとともに、MIDIチャンネルが10chに設定される。
(具体例2)図9に示すように、コピー元はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Bに割り当てられていて、コピー先はドラムボイス(10ch)が3つのレイヤーA,B,Dに割り当てられているとする。この場合、コピー先のレイヤーDが余分なので、「C0」「C♯2」「D0」の中で優先順位の最も高いレイヤーBに割り当てられているノート番号「C♯2」が解放されるとともに、このレイヤーBにレイヤーDのノート番号「D0」が割り当てられ、レイヤーDはMIDIチャンネルがoffに設定される。
(具体例3)図10に示すように、コピー元はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Bに割り当てられていて、コピー先もドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Bに割り当てられており、コピー元とコピー先で一つのノート番号が重複しているとする。この場合、コピー先のレイヤーAに割り当てられていたノート番号「C1」がコピー元に割り当てられているノート番号「C1」と重複し、コピー先の「ノート数」が不足するので、このコピー先の重複するノート番号「C1」が解放され、代わりに優先順位の低い空きノート番号「D0」が取得され、レイヤーBに割り当てられる。
(具体例4)図11に示すように、コピー元はノーマルボイス(メロディ音)(1ch)が3つのレイヤーA,B,Dに割り当てられていて、コピー先はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Bに割り当てられているとする。この場合、コピー先のレイヤーA,Bに割り当てられていたノート番号「C1,D♯3」が全て解放され、全レイヤーのMIDIチャンネルもノート番号もコピー元と全く同じ状態にコピーされる。
(具体例5)図12に示すように、コピー元はドラムボイス(10ch)が1つのレイヤーBに割り当てられていて、コピー先はノーマルボイス(1ch)が3つのレイヤーA,B,Dに割り当てられているとする。この場合、コピー先ではドラムボイス(10ch)のノート番号が割り当てられていない(「ノート数」不足となる)ため、空きノート番号から優先順位の最も低いノート番号「D0」が取得され、コピー元のノート番号「D♯3」の代わりにレイヤーBのドラムボイスのノート番号として割り当てられる。
(具体例6)図13に示すように、コピー元とコピー先でドラムボイスとノーマルボイス(メロディ音)が混在している場合である。コピー元はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーA,Dに割り当てられ、ノーマルボイス(2ch)が1つのレイヤーCに割り当てられている。コピー先はドラムボイス(10ch)が2つのレイヤーB,Dに割り当てられ、ノーマルボイス(1ch)が2つのレイヤーA,Cに割り当てられている。この場合、ドラムボイスについては、コピー先のレイヤーDに割り当てられていたドラムボイス(10ch)のノート番号「C♯1」がコピー元に割り当てられているドラムボイス(10ch)のノート番号「C♯1」と重複する(コピー元のノート数は2、コピー先のノート数は1となりコピー先のノート数が不足する)ので、このコピー先の重複するノート番号「C♯1」は解放され、代わりに優先順位の低い空きノート番号「D0」が取得され、コピー先に割り当てられていたノート番号「A3」と新たに取得した「D0」がレイヤーA、レイヤーDに割り当てられる。また、ノーマルボイスであるコピー元のレイヤーCについてはMIDIチャンネルもノート番号もコピー元と全く同じ状態にコピーされる。
(インポート機能)次に、パッド設定データとして、ウェーブデータ等を設定するインポート機能時の処理について説明する。これらのウェーブデータを設定する場合も、パッド設定データのレイヤーにノート番号を割り当てなければ、そのパッドソースで発音することができない。そこで、このインポート機能でもノート番号の割り当てを行う。まず、パッドP1〜P12に対してユーザキットの初期状態に対応するノート番号からなるイニシャルキットのデータがある。このイニシャルキットのパッドP1〜P12に対応するノート番号は図14のようになる。そして、インポート機能でウェーブデータ等をパッドに設定する際に、このイニシャルキットを利用するとともに、前記同様なノート番号の割り当てを行う。
まず、インポート機能でウェーブデータ等をパッドソースに設定する前にパッドの初期化を行う。この初期化では、パッド設定データを全て初期化し、そのパッド設定データに割り当てられていたノート番号を全て解放する。次に、イニシャルキットのそのパッドに対応するノート番号を取得する。このとき、そのノート番号が他のパッドソースのレイヤーに割り当てられていたら、空きノート番号の優先順位の最も低いものから取得する。取得したノート番号をそのパッドソースに割り当てる。そして、そのノート番号を割り当てたパッドソースに対してウェーブデータ等を設定する。
(具体例7)インポート機能でウェーブデータをパッドP6に設定する。この場合、コピー先の対象パッドP6のレイヤーは図15のようになる。全レイヤーのノート番号が解放され、レイヤーAのMIDIチャンネルが10chにされる。そして、パッドP6のイニシャルキットにおけるノート番号「F1」が他のパッドのレイヤーに割り当てられていなければ、レイヤーAに前に割り当てられる。このノート番号「F1」が他のパッドのレイヤーに割り当てられていれば、空きノート番号の優先順位の低いノート番号「D0」が取得され、レイヤーAに割り当てられる。
図16はメイン処理のフローチャート、図17は設定操作子受付処理(サブルーチン)の一部フローチャート、図18は設定操作子受付処理の他の一部のフローチャートである。メイン処理は電子打楽器1の電源オンにより開始され、ステップS1で初期化し、ステップS2で設定操作子受付処理を行う。ステップS3では演奏操作子(パッド等)の操作受付により発音処理を行い、ステップS2に戻る。図17の設定操作子受付処理では、ステップS11で設定操作子の入力がなければそのままメインルーチンに復帰し、設定操作子の入力があればステップS12以降で入力設定の内容に応じた処理を行う。
ドラムキット編集モードに関する設定であれば、ステップS13〜S15で、ドラムキット選択画面の表示、編集対象パッドの選択有無の判定、ボイス変更指示であるかの判定を行う。ボイス変更指示であれば、ステップS16でボイス変更処理を行う。
ボイス変更指示でなければ、ステップS17〜S25でコピーパッドの処理を行ってステップS26に進む。ステップS19及びS20は、前記のようにコピー先にドラムボイス(10ch)で重複するノート番号がある場合のノート番号の解放の処理である。ステップS21〜S24は、前記のようにコピー元のノート数とコピー先のノート数の大小関係に応じてノート番号の取得または解放を行う処理である。なお、コピー元のノート数とコピー先のノート数が同じ場合は取得も解放も行わない。ステップS25は、コピー元におけるパッドソース単位で設定する情報、レイヤー単位で設定する情報の全てをコピー先にコピーする。そして、ステップS26ではノート番号にボイスを割り当て、ステップS27で、変更選択指示のあった内容を記憶装置1jに設定記憶する。ステップS28及びステップS29はその他の入力受付やその他の指示に対応する処理である。ステップS17でコピーパッドの指示でなければ、図18のステップS31に進む。
図18のステップS31〜S36では、ウェーブデータのインポートの処理を行う。すなわち、ステップS32で前記のように対象パッドのノート番号を全て解放する。ステップS33、S34及びS35は、前記のようにイニシャルキットのノート番号が他のパッドで使用されていない(割り当てられていない)場合と使用されている場合の、ノート番号の取得を行う処理である。ステップS36は、パッドソース単位で設定する情報、レイヤー単位で設定する情報の全てをインポート先にコピーする処理である。