JP5395320B2 - X線管装置 - Google Patents

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Description

この発明は、X線を発生させるX線管を備えたX線管装置に関する。
一般に、X線管装置として、回転陽極型X線管装置等が使用されている(例えば、特許文献1参照)。回転陽極型X線管装置は、X線を放出する回転陽極型X線管と、ステータコイルと、これら回転陽極型X線管およびステータコイルを収容した筐体と、を備えている。
回転陽極型X線管は、すべり軸受ユニットと、陽極ターゲットと、陰極と、真空外囲器と、を備えている。すべり軸受ユニットは、回転軸を中心に回転可能な筒状の回転体と、この回転体に嵌合され、回転体を回転可能に指示する固定シャフトと、回転体及び固定シャフトの隙間に充填された金属潤滑材と、を有している。陽極ターゲットは、回転体に固定されている。陰極は、陽極ターゲットに対向配置されている。真空外囲器は、すべり軸受ユニット、陽極ターゲット及び陰極を収容している。
上記回転陽極型X線管装置の動作状態において、ステータコイルは回転体に与える磁界を発生するため、回転体及び陽極ターゲットは回転する。また、陰極は熱電子を放出し、放出された熱電子は陽極ターゲットに衝突する。これにより、陽極ターゲットは、電子と衝突するときにX線を放出する。
放出されたX線は被写体を透過しX線検出器によって検出される。X線管装置及びX線検出器を用いることにより、X線画像の情報は取得される。そして、X線画像の情報がモニタに伝送されることにより、モニタの表示画面に撮影されたX線画像を表示させることができる。
コントラスト特性の優れたX線画像を得るため、撮影時、X線管のX線管電圧(以下、管電圧と称する)は可能な限り低い値に設定される。被写体のぶれ等に起因したX線画像の劣化を抑制するため、撮影時間は可能な限り短く設定される。
X線画像診断能の向上を図るため、X線画像の画質改善は常に求められている。X線検出器の性能向上は無論、X線管のX線管電流(以下、管電流と称する)特性の改善、すなわち管電流の増加が求められている。しかし、X線管の特性上、管電圧が下がると管電流も減少するのが一般的である。本特性(管電圧の低下に起因した管電流の低下)を少しでも改善するため、陽極ターゲット及び陰極間の距離を短縮する技術も適用されている。しかし、この場合、X線管の主要機能である耐電圧特性を維持するため、陽極ターゲット及び陰極間の距離の短縮にも限界がある。
また、管電圧が80kV以下の領域において、許容最大管電流の制約により、X線管は、このX線管の最大許容入力より低い条件でしか使用できず、X線画像向上を阻害している一要因となっている。上記X線管装置では、主に空間電荷で制限されている許容最大管電流以上の管電流とした場合、撮影は不可能であった。
一方、焦点内電子分布改善による画質向上を主眼とし、上記陰極に同等の特性を持つ2つのフィラメントを設けた技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。焦点は、同時通電された2つのフィラメントにより形成される。
特開平9−63520号公報
上記したように、陰極に2つのフィラメントを用いた場合、陰極に1つのフィラメントを用いた場合の許容最大管電流以上の管電流での撮影が可能となる。
通常、X線管装置は、被写体厚や撮影手技(透視及び撮影)のバリエーションに適したX線を放出するため、陰極に少なくとも互いに異なる特性を持つ2つのフィラメントを設けているのが一般的である。このため、陰極に同等の特性を持つ2つのフィラメントを設けた場合、バリエーションに富んだX線の放出は困難となる。また、バリエーションに富んだX線を放出させる場合、陽極ターゲット及び陰極間の距離の短縮はできない。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、バリエーションに富んだX線を放出でき、X線管電流を増大できるX線管装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の態様に係るX線管装置は、互いに電子放出量の異なる2つのフィラメントを有した陰極と、前記陰極に対向配置され、前記陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、前記陰極及び陽極ターゲットを収容した真空外囲器と、を具備したX線管と、
