JP5405193B2 - バイオ燃料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はバイオ燃料の製造方法に関するもので、より詳細には油脂に酵素を作用させて低級アルコールをエステル交換することによってバイオ燃料を製造する方法に関する。
油脂を利用した環境に優しい燃料が、バイオ燃料などの名称で知られている。このバイオ燃料は、天ぷら油等として使用済みの油脂に苛性ソーダ及びメタノールを作用させることにより、バイオ燃料として使用されるメチルエステルを得るというものである。
上記のような方法では、一般に、アルカリ触媒法または酸触媒法によりエステル交換が行なわれるが、この方法は、工程数が多く、しかも用いたアルカリ、酸及び副生するグリセリン、石鹸が反応系に残留するため、これを除去するための煩雑な操作が必要となるという問題がある。
上記のような不都合を回避するための方法としては、リパーゼ等の酵素を触媒として使用して油脂をメタノールと反応させてバイオ燃料として供されるメチルエステルを製造する方法が知られている。例えば、特許文献1,2には、油脂を酵素及びゼオライトの存在下でメタノールと反応させる方法が提案されている。また、油脂を酵素及びアルカリ性物質(炭酸ナトリウム等)の存在下でメタノールと反応させる方法も提案されている(特許文献3)。更に、本発明の出願人は、先に、油脂精製の分野において副生する廃白土にメタノールと共にリパーゼ等の酵素を作用させて廃白土に担持されている油脂分をメチルエステルに転換させる方法を提案した(特許文献4)。
上記特許文献1〜4に記載されているように、酵素を触媒として用いる方法は、油脂分に遊離脂肪酸が含まれている場合にも、脂肪酸がメチルエステルに転換されるため、脂肪酸を分離する必要がなく、また、酸やアルカリを反応系から除去する工程が不要であるという利点がある。
特開昭59−28482号公報 特開平2−203790号公報 特開平2−203789号公報 特開2003−336082号
ところで、上記特許文献1で提案されている方法は、ゼオライトを脱水剤として使用することにより、生成したメチルエステルの加水分解を抑制し、これにより、高転換率でメチルエステルを得ることができるというものであり、特許文献2,3では、多孔性物質(ゼオライト等)またはアルカリ性物質(炭酸ナトリウム等)を添加することで酵素の延命効果があるというものであり、特許文献4では、油脂類の精製工程で副生し、本来廃棄される多量の廃白土を油脂源として使用するものであり、資源の再利用などの観点から工業的に有用であるという利点がある。
しかしながら、上記先行技術に示されているような酵素を触媒として使用する方法では、高転換率でメチルエステルを得るために高価な酵素を多量に使用しなければならず、製造コストが著しく高価になってしまうという大きな問題がある。例えば、製造コストを低減させるために酵素の量を少なくすると、80%以上の転換率に到達させるために、反応を著しく長時間行わなければならず、結局、原料コストが安価になるだけで、トータルの製造コストは低減されない。
従って、本発明の目的は、少ない酵素量でも極めて短時間での反応により、油脂からバイオ燃料として有用なエステルを高転換率で製造することが可能であり、しかも副生するグリセリンを除去するなどの面倒な後処理を行うことなくバイオ燃料を製造する方法を提供することにある。
本発明者等は、酵素を触媒として油脂をバイオ燃料に転換させる方法について鋭意検討した結果、酵素と共に、ケイ素化合物成分とマグネシウムもしくはカルシウム化合物成分とを含む粉末を用いるときには、エステル交換反応が著しく促進され、きわめて少量の酵素を使用する場合においても短時間且つ高転換率でバイオ燃料となるエステルを製造することができるという新規な知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明によれば、酵素の存在下で油脂と低級一価アルコールを反応させてエステルとするバイオ燃料の製造方法において、
酵素とシリカ−金属系粉末との存在下で、油脂と低級一価アルコールとの反応を行うと共に、
前記シリカ−金属系粉末は、シリカとマグネシウム酸化物もしくはマグネシウム水酸化物とを含む無機粉末、または、シリカ粉末とカルシウム酸化物もしくはカルシウム水酸化物との粉末を含む無機粉末であり、且つ該シリカ−金属系粉末は、酸化物換算で、下記式(1):
SiO ・nMO (1)
式中、Mは、MgまたはCaを示し、
nは、0.19〜20の数である、
で表されるモル組成を有しており、
前記油脂100重量部当り、酵素を0.05〜1.0重量部及び前記シリカ−金属系粉末を20〜200重量部の量で使用することを特徴とするバイオ燃料の製造方法が提供される。このとき、無機粉末として、シリカとマグネシウム酸化物との複合酸化物粉末を使用することが好適である。
