JP5397626B2 - 信号線路の構造、信号線路の製造方法及び当該信号線路を用いたスイッチ - Google Patents

信号線路の構造、信号線路の製造方法及び当該信号線路を用いたスイッチ Download PDF

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Description

本発明は高周波用の信号線路の構造に関し、特にMEMS素子などに用いられる信号線路の構造に関する。また、本発明は、当該信号線路の製造方法や当該信号線路を用いたスイッチに関する。
MEMS素子等に用いられる高周波用の信号線路は、一般には、素子を形成された半導体層の一部に信号線路に沿って絶縁層を形成し、絶縁層の上にストリップ導体を設けたものである。したがって、このような半導体層は、ストリップ導体の線幅に比べて十分大きな幅を有するものであり、広い面積の基板が用いられている。
しかしながら、例えば2本の信号線路を近接させて平行に配線する場合、共通の半導体層の上にそれらの信号線路を平行に配線されていると、半導体層を通じて2本の信号線路間に電磁カップリングが生じる。そして、信号線路間に電磁カップリングが生じると、それぞれの高周波伝送信号どうしが混じってノイズが生じたり、クロストークが発生したり、伝送信号のリークが発生して伝送損失が大きくなったりする問題がある。また、信号線路の周囲に生じる電磁界が半導体層内に広がっているので、信号線路の近傍に他の素子が配置されている場合にも、信号線路とそれらの素子との間にも電磁カップリングが生じることがある。このような電磁カップリングが生じると、信号線路内を伝送される高周波信号のリークが発生して伝送損失が大きくなる。
このような信号線路の伝送損失を低減させる方法としては、特許文献1に開示された方法がある。これは図1に示すように、裏面に接地導体11を形成された誘電体基板12の上にストリップ導体13を設けることによってマイクロストリップ線路を形成し、ストリップ導体13の下面両側端部近傍に沿って誘電体基板12に溝14を形成したものである。
溝14の形成されていないマイクロストリップ線路では、誘電体基板12の下面両側端部において電界が集中してしまう。そこで、特許文献1のマイクロストリップ線路では、誘電体基板12の下面両側端部近傍に溝14を設けることで、誘電体基板12の下面両側端部近傍の媒質を誘電体材料(誘電体基板12)から誘電率1の空気に置換している。それによって誘電体基板12の下面両側端部近傍における電界集中を緩和し、伝送損失を軽減している。
しかしながら、半導体層の表面に形成された絶縁層(絶縁被膜)の上に金属配線を形成する場合には絶縁層の厚さが非常に薄いので、絶縁層に溝を形成しても効果が期待できない。そのため、上面にストリップ導体を備えた誘電体基板に溝を設けるという特許文献1のような構造を採用することはできなかった。
特開平9−246814号公報
本発明は、上記のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、半導体層の表面に形成された絶縁層の上にストリップ導体を設けた信号線路において信号のリークを低減させることのできる信号線路の構造と当該信号線路を用いたスイッチを提供することにある。
本発明に係る信号線路の構造は、ベースと、前記ベースの上面に形成された下絶縁層と、前記下絶縁層の上面において、少なくとも一部が信号伝送しようとする経路に沿って帯状に延びた半導体層と、前記半導体層の上面において少なくとも一部が前記半導体層に沿って帯状に延びた上絶縁層と、前記上絶縁層の上面において少なくとも一部が前記上絶縁層に沿って帯状に延びたストリップ導体とによって信号線路が構成されたことを特徴としている。ここで、ベースとしては、接地導体や半導体(必ずしも接地されていなくてもよい)などを用いることができる。
本発明にかかる信号線路の構造によれば、半導体層や上絶縁層がストリップ導体と同様に信号伝送しようとする経路に沿って帯状に延びているので、ストリップ線路とベースとの間の損失が発生する半導体層内を通る電磁界を少なくできるため損失を低減できる。半導体層を通して伝わるリークを低減できるので、信号線路の少なくとも一部が本発明の信号線路の構造のようになっていれば、信号線路からのリークを低減でき、各信号線路のアイソレーション特性を良好にするとともにインサーションロスを低減することができる。
本発明に係る信号線路の構造のある実施態様は、前記下絶縁層の少なくとも一部が、前記半導体層の下面に沿って帯状に延びていることを特徴としている。
