JP5388641B2 - アゾ顔料磨砕物の製造方法、アゾ顔料分散体およびインクジェット記録用水性インク - Google Patents
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Description
その中でも、インクジェット記録用水性顔料インクに用いるイエロー顔料としてアゾ系顔料が好ましく使用されている。アゾ顔料の磨砕物を含むインクジェット記録液が知られており、耐水性、透明性、吐出安定性に優れるとされている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、分散性に優れたアゾ顔料磨砕物の製造方法、該アゾ顔料磨砕物を含み、分散安定性に優れるアゾ顔料分散体、および、吐出安定性と耐擦性に優れるインクジェット記録用水性インクを提供することを課題とする。
<1> 下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶剤とを含む混合物を混練する磨砕工程を備えるアゾ顔料磨砕物の製造方法。
<3> 前記一般式(1)中のG1、G2は、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である前記<1>または<2>に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法。
<4> 前記一般式(1)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれかに1項に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法。
<6> 前記水不溶性樹脂は、下記一般式(2)で表される構造単位を含む前記<5>に記載のアゾ顔料分散体。
本発明のアゾ顔料磨砕物の製造方法は、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種と、水溶性無機塩の少なくとも1種と、水溶性有機溶剤の少なくとも1種とを含む混合物を混練する磨砕工程を備える。
前記混合物を混練する方法としては、前記混合物を機械的に混練できる方法であれば特に制限なく、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、ニーダー等のバッチ式混練機、スーパーミキサー((株)カワタ製)やトリミックス((株)井上製作所製)等のバッチ式混練機、連続式1軸混練機KCKミル(浅田鉄工(株)製)等の連続式混練機を用いる方法を挙げることができる。本発明においては、微細化効率、粒度分布の観点から、連続式混練機を用いることが好ましい。
前記磨砕工程における処理温度としては、特に制限はなく、例えば5〜200℃とすることができるが、アゾ顔料粒子の変色、粒度分布の観点から、5〜50℃であることが好ましく、10〜35℃であることがより好ましい。
これら洗浄工程および乾燥工程は、いわゆるソルベントソルトミリング法で通常用いられる方法を本発明においても特に制限なく適用することができる。
前記アゾ顔料磨砕物の1次粒子および2次粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定される。
前記水溶性無機塩としては、通常用いられる水溶性無機塩を特に制限なく用いることができる。具体的には例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等を挙げることができる。また前記水溶性無機塩の粒子径としては特に制限はないが、アゾ顔料の2次凝集体の粒子径制御の観点から、水溶性無機塩の粒子径が体積基準のメディアン径で0.5〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましく、1〜10μmであることがさらに好ましい。
前記水溶性有機溶剤は、水に溶解し、前記水溶性無機塩を実質的に溶解しない有機溶剤であれば特に制限はない。水溶性有機溶剤は粗アゾ顔料と水溶性無機塩とを含む混合物を混練に適用可能な硬さに調整するために用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール、多価アルコール、および多価アルコールの誘導体を挙げることができる。より具体的には、プロピルアルコール、2−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの1価アルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルキレングリコール系溶剤;およびその誘導体であるエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのグリコールモノエーテル系溶剤;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン系溶剤;およびその誘導体であるグリセリンエーテルなどの水溶性有機溶剤などを挙げることができる。
なお、本発明に用いられる水溶性有機溶剤は上記のものに限定されるものではない。
本発明に用いられるアゾ顔料は、代表的には一般式(1)で表される。また、前記アゾ顔料は一般式(1)で表される構造であっても、その互変異性体であってもよい。
以下、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により分子間相互作用を形成しやすく、水または有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
Zが6員含窒素ヘテロ環の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
尚、Zで表される5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基は、さらに縮環していてもよい。
Y1およびY2として特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。尚、Y1およびY2は同一であっても異なっていてもよい。
またG1およびG2がアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。尚、G1およびG2は同一であっても異なっていてもよい。
W1およびW2で表されるアルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
W1およびW2が、総炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基、または総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内及び分子間で相互作用を強固に形成しやすくなり、より安定な分子配列の顔料を構成しやすくなることで、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。
例えば、一般式(1)で表されるアゾ顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
またG1、G2で表されるアルキル基としては、総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
