JP5396438B2 - インクジェット用インク - Google Patents

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本発明は、インクジェットプリンタに使用されるインクに係り、詳しくは、被印刷物の表面に、耐溶剤性を有する印刷体を形成することのできるインクジェット用インクに関するものである。
一般に、プラスチックス、ガラス、金属等への記録方式として、可変情報を非接触で容易に印字できるインクジェットプリンタが汎用されている。このようなインクジェットプリンタに用いられるインクとしては、油性の染料、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂等を、メチルエチルケトン、アルコール等の溶剤に溶解させたものが知られている。因みに、特許文献1には、フェノールアルデヒド樹脂を用いるインクジェットインクが示されている。特許文献2には、ガラスおよびガラス被覆のセラミックへの印字用のインクが示されている。特許文献3には、ポリアミド樹脂を溶剤で溶解したインクが示されている。しかしながら、これらの樹脂を用いるインクにおいては、インクジェットプリンタにおいての安定性や再溶解性を充分付与するような設計がなされているため、プリンタでの安定性が非常に良くなる反面、被印刷物の表面に形成された印刷体の耐溶剤性については、インクの充分な乾燥を実施しても容易に溶け出すインクとなってしまう。
このような耐溶剤性を得るために、インクの成分として、乾燥後に不溶解となるような成分を用いる方法がある。この方法を用いたインクとしては、紫外線や電子線を照射してモノマーを架橋させる、いわゆるUV(紫外線)硬化型のインクやEB(電子線照射)硬化型のインクが知られている。例えば、特許文献4には、低分子量多官能性のモノマーや単官能のモノマーを用いるUV硬化型ないしEB硬化型のインクが示されている。特許文献5には、プリントサーキットボードや耐エッチング性への対応ができるUV硬化型インクが示されている。しかしながら、UV硬化型インクについては、UV照射装置が比較的高価であり、またUV照射時にオゾンの発生等を伴うため、印字環境としては複雑で高価な構成を必要とする。一方、EB硬化型のインクについては、EB装置が更に高価となるうえ、真空系ないし窒素雰囲気下での調整を要することとなり、導入が容易でないという不具合がある。
また、耐溶剤性を付与するような方法として、硬化剤を用い、触媒や熱の作用で樹脂を反応させて耐溶剤性等を付与することも行われている。例えば、特許文献6には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂が記載されており、エポキシ樹脂用の硬化剤を併用する方法が示されている。また、特許文献7には、チタントリブチルフォスフェートのような反応促進助剤を用いる方法が示されている。しかしながら、エポキシ樹脂と硬化剤とは、印字後の硬化性は良好であるものの、インクジェットプリンタ内での温度変化等により、インクのゲル化を引き起こしやすく、安定なインクを得ることは容易でない。
このような観点からの対応として、特許文献8には、低温加熱による硬化性を持たせるための表面処理剤として、ブロックイソシアネートと触媒を使用する方法が示されている。この表面処理剤は、インクジェットプリンタの構成の一部に表面処理として使用されるもので、インクジェット用インク自体に応用したという記載はない。一方で、インクジェット用インクについては、特許文献9に、活性水素基透明樹脂とブロックイソシアネートを用いるカラーフィルタ用のインクが示されている。しかしながら、ドロップ・オン・ディマンド用のインクに関するものであり、インク乾燥の速い連続式インクジェットプリンタ用のインクとは技術分野が異なる。このようなインクを連続式インクジェットプリンタに使用するには導電性が不足しているために適正な印字の制御ができなかったり、あるいは導電剤を安易に用いたために凝集や沈降を引き起こしたりするおそれがあった。また、特許文献10には、捺染用のインクとしてドロップ・オン・ディマンド用の水系のインクが示され、特許文献11には、100℃以下で開裂するブロックイソシアネートを用いる水性のインクが示されている。これらは、いずれもドロップ・オン・ディマンド用の水系のインクに関するものであり、MEKのようなケトン系の有機極性溶剤を用いるインクへの応用することはできない。
英国特許第1524881(A)号公報 英国特許第1541937(A)号公報 特表平09−507521号公報 米国特許第4303924(A)号公報 米国特許第5270368(A)号公報 英国特許第1595453(A)号公報 英国特許第2161817(A),(B)号公報 特開平09−011465号公報 特開2009−086206号公報 特開2003−268271号公報 特開2004−269823号公報
本発明は、従来、溶解性の優れた樹脂を充分に含有しインクジェットプリンタでの安定性を備えているインクでありながら、密着性の向上と印刷後の耐洗浄性や耐溶剤性を充分に有するインクを得ることを目的とする。また、前記のようなインクにおいて、経時による反応の進行を充分制御し、プリンタ内部でのインクの増粘やゲル化を防止するとともに、連続式インクジェットプリンタにおいても安定した印字ができるインクを得ることを目的とする。また、昨今の環境面での対応からインク中の塩素含有率を900ppm以下に抑えるという要求に対応できるインクを得ることを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、インクジェット用インクに好ましく配合されている溶解性の高いケトン系溶剤と、ブロックイソシアネートとをうまく適合させることに成功し、これによって、被印刷物表面への高い密着性と、印刷後の耐洗浄性や耐溶剤性を充分に有するインクジェット用インクを実現できたのである。
