以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略断面図である。尚、画像形成装置1には、後述する定着装置が内蔵されている。
画像形成装置1は、画像読取部(画像データ取得部)200と画像形成本体部22とを備える。画像読取部200は、原稿給紙部210と、スキャナ部220と、CIS231と、画像形成本体部22の前面に露出するように配置されたユーザインタフェース部Iと、後述する反転機構を備えてなる。
原稿給紙部210は、ADF(Automatic Document Feeder)を備え、原稿トレイ211、ピックアップローラ212、プラテン213、排紙ローラ214及び排紙トレイ215を有する。原稿トレイ211には、読取対象とされる原稿が載置される。原稿トレイ211に載置された原稿は、1枚ずつピックアップローラ212によって取り込まれ、間隙を介して順次プラテン213へ搬送される。プラテン213を経由した原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215へ順次排出される。
前記プラテン213の周面に対向する位置のうち、原稿の搬送方向において読取位置Pより手前の予め定められた位置には、用紙を検出する図略のタイミングセンサが設置されており、該タイミングセンサの出力要求に基づき、前記読取位置Pへの原稿の搬送タイミングが図られる。前記タイミングセンサは、例えばフォトインタラプタにより構成される。
スキャナ部220は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成するものである。スキャナ部220は、ガラス221、光源222、第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227、結像レンズ228、CCD(Charged Coupled Device)229を備える。
このスキャナ部220は、光源222として冷陰極蛍光管等の白色蛍光ランプが用いられ、前記第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225、第1キャリッジ226、第2キャリッジ227及び結像レンズ228により、原稿からの光をCCD229に導く。スキャナ部220は、光源222として冷陰極蛍光管等の白色蛍光ランプを用いて構成されていることから、光源として3色LED等が用いられる後述のCIS231よりも色再現性に優れる。
ガラス221には、前記原稿給紙部210によらない原稿読取時に、ユーザの手動により原稿が載置される。光源222及び第1ミラー223は第1キャリッジ226によって支持され、第2ミラー224及び第3ミラー225は第2キャリッジ227によって支持されている。
画像読取部200の原稿読取方式として、ガラス221上に載置された原稿をスキャナ部220が読み取るフラットベッド読取モードと、原稿を原稿給紙部210(ADF)によって取り込み、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
フラットベッド読取モードでは、光源222がガラス221上に載置された原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はCCD229の受光面で結像される。
CCD229は一次元のイメージセンサであり、1ライン分の原稿の画像データを重複して処理する。第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、主走査方向と直交する方向(副走査方向、矢印Y方向)に移動可能に構成されており、1ライン分の読み取りが終了すると、副走査方向に第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227が移動し、次のラインの読み取りが行われる。
ADF読取モードでは、原稿給紙部210が原稿トレイ211に載置された原稿をピックアップローラ212によって1枚ずつ取り込む。このとき、第1キャリッジ226及び第2キャリッジ227は、読取窓230の下方に位置する予め定められた読取位置Pに配置される。