また、本発明に係る信号線路の構造の別な実施態様は、上面に前記ストリップ導体が形成されていない範囲の一部において、前記下絶縁層、前記半導体層及び前記上絶縁層のうち少なくとも1つが形成されていないことを特徴としている。
また、本発明に係る信号線路の構造のさらに別な実施態様は、前記ベースを共通として、前記ベースの上に前記下絶縁層、前記半導体層、前記上絶縁層及び前記ストリップ導体からなる複数の信号線路を設けた信号線路の構造において、複数の前記信号線路は、少なくとも一部の前記半導体層が互いに分離され、少なくとも一部の前記上絶縁層が互いに分離され、かつ少なくとも一部の前記ストリップ導体が互いに分離されていることを特徴としている。前記下絶縁層どうしは、全体で連続していてもよく、全体で分離されていてもよく、一部で連続し一部で分離されていてもよい。かかる実施態様によれば、各信号線路をアイランド化できるので、信号線路間における信号のリークを低減でき、各信号線路のアイソレーション特性を良好にするとともにインサーションロスを低減することができる。
本発明に係る信号線路の製造方法は、第1の絶縁層を挟んで第1の半導体基板と第2の半導体基板が接合されたSOI基板の、前記第2の半導体基板の上面に第2の絶縁層を成膜する工程と、前記第2の絶縁層を帯状にパターニングして信号線路の上絶縁層を形成する工程と、前記上絶縁層の上面において前記上絶縁層に沿って信号線路のストリップ導体を作製する工程と、前記上絶縁層から露出した領域の前記第2の半導体基板をエッチングにより除去して前記第2の半導体層により信号線路の半導体層を形成する工程と、前記半導体層から露出した領域の前記第1の絶縁層をエッチングにより除去することにより、前記第1の半導体基板からなる信号線路のベースの上面に前記第1の絶縁層により信号線路の下絶縁層を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
本発明に係る信号線路の製造方法によれば、SOI基板を用いることにより、少ない工程で本発明に係る信号線路を製作することができる。
本発明に係るスイッチは、互いに接触又は離間する少なくとも一組の接点と、前記接点に流れる信号の経路の少なくとも一部に、請求項1に記載した信号線路の構造を用いたことを特徴としている。本発明にかかるスイッチによれば、信号の経路となる配線部分からの高周波信号のリークを低減でき、各信号線路のアイソレーション特性を良好にするとともにインサーションロスを低減することができる。
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
図1は、特許文献1に開示された高周波用伝送線路の構造を示す断面図である。 図2(a)は本発明の一実施形態による信号線路の一部を示す平面図、図2(b)はその斜視図である。 図3(a)〜(f)は、図2に示した信号線路の製造工程を説明するための概略断面図である。 図4(a)は本発明の別な実施形態による信号線路の一部を示す平面図、図4(b)はその斜視図である。 図5(a)〜(f)は、図4に示した信号線路の製造工程を説明するための概略断面図である。 図6は、比較例の信号線路を示す断面図である。 図7は、本発明に係る静電リレーの平面図である。 図8は、図7のA部を拡大して示す斜視図である。 図9は、本発明実施例に係るスイッチ(アイランド構造の信号線路を用いたもの)と比較例に係るスイッチ(アイランド構造でない信号線路を用いたもの)とにおける、スイッチオフ時のアイソレーション特性を示す図である。 図10は、本発明実施例に係るスイッチと比較例に係るスイッチとにおける、スイッチオン時のインサーションロスの周波数特性を示す図である。 図11(a)は、図9及び図10の結果を得るために用いた本発明実施例に係るスイッチのシミュレーション用モデルを示す平面図である。図11(b)は図11(a)のC−C線断面図である。 図12(a)は、図9及び図10の結果を得るために用いた比較例に係るスイッチのシミュレーション用モデルを示す平面図である。図12(b)は図12(a)のD−D線断面図である。 図13(a)は本発明実施例及び比較例のスイッチオフ時の状態を示す詳細図、図13(b)は本発明実施例及び比較例のスイッチオン時の状態を示す詳細図である。
以下においては、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものでなく、他の用途にも適用することができ、また本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更することができる。