すなわち、本発明に係るインクジェット用インクは、ケトン系溶剤着色剤、ブロックイソシアネート、樹脂および導電剤を含んで成るインクジェットプリンタ用のインクであって、前記ブロックイソシアネートに組み込まれているブロック剤が、ジエチルマロネート、ジメチルピラゾールおよびメチルエチルケトンオキシムから成る群より選ばれた一種または二種以上であり、前記樹脂が、ブチラール樹脂とロジン変性マレイン酸樹脂のうちの少なくとも一種であり、前記ケトン系溶剤が、インク重量全体に対し60.9重量%以上のメチルエチルケトンを含んでいることを特徴とするものである。
更に、前記の各構成において、ブロックイソシアネートが、インク総重量に対して0.5重量%以上5重量%以下含まれているものである。
また、前記の各構成において、ブロックイソシアネートに組み込まれているブロック剤が、ジメチルピラゾールを主成分とし、更に、ジエチルマロネートおよびメチルエチルケトンオキシムから成る群より選ばれた一種または二種以上を含んでいるものである。ここでいう「主成分」とは、ブロック剤全体に対し50重量%を超える含有量を有するものである。
そして、前記の各構成において、インク総重量に対して、顔料を2〜15重量%、樹脂を1〜20重量%、ブロックイソシアネートを0.1〜5重量%、導電剤を0.3〜2.5重量%をそれぞれ含有し、残部がケトン系溶剤を含む溶剤である構成にしてある。
更に、前記の各構成において、導電剤が、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートとテトラフェニルホウ素4級アンモニウムのうちの少なくとも一種である構成にしてある。
本発明に係るインクジェット用インクは、ケトン系溶剤、着色剤、ブロックイソシアネート、樹脂および導電剤を含んで成るので、ガラス、金属、またはそれらの表面に施された塗装面であっても、インクジェットプリンタによる印刷、および所定の加熱処理を施すことにより、密着性の高い印刷体を得ることができる。また、本発明のインクジェット用インクはヘッドでのインクの吐出安定性および再溶解性にも優れるものであり、従来汎用されている溶剤を含有したインクジェット用インクと同様に用いることができる。しかも、加熱によりインクの熱硬化が生じ、耐溶剤性、界面活性剤による洗浄耐性の発揮させることができる。
本発明の実施例10により調製したインクジェット用インクの耐エタノール性を評価したもので、(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、そのガラス板塗装面を加熱処理することなく、エタノールを浸した綿棒で3回擦った後の表面状態を写真で示した図、(b)は同じく実施例10により調製したインクジェット用インクを用いてデータマトリックスを印刷し、そのガラス板塗装面を加熱処理した後に、エタノールを浸した綿棒で20回擦った後の表面状態を写真で示した図である。 本発明の実施例10により調製したインクジェット用インクの耐超音波洗浄性を評価したもので、(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷した直後の表面状態を写真で示した図、(b)は(a)の状態のガラス板塗装面をノニオン活性剤水溶液中に浸漬して30分間超音波処理を施した表面状態を写真で示した図である。 本発明の実施例10により調製したインクジェット用インクの密着性を評価したもので、(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、加熱処理によりデータマトリックスを硬化させる前の表面状態を写真で示した図、(b)は(a)の状態から加熱処理を行なってデータマトリックスを硬化させた後に碁盤目カット区画を施した表面状態を写真で示した図、(c)は(b)の状態のガラス板塗装面にセロハンテープを貼り付けて引き剥がした表面状態を写真で示した図である。 本発明の実施例10により調製したインクジェット用インクにおける高温多湿条件にて保管後の密着性を評価したもので、(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、加熱処理によりデータマトリックスを硬化させた後の表面状態を写真で示した図、(b)は(a)の状態から碁盤目カット区画を施して温度65℃湿度RH90%の高温多湿条件下で3日間保存した後の表面状態を写真で示した図、(c)は(b)の状態のガラス板塗装面にセロハンテープを貼り付けて引き剥がした表面状態を写真で示した図である。
本発明の実施形態を説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一形態に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