原稿給紙部210による原稿搬送で、原稿がプラテン213から排紙トレイ215への搬送経路に設けられた読取窓230上を通過するとき、光源222が原稿を照射し、主走査1ライン分の反射光が第1ミラー223、第2ミラー224、第3ミラー225の順に反射して、結像レンズ228に入射する。結像レンズ228に入射した光はCCD229の受光面で結像される。続いて原稿は原稿給紙部210によって搬送され、次のラインが読み取られる。
更に、原稿給紙部210は、切換ガイド216、反転ローラ217及び反転搬送路218を備えた反転機構を有する。この反転機構が、1回目のADF読み取りによって表面が読み取られた原稿を表裏反転させて読取窓230に再搬送することで、再度CCD229によって裏面の読み取りが行われる。
この反転機構は、両面読み取り時にのみ動作し、片面読み取り時は動作しない。片面読み取り時及び両面読み取り時において裏面の読み取り後、切換ガイド216は上側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は、排紙ローラ214によって排紙トレイ215に排紙される。
両面読み取り時における表面読み取り後、切換ガイド216は下側に切り替えられ、プラテン213を経た原稿は反転ローラ217によって反転搬送路218へ搬送される。その後、切換ガイド216は上側へ切り替わり、反転ローラ217が逆回転して原稿をプラテン213へ再給紙する。以下、反転機構を用いて原稿の両面を読み取らせるモードを両面反転読取モードと表記する。
更に、本実施形態の画像読取部200は、ADF読取モード時において、前述したように原稿の搬送途中でCCD229(スキャナ部220)によって原稿の表面の読み取りを行わせると略重複して(略並行して)、CIS231によって原稿の裏面の読み取りを行わせることが可能である。この場合、原稿トレイ211から原稿給紙部210により搬送された原稿は、読取窓230上を通過するときにCCD229によって表面が読み取られ、更にCIS231の配置箇所を通過する際に裏面が読み取られる。なお、CIS231では、光源としてRGBの3色LED等が用いられる。
このようにCCD229とCIS231を用いることで、原稿給紙部210による原稿トレイ211から排紙トレイ215までの一回の原稿搬送操作(ワンパス)によって原稿の表裏両面の読み取りが可能となる。以下、このようにCCD229とCIS231を用いて原稿の両面を読み取らせるモードを両面同時読取モードと表記する。
この両面反転読取モード及び両面同時読取モードは、ADF読取モードを用いて原稿の両面読み取りを行う際の読取モードとして備えられている。両面反転読取モードは、両面の印刷画像の画質を揃えたい場合に利用される一方、両面同時読取モードは、両面の印刷画像の画質に差があっても、読取時間の短縮化を優先させたい場合に利用される。なお、本実施形態における画像形成装置1は、両面同時読取モードに初期設定されており、前記読取モードのモード設定操作が何も行われないまま画像形成指示が入力された場合には、両面同時読取モードで原稿の画像読取動作が行われるようになっている。
画像形成装置1は、画像形成本体部22と、画像形成本体部22の左方に配設されたスタックトレイ6とを有している。画像形成本体部22は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙に画像を形成する画像形成部40とを備える。また、画像形成本体部22は、給紙トレイ471と該給紙トレイ471に載置された原稿を1枚ずつ画像形成部40に向けて繰り出す繰り出しローラ472とを備える。
画像形成部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、スキャナ部220で取得された画像データに基づいてレーザ光を出力して感光体ドラム43の表面を露光し、当該感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光装置423と、前記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44K,44Y,44M,44Cと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着部45とを備えている。
なお、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色の供給は、図略のトナーカートリッジから行われる。また、画像形成部40を通過した記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等が設けられている。