(1本の信号線路)
図2(a)及び(b)は、本発明の実施形態1による信号線路を示す平面図及び斜視図である。この信号線路21は、MEMS素子などに用いられる1線路の信号線路を表している。この信号線路21は、ベース22の上に下絶縁層23、半導体層24及び上絶縁層25を積層し、さらに上絶縁層25の上面にストリップ導体26を配線したものである。
ベース22は、Siや高抵抗Siなどの半導体や金属からなる層又は基板であって、必要であれば回路基板などを通じてグランドに接続される。半導体層24は、絶縁性又は半絶縁性の半導体層であって、例えば高抵抗のSi基板からなる。下絶縁層23及び上絶縁層25は、酸化膜(SiO)や窒化膜(SiN)からなる。ストリップ導体26は、帯状の金属導体層であって、例えば下層がCrで上層がAuからなる2層構造となっている。あるいは、ストリップ導体26は、Pt、Au、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Ta、Pt合金、Au合金などによって形成してもよい。
この信号線路21は、例えば数十μm程度の線幅を有するものであって、信号伝送経路に沿って配線されている。また、信号線路21はアイランド化されており、下絶縁層23、半導体層24及び上絶縁層25は、ストリップ導体26とほぼ等しい幅を有している。図2に示す信号線路21では、上絶縁層25の幅がストリップ導体26の幅よりも若干広く、下絶縁層23及び上絶縁層25の幅が半導体層24の幅よりも若干狭くなっている。ただし、各層の幅はこのような大小関係に限るものでなく、例えば下絶縁層23、半導体層24及び上絶縁層25の幅は等しくてもよい。また、上絶縁層25の幅をストリップ導体26より狭くしてもよく、下絶縁層23の幅を半導体層24より広くしてもよい。
このような信号線路21では、高周波信号が伝送されるとき、ストリップ導体26とベース22との間の上絶縁層25、下絶縁層23及び半導体層24内に電界及び磁界が集中し、高周波信号が信号線路21に沿って伝送される。しかも、この信号線路21では、ストリップ導体26の周辺の下絶縁層23、半導体層24及び上絶縁層25を除去して信号線路をアイランド化しているので、信号線路21の両側部に半導体層が存在することなく空気層となっており、ストリップ導体26とベース22の間の電磁界が損失の大きい半導体層24を通る量を少なくできるため損失を低減できる。また、半導体層24を通して伝わるリークを低減できる。その結果、信号線路のアイソレーション特性及び、信号伝送時のインサーションロス特性が良好になる。
(製造方法)
つぎに、この信号線路21の製造方法の一例を説明する。図3(a)に示すものは、第1のSi基板の上面に酸化膜(SiO膜)を挟んで第2のSi基板を接合させたSOI(Silicon On Insulator)基板であって、第1のSi基板がベース22となり、酸化膜が下絶縁層23となり、第2のSi基板が半導体層24となる。このSOI基板の半導体層24(第2のSi基板)の上面に、図3(b)に示すように、窒化膜(SiN膜)を成膜して上絶縁層25を形成する。ついで、信号伝送経路となる領域をレジスト膜によって覆い、レジスト膜から露出した窒化膜(上絶縁層25)をエッチングによって除去し、図3(c)に示すように上絶縁層25を信号伝送経路に沿って帯状にパターニングする。この後、上絶縁層25の上のレジスト膜を剥離させる。
この後、蒸着やスパッタリング等によって、上絶縁層25を覆うようにして半導体層24の上面にCrを成膜し、さらにその上にAuを成膜する。そして、図3(d)に示すように、Au(上層)/Cr(下層)の金属被膜をストリップ状にパターニングし、上絶縁層25の上にストリップ導体26を形成する。
ついで、上絶縁層25及びストリップ導体26を覆うようにレジストマスクを形成して、あるいは上絶縁層25をマスクとして、半導体層24の露出領域をエッチング除去し、図3(e)に示すように、上絶縁層25の下面に沿った帯状の半導体層24を形成する。さらに、半導体層24をマスクとして下絶縁層23をエッチングして半導体層24から露出した領域の下絶縁層23をエッチング除去し、図3(f)に示すように、下絶縁層23を帯状に形成する。
(2本の信号線路)
図4(a)及び(b)に示すものは、ベース22の上面に2本の信号線路21a、21bを近接させて平行に配列した実施形態である。信号線路21a、21bは上記信号線路21と同じ構造を有するものであるが、ベース22は共通となっている。
