以下では、図1から図5までを用いて、本発明に係るコンバインの実施の一形態であるコンバイン1の全体構成について説明する。以下の説明においては、コンバイン1の進行方向を前方向として、前後左右方向を規定するものとする。
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6、排藁処理部7及び操縦部8を備える。コンバイン1は、動力をエンジン9から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部6及び排藁処理部7にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33及び切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42を有する(図2参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を有する(図2参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部6に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
穀粒貯溜部6は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部6は、グレンタンク61及び穀粒排出装置62を有する。穀粒貯溜部6は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク61により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置62によりグレンタンク61から機体の外部へ排出する。
排藁処理部7は、機体の後側に配置される。排藁処理部7は、排藁搬送装置71及び排藁切断装置72を有する。排藁処理部7は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置71により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置72へ搬送し、排藁を排藁切断装置72へ搬送した場合には排藁切断装置72により切断した後に機体の外部へ排出する。
操縦部8は、機体の右前側に配置される。操縦部8は、操縦席81や、ステアリングハンドル82、キャビン83、操作パネルなどを有して、操縦席81やステアリングハンドル82、操作パネルなどをキャビン83により覆い、操縦席81に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル82や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
こうして、コンバイン1は、操縦部8における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン9から操縦部8を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部6に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部7により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
次に、脱穀部4および選別部5の構成について説明する。
図2に示すように、脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備えるとともに、処理胴43及び処理胴網を備える。
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向を前後方向として扱室44に配置されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。受網45は、扱胴42をその周面に沿って下方から覆うように、扱室44に配置される。
処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン9からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網は、処理胴43をその周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口を介して連通する。
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部7との間にわたって配置されて、駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン9からの動力が駆動スプロケット47に伝達されることによって、前後方向に回転する。これらの駆動スプロケット47と複数の従動スプロケット48・48とは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
図2に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。
揺動選別装置本体は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43および処理胴網の下方に配置されて、下部機枠10に揺動可能かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体は、揺動機構の揺動軸にエンジン9からの動力が伝達されることによって、下部機枠10に対して揺動する。
フィードパンは、前フィードパン51及び後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。グレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体の後部に支持される。
風選別装置は、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を備える。
唐箕ファン17は、前フィードパン51の後部及び後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠10の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン17の前上方に配置されて、下部機枠10の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置151と二番搬送装置152との間に配置されて、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。
吸引ファン59は、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠10の後端部の上方で左右方向に横設される。そして、唐箕ファン17、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59は、エンジン9からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。
穀粒搬送装置は、一番搬送装置151、二番搬送装置152、一番揚穀装置155、二番還元装置156を備える。
一番搬送装置151は、唐箕ファン17の後方であってチャフシーブ53およびグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠10の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置152は、一番搬送装置151及びセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠10の後部に左右方向に横設される。
一番揚穀装置155は、一番搬送装置151の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置155は、その下端部で一番搬送装置151の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部6のグレンタンク61と接続される。
二番還元装置156は、二番搬送装置152の右側方に配置されて、下部機枠10の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置156は、その後下端部で二番搬送装置152の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44または揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部7に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった未処理物は、扱室44から送塵口を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網により選別される。