記録紙の両面に画像を形成する場合は、画像形成部40で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙を排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路Lに送って画像形成部40の上流域に再度搬送し、画像形成部40により他方の面に画像を形成した後、記録紙をスタックトレイ6又は排出トレイ48に排出する。
定着部45は、加熱される定着ローラ45Aと、定着ローラ45Aとの間でニップを形成するローラ45Bとを備える。当該定着部45は、定着ローラ45Aとローラ45Bとの間のニップにおいて、記録紙に転写されたトナー像を熱により当該記録紙に定着させる。
ユーザインタフェース部Iは、液晶モニタなどで構成された表示部5と、操作キー18とを備える。操作キー18は、画像形成装置1に実行させるべき各種のジョブの実行指示を行うために配置されている。そして、操作キー18が操作され、ジョブの実行指示が行われたとき、ユーザインタフェース部Iは、ジョブの実行指示を受け付ける。
また、表示部5は、操作キー18の操作によって実行指示が行われたジョブを実行するための画像を表示するために配置されている。
図2は、画像形成装置1に内蔵される定着装置の機能モジュールの一例を示したブロック図である。
定着装置2は、コントローラ10、誘導コイル121、先述の定着ローラ45Aを少なくとも含む定着部45、及び温度検出部14を備える。尚、定着部45の機能については先述した通りであるため、説明を省略する。
定着装置2において、2点鎖線で囲まれる加熱部12が、スイッチング素子120、通電されたとき磁界を発生させる誘導コイル121、スイッチング素子120をオンオフさせるためのゲート・ドライバ(駆動部)122、及び、誘導コイル121で発生する磁界の大きさ及び方向を変化させるための共振コンデンサ123を備えて構成されている。
図3は、加熱部12の具体的な構成例を模式的に示した図である。加熱部12は、スイッチング素子120A及び120Bを備える。
そして、スイッチング素子120A及び120Bの直列回路が電源Vとグランドとの間に配置されており、スイッチング素子120Aとスイッチング素子120Bとの間には、誘導コイル121と共振コンデンサ123との直列回路の一端が接続されている。そしてまた、誘導コイル121と共振コンデンサ123との直列回路の他端がグランドに接続されている。
尚、スイッチング素子120A及び120Bとしては、例えば、MOSFETやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等、種々の半導体スイッチング素子を用いることができる。
かかる構成の加熱部12では、スイッチング素子120Aがオンしスイッチング素子120Bがオフしているときには、電源Vによって電流が誘導コイル121及び共振コンデンサ123を流れる。この場合、電流は誘導コイル121を紙面右方向に流れ、当該電流により共振コンデンサ123に電荷が蓄積される。
一方で、スイッチング素子120Aがオフしスイッチング素子120Bがオンしているときには、共振コンデンサ123が放電することにより、電流が誘導コイル121を流れる。この場合、電流は誘導コイル121を紙面左方向に流れる。
温度検出部14は、定着ローラ45Aの温度を検出し、当該温度を電圧値で表した電圧信号をコントローラ10に向けて出力する。かかる温度検出部14は、サーミスタや熱電対などの感熱素子を用いて構成されている。尚、後述する温度検出部13も、温度検出部14と同様に、サーミスタや熱電対などの感熱素子を用いて構成されている。
コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えて構成されており、定着装置2を統括的に制御する。コントローラ10は、温度検出部13、CPU100、基準温度切換部101、スイッチ102、比較器103、先述のゲート・ドライバ122、先述のスイッチング素子120、及び、先述の共振コンデンサ123を備える。
温度検出部13は、スイッチング素子120A及び120Bそれぞれについて、温度を検出し、検出した温度を電圧値で表した電圧信号を、コントローラ10に出力する。例えば、温度検出部13は、2つの感熱素子を備えたブロックであり、各感熱素子は、例えば、スイッチング素子のパッケージ表面に配置されている。
