JP5404227B2 - 光学素子の製造方法および光学素子 - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子の製造方法および光学素子に関するものである。
例えば、その表面に可視光の波長より面内周期の短い構造を有する偏光ビームスプリッタ、位相板、バンドパスフィルターなどの光学素子を得るための3次元の中空構造を有する3次元構造体による光学素子およびその製造方法に関する。
近年、3次元構造体を用いて偏光光学特性を実現しようとする光学素子が開発されている。
このような3次元構造体による光学素子は、例えば特許文献1に開示されており、層内に中空構造を作り込むことで、バルクには無い低い屈折率を実現する。
また、ラインアンドスペース構造のように面内方向で異方性を持たせることで高い偏光光学特性を実現する。
ところで、このような中空構造は、フォトリソグラフィ法やドライエッチング法を用いて製造される。
また、光学的に透明な構造を得ようとする場合、構造体材料は誘電体を用いるのが一般的である。
また、積層された3次元構造体を得るためにはスペース領域を、犠牲層と呼ばれる後工程で取り除くことが可能な材料で埋め込み、平坦化処理を施した後、第二層を成膜して、その層をフォトリソグラフィ法やドライエッチング法を用いてパターニングを実施する。
その後、第二層のスペース部から犠牲層をアッシングして第一層の犠牲層が埋め込まれた部分を中空構造とする方法が一般的である。
特開2007−264604号公報
前記従来の方法で3次元構造体による光学素子を製造すると、第一層及び第二層が誘電体で構成されている場合、第二層を時間制御等の手法を用いて精度良くエッチングしなければ、第一層までエッチングしてしまうオーバーエッチングとなってしまう場合がある。また、第二層がエッチングしきれず残ってしまうアンダーエッチングも起こり易い。
仮に精度良くエッチングできたとしても、処理基板サイズが6インチや8インチの大板化を図った場合、基板全面において均一な処理を行うことは困難である。
なお、第二層がオーバーエッチングされて、第一層までエッチングされた場合、屈折率が極端に小さい部分が発生するため、所望の光学特性を得ることは困難である。
また、第二層がアンダーエッチングの場合、第一層のスペース部に残留する犠牲層をアッシングすることが困難である。
そのため、第一層の中空構造が得られず屈折率が高くなり、同様に所望の光学特性を得ることが困難となる。
また、側壁へイオンが衝突することによりサイドエッチングされてしまい、第二の構造体との結合部の面積が小さくなり、第一の構造体と第二の構造体の接合強度が低下してしまうことがあるという問題もあった。
本発明は、上記課題に鑑み、光学特性を損なうことなく、上層との十分な密着力を確保することが可能となる光学素子の製造方法および光学素子を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる光学素子の製造方法は、基板上に、少なくとも第一の構造体と第二の構造体とを備えた光学素子の製造方法であって、スペース領域と構造部とが交互に繰り返し配列された前記第一の構造体を形成する工程と、前記構造部の上部にエッチングストッパー層を形成する工程と、前記エッチングストッパー層上に、前記第二の構造体をエッチングにより形成する工程を有することを特徴とする。
また、本発明に係わる光学素子は、基板の上面に少なくとも第一の構造体と第二の構造体とを備えた光学素子であって、前記第一の構造体及び前記第二の構造体は、酸化チタン、酸化シリコン、酸化チタンと酸化シリコンの混合物、酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物または酸化チタンと酸化ハフニウムの混合物による構造部が、可視光の波長以下のピッチで繰り返し配列され、前記第一の構造体と前記第二の構造体は、前記第一の構造体の上部に形成され、前記第一の構造体の基板の上面と平行な方向の断面積より広い面積を持ち、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、および酸化イットリウムのいずれかで構成される結合体を介して結合されていることを特徴とする。
本発明によれば、光学特性を損なうことなく、上層との十分な密着力を確保することが可能となる3次元構造体による光学素子およびその製造方法を実現することができる。