本発明の製造方法においては、
(1)前記シリカ−金属系粉末として、BET比表面積が20m/g以上の無機粉末を使用すること、
(2)前記油脂及び前記シリカ−金属系粉末が、油脂精製乃至再生工程から排出され且つ回収された吸着油脂分を含む回収精製剤であること、
(3)有機溶媒の存在下で酵素を作用させること、
(4)酵素としてリパーゼを使用すること、
(5)低級一価アルコールとして、メタノールを使用すること、
が好適である。
本発明においては、酵素の存在下で油脂と低級一価アルコールを反応させてのエステル交換によってバイオ燃料となるエステルを製造するものであるが、特に、シリカとマグネシウム酸化物もしくはマグネシウム水酸化物とを含む粉末やシリカとカルシウム酸化物もしくはカルシウム水酸化物との混合粉末といった無機粉末(以下、シリカ−金属系粉末と呼ぶことがある)を、酵素と共に使用することが重要な特徴であり、これにより、酵素量を著しく低減させた場合にも短時間で80%以上の高転換率でバイオ燃料となるエステルを製造することができ、製造コストを大幅に低減させることが可能となる。例えば、後述する実施例の実験結果に示されているように、上記の無機粉末の併用により、100重量部の油脂に対し、僅か0.15重量部の酵素(リパーゼ)の使用により、僅か72時間程度の反応時間で80%の転換率で油脂からメチルエステルを得ることができるのである(実施例1、2参照)。
本発明において、上記のような無機粉末の併用により、酵素量を著しく低減させ且つエステル交換反応を促進させることができる理由は正確には解明されていないが、本発明者等は次のように推定している。
即ち、油脂は脂肪酸のトリグリセリドであり、酵素の存在下でメタノール等の低級一価アルコールを作用させることにより、エステル交換(具体的にはアルコーリシス)により脂肪酸の低級一価アルコールエステルが生成する。酵素は、上記のエステル交換に対して触媒作用を有しているものである。この場合において、油脂には、不可避的な不純物として遊離の脂肪酸を含んでおり、またエステル交換反応によってグリセリンが副生する。従って、酵素によるエステル交換反応においては、この遊離脂肪酸や副生グリセリンが酵素の作用を妨害することが予想され、この結果、エステル交換反応が阻害されるものと考えられる。しかるに、本発明で用いる前述した無機粉末は、グリセリンに対する吸着能を示すと同時に、油脂成分に含まれる遊離脂肪酸を石けん化して油脂と分離する機能を有しており、これらの機能が相乗的に発揮されるため、エステル交換反応の妨害が有効に回避され、この結果、酵素によるエステル交換反応が著しく促進されるものではないかと考えられる。
例えば、シリカ粉末は、比表面積が高く、グリセリンに対する吸着能を示すが、遊離脂肪酸を石けん化して分離する機能は有していない。このため、シリカ粉末を単独で酵素と併用した比較例1では、酵素によるエステル交換反応を促進させることはできない。
また、ゼオライトを酵素と共存させて油脂からメチルエステルを製造することは、特許文献1,2に記載されているように公知である。この場合、ゼオライトは脱水剤として作用するものであり、生成したメチルエステルの加水分解を抑制し、これにより、高転換率でメチルエステルが得られるというものである。しかるに、後述する比較例2に示されているように、ゼオライトを酵素と併用した場合には、油脂100重量部当り0.3重量部の酵素(リパーゼ)量では、わずか1.2%の転換率でしかメチルエステルを得ることができず、実施例1の本発明例に比して、多量の酵素を使用しながら、その転換率は低く、その反応時間も著しく長い。この事実から理解されるように、本発明で用いる無機粉末は、脱水剤として機能することにより、上述した効果を発現させるものではないことが判る。
このように、本発明においては、無機粉末が有しているグリセリンに対する吸着能と油脂に含まれる遊離脂肪酸に対する石けん化による分離機能とが相乗的に発揮されるため、これを酵素と併用することにより、酵素によるエステル交換反応を著しく促進させることが可能となる。従って、本発明は、高価な酵素の使用量を著しく低減させて短時間且つ高転換率で低級一価アルコールエステルを製造できるため、省資源、製造コスト等の観点から工業的に極めて有用である。
本発明の製造方法は、油脂を原料とし、これに酵素及び反応促進剤として機能する無機粉末の存在下で低級一価アルコールを作用させてのエステル交換反応により、該油脂分を脂肪酸の低級一価アルコールエステル、即ちバイオ燃料に転換するものである。
<油脂>