CPU100は、所定の制御プログラムを実行することにより、制御部100A及び温度上昇率算出部100Bとして機能する。尚、制御部100A及び温度上昇率算出部100Bの詳細については後述する。
基準温度切換部101は、スイッチ102を駆動させるための駆動電流を出力する駆動回路である。この基準温度切換部101は、制御部100Aから、スイッチ102の接点Cを接点aに接続することを指示する切換信号が出力されたとき、スイッチ102の接点Cを接点aに接続させる。
一方で、基準温度切換部101は、制御部100Aから、スイッチ102の接点Cを接点bに接続することを指示する切換信号が出力されたとき、スイッチ102の接点Cを接点bに接続させる。
スイッチ102は、第1の基準温度を表す電圧値V1の電圧信号が供給される接点aと、第1の基準温度より高い第2の基準温度を表す電圧値V2の電圧信号が供給される接点bと、接点Cとを備え、接点Cは、基準温度切換部101によって、接点a及びbのいずれかの側に切り換えられる。かかるスイッチ102は、例えば、FETスイッチなどの半導体スイッチや、電磁リレーなどの機械式スイッチにより構成することができる。
ここにおいて、第1の基準温度は、スイッチング素子120A及び120Bの実際の温度(以下、実際の温度と称する)の急激な温度上昇により生じる、実際の温度と温度検出部13により検出される温度(以下、検出温度と称する)との間の温度差の最大値を、例えば実験的に測定し、この最大値にマージンを加えた値を、破壊温度から減じた温度である。
また、第2の基準温度は、実際の温度の穏やかな温度上昇により生じる、実際の温度と検出温度との間の温度差の最大値を、例えば実験的に測定し、この最大値にマージンを加えた値を、破壊温度から減じた温度である。
ここに、破壊温度は、スイッチング素子120A及び120Bが破壊するおそれのある温度である。かかる破壊温度としては、スイッチング素子120A及び120Bが、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのトランジスタで構成されている場合には、絶対最大定格として定められた温度を用いることができる。
比較器103は、例えば、オペアンプで構成されている。そして、比較器103の非反転入力端子にはスイッチ102の接点Cが接続されており、非反転入力端子には、第1の基準温度を電圧値V1で表した電圧信号と、第2の基準温度を電圧値V2で表した電圧信号のいずれかが入力される。
また、比較器103の反転入力端子には温度検出部13が接続されており、温度検出部13から出力された、温度を示す電圧信号を受け付ける。
比較器103は、反転入力端子に入力された電圧値(温度検出部13からの電圧信号で表された電圧値)が、非反転入力端子に入力される電圧信号で表された電圧値V1或いはV2以上となったとき、Lレベルの電圧信号を信号ラインL1及びL2に出力する。このとき、ゲート・ドライバ122に入力されるパルス信号のレベルがLレベルとなる。
図4は先述のスイッチ102及び比較器103の具体的な配置例を示した図である。
図4では、スイッチング素子120Aに対応して比較器103Aが設けられ、スイッチング素子120Bに対応して比較器103Bが設けられている。
そして、スイッチ102は、比較器103A及び103Bに共通して配置されており、スイッチ102の接点Cが各比較器の非反転入力端子に接続されている。これにより、各比較器の非反転入力端子には、スイッチ102を通じて、第1の基準温度を示す電圧値V1の電圧信号と、第2の基準温度を示す電圧値V2の電圧信号とのいずれかが入力される。
そして、各比較器の反転入力端子には、温度検出部13によって検出された、スイッチング素子120A及び120Bの温度を示す電圧信号が、それぞれ入力される。
各比較器は、反転入力端子に入力される電圧信号の電圧値が、スイッチ102を通じて非反転入力端子に入力される電圧信号の電圧値(V1或いはV2)以上となったとき、Lレベルの電圧信号を信号ラインL1及びL2に出力する。
各比較器は、各スイッチング素子の検出温度に応じて、信号ラインL1及びL2にLレベルの電圧信号を出力する。
例えば、比較器103Aは、スイッチング素子120Aの検出温度に応じて、Lレベルの電圧信号を出力し、比較器103Bは、スイッチング素子120Bの検出温度に応じて、Lレベルの電圧信号を出力する。尚、各比較器は、例えば、オープンドレイン出力となっており、ワイヤードORされるようになっている。