本発明の第一の実施形態における光学素子の製造方法を説明する模式図。 本発明の第一の実施形態における光学素子を説明する模式図。 本発明の第二の実施形態における光学素子の製造方法を説明する模式図。 本発明の第二の実施形態における光学素子を説明する模式図。 本発明の第三の実施形態における光学素子の製造方法を説明する模式図。 本発明の第三の実施形態における光学素子を説明する模式図。 本発明の実施例1における構成例を説明する模式図。 発明の実施例2における偏光ビームスプリッタの光学特性を示す図。 比較例1における偏光ビームスプリッタの光学特性を示す図。 構造部の上部の拡大図。 イオンの流れを模式的に示す図。
つぎに、本発明の実施形態について説明する。
(第一の実施の形態による光学素子の製造方法)
まず、本発明の第一の実施形態における光学素子の製造方法について説明する。図1(a)から図1(e)は、第一の実施形態における光学素子の製造方法を説明する工程図である。また、図1(a’)から図1(e’)は、図1(a)から図1(e)を矢印(i)の方向から見た場合の工程図である。
(第一の構造体を形成する工程)
まず、基板上に第一の構造体を形成する。第一の構造体の一例として、例えばスペース領域(空間)と構造部とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造を有する構造体を形成する工程をつぎのように実施する。図1(a)および図1(a’)に示されるように、透明基板6上にスペース領域(空間)と構造部8とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造を有する第一の構造体を形成する。構造部8は、例えば酸化チタンで形成されており、酸化チタン膜をスパッタ法で成膜した後、通常の露光・現像工程によりフォトレジスト層をパターニングし、ドライエッチング法にて酸化チタン膜のスペース部をエッチングする。その後、残りのレジストを適切な溶剤によって除去することにより形成される。構造部8は、酸化チタンに限ることはなく、エッチング可能な材料であれば形成可能である。例えば、酸化シリコン、酸化チタンと酸化シリコンの混合膜、酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合膜、酸化チタンと酸化ハフニウムの混合膜等から形成されていても良い。
(エッチングストッパー層を形成する工程)
次に、前記構造部8の上部にエッチングストッパー層を形成する工程を、つぎのように実施する。
図1(b)および図1(b’)に示されるように、構造部8の上部にエッチングストッパー層9を形成する。エッチングストッパー層9は酸化アルミニウムAlOx(x≦3)、酸化ジルコニウムZrOx(x≦2)、酸化ハフニウムHfOx(x≦2)、および酸化イットリウムYOx(x≦3)のいずれかの中から選択することができる。エッチングストッパー層の形成方法としては、斜入射を利用したマグネトロンスパッタ法を用いることができる。
図10に構造部8の上部の拡大図を示す。構造部8上面からエッチングストッパー層9の最上部までの間隔イ、構造部8上面からエッチングストッパー層9の最下部までの間隔ロ、および構造部8側面からエッチングストッパー層9の端部までの間隔ハは、以下に示す要因を主な要因として決定される。
間隔イ:エッチングレート選択比と光学的機能
間隔ロ:光学的機能
間隔ハ:ライン高さと光学的機能
ここで、光学的機能とは、エッチングストッパー層が大きくなりすぎると、素子の光学的機能が損なわれてしまうため、各間隔イ、ロおよびハに上限値が設定されることを意味する。本実施形態では、例えば間隔イおよびロの上限値は約40nm、間隔ハの上限値は約20nmとする。本実施形態でのエッチングストッパー層9の形状は、例えば間隔イが約20nm、間隔ロが約20nm、間隔ハが約18nmとする。
但し、本発明はこれらに限定されるものではなく、エッチングストッパー層の最上部は前記構造部の上面より0.1nm以上40nm以下の範囲にあればよい。また、エッチングストッパー層の最下部は前記構造部の上面より0nm以上40nm以下、の範囲にあればよい。また、エッチングストッパ層の端部は前記構造部の側面より0.1nm以上20nm以下の範囲にあればよい。
(第二の構造体を形成する工程)
次に、前記エッチングストッパー層上に第二の構造体を積層する。
第二の構造体は、前記第一の構造体のラインアンドスペース構造とほぼ直交する方向にラインアンドスペース構造を形成する。図1(c)および図1(c’)に示されるように、第一の構造体の構造部8上に形成したエッチングストッパー層9上に例えばテンティングスパッタ法により形成する。この膜は酸化チタンの他、エッチング可能な材料であれば形成可能である。例えば、酸化シリコン、酸化チタンと酸化シリコンの混合膜、酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合膜、酸化チタンと酸化ハフニウムの混合膜等から形成されていても良い。また、エッチングストッパー層上に接合等により例えば酸化チタン等の層を形成してもよい。