図6は、アイランド化されていない2線の信号線路を示す、比較例の断面図である。この信号線路では、共通の半導体層24の上に上絶縁層25とストリップ導体26を積層して信号線路21aが形成され、またその近傍で共通の半導体層24の上に上絶縁層25とストリップ導体26を積層して信号線路21bが形成されている。この比較例のような構造であると、図6に破線で示すように共通の半導体層24内部に発生する電磁界を通じて信号線路21aと信号線路21bが結合する。その結果、信号線路間にリークが発生してインサーションロスが大きくなるとともにアイソレーション特性が損なわれる。
これに対し、本発明に係る信号線路では、図4(b)のように信号線路21aと信号線路21bがそれぞれアイランド化されていて独立しているので、信号線路21aと信号線路21bの間に結合が生じにくく、信号線路のアイソレーション特性が良好になる。また、リークの原因である半導体層24が互いに分離されていて、しかもできるだけ幅が狭くなるようにしているので、信号線路21a、21bの伝送損失が低減されて、信号伝送時のインサーションロスが小さくなる。
(2本の信号線路の製造方法)
図5(a)〜(f)は、図4に示した2本のアイランド構造の信号線路21a、21bの製造方法の一例を示す図である。信号線路21a、21bの製造方法も、図3(a)〜(f)に示した信号線路21の製造方法とほぼ同じである。すなわち、信号線路21aと信号線路21bを別々に製造するのでなく、図5(a)〜(f)に示したように、信号線路21aと信号線路21bの各製造工程を同時に実行していくことで効率よく信号線路21a、21bを作製することができる。
(静電リレー)
図7は本発明に係る高周波用の静電リレー31の構造を示す平面図である。また、図8は図7のA部を拡大して示す斜視図である。この静電リレー31においては、固定接点部と可動接点部からなるスイッチの部分に上記信号線路を用いている。
この静電リレー31は、Si基板や金属基板などの導電性材料からなるベース基板32の上面に、固定接点部33、可動接点部34、固定電極部35、可動接点部34を支持する可動電極部36、可動電極部36を弾性的に保持する弾性バネ37および支持部38を設けたものである。この静電リレー31においては、固定接点部33と可動接点部34によってスイッチが構成されており、固定電極部35や可動電極部36などによってアクチュエータが構成されている。そして、以下に説明するように、静電力によってアクチュエータを駆動すると、可動電極部36がベース基板32と平行な方向に移動して固定接点部33と可動接点部34の間が閉じられてスイッチがオンになる。逆に、静電力を解除すると弾性バネ37の弾性復帰力によって可動電極部36が元の位置に戻ってスイッチがオフになる。
可動接点部34を動かすためのアクチュエータは、固定電極部35、可動電極部36、弾性バネ37及び支持部38からなり、以下に説明するような構造を有している。
図7に示すように、ベース基板32の上面には主として導電性のSiからなる複数本の固定電極部35が互いに平行に配置されており、各固定電極部35は、SiOやSiNからなる絶縁膜(図示せず)を介してベース基板32の上面に固定されている。各固定電極部35は、ベース基板32に垂直な方向から見ると、矩形状のパッド部39の両面からY方向へ向けてそれぞれ枝状をした枝状電極部40が延出されている。枝状電極部40には、それぞれ左右対称となるように枝部41が突出しており、枝部41はY方向において一定ピッチで並んでいる。なお、Y方向とは、図7に示すように、可動電極部36及び可動接点部34の移動方向と平行な方向を表し、X方向とは、ベース基板32の上面に平行で、Y方向と直交する方向を表す。また、パッド部39においては、電極膜42の上に電極パッド層43が設けられている。
可動電極部36は導電性のSiからなり、各固定電極部35を囲むように形成されている。可動電極部36には、各固定電極部35を両側から挟むようにして櫛歯状電極部44が形成されている(固定電極部35間においては、一対の櫛歯状電極部44によって枝状となっている)。櫛歯状電極部44は、各固定電極部35を中心として左右対称となっており、各櫛歯状電極部44からは枝部41間の空隙部へ向けて櫛歯部45が延出している。しかも、各櫛歯部45は、その櫛歯部45と隣接して可動接点部34に近い側に位置する枝部41との距離が、当該櫛歯部45と隣接して可動接点部34から遠い側に位置する枝部41との距離よりも短くなっている。