以下、制御部100A及び温度上昇率算出部100Bの機能について説明する。
温度上昇率算出部100Bは、スイッチング素子120A及び120Bについて、温度検出部13による検出温度の単位時間当たりの上昇値である上昇率Rtを算出する。
図5(b)は、検出温度の上昇率Rtの算出方法を示す説明図である。温度上昇率算出部100Bは、例えば、タイミングtaにおいて温度検出部13によって検出された検出温度Taと、タイミングtaから所定時間ΔX経過後のタイミングtbにおける検出温度Tbとを取得する。そして、温度上昇率算出部100Bは、検出温度Tbから検出温度Taを減算して得られた差ΔYを所定時間ΔXで除することにより、上昇率Rtを算出する。
制御部100Aは、画像形成装置1の電源がオンされた後、或いは、スリープモードから通常モードへ復帰した後に、スイッチング素子120Aとスイッチング素子120Bとを交互にオンオフさせて、定着部45の温度を、予め設定された定着温度未満の温度から定着温度にまで上昇させる。
また、制御部100Aは、温度上昇率算出部100Bによって算出されたスイッチング素子120A及び120B双方の検出温度の上昇率Rtが、予め設定された基準上昇率以上であるときには、基準温度切換部101に対して、スイッチ102の接点Cを接点aに接続することを指示する切換信号を基準温度切換部101に出力する。このとき、基準温度切換部101は、スイッチ102の接点Cを接点aに接続させる。
一方、制御部100Aは、温度上昇率算出部100Bによって算出されたスイッチング素子120A及び120B双方の検出温度の上昇率Rtが、予め設定された基準上昇率未満であるときには、基準温度切換部101に対して、スイッチ102の接点Cを接点bに接続することを指示する切換信号を基準温度切換部101に出力する。このとき、基準温度切換部101は、スイッチ102の接点Cを接点bに接続させる。
また、制御部100Aは、ゲート・ドライバ122に所定周期のパルス信号を出力する。ここに、制御部100Aから出力されるパルス信号は、例えば、オープンドレイン出力となっている。
具体的には、制御部100Aは、信号ラインL1及びゲート・ドライバ122を通じて、スイッチング素子120Aに所定周期のパルス信号を出力する。また、制御部100Aは、信号ラインL2及びゲート・ドライバ122を通じて、スイッチング素子120Bに、スイッチング素子120Aに出力されるパルス信号とは位相が180度異なるパルス信号を出力する。
これにより、スイッチング素子120Aがオンのときはスイッチング素子120Bがオフとなり、スイッチング素子120Aがオフのときはスイッチング素子120Bがオンとなる。
これにより、誘導コイル121に通電される電流の方向が、順方向(図3の紙面右方向)と逆方向(図3の紙面左方向)との間で交互に切り換わるので、誘導コイル121で発生する磁界の向き及び方向が順次変化する。その結果、定着ローラ45Aで渦電流が発生して、定着ローラ45Aが加熱される。
この構成によれば、制御部100Aは、画像形成装置1の電源投入時、或いは、スリープモードから通常モードへの復帰時に、スイッチング素子120A及び120Bにパルス信号を出力して、温度検出部14により検出される定着ローラ45Aの温度が定着温度となるように、定着ローラ45Aを加熱させる。
そして、制御部100Aは、定着ローラ45Aの温度が定着温度に達したとき、定着ローラ45Aの温度が定着温度を維持するように、スイッチング素子120A及び120Bへのパルス出力を制御する。
そしてまた、制御部100Aは、スイッチング素子120A及び120Bの双方について、温度検出部13による検出温度の上昇率Rtが基準上昇率以上であるときには、基準温度切換部101によって、スイッチ102Aの接点Cを接点aに接続する。この状態で、比較器、例えば、比較器103Aの反転入力端子に入力される電圧が、第1の基準温度を表す電圧値V1以上となると、比較器103Aは、Lレベルの電圧信号を信号ラインL1及びL2に出力する。
ここにおいて、先述のように、制御部100Aから信号ラインL1及びL2を通じてゲート・ドライバ122に出力されるパルス信号は、例えば、オープンドレイン出力となっている。