次に、図1(d)および図1(d’)に示されるように、通常の露光・現像工程によりフォトレジスト層21をパターニングする。
次に、図1(e)および図1(e’)に示されるように、フォトレジスト層21をマスクとしてドライエッチング法にてスペース部をエッチングする。
ここで、図11にエッチング時のイオンの流れを模式的に示す。図11から明らかなように、エッチングストッパー層9のために、第一の構造体の構造部8の形状は保持される。特に、構造部の側壁に関して、構造部側面よりはみ出しているエッチングストッパー層9が庇の役割をすることにより、構造部側壁へのイオン衝突をなくすことができ、その結果、サイドエッチングを防止することができる。このように、構造部上部にエッチングストッパー層を形成することで、第一の構造体の形状の乱れを防止できる。このことにより、安定的に、光学特性のばらつきが無い微細光学素子を製造することができる。
(第一の実施形態による光学素子)
次に第一の実施の形態により製造された光学素子について説明する。図2に、本実施形態における光学素子の構成を説明する模式図を示す。
1は基板、2は第一の構造体、3は結合体(エッチングストッパー層)、4は第二の構造体を示している。図1では、第二の構造体は紙面に平行なラインアンドスペースで示しているためスペース領域(空間)は図示されていない。
本実施形態の光学素子は、基板1上に、少なくとも第一の構造体2と第二の構造体4とを備えている。また、この第一の構造体2と第二の構造体4は、スペース領域(空間)と構造部とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造を有している。そして、前記第一の構造体における前記構造部の上面に、第一の構造体(構造部)の基板の上面と平行な方向の断面積より広い面積を持つ結合体3を有し、前記第一の構造体2と前記第二の構造体4は、前記結合体を介して結合されている。この結合体3は、製造時、エッチングストッパー層として機能する。第一の構造体と結合体3(エッチングストッパー層)は、第一の構造体の上部にエッチングストッパー層が回り込んで形成される場合、第一の構造体と結合体との接触面積が増大し、その結果、第一の構造体と結合体の密着力を強固にすることができる。本実施形態では、テンティングスパッタ法により第二の構造体を形成する層を形成するため、前記構造部の基板の上面と平行な方向の断面積より広い面積を持つ結合体3に回り込むように第二の構造体を形成する層が形成される。よって結合面積が広くなり、より強固に結合体と第二の構造体が結合されることになる。よって、第一の構造体と第二の構造体は強固に結合される。結合体は、酸化アルミニウムAlOx(x≦3)、酸化ジルコニウムZrOx(x≦2)、酸化ハフニウムHfOx(x≦2)、および酸化イットリウムYOx(x≦3)のいずれかで構成されていることが好ましい。
基板と第一の構造体との間には光学特性を調整するための複数の層が構成されていても良い。さらに、この複数の層は構造体であってもよく、上記した第一の構造体2と第二の構造体4等で構成されていても良い。
また、これらの前記第一の構造体及び、または、前記第二の構造体における前記繰り返し構造が、ラインアンドスペースによる構造、ホールによる構造、ドットによる構造、のいずれかにより構成することができる。ラインアンドスペースによる構造は、入射光に対する偏光特性を有するため、偏光ビームスップリッタ、位相板、偏光板などの光学素子を得る場合に有効である。また、ホールやドットの構造であっても、平面内に偏りを持つ配置にすることで偏光特性を得ることは可能である。また、ホールやドットの構造では、面内方向に均等配置することで偏光効果を解消することも可能である。偏光効果を解消する光学素子としては、反射防止膜、バンドパスフィルター、高反射膜などがあげられる。前記第一の構造体2と第二の構造体4における前記繰り返し構造のピッチは、波長以下のピッチであり、200nm以下に構成される。波長以下のピッチを必要とする理由は、波長と同等またはそれ以上のピッチの構造体に光を入射させた場合、高次の回折光が発生して、所望の光学特性が得られないからである。さらに、ピッチを波長の2分の1以下とすることで、1次の回折光の発生を抑制することが可能となる。したがって、可視域波長帯域を400nmから700nmと定義した場合、最短波長400nmの2分の1のピッチでは可視域全域における回折光の発生は抑制されることとなる。なお、前記第一及び前記第二の構造体における繰り返し構造が、同一材料で構成されていてもよく、これらの材料として誘電体を用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化シリコン、酸化チタンと酸化シリコンの混合膜、酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合膜、酸化チタンと酸化ハフニウムの混合膜等から構成される。