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45および処理胴網から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
チャフシーブ53およびグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン17及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置151に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン17およびプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置152の上方へ向けて飛ばされる。
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン17、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置152に収容される。他の塵埃などは、吸引ファン59により吸引されて、三番口から外部に排出される。
一番物は、一番搬送装置151により一番揚穀装置155に搬送され、つづいて一番揚穀装置155により穀粒貯溜部6のグレンタンク61に搬送されて、グレンタンク61に貯溜される。二番物は、二番搬送装置152により二番還元装置156に搬送され、つづいて二番還元装置156により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置及び風選別装置により再選別される。
次に、チャフシーブ53の構成について説明する。
図2、図3、及び図5に示すように、チャフシーブ53は、多数のチャフフィン16・16・・・と、左右一対の第一枢支片137・137と、左右一対の第二枢支片138・138で構成される。左右の第一枢支片137は、前後方向に延長され、それぞれ揺動選別装置本体の左右の側板の外側面に固定される。左右の第二枢支片138は、左右の第一枢支片137と平行に前後方向に延長され、それぞれ左右の第一枢支片137の真下に所定間隔を隔てて配置される。
多数のチャフフィン16・16・・・は、前後方向に所定間隔ごとに配置され、前低後高状に傾斜した状態で、左右の第一枢支片137・137の間に横架されるとともに、左右の第二枢支片138・138の間に横架される。各チャフフィン16の左右両側の上端縁部は前記側板の孔を貫通して第一枢支片137に枢支され、左右両側の下端縁部は前記側板の長孔を貫通して第二枢支片138に枢支される。こうして、第二枢支片138が第一枢支片137に沿って前後方向へ移動することによって、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を支点として揺動され、各チャフフィン16の角度が変更されることとなる。
図3に示すように、各チャフフィン16に対しては、その角度を調節するための角度調節装置13が設けられる。角度調節装置13は、チャフアクチュエータ130、第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、付勢部材136等を備える。角度調節装置13は、多数のチャフフィン16・16・・・の角度を予め設定された角度に対して増大または減少するように調節する。
チャフアクチュエータ130は、電動式モータで構成される。チャフアクチュエータ130の出力軸には、第一小径ギヤ139が固設される。第一ギヤアーム131は、第一小径ギヤ139と噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部131aとを備えて構成される。そして、第一小径ギヤ139と第一ギヤアーム131の歯部とが噛合され、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132の一端部とが連結される。
調節レバー134は板状部材で構成される。調節レバー134は、側面視で五角形状に形成され、その長手方向を略上下方向として前低後高状に傾斜した状態で、左側第一枢支片137及び第二枢支片138の左側方に配置される。調節レバー134は、その上端部で左側第一枢支片137の前後中途部に支軸135を介して回動自在に支持されるとともに、その上下中途部で左側第二枢支片138の前後中途部に回動自在に枢結される。調節レバー134の下端部には、ワイヤ132の他端部が前方から連結される。つまり、調節レバー134の下端部が、第一ギヤアーム131の突出部131aとワイヤ132を介して連係される。
また、調節レバー134の下端部には、ばね等からなる付勢部材136の一端部が後方から連結される。そして、調節レバー134が、ワイヤ132の引張方向(前方向)とは逆方向(後方向)に付勢部材136により付勢される。調節レバー134が付勢部材136の付勢力に従って支軸135を中心に後方向へ回動するとき、各第二枢支片138・138が各第一枢支片137・137に対して後方へ移動して、各チャフフィン16が左右両側の上端縁部を中心に回動し、各チャフフィン16の角度が増大方向へ変化する。
このような構成により、角度調節装置13においては、チャフアクチュエータ130を駆動制御して、各チャフフィン16の角度(以下、「チャフフィン角度θ」と記す)を第一ギヤアーム131、ワイヤ132、調節レバー134、第二枢支片138を介して調節することが可能となる。
ここで、チャフフィン角度θは、水平方向に対するチャフフィン16の角度である。チャフフィン角度θが大きくなるに従って、隣り合うチャフフィン16・16間の隙間(最短距離)が大きくなる。また、チャフフィン角度θが小さくなるに従って、隣り合うチャフフィン16・16間の隙間(最短距離)が小さくなる。以下では、チャフフィン16・16間の隙間を「チャフシーブ53の開度」と定義し、説明を行う。
次に、唐箕ファン17の構成について説明する。
図2及び図3に示すように、唐箕ファン17は、回転軸171や複数の羽根体172・172・・・などで構成される。回転軸171は、軸心方向を左右方向として、その左右両端部が下部機枠10における左右の側板10a・10aの前下部に開口された吸入口176の上下中途部に前後方向に架設したプレート177に軸支される。複数の羽根体172・172・・・は、それぞれ回転軸171から支持部材174・174・・・を介して当該回転軸171の半径方向に放射状に突設される。そして、唐箕ファン17先端の前軌跡の前外側は、前被覆板173により覆われている。
唐箕ファン17は、下部機枠10における左右の側板10a・10aとその間に横設された前被覆板173からなるケースに収容される。唐箕ファン17の左右両側方(回転軸171の軸方向両端部付近)には、吸入口176・176が設けられる。吸入口176・176は、それぞれ下部機枠10における左右の側板10a・10aに形成されて、左右方向を向いて開口される。唐箕ファン17の後方には、吐出口175が略前後方向を向いて開口される。これにより、唐箕ファン17の回転時に、空気が吸入口176・176から前被覆板173の内部に導入されて、唐箕ファン17による選別風が発生し、この選別風が吐出口175から選別部5の後部へ、即ち選別方向の下手側へ向けて送られることとなる。
図3及び図4に示すように、唐箕ファン17の風量を調節するための風量調節装置14が設けられる。風量調節装置14は、唐箕ファン17の回転軸171の回転数を変更するための割プーリと、該割プーリの幅を変更するためのカム機構と、該カム機構を作動させるアクチュエータと、カム機構とアクチュエータとの間に配設される伝動機構からなる。
風量調節装置14は、唐箕アクチュエータ140、第二ギヤアーム141、変速ロッド142、固定変速カム144、可動変速カム145、可動プーリ146及び固定プーリ147からなる唐箕ファンプーリ148を備える。風量調節装置14は、吸入口176から上方または左方に配置される。ここで、風量調節装置14は、唐箕ファン17の風量を予め設定された基準風量(基準回転数)に対して増大または減少するように調節する。
唐箕アクチュエータ140は、電動式モータで構成される。唐箕アクチュエータ140の出力軸には、第二小径ギヤが固設される。第二ギヤアーム141は、第二小径ギヤと噛合可能な歯部と、半径方向外側に突出する突出部141aとを備えて構成される。そして、第二ギヤアーム141の歯部が第二小径ギヤと噛合され、第二ギヤアーム141の突出部141aが変速ロッド142の一端部と連結される。唐箕アクチュエータ140及び第二ギヤアーム141は、吸入口176の上方に配置され、下部機枠10の左側板10aの外側に第二取付部材143を介して取り付けられる。
図4に示すように、カム機構を構成する固定変速カム144は、左右方向の軸心を有する円筒形状に構成されて、回転軸171に軸受を介して外嵌される。固定変速カム144には、鍔部144aが円筒部から前後方向へ突出するように形成される。固定変速カム144は、プレート177の前後上下中央部に形成された孔に挿嵌されて、鍔部144aでプレート177に固定される。そして、回転軸171が固定変速カム144の円筒部にその軸心方向に沿って挿通されて回転自在に支持される。
