JP5405981B2 - 透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルムおよびそれからなる振動板ならびにそれからなる透明平面スピーカー - Google Patents
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Description
透明な平面スピーカーが実現できれば、ディスプレイ装置との一体化により表示スペースの効率的な利用ができ、設計面、デザイン面での自由度向上が期待できる。
表示機器以外にも、建物窓、ショウウィンドウなど、透明であることで機能を発現する建材に透明な平面スピーカーを貼り合せることができれば、建材に音響機能を付与させることができ、設計面、デザイン面での自由度向上が期待できる。
一方、透明な平面スピーカーモジュールのニーズに対し、最近、アクチュエーターとよばれる振動素子を振動板の端部に直接取り付けた構造が新たに検討されつつあり、かかるスピーカーモジュールに適した高い透明性と音響伝播特性に優れる振動板の開発が求められている。
下記式(1)で表わされる層Aのヤング率がフィルム長手方向、幅方向の少なくとも一方向において7GPa以上15GPa以下であり、
層Aのヤング率(GPa)=フィルムのヤング率(GPa)/(層Aの厚み/フィルム厚み) ・・(1)
フィルムの平行光線透過率Tpが75%以上100%以下であり、
該フィルムの25℃における100Hzの伸縮変位に対する内部損失が0.03以上であり、かつ
該フィルムが示差走査熱量測定において結晶化発熱ピークを有していない透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。
本発明はさらにかかる振動板を含む透明平面スピーカーに関するものであり、その好ましい態様として、振動板の端部にアクチュエーターが設置されてなること、振動板が展張固定されてなること、振動板を展張固定する枠状物がゴム状の振動吸収材料であること、ディスプレイまたは透明建材と張り合わせて用いられること、振動吸収性枠状粘着材を介してディスプレイまたは透明建材と貼りあわされてなること、振動吸収性枠状粘着材がシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂を主体とするゲル状物であること、インサート成形法により透明建材と貼りあわされること、の少なくともいずれか一つを具備するものを包含する。
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明の透明平面スピーカー用ポリエステルフィルムは、層Aを含む二軸配向ポリエステルフィルムである。かかる二軸配向ポリエステルフィルムとして、層Aの1層からなる二軸配向ポリエステルフィルムが挙げられる。また、層Aの少なくとも片面にさらに層Bを有する積層フィルムであってもよい。
本発明の透明平面スピーカー用ポリエステルフィルムは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる層Aを含む。ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される。ここで「主たる成分」とは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを含む層Aの重量を基準として90重量%以上、好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上であることを意味する。層Aがポリエチレンナフタレンジカルボキシレート以外のポリマーを含まないか、かかる範囲内であることにより、他樹脂との相溶性低下などによる白濁化を生じることなく、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート本来の高透明性が維持される。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、ホモポリマーであっても共重合体であってもよい。共重合成分は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを構成する全繰返し単位の20モル%以下であることが好ましく、更に好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、チタン化合物またはゲルマニウム化合物を触媒として製造されたものであることが好ましい。触媒がアンチモン化合物である場合、製造条件によっては還元反応によるアンチモン金属析出が生じ、透明性が低下することがある。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、ジオールとジカルボン酸をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。