本発明に用いる着色剤としては、顔料または染料が挙げられるが、これら両者は単類または混合して用いて良い。顔料は無機顔料と有機顔料を使用することができる。用いる無機顔料の具体例としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化鉄、コバルトブルー等がある。有機顔料としては、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、縮合アゾ系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系等が挙げられる。上記に示した顔料は耐光性の良好なものであって好ましいが、耐光性を特に必要としない用途においては上記の顔料の使用に限るものでない。尚、酸化チタンについては、顔料の表面をアルミ系、亜鉛系、またはシリカ系の表面処理剤で処理したものが、分散性、沈降性防止、経時での増粘、凝集防止などに関して、後記する樹脂およびブロックイソシアネートとの安定性において好ましい。
上記した有機顔料の具体例としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトー ルレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット、ジケトピロロピロール等が挙げられる。
上記した顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,109,110,117,125,128,129,137,138,139,147,148,151,153,154,181,166,168,185,C.I.ピグメントオレンジ16,36,43,51,55,59,61、C.I. ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,123,149,168,177,180,192,202,206,215,216,217,220,223,224,226,227,228,238,240、C.I.ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、C.I.ピグメントブルー 15,15:1,15:3,15:4,15:6,22,60,64、C.I.ピグメントグリーン7,36、C.I.ピグメントブラウン23,25,26等を例示できる。
これらの顔料は、粒度分布計で計測した平均粒径(累積分布のメジアン径(D50))が10〜300nmの範囲内であって最大粒径が1μm以下となるように分散させる。そして、これらの顔料の平均粒径は0.3μm以下が好ましい。平均粒径が0.3μmよりも大きいとインクの分散の安定性が悪く、沈降物の発生が多くなる。特に最大粒径が1μm以上になると、顔料の沈降が著しくなり、印字の安定性を損なうこととなる。一方、平均粒径が10nm以下の場合は、特段の問題があるわけではないが、粒径が細かすぎることから、耐光性に関して劣化を生じ易くなるおそれがある。このように、本発明に用いる顔料は微細な顔料粒子が好ましいが、インクジェット用インクとするには、更に加える分散剤とともに分散機で高速撹拌を行なって、安定な分散液にしておくことが好ましい。このような顔料は画像の十分な濃度および記録後の十分な耐光性を得るために、インクジェットインクの総重量に対して0.5〜20重量%含まれていることが望ましい。
また、本発明では、染料を用いることも可能である。かかる染料としては、前記したケトン系溶剤に溶解し得るものであれば特に限定されない。但し、耐溶剤性の観点からは、印刷体硬化後の接触対象となる溶剤がアルコールであるとすると、アルコールに対して不溶解性のものが好ましい。かかるものとしては、例えばカラーインデックスナンバーで、ソルベントエロー2,14,16,19,21,34,48,56,79,88,89,93,95,98,133,137,147、ソルベントオレンジ5,6,45,60,63、ソルベントレッド1,3,7,8,9,18,23,24,27,49,83,100,111,122,125,130,132,135,195,202,212、ソルベントブルー2,3,4,5,7,18,25,26,35,36,37,38,43,44,45,47,48,51,58,59,59:1,63,64,67,68,69,70,78,79,83,94,97,98,99,100,101,102,104,105,111,112,122,124,128,129,132,136,137,138,139,143、ソルベントグリーン5,7,14,15,20,35,66,122,125,131、ソルベントブラック1,3,6,22,27,28,29、ソルベントヴァイオレット13、ソルベントブラウン1,53等が挙げられ、これらを単独ないし2種以上混合して用いることができる。
また、塩基性の油性染料を用いることも可能である。このような塩基性の油性染料としては、例えばC.I.Basic Violet3、C.I.Basic Red1,8、C.I.Basic Black2等が挙げられる。
上記したブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物と保護化合物(ブロック剤)とを常法により反応させて得られる保護されたイソシアネート基を有する化合物である。かかるブロックイソシアネートは常温で不活性であるが、加熱されることで保護基が解離してイソシアネート基が再生される性質を持つものである。このため、加熱されない条件下であれば、活性水素基を有する化合物とあらかじめ配合しておくことが可能である。
イソシアネート基を有する化合物としては、1分子中に1個あるいは2個以上のイソシアネート基を含有していればよく、脂肪族、芳香族あるいは脂環式のモノあるいはジイソシアネート、トリイソシアネート化合物が挙げられる。