(第二の実施の形態による光学素子の製造方法)
次に、第二の実施形態における光学素子の製造方法及び光学素子を図3を用いて説明する。第一の実施形態と共通する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化する。
(第一の構造体を形成する工程)
基板6に第一の構造体を形成する層7を形成する(図3(a))。スペース領域(空間)と構造部8とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造による第一の構造体を形成する(図3(b))。
(エッチングストッパー層を形成する工程)
次に、前記第一の構造体における構造部8上にエッチングストッパー層9を形成する(図3(c))。
(第一の構造体及びエッチングストッパー層を平坦化層で埋める工程)
次に、前記第一の構造体の繰り返し構造におけるスペース領域、およびエッチングストッパー層上部を含む全域を犠牲層で埋め込み、前記第一の構造体上に平坦化層(犠牲層)10を形成する(図3(d))。
(研磨工程)
次に、前記第一の構造体上に形成された平坦化層を含み、エッチングストッパー層の途中まで研磨(ラッピング)を行い第二の構造体との接触部となる結合部11を形成する(図3(e))。
(第二の構造体を形成する工程)
次に、前記第一の構造体上における結合部11を含むエッチングストッパー層上に、前記第二の構造体を形成する層を成膜し、第二の構造体12を形成する(図3(f))。その際、前記第二の構造体12として、上記成膜された層にスペース領域(空間)と構造部とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造を形成する(図示せず)。
(犠牲層を取り除く工程)
次に、前記第二の構造体を形成した後、前記第一の構造体の繰り返し構造におけるスペース領域に埋め込まれている犠牲層を取り除く。これにより、中空部(空隙部)13を形成する(図3(g))。
(第二の実施形態による光学素子)
第二の実施形態により形成された光学素子を図4に示す。本実施形態による光学素子は、結合体3(エッチングストッパー層)が途中まで研磨されている。よって、結合体3(エッチングストッパー層)の上面の結合部を、第一の構造体の構造部の基板1の上面と平行な方向の断面積より広い面積とすることができる。よってその上に形成される第二の構造体4との密着力を増大させることができる。
(第三の実施形態)
次に、第三の実施形態における光学素子の製造方法及び光学素子を図5を用いて説明する。第一の実施形態または第二の実施形態と共通する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化する。
本実施形態における光学素子の製造方法は、第一の構造体を形成する工程(図5(a))から研磨工程(図5(e))までは、上記第二の実施の形態と同じである。
(エッチバック工程)
本実施形態では、第二の実施形態の研磨工程の後に、犠牲層を前記第一の構造体の構造部8とエッチングストッパー層9の界面までエッチバックを行なう。
そして、エッチングストッパー層9を前記犠牲層で埋め込まれた領域面から露出させて露出面を形成し、隣り合うエッチングストッパー層間の空隙部14を形成する(図5(f))。
(第二の構造体を形成する工程)
次に、犠牲層で埋め込まれた領域の表面および前記エッチングストッパー層の露出部を含む前記第一の構造体上に、前記第二の構造体を形成する層を成膜し、第二の構造体15を形成する(図5(g))。その際、前記第二の構造体15として、上記成膜された層にスペース領域(空間)と構造部とが可視光の波長以下のピッチで交互に繰り返し配列された繰り返し構造を形成する(図示せず)。
(犠牲層を取り除く工程)
次に、前記第一の層の繰り返し構造におけるスペース領域に埋め込まれている犠牲層を取り除く。これにより、中空部(間隙部)16を形成する図5(h))。
(第三の実施形態による光学素子)