バイオ燃料の出発原料として用いる油脂は、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とするものであり、例えばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などの植物油や、牛脂、鯨油及び魚油などの動物性油などである。
上記の油脂としては、バージンのものを使用することができるが、特に油脂の精製工程或いは再生工程(例えば使用済み天ぷら油などの再生工程)から回収される使用済み精製剤に含まれる油脂を使用することもできる。
油脂精製処理乃至再生処理は、それ自体公知の条件で行われ、例えば後述する無機粉末(精製剤)を、油脂当たり重量基準で0.1乃至5%の量で添加し、90乃至200℃の温度で5乃至30分間、両者の組成物を撹拌することにより、精製処理或いは再生処理を完了することができ、これにより油脂中の不純物の除去と同時に脱色も行われる。処理後の混合物は、これを任意の濾過機、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、オリバーフィルター、アメリカンフィルター、遠心濾過機等の減圧乃至は加圧式濾過機に供給して、精製油脂と油脂分を含む使用済みの精製剤(無機粉末)とに分離され、この使用済み精製剤は、後述する反応促進剤として使用される無機粉末に油脂分が吸着担持されているものであり、一般に20乃至70重量%程の量で油脂分を含有している。また、この油脂分には油脂100重量%中にグリセリドと共に1乃至40重量%程度の遊離脂肪酸も含まれているが、本発明においては、反応促進剤として用いる無機粉末が、遊離脂肪酸を石鹸化して分離する機能を有しているため、特に問題はない。
このように、回収される使用済み精製剤に含まれる油脂分を出発原料とする場合には、この油脂分を担持している使用済み精製剤が、後述する反応促進剤として使用される無機粉末としての機能を有しているため、別個に未使用の無機粉末を用いる必要がなく、コストの削減、省資源等の見地から極めて有利である。
<酵素>
本発明において、酵素としては、油脂分に対してエステル交換によって低級一価アルコールのエステル(バイオ燃料)を生成し得るものであれば、何れをも用いることができるが、一般にはリパーゼが用いられる。リパーゼとしては、その由来等は特に限定されず、微生物由来のリパーゼ、植物由来のリパーゼ、動物膵臓由来のリパーゼ等が使用される。また、用いるリパーゼは適切な担体に固定化されたものであってもよい。
リパーゼの具体的な例として、Alcaligenes sp由来のリパーゼQLM(名糖産業)、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(名糖産業)、Candida rugosa由来のリパーゼTypeVII(シグマ)、Rhizopus arrhizus由来のリパーゼType11(シグマ)、Rhizopus oryzae由来のリパーゼF−AP15(天野エンザイム)、Rhizopus japonicus NR400由来のリパーゼA−10FG(ナガセ)、Aspergillus niger由来のSumizymeNLS(新日本化学)、Phycomyces nitens NRRL 2444由来のリパーゼPN(和光)、Porcine pancreas由来のリパーゼTypeII(シグマ)、Pseudomonas cepacia由来のリパーゼ(シグマ)、Mucor javanicus由来のリパーゼ(シグマ)、アルカリリパーゼ(NOVO)などを挙げることができるが、これらは説明のための例示であり、如何なる意味でもこれに限定されない。
本発明において、上記の酵素は、油脂に対して少量の使用量でよく、例えば、油脂100重量部当り、0.05乃至1.0重量部、特に0.05乃至0.5重量部程度の量で使用すればよい。酵素は、かなり高価であるため、このような少量で酵素を使用してよいことは、工業上、極めて大きな利点である。
<無機粉末>
本発明において、酵素と併用する無機粉末は、エステル交換反応に対する反応促進剤として機能するものであり、シリカ−金属系粉末が使用される。即ち、シリカ−金属系粉末は、油脂と低級一価アルコールとのエステル交換反応で副生するグリセリンを吸着して除去する機能と、油脂中に含まれる遊離脂肪酸を石けん化して油脂から分離する機能を有しているものと推定され、これにより酵素を触媒としてのエステル交換反応を著しく向上させ得るものである。
機粉末の物性は特に制限されるものではないが、特にBET比表面積が20m/g以上、特に35m/g以上のものが好ましい。BET比表面積の低いものは、グリセリン吸着能が低いものと考えられ、このため、エステル交換反応に対する反応促進剤としての機能が低い傾向がある。
本発明に用いられる無機粉末として酸化マグネシウムが考えられるかもしれないが、酸化マグネシウム粉末は、それ自体でグリセリン吸着能と遊離脂肪酸の石けん化による分離機能とを示すが、比表面積の高いものを得にくいため、酵素と併用するための無機粉末として使用できず、以下に述べるシリカ−金属系粉末が使用される。