イソシアネート基を保護するブロック剤としては、アルコール化合物、フェノール化合物、オキシム化合物、アセト酢酸アルキルエステル化合物、マロン酸アルキルエステル化合物、フタルイミド化合物、イミダゾール化合物などが挙げられる。
本発明に用いるブロックイソシアネートは、インクの状態においては、主たるインクの溶剤成分であるケトン系溶剤に充分溶解して安定なものである。そして、このブロックイソシアネートは、印字されたのちの乾燥の工程ないし、その後の加熱工程において、任意の熱を付与されたときに、後記の樹脂成分とともに、あるいは樹脂成分の一部と反応して、あるいは被印刷物の一部と反応して、印字したインクの皮膜を強固にする働きをさせる。一般的なイソシアネートは反応性に富んでいるため、熱を加えなくても反応の進行が起こりやすいが、ブロックイソシアネートは、一定の温度を超えることによって反応を生じ得るため、経時での自然反応による増粘やゲル化といった問題を生じさせないようにすることができる。
このようなブロックイソシアネートとしては、イソシアネート分子構造内に、ブロック剤として、ジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、メチルエチルケトンオキシム等を取り込んでいるものが知られている。これらのブロック剤は、種類によってそのブロックが解離する温度を調整することが可能であるが、インクジェットプリンタ内の温度、保存温度適性、あるいは実際の後処理の工程等を考慮すると、100℃以上で解離をし、かつ、エネルギー効率の観点から250℃以下で解離をするという条件が好ましい。
このような条件への適性を付与させるためには、ブロック剤として、例えばジメチルピラゾール、ジエチルマロネート、メチルエチルケトンオキシムを用いることが望ましく、更にはこれらの中から、特にジメチルピラゾールを主成分として選択することが好ましい。ジエチルマロネートは、硬化後の塗膜が結晶化しやすくなり、塗膜の特性として、一部好まれない場合がある。また、メチルエチルケトンオキシムは比較的高温で解離するので、硬化のためのエネルギーを若干多く必要とする。また、カプロラクタム系は、硬化処理用の設備内にて、付着物(ヤニ)を生成しやすいという難点がある。また、ジメチルピラゾールとともに、ジエチルマロネート、メチルエチルケトンオキシム、またはカプロラクタムを一部混合した系のブロックイソシアネートは、ジメチルピラゾールの適度な硬化性や硬化時の特性を望ましく調整できるために好ましい。これらのブロック剤の選択は、プリンタでの長期循環や、印字後の加熱処理環境に対応する必要がある。また、被印刷物の基材が熱硬化性材料で予め塗装されているでは、その硬化条件を逸脱しない範疇の設定が必要であり、このような調整にマッチしやすい広い許容値に設定しやすいものがジメチルピラゾールを使用するものとできる。すなわち、解離温度と密着性、耐溶剤性の効果を発揮させるうえで、好ましいブロック剤の選択となる。
上記したブロックイソシアネートのインクへの添加量は、多くを用いれば、後述する耐溶剤性や塗膜硬度の向上につながるが、使用量が多いとインクの安定性低下(例えば、粘度の増加、凝集、ゲル化)を生じやすくなるため、インク全体重量に対し0.1〜5重量%の範囲で用いることが好ましい。ブロックイソシアネートが5重量%を超えると、インク自体の安定性が不足する。一方、ブロックイソシアネートが0.1重量%未満の場合は、耐溶剤性等から判断され得る皮膜強度の向上が見られない。すなわち、ブロックイソシアネートの添加量は、温度とのバランス、またはインク粘度とのバランスから0.5〜2.5重量%が好ましく、更には0.5〜1.5重量%がより好ましい。
本発明に用いる樹脂成分としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミン系樹脂、ブチラール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂のうち、少なくとも1種を用いることができる。これらの樹脂は、各種の被印刷物への密着性を発揮する。また、着色剤として染料を用いるときは、染料を充分に溶解し相溶して定着性を発揮させる。また、顔料を用いる場合には、顔料の定着性ばかりでなく、顔料を分散させる分散剤としての役割も一部担っている。これらの樹脂は、本発明の主溶剤であるケトン系溶剤に対して良好な溶解性を有するものであることが好ましい。しかしながら、印字後および乾燥後の状態においては、プリンタ内部での再溶解性とは逆の性質である、不溶解性も必要とされる。このため、前記ブロックイソシアネートとの適宜の組み合わせにて、また適度な加熱にて、溶解し易かった溶剤に対する耐溶剤性を持たせなければならない。
ブロックイソシアネートと樹脂との組み合わせにおいて、上記の樹脂のなかでもブチラール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂との組み合わせは、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤解離後のイソシアネート部との反応がしやすいことから、ブチラール樹脂の使用が好ましい。この場合、ブチラール樹脂は、平均分子量が20000以下、水酸基が20%以上、更に好ましくは30%以上含まれているものが、粘度特性およびイソシアネートとの反応性の点で適している。
