JP5394832B2 - 靴 - Google Patents

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Description

本発明は、アウトソールが分子主鎖に二重結合を有する天然ゴムまたは合成ゴムからなると共に、アウトソールの一部が伸長された状態で甲皮またはその他の部材に接着された部分の耐オゾン性を高めた靴に関するものである。
一般の靴においては、アウトソールとして天然ゴムや合成ゴムが、防滑性や反発弾性に優れ、加工性に優れるために多く使用されている。そのような靴底は、アウトソールのみからなるものや、靴底がアウトソールとは異なる素材からなるミッドソール等を積層した複層構造からなるもの等がある。そのような靴底と甲皮が接合されて靴となっている。靴を製造する過程において、靴底と甲皮を接合してから加硫をする方法と、靴底またはアウトソールのみを加硫後に、甲皮と靴底を接合する方法等がある。アウトソールのみを加硫する場合には、アウトソールをミッドソール等と一体化した後に、甲皮と一体化して靴とする場合と、甲皮とミッドソール等を一体化した後に、最後にアウトソールを一体化して靴とする場合がある。
一方、アウトソールとして使用される天然ゴムや合成ゴムは、分子主鎖中に二重結合を有するジエン系ゴムが主体である。この分子主鎖中に存在する二重結合が、加硫後のゴムにおいては、大気中のオゾンによって、切断され、ゴムの表面に微小なクラック(オゾンクラック)を発生させることがある。
大気汚染が進むにつれ、大気中の窒素酸化物(NOx)の濃度が上昇する傾向にあり、この窒素酸化物が短波長の紫外線(300nm以下)の作用を受けてオゾンを生成するために、地表面近くの大気中に含まれるオゾンの量増加することとなる。そのために、この生成されたオゾンが加硫後のゴムに微小なクラックを発生させる可能性が高まっている。
靴において、靴底のアウトソールは、通常において靴底の底面にあたる部分に使用されるため大気に直接接する可能性は低く、靴を使用することでアウトソールの表面に汚れ等の被膜が形成されオゾンによる影響を受けにくくなる傾向にある。また、仮に微小クラックが発生したとしても、アウトソールの機能が阻害されたり、外観上の問題を発生することはほとんど無い。
しかし、加硫後のアウトソールが伸長した状態で、甲皮やその他の部材に接着されている場合においては、オゾンの影響により微小クラックが発生すると、ゴム自体が伸長されているために、微小クラックが大きなクラックとなる傾向にあり、靴としての外観を損ねたり、アウトソールの機能を阻害することにもなる。特にジョギングシューズ等のアウトソールが靴甲皮の爪先部分や踵部分に巻き上げられた状態になっている靴においては、アウトソールを伸長した状態で接着していると共に、甲皮の一部として靴の表面に露出しているために、このようなクラックが発生しやすく、発生した場合には靴の外観を損ねて、商品価値を低下する問題となる。
このオゾンの影響によるクラック発生を防止するために、一般的にはゴム材料の配合によって対応されていた。配合にワックス等のオゾン老化防止剤を添加することで、加硫後にゴムの表面にブルームしてワックスが薄膜を形成し、ゴム表面と大気とを遮断して、耐オゾン性を向上させることが知られている。(特許文献1)
アウトソールのゴム材料にワックスを配合することで、耐オゾン性は改良できるが、アウトソールを甲皮やミッドソールに接着させる際に、接着不良となったり、アウトソールとして防滑性能を低下させるとともに、アウトソールが黒以外の色でデザイン性も要求される靴においては変色の問題もあり、靴用のアウトソールに採用することはできなかった。
また、ゴム製長靴の表面にエナメル層を設けて、耐候性などを向上させる方法がしられている。(特許文献2)
