JP5393066B2 - 金属錯体型イオン液体の製造方法、金属錯体型イオン液体、及びこれを用いる金属ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

金属錯体型イオン液体の製造方法、金属錯体型イオン液体、及びこれを用いる金属ナノ粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、一価の金属カチオンにイミダゾール残基が配位して形成する金属錯体を基本構造とする金属錯体型イオン液体およびその製造方法に関する。また、本発明は該イオン液体を用いることによる金属ナノ粒子の製造方法に関する。
一般に、無機化合物を中心とするイオン化合物の殆どは溶液状態から乾燥させると結晶性の固体塩となるが、その融点は非常に高く、常温で液体になることはない。しかしながら、イオンを有する分子に有機化合物由来の構造を取り入れ、該有機構造部分を設計することにより、イオン化合物でありながらも固体(結晶)にならず、常温でも液体として振る舞うことができる。例えば、イミダゾール環の2個の窒素原子にアルキル基が導入され、イミダゾール環がカチオンになることで、対アニオンとイオン化合物を形成するが、該イオン化合物は常温で液体であることが見出され「イオン液体」として注目されるようになった(例えば、非特許文献1参照。)。有機材料を基本構造とするためその選択の幅が広がり、今では親水性のイオン液体、疎水性のイオン液体、さらに水にも有機溶媒にも混ざらないイオン液体も合成されている。このことからイオン液体は、水、有機溶媒に続く第3の液体としても捉えられている。
イオン液体は蒸気圧が極めて低いこと、難燃性であること、イオン伝導性を有していること、塩の液体としては比較的低粘性といった特徴を有し、不揮発性反応媒体としての応用や不揮発性電解液等に使用されている。
イオン液体は基本的にカチオンとアニオンの組み合わせからなる化合物である。このことから、イオン種の組み合わせ次第で多種多様のイオン液体が考えられ、イオン液体に金属イオンを含ませることも一つの方向として検討されている。例えば、カチオンをイミダゾール残基とし、そのカチオンと対を組むアニオンとして、金属イオンを含むアニオン[FeCl、[Ag(CN)、(NaSO、[AuClなどの金属イオンを含むアニオンを選択することにより、金属を含むイオン液体が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)
また、亜鉛を金属カチオンとして用い、それに4個の有機アミンを配位子として配位させてからなるイオン液体を前駆体として用い、特殊構造の酸化亜鉛に変換させる応用例が記載されている(例えば、非特許文献3参照)。
アルカリ金属をカチオンとする、下記一般式で表されるイオン液体の製造方法も提供されている(例えば、非特許文献4参照)。
(式中Mは水素原子、リチウム原子、ナトリウム原子又はカリウム原子である。)
一方、金属カチオンを含む金属錯体型ポリマーとしては、例えば、金属カチオンにビスピリジン化合物を配位させたものが提供されている(例えば、非特許文献5参照)が、ここで得られる金属錯体型ポリマーは常温で液体とならないため、「イオン液体」として使用することはできない。
現在、上記で示したアルカリ金属や亜鉛以外の金属種を「カチオン」として導入した金属錯体型イオン液体は見出されておらず、特に導電性材料として用いることができる銀や銅を金属種としたイオン液体は、導電材料、磁性材料、電池、触媒等の広い応用分野で用いることができると推測され、その開発が希求されている。
J.S.Wilkes and M.J.Zaworotko,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,13,965,1992 Y.Yoshida,K.Muroi,A.Otsuka,G.Saito,M.Takahashi, and T.Yoko,Inorg.Chem.,43,1458,2004 Zhu H.−G et al.,Chem.Mater.,18,4473−4477、2006 W.Ogihara,M.Yoshizawa and H.Ohno,Chem.Lett.,31,880,2002 A.N.Khlobystov,A.J.Blake,N.R.Champness,D.A.Lemenovskii,A.G.Majouga,N.V.Zyk, and M.Schroder,Coord.Chem.Rev.,222,155,2001