固定変速カム144には、また、三つのカム面144b・144b・144bが円筒部の左側面に回転軸171と直交する面に対して傾斜するように形成されて、円筒部の周方向に順に配置される。
カム機構を構成する可動変速カム145は、固定変速カム144と略同一形状であり、左右方向の軸心を有する円筒形状に構成されて、回転軸171に軸受を介して軸心方向に摺動可能に外嵌される。可動変速カム145には、鍔部145aが円筒部から前後方向へ突出するように形成される。鍔部145aの後部には、変速ロッド142の他端部がボルト178により枢支される。つまり、後側の鍔部145aが、第二ギヤアーム141の突出部141aと、上下方向に延伸する変速ロッド142を介して連係される。
可動変速カム145には、また、三つのカム面145b・145b・145bが円筒部の右側面に回転軸171と直交する面に対して傾斜するように形成されて、円筒部の周方向に順に配置される。可動変速カム145は、カム面145b・145b・145bがそれぞれ固定変速カム144の各カム面144b・144b・144bと当接するように、固定変速カム144に左側から嵌合される。
こうして、固定変速カム144のカム面144b・144b・144bと、可動変速カム145のカム面145b・145b・145bとが当接した状態で、変速ロッド142が上下方向に移動することによって、可動変速カム145が回動することとなる。すなわち、変速ロッド142が最下位置に達したとき、カム面144b・144b・144bとカム面145b・145b・145bとが全面で当接して、可動変速カム145が最右位置となる。この状態で、変速ロッド142が上方へ移動するに従って、カム面144b・144b・144bとカム面145b・145b・145bとの当接度合いが小さくなり、可動変速カム145が回転軸171上を左方へ摺動することとなる。
可動プーリ146は、前記唐箕ファンプーリ148の割りプーリの一方であり、円錐台形状に構成されて、回転軸171に相対回転不能かつ軸心方向に摺動可能に外嵌される。可動プーリ146は、可動変速カム145の左側方に配置されて、軸心部に形成された円筒部146aで当該可動変速カム145にその右側から当接される。可動プーリ146は、可動変速カム145が回転軸171上を左右方向へ摺動する際、その摺動にともなって当該可動変速カム145と一体的に左右方向へ移動する。
固定プーリ147は、前記唐箕ファンプーリの割りプーリの他方であり、円錐台形状に構成されて、回転軸171に相対回転不能に支持される。固定プーリ147は、可動プーリ146と対向するように、この可動プーリ146の左側方に配置される。こうして、固定プーリ147と可動プーリ146との間に、唐箕ファンプーリのベルト溝が形成される。ベルト溝幅は、可動プーリ146が固定プーリ147に対して左右方向に摺動することにより、狭くまたは広く変更されることとなる。このベルト溝には、Vベルト等で構成されるベルト149が巻回される。ベルト149は、テンションプーリ150とともにカウンタケースの出力軸に固設された入力プーリに巻回されて、カウンタケースの出力軸に伝達されたエンジン9の動力が、唐箕ファンプーリ148に伝達される。
このような構成において、唐箕アクチュエータ140の駆動により第二小径ギヤが回動し、この第二小径ギヤと噛合する第二ギヤアーム141がその支軸を中心に図3における時計回り方向へ回動する場合、第二ギヤアーム141の突出部141aが下方へ移動して、可動変速カム145の鍔部145aが変速ロッド142により下方へ押される。これにより、可動変速カム145が、そのカム面144b・144b・144bと固定変速カム144のカム面145b・145b・145bとの当接度合いが大きくなるように、回転軸171回りに回動して、固定変速カム144に近接する方向、即ち右方向へ移動する。この可動変速カム145の移動にともなって、ベルト149における張力の右方への分力により、可動プーリ146が可動変速カム145に当接しつつ、固定プーリ147から離間する方向、即ち右方向へ回転軸171に沿って摺動する。その結果、図4(a)に示すように、唐箕ファンプーリ148のベルト溝幅が広がり、ベルト149の回転半径が小さくなる。その結果、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン17の回転数(以下、「唐箕ファン回転数N」と記す)が大きくなって、ひいては唐箕ファン17の風量が増大することとなる。
一方、唐箕アクチュエータ140の駆動により第二小径ギヤが回動し、この第二小径ギヤと噛合する第二ギヤアーム141がその支軸を中心に図3における反時計回り方向へ回動する場合、第二ギヤアーム141の突出部141aが上方へ移動して、可動変速カム145の鍔部145aが変速ロッド142により上方へ引っ張られる。これにより、可動変速カム145が、そのカム面144b・144b・144bと固定変速カム144のカム面145b・145b・145bとの当接度合いが小さくなるように、回転軸171回りに回動して、固定変速カム144から離間する方向、即ち左方向へ移動する。この可動変速カム145の移動にともなって、可動プーリ146が可動変速カム145に押されて、固定プーリ147に近接する方向、即ち左方向へ回転軸171に沿って摺動する。これにより、図4(b)に示すように、唐箕ファンプーリ148のベルト溝幅が狭まり、ベルト149の回転半径が大きくなる。その結果、回転軸171の回転数、即ち唐箕ファン回転数Nが小さくなって、ひいては唐箕ファン17の風量が減少することとなる。
次に、図3、図5、及び図6を用いてチャフアクチュエータ130及び唐箕アクチュエータ140の制御構成について説明する。
図5に示すように、コンバイン1においては、制御装置12が機体の任意位置に設けられる。制御装置12は、CPU、ROM、RAM、インターフェイス、バスなどを備える。図5に示すように、制御装置12は、第一設定操作具84と、第二設定操作具85と、排藁量検出装置160と、処理物量検出装置163と、チャフ角度検出装置167と、唐箕風量検出装置170と、刈取回転検出装置180と、穀稈検出装置190と接続される。
制御装置12は、また、チャフアクチュエータ130と、唐箕アクチュエータ140と、接続される。
第一設定操作具84は、チャフフィン16の角度を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第一設定操作具84は、ダイヤル84aと、センサ部84bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第一設定操作具84では、ダイヤル84aが回動操作される場合、ダイヤル84aの角度(以下、「選別ダイヤル角度A」と記す)がセンサ部84bで検出される。センサ部84bは、選別ダイヤル角度Aを検出信号として制御装置12に送信する。
第二設定操作具85は、唐箕ファン17の風量を人為的に補正するものである。本実施形態においては、第二設定操作具85は、ダイヤル85aと、センサ部85bとを有し、操縦部8の操作パネル近傍に配置される。第二設定操作具85では、ダイヤル85aが回動操作される場合、ダイヤル85aの角度(以下、「唐箕ダイヤル角度E」と記す)がセンサ部85bで検出される。センサ部85bは、唐箕ダイヤル角度Eを検出信号として制御装置12に送信する。
排藁量検出装置160は、排藁処理部7において排藁搬送装置71により搬送される脱穀後の排藁量を検出する装置である。
ここで、排藁搬送装置71は、排藁チェン74、挟扼杆75、支持杆76などから構成される。排藁搬送装置71では、挟扼杆75が、排藁チェン74の長手方向に沿って延長され、排藁チェン74の下方でその下部と対向配置される。そして、この挟扼杆75が、支持杆76により機体後部側に排藁チェン74の下部に対して近接離間方向、即ち上下方向へ移動可能に下方から支持されつつ、付勢部材77により当該支持杆76を介して排藁チェン74の下部に対して近接する方向へ移動するように常時付勢される。こうして、フィードチェン41から搬送されてきた脱穀後の排藁が、排藁チェン74の下部と、搬送中の排藁の量に応じて上下方向へ移動する挟扼杆75とに挟持され、排藁チェン74の回転駆動に従って後方へ搬送される。
排藁量検出装置160は、アーム部161と、ポテンショメータ等からなるセンサ部162とを有し、排藁搬送装置71の下方に配置される。排藁量検出装置160では、アーム部161の一端部がセンサ部162の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部161の他端部が排藁搬送装置71の支持杆76の下端に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、挟扼杆75が支持杆76とともに排藁チェン74と挟扼杆75とにより挟持されつつ搬送される排藁の量(層厚)に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部161がその支持杆76の移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部161の角度(以下、「排藁センサ角度B」と記す)が、センサ部162で検出される。センサ部162は、排藁センサ角度Bを検出信号として制御装置12に送信する。