このようなエナメル層は、未加硫のゴムからなる長靴を成形し、その後エナメルを長靴表面に塗装してエナメル層を形成したのちに、加硫を行って、長靴を完成させるものである。未加硫のアウトソールの表面の必要部分のみにエナメル層を設け、加硫後に、靴として、甲皮やミッドソールに接着させることは可能であるが、アウトソールを伸長して、甲皮等に接着させる際に、アウトソール表面のエナメル層に亀裂が発生してしまい、耐オゾン性の面で不十分な物であった。
特開平11-246706号公報 特公昭61−006101号公報
本発明は、アウトソールの一部が伸長された状態で靴の甲皮やミッドソールに接着された靴において、前記伸張されたアウトソールの表面及びその周辺のみに樹脂塗膜をもうけることで、耐オゾン性に優れるとともに、靴として外観やデザイン性を低下することない靴を提供することにある。
本発明の靴は、少なくとも甲皮と、分子主鎖に二重結合を有するゴム製のアウトソールからなる靴において、前記アウトソールの一部が伸張された状態で甲皮またはミッドソールに接着された伸張部分を有し、前記伸張部分樹脂塗膜を有することを特徴とするものである。
また、前記樹脂塗膜は、アウトソールに密着しており、塗膜厚みで1〜100μmの塗膜であることが好ましい。前記樹脂塗膜が塗膜厚みで、1μm未満の塗膜であると、オゾンに対するバリヤ性が不十分であると共に、アウトソールの表面がフラットでない場合に塗膜自体を均一にする形成することが困難となり好ましくない。
前記樹脂塗膜が塗膜厚みで、100μmを超える塗膜であると、アウトソールの意匠面を埋めてしまい外観を損ねると共に、前記樹脂塗膜が均一な塗膜となり難く、アウトソールの屈曲等で前記樹脂塗膜自体にクラックが発生するおそれがある。
前記樹脂塗膜を構成する樹脂としては、塗膜を形成するために塗工可能な粘度となるように、溶媒に可溶なものが好ましく、仕上がり外観の面から有機溶媒に可溶なものが更に好ましい。架橋剤等を併用することで、架橋構造を形成するような樹脂であってもよい。また、塗膜を形成した場合にアウトソールの変形に追従できるよう柔軟性を有することが好ましく、150%以上の伸び率を有するものが好ましい。
前記樹脂塗膜に使用できる樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂を使用することができる。
特に、ウレタン系樹脂は、伸び性能に優れるためゴムへの追従性、塗膜としてのオゾン遮蔽性、また無黄変タイプのものであれば耐候性がよい点で好ましく使用できる。
前記の樹脂を溶媒に溶解させて、塗工液として、アウトソールが伸張された状態で甲皮またはその他の部材に接着された伸張部分に塗工されるが、塗工液には、必要に応じて、各種の添加剤、例えばマット剤、消泡剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合す
ることができる。塗工される塗工液の粘度としては、塗工可能な粘度であればよいが、アウトソールの意匠形状が細かい場合は、可能な限り低粘度のものが均一な塗膜を形成しやすく好ましい。塗工方法としては、刷毛塗りやスプレー等の一般的な塗工方法を使用することができる。塗膜厚みで1〜100μmの塗膜を形成できるように、粘度、塗工方法は適宜選択される。
アウトソールと形成される樹脂塗膜との密着力を高めるために、予めアウトソールの塗工部分に、脱脂処理やプライマー処理との表面処理を行ってもよい。しかし、アウトソールの意匠性や艶等の外観の部分的な変化を起こすために、サンダー、サンドブラスティング等の機械的処理は好ましくなく、脱脂処理やプライマー処理等の意匠性や艶等に外観の部分的な変化を起こさせない処理が好ましい。
本願発明は、アウトソールの一部が伸張された状態で甲皮またはその他の部材に接着された伸張部分を有した靴においても、靴店の店頭で周囲に窒素酸化物等が存在し、紫外光が照射されるような状況に置かれても、伸張部分に樹脂塗膜を有するために、前記伸張部分にオゾンが直接的に接する事がないので、アウトソールの伸張部分におけるオゾンクラックに起因する亀裂の発生を防止でき、ゴム配合にワックス等のオゾン老化防止剤等を添加する必要がないためにアウトソール全体として、経時による変色や、防滑性等の機能低下を発生させる事のないものである。