本発明の透明平面スピーカー用ポリエステルフィルムは、層Aの少なくとも片面にさらに層Bを有する積層フィルムであることが好ましく、層Bをさらに有する場合のフィルムの25℃における100Hzの伸縮変位に対する内部損失が0.03以上であることが好ましい。フィルムの内部損失が0.03以上となるような層Bを有することにより、層Aによる音響伝播特性のみならず、層Bによる音切れ性などの音響再現性特性の向上につながる。
また、層Bを構成するポリエステルは、ポリエステルの全繰り返し単位の75〜85モル%がエチレンテレフタレート成分であることにより、さらに示差走査熱量測定によるフィルムの結晶化発熱ピークが見られないため、フィルム加熱による透明性低下がなく好ましい。
また、フィルム加熱後も高透明性を得るためには、ポリエステルの結晶性を抑制する成分が好ましく、エチレンテレフタレート成分の再配列を抑制するような共重合成分が好ましい。詳しくは、分子の大きいもの、エステル結合性官能基がエチレンテレフタレート成分と大きく異なる位置にあるもの、などを挙げることができ、好ましい例としては、ナフタレンジカルボン酸成分、イソフタル酸成分挙げることができ、特にナフタレンジカルボン酸成分とイソフタル酸成分との併用が、フィルム加熱後もひきつづき高透明性を得るために好ましい例として挙げることができる。
層Bを構成する樹脂のガラス転移点は25〜100℃であることが好ましく、60〜100℃であることがさらに好ましい。層Bを構成する樹脂のガラス転移点がかかる範囲にあることにより、層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートのガラス転移点を補完して幅広い周波数領域で吸音特性を発現することができる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、透明性向上の観点から粒子を含有しないか、または粒子を含有するとしてもフィルム全重量に対して0.01重量%未満の範囲であることが必要である。また積層フィルムの場合、かかる範囲内であれば、粒子は層A、層Bのどちらに含有されていてもよいが、最外層を構成する層に含有されていることがフィルムの滑り性向上の点で好ましい。粒子を添加する場合、粒子の平均粒径は0.001〜0.2μmの範囲が好ましい。
具体的な粒子として、例えば、周期律表第IIA、第IIB、第IVA、第IVBの元素を含有する無機粒子(例えば、カオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素など)、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂粒子等のごとき耐熱性の高いポリマーよりなる粒子が挙げられる。
(ヤング率)
本発明の二軸配向フィルムは、下記式(1)で表わされる層Aのヤング率がフィルム長手方向(以下、縦方向、フィルム連続製膜方向、MD方向と称することがある)、幅方向(以下、横方向、TD方向と称することがある)の少なくとも一方向において7GPa以上15GPa以下である。
層Aのヤング率(GPa)=フィルムのヤング率(GPa)/(層Aの厚み/フィルム厚み) ・・(1)
(i)の場合、さらに好ましくは長手方向、幅方向のいずれも8GPa以上13GPa以下であり、特に好ましくは10GPa以上13GPa以下である。
また(ii)の場合、ヤング率が低い方向の層Aのヤング率はさらに5GPa以上8GPa未満であってもよく、ヤング率が高い方向の層Aのヤング率はさらに好ましくは8GPa以上13GPa以下、特に好ましくは9GPa以上13GPa以下である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの平行光線透過率Tpは75%以上100%以下である。該平行光線透過率Tpは、好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上である。
平行光線透過率Tpは、JIS規格のK7105に準拠して、フィルムの全光線透過率Ttから、拡散光成分Tdを差し引いた値で表わされ、透明材料の透過視認性に相当する特性である。
平行光線透過率Tpが下限値に満たないとフィルムが白っぽく見え、透過視認性が十分ではなく、例えばディスプレイや透明建材などと本発明のフィルムを用いた透明スピーカーとを一体化させて使用する場合に、ディスプレイ機能や透明建材の透明性が損なわれる。
本発明の二軸配向フィルムは、層Aの少なくとも片面に層Bを積層してなるフィルム積層体であってよく、かかる積層体の場合には25℃における100Hzの伸縮変位に対する内部損失が、0.03以上であることが音響再現性上好ましい。かかる内部損失は、フィルム長手方向、幅方向のそれぞれの方向について動的粘弾性測定装置を用いて測定し、その平均値で定義される。