本発明が解決しようとする課題は、金属イオンをカチオン中心にし、それにイミダゾール誘導体と、ニトリル基を有する化合物とが配位してなる金属錯体型イオン液体及びその簡便な製造方法を提供することにある。また、該イオン液体の応用方法として、還元反応に基づく金属ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一価の金属カチオンを含有する化合物とモノアルキルイミダゾールとを、ニトリル基を有する化合物からなる有機媒体中で混合するという極めて簡便な手法により、金属カチオンを有する金属錯体をイオン液体とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、一価の金属カチオンを含有する化合物(A)とモノアルキルイミダゾール(B)とを、ニトリル基を有する化合物(C)からなる有機媒体中で混合することを特徴とする金属錯体型イオン液体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記で得られた金属錯体型イオン液体の応用方法として、該イオン液体その物を還元することによる金属ナノ粒子の製造方法を提供するものである。
さらに本発明は、下記一般式(1)
〔式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Mは銀原子又は銀原子であり、XはBr、Cl、I、PF、BF、Ag(CN)、CFSO又は(CFSONであり、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、矢印は金属カチオンに対して配位していることを示す。〕
で表されることを特徴とする金属錯体型イオン液体を提供するものである。
本発明で得られる金属錯体型イオン液体は、金属カチオンが有機配位子に配位された構造を有する。従って、イオン液体そのものを印刷用インキに用いることができると同時に、印刷されたイオン液体中の金属イオンを光照射等の方法でゼロ価の金属に還元することができる。即ち、本発明でのイオン液体はデバイス用導電配線に用いることができる。また、イオン液体中の金属カチオンの抗菌・殺菌性を生かすことができるので、各種塗料の添加剤として用いることもできる。
また、本発明の金属錯体型イオン液体の製造方法は、ニトリル基を有する化合物からなる有機媒体中で、常温での原料の混合と該有機媒体の減圧留去という汎用の設備で行なうことができる簡便な手法であることから、工業的な生産も可能である。
本発明は、金属錯体の一般的製法を種々検討し、配位子としてモノアルキルイミダゾールを選択し、かつ反応媒体としてニトリル基を有する化合物を用いることにより該金属錯体を液体化できることを見出したことに基づく。
本発明の金属錯体型イオン液体の原料として用いることができる一価の金属カチオンを含有する化合物(A)としては、特に限定されるものではないが、後述する応用方法において、導電性材料として使用できる観点から、金属種が銀又は銅であることが好ましく、入手容易性とイオン液体が温和な条件で得られる点から、例えば、AgPF、AgBF、AgCFSO、Ag(CFSON、CuBr、CuI、CuPF、CuBF、CuCFSO等を用いることが好ましく、単独でも2種以上を混合して使用しても良い。
また、配位子となるモノアルキルイミダゾール(B)としては、イミダゾール環の一つの窒素原子にアルキル基が結合してなる化合物であればよく、該アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基であることが好ましい。
反応媒体としては、前述の一価の金属カチオンを含有する化合物(A)とモノアルキルイミダゾール(B)とからなる金属錯体をより安定化するために、金属カチオンに配位することができるニトリル基を有する化合物(C)からなる有機媒体であることを必須とするものであり、例えば、アセトニトリル、プロピオノニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、フェニルアセトニトリルやアクリロニトリル等が挙げられ、工業的入手容易性と作業性の観点からアセトニトリルを用いることが好ましい。
本発明の金属錯体型イオン液体の製造方法としては、上述した原料と反応媒体を用いればよく、その手法としてはなんら限定されるものではないが、例えば、ニトリル基を有する化合物(C)に一価の金属カチオンを含有する化合物(A)を加えて均一になるまで攪拌し、ここにモノアルキルイミダゾール(B)を一括で、又は徐々に滴下して加え、10〜60℃で30分〜48時間程度攪拌する方法が挙げられる。モノアルキルイミダゾール(B)を予めニトリル基を有する化合物(C)と混合しておいてから加えても良い。