また、靴として完成した段階で、アウトソールの一部が伸張された状態で甲皮またはその他の部材に接された伸張部分のみに塗膜を形成するので、アウトソールのゴムの外観や艶などとの調整が容易になり、塗布面積も最小限に留めることが可能となる。
本願発明の靴に使用される靴底の例を説明する図である。
本発明の靴は、少なくとも甲皮と、分子主鎖に二重結合を有するゴム製のアウトソールからなる靴において、前記アウトソールの一部が伸張された状態で甲皮またはミッドソールに接着された伸張部分を有し、前記伸張部分樹脂塗膜を有するものである。
一般的にアウトソールは、未加硫ゴムを金型に定寸法に切り入れて押しつぶして形を作り加硫させる方法で作成される。
このアウトソールに使用されるゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム等の汎用ゴムで加工性に良好なものが使用される。このようなゴムは、分子主鎖中に二重結合をもっているために、加硫後の成形品は、大気中のオゾンによって成形品表面にオゾンクラックを発生しやすいものである。しかし、一般的にアウトソールは、靴として使用される場合には、表面に汚れ等の被膜が形成されオゾンとの接触が断たれやすくなるため、オゾンクラックの発生は緩和される。
一般的なスポーツタイプ靴の場合、靴底1は、図1に示すように、加硫成形されたアウ
トソール3がクッション性のあるウレタン発泡体、エチレン酢酸ビニル共重合発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体等からなるミッドソール2に、殆ど部分的な伸張がされずに、接着剤を使用して接着され形成される。
次に、靴型に甲皮を被せて作製された靴底のミッドソール面と甲皮底面とを接着一体化させる時に、図1のアウトソールの爪先部分を、ミッドソールを介さず甲皮と直接接着さ
せるが、このときに爪先部分は長さ方向に伸ばされた状態で接着される。アウトソール
を伸ばした状態で接着するのは、甲皮の爪先部分に曲面に馴染ませて隙間のない状態で接着する為である。この段階で伸ばされて接着された部分を伸張部分4とする。
図1においては、爪先部分のみにこのような伸張部分が存在することを示したが、伸張
部分は、靴のデザインや使用用途によって、踵部、踏まず部、踏み付け部等に存在する場合もある。
このように作製された伸張部分に、溶媒に溶解した樹脂からなる塗工液をスプレーや刷毛塗り等で塗工して樹脂塗膜を形成する。この樹脂塗膜の厚みとしては、溶媒を除去した後の塗膜厚みを1〜100μmとすることが好ましい。また、基本的には伸張部分にのみに樹脂塗膜を形成すればよいが、数ミリ範囲の周辺部に塗工することで、伸張部分に塗膜が形成されないことを防ぐことが可能となる。
また、アウトソールと形成される樹脂塗膜との密着力を高めるために、予めアウトソールの塗工部分に、脱脂処理やプライマー処理との表面処理を行ってもよい。しかし、アウトソールの意匠性や艶等の外観の部分的な変化を起こすために、サンダー、サンドブラスティング等の機械的処理は好ましくなく、脱脂処理やプライマー処理等が意匠性や艶等に外観の部分的な変化を起こさせない処理が好ましい。
前記樹脂塗膜を構成する樹脂としては、塗膜を形成するために塗工可能な粘度となるように、溶媒に可溶なものが好ましく、仕上がり外観の面から有機溶媒に可溶なものが更に好ましい。架橋剤等を併用することで、架橋構造を形成するような樹脂であってもよい。また、塗膜を形成した場合にアウトソールの変形に追従できるよう柔軟性を有することが好ましく、150%以上の伸び率を有するものが好ましい。
前記樹脂塗膜に使用できる樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくと1種からなる樹脂を使用することができる。