また、ロジン変性マレイン酸樹脂は、ブチラール樹脂と同様に顔料の良好な分散に寄与する。このロジン変性マレイン酸樹脂は、インクジェットプリンタにおけるインクの再溶解性においても良好な特性を有している。従って、ブチラール樹脂およびロジン変性マレイン酸樹脂を用いることにより、連続式インクジェットプリンタ用のインクとして導電剤を添加する場合においても、分散の安定化を維持することができる。すなわち、顔料を分散させる系で安定な分散性を保持する上からも、好ましい組み合わせとなっている。これらの樹脂は、粘度をインクの適性に合わせる必要から、それぞれインク重量全体の1〜15重量%を用いることが好ましい。
尚、ブチラール樹脂としては、分子量が10000〜30000、好ましくは15000〜20000、水酸基が20〜40%、更に好ましくは35〜40%、ブチラール化度が60〜80であるものが、被印刷物に対する適用性の広い汎用のインクを得るうえで好ましい。尚、その他の樹脂として、アミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの縮重合樹脂)、ポリエステル樹脂(多価カルボン酸とポリアルコールとの重縮合体、不飽和基を有する不飽和ポリエステル等)、フェノール樹脂(例えば、荒川化学社製のタマノールPA,135,340,350,386)、アクリル樹脂(例えば、DIC社製のACRYDIC A−322,A−405,A−452、三菱樹脂社製のダイヤナールRB50)等も使用できる。
本発明に係るインクは、ケトン系溶剤を主溶剤として用いるものであり、インクジェットプリンタ、特に帯電ドット連続噴出式である連続式インクジェットプリンタに好適に用いることができる。そこで、このインクには、プリンタから吐出されたインク滴の電界による偏向量を調整に対応するため導電剤が用いられる。このような導電剤としては、例えばチオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、硝酸リチウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホウ素4級アンモニウム塩等を使用できる。これらのなかでも、ブロックイソシアネートとの相溶性の観点からインクの安定性を評価すると、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルホウ素4級アンモニウム等のような有機系の導電剤が、長期的に安定した特性を示すので好ましい。
上記した導電剤は、インク全体重量に対し0.5〜2.5重量%の範囲内で用いる。導電剤の含有率が0.5重量%より少ないと、充分な導電性が得られず、プリンタでの偏向を安定に維持できないことがある。他方で、導電剤の含有率が2.5重量%よりも多いと、それぞれの材料との相溶性を充分保てなくなるとともに経時での安定性が低下し、プリンタでの不安定な印字状態を招くおそれがある。上記以外の導電剤については、顔料の分散不良や凝集を招くおそれがあるため、添加には注意を要する。
本発明に用いる溶剤としては、例えばアセトン、メチエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン類を主たる溶剤として用いる。なかでも、メチルエチルケトンは、樹脂類の溶解性、顔料の分散性、導電性や、インクの乾燥性から、連続式インクジェットプリンタ用のインクに、好ましく用いることができる。更に、例えば酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジオキサン、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール、シクロペンタノン等を、ケトン系溶剤とともに溶剤の一部として用いることができる。
本発明に使用される樹脂は密着性とともに分散性を良好とする能力を備えているが、更に顔料の分散性の向上を図るために、分散剤を用いても構わない。
このような顔料の分散剤としては、例えば水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物塩、特殊芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。具体的には、BYK Chemie社製のAnti−Terra−U,Anti−Terra−203/204,Disperbyk−101,107,110,130,161,162,163,164,165,166,170,400,Bykumen,BYK−P104,P105,P104S,240S,Lactimon、Efka CHEMICALS社製のエフカ44,46,47,48,49,54,63,64,65,66,71,701,764,766,エフカポリマー100,150,400,401,402,403,450,451,452,453,745、共栄社化学社製のフローレンTG−710,フローノンSH−290,SP−1000,ポリフローNo.50E,No.300、味の素ファインテック社製のアジスパーPB821、楠本化成社製のディスパロンKS−860,873SN,874,#2150,#7004、花王社製のデモールRN,N,MS,C,SN−B,EP,ホモゲノールL−18,エマルゲン920,930,931,935,950,985,アセタミン24,86、ルーブリゾール社製のSolsperse5000,7000,13240,13940,17000,22000,24000,28000,32000,38500、日光ケミカル社製のニッコールT106,MYS−IEX,Hexagline 4a−U等を例示することができる。