支持部38は、絶縁膜(図示せず)を介してベース基板32の上面に固定されており、ベース基板32の他方端部においてX方向に長く延びている。支持部38の両端部と可動電極部36とは、一対の弾性バネ37によってつながれている。可動電極部36は、弾性バネ37を介して支持部38によって水平に支持されており、ベース基板32の上面からわずかに浮いている。よって、可動電極部36は弾性バネ37を弾性変形させることによってY方向に移動可能となっている。なお、弾性バネ37及び支持部38もSiからなる。
上記のような構造を有するアクチュエータは、つぎのようにして駆動される。固定電極部35と可動電極部36の間には直流電圧源が接続され、制御回路等によって直流電圧がオン、オフされる。固定電極部35では、直流電圧源の一方端子が電極パッド層43に接続される。直流電圧源の他方端子は、例えば支持部38に接続される。支持部38及び弾性バネ37は導電性を有しており、支持部38、弾性バネ37及び可動電極部36は電気的に導通しているので、支持部38に印加した電圧は可動電極部36に加わることになる。
直流電圧源によって固定電極部35と可動電極部36の間に直流電圧が印加されると、枝状電極部40の枝部41と櫛歯状電極部44の櫛歯部45との間に静電引力が発生する。しかし、固定電極部35及び可動電極部36の構造が、各固定電極部35の中心線に関して対称に形成されているので、可動電極部36に働くX方向の静電引力はバランスし、可動電極部36はX方向には移動しない。一方、各櫛歯部45と隣接して可動接点部34に近い側に位置する枝部41との距離が、当該櫛歯部45と隣接して可動接点部34から遠い側に位置する枝部41との距離よりも短くなっているので、各櫛歯部45が可動接点部側へ吸引され、弾性バネ37を撓ませながら可動電極部36が固定接点部33側に向けて移動する。
また、固定電極部35と可動電極部36の間に印加していた直流電圧を解除すると、枝部41と櫛歯部45の間の静電引力が消失するので、弾性バネ37の弾性復帰力によって可動電極部36が固定接点部33から遠ざかる方向へ後退する。
つぎに、固定接点部33及び可動接点部34からなるスイッチの構造を説明する。図8に示すように、固定接点部33においては、絶縁性又は半絶縁性のSiからなる固定接点基板47(半導体層)がその下面をSiOやSiNなどからなる絶縁膜46を介してベース基板32の上面に固定されている。固定接点基板47の上面にはSiNやSiOなどからなる絶縁層48が形成されている。また、図7及び図8に示すように固定接点基板47はベース基板32の上面端部において幅方向(X方向)に延びており、中央部には可動接点部34側へ向けて突出した張出部50が形成され、両端にそれぞれパッド支持部51a、51bが形成されている。
絶縁層48の上面には、Au(上層)/Cr(下層)、Pt、Au、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Ta、Pt合金、Au合金などからなる導電層が形成されている。この導電層は、パッド支持部51a、51bの上では接点用パッド部52a、52bとなっており、張出部50の上では互いに平行に配置されていて可動接点部34側へ突出した部分が固定接点53a、53bとなっている。また、接点用パッド部52aと固定接点53aを結ぶ部分の導電層がストリップ導体49aとなっており、接点用パッド部52bと固定接点53bを結ぶ部分の導電層がストリップ導体49bとなっている。
可動接点部34は張出部50に対向する位置に設けられている。可動接点部34は、図8に示すように、絶縁性又は半絶縁性のSiからなる可動接点基板54の上面にSiNやSiOなどからなる絶縁層55が形成され、その上面にAu(上層)/Cr(下層)、Pt、Au、Pd、Ir、Ru、Rh、Re、Ta、Pt合金、Au合金などからなる導電層56が形成されている。固定接点53a、53bと対向する導電層56の端面は、可動接点基板54の前面から突出していて、可動接点57となっている。また、可動接点基板54は、可動電極部36から突出した支持梁58によって片持ち状に支持されている。
この静電リレー31においては、固定接点部33の接点用パッド部52a、52bに高周波回路(図示せず)が接続され、アクチュエータで可動接点部34を駆動し、可動接点57を固定接点46a、46bに接触させることによって高周波回路を閉じることができる。高周波回路が閉じると、可動接点部34の絶縁層55を通って一方のストリップ導体49aから他方のストリップ導体49bへ高周波信号が流れる。また、アクチュエータの静電力を解除して弾性バネ37の弾性復帰力によって可動接点部34を後退させ、可動接点57を固定接点46a、46bから離間させることにより高周波回路を開くことができる。