特に、ウレタン系樹脂は、伸び性能に優れるためゴムへの追従性、塗膜としてのオゾン遮蔽性、また無黄変タイプのものであれば耐候性がよい点で好ましく使用できる。
前記樹脂を溶媒に分散させて塗工液とするが、このときの塗工液の粘度は、塗工面積やアウトソールの伸張部分に意匠形状によって適宜選定される。細かな意匠形状の場合にはフラット面に塗るよりも低粘度とした方がより均一の塗膜を形成する上で好ましい。
このときに、使用される溶媒としては、使用する樹脂や塗工条件等により適宜選択することができ、例えば、水、またはトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン等の有機溶剤を単独又は複数を組み合わせて使用することができる。
溶媒として、有機溶剤系のものを使用することで、塗膜の形成外観や作業効率を水系のものを使用する場合よりも向上させることができ、好ましい。
前記の樹脂を溶媒に溶解させた塗工液には、必要に応じて、各種の添加剤、例えばマット剤、消泡剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合することができ、アウトソールの樹脂塗膜の形成部分とそれ以外の部分とで外観的差が生じないようにすることができる。
樹脂塗膜を形成する作業は、靴底と甲皮を接着一体化した後であれば、靴型から脱型前であっても、脱型後であってもよい。
このように甲皮と靴底を一体化し、アウトソールの伸張部分に塗工液を塗布し、加熱乾燥等により、溶媒を除去することで樹脂塗膜を形成することで本願発明の靴を完成することができる。
爪先部分に天然ゴムとSBRとの混合ゴムからなるアウトソールの伸張部分があるジョキングタイプのJM−242(アキレス(株)製)を作製した。
作製した靴の甲皮の爪先部分に伸長して巻き上げられたアウトソールの伸張部分をエタノールで塵等の付着がないように拭きあげた。(脱脂処理)
塗工液1:ウレタン樹脂(樹脂固形分30% DIC(株)製) 100重量部
トルエン 75重量部
アノン 75重量部
マット剤(広野化学工業(株)製) 30重量部
塗工液2:ウレタンエマルジョン(樹脂固形分40%広野化学工業(株)製)100重量

水 150重量部
上記の溶剤系と水系の塗工液を準備し表1のように、準備した靴のアウトソール伸張部分に塗布し、加熱乾燥を行い、溶媒成分を除去し、樹脂塗膜を形成した。そして、オゾン劣化の評価を実施した。
オゾン劣化評価:塗膜を形性した靴をUVCオゾンエージングテスター(東洋精機製作所製)を使用してオゾン暴露試験(条件:40℃、50pphm)を実施し、時間経過による爪先伸張部分の亀裂の発生状況を評価した。
○・・・・・亀裂の発生無し
△・・・・・多少亀裂が発生した。
×・・・・・伸張部分全体に亀裂が発生
実施例1〜4の靴に関して、実際に靴を1週間使用しての評価を実施した結果において、実施例1及び2に関して特に問題なかったが、実施例3及び4に関しては、樹脂塗膜自体に亀裂が多少発生してしまった。
本願発明の靴は、ゴム製のアウトソールを有して、靴成形時にアウトソールを甲皮やその他の部材に伸長して接着された靴にすべてに対応でき、伸長されて接着されたアウトソールのオゾン劣化による亀裂の発生を防止することができる。
1:靴底
2:ミッドソール
3:アウトソール
4:伸張部分

Claims (3)

  1. 少なくとも甲皮と、分子主鎖に二重結合を有するゴム製のアウトソールからなる靴において、
    前記アウトソールの一部が伸張された状態で甲皮またはミッドソールに接着された伸張部分を有し、前記伸張部分樹脂塗膜を有することを特徴とする靴。
  2. 前記樹脂塗膜は、アウトソールに密着しており、塗膜厚みで1〜100μmの塗膜であることを特徴とする請求項1記載の靴。
  3. 前記樹脂塗膜がオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1または2記載の靴。
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