第三の実施形態により形成された光学素子を図6に示す。本実施形態による光学素子は、隣り合う接合体3の間の空隙部5を埋めるように構成されている。空隙部を有する結合体は、使用する材料によっては屈折率が低くなってしまう場合がある。このような状況を改善するためには、結合体の空隙部を異なる材料で埋めることが有効である。この埋める材料として、好ましくは、前記第二の構造体形成時のエッチング条件で同様のエッチングが可能な材料で、かつ、所望の屈折率が得られる材料であれば、特に限定されるものではない。例えば、第一の構造体における繰り返し構造と同一材料で構成してもよいし、第二の構造体における繰り返し構造と同一材料で構成してもよい。本実施形態の構成によれば、必要に応じてエッチングストッパー層の空隙部を他の材料で埋め込むことにより、屈折率の低い領域を設けることなく、所望の光学特性を有する光学素子を得ることが可能となる。
以上、本発明の光学素子の製造方法によれば、エッチングストッパー層はフォトリソグラフィ法によるエッチング工程を必要としないため、難エッチング材料を用いることが可能となる。このようなエッチングストッパー層の形成においては、エッチングが困難な材料の優位性を考慮し、パターニングを行なわなくても、下層の構造を引き継ぎパターンを形成することができる。
また、本発明によれば、研磨(ラッピング)で平坦化し、上層との接触面積を大きくすることで、密着力を増大させることができる。また、難エッチング材で形成されたエッチングストッパー層が存在するため、第二の構造体をパターニングする際に、エッチング時間を大幅に伸ばして、この基板内の全面を使用できるようにパターニングしても、第一の構造体の形状を損なうことがない。また、第二の構造体は空隙部が十分にエッチングされているため、第一の構造体の空隙部に犠牲層が残留することによる光学特性の不良の発生を抑制することができる。また、必要に応じてエッチングストッパー層の空隙部を他の材料で埋め込むことにより、屈折率の低い領域を設けることなく、所望の光学特性を有する光学素子を得ることが可能となる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、上記第二の実施形態を適用した光学素子およびその製造方法について説明する。
図7に、本実施例の3次元構造体による光学素子における基板とパターン配置についての構成例を示す。ここでは、ショット社製のSF6光学ガラス6インチウエハー基板17上に、□25mmのパターン18を9点パターニングした構成例について説明する。
本実施例における光学素子の製造方法を、図3を用いて説明する。まず第一の構造体を形成する工程を説明する。本実施例では、第一の構造体を形成するためのパターニングに際し、まず、ショット社製のSF6光学ガラス6インチウエハー基板6を洗浄し乾燥させた。その後、膜厚300nmの酸化チタンを、スパッタリング法により成膜を行い、第一の構造体を形成する層7を形成した(図3(a))。
次に、酸化チタンのパターン線幅を調整し、高選択比でエッチングできるようにハードマスクとしてクロム層を50nm、酸化シリコン層を100nmの膜厚でスパッタリング法により成膜を行った。
次に、フォトリソグラフィ工程を実施した。まず、パターニングのためのBARC(ボトムアンチリフレクティブコーティング、クラリアント社製KrF17B)層を100nmの膜厚になるようにスピンコートを行なった。その後150℃で1分間プリベークを行なった。次に、フォトレジストとして、クラリアント社製AX6850Pを、スピンコート法を用い、膜厚140nmとなるようにコーティングを行なった。
次に、上記コーティングの後、110℃で2分間プリベークを行なった。
次に、当該基板の露光現像処理を行った。露光は、二光束干渉露光法を用いた。光源はNd−YAGレーザの四倍波である波長266nm、ビーム径Φ1mm、200mWの連続発振タイプの、レーザを用いた。本レーザ光を倍率100倍のビームエキスパンダに透過させて拡大したビームをビームスプリッタで光量が等しくなるように二分割した。
その後、折り返しミラーを介して前記レジスト塗布基板に対して露光面法線に対して対向位置より72°の入射角になるようレーザ光を入射させて露光を実施した。露光時間は4秒とした。
なお、パターニングに際して本実施例では干渉露光法を用いたが、所望のパターニングが可能な、ステッパ、EB描画装置、X線露光装置などを用いてパターニングを行っても良い。
露光後、120℃で2分間、PEB(露光後焼きしめ)を行なった。
次に、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)2.38%の現像液に1分間浸漬した後、純水シャワーでリンスを行いレジストのラインアンドスペースパターンを得た。得られたライン幅は70nmであった。
次に、BARCのエッチングを行なった。エッチングは平行平板型のRIE装置を用いた。酸素とCHFをそれぞれ10sccmと50sccmでチャンバーへ供給しながら、圧力3Paになるようにコンダクタンスバルブを用いて圧力調整を行い、RFパワー20Wで300秒処理して、BARCのエッチングを完了した。