前記2つのフィラメントに電気的に接続され、前記2つのフィラメントを同時に駆動させるかどうか制御する制御部と、
抵抗と、を備え、
前記制御部は、前記2つのフィラメントを同時に駆動させる場合、前記2つのフィラメントが直列に接続された直列回路を形成し、前記抵抗を前記2つのフィラメントの何れか一方に電気的に並列に接続させた状態で前記2つのフィラメントを同時に直列駆動させている。
この発明によれば、バリエーションに富んだX線を放出でき、X線管電流を増大できるX線管装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態に係るX線管装置について詳細に説明する。
図1に示すように、回転陽極型のX線管装置は、回転陽極型のX線管1と、磁界を発生させるコイルとしてのステータコイル2と、X線管及びステータコイルを収容した筐体3と、筐体内に充填された冷却液としての絶縁油4と、制御部5と、を備えている。
X線管1は、陰極(陰極電子銃)10と、すべり軸受ユニット20と、陽極ターゲット60と、真空外囲器70と、を備えている。
図1、図2及び図3に示すように、陰極10は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12を有している。第1フィラメント11及び第2フィラメント12には、端子81、82、83より相対的に負の電圧と電流が与えられる。これにより、第1フィラメント11及び第2フィラメント12は電子(熱電子)を放出する。
陰極10は、図示しない収束電極も有している。収束電極は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12それぞれに設けられ、第1フィラメント及び第2フィラメントから放出された電子を収束する。このため、陰極10は、電子を収束して放出することができる。なお、陰極10の詳細については後述する。
図1に示すように、すべり軸受ユニット20は、回転体30と、固定体としての固定シャフト40と、潤滑材としての図示しない金属潤滑材と、を備え、すべり軸受を使っている。
回転体30は、円筒状に形成され、一端部が閉塞されている。回転体30は、この回転体の回転動作の中心軸となる回転軸に沿って延出している。この実施の形態において、上記回転軸は、X線管1の管軸a1と同一であり、以下管軸a1として説明する。回転体30は、管軸a1を中心に回転可能である。回転体30は、この一端部に位置した継手部31を有している。回転体30は、Fe(鉄)やMo(モリブデン)等の材料で形成されている。
固定シャフト40は、回転体30よりサイズの小さい円筒状に形成されている。固定シャフト40は、回転体30と同軸的に設けられ、管軸a1に沿って延出している。固定シャフト40は、回転体30の内部に嵌合されている。固定シャフト40は、FeやMo等の材料で形成されている。固定シャフト40の一端部は、回転体30の外部に露出されている。固定シャフト40は、回転体30を回転可能に支持している。
金属潤滑材は、回転体30及び固定シャフト40間の間隙に充填されている。
図1に示すように、陽極ターゲット60は、管軸a1に沿った方向に、固定シャフト40の他端部に対向配置されている。陽極ターゲット60は、陽極61と、この陽極の外面の一部設けられたターゲット層62と、を有している。
陽極61は、継手部31を介して回転体30に固定されている。陽極61は、形状が円盤状であり、Mo等の材料で形成されている。陽極61は、管軸a1を中心に回転可能である。ターゲット層62は、管軸a1に沿った方向に陰極10に間隔を置いて対向配置されたターゲット面Sを有している。
陽極ターゲット60には、固定シャフト40及び回転体30を介し、端子91、92、93より相対的に正の電圧が与えられる。
図1に示すように、真空外囲器70は、円筒状に形成されている。真空外囲器70は、ガラス及びセラミックなどの絶縁材や金属などの組合せで形成されている。真空外囲器70において、陽極ターゲット60と対向した個所の径は、回転体30と対向した個所の径より大きい。真空外囲器70は、開口部71を有している。真空外囲器70の密閉状態を維持するよう、開口部71は、固定シャフト40の一端部に密着している。真空外囲器70は、固定シャフト40を固定している。真空外囲器70は、この内壁に陰極10を取付けている。真空外囲器70は、密閉され、陰極10、すべり軸受ユニット20及び陽極ターゲット60等を収容している。真空外囲器70の内部は真空状態に維持されている。