この静電リレー31において、固定接点部33のストリップ導体49a、49bが配線された部分(例えば、図7のB部)では、絶縁膜46、固定接点基板47及び絶縁層48の幅がストリップ導体49a、49bの線幅にほぼ等しくなっていてアイランド化されており、図2に示したような信号線路21が構成されている。すなわち、図2の信号線路21とは、
ベース基板32 → ベース22
絶縁膜46 → 下絶縁層23
固定接点基板47 → 半導体層24
絶縁層48 → 上絶縁層25
ストリップ導体49a、49b → ストリップ導体26
というように対応している。
したがって、本発明に係る信号線路の構造を用いた静電リレー31のスイッチ部分では、ストリップ導体49a、49bからの高周波信号のリークが低減されてアイソレーション特性が良好となり、またインサーションロスも低減される。
なお、図7に示された可動接点部34においては、導電層の先端部、すなわち固定接点53a、53bの部分では、2本の導電層が平行に配線されているので、この部分を図4に示したような2本の信号線路21a、21bのように構成することも可能である。
(アイソレーションとインサーションロスのシミュレーション結果)
本発明の効果を確認するため、図11に示すような本発明実施例による静電リレーのモデルと、図12に示すような比較例による静電リレーのモデルを用いて、入出力部間のアイソレーション特性とインサーションロスの周波数特性をシミュレーションした。
図11に示す本発明実施例の静電リレー(アイランド構造の信号線路を用いたもの)のモデルでは、接点用パッド部52a、52bの幅L2を100μmとし、その長さL4も100μmとした。接点用パッド部52aと接点用パッド部52bとの距離L3を300μmとした。また、ストリップ導体49a、49bの縁から固定接点53a、53bの先端までの距離L1を37μmとした。さらに、ストリップ導体49b(ストリップ導体26)の線幅W1を10μm、ストリップ導体49b(上絶縁層25)及び絶縁膜46(下絶縁層23)の幅W2を30μm、固定接点基板47(半導体層24)の幅W3を40μmとした。
同様に、図12に示す比較例の静電リレー(アイランド構造でない信号線路を用いたもの)のモデルでも、接点用パッド部52a、52bの幅L2を100μmとし、その長さL4も100μmとした。接点用パッド部52aと接点用パッド部52bとの距離L3を300μmとした。また、ストリップ導体49a、49bの縁から固定接点53a、53bの先端までの距離L1を37μmとした。さらに、ストリップ導体49b(ストリップ導体26)の線幅W1を10μm、ストリップ導体49b(上絶縁層25)及び絶縁膜46(下絶縁層23)の幅W2を30μmとした。ただし、比較例では、固定接点基板47(半導体層24)のサイズは十分に大きなものとした。
なお、近傍に固定電極部35及び可動電極部36からなるアクチュエータが存在することによる影響は、図11(a)及び図12(a)に示すように矩形状をした半導体ブロックMに置き換えて評価した。
図9は、図11のような実施例のモデルと図12のような比較例のモデルを用いてGHz帯における入出力部間のアイソレーション特性を評価した結果を示す。アイソレーションは、図13(a)に示すように可動接点部34を後退させて固定接点53a、53bの先端を可動接点部34の可動接点57から離間させた状態(スイッチオフの状態)で求めた。一方の接点用パッド部52aに電力値がPinの高周波信号を入力したとき、他方の接点用パッド部52bに出力される高周波信号の電力値がPoutであったとすれば、アイソレーションは、
10×log10(Pout/Pin) [dB]
によって求められる。
スイッチをオフにしているにもかかわらず、信号が入力部から出力部に100%漏れる場合には、アイソレーションは0dBとなる。また、入出力部間における信号のリークが小さくなると、出力側の電力値Poutが小さくなるので、アイソレーションは負値で絶対値が大きくなる。よって、図9では下方にいくほどアイソレーションが良好となる。
図9に示すシミュレーション結果では、比較例よりも実施例の方が下方に位置しているので、アイランド構造を有する信号線路を用いた実施例のモデルの方が、入出力部間における高周波信号のリークが非常に少なくなっており、アイソレーション特性が良好になっていることが分かる。