次に、酸化シリコン層のエッチングを平行平板型のRIE装置で行なった。エッチング条件は、CHFをエッチングガスとして圧力2.7Pa、RFパワー100W(0.3W/cm)で260秒エッチングを実施した。
その後、パターニングされた酸化シリコンをマスクとしてクロム及び酸化チタン層のエッチングを実施した。エッチング装置はICP装置を用いた。
クロムのエッチング条件は、エッチングガスとして塩素と酸素の1:3混合ガスを用い、圧力6Paで、RFパワー50W、基板バイアス120Wで100秒実施した。
また、酸化チタン層のエッチングは、エッチングガスとして六フッ化硫黄を用い、圧力5Paで、RFパワー300W、基板バイアス30Wで時間は25分とした。
この後、残留するクロムを、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸をそれぞれ、165g、43cc混合して1リットルの純水で希釈したエッチング用液に浸漬してウエットエッチングを行った。その後、十分に水洗を実施した。
以上の工程を経て、第一の構造体8を形成した(図3(b))。
ここで、第一の構造体におけるラインアンドスペース構造の寸法は、ライン56nm、スペース84nm、ピッチ140nmであった。また、酸化チタンのライン幅は、クロム及び酸化シリコンのマスク層をテーパ状にエッチングするように条件を適宜調節することで制御可能となった。また、マスク材料はこれらに限定するものではなく、第一の構造体層を良好にエッチングできる選択比が得られるものであればよかった。場合によっては、フォトレジストで直接エッチングすることも可能であった。
つぎに、エッチングストッパー層を形成する工程(図3(c))を、以下のように行った。エッチングストッパー層材料として酸化アルミニウムを用いた。成膜はスパッタリング法を用いた。アルミニウムをターゲットとして酸素を4vol%混合したアルゴンガスでRF放電を800Wのパワーで成膜を実施した。成膜は、ターゲット上方に第一層目の構造体が設けられた基板と、膜厚を評価するための平板基板が配置された基板ステージを回転しながら実施した。成膜後、膜厚評価基板で測定した結果、膜厚は40nmであった。
また、同一条件で作製した第一の構造体が設けられた基板を割断して電子顕微鏡で断面観察を行った結果、図3(c)に示すように、構造体トップにドーム状の酸化アルミニウムエッチングストッパー層9が設けられていることが確認された。
次に、第一の構造体及びエッチングストッパー層を平坦化層で埋める工程(図3(d))を、以下のように行った。
埋め込み材料は、クラリアント社製AZ Exp.KrF−17C8を用いた。埋め込みは、スピンコート法を用いた。2500rpmで30秒スピンコートを行った後、180℃で1分間プリベークを行なった。これを3回繰り返して、埋め込みを行なった。その結果、酸化アルミニウムパターン上面より150nm上方に、埋め込み平坦化層が10設けられた。次に、研磨工程(図3(e))を以下のように行い、平坦化を行った。
平坦化は、ラッピング装置にて実施した。前記基板を回転ステージにセットして、2rpmの回転速度で純水を供給しながら回転させ、上方からラッピングフィルムをセットしたラッピングヘッドを加圧揺動させて、平坦化処理を300秒行なった。
ラッピングフィルムは3M社製ラッピングフィルム(#15000)を使用した。
その結果、図3(e)に示すような平坦化層と同時にエッチングストッパー層が平坦化された平坦化部11が得られた。
ここで、平坦化に用いられるプロセスは研磨、ラッピング、CMPなど種々有るが、埋め込み材料とエッチングストッパー層材料を平坦化できる手法であれば特に限定するものではない。
次に、第二の構造体を形成する工程(図3(f))を、以下のように実施した。
第二の構造体を形成するため、平坦化されたエッチングストッパー層上に、スパッタリング法により、膜厚66nmの酸化チタン層の成膜を行った。その結果、表面の平坦性が良く、連続で一様な酸化チタン層12を得ることが出来た。
次に、第一の酸化チタン層と同様にクロム、酸化シリコン、BARC層、フォトレジスト層を設けて、露光現像後、マスク層のエッチングを実施した。それぞれのエッチング条件は第二の酸化チタン層の線幅が112nmになるように最適化を行なった後、実施した。
次に、犠牲層を取り除く工程(図3(g))を、以下のように実施した。
RIE装置を用いて、酸素ガスによりアッシングを行った。アッシング条件は、圧力3Pa、パワー100Wで、3分間実施した。そして、第一層のホールに埋め込まれた犠牲層を取り除き、中空部13を得た。
以上のようにして、2層構成の酸化チタンによる3次元構造を得た。