上記で得られた反応生成物を含む混合物から、反応媒体であるニトリル基を有する化合物(C)及び未反応原料等を減圧蒸留等によって除去し、粗イオン液体が得られる。該イオン液体は、水との相溶しないため、未反応原料等をさらに除去する方法として水洗する方法を採用することができ、洗浄に使用した水は、乾燥工程によって容易に除去可能である。
また、原料として用いる金属カチオンの対アニオンがPF、BF、CFSOである場合には、上記反応で得られた金属錯体型イオン液体と、K[Ag(CN)]、K[Cu(CN)]等と反応させることで対アニオンのイオン交換をすることができる。この反応で得られるイオン液体は、金属カチオンと、Ag(CN)2−、Cu(CN)2−等の金属を含有する対アニオンとの、二種の金属を含むイオン液体となる。
この様にして得られる金属錯体型イオン液体は、イオン化合物でありながらも水には全く溶解せず、ヘキサンにも溶解しない。しかしながら、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム等の汎用有機溶剤には容易に溶解するので、これらの溶解性の相違を利用し、様々な有機反応における反応媒体として単独又はその他の有機溶剤と併用して使用でき、その応用範囲が広い。
また、上記で得られる金属錯体型イオン液体、又は該イオン液体を前記有機溶剤に溶解させた混合溶液にキセノンランプ、水銀ランプ、ハロゲンランプまたは太陽光等を照射すると、金属カチオンが容易に還元され、金属ナノ粒子に変換することができる。ここでいう金属ナノ粒子とは、ナノメートルオーダーの大きさで存在しているゼロ価の金属微粒子のことを言うものであり、その形状が完全に球形である必要はなく、例えば、TEM等で三角状や四角状のものなどを観測することができるが、便宜上「粒子」と記載するものである。
金属ナノ粒子へ変換する際の光照射時間・光量は、目的に応じて適宜設定可能である。一般的な光還元反応と同様に、光量が多いほど照射時間を短く、光量が少ない場合は照射時間を長くすることで、一定量の金属ナノ粒子を得ることができ、通常水銀ランプを用いた場合には、1〜3時間の照射で還元反応が終了する。
光還元反応を行う場合の温度としても特に限定されるものではないが、10〜70℃の範囲で行なうことが好ましい。このとき、温度が高いほど、還元反応で得られる金属ナノ粒子の粒子径が大きくなる傾向があり、目的とする用途によって、調整することが可能である。
また、本発明で得られる金属錯体型イオン液体、又は該イオン液体を前記有機溶剤に溶解させた混合溶液に還元剤を加えることによっても、還元反応を行うことができ、金属ナノ粒子を得ることができる。
還元反応時に用いることができる還元剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、水素、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素アンモニウム等のホウ素化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類、アスコルビン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の酸類等を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
還元剤による還元反応時の温度としても特に限定されず、用いる還元剤の種類や使用量によって、10〜70℃程度の温度条件下で行なうことができる。還元反応にかかる時間も、還元剤の種類や使用量によって異なるが、通常1〜10時間の範囲で調整可能である。
上記製法で得られる金属錯体型イオン液体として好ましいものは、下記一般式(1)で表される構造を有する本願で提供する新規金属錯体型イオン液体である。
〔式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Mは銀原子又は銀原子であり、XはBr、Cl、I、PF、BF、Ag(CN)、CFSO又は(CFSONであり、Rは炭素数1〜4の炭化水素基であり、矢印は金属カチオンに対して配位していることを示す。〕
前記一般式(1)で表されるイオン液体は、前述の製造方法で容易に合成することができる上、還元反応によって得られる金属ナノ粒子は銀又は銅からなるものであることから、導電性印刷材料等として好適に用いることができ、その応用分野が広く、有用性が高い。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
[走査電子顕微鏡による金属ナノ粒子の形状分析]
