JP5393984B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
燃料極:H2→2H+ + 2e- ・・・・(1)
空気極:1/2O2 + 2H+ + 2e- → H2O ・・・・(2)
アノードおよびカソードは、それぞれ触媒層とガス拡散層が積層した構造からなる。各電極の触媒層が固体高分子膜を挟んで対向配置され、燃料電池を構成する。触媒層は、触媒を担持した炭素粒子がイオン交換樹脂により結着されてなる層である。ガス拡散層は酸化剤ガスや燃料ガスの通過経路となる。
(ここで、上記−OR、−PR 3 、−P(OR) 3 、−SR 2 中のRは、炭化水素系の官能基、芳香族系の官能基、アルコキシ基、アミド基またはこれらの組み合わせである。)
図1は、参考の形態1に係る電極触媒およびこれを用いた燃料電池10の構造を模式的に示す斜視図である。図2は、図1のA−A線上の断面図である。燃料電池10は、平板状のセル50を備え、このセル50の両側にはセパレータ34およびセパレータ36が設けられている。この例では一つのセル50のみを示すが、セパレータ34やセパレータ36を介して複数のセル50を積層して、燃料電池10が構成されてもよい。セル50は、固体高分子電解質膜20、アノード22およびカソード24とを有する。アノード22は、触媒層26およびガス拡散層28からなる積層体を有する。同様に、カソード24は、触媒層30およびガス拡散層32からなる積層体を有する。アノード22の触媒層26とカソード24の触媒層30は、固体高分子電解質膜20を挟んで対向するように設けられている。
スが供給される。具体的には、燃料電池10の運転時、燃料ガス、例えば水素ガスがガス流路38内をガス拡散層28の表面に沿って上方から下方へ流通することにより、アノード22に燃料ガスが供給される。一方、燃料電池10の運転時、酸化剤ガス、たとえば、空気がガス流路40内をガス拡散層32の表面に沿って上方から下方へ流通することにより、カソード24に酸化剤ガスが供給される。これにより、セル50内で反応が生じる。ガス拡散層28を介して触媒層26に水素ガスが供給されると、ガス中の水素がプロトンとなり、このプロトンが固体高分子電解質膜20中をカソード24側へ移動する。このとき放出される電子は外部回路に移動し、外部回路からカソード24に流れ込む。一方、ガス拡散層32を介して触媒層30に空気が供給されると、酸素がプロトンと結合して水となる。この結果、外部回路においてはアノード22からカソード24に向かって電子が流れることとなり、電力を取り出すことができる。
らの伝導パスがより遠くまで伸びるので、イオン伝導性を向上させることができる。また、隣接するイオン交換体同士の接触が比較的少ないため、ガスの流通経路が確保されるので、ガス拡散性を向上させることができる。
ここで、参考の形態に係る燃料電池で使用される触媒層の作製方法について説明する。まず、カーボン担持触媒にチオール基を持つ直鎖状ポリマーのイオン交換体の溶液を混合することで触媒層インクを作製する。カーボン担持触媒として、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。
図4は、参考の形態2に係る燃料電池が有する触媒層26の構造を示す概念図である。参考の形態では、イオン交換体64として、樹状分岐型ポリマーが用いられている。樹状分岐型ポリマーは、任意形状の樹枝状の分岐構造を有するポリマーである。樹状分岐型ポリマーとしては、デンドリマー、デンドロン、ハイパーブランチポリマーなどが挙げられる。
(チオール基を有する樹状分岐型ポリマーの合成方法)
ここで、チオール基を有する樹状分岐型ポリマーの合成方法について説明する。まず、3,5-bis[3,5-bis(benzyloxy)benzyloxy]benzyl bromide 1.62g(2.0mmol)化合物Aとチオ尿素0.18g(2.4mmol)を、溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)10mL)に混合し、室温で12時間攪拌を行う。得られた反応混合物に10wt%水酸化ナトリウム5mLを加えて室温で1時間攪拌する。その後、希塩酸でpHが3になるように調整して、酢酸エチルで抽出を行う。得られた酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を除去する。これにより、下記化学式で示されるチオール基を有する樹状分岐型化合物を得ることができる。