6インチ面内の9点パターン全てにおいて、パターンを作製した□25mmの範囲は外観上均一であり、0.5MPaの窒素ブローを実施しても、外観に変化は無く、良好であった。また、パターン中央を割断して、断面をFE−SEMで観察した結果、第一層と第二層は、エッチングストッパー層を介して、強固に密着していることが確認された。
このような構造体は光学位相板として機能する。
なお、本実施例において、成膜方法はスパッタリング法で実施したが、真空蒸着法、CVD法、ウエット成膜法など、誘電体膜を成膜できる手法であれば特に限定するものではない。
(参考例1)
上記実施例1の研磨工程のかわりに、RIEによるエッチング方式を用いて実施した以外、上記実施例1と同様に作製したサンプルを準備した。
平坦化条件は、酸素ガス(17vol%)とCHF(83vol%)の混合ガスをエッチングガスとして圧力3Pa、RFパワー20Wで330秒アッシングを実施した。
犠牲層をアッシング後のサンプルを確認した。
その結果、6インチ面内の9点パターン全てにおいて、パターンを作製した□25mmの範囲は外観上均一であったものの、0.5MPaの窒素ブローを実施した結果、図5に示した18−5以外の8点のサンプルは散乱光が発生するように変化した。
この変化後のパターン中央を割断して、断面を電子顕微鏡で観察した結果、第二層は一部分ブローで吹き飛ばされてしまっていた。よって研磨による平坦化の方がより好ましいことがわかった。
[実施例2]
本実施例では、実施例1で得た光学素子の第二の構造体上面にさらに、実施例1と同様に酸化アルミニウム製のエッチングストッパー層を設けて、犠牲層で埋め込み、研磨により平坦化を実施した。
その後、実施例1の第一の構造体と同様な構造の第三の構造体をその上層設け、犠牲層をアッシングしてサンプルを得た。
得られた基板を切断して9個のサンプル片を得た。このサンプル片それぞれをSF6光学ガラスで作製された45°プリズムによってオプティカルコンタクト状態で挟み込むことで分光特製の評価を行った。
なお、貼り合わせる方向は第一の構造体および第三の構造体のライン方向がプリズムの斜面と平行になるように実施した。その結果を図8に示した。
図8は偏光ビームスプリッタの光学特性を示しており、グラフの横軸は波長、縦軸は透過率である。
また、破線19はP偏光透過率、実線20はS偏光透過率を示す。
この結果、高い偏光特性を有する偏光ビームスプリッタが得られた。
また、得られた光学特性はばらつきが少なく、ウエハ全面で均一な構造が得られていることが判明した。
(比較例1)
上記実施例2と比較するため比較例1において、エッチングストッパー層を形成しない従来の方式による偏光ビームスプリッタのサンプルを作製した。
なお、研磨による平坦化処理時間は200秒とした。また、同様にプリズムで挟み込んで光学特性を測定した。その結果を、図9に示した。
図9は従来の方式で作製した偏光ビームスプリッタの光学特性を示しており、グラフの横軸は波長、縦軸は透過率である。
また、破線21はP偏光透過率、実線22はS偏光透過率を示す。その結果、S偏光は大きく変化することはないものの、P偏光は透過率の低下が確認された。また、6インチウエハー内において光学特性のバラツキも認められた。
図7に示す18−1、3、7、9が最も透過率が低く、次いで、18−2、4、6、8、最も透過率の高いものは18−5であったが、実施例2と比較しても透過率が低下している。
これらのサンプルをそれぞれ割断して電子顕微鏡で観察した結果、第一の構造体においてオーバーエッチングが確認された。また、光学特性の低下と比例して、オーバーエッチングの深さが深くなっていることも判明した。
[実施例3]
本実施例では、実施例1において、研磨工程が終了した基板に対し、第三の実施形態を適用して、次のような処理を行った。
RIEによるエッチング方式を用いてエッチングストッパー層間に存在する犠牲層をエッチバックし、隣り合うエッチングストッパー層間に空隙部を形成した(図5(f))。
エッチバック条件は、酸素ガス(17vol%)とCHF(83vol%)の混合ガスをエッチングガスとして圧力3Pa、RFパワー20Wで10秒アッシングを実施した。本処理が完了した基板は、エッチングストッパー層の間に空隙部14が設けられた。
このエッチングストッパー層間の空隙部を含む基板に対して、成膜を施し、パターニングをして、エッチングを行い第2の構造体を形成した(図5(g))。
犠牲層のアッシングを実施し中空部を形成した(図5(h))。
さらに、実施例2と同様の処理を経て偏光ビームスプリッタを得た。
得られた偏光ビームスプリッタのS偏光透過率は実施例1よりもさらに低い値を示し、光学特性の向上が確認できた。
[実施例4]