単離乾燥した金属ナノ粒子を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
合成例1
[1−ブチルイミダゾールの合成]
1Lの三角フラスコにDMSO200mlを入れ、イミダゾール〔Mw:68.08〕6.809g(0.100mol)、KOH(和光純薬製)8.395g(0.150mol)を溶解し、25℃水浴中で23時間撹拌した。ここに1−ブロモブタン(東京化成製)13.678g(0.100mol)を加え、同条件下で8時間撹拌した。その後、超純水200ml加えて、クロロホルムで抽出した(20ml×6)。得られた有機層を超純水によりpHが7になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過した。減圧留去によりクロロホルムを除去し、真空乾燥を行い、黄色透明の液体を得た。この液体を減圧蒸留し(b.p.84℃)、無色透明の液体を得た。収量6.70g(収率54%)。なお、ここで得られた化合物の同定をH−NMR(ブルカー社製 Topspin 300 MHz)で行い、スペクトルを図1、その帰属を下記表1に示す。
*ブチル基中のCHを計算の標準値とした。
実施例1
[アセトニトリル1−ブチルイミダゾール銀(I)トリフルオロメタンスルホネート(液状化合物1)の合成]
100mlのナス型フラスコにトリフルオロメタンスルホニルイミド銀(AgCFSO)(Aldrich)1.996g(7.78mmol)を入れ、アセトニトリル10mlに溶解させ、前記合成例1で得た1−ブチルイミダゾール1.023ml(7.78mmol)を加えて、24時間25℃で撹拌した。反応媒体であるアセトニトリルを減圧下留去した。濃縮された液体を水で洗浄した後、凍結乾燥を経て、無色透明の液状化合物1を得た。収量3.01g(収率98%)。
上記反応で得られた液状化合物1は水中に全く不溶であった。これは反応に用いた原料すべてが水中に容易に溶解することと全く異なる。従って、反応後生成物の精製において、水で洗浄することで、容易に未反応の化合物を取り除くことができた。
単離精製後の液状化合物1を用いて、H−NMR、FT−IR(島津社製 IR Prestage−21)、元素分析(株式会社柳本製作所製 ヤナコCHNコーダー MT−5型)を行なった。これらの結果をそれぞれ図2〜3及び下記表2〜4に示した。液状化合物1の全体組成では、1−ブチルイミダゾール/銀/トリフルオロメタンスルホネートのモル比が1/1/1であることが明らかとなった。さらに、アセトニトリルはこれらの残基の1/3当量として含まれることが判った。
一般的に、金属錯体形成により、配位子部分のプロトンのケミカルシフトは変化することになる。ここで、化合物1中のイミダゾール残基とアセトニトリル残基由来のケミカルシフトに着目したところ、何れの場合も、原料そのものに比べて低磁場側にシフトしていることを確認した。即ち、1−ブチルイミダゾールとアセトニトリルが銀カチオンに配位することにより、これらの残基の電子が銀カチオンに引き寄せられ、1−ブチルイミダゾールとアセトニトリルの窒素原子の電荷密度が下がった結果、これらの残基由来のピークが低磁場側へシフトしたと考えられる。これはイミダゾール環の窒素原子とニトリル基がAgに配位していることが強く示唆するものである。
さらに、FT−IRでは、アセトニトリル中のニトリル基CN由来の伸縮振動のピークが2252cm−1に現れるが、液状化合物1ではそれが2276cm−1の高波数側へシフトしていることを確認した。一般的に、Agにアセトニトリルが配位したときには、CN伸縮振動のピークが高波数側へシフトすることが知られていることから、液状化合物1における高波数へのシフトはAgにアセトニトリルが配位していることを示唆する。
計算値はAgCFSO:1−ブチルイミダゾール:アセトニトリル=3:3:1で計算した。
実施例2
[アセトニトリル1−ブチルイミダゾール銀(I)ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(液状化合物2)の合成]
100mlのナス型フラスコにビストリフルオロメタンスルホニルイミド銀(AgTFSI)(Aldrich製)1.000g(2.575mmol)を入れ、アセトニトリル10mlに溶解させ、1−ブチルイミダゾール338.5μl(2.575mmol)を加えて、24時間25℃で撹拌した。反応媒体であるアセトニトリルを減圧下留去した。濃縮された液体を水で洗浄した後、凍結乾燥を経て、無色透明の液状化合物2を得た。収量1.32g(収率97%)。