その後、10%硫酸水溶液とチオール基を有する樹状分岐型化合物を混合し、10時間室温で攪拌する。その結果、下記化学式で示される、ベンゼン環がスルホン化された、チオール基を有する樹状分岐型イオン交換体を得ることができる。
図6は、参考の形態3に係る燃料電池が有する触媒層26の構造を示す概念図である。参考の形態3に係る触媒層26は、参考の形態1の触媒層の構成に加えて、ナフィオン(登録商標)などの電解質90をさらに備える。これによれば、電解質90に被覆されていない触媒金属60に直鎖状のイオン交換体が吸着または結合することで、活性な触媒金属60が増加し、三層界面が増加する。
(触媒層作製方法)
まず、カーボン担持触媒として白金担持カーボンを用いて、アルドリッチ社製5wt%ナフィオン溶液を混合した。ナフィオンの混合量は、一般的にイオン交換体をナフィオンのみで作製する触媒層よりも少量であることが好ましい。次に、直鎖状ポリマーからなるイオン交換体溶液をスプレー塗布などの操作により加える。これ以降は、参考の形態1と同様の作製方法を適用することにより参考の形態3に係る触媒層が作製される。
(参考の形態4)
図7は、参考の形態4に係る燃料電池が有する触媒層26の構造を示す概念図である。参考の形態4に係る触媒層26は、参考の形態2の触媒層の構成に加えて、ナフィオンなどの電解質90をさらに備える。これによれば、電解質90に被覆されていない触媒金属60に樹状分岐型ポリマーが吸着または結合することで、活性な触媒金属60が増加し、三層界面が増加する。また、隣接する樹状分岐型ポリマー同士が接触することにより、プロトン伝導パスがさらに繋がるので、イオン伝導性が向上する。
(触媒層作製方法)
まず、カーボン担持触媒として白金担持カーボンを用いて、アルドリッチ社製5wt%ナフィオン溶液を混合した。ナフィオンの混合量は、一般的にイオン交換体をナフィオンのみで作製する触媒層よりも少量であることが好ましい。次に、樹状分岐型ポリマーからなるイオン交換体溶液をスプレー塗布などの操作により加える。これ以降は、参考の形態1と同様の作製方法を適用することにより参考の形態4に係る触媒層が作製される。
(参考の形態5)
参考の形態1および2では、カーボン担持触媒での例が示されているが、図8に示すように、触媒金属60としてカーボンに担持されていない白金ブラックなどを用いてもよい。参考の形態5に係る触媒層26では、触媒金属60に樹状分岐型ポリマーからなるイオン交換体64が吸着または結合している。一般的に、白金ブラックは、カーボン担持触媒と比較して触媒金属量を増加させることができる。この他、触媒金属60に直鎖状ポリマーを吸着または結合させてもよい。
(触媒層作製方法)
本参考の形態の触媒層は、触媒粒子として白金ブラックを用いることを除いて、参考の形態1と同様な手法により作製可能である。
(参考例1)
参考例1として、下記手順にしたがって参考の形態5の具体例となるセルを作製した。
(触媒スラリーの調整)
触媒として白金ブラック5gに水10gを加え、撹拌する。参考の形態2において説明した樹状分岐型イオン交換体0.5g(化2参照)にDMSO(dimethyl sulfoxide)9.5gを加えて撹拌し、樹状分岐型イオン交換体DMSO溶液を作製した。撹拌した触媒に樹状分岐型イオン交換体DMSO溶液を加えて混合物を得た。この混合物を十分に撹拌させて触媒スラリーを得た。
(触媒層作製)
上述したガス拡散層32に上記触媒スラリーをスプレー塗布することにより、触媒が4〜6mg/cm2になるようにしてカソードを作製した。アノードに関しては白金担持カーボン触媒にナフィオンを混合した触媒スラリーを用いて、スクリーン印刷により、触媒が0.5mg/cm2になるように上述したガス拡散層28の上に形成した。
(セルの作製)
150℃、90秒、2.1kNで、カソードとアノードとの間にナフィオン膜を挟んでホットプレスを行い、電極面積4cm2のセルを作製した。このセルを参考例1に係るセルとし、これを用いて後述するように発電装置で単セルの特性を評価した。
上述した参考の形態1から5では、触媒層が単層であるが、触媒層を多層構造としてもよい。実施の形態6では、図10に示すように、触媒層26は、第1層100および第2層110からなる2層構造を有する。また、触媒層30は、第1層120および第2層130からなる2層構造を有する。各層は、下記触媒構造のいずれかの組み合わせとすることができる。