処理物量検出装置163は、選別部5において揺動選別装置50のチャフシーブ53上の処理物量を検出する装置である。本実施形態においては処理物量検出装置163は、検出板164と、復帰板165と、ポテンショメータ等からなるセンサ部166とを有し、チャフシーブ53の上方に配置される。処理物量検出装置163では、検出板164の一端部が、センサ部166の回転軸に前後方向へ回転自在に取り付けられ、検出板164の他端部が、検出板164が初期位置にあるとき、チャフフィン16から所定距離だけ上方に位置するように配置される。当該所定距離とは、揺動選別装置50が揺動選別を行う場合に、処理物量検出装置163の検出板164及び復帰板165がチャフフィン16と干渉することがない程度の距離とする。復帰板165が検出板164の後側に一体的に取り付けられる。そして、処理物が前方から流れてきて検出板164に接触する場合には、検出板164が処理物量の量(流圧)に応じて初期位置から後方へ回動される。一方、処理物が検出板164に接触しない場合には、検出板164が復帰板165の重みにより初期位置に保持される。そして、検出板164の角度(以下、「シーブセンサ角度C」と記す)がセンサ部166で検出される。センサ部166は、シーブセンサ角度Cを検出信号として制御装置12に送信する。
図3に示すように、チャフ角度検出装置167は、チャフフィン16の角度を検出するものである。本実施形態においては、チャフ角度検出装置167は、アーム部168と、ポテンショメータ等からなるセンサ部169とを有し、第一ギヤアーム131の前方に配置される。チャフ角度検出装置167では、アーム部168の一端部がセンサ部169の回転軸に上下方向へ回転自在に取り付けられ、アーム部168の他端部が第一ギヤアーム131の突出部131aから左側方へ突出する突起に下方から上方へ向かって常時圧接される。そして、第一ギヤアーム131の突出部131aがチャフアクチュエータ130の駆動量に応じて上下方向へ移動される場合、アーム部168がその突出部131aの移動にあわせて同一方向へ回動される。そして、アーム部168の角度(以下、「第一ギヤアーム角度D」と記す)がセンサ部169で検出される。センサ部169は、第一ギヤアーム角度Dを検出信号として制御装置12に送信する。
制御装置12には、図6(a)に示す第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係を示すマップが記憶される。制御装置12は、第一ギヤアーム角度Dに基づいて、当該マップからチャフフィン角度θを決定して記憶する。制御装置12は、チャフフィン角度θを随時更新する。なお、図6(a)に示すマップは一例であり、第一ギヤアーム角度Dとチャフフィン角度θとの関係はこれに限るものではない。当該マップは、試験等により予め決定される。
唐箕風量検出装置170は、唐箕ファン17により前被覆板173から選別方向の下手側に向けて送られる唐箕ファン17の風量を検出する装置である。本実施形態においては、図3に示すように、唐箕風量検出装置170は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、唐箕ファン17の回転軸171の近傍に配置される。唐箕風量検出装置170では、唐箕ファン17が回転駆動される場合、回転軸171の回転速度に応じた波形Fが検出される。唐箕風量検出装置170は、検出された波形Fを、制御装置12に送信する。
制御装置12は、唐箕ファン回転数Nを算出する。具体的には、唐箕風量検出装置170の出力波形は、図6(b)に示すような波形Fとなる。
刈取回転検出装置180は、刈取部3における各装置にエンジン9からの動力を入力する刈取駆動軸35の回転を検出する装置である。本実施形態においては、刈取回転検出装置180は、磁気や光を用いた非接触式の回転センサからなり、図1に示すように、刈取部3の刈取駆動軸35の近傍に配置される。刈取回転検出装置180では、刈取部3における各装置が回転駆動される場合、刈取駆動軸35の回転数(以下、「刈取回転数G」と記す)が検出される。刈取回転検出装置180からの出力信号は、制御装置12に送信され刈取回転数Gとして取得される。
穀稈検出装置190は、搬送装置33で搬送される穀稈(刈取穀稈)の有無を検出する装置である。本実施形態においては、図1に示すように、穀稈検出装置190は、刈取部3の下部搬送装置上または下部搬送装置から縦搬送装置への穀稈搬送経路上に配置される。穀稈検出装置190はスイッチ等で構成され、穀稈の有無を制御装置12に送信する。
なお、第一設定操作具84、第二設定操作具85、排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、チャフ角度検出装置167、唐箕風量検出装置170、刈取回転検出装置180、穀稈検出装置190の具体的な構成は特に限定するものではなく、前述の構成はその一例である。
以下では、図6から図11までを用いて第一実施形態に係るコンバイン1の選別制御の態様(チャフフィン角度θ及び唐箕ファン回転数Nの制御態様)について説明する。
以下では、チャフフィン角度θの制御態様について説明する。
まず、チャフフィン角度θの目標値であるチャフフィン角度目標値θ*について説明する。
チャフフィン角度目標値θ*は、以下の数1に示す関係式で表される。
ここで、φは初期角度、αは選別ダイヤル補正角度、βは排藁補正角度、γはシーブ補正角度をそれぞれ表す。
初期角度φは、補正量を加味しない場合のチャフフィン角度θである。初期角度φは、予め任意の値に決定される。
選別ダイヤル補正角度αは、第二設定操作具85で設定された選別ダイヤル角度Aに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(c)に示す選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係を示すマップが記憶される。図6(c)に示すマップは、選別ダイヤル角度Aが小さい範囲では、選別ダイヤル角度Aに対する選別ダイヤル補正角度αの増加率が小さくなるように設定される。制御装置12は、選別ダイヤル角度Aに基づいて、当該マップから選別ダイヤル補正角度αを算出する。なお、図6(c)に示すマップは一例であり、選別ダイヤル角度Aと選別ダイヤル補正角度αとの関係はこれに限るものではない。
作業者は、第一設定操作具84を操作することにより、選別ダイヤル補正角度αを任意の値に設定することができる。これによって、例えば湿気や三番ロスの量等に応じて、数1より算出されるチャフフィン角度目標値θ*を大小に任意に調節することができる。
排藁補正角度βは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図7(a)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係を示すマップが記憶される。図7(a)に示すマップは、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正角度βを零とする不感帯を有するように設定される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、当該マップから排藁補正角度βを算出する。なお、図7(a)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正角度βとの関係はこれに限るものではない。
シーブ補正角度γは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により決定される値である。制御装置12には、図7(b)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係を示すマップが記憶される。図7(b)に示すマップは、シーブセンサ角度Cが小さい範囲では、シーブ補正角度γを零とする不感帯を有するように設定される。また、当該マップは、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正角度γを一定とする不感帯を有するように設定される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、当該マップからシーブ補正角度γを算出する。なお、図7(b)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正角度γとの関係はこれに限るものではない。
次に、図9を用いて、制御装置12によるチャフフィン角度目標値θ*の算出方法について説明する。ここでは、処理物量検出装置163に不具合が生じないと仮定する。
図9(a)に示すように、ステップS101において、制御装置12は、排藁量検出装置160に不具合が生じているか否かを判定する。排藁量検出装置160に不具合が生じているか否かは、他の検出装置の検出値を利用する等の方法により判定する。本実施形態においては、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合(検出値がゼロまたは最大値の場合等)に、排藁量検出装置160に不具合が生じたと判定する。ただし、刈り始めから所定時間経過後(穀稈検出装置190が穀稈有りを検出してから穀稈が排藁量検出装置160に至る時間経過後)に判定を開始するものとする。