ここで内部損失とは、フィルム積層体の動的粘弾性特性である、損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’との比であり、損失正接(tanδ)で表わされる。該内部損失は、より好ましくは0.04以上、さらに好ましくは0.045以上である。内部損失の値が下限値に満たない場合は、振動を受けて振動板自体が響いてしまい、余韻が残って音切れ性が十分でないことがある。該内部損失tanδは、より高い方が振動吸収能が高いが、本発明を構成する樹脂の性質上、上限値は0.15である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、示差走査熱量測定において結晶化発熱ピークを有していないことが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムが結晶化発熱ピークを有していないことにより、後工程被熱や長時間経時によるフィルム中の球晶状構造の成長を抑制することができ、フィルム加熱後も白濁を生じることなく初期の高透明性が維持される。
一方、フィルムが結晶化発熱ピークを有する場合は、フィルム加熱により結晶化が生じ、フィルムが白濁化して初期の高透明性を維持できないことがある。なお、本発明における結晶化発熱ピークとは、示差走査熱量測定によりフィルムサンプルを昇温加熱させた際に生じる結晶化発熱ピークを指す。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、400nm未満の波長帯における光線透過率Ttが20%未満であることが好ましい。400nm未満の波長帯における光線透過率Ttがかかる範囲にあることにより、フィルム自体が紫外線吸収性能を有し、屋外での長期使用に耐えうる。かかる光線透過率Ttを得るためには、層Aを構成するポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであることに加え、さらに必要に応じて紫外線吸収剤をフィルム中に含有すればよい。
これら光線透過率TtはJIS規格のK7105に準拠して求められる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム厚みが5μm以上125μm以下であることが好ましく、より好ましくは7μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。フィルム厚みが下限値に満たない場合、平面スピーカー用基板フィルムとして音質再現性が十分でないことがある。一方フィルム厚みが上限値を超える場合、ハンドリング性が低下することがある。
本発明の透明平面スピーカー用ポリエステルフィルムは、層Aの1層からなる二軸配向ポリエステルフィルムであってもよく、また、層Aの少なくとも片面にさらに層Bを有する積層フィルムであってもよい。積層フィルムの場合、層Aと層Bとが、A|B|A|B・・・のように3層以上交互に積層されたものも好ましい形態のひとつである。本発明はポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする高ヤング率層Aを有することにより、アクチュエーターを振動板の端部に直接取り付ける透明平面スピーカーモジュールの振動板に適した音響伝播特性効果を奏する。また層Bを有し、フィルムとしての内部損失が0.03以上であることにより、さらに音切れ性といった音響再現特性も向上する。
また、層Aと層Bとが11層以上に交互積層された多層構造の場合、さらに破断伸度の向上や層間剥離の防止などの効果も得ることができるが、本発明の高透明性を維持するため、多層構造化による反射機能が生じない範囲内での多層化が好ましい。具体的には、(i)1層あたりの層厚みを50nm以下に薄くしたり、(ii)可視光の透過率が低下しないように、すなわち可視波長域に反射光波長がかからないように両層の屈折率に応じて層厚みを調整することが挙げられる。
ii−1)下記式(2)において、任意の自然数mがいかなる値をとる場合でも、主反射光波長λが380nm未満または800nmを超えるよう、両層の屈折率と層厚みを調整すること、
λ=(2/m)×(nA×dA+nB×dB) ・・・(2)
(上式中、λは主反射光波長、mは主反射波長の倍音波長/主反射波長で表わされる次数、nAは層Aの屈折率、dAは層Aの厚み(nm)、nBは層Bの屈折率、dBは層Bの厚み(nm)をそれぞれ表わす)
または、ii−2)下記式(3)において、任意の自然数mおよびm未満の自然数pがいかなる値をとる場合でも、層Aの光学厚み比率fAが0.9〜1.1の範囲にあるようにすることが挙げられる。
fA=(m/p)×(nA×dA)/(nA×dA+nB×dB) ・・・(3)
(上式中、fAは光学厚み比率、mは主反射波長の倍音波長/主反射波長で表わされる次数、pは主反射波長の倍音波長/主反射波長で表わされる次数でm未満の次数、nAは層Aの屈折率、dAは層Aの厚み(nm)、nBは層Bの屈折率、dBは層Bの厚み(nm)をそれぞれ表わす)
層Aと層Bとの交互積層体の最外層は、層A、層Bのいずれであってもよい。層Bが最外層の場合は、層Bからなる最外層を透明基材と貼り合せる際の接着層として熱圧着させることができる。
(溶融押出キャスティング)
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、溶融押出キャスティングにより製膜した後、直交した二方向に延伸して得られる。