・ 参考の形態2に示した、白金担持カーボンに樹状分岐型ポリマーからなるイオン交換体を触媒金属に吸着または結合させた触媒構造C
・ 参考の形態3に示した、ナフィオンを混合した後、直鎖状ポリマーからなるイ
オン交換体を吸着または結合させた触媒構造D
・ 参考の形態4に示した、ナフィオンを混合した後、樹状分岐型ポリマーからなるイオン交換体を吸着または結合させた触媒構造E
表1に、触媒層が2層構造の場合の具体的な触媒構成の組み合わせを示す。
(実施の形態7)
実施の形態7では、図11に示すように、触媒層26は、第1層100、第2層110、および第3層112からなる3層構造を有する。また、触媒層30は、第1層120、第2層130、および第3層132からなる3層構造を有する。各触媒層は、上述した触媒構造のいずれかの組み合わせとすることができる。
(比較例1)
参考例1ではカソード用の触媒スラリーを調整する際に、樹状分岐型イオン交換体(化2参照)を用いた。参考例1との対比のため、比較例1として、樹状分岐型化合物(化1参照)を用いてカソード用の触媒スラリーを用いて下記手順にしたがってセルを作製した。
(触媒スラリーの調整)
触媒として白金ブラック5gに水10gを加え、撹拌する。参考の形態2で説明した樹状分岐型化合物0.5g(化1参照)にDMSO9.5gを加えて溶解し、樹状分岐型化合物DMSO溶液を作製した。撹拌した触媒に樹状分岐型化合物DMSO溶液を加えて混合物を得た。この混合物を十分に撹拌させて触媒スラリーを得た。この触媒スラリーを用いて参考例1と同様の方法を用いてセルを作製した。
(発電特性試験)
参考例1および比較例1のセルを用いてそれぞれ発電特性の比較を行った。具体的には、発電温度60℃、水素流量200ml/分、空気流量620ml/分で発電を行った。その結果を図12に示す。結果として、樹状分岐型化合物の水素をスルホン酸基に置換させることで、性能の差が見られることがわかった。スルホン酸基に置換していないものではイオン伝導性がないため、触媒から電解質膜までプロトンが移動することができない。そのため、電解質膜近傍で起こった反応のみしか発電に寄与せず、得られた電流密度に差が現れたと考えられる。
Claims (5)
- 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面に接合したカソードと、前記電解質膜の他方の面に接合したアノードと、を備え、前記カソードおよび/またはアノードが、少なくとも2層の触媒層を有し、前記少なくとも2層の触媒層のうちの第1の触媒層は、触媒金属と、前記触媒金属に吸着または結合可能な第1の官能基、およびイオン伝導性を付与する第2の官能基を持ち、前記第1の官能基が前記触媒金属に吸着または結合しており、かつ前記第2の官能基が前記触媒金属に接しているイオン交換体と、を含み、前記少なくとも2層の触媒層のうちの第2の触媒層は、第1の触媒層中のイオン交換体とは異なるイオン交換体を含む触媒層であり、前記第1の官能基が、−SH、−NHR、−NH2、−N2H4、−OH、−OR、−SO3H、−CN、−PR3、−P(OR)3、−SR2、−PO3 2−から選択される少なくとも1種であり、前記第2の官能基がスルホン酸基、リン酸基またはこれらの組み合わせであることを特徴とする燃料電池。
(ここで、上記−OR、−PR 3 、−P(OR) 3 、−SR 2 中のRは、炭化水素系の官能基、芳香族系の官能基、アルコキシ基、アミド基またはこれらの組み合わせである。) - 前記第1の官能基と前記触媒金属との結合が、化学結合または静電的相互作用による結合であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
- 前記イオン交換体が直鎖状ポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
- 前記イオン交換体が樹状分岐型ポリマーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池。
- 前記触媒金属を担持する炭素材料をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
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