また、図10は、図11のような実施例のモデルと図12のような比較例のモデルを用いてGHz帯における入出力部間のインサーションロスの周波数特性を評価した結果を示す。インサーションロスは、図13(b)に示すように可動接点部34を前進させて固定接点53a、53bの先端を可動接点部34の可動接点57に接触させた状態(スイッチオンの状態)で求めた。一方の接点用パッド部52aに電力値がPinの高周波信号を入力したとき、他方の接点用パッド部52bに出力される高周波信号の電力値がPoutであったとすれば、インサーションロスは、
10×log10(Pout/Pin) [dB]
によって求められる。
高周波信号が外に漏れて入力部から出力部へほとんど伝わらない場合には、Poutが小さいので、インサーションロスは負値で絶対値が大きくなる。また、高周波信号のリークが小さくなると、Poutの値がPinに近くなるので、インサーションロスの値は0dBに近づく。よって、図10では上方にいくほどインサーションロスが少なくなる。
図10に示すシミュレーション結果では、比較例よりも実施例の方が上方に位置しているので、アイランド構造を有する信号線路を用いた実施例の方が高周波信号のリークが非常に少なくなり、インサーションロスが低減することが分かる。
21、21a、21b 信号線路
22 ベース
23 下絶縁層
24 半導体層
25 上絶縁層
26 ストリップ導体
31 静電リレー
32 ベース基板
33 固定接点部
34 可動接点部
35 固定電極部
36 可動電極部
37 弾性バネ
46 絶縁膜
47 固定接点基板
48 絶縁層
49a、49b ストリップ導体
53a、53b 固定接点
57 可動接点

Claims (6)

  1. ベースと、
    前記ベースの上面に形成された下絶縁層と、
    前記下絶縁層の上面において、少なくとも一部が信号伝送しようとする経路に沿って帯状に延びた半導体層と、
    前記半導体層の上面において少なくとも一部が前記半導体層に沿って帯状に延びた上絶縁層と、
    前記上絶縁層の上面において少なくとも一部が前記上絶縁層に沿って帯状に延びたストリップ導体と、
    によって信号線路が構成された信号線路の構造。
  2. 前記下絶縁層の少なくとも一部が、前記半導体層の下面に沿って帯状に延びていることを特徴とする、請求項1に記載の信号線路の構造。
  3. 上面に前記ストリップ導体が形成されていない範囲の一部において、前記下絶縁層、前記半導体層及び前記上絶縁層のうち少なくとも1つが形成されていないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の信号線路の構造。
  4. 前記ベースを共通として、前記ベースの上に前記下絶縁層、前記半導体層、前記上絶縁層及び前記ストリップ導体からなる複数の信号線路を設けた信号線路の構造において、
    複数の前記信号線路は、少なくとも一部の前記半導体層が互いに分離され、少なくとも一部の前記上絶縁層が互いに分離され、かつ少なくとも一部の前記ストリップ導体が互いに分離されていることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の信号線路の構造。
  5. 第1の絶縁層を挟んで第1の半導体基板と第2の半導体基板が接合されたSOI基板の、前記第2の半導体基板の上面に第2の絶縁層を成膜する工程と、
    前記第2の絶縁層を帯状にパターニングして信号線路の上絶縁層を形成する工程と、
    前記上絶縁層の上面において前記上絶縁層に沿って信号線路のストリップ導体を作製する工程と、
    前記上絶縁層から露出した領域の前記第2の半導体基板をエッチングにより除去して前記第2の半導体層により信号線路の半導体層を形成する工程と、
    前記半導体層から露出した領域の前記第1の絶縁層をエッチングにより除去することにより、前記第1の半導体基板からなる信号線路のベースの上面に前記第1の絶縁層により信号線路の下絶縁層を形成する工程と、
    を備えた信号線路の製造方法。
  6. 互いに接触又は離間する少なくとも一組の接点と、前記接点に流れる信号の経路の少なくとも一部に、請求項1に記載した信号線路の構造を用いたことを特徴とするスイッチ。
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