また、比較器の出力信号はワイヤードORされているから、比較器103A及び103Bのうちいずれか1つでもLレベルの電圧信号を出力すると、前記パルス信号が強制的にLレベルとなり、スイッチング素子120A及び120Bのすべてがオフする。
一方で、制御部100Aは、スイッチング素子120A及び120Bの双方について、温度検出部13による検出温度の上昇率Rtが基準上昇率未満であるときには、基準温度切換部101によって、スイッチ102Aの接点Cを接点bに接続する。この状態で、比較器、例えば、比較器103Aの反転入力端子に入力される電圧が、第2の基準温度を表す電圧値V2以上となると、比較器103Aは、Lレベルの電圧信号を信号ラインL1及びL2に出力する。
これにより、各スイッチング素子120A及び120Bには、Lレベルの電圧信号が出力されるので、各スイッチング素子120A及び120Bがオフとなる。
尚、以上の説明では、スイッチング素子120Aについて説明したが、スイッチング素子120Bについても同様であるため、スイッチング素子120Bについては説明を省略する。
以下、温度検出部13により検出されるスイッチング素子120A及び120Bの温度と、実際のスイッチング素子120A及び120Bの温度との関係について、説明する。
図5は、正常時における、温度検出部13により検出されるスイッチング素子120A及び120Bの温度(検出温度)T2の上昇率Rtと、温度T2と実際のスイッチング素子120A及び120Bの温度(実際の温度)T1とのズレとの関係を示した図である。
制御部100Aは、画像形成装置1の電源がオンされた後、或いは、スリープモードから通常モードへ移行した後、スイッチング素子120A及び120Bに出力するパルス信号のパルス周波数を高くして、スイッチング周波数を増大させることで、定着ローラ45Aの発熱量を増大させる。
この場合、スイッチング周波数が増大すると、スイッチング素子120A及び120Bの発熱量が増大し、スイッチング素子120A及び120Bの実際の温度T1が急激に上昇する。
ここにおいて、画像形成装置1の電源がオンされた後、或いは、スリープモードから通常モードへ移行してから、定着ローラ45Aの温度を定着温度にまで上昇させている期間が、期間P1である。
そして、定着ローラ45Aの温度が定着温度にまで上昇すると、制御部100Aは、パルス信号の周波数を減少させて定着ローラ45Aの発熱量を減少させることによって、定着ローラ45Aの温度を定着温度に維持させる。
そうすると、スイッチング素子120A及び120Bの発熱量が減少し、スイッチング素子120A及び120Bの温度がほぼ一定の温度ts0で一定になる。
ここにおいて、CPU100が定着ローラ45Aの温度を定着温度に維持させている期間が期間P2である。
定着ローラ45Aの温度を低温から定着温度にまで上昇させる期間P1の間は、スイッチング周波数の増大に伴って、スイッチング素子120A及び120Bの発熱量が増加する。
そうすると、スイッチング素子120A及び120Bの実際の温度T1、及び、検出温度T2がともに急激に上昇する。しかしながら、スイッチング素子120A及び120Bの熱が温度検出部13に伝わるのに時間がかかるため、検出温度T2はスイッチング素子120A及び120Bから所定の遅延時間遅れて上昇する。
そのため、図5に示すように、定着ローラ45Aの温度を低温から定着温度にまで上昇させるまでの期間P1では、遅延時間内のスイッチング素子120A及び120Bの温度上昇に応じて、検出温度T2と、実際の温度T1との間の温度差が増大する。
一方で、定着ローラ45Aの温度を定着温度に維持させている期間P2の間は、定着ローラ45Aの温度を定着温度に維持させるのに必要な電力を誘導コイル121に供給すればよいため、スイッチング素子120A及び120Bの発熱量は、定着ローラ45Aの温度を定着温度にまで上昇させる場合と比べて少ない。
そうすると、スイッチング素子120A及び120Bの実際の温度T1、及び、検出温度T2は、定着ローラ45Aの温度を低温から定着温度にまで上昇させるときとは異なり、穏やかに上昇する。
そのため、図5に示すように、定着ローラ45Aの温度を定着温度に維持させている期間P2の間は、定着ローラ45Aの温度を定着温度にまで上昇させるときよりも、検出温度T2と、実際の温度T1との間の温度差は、少なくなる。
そして、図5に示すように、期間P1の間は、検出温度T2が、第1の基準温度ts1を下回り、期間P2の間は、検出温度T2が、第2の基準温度ts2を下回る。