シリカ−金属系粉末は、シリカとマグネシウム酸化物もしくはマグネシウム水酸化物とを含む粉末またはシリカとカルシウム酸化物もしくはカルシウム水酸化物との混合粉末であり、特に、酸化物換算で、下記式(1);
SiO・nMO (1)
式中、Mは、MgまたはCaを示し、
nは、0.19〜20の数である、
で表されるモル組成を有していることが必要である。かかる組成において、ケイ素化合物成分が比表面積の増大等により各種成分、特にグリセリンに対する吸着性に寄与し、MO成分が、油脂中の遊離脂肪酸に対する石鹸化による分離機能を示すものと思われる。従って、上記式中のnの値が、上記範囲内である場合には、グリセリンに対する吸着性と油脂中の遊離脂肪酸に対する石鹸化による分離機能とがバランスよく発現し、最も大きなエステル交換促進機能が発揮される。
上記のようなシリカ−金属系粉末は、シリカとMO成分(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム)との混合粉末でもよいし、これらの成分が複合化した複合粉末であってもよい。例えば、特開2005−8675号、特開2005−8676号、特開2005−6510号に開示されているようなシリカ成分層とマグネシア成分層とを有するシリカ・マグネシア複合酸化物であって、上記式(1)で表される組成を有しているものを使用することができる。その他、ケイ酸カルシウム、タルク(ケイ酸マグネシウム)も使用することができる。しかし、タルクは比表面積が低いために、他の無機粉末と比較して、エステル交換促進性が低い傾向がある。
また、本発明で用いる無機粉末は、先に述べたように、油脂の精製工程或いは再生工程において精製剤として使用されるものであり、これら工程から排出されて回収された使用済み精製剤も使用できる。例えば、特開2006−335982号公報に開示されているシリカとマグネシアとの混合粉末であって、上記の工程から回収された再生品、或いは特開2007−143525号公報に開示されているシリカと酸化カルシウム(或いは水酸化カルシウム)との混合粉末であって、上記工程からの再生品なども使用することができる。
本発明において、上述した無機粉末は、一般に、前述した油脂100重量部当り、20乃至200重量部、特に20乃至100重量部程度の量で使用される。この範囲よりも無機粉末の量が少ないとグリセリンが無機粉末に十分に吸着されずに液相中に残留してしまい、この範囲よりも多くしても格段の効果は得られない。
<低級一価アルコール>
エステル化に用いる低級一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、ヘキサノール、へプタノール、オクタノール等の炭素数8以下のアルコールを挙げることができるが、特に炭素数7以下が好ましく、中でも反応性及びコストの点でメタノールが好ましい。
低級一価アルコールは、油脂分から生成する脂肪酸(遊離脂肪酸も含む)に対して当量以上の量で用いるのがよく、特に脂肪酸:アルコール(モル比)が1:3乃至1:6、好ましくは1:3.5乃至1:5の量がよい。アルコールの量がこれよりも多いと、酵素が失活してしまう。
<反応>
本発明において、上述した酵素、無機粉末の存在下で油脂に低級一価アルコールを作用させるエステル化反応は、これらの成分を、反応容器に投入し、酵素が失活しないような温度範囲、例えば10乃至50℃、特に20乃至40℃の室温程度の温度範囲で攪拌混合することにより行われる。
このような反応は、無溶媒で実施することもできるし、必要により有機溶媒を使用して実施することもできる。このような有機溶媒としては、上記反応を阻害せず、反応に供する低級一価アルコールや油脂分及び生成するエステルを溶解し得るものであれば特に制限されないが、一般的には、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒、軽油、灯油等が使用される。有機溶媒の量は、無機粉末が流動化する量で充分であるが、これに規定されない。
また、本発明においては、前述した無機粉末に原料を吸着担持させたバイオ燃料製造用製剤を予め調製しておき、これを他の成分(酵素粉末や低級一価アルコール)と混合してから反応を実施することもできる。特に、このような形態での使用は、無機粉末の酸化等による変質を防止する上で効果的である。また、低級一価アルコール及び酵素は、その種類によっては、水溶液の状態で添加することもできるが、一般的には、反応系への過剰な水分の導入を避けることが望ましい。過剰な水分の導入は、生成したエステルを加水分解せしめる要因となり、エステルの転換率を低下せしめる傾向があるからである。