更に、ドットの形成への調整剤として、シリコン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を使用することも可能である。尚、酸化チタンや酸化鉄のように比重の大きい無機系顔料を用いる場合は、沈降に伴うハードケーキ化を防止するため、不飽和カルボン酸系のハードケーキ防止剤を用いることが可能である。本発明に係る印字の対象である被印刷物としては、金属、ガラス、プラスチックス、または、これらの材料の表面に塗装された塗工物であり、耐熱温度が100℃以上のものが挙げられる。
このような被印刷物に対し、インクジェットプリンタにより前記のインクを噴きつけて、文字やバーコード、データマトリックスコード等の種々のコードの印字(印刷体)を形成し、その後、100℃以上の加熱工程を10分〜60分かけて通過させる処理が行われる。好ましい加熱温度は130〜250℃であり、更に好ましくは150〜210℃である。好ましい加熱時間は15〜30分程度である。このような加熱条件とすることが、耐溶剤性、密着性、界面活性剤水溶液による洗浄耐性から好ましく、バーコードやデータマトリックス等を読み取る読み取り機での読み取り率の正確性を充分に発揮させることができる。
本発明に係るインクの20℃における粘度は、インクジェットプリンタでの適切な印字可能領域を広げるため、3.2〜4.8mPa・sの範囲内に調整することが好ましい。インクの粘度が3.2mPa・sを下回ると、被印刷物表面でのインクのドットの形成が不良となり、形成された印刷体の濃度(印字濃度)が薄くなる。一方、インクの粘度が4.8mPa・sを上回ると、インク滴の吐出不良や印字後の乾燥不良の問題を生じやすくなる。
以下、本発明をいくつかの実施例によって更に詳細に説明する。
[実施例1]
ブチラール樹脂(分子量=19000、水酸基含有率=36%、アセチル基含有率=3%、ブチラール化度63%)4.2重量部、ソルスパーズ24000(分散剤:ルーブリゾール社製)0.5重量部、ソルスパーズ5000(分散剤:ルーブリゾール社製)0.2重量部、およびロジン変性マレイン酸樹脂10重量部を、メチルエチルケトン79.2重量部に溶解して溶解液とし、この溶解液にカーボンブラック(REGAL330R:キャボット社製)4.2重量部を加えて攪拌混合し、この混合液を横型サンドミルに供してカーボンブラックを分散させた。この分散液に、ジメチルピラゾールをブロック剤とするブロックイソシアネート1重量部を加えて混合し、更にテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート0.7重量部を加えて、高速攪拌混合を行なった。その後、混合分散液を目開き1.0μmのフィルタで濾過して、インクジェットプリンタ用のインクを得た。
尚、インクの試作においては、インクを構成する全成分をひとつの容器内に入れ一括して分散させることも可能であるが、顔料、分散剤、樹脂および溶剤の一部だけを用いて顔料の分散を濃縮系として行ない、その分散後にブロックイソシアネートおよび導電剤を加えて混合、溶解させるように調製することが、安定な状態のインクを得るうえで好ましい。
得られたインクを、板表面に白色塗料が塗装されたガラス板の塗装面(被印刷物表面の例)に連続式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の型式CCS3000P)を用いて噴きつけ、格子状の複数のドットから成るデータマトリックス(印刷体の例)を形成した。このデータマトリックスが形成されたガラス板塗装面を170℃のオーブン中で15分間加熱した。加熱処理後のガラス板を、下記に詳述する各種物性試験に供した。
尚、実施例1〜4,6〜9および比較例1〜5は、表1と表2に示すように、黒色または有彩色のインクを調製したものであり、各種の、顔料および分散剤、または染料、樹脂、ブロックイソシアネート、導電剤、およびMEKを含む溶剤を用いてインクを調製してある。実施例8のインクにはフッ素系活性剤が配合されている。実施例9では、顔料および分散剤の替わりに染料が配合されている。
表2に示すように、比較例1〜3のインクでは、ブロックイソシアネートが配合されず、熱硬化のための加熱処理も施していない。比較例4,5のインクでは、ブロックイソシアネートは配合されているが、ケトン系溶剤は配合されていない。
実施例10〜14および比較例6〜9は、表3と表4に示すように、白色顔料および分散剤を配合して白色インクを調製したものである。これらのインクについては、被印刷物として黒色ないし灰色のガラス板を使用した。比較例6〜9のインクでは、実施例10〜14のインクに用いた導電剤とは異なる導電剤が配合されている。
各表中に示した物性試験の概要を以下に説明する。
[粘度]は、EH型粘度計を用いて20℃で測定したものである。
[導電率]は、導電率計を用いて20℃で測定したものである。連続式インクジェットプリンタにおいては、0.5mS/cm以上の導電率が正確なドット偏向制御を行なううえで好ましい。
[分散性]は、顔料の樹脂液を横型サンドミルにて分散したときに、ダマや粗粒の残留が少なく流動性のある状態であるか否かを評価したものである。平均粒子径を含めた分散状態が非常に良好であったものを「◎」とし、ドローダウン塗膜の表面状態や分散時の流動性が良かったものを「○」とし、分散しなかったものを「×」とし、凝集状態のものを「凝集」とした。尚、染料を用いたインクでは、「溶解」しているか否かを判断した。
[平均粒径]は、レーザー検出方式の粒度分布計(日機装社製のUPA−150)で測定したD50の粒子径(nm)で示した。