図6は、スイッチング素子120A及び120Bの過熱異常が生じ、スイッチング素子120A及び120Bの温度上昇率が大きいときの、温度検出部13により検出されるスイッチング素子120A及び120Bの温度(検出温度)T2と、実際のスイッチング素子120A及び120Bの温度(実際の温度)T1との関係を示した図である。
ここにおいて、以下の説明において、基準上昇率以上の上昇率で検出温度T2が上昇することを急激な上昇と称し、基準上昇率未満の上昇率で検出温度T1が上昇することを穏やかな上昇と称する。
また、第1の基準温度ts1は、先述したように、実際の温度T1の急激な温度上昇により生じる、実際の温度T1と検出温度T2との間の温度差の最大値にマージンを加えた値を、破壊温度から減じた温度である。
図6に示すように、スイッチング素子120A及び120Bのうち、例えば、スイッチング素子120Aに異常が生じ、スイッチング素子120Aの実際の温度T1が急激に上昇したときには、スイッチング素子120Aについて、検出温度T2と実際の温度T1との間の温度差が増大する。
そして、スイッチング素子120Aについて、実際の温度T1が破壊温度よりも低く、かつ当該破壊温度に近い温度以上となったとき、検出温度T2が、第1の基準温度ts1以上となる。
そして、第1の基準温度ts1は、先述のように、スイッチング素子120Aをオフさせる温度として設定されているため、スイッチング素子120Aについて、検出温度T2が第1の基準温度ts1以上となったとき、スイッチング素子120Aがオフされる。
図7は、スイッチング素子120A及び120Bの過熱異常が生じ、スイッチング素子120A及び120Bの温度上昇率が小さいときの、温度検出部13により検出されるスイッチング素子120A及び120Bの温度T2と、実際のスイッチング素子120A及び120Bの温度T1との関係を示した図である。
ここにおいて、第2の基準温度ts2は、実際の温度T1の穏やかな温度上昇により生じる、実際の温度T1と検出温度T2との間の温度差の最大値にマージンを加えた値を、破壊温度から減じた温度である。
図7に示すように、スイッチング素子120A及び120Bのうち、例えば、スイッチング素子120Aに異常が生じ、スイッチング素子120Aの実際の温度T1が穏やかに上昇したときには、スイッチング素子120Aについて、検出温度T2も実際の温度T1と同様に穏やかに上昇するが、検出温度T2と実際の温度T1との間の温度差は、実際の温度T1が急激に上昇したときよりも減少する。
そして、スイッチング素子120Aについて、実際の温度T1が破壊温度よりも低く、かつ当該破壊温度に近い温度以上となったとき、検出温度T2は、第2の基準温度ts2以上となる。
そして、第2の基準温度ts2は、先述のように、スイッチング素子120Aをオフさせる温度として設定されているため、スイッチング素子120Aについて、検出温度T2が温度ts2以上となったとき、スイッチング素子120Aがオフされる。
このように、スイッチング素子120Aについて、実際の温度T1が急激に上昇したときには、検出温度T2が第1の基準温度ts1以上となったときにスイッチング素子120Aがオフされ、実際の温度T1が穏やかに上昇したときには、検出温度T2が第2の基準温度ts2以上となったときにスイッチング素子120Aがオフされる。
これにより、以下の効果が奏される。すなわち、スイッチング素子120Aをオフさせる基準温度がts1のみであった場合には、実際の温度T1の上昇率Rtが穏やかなとき、図7に示すように、実際の温度T1が破壊温度よりも低い温度ts2以上となった時点で、検出温度T2が基準温度ts1以上となってしまう。
この場合、検出温度T2が基準温度ts1以上となった時点でスイッチング素子120Aをオフさせていては、不必要にスイッチング素子120Aをオフすることとなり、実際の温度T1が破壊温度を超えるおそれのない場合にまでスイッチング素子120Aをオフさせてしまう。
一方、スイッチング素子120Aをオフさせる基準温度がts2のみであった場合には、実際の温度T1の上昇率Rtが急激であれば、図7に示すように、検出温度T2がts2に達したときには、実際の温度T1が既に破壊温度を超えてしまった状態となる。この場合、スイッチング素子120Aは破壊から免れることができない。