上記のようにして反応を行い、生成した脂肪酸のエステルは、遠心分離、蒸留、抽出等のそれ自体公知の手段で分離回収することができる。尚、前述した無機粉末を反応促進剤として使用する本発明では、副生するグリセリンが無機粉末に吸着されるため、グリセリンの分離工程を省略できるという利点もある。
上述した本発明では、少ない酵素量でも短時間での反応により高転換率で低級一価アルコールのエステルを得ることができ、製造コストを大幅に低減させ、工業的に極めて有用である。
本発明のバイオ燃料製造用製剤は、植物油または動物油を炭素源とする培地中でリボフラビン生産菌を培養し、リボフラビンを生成、蓄積させ、これを採取することからなるリボフラビンの製造において、培地中に担体として共存させることで、植物油または動物油の培地中への分散性を向上させ、リボフラビンを高収率及び高生産速度で製造することができる。
本発明の優れた効果を、次の実施例及び比較例により説明する。なお、測定は以下の方法で行い、使用した無機粉末の物性は表1に示す。
実施例5及び実施例8は参考例とする。
(1)標準メチルエステル
和光純薬製ステアリン酸メチル標準品を用いた。
(2)メチルエステル濃度測定方法
反応液は濾過または遠心分離後にメンブレンフィルターで濾過し、500mgを軽油5gと混合して試料液とした。なお、n−ヘキサンなどを有機溶媒として使用した場合は有機溶媒を留去後に測定に供した。
これを送液ポンプLC−20AD、オートサンプラーSIL−20A、カラムオーブンCTO−20A、示差屈折率検出器RID−10Aおよびコントローラ−CM−20A(それぞれ島津製作所製)およびデータ処理装置で構成された高速液体クロマトグラフシステムを用いて、下記条件で測定し試料のメチルエステルピーク面積を得た。
カラム:Luna 5A Silica(2)100A(Phenomenex製)
カラム温度:40℃
溶離液:0.4体積%2−プロパノールと99.4体積%n−ヘキサン混合液
溶離液流量:1.0ml/分
注入量:10μL
検量線は、次のように作成した。ステアリン酸標準品(和光純薬製)を各10mg、50mg、100mg、500mgと軽油5gの混合液を標準液として同様に測定し、ピーク面積から軽油中のメチルエステル濃度検量線を得た。
検量線より試料中のメチルエステル濃度(%)を求め、これをメチルエステル変換率とした。
(3)BET比表面積
ユアサアイオニクス製マルチソーブ16にて測定した。
(4)酵素(リパーゼ)
リパーゼは、名糖産業製Lipase−QLMを用いた。
Figure 0005405193
(比較例1)
500ml三角フラスコにミズカシルP−526を33.3g、パーム油50g、メタノール6.5g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.075gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。24時間毎に試料をサンプリングしメチルエステル変換率を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2)
500ml三角フラスコに4A型ゼオライト1.9g、パーム油51g、メタノール3.6g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.084gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。測定結果を表2に示す。
(実施例1)
500ml三角フラスコにミズカライフF1−Gを33.3g、パーム油50g、メタノール6.5g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.075gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。測定結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりにミズカライフF2−Gを用いて実施例1と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
(実施例3)
500ml三角フラスコに、食用油の再生に使用されたミズカライフF2−Gを83.3、メタノール6.5g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.075gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。24時間毎に試料をサンプリングしメチルエステル変換率を測定した。
なお、この使用済みミズカライフからはn−ヘキサンを溶剤としたソックスレー抽出により50gの油脂が得られることをあらかじめ確認している。測定結果を表2に示す。