[吐出安定性]は、各例で示したインクを連続式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製のCCS3000P)によって、ガラス基材表面の樹脂塗装面に印字を行ない、印刷体の状態を目視評価したものである。また、噴射特性も、連続印字中のノズルの噴射状態を、得られた印刷体の状態によって合わせて評価した。各印字ドットが所定位置に正確に連続印字されていたものを「○」とし、連続印字を行なったにも拘わらず途中にドットの欠損を生じたり、各印字ドットが所定位置に印字されたりしなかったものを「×」とした。更に、印字した2次元バーコードを読み取り機により読み取らせて読み取りの正確性を確認した。読み取りが正常であったものを「○」とし、読み取りが異常であったものを「×」とした。
[再溶解性]は、連続式インクジェットプリンタのノズルプレートにインクをつけて風乾し、翌日、乾燥インクに別のインクを振り掛けて、乾燥インクの溶解を確認したものである。溶解性が良かったものを「○」とし、溶解性が不良であったものを「×」とした。
[保存安定性]は、インクを密封容器内に封入して45℃の条件下で保管し、2ケ月経過後にインクの外観や粘度変化を確認したものである。外観および粘度が所定以上に変化(8%以上の増粘)しなかったものを「○」とし、所定以上に変化したものを「×」とした。
[熱硬化性]は、印字後の印刷体を熱硬化させる条件として、150℃30分間での硬化性、170℃30分間での硬化性、200℃15分間での硬化性をそれぞれ確認したものである。この熱硬化性は、熱により硬化した硬化面にエタノールを塗布して、熱硬化した印刷体が溶解するか否かの有無で確認するものである。溶解しなかったものを「○」とし、一部分が溶解したものを「×」とした。
[耐アルコール性]は、印刷体が熱硬化した後の被印刷物の表面を、エタノールを浸した綿棒で10回ないし20回擦り、被印刷物表面における印字ドットの溶解や剥離を確認したものである。剥落がなかったものを「○」とし、剥落があったものを「×」とした。尚、白色インク(実施例10〜14(表3))においては、アルコールへ浸漬させた後の2次元バーコードの読み取りテストを行い、読み取り確認スピードが速かったものは更に「◎」とした。
[洗浄性]は、2次元バーコードまたはデータマトリックスを印刷した被印刷物を0.25%ノニオン活性剤水溶液中に浸漬して、15分間の超音波照射による洗浄テストを行い、印刷した2次元バーコードまたはデータマトリックスを読み取り機で読み取れるか否かを評価するものである。読み取り異常がなかったものを「○」とし、読み取り異常があったものを「×」とした。
[密着性]は、データマトリックスを印刷した被印刷物の表面にセロハンテープを貼り付け、そのセロハンテープを引き剥がしたときに、データマトリックスを構成している印字ドット(印刷体)の剥離が有るか否かを評価するものである。印字ドットの剥離がなかったものを「○」とし、剥離があったものを「×」とした。
尚、各表において、処方欄中に示した数値は、いずれもインク全体重量に対する重量%を表している。
上記した実施例1〜4,6〜9により得たインクは、被印刷物表面への印字後・加熱処理前は、上記した耐エタノール性や耐洗浄性の結果は不良であったが、表1に示すように、ブチラール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ブロックイソシアネート、主溶剤であるMEK、および適切な導電剤を好適な処方割合で含有しているので、加熱処理後は良好な特性を示した。同時に、保存時の安定性、プリンタ内での長期の印字安定性も良好な特性を示している。
それに対し、比較例1〜3のインクは、ブロックイソシアネートを使用せず当然に熱硬化処理も施していないため、耐エタノール性が不良であった。ブロックイソシアネートを不使用で熱硬化しないため、耐エタノール適性が不良であった。比較例4のインクはブロックイソシアネートを使用しているが、ケトン系溶剤および導電剤を使用していないので、連続式インクジェットプリンタでの使用適性がなく、再溶解性も良くなかった。比較例5のインクはブロックイソシアネートを使用しているが、ケトン系溶剤を使用していないことから、導電剤であるチオシアン酸アンモニウムとの相性が悪く、安定な状態のインクが得られず、再溶解性も良くなかった。
一方で、実施例10のインクは、表3に示すように、ブチラール樹脂とロジン変性マレイン酸樹脂を含有しているため、分散性、再溶解性が良好であり、導電剤も良好な導電性を示している。ジメチルピラゾールをブロック剤とするブロックイソシアネートも良好な熱硬化性を示しており、耐アルコール性および耐洗浄性も良好であった。実施例11のインクは実施例10と同程度に良好であるが、ブチラール樹脂の分子量が高い分やや粘度が大きくなり、水酸基が少ない分、ブロックイソシアネートとの反応部分が小さくなるため、実施例10のほうが実施例11よりもトータル特性としては好ましい。実施例12のインクは、酸化チタンの表面処理が微妙に影響しているため、実施例10のインクほど優れた分散性や保存安定性は得られていないが、それ以外は良好な特性を示している。実施例13のインクは、ブチラール樹脂を用いていないぶん分散性や硬化性に関して、実施例10に及ばないが、それ以外は良好な特性を有している。実施例14のインクは、実施例10とは導電剤の種類が異なっているが、実施例10並みの安定性を示している。尚、ハードケーキ防止剤が入っていない分、静置保管時に沈降した酸化チタンを再分散させて使用する必要があるが、それ以外は良好な特性を示している