溶融押出には従来公知の手法を用いることができる。具体的には、乾燥した層Aのポリエステル材料を押出機に供給し、Tダイなどのスリットダイより溶融樹脂を押出す方法や、組成物材料を供給した押出機にベント装置をセットし、溶融押出時に水分や発生する各種気体成分を排出しながら、同じくTダイなどのスリットダイより溶融樹脂を押出す方法が挙げられる。
スリットダイより押出された溶融樹脂は、キャストされ冷却固化させる。冷却固化の方法は、従来公知のいずれの方法をとっても良いが、回転する冷却用ロール上に溶融樹脂をキャストし、シート化する方法が例示される。
冷却用ロールの表面温度は、単層の場合は層Aを構成するポリエステルのガラス転移点(Tg)に対し、積層の場合は層Bを構成する樹脂のガラス転移点(Tg)に対して、(Tg−100)℃〜(Tg+20)℃の範囲に設定するのが好ましい。
溶融押出キャスティングにより得られたシート状物は、縦方向及びその直交方向である横方向の2軸方向に延伸することにより、フィルムのヤング率をはじめとする機械特性を本発明の目的と合致させることができる。
延伸は従来公知の方法を用いることができ、例えば縦方向に延伸する場合は、2個以上のロールの周速差を用いて延伸する方法や、オーブン中で延伸する方法が挙げられる。
また、横方向に延伸する場合は、クリップなどにより端部を把持する方式のテンターオーブン中で入側と出側のクリップ搬送レール間隔に差をつけて延伸する方法が挙げられる。
2方向に延伸する際の延伸方法は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
フィルム延伸温度(Td)は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートのガラス転移点Tg〜(Tg+40℃)の温度とするのが好ましい。フィルムの延伸温度がTgに満たない場合は延伸自体が困難であり、一方延伸温度が上限値を超える場合は、延伸に要する応力が極端に低くなってしまうため、分子鎖の配向が不足し、上述したような諸特性を確保できなくなってしまうことがある。延伸温度のより好ましい範囲は、Tg〜(Tg+20℃)である。
延伸を行うに際し、本発明のヤング率特性を発現させる方向の延伸倍率を4.5倍〜8倍とする。その他の方向の延伸倍率は好ましくは3.5倍〜8倍である。
かかる延伸方法によって得られたフィルムに、さらに200℃以上240℃以下の温度範囲で熱固定処理を行う。熱固定処理温度は、好ましくは200℃以上235℃以下である。
かかる温度範囲で熱固定処理を行うことによって、本発明に規定する平行光線透過率Tpをはじめとする光学特性や、さらに優れた熱収縮率特性を得ることができる。また、共重合系ポリエチレンテレフタレートを含む層Bを共押出法により積層させた積層フィルムの場合、かかる熱固定温度範囲で熱処理を行うことにより、層Bの分子配向を低下させることができ、本発明の内部損失特性を得ることができる。
また、熱固定処理後にさらに熱弛緩処理を行ってもよく、170℃〜200℃の温度範囲内で、かつ0.1〜5%の弛緩率の範囲で行うことが好ましい。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、透明基板などの他部材と貼合する際の接着性向上など、必要に応じて、フィルム表面の活性化処理(コーティング、コロナ放電、プラズマ処理など)といった後加工を施しても良い。この後加工は、フィルム延伸工程中に行ってもよく、また別工程で行ってもよい。
本発明の積層フィルムは、上述した共押出法による製造のほか、層Aと層Bとを後工程ラミネートによって製造することもでき、特に層Bとして非晶性樹脂を用いる場合には、かかる方法で積層させることが好ましい。
この場合、層Bを構成する材料として接着剤機能を奏する非晶性樹脂を用いて層Aと層Bを直接ラミネートさせてもよく、層Aと層Bとを接着剤を介してラミネートさせてもよい。
本発明の透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルムは、スピーカーモジュールの振動板として用いることができる。本発明のフィルムを振動板として用いることにより、アクチュエーターを振動板の端部に直接設置する構造の平面スピーカーにおいて、アクチュエーターの設置位置から離れた部分にまで十分に音を伝搬することができ、音響伝搬特性に優れている。また音響伝搬特性が高いため、アクチュエーターの設置位置を振動板の端部にすることができ、かつフィルム自体の透明性が高いため、音響伝搬特性に優れた透明な平面スピーカーを得ることができる。
本発明は、かかる透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルムを振動板として用い、該振動板を含む透明平面スピーカーも包含される。かかる透明平面スピーカーは、振動板の端部にアクチュエーターを備えた構造であることが好ましい。また振動板が展張固定されていてもよい。展張固定する枠状物は、公知の材料が使用されるが、ゴム状の振動吸収材料を用いてもよい。