なお、排藁量検出装置160に不具合が生じているか否かを判定する方法は、これに限るものではない。例えば、刈取回転検出装置180が所定値以上の刈取回転数Gを検出し、且つ排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合に、排藁量検出装置160に不具合が生じたと判定してもよい。
制御装置12は、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合、即ち排藁量検出装置160に不具合が生じていると判定した場合、ステップS102に移行する。
ステップS102において、制御装置12は、数1の排藁補正角度βの値に刈取補正角度δの値を代入する。制御装置12が刈取補正角度δの値を数1の排藁補正角度βの値に代入すると、チャフフィン角度目標値θ*は、以下の数2に示す関係式で表される。
刈取補正角度δは、刈取回転検出装置180で検出された刈取回転数Gに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図8(a)に示す刈取回転数Gと刈取補正角度δとの関係を示すマップが記憶される。図8(a)に示すマップは、刈取回転数Gが小さい範囲では、刈取回転数Gに対する刈取補正角度δの増加率が小さくなるように設定される。それ以外の範囲では、刈取回転数Gに対する刈取補正角度δの増加率が刈取回転数Gの増加に従って大きくなるように設定される。制御装置12は、刈取回転数Gに基づいて、当該マップから刈取補正角度δを算出する。なお、図8(a)に示すマップは一例であり、刈取回転数Gと刈取補正角度δとの関係はこれに限るものではない。
こうして、排藁量検出装置160に不具合が生じていると判定した場合、制御装置12は、初期角度φに選別ダイヤル補正角度αを加えた値に、シーブ補正角度γ及び刈取補正角度δを加えることで、チャフフィン角度目標値θ*を算出する。以上の如く、チャフフィン角度目標値θ*を算出するにあたって排藁補正角度βに代えて刈取補正角度δが関係式に加味される。
次に、図9及び図10を用いて、上記算出方法で算出されるチャフフィン角度目標値θ*と排藁センサ角度B及び刈取回転数Gとの関係について説明する。なお、説明の便宜上、本説明においては選別ダイヤル補正角度αは一定の値に設定されており、シーブ補正角度γも一定の値であるものとする。
排藁量検出装置160に不具合が生じていない場合、制御装置12は数1に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。この場合、図10(a)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、排藁センサ角度Bが所定値未満の範囲では変化せず、排藁センサ角度Bが所定値以上の範囲では排藁センサ角度Bの増減に応じて増減するように変化する。
排藁量検出装置160に不具合が生じた場合(図9(a)のステップS102)、制御装置12は数2に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。この場合、図10(b)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
上記の如く、制御装置12は、数1及び数2、上記各マップ、並びに排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、刈取回転検出装置180の検出値等に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。また、制御装置12は、チャフフィン角度θが算出されたチャフフィン角度目標値θ*と一致するように、チャフアクチュエータ130を制御する。すなわち、チャフシーブ53の開度が、チャフフィン角度目標値θ*に対応する開度になるように調節する。
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、穀稈を刈り取る刈取部3と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部4と、脱穀処理された処理物を選別する選別部5と、を備え、チャフアクチュエータ130によりチャフフィン16の角度を調節可能としたチャフシーブ53を前記選別部5に備えるコンバイン1であって、前記刈取部3を駆動する刈取駆動軸35の回転を検出する刈取回転検出装置180と、脱穀後の排藁量を検出する排藁量検出装置160と、前記チャフシーブ53上の処理物量を検出する処理物量検出装置163と、前記排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正角度β及び前記処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正角度γに基づいて前記チャフフィン16の角度θが初期角度(基準値)φから変化するように前記チャフアクチュエータ130を制御する制御装置12と、を備え、前記制御装置12は、前記排藁量検出装置160に不具合が生じた場合、前記刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正角度δを前記排藁補正角度βに代えて用いるものである。
このように構成することにより、排藁量検出装置160に不具合が生じた場合、不具合が生じた排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正角度βの代わりに刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正角度δに基づいてチャフフィン16の角度θを調節することとなる。したがって、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、穀粒の外部への損失、所謂3番ロスが低減され、選別精度が向上する。
また、作業中に排藁量検出装置160に不具合が生じた場合でも、刈取回転検出装置180を代用して選別制御を続行することとなる。したがって、作業を中断して不具合が生じた排藁量検出装置160の修理を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。
以下では、唐箕の制御態様について説明する。
まず、唐箕ファン17の回転数の目標値である唐箕ファン回転数目標値N*について説明する。
唐箕ファン回転数目標値N*は、以下の数3に示す関係式で表される。
ここで、Vは初期回転数、Pは唐箕ダイヤル補正回転数、Qは排藁補正回転数、Rはシーブ補正回転数をそれぞれ表す。
初期回転数Vは、補正量を加味しない場合の唐箕ファン17の回転数である。初期回転数Vは、予め任意の値に決定される。
唐箕ダイヤル補正回転数Pは、第一設定操作具84で設定された唐箕ダイヤル角度Eに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図6(d)に示す唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係を示すマップが記憶される。図6(d)に示すマップは、唐箕ダイヤル角度Eが小さい範囲では、唐箕ダイヤル角度Eに対する唐箕ダイヤル補正回転数Pの増加率が小さくなるように設定される。制御装置12は、唐箕ダイヤル角度Eに基づいて、当該マップから唐箕ダイヤル補正回転数Pを算出する。なお、図6(d)に示すマップは一例であり、唐箕ダイヤル角度Eと唐箕ダイヤル補正回転数Pとの関係はこれに限るものではない。
作業者は、第二設定操作具85を操作することにより、唐箕ダイヤル補正回転数Pを任意の値に設定することができる。これによって、例えば枝梗が付いている籾の量や湿気等に応じて、数4より算出される唐箕ファン回転数目標値N*を大小に任意に調節することができる。
排藁補正回転数Qは、排藁量検出装置160で検出された排藁センサ角度Bに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図7(c)に示す排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係を示すマップが記憶される。図7(c)に示すマップは、排藁センサ角度Bが小さい範囲では、排藁補正回転数Qを零とする不感帯を有するように設定される。制御装置12は、排藁センサ角度Bに基づいて、当該マップから排藁補正回転数Qを算出する。なお、図7(c)に示すマップは一例であり、排藁センサ角度Bと排藁補正回転数Qとの関係はこれに限るものではない。