ステータコイル2は、回転体30の側面に対向して真空外囲器70の外側を囲むように設けられている。ステータコイル2の形状は環状である。
筐体3は、陰極10と対向したターゲット層62付近にX線を透過させるX線透過窓3aを有している。筐体3の内部には、X線管1及びステータコイル2が収容されている他、絶縁油4が充填されている。
制御部5は、端子81、82、83を介し、陰極10に電気的に接続されている。
次に、陰極10について詳細に説明する。
図1、図2、図3及び図4に示すように、陰極10は、大焦点を形成する撮影専用の第1フィラメント11と、小焦点を形成する撮影及び透視双方用の第2フィラメント12とを有している。上記したように、第1フィラメント11及び第2フィラメント12の種類は異なり、これらの特性も異なる。第1フィラメント11及び第2フィラメント12の電子放出量は互いに異なる。より詳しくは、第1フィラメント11及び第2フィラメント12の最大電子放出量が互いに異なる。第1フィラメント11が形成する焦点サイズは、第2フィラメント12が形成する焦点サイズより大きい。第1フィラメント11及び第2フィラメント12は、陰極10に形成され、かつ、互いに対向する傾斜面上にそれぞれ設置されている。
この実施の形態において、X線管装置は、上述した他、抵抗13及び切換器50を有している。抵抗13及び切換器50は、筐体3の内部に設けられているが、外部に設けることも可能である。切換器50は、例えば1つの導体51を有している。導体51の位置は、制御部5により切り換えられる。導体51は、接続位置52と、絶縁位置53との何れかに位置している。導体51は、ノードn4を介して端子83に電気的に接続されている。
第1フィラメント11の一端は端子81に電気的に接続され、その他端はノードn1お及び導体51を介して端子83に電気的に接続されている。第2フィラメント12の一端は端子82に電気的に接続され、その他端はノードn1及び導体51を介して端子83に電気的に接続されている。
第2フィラメント12の両端のノードにおいて、ノードn2は、抵抗13を介して端子15に電気的に接続されている。ノードn3は、端子14に電気的に接続されている。端子16は、ノードn4を介して端子83に電気的に接続されている。
導体51が接続位置52に位置した状態において、端子14、端子15及び端子16は、導体51に電気的に接続され、導体51を介して互いに導通される。このため、抵抗13は、この抵抗に接続された導体51を介して第2フィラメント12に電気的に並列に接続される。
導体51が絶縁位置53に位置した状態において、端子14、端子15及び端子16は、導体51と電気的に絶縁される。
上記X線管装置の動作状態について説明する。X線管装置の動作時、ステータコイル2は回転体30に与える回転トルクを発生させるため、回転体は回転する。これにより、陽極ターゲット60も回転することになる。
始めに、第1フィラメント11を用いた撮影を実施する場合について説明する。陽極ターゲット60が回転を開始すると、まず、制御部5は、端子81及び端子83間に第1フィラメント11を駆動させる電流を与える。すると、第1フィラメント11にのみ相対的に負の電圧及び電流が与えられる。陽極ターゲット60に相対的に正の電圧が与えられる。
第1フィラメント11及び陽極ターゲット60間にX線管電圧(以下、管電圧と称する)が加えられるため、第1フィラメント11から放出された電子は、収束及び加速され、ターゲット層62に衝突される。すなわち、陰極10からターゲット層62の大焦点にX線管電流(以下、管電流と称する)が流れる。
ターゲット層62は電子と衝突するときにX線を放出し、大焦点から放出されたX線は、X線透過窓3aを介して筐体3の外部に放出される。これにより、大焦点を形成しての撮影を実施することができる。