本実施形態に係る定着装置2は、上記の技術的特徴を有するため、スイッチング素子120Aの実際の温度T1の上昇率Rtが急激な場合、及び、穏やかな場合のいずれにおいても、適切に、スイッチング素子120Aの温度が破壊温度に達することを防止できる。これにより、不必要にスイッチング素子120Aをオフすることがなく、適切に、スイッチング素子120Aを破壊から保護することができる。
尚、本実施形態に係る定着装置2は、定着ローラ45Aの温度を定着温度にまで上昇させる期間P1の間にスイッチング素子120A及び120Bの過熱異常が生じた場合でも、スイッチング素子120A及び120Bを破壊から保護することができる。
すなわち、期間P1の間は、スイッチング素子120A及び120Bの発熱量が大きいため、期間P1の間は、スイッチング素子120A及び120Bについて、検出温度T2が急激に上昇する。この場合、制御部100Aによって、スイッチ102の接点Cが接点aに接続されて、スイッチング素子120A及び120Bをオフさせる温度として、第1の基準温度ts1が設定される。
そして、期間P1の間に、スイッチング素子120A及び120Bのいずれかのスイッチング素子、例えば、スイッチング素子120Aで過熱異常が生じて、スイッチング素子120Aの検出温度T2が第1のしきい値ts1以上となったとき、スイッチング素子120Aがオフされる。
これにより、期間P1の間にスイッチング素子120Aの過熱異常が生じた場合に、スイッチング素子120Aの破壊を防止することができる。
尚、以上の説明では、スイッチング素子120Aについて説明したが、スイッチング素子120Bについても同様であるため、スイッチング素子120Bについては説明を省略する。
以下、定着装置2の処理の一例について説明する。図8は、定着装置2の基本動作の一例について示したフローチャートである。
制御部100Aは、スリープモードから通常モードへ復帰したとき、或いは、電源スイッチがオンとされたとき、スイッチング素子120Aとスイッチング素子120Bとを交互にオンオフさせて、定着部45を加熱させる。
制御部100Aは、スリープモードから通常モードへ復帰したとき、或いは、電源スイッチがオンとされたとき、温度検出部13により、各スイッチング素子の温度の検出を開始させる(ステップS1)。
そして、温度上昇率算出部100Bは、各スイッチング素子について、温度検出部13による検出温度T2の上昇率Rtを算出する(ステップS2)。制御部100Aは、スイッチング素子120A及び120Bの双方の検出温度T2の上昇率Rtが基準上昇率α以上であるとき(ステップS3のYES)、スイッチ102の接点Cを接点aに接続させる(ステップS4)。
そして、各スイッチング素子は、各スイッチング素子の検出温度T2が第1の基準温度ts1を下回る限り(ステップS5のNO)、オンオフを継続するが、各スイッチング素子の検出温度T2が、第1の基準温度ts1以上となったとき(ステップS5のYES)、オフとなる(ステップS8)。
一方、制御部100Aは、スイッチング素子120A及び120Bの双方の検出温度T2の上昇率Rtが基準上昇率α未満であるとき(ステップS3のNO)、スイッチ102の接点Cを接点bに接続させる(ステップS6)。
そして、各スイッチング素子は、各スイッチング素子の検出温度T2が第2の基準温度ts2を下回る限り(ステップS7のNO)、オンオフを継続するが、各スイッチング素子の検出温度T2が、第2の基準温度ts2以上となったとき(ステップS7のYES)、オフとなる(ステップS8)。
以上に示すように、スイッチング素子120A及び120Bの双方の検出温度T2の上昇率Rtが基準上昇率α以上であれば、各スイッチング素子の検出温度T2が、第1の基準温度ts1以上となったときに各スイッチング素子がオフとなり、スイッチング素子120A及び120Bの双方の検出温度T2の上昇率Rtが基準上昇率α未満であれば、各スイッチング素子の検出温度T2が第2の基準温度ts2以上となったときに各スイッチング素子がオフとなる。
これにより、スイッチング素子120A及び120Bの検出温度T2の上昇率Rtが急激なとき、或いは、穏やかなときのいずれにおいても、スイッチング素子120A及び120Bの温度が破壊温度に達することを適切に防止できる。
尚、本実施形態では、加熱部12は、誘導コイル121で発生する磁界の向き及び大きさを変化させて、定着ローラ45Aを加熱させる電磁誘導加熱方式を採用しているが、この例には限られず、定着ローラ45Aを電熱ヒーターによって加熱してもよい。