ここで、実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタから噴きだして、ガラス板塗装面にデータマトリックスを印字したものを写真に示す。
図1は実施例10のインクにより形成された印刷体の耐エタノール性を評価したもので、同図(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、そのガラス板塗装面を加熱処理することなく、エタノールを浸した綿棒で3回擦った後の表面状態を示している。それによると、たった3回の擦りでもデータマトリックスは消失している。同図(b)は同じインクを用いてデータマトリックスを印刷し、そのガラス板塗装面を加熱処理した後に、エタノールを浸した綿棒で20回擦った後の表面状態を示している。それによると、アルコールに対する耐溶剤性が高くなっており、20回の擦りによってもデータマトリックスの印字ドットが溶け出すことはなかった。
図2は実施例1のインクにより形成された印刷体の耐超音波洗浄性を評価したもので、同図(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷した直後で未加熱の表面状態を示している。同図(b)は同図(a)の状態のガラス板塗装面をノニオン活性剤水溶液中に浸漬して30分間超音波処理を施した表面状態を示しているが、データマトリックスの印字ドットは洗い流されることなく、印字直後のままで残っている。
図3は実施例10のインクにより形成された印刷体の密着性を評価したもので、同図(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、加熱処理による硬化前の表面状態を示している。同図(b)は同図(a)の状態から加熱処理を行なってデータマトリックスを硬化させた後に碁盤目カット区画を施した表面状態を示している。同図(c)は同図(b)の状態のガラス板塗装面にセロハンテープを貼り付けて引き剥がしたときの表面状態を示しているが、データマトリックスの印字ドットの剥離は認められず、密着性が高いことを表している。
図4は実施例10のインクにより形成された印刷体を高温多湿条件にて保管した後の密着性を評価したもので、同図(a)は板表面に灰色塗料が塗装されたガラス板の塗装面に実施例10のインクを連続式インクジェットプリンタで噴きつけてデータマトリックスを印刷し、加熱処理によりデータマトリックスを硬化させた後の表面状態を示している。同図(b)は同図(a)の状態から碁盤目カット区画を施したのち温度65℃湿度RH90%の高温多湿条件下で3日間保存したときの表面状態を示している。同図(c)は同図(b)の状態のガラス板塗装面にセロハンテープを貼り付けて引き剥がしたときの表面状態を示している。(c)の写真はいくぶん不鮮明であるが、データマトリックスの印字ドットの剥離は認められず、高温多湿条件下であっても密着性が高いことを表している。
それらに対し、比較例6〜9のインクは、表4に示すように、白色インクについて、樹脂の種類と導電剤の種類の変更による分散性の評価をした場合、導電剤の種類の違いにより凝集の発生が認められ、連続式インクジェットプリンタで使用する場合の安定性不足が認められた。
尚、上記した実施例1〜4,6〜14のインクは、従来の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂を含有しているインクと異なり、インク中の塩素がいずれも900ppmを大幅に下回り、「ほとんど検出せず」という結果を得ている。

Claims (5)

  1. ケトン系溶剤着色剤、ブロックイソシアネート、樹脂および導電剤を含んで成るインクジェットプリンタ用のインクであって、前記ブロックイソシアネートに組み込まれているブロック剤が、ジエチルマロネート、ジメチルピラゾールおよびメチルエチルケトンオキシムから成る群より選ばれた一種または二種以上であり、前記樹脂が、ブチラール樹脂とロジン変性マレイン酸樹脂のうちの少なくとも一種であり、前記ケトン系溶剤が、インク重量全体に対し60.9重量%以上のメチルエチルケトンを含んでいることを特徴とするインクジェット用インク。
  2. ブロックイソシアネートが、インク総重量に対して0.5重量%以上5重量%以下含まれている請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. ブロックイソシアネートに組み込まれているブロック剤が、ジメチルピラゾールを主成分とし、更に、ジエチルマロネートおよびメチルエチルケトンオキシムから成る群より選ばれた一種または二種以上を含んでいる請求項1または請求項2に記載のインクジェット用インク。
  4. インク総重量に対して、顔料を2〜15重量%、樹脂を1〜20重量%、ブロックイソシアネートを0.1〜5重量%、導電剤を0.3〜2.5重量%、それぞれ含有し、残部がケトン系溶剤を含む溶剤である請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
  5. 導電剤が、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートとテトラフェニルホウ素4級アンモニウムのうちの少なくとも一種である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
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