次に、第2フィラメント12を用いた撮影及び透視を実施する場合について説明する。陽極ターゲット60が回転を開始すると、まず、制御部5は、導体51が絶縁位置53に位置するよう切り換える。また、制御部5は、端子82及び端子83間に第2フィラメント12を駆動させる電流を与える。すると、第2フィラメント12にのみ相対的に負の電圧及び電流が与えられる。陽極ターゲット60に相対的に正の電圧が与えられる。
第2フィラメント12及び陽極ターゲット60間に管電圧が加えられるため、第2フィラメント12から放出された電子は、収束及び加速され、ターゲット層62に衝突される。すなわち、陰極10からターゲット層62の小焦点に管電流が流れる。
ターゲット層62は電子と衝突するときにX線を放出し、小焦点から放出されたX線は、X線透過窓3aを介して筐体3の外部に放出される。これにより、小焦点を形成しての撮影及び透視を実施することができる。
次に、第1フィラメント11及び第2フィラメント12の双方を用い、管電流を増大させて撮影を実施する場合について説明する。陽極ターゲット60が回転を開始すると、まず、制御部5は、導体51が接続位置52に位置するよう切り換える。これにより、抵抗13は、第2フィラメント12に電気的に並列に接続される。
また、導体51が接続位置52に位置することにより、端子81及び端子82間に流れる電流は、端子14及び端子15とノードn1/n2/n3を経由するため、制御部5は、第2フィラメント12と抵抗13とを並列に、且つ第1フィラメント11と第2フィラメント12とを直列に同時駆動させることになる。
より詳しくは、制御部5は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12を同時に異なる条件で駆動させる。端子81及び端子82間に第1フィラメント11及び第2フィラメント12が直列に接続された直列回路が形成されるため、制御部5は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12を直列駆動させる。これにより、第1フィラメント11及び第2フィラメント12に相対的に負の電圧及び電流が与えられる。陽極ターゲット60に相対的に正の電圧が与えられる。
第1フィラメント11及び第2フィラメント12と、陽極ターゲット60との間に管電圧が加えられるため、第1フィラメント11及び第2フィラメント12から放出された電子は、収束及び加速され、ターゲット層62に衝突される。第1フィラメント11によって形成される大焦点と、第2フィラメント12によって形成される小焦点とは重なる。すなわち、陰極10からターゲット層62の焦点に管電流が大電流となって流れる。
ターゲット層62は電子と衝突するときにX線を放出し、焦点から放出されたX線は、X線透過窓3aを介して筐体3の外部に放出される。なお、撮影には、大焦点及び小焦点が重なったターゲット層62から放出されるX線のみ利用される。これにより、管電流を増大させての撮影を実施することができる。
次に、フィラメント電流に対する管電流の変化について説明する。ここで、フィラメント電流とは、第1フィラメント11を流れる電流(第1フィラメント電流)及び第2フィラメント12を流れる電流(第2フィラメント電流)等を意味する。
図5は、一般的な管電流特性の傾向を示す図である。図に示すように、管電圧が80kV以下である低管電圧領域において、フィラメント電流を増大させても得られる管電流は増大しない。上記したことは、空間電荷の制限によるものであり、詳しくは、管電圧に応じて、陰極10及びターゲット層62間の空間に存在する電荷によりフィラメントから放出される熱電子のターゲット層まで到達する数が増減し、管電圧を低下させるに従い到達数が減少する傾向にあるためである。許容最大フィラメント電流Mは、フィラメントの製品寿命を短くさせず、かつ、フィラメントの切断等フィラメントに不良を発生させない電流であることを意味している。
上記したことから、X線管1の構造上の制約により、低管電圧領域において、管電流は制限される。
次に、第1フィラメント電流に対する管電流の変化について説明する。
図6に示すように、管電圧を60kVとした場合、管電流がピークとなる管電流Iは、第1フィラメント電流を許容最大フィラメント電流M1とすることで得られる。このため、第1フィラメント11を単独で用いる場合、第1フィラメント11に許容最大フィラメント電流M1を与えての撮影が限界となる。
次に、第2フィラメント電流に対する管電流の変化について説明する。