透明建材として、透明壁、ショウウィンドウ、パーティション、窓が例示される。また、ディスプレイとしてデジタルサイネージ、薄型テレビ、携帯電話などのディスプレイにも使用することができる。これら透明基材は、ガラス、樹脂のいずれでもよい。
これらディスプレイや透明建材などと平面スピーカーとを貼り合せる他の方法として、インサート成形法による貼り合せが挙げられる。かかる場合、透明基材の材質は樹脂であることが好ましい。
フィルムサンプルの各層について、1H−NMR測定よりポリエステルの成分および共重合成分及び各成分量を特定した。
フィルムサンプルを幅10mm、長さ150mmに切り出し、チャック間100mmにサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度10mm/minの条件で引張試験を行い、得られた荷重―伸び曲線の立ち上り部接線の傾きよりヤング率を計算した。測定は5回行い、平均値を結果とした。測定は温度23±2℃、湿度50±5%に調節された室内において行った。測定装置としてオリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いた。
フィルムサンプルをヘーズメーター(日本精密光学(株)製、POICヘーズメーター SEP−HS−D1)内にセットし、JIS規格K7105に準拠してフィルムの平行光線透過率Tpを測定した。
フィルムサンプルを10mgサンプリングし、DSC装置(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)にて、20℃/min.の昇温速度で昇温し、DSCチャートをもとに結晶化発熱ピークの有無を確認した。
フィルムサンプルを幅3mm、長さ40mmに切り出し、動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、DDV−01FP)を用い、チャック間30mmにサンプルを装着し、25℃にて、100Hzの伸縮変位を加え(変位振幅25μm)、フィルムサンプルの貯蔵弾性率E’および損失弾性率E”を測定した。得られたE’、E”より損失正接tanδを算出し、内部損失の値とした。製膜方向、幅方向それぞれについて評価した。
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向を含む面に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から層A、層Bの各層の厚みおよび層数を測定し、それぞれについて平均値より各層厚みを求めた。
フィルムの全層厚みは、電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにて10箇所測定し、それらの平均値より求めた。
(6)の方法で得られた層Aの層厚みの平均値に層Aの層数を乗じて層Aの層厚みの総計を求めた。一方、フィルム全層厚みは(7)の方法に準じて求め、全層厚みに占める第Aの層の総厚み比を算出した。
20cm×30cmのフィルムサンプルの一方の短辺の端部かつ20cm幅の中央部に株式会社オーセンティック製平面スピーカー用アクチュエータを設置した。かかるフィルムサンプルの四頂点から対角線方向に展張した状態で、無響室において、フィルムサンプル長辺を鉛直方向にし、アクチュエータを取り付けた短辺が下になるようにフィルムサンプルを配置し、音圧測定を実施した。得られた指向性データ、周波数特性データから、以下の音響特性を評価した。
(i)音響伝播特性
鉛直方向に配置したサンプル面から50cm離れた位置で、アクチュエーター取付位置と同じ高さを測定位置(ア)とする。また、位置(ア)と同じくサンプル面から50cm離れた位置で、位置(ア)から30cm上方を測定位置(イ)とする。
○: 位置(ア)での測定音圧に対し、位置(イ)での測定音圧の乖離が15%以内であり、平面スピーカー全面から同じ音圧で音が聞こえる状態
△: 位置(ア)対比、位置(イ)での測定音圧の乖離が15%を超え20%以内
×: 位置(ア)対比、位置(イ)での測定音圧の乖離が20%を超える
(ii)音響再現性
◎: 全ての周波数帯について85%以上の入力信号再現率が観察された
○: 1kHz以上の全ての周波数帯について85%以上の入力信号再現率が観察され、1kHz未満においては80%以上85%未満の再現率を示す周波数帯が観察された
△: 1kHz未満だけでなく1kHz以上においても80%以上85%未満の再現率を示す周波数帯が観察された
×: 80%未満の再現率を示す周波数帯が観察された
透明基材としてポリカーボネート板を用い、シリコーンゴムからなる振動吸収性枠状粘着剤でポリカーボネート板とフィルムサンプルを貼り合せ、20cm×30cmの積層部材を作成した。フィルムサンプルの一方の短辺の端部かつ20cm幅の中央部に株式会社オーセンティック製平面スピーカー用アクチュエータ設置したものを用い、(9)と同様にサンプルを無響室に配置し、(9)に記載した音響特性を評価した。