シーブ補正回転数Rは、処理物量検出装置163で検出されたシーブセンサ角度Cに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図7(d)に示すシーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係を示すマップが記憶される。図7(d)に示すマップは、シーブセンサ角度Cが小さい範囲では、シーブ補正回転数Rを零とする不感帯を有するように設定される。また、当該マップは、シーブセンサ角度Cが大きい範囲では、シーブ補正回転数Rを一定とする不感帯を有するように設定される。制御装置12は、シーブセンサ角度Cに基づいて、当該マップからシーブ補正回転数Rを算出する。なお、図7(d)に示すマップは一例であり、シーブセンサ角度Cとシーブ補正回転数Rとの関係はこれに限るものではない。
次に、図9を用いて、制御装置12による唐箕ファン回転数目標値N*の算出方法について説明する。ここでは、処理物量検出装置163に不具合が生じないと仮定する。
図9(b)に示すように、ステップS111において、制御装置12は、排藁量検出装置160に不具合が生じているか否かを判定する。上述のように、本実施形態においては、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合(検出値がゼロまたは最大値の場合等)に、排藁量検出装置160に不具合が生じたと判定する。ただし、刈り始めから所定時間経過後(穀稈検出装置190が穀稈有りを検出してから穀稈が排藁量検出装置160に至る時間経過後)に判定を開始するものとする。
制御装置12は、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合、即ち排藁量検出装置160に不具合が生じていると判定した場合、ステップS112に移行する。
ステップS112において、制御装置12は、数3の排藁補正回転数Qの値に刈取補正回転数Sの値を代入する。制御装置12が刈取補正回転数Sの値を数3の排藁補正回転数Qの値に代入すると、唐箕ファン回転数目標値N*は、以下の数4に示す関係式で表される。
刈取補正回転数Sは、刈取回転検出装置180で検出された刈取回転数Gに基づいて制御装置12により算出される値である。制御装置12には、図8(b)に示す刈取回転数Gと刈取補正回転数Sとの関係を示すマップが記憶される。図8(b)に示すマップは、刈取回転数Gが小さい範囲では、刈取回転数Gに対する刈取補正回転数Sの増加率が小さくなるように設定される。それ以外の範囲では、刈取回転数Gに対する刈取補正角度δの増加率が刈取回転数Gに従って大きくなるように設定される。制御装置12は、刈取回転数Gに基づいて、当該マップから刈取補正回転数Sを算出する。なお、図8(b)に示すマップは一例であり、刈取回転数Gと刈取補正回転数Sとの関係はこれに限るものではない。
こうして、排藁量検出装置160に不具合が生じていると判定した場合、制御装置12は、初期回転数Vに唐箕ダイヤル補正回転数Pを加えた値に、シーブ補正回転数R及び刈取補正回転数Sを加えることで、唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。以上の如く、唐箕ファン回転数目標値N*を算出するにあたって排藁補正回転数Qに代えて刈取補正回転数Sが関係式に加味される。
次に、図9及び図11を用いて、上記算出方法で算出される唐箕ファン回転数目標値N*と排藁センサ角度B及び刈取回転数Gとの関係について説明する。なお、説明の便宜上、本説明においては唐箕ダイヤル補正回転数Pは一定の値に設定されており、シーブ補正回転数Rも一定の値であるものとする。
排藁量検出装置160に不具合が生じていない場合、制御装置12は数3に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。この場合、図11(a)に示すように、唐箕ファン回転数目標値N*は、排藁センサ角度Bが所定値未満の範囲では変化せず、排藁センサ角度Bが所定値以上の範囲では排藁センサ角度Bの増減に応じて増減するように変化する。
排藁量検出装置160に不具合が生じた場合(図9(b)のステップS112)、制御装置12は数4に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。この場合、図11(b)に示すように、唐箕ファン回転数目標値N*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
上記の如く、制御装置12は、数3及び数4、上記各マップ、並びに排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、刈取回転検出装置180の検出値等に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。また、制御装置12は、唐箕ファン回転数Nが算出された唐箕ファン回転数目標値N*と一致するように、唐箕アクチュエータ140を制御する。すなわち、唐箕ファン17の風量が、唐箕ファン回転数目標値N*に対応する風量になるように調節する。
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、前記選別部5に、唐箕アクチュエータ140により風量を調節可能とした唐箕ファン17を設け、前記制御装置12は、前記排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正回転数Q及び前記処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正回転数Rに基づいて前記唐箕ファンの回転数Nが初期回転数Vから変化するように前記唐箕アクチュエータ140を制御し、前記排藁量検出装置160に不具合が生じた場合、前記刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正回転数Sを前記排藁補正回転数Qに代えて用いるものである。
このように構成することにより、排藁量検出装置160に不具合が生じた場合、不具合が生じた排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正回転数Qの代わりに刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正回転数Sに基づいて唐箕ファン17の回転数Nを調節することとなる。したがって、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、穀粒の外部への損失、所謂3番ロスが低減され、選別精度が向上する。
また、作業中に排藁量検出装置160に不具合が生じた場合でも、刈取回転検出装置180を代用して選別制御を続行することとなる。したがって、作業を中断して不具合が生じた排藁量検出装置160の修理を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。
以下では、図12から図14までを用いて第二実施形態に係るコンバイン1の選別制御の態様(チャフフィン角度θ及び唐箕ファン回転数Nの制御態様)について説明する。なお、本実施形態に係るコンバイン1が第一実施形態に係るコンバイン1と異なる点は選別制御の態様のみであるため、コンバイン1の構造については説明を省略する。
以下では、チャフフィン角度θの制御態様について説明する。
なお、チャフフィン角度θの目標値であるチャフフィン角度目標値θ*を表す関係式は第一実施形態の数1と同一であるため、説明を省略する。
まず、図12を用いて、制御装置12によるチャフフィン角度目標値θ*の算出方法について説明する。ここでは、排藁量検出装置160に不具合が生じないと仮定する。
図12(a)に示すように、ステップS201において、制御装置12は、処理物量検出装置163に不具合が生じているか否かを判定する。処理物量検出装置163に不具合が生じているか否かは、他の検出装置の検出値を利用する等の方法により判定する。本実施形態においては、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合(検出値がゼロまたは最大値の場合等)に、処理物量検出装置163に不具合が生じたと判定する。ただし、刈り始めから所定時間経過後(穀稈検出装置190が穀稈有りを検出してから穀稈が脱穀されて穀粒がチャフシーブ53上に溜まる時間経過後)に判定を開始するものとする。
なお、処理物量検出装置163に不具合が生じているか否かを判定する方法は、これに限るものではない。例えば、刈取回転検出装置180が所定値以上の刈取回転数Gを検出し、且つ処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合に、処理物量検出装置163に不具合が生じたと判定してもよい。
制御装置12は、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合、即ち処理物量検出装置163に不具合が生じていると判定した場合、ステップS202に移行する。
ステップS202において、制御装置12は、数1のシーブ補正角度γの値に刈取補正角度δの値を代入する。この刈取補正角度δの値を数1のシーブ補正角度γの値に代入すると、チャフフィン角度目標値θ*は、以下の数5に示す関係式で表される。