図7に示すように、低管電圧領域において、管電流がピークとなる管電流Iは、第2フィラメント電流を許容最大フィラメント電流M2とすることで得られる。このため、第2フィラメント12を単独で用いる場合、第2フィラメント12に許容最大フィラメント電流M2を与えての撮影及び透視が限界となる。
ここで、第1フィラメント11が第2フィラメント12より大きい焦点を形成することから、許容最大フィラメント電流M1、M2の関係は、M1>M2となるのが一般的である。また、管電流I、Iの関係は、I>Iとなる。
また、図7に示すように、低管電圧領域において、管電流I以下である管電流Iは、第2フィラメント電流をフィラメント電流Nとすることで得られる。このため、第1フィラメント11及び第2フィラメント12の双方を用いる場合、第1フィラメント11に許容最大フィラメント電流M1を与え、第2フィラメント12にフィラメント電流Nを与えて撮影すれば良い。これにより、少なくとも低管電圧領域において、実効管電流を管電流Iより10%以上増大させることができる。なお、第1フィラメント11が第2フィラメント12より大きい焦点を形成することができ、第2フィラメントに抵抗13が電気的に並列に接続されていることから、許容最大フィラメント電流M1はフィラメント電流Nより大きい。
ここで、M2>Nの関係を満たすよう、フィラメント電流Nを設定するのが一般的である。上記したことは、M2>Nの関係を満たさずに第1フィラメント11及び第2フィラメント12の双方を用いた場合、X線管装置の最大許容入力を超過する恐れがあるためである。ここで言う最大許容入力とは、第1フィラメント11にて形成される焦点内に第2フィラメント12にて形成される焦点が重乗された場合に於いて許容される管電圧と管電流の積を意味している。最大許容入力を超過した場合、ターゲット層62に形成される焦点での温度がターゲット層62の許容温度以上となり耐電圧特性の劣化や焦点寸法異常など、X線管装置の寿命を短縮させてしまう恐れがある。
以上のように構成されたX線管装置によれば、陰極10は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12を有している。制御部5は、第1フィラメント11及び第2フィラメント12を同時に駆動させるかどうか制御する。第1フィラメント11及び第2フィラメント12を同時に駆動させる場合、制御部5は、第1フィラメント及び第2フィラメントが直列に接続された直列回路を形成するとともに、抵抗13を第2フィラメントに電気的に並列に接続させた状態で第1フィラメント及び第2フィラメントを直列駆動させる。
これにより、管電流を第1フィラメント11単独の許容最大管電流以上とし、被写体を撮影することができる。このため、管電圧を80kV以下と低くしても、コントラスト特性の優れたX線画像を得ることができ等、X線画像の画質を大幅に向上させることができる。また、撮影時間を短くして撮影も、被写体のぶれ(被写体の運動ボケ)等に起因したX線画像の劣化を抑制することができる。
第1フィラメント11及び第2フィラメント12を駆動させて管電流を増大させる場合、第2フィラメント12の駆動は、X線管装置の最大許容入力とのバランスを考慮して行えば良い。
上記したことから、バリエーションに富んだX線を放出でき、管電流を増大できるX線管装置を得ることができる。
この実施の形態に係るX線管装置は、低管電圧に設定して使用され、互いに種類の異なる少なくとも2つのフィラメントを異なる条件で駆動させ、撮影時の実効管電流を増大させることができる。これらフィラメントの駆動は、X線管装置の管電圧、管電流及び最大許容入力を踏まえ、許容最大管電流で制限される撮影条件時を主体に行えば良い。
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、抵抗13の抵抗値は、許容最大フィラメント電流M1、許容最大フィラメント電流M2、第1フィラメント11固有の抵抗値及び第2フィラメント12固有の抵抗値より設定すれば良い。抵抗13及び切換器50は、筐体3の外部に設けられていても良い。フィラメント電力に応じ、制御部5は、抵抗を第1フィラメント11に電気的に並列に接続させても良い。