フィルムサンプルを150℃で30分加熱し、その後室温雰囲気下で自然放冷した後、加熱前のフィルムサンプルと目視で相対比較し、白濁の発生有無を確認した。
ゲルマニウム触媒を用いて製造された固有粘度0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを180℃ドライヤーで6時間乾燥後、押出機に投入し、295℃で溶融混練して290℃のダイスよりシート状に成形した。この溶融物を、表面温度60℃の回転冷却ドラム上に押出し、厚み520μmの未延伸フィルムを得た。 得られた未延伸フィルムを、140℃に加熱したロール群に導き、長手方向(縦方向)に4.5倍で延伸し、60℃のロール群で冷却した。この縦一軸延伸フィルムの片面に、以下のポリエステル1 65重量%/アクリル1 30重量%/濡れ剤5重量%からなる塗剤の濃度8%水性塗液をロールコーターで均一に塗布し、易接着性塗布層を形成した。 続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き150℃に加熱された雰囲気中で長手方向に垂直な方向(横方向)に4.7倍で延伸した。その後テンタ−内で230℃の熱固定を行い、180℃で3%の弛緩後、均一に除冷して室温まで冷やし、25μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
(ポリエステル1)
酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸65モル%/イソフタル酸30モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量13000)。
かかるポリエステル1は、特開平06−116487号公報の実施例1に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル44部、イソフタル酸ジメチル16部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール34部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行った。
メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。
かかるアクリル1は特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。即ち、四つ口フラスコに、界面活性剤としてラウリルスルホン酸ナトリウム3部、およびイオン交換水181部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、更にモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が35%のアクリル1の水分散体を得た。
ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−70)
未延伸フィルム厚みを345μm、延伸倍率を、4.6×3.0とした以外は、参考例1と同様の方法によって25μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
未延伸フィルム厚みを300μm、延伸倍率を、2.5×4.75とした以外は、参考例1と同様の方法によって25μm厚みの二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
層A用の樹脂として、参考例1で得た固有粘度0.61dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを180℃ドライヤーで6時間乾燥後、押出機に投入し、295℃で溶融混練した。一方、層B用の樹脂として、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を7.5モル%ずつ共重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62dl/g)を170℃ドライヤーで6時間乾燥後、他方の押出機に投入し、それぞれ溶融した状態でフィードブロック装置を用いてA|B|A(吐出比率層A:層B:層A=1:2:1)となるよう3層に積層し、かかる積層構造を維持した状態でダイスよりシート状に成形したのち、参考例1と同様にして未延伸フィルム積層体を得、参考例1と同様の条件で、延伸フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を表1に示す。
層A、層Bとしてそれぞれ実施例1と同じ樹脂を用いて夫々の押出機に投入し、それぞれ溶融した状態で層A用樹脂を101層、層B用樹脂を100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して201層に積層し(吐出比率 層A合計:層B合計=1:1)、その積層状態を保持した状態でダイスよりシート状に成形したのち、参考例1と同様にして未延伸フィルム積層体を得、参考例1と同様の条件で、延伸フィルム積層体を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