こうして、処理物量検出装置163に不具合が生じていると判定した場合、制御装置12は、初期角度φに選別ダイヤル補正角度αを加えた値に、排藁補正角度β及び刈取補正角度δを加えることで、チャフフィン角度目標値θ*を算出する。以上の如く、チャフフィン角度目標値θ*を算出するにあたってシーブ補正角度γに代えて刈取補正角度δが関係式に加味される。
次に、図12及び図13を用いて、上記算出方法で算出されるチャフフィン角度目標値θ*とシーブセンサ角度C及び刈取回転数Gとの関係について説明する。なお、説明の便宜上、本説明においては選別ダイヤル補正角度αは一定の値に設定されており、排藁補正角度βも一定の値であるものとする。
処理物量検出装置163に不具合が生じていない場合、制御装置12は数1に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。この場合、図13(a)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、シーブセンサ角度Cが所定値未満の範囲では変化せず、シーブセンサ角度Cが所定値以上の範囲ではシーブセンサ角度Cの増減に応じて増減するように変化する。
処理物量検出装置163に不具合が生じた場合(図12(a)のステップS202)、制御装置12は数5に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。この場合、図13(b)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
上記の如く、制御装置12は、数1及び数5、上記各マップ、並びに排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、刈取回転検出装置180の検出値等に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。また、制御装置12は、チャフフィン角度θが算出されたチャフフィン角度目標値θ*と一致するように、チャフアクチュエータ130を制御する。すなわち、チャフシーブ53の開度が、チャフフィン角度目標値θ*に対応する開度になるように調節する。
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、穀稈を刈り取る刈取部3と、刈り取られた穀稈を脱穀する脱穀部4と、脱穀処理された処理物を選別する選別部5と、を備え、チャフアクチュエータ130によりチャフフィン16の角度を調節可能としたチャフシーブ53を前記選別部5に備えるコンバイン1であって、前記刈取部3を駆動する刈取駆動軸35の回転を検出する刈取回転検出装置180と、脱穀後の排藁量を検出する排藁量検出装置160と、前記チャフシーブ53上の処理物量を検出する処理物量検出装置163と、前記排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正角度β及び前記処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正角度γに基づいて前記チャフフィン16の角度θが初期角度(基準値)φから変化するように前記チャフアクチュエータ130を制御する制御装置12と、を備え、前記制御装置12は、前記処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、前記刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正角度δを前記シータ補正角度γに代えて用いるものである。
このように構成することにより、処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、不具合が生じた処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正角度γの代わりに刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正角度δに基づいてチャフフィン16の角度θを調節することとなる。したがって、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、穀粒の外部への損失、所謂3番ロスが低減され、選別精度が向上する。
また、作業中に処理物量検出装置163に不具合が生じた場合でも、刈取回転検出装置180を代用して選別制御を続行することとなる。したがって、作業を中断して不具合が生じた排藁量検出装置160の修理を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。
以下では、唐箕の制御態様について説明する。
なお、唐箕ファン17の回転数の目標値である唐箕ファン回転数目標値N*を表す関係式は第一実施形態の数3と同一であるため、説明を省略する。
まず、図12を用いて、制御装置12による唐箕ファン回転数目標値N*の算出方法について説明する。ここでは、排藁量検出装置160に不具合が生じないと仮定する。
図12(b)に示すように、ステップS211において、制御装置12は、処理物量検出装置163に不具合が生じているか否かを判定する。上述のように、本実施形態においては、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合(検出値がゼロまたは最大値の場合等)に、処理物量検出装置163に不具合が生じたと判定する。ただし、刈り始めから所定時間経過後(穀稈検出装置190が穀稈有りを検出してから穀稈が脱穀されて穀粒がチャフシーブ53上に溜まる時間経過後)に判定を開始するものとする。
制御装置12は、穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合、即ち処理物量検出装置163に不具合が生じていると判定した場合、ステップS212に移行する。
ステップS212において、制御装置12は、数3のシーブ補正回転数Rの値に刈取補正回転数Sの値を代入する。この刈取補正回転数Sの値を数3のシーブ補正回転数Rの値に代入すると、唐箕ファン回転数目標値N*は、以下の数6に示す関係式で表される。
こうして、処理物量検出装置163に不具合が生じていると判定した場合、制御装置12は、初期回転数Vに唐箕ダイヤル補正回転数Pを加えた値に、排藁補正回転数Q及び刈取補正回転数Sを加えることで、唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。以上の如く、唐箕ファン回転数目標値N*を算出するにあたってシーブ補正回転数Rに代えて刈取補正回転数Sが関係式に加味される。
次に、図12及び図14を用いて、上記算出方法で算出される唐箕ファン回転数目標値N*とシーブセンサ角度C及び刈取回転数Gとの関係について説明する。なお、説明の便宜上、本説明においては唐箕ダイヤル補正回転数Pは一定の値に設定されており、排藁補正回転数Qも一定の値であるものとする。
処理物量検出装置163に不具合が生じていない場合、制御装置12は数3に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。この場合、図14(a)に示すように、唐箕ファン回転数目標値N*は、シーブセンサ角度Cが所定値未満の範囲では変化せず、シーブセンサ角度Cが所定値以上の範囲ではシーブセンサ角度Cの増減に応じて増減するように変化する。
処理物量検出装置163に不具合が生じた場合(図12(b)のステップS212)、制御装置12は数6に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。この場合、図14(b)に示すように、唐箕ファン回転数目標値N*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
上記の如く、制御装置12は、数3及び数6、上記各マップ、並びに排藁量検出装置160、処理物量検出装置163、刈取回転検出装置180の検出値等に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。また、制御装置12は、唐箕ファン回転数Nが算出された唐箕ファン回転数目標値N*と一致するように、唐箕アクチュエータ140を制御する。すなわち、唐箕ファン17の風量が、唐箕ファン回転数目標値N*に対応する風量になるように調節する。
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、前記選別部5に、唐箕アクチュエータ140により風量を調節可能とした唐箕ファン17を設け、前記制御装置12は、前記排藁量検出装置160の排藁センサ角度Bに基づく排藁補正回転数Q及び前記処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正回転数Rに基づいて前記唐箕ファンの回転数Nが初期回転数Vから変化するように前記唐箕アクチュエータ140を制御し、前記処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、前記刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正回転数Sを前記シーブ補正回転数Rに代えて用いるものである。