X線管装置は、複数の抵抗を有していても良い。上乗せ可能な管電流Iの値に応じ、制御部5は、複数の抵抗を第2フィラメント12に電気的に並列に接続させても良い。さらに、制御部5は、第2フィラメント12に電気的に並列に接続させる抵抗の数を選択できるため、より細かな管電流制御に対応させることができる。これにより、管電流の増大を更に効率良く実現できる。
第1フィラメント11及び第2フィラメント12を異なる条件で駆動させる場合、上述したように抵抗13及び切換器50を用いた駆動に限定されることはない。抵抗13及び切換器50を用いることがなくとも、制御部5が第1フィラメント11及び第2フィラメント12に異なる条件で駆動させる電流を与えて行っても良い。第1フィラメント11及び第2フィラメント12を異なる条件で駆動させる場合、安全性や経済性等により適した方法を選択すると最も効果的である。
陰極10は、複数種類の3つ以上のフィラメントを有していても良い。これにより、3つ以上のフィラメントを同時に駆動させることで管電流を増大させることができる。
この発明は、回転陽極型のX線管装置に限定されることなく、固定陽極型のX線管装置等、他のX線管装置にも適用することができる。
また、この発明は、互いに電子放出量の異なる複数のフィラメントを有した陰極10と、陰極に対向配置され、陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲット60と、陰極及び陽極ターゲットを収容した真空外囲器70と、を具備したX線管1と、複数のフィラメントに電気的に接続され、複数のフィラメントを同時に駆動させるかどうか制御する制御部5と、を備えたX線管装置に適用することができる。
この発明の実施の形態に係るX線管装置を示す断面図。 図1に示した陰極を示す拡大断面図。 図1及び図2に示した陰極を陽極ターゲット側から見た拡大平面図。 上記X線管装置の第1フィラメント、第2フィラメント、抵抗及び切換器の接続関係を示す概略回路図。 上記X線管装置のフィラメント電流に対する管電流の変化をグラフで示した図。 上記X線管装置の第1フィラメント電流に対する管電流の変化をグラフで示した図。 上記X線管装置の第2フィラメント電流に対する管電流の変化をグラフで示した図。
符号の説明
1…X線管、2…ステータコイル、3…筐体、4…絶縁油、5…制御部、10…陰極、11…第1フィラメント、12…第2フィラメント、13…抵抗、20…軸受ユニット、50…切換器、51…導体、60…陽極ターゲット、70…真空外囲器。

Claims (4)

  1. 互いに電子放出量の異なる2つのフィラメントを有した陰極と、前記陰極に対向配置され、前記陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、前記陰極及び陽極ターゲットを収容した真空外囲器と、を具備したX線管と、
    前記2つのフィラメントに電気的に接続され、前記2つのフィラメントを同時に駆動させるかどうか制御する制御部と、
    抵抗と、を備え、
    前記制御部は、前記2つのフィラメントを同時に駆動させる場合、前記2つのフィラメントが直列に接続された直列回路を形成し、前記抵抗を前記2つのフィラメントの何れか一方に電気的に並列に接続させた状態で前記2つのフィラメントを同時に直列駆動させるX線管装置。
  2. 前記X線管が収容された筐体を備え、
    前記抵抗は、前記筐体内部に設けられている請求項1に記載のX線管装置。
  3. 前記X線管が収容された筐体を備え、
    前記抵抗は、前記筐体外部に設けられている請求項1に記載のX線管装置。
  4. 互いに電子放出量の異なる2つのフィラメントを有した陰極と、前記陰極に対向配置され、前記陰極から放出される電子が衝突されることによりX線を放出する陽極ターゲットと、前記陰極及び陽極ターゲットを収容した真空外囲器と、を具備したX線管と、
    前記2つのフィラメントに電気的に接続され、前記2つのフィラメントを同時に駆動させるかどうか制御する制御部と、
    複数の抵抗と、を備え、
    前記制御部は、前記2つのフィラメントを同時に駆動させる場合、前記2つのフィラメントが直列に接続された直列回路を形成し、前記複数の抵抗を前記2つのフィラメントの何れか一方に電気的に並列に接続させた状態で前記2つのフィラメントを同時に直列駆動させるX線管装置。
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