参考例1で得られた延伸フィルムのコーティング側の面同士を、ポリエステル系接着剤(東洋紡績(株)製;バイロン)を介して圧着し、A|B|Aの3層フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を表1に示す。
層B用の樹脂として、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸を6モル%ずつ共重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62dl/g)に変更した以外は実施例1と同様にして延伸フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を表1に示す。
イソフタル酸を12モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.62dl/g)を層A用の樹脂として用いた以外は、参考例1と同様の条件で延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。ヤング率が不足するため、音響特性が十分ではなかった。
未延伸フィルム厚みを248μm、延伸倍率を縦×横方向=3.1×3.2とした以外は、参考例1と同様の条件で延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。ヤング率が不足するため、音響特性が十分ではなかった。
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代えてポリエチレンテレフタレート(固有粘度 0.62dl/g)を層A用の樹脂として用いた以外は、参考例1と同様の条件で延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。ヤング率が不足するため、音響特性が十分ではなかった。
重合工程で平均粒径0.3μmの球状シリカ粒子を0.1%添加した以外は、参考例1と同様の条件で延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。平行光線透過率Tpが不足し、透過視認性に劣っていた。
Claims (12)
- 層Aと層Bとが交互に積層された3層以上の多層構成である二軸配向ポリエステルフィルムであり、層Aはポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなり、層Bはポリエステルを主成分としてなり、該ポリエステルの全繰り返し単位の75〜85モル%がエチレンテレフタレート成分であり、
下記式(1)で表わされる層Aのヤング率がフィルム長手方向、幅方向の少なくとも一方向において7GPa以上15GPa以下であり、
層Aのヤング率(GPa)=フィルムのヤング率(GPa)/(層Aの厚み/フィルム厚み) ・・(1)
フィルムの平行光線透過率Tpが75%以上100%以下であり、
該フィルムの25℃における100Hzの伸縮変位に対する内部損失が0.03以上であり、かつ
該フィルムが示差走査熱量測定において結晶化発熱ピークを有していないことを特徴とする透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルム。 - かかる層Aのヤング率がフィルム長手方向、幅方向のいずれも7GPa以上15GPa以下である請求項1に記載の透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 振動板として用いられる請求項1または2に記載の透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の透明平面スピーカー用二軸配向ポリエステルフィルムを用いた振動板。
- 請求項4に記載の振動板を含む透明平面スピーカー。
- 振動板の端部にアクチュエーターが設置されてなる請求項5に記載の透明平面スピーカー。
- 振動板が展張固定されてなる請求項5または6に記載の透明平面スピーカー。
- 振動板を展張固定する枠状物がゴム状の振動吸収材料である請求項7に記載の透明平面スピーカー。
- ディスプレイまたは透明建材と張り合わせて用いられる請求項5〜8のいずれかに記載の透明平面スピーカー。
- 振動吸収性枠状粘着材を介してディスプレイまたは透明建材と貼りあわされてなる請求項9に記載の透明平面スピーカー。
- 振動吸収性枠状粘着材がシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂を主体とするゲル状物である請求項10に記載の透明平面スピーカー。
- インサート成形法により透明建材と貼りあわされる請求項9に記載の透明平面スピーカー。
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