(実施例4)
500ml三角フラスコにミズカライフF2−Gを33.3g、使用済み天ぷら油50g、メタノール6.5g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.075gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。24時間毎に試料をサンプリングしメチルエステル変換率を測定した。
なお、この使用済み天ぷら油の酸価は2.1であった。測定結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例4と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりに酸化マグネシウムDSを用いて実施例4と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例4と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりに水澤化学製試作高表面積非晶質シリカ30gと酸化マグネシウムDS3.9gの混合物を用いて実施例4と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例4と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりにミズカシルP−527を24.5gと水酸化カルシウム11gの混合物を用いて実施例4と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
(実施例8)
実施例4と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりにセピオライトを用いて実施例4と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例4と同じ処方で、ミズカライフF1−Gの代わりに微粉タルクを用いて実施例4と同様に反応した。測定結果を表2に示す。
Figure 0005405193
(実施例9)
500ml三角フラスコにミズカライフF2−G(水澤化学製)33.3g、パーム油50g、メタノール6.5g、n−ヘキサン 50gとリパーゼ0.050gを混合し25℃で撹拌しながら反応させた。測定結果を表3に示す。
(実施例10)
実施例8において、ミズカライフF2−Gを16.7g、リパーゼを0.075gにそれぞれ変更した以外は実施例8と同様に反応した。測定結果を表3に示す。
(参考例1)
実施例8において、ミズカライフF2−Gを8.3g、リパーゼを0.075gにそれぞれ変更した以外は実施例8と同様に反応した。測定結果を表3に示す。
Figure 0005405193

Claims (7)

  1. 酵素の存在下で油脂と低級一価アルコールを反応させてエステルとするバイオ燃料の製造方法において、
    酵素とシリカ−金属系粉末との存在下で、油脂と低級一価アルコールとの反応を行うと共に、
    前記シリカ−金属系粉末は、シリカとマグネシウム酸化物もしくはマグネシウム水酸化物とを含む無機粉末、または、シリカ粉末とカルシウム酸化物もしくはカルシウム水酸化物との粉末を含む無機粉末であり、且つ該シリカ−金属系粉末は、酸化物換算で、下記式(1):
    SiO ・nMO (1)
    式中、Mは、MgまたはCaを示し、
    nは、0.19〜20の数である、
    で表されるモル組成を有しており、
    前記油脂100重量部当り、酵素を0.05〜1.0重量部及び前記シリカ−金属系粉末を20〜200重量部の量で使用することを特徴とするバイオ燃料の製造方法。
  2. 前記シリカ−金属系粉末として、シリカとマグネシウム酸化物との複合酸化物粉末を使用する請求項1に記載のバイオ燃料の製造方法。
  3. 前記無機粉末として、BET比表面積が20m/g以上の無機粉末を使用する請求項1または2に記載のバイオ燃料の製造方法。
  4. 前記油脂及び前記シリカ−金属系粉末が、油脂精製乃至再生工程から排出され且つ回収された吸着油脂分を含む回収精製剤である請求項1〜3の何れかに記載のバイオ燃料の製造方法。
  5. 有機溶媒の存在下で酵素を作用させる請求項1〜4の何れかに記載のバイオ燃料の製造方法。
  6. 酵素としてリパーゼを使用する請求項1〜5の何れかに記載のバイオ燃料の製造方法。
  7. 低級一価アルコールとして、メタノールを使用する請求項1〜6の何れかに記載のバイオ燃料の製造方法。
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