単離精製後の液状化合物2を用いて、実施例1と同様にH−NMR、FT−IR、元素分析を行なった。これらの結果をそれぞれ図4〜5、及び下記表5〜7に示す。液状化合物2の全体組成では、1−ブチルイミダゾール/銀/ビストリフルオロメタンスルホニルイミドのモル比が1/1/1であることが明らかとなった。さらに、アセトニトリルはこれらの残基の1/3当量として含まれることが判明した。
計算値はAgTFSI:1−ブチルイミダゾール:アセトニトリル=3:3:1で求めた。
実施例3
[アセトニトリル1−ブチルイミダゾール銅 (I) トリフルオロメタンスルホネート(液状化合物3)の合成]
100mlのナス型フラスコにトリフルオロメタンスルホニルイミド銅(CuCFSO)(Mw:212.59)1.654g(7.78mmol)を入れ、アセトニトリル10mlに溶解させ、1−ブチルイミダゾール1.023ml(7.78mmol)を加えて、24時間25℃で撹拌した。反応媒体であるアセトニトリルを減圧下で留去した。濃縮された液体を水で洗浄した後、凍結乾燥を経て、無色透明の液状化合物3を得た。収量2.67g(収率95%)。元素分析値から、銅/1ブチルイミダゾール/トリフルオロメタンスルホネートが1/1/1であることがわかった。
実施例4
[化合物1の光還元による銀ナノ粒子の合成]
化合物1(Mw:394.8)0.0502g(0.127mmol)をサンプル瓶に入れ、超高圧水銀灯照射による光還元を行った(光量:6mW/cm、光照射時間:30、60、120分、温度:26C)。光還元後の溶液についてメンブランフィルター(孔径:100nm)にてろ過を行い、超純水、メタノールで数回洗浄した。析出物が載ったメンブランフィルターをそのまま真空乾燥後、SEM基盤上のカーボンメッシュに貼り付け、SEM観察を行った。
図6には、照射時間毎におけるSEM写真を示した。光照射時間を長くすることにつれ、銀ナノ粒子の生成量が増えることが示唆された。即ち、液状化合物1そのものに光照射することで、液状化合物1に含まれていた銀イオンを固体の銀ナノ粒子に還元することができる事を確認した。
実施例5
[液状化合物1の光還元による銀ナノ粒子の合成]
光量を22mW/cmにした以外、実施例4と同様な条件で120分照射し、化合物1の光還元を行なった。図7には120分照射後のSEM写真を示した。光量を上げることで、銀ナノ粒子の生成量が多く増え、粒子径も小さくなることを確認した。
実施例6
[液状化合物1の還元剤による銀ナノ粒子の合成]
L(+)−アスコルビン酸(Mw:176.13)0.0879g(0.5mmol)を超純水に溶解させ、10mMのアスコルビン酸水溶液とした。液状化合物1 0.0421g(0.107mmol)をサンプル瓶に入れ、10mMのアスコルビン酸水溶液1mlを加えた。液状化合物1とアスコルビン酸水溶液とは混合せず、液状化合物1が下層になった。この混合物を25℃で8時間攪拌した。混合液を遠心し、銀の固体を沈殿させ、それをアセトニトリルで2回洗浄後、SEM観察し図8に写真を示した。銀ナノ粒子がビッシリ詰まったイメージを観察した。
合成例1で得られた1−ブチルイミダゾールのH−NMRスペクトルである。 実施例1で得られた液状化合物1のH−NMRスペクトルである。 実施例1で得られた液状化合物1のFT−IRスペクトルである。 実施例2で得られた液状化合物2のH−NMRスペクトルである。 実施例2で得られた液状化合物2のFT−IRスペクトルである。 実施例4で得られた銀ナノ粒子のSEM写真である。光照射時間(A)30分(B)60分(C)120分、右図はいずれも左図の高倍率写真である。 実施例5で得られた銀ナノ粒子のSEM写真である。 実施例6で得られた銀ナノ粒子のSEM写真である。

Claims (2)

  1. 一価の金属カチオンを含有する化合物(A)とモノアルキルイミダゾール(B)とを、ニトリル基を有する化合物(C)からなる有機媒体中で混合して、下記一般式(1)で表される金属錯体型イオン液体の製造し、当該金属錯体型イオン液体中の金属カチオンを還元して金属ナノ粒子を得ることを特徴とする金属ナノ粒子の製造方法
    〔式(1)中、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、Mは銀原子又は銅原子であり、XはBr、Cl、I、PF、BF、Ag(CN)、CFSO又は(CFSO2Nであり、R2は炭素数1〜4の炭化水素基であり、矢印は金属カチオンに対して配位していることを示す。〕
  2. 前記還元反応が、光を照射する光還元によるものである請求項記載の金属ナノ粒子の製造方法。
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