実施例4では、上記第一の実施形態の構成を適用して3次元構造体による光学素子を構成した。ここでは、エッチングストッパー層として、化学量論組成であるAlを用いた。
このエッチングストッパー層をスパッタ法で作製するに際し、酸素分圧、スパッタパワー、圧力などのプロセスパラメータを変化させ、これにより、酸素を欠乏させるようにした。これによって、より高いエッチングレート選択比を得ることができた。
[実施例5]
実施例5では、上記第一の実施形態の構成を適用して3次元構造体による光学素子を構成した。ここでは、エッチングストッパー層として、HfOを用いた。
本実施例によれば、安定的に、光学特性にばらつきの無い微細光学素子を作製することができた。ここで、実施例4と同様に酸素を欠乏させることで、さらに高いエッチングレート選択比を得ることができた。
[実施例6]
実施例6では、上記第一の実施形態の構成を適用して3次元構造体による光学素子を構成した。本実施例では、エッチングストッパー層9としてZrOを用いた。
本実施例によれば、安定的に、光学特性にばらつきの無い微細光学素子を作製することができた。ここで、実施例4と同様に酸素を欠乏させることで、さらに高いエッチングレート選択比を得ることができた。
[実施例7]
実施例7では、上記第一の実施形態の構成を適用して3次元構造体による光学素子を構成した。本実施例では、エッチングストッパー層9としてYを用いた。
本実施例によれば、安定的に、光学特性にばらつきの無い微細光学素子を作製することができた。ここで、実施例4と同様に酸素を欠乏させることで、さらに高いエッチングレート選択比を得ることができた。
以上の各実施形態及び実施例で得られる3次元構造体による光学素子は、カメラ、プロジェクタ、光ピックアップ、光通信分野等における光学素子に適応することが可能である。
1、6、17 基板
2、8 第一の構造体
3、9 エッチングストッパー層
4、12、15 第二の構造体
5、14 隣り合うエッチングストッパー層間の空隙部
7 第一の構造体を形成する層
10 平坦化層(犠牲層)
11 結合部(平坦化部)
13、16 中空部(間隙部)
18 パターン形成領域
19、21 P偏光透過率
20、22 S偏光透過率

Claims (6)

  1. 基板上に、少なくとも第一の構造体と第二の構造体とを備えた光学素子の製造方法であって、
    スペース領域と構造部とが交互に繰り返し配列された前記第一の構造体を形成する工程と、
    前記構造部の上部にエッチングストッパー層を形成する工程と、
    前記エッチングストッパー層上に、前記第二の構造体をエッチングにより形成する工程とを有することを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. エッチングストッパー層を形成する工程の後、
    前記構造部及び前記エッチングストッパー層を平坦化層で埋める工程と、
    前記平坦化層を前記エッチングストッパー層の途中まで研磨して平坦化する研磨工程とを更に有する請求項1記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記研磨工程の後、
    前記平坦化層をエッチバックする工程を更に有することを特徴とする請求項2記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記基板と前記第一の構造体との間に、複数の層を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の光学素子の製造方法。
  5. 基板の上面に少なくとも第一の構造体と第二の構造体とを備えた光学素子であって、
    前記第一の構造体及び前記第二の構造体は、酸化チタン、酸化シリコン、酸化チタンと酸化シリコンの混合物、酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物または酸化チタンと酸化ハフニウムの混合物による構造部が、可視光の波長以下のピッチで繰り返し配列され、
    前記第一の構造体と前記第二の構造体は、前記第一の構造体の上部に形成され、前記第一の構造体の基板の上面と平行な方向の断面積より広い面積を持ち、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、および酸化イットリウムのいずれかで構成される結合体を介して結合されていることを特徴とする光学素子。
  6. 前記第一の構造体または第二の構造体は、ラインアンドスペースによる構造、ホールによる構造、ドットによる構造、のいずれかの構造であることを特徴とする請求項5記載の光学素子。
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