このように構成することにより、処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、不具合が生じた処理物量検出装置163のシーブセンサ角度Cに基づくシーブ補正回転数Rの代わりに刈取回転検出装置180の刈取回転数Gに基づく刈取補正回転数Sに基づいて唐箕ファン17の回転数Nを調節することとなる。したがって、揺動選別装置50上の処理物が適切に選別されて、穀粒の外部への損失、所謂3番ロスが低減され、選別精度が向上する。
また、作業中に処理物量検出装置163に不具合が生じた場合でも、刈取回転検出装置180を代用して選別制御を続行することとなる。したがって、作業を中断して不具合が生じた排藁量検出装置160の修理を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態において、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163の双方に不具合が生じた場合、制御装置12は、第一実施形態の数2に示す関係式及び第二実施形態の数5に示す関係式に代えて、以下の数7に示す関係式に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出するとしてもよい。
こうして、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163の双方に不具合が生じた場合、制御装置12は、初期角度φに選別ダイヤル補正角度αを加えた値に、刈取補正角度δを加えることで、チャフフィン角度目標値θ*を算出する。以上の如く、チャフフィン角度目標値θ*を算出するにあたって排藁補正角度β及びシーブ補正角度γに代えて刈取補正角度δが関係式に加味される。
この場合、選別ダイヤル補正角度αが一定の値に設定されているとすると、図15(a)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
同様に、第一実施形態及び第二実施形態において、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163の双方に不具合が生じた場合、制御装置12は、第一実施形態の数3に示す関係式及び第二実施形態の数6に示す関係式に代えて、以下の数8に示す関係式に基づいて唐箕ファン回転数目標値N*を算出するとしてもよい。
こうして、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163の双方に不具合が生じた場合、制御装置12は、初期回転数Vに唐箕ダイヤル補正回転数Pを加えた値に、刈取補正回転数Sを加えることで、唐箕ファン回転数目標値N*を算出する。以上の如く、唐箕ファン回転数目標値N*を算出するにあたって排藁補正回転数Q及びシーブ補正回転数Rに代えて刈取補正回転数Sが関係式に加味される。
この場合、唐箕ダイヤル補正回転数Pが一定の値に設定されているとすると、図15(b)に示すように、唐箕ファン回転数目標値N*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。
以下では、図16を用いて第三実施形態に係るコンバイン1の選別制御の態様(チャフフィン角度θの制御態様)について説明する。なお、本実施形態に係るコンバイン1が第一実施形態及び第二実施形態に係るコンバイン1と異なる点は選別制御の態様のみであるため、コンバイン1の構造については説明を省略する。また、コンバイン1の選別制御の態様についても第一実施形態及び第二実施形態と同じ点については説明を省略し、異なる点のみ説明する。
本実施形態においては、排藁量検出装置160に不具合が生じた場合(図9(a)のステップS102)、制御装置12は、第一実施形態の数2に示す関係式に代えて、以下の数9に示す関係式に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。
ここで、φ’は異常時初期角度を表す。異常時初期角度φ’は、排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163に不具合が発生した時の補正量を加味しない場合のチャフフィン角度θである。この異常時初期角度φ’は、排藁量検出装置160及び処理物量検出装置163の双方に不具合が発生していない通常時の初期角度φに比べて所定値大きい任意の値に決定され制御装置12に記憶される。
こうして、排藁量検出装置160に不具合が生じた場合、制御装置12は、異常時初期角度φ’に選別ダイヤル補正角度αを加えた値に、シーブ補正角度γ及び刈取補正角度δを加えることで、チャフフィン角度目標値θ*を算出する。以上の如く、チャフフィン角度目標値θ*を算出するにあたって通常時の初期角度φに代えて異常時初期角度φ’が関係式に加味される。これにより、チャフフィン角度目標値θ*は、排藁量検出装置160に不具合が生じない場合に比べて常時確実に所定値だけ大きくなる。
この場合、選別ダイヤル補正回転数αが一定の値に設定されており、シーブ補正角度γも一定の値であるものとすると、図16(a)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。図16(a)に示すチャフフィン角度目標値θ*は、第一実施形態の図10(b)に示すチャフフィン角度目標値θ*に比べ、常時所定値(φ’―φの値)分だけ大きい値となっている。
また、本実施形態においては、処理物量検出装置163に不具合が生じた場合(図12(a)のステップS202)、制御装置12は、第二実施形態の数5に示す関係式に代えて、以下の数10に示す関係式に基づいてチャフフィン角度目標値θ*を算出する。
こうして、処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、制御装置12は、異常時初期角度φ’に選別ダイヤル補正角度αを加えた値に、排藁補正角度β及び刈取補正角度δを加えることで、チャフフィン角度目標値θ*を算出する。以上の如く、チャフフィン角度目標値θ*を算出するにあたって通常時の初期角度φに代えて異常時初期角度φ’が関係式に加味される。これにより、チャフフィン角度目標値θ*は、処理物量検出装置163に不具合が生じない場合に比べて常時確実に所定値だけ大きくなる。
この場合、選別ダイヤル補正回転数αが一定の値に設定されており、排藁補正角度βも一定の値であるものとすると、図16(b)に示すように、チャフフィン角度目標値θ*は、刈取回転数Gが所定値未満の範囲では変化せず、刈取回転数Gが所定値以上の範囲では刈取回転数Gの増減に応じて増減するように変化する。図16(b)に示すチャフフィン角度目標値θ*は、第二実施形態の図13(b)に示すチャフフィン角度目標値θ*に比べ、常時所定値(φ’―φの値)分だけ大きい値となっている。
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、前記制御装置12は、前記排藁量検出装置160又は前記処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、前記チャフフィン16の角度の初期角度(基準値)を、前記不具合が生じない場合の初期角度φに比べて所定値大きい異常時初期角度φ’に設定して前記チャフアクチュエータ130を制御するものである。
このように構成することにより、排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、チャフフィン16の角度を不具合が生じない場合に比べて確実に所定値だけ大きくなる傾向に調節することとなる。したがって、脱穀後の処理物が適切に選別されて、穀粒の外部への損失、所謂3番ロスが低減され、選別精度が向上する。
なお、唐箕ファン回転数Nについても同様に、排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163に不具合が生じた場合、初期回転数Vを不具合が生じない場合に比べて所定値だけ大きく設定してもよい。
以上の如く、第一実施形態から第三実施形態に係るコンバイン1は、前記刈取部3で搬送される穀稈の存在を検出する穀稈検出装置190を備え、前記制御装置12は、前記穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ前記排藁量検出装置160が排藁量を検出していない場合に、前記排藁量検出装置160に不具合が生じたと判断し、前記穀稈検出装置190が穀稈の存在を検出し、且つ前記処理物量検出装置163が処理物量を検出していない場合に、前記処理物量検出装置163に不具合が生じたと判断するものである。
このように構成することにより、穀稈検出装置190及び、排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163の2つの検出装置の検出値に基づいて不具合の有無を判断することとなる。したがって、排藁量検出装置160又は処理物量検出装置163の不具合の有無の判断精度を向上することができる。