X11、X12は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のZで表される含窒素ヘテロ環化合物に由来する2価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、且つ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
この構造が好ましい要因としては、一般式(1a)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子およびヘテロ原子(アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記一般式(1a)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子およびヘテロ原子(例えば、アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、且つ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、例えば一般式(1a)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及びまたは耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であっても良いが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、更に好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
また、上記一般式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法、および、それに準じた方法で製造することができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
本発明のアゾ顔料分散体は、前記アゾ顔料磨砕物の製造方法で製造されたアゾ顔料磨砕物の少なくとも1種と、水不溶性樹脂の少なくとも1種と、水性媒体とを含む。
本発明のアゾ顔料分散体は、前記アゾ顔料磨砕物の製造方法で製造されたアゾ顔料磨砕物と、水不溶性樹脂とを含むことで、優れた分散安定性を示すことができる。前記水不溶性樹脂は、例えば、高分子分散剤として作用する。
本発明における水不溶性樹脂は、有機溶剤に溶解し、アゾ顔料磨砕物の少なくとも一部を被覆して水性媒体に分散可能な樹脂であれば特に制限はない。例えば、エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体である、ノニオン性高分子化合物、アニオン性高分子化合物、カチオン性高分子化合物および両性高分子化合物等を挙げることができる。
本発明において前記水不溶性樹脂は、前記疎水性構造単位として下記一般式(2)で表される構造単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
Arは、置換又は無置換の芳香族基を表す。芳香族基が置換されている場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基などを挙げることができる。また前記芳香族基は、縮環を形成していてもよい。縮環を形成している場合、例えば、炭素数8以上の縮環型芳香族基、ヘテロ環が縮環した芳香族基、および2以上のベンゼンが連結した化合物に由来する芳香族基が挙げられる。
前記「ヘテロ環が縮環した芳香族基」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物に由来する芳香族基である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。ヘテロ環が縮環した芳香環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
ここで、それぞれのベンゼンは互いに複数の連結基で結合されていても良く、複数の連結基は同じであっても異なっていても良い。ベンゼンの数としては、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましい。2以上のベンゼンが連結した化合物の具体例としては、ビフェニル、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等が挙げられる。
中でも、Arとしては、無置換のベンゼン環、無置換のナフタレン環が好ましく、無置換のベンゼン環が特に好ましい。
他の疎水性構造単位としては、例えば、親水性構造単位に属しない(例えば親水性の官能基を有しない)例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類等に由来の構造単位、ならびに主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位を挙げることができる。これらの構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
また、L1は、*−COO−、*−OCO−、*−CONR2−、*−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、L1で表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。フェニレン基が置換されている場合の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等、シアノ基等が挙げられる。
中でも、特に好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CH2CH2O)n−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
Ar1で表される芳香環化合物から誘導される1価の基としては、特に限定されないが、フェニル基、炭素数8以上の縮環型芳香環化合物から誘導される基、ヘテロ環が縮環した芳香環化合物から誘導される基、又はベンゼンが2個以上連結した化合物から誘導される基が挙げられる。炭素数8以上の縮環型芳香環化合物、ヘテロ環が縮環した芳香環化合物、およびベンゼンが2個以上連結した化合物の詳細については既述の通りである。
本発明において親水性構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また非イオン性またはカチオン性の「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。
親水性構造単位の含有量が15質量%以下であると、単独で水性媒体中に溶解する成分量が抑えられ、顔料の分散などの諸性能が良好になり、インクジェット記録時には良好なインク吐出性が得られる。
なお、酸価とは、水不溶性樹脂の1g中のアニオン性基を完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。本発明における水不溶性樹脂は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤には、通常用いられる溶剤を特に制限なく用いることができる。溶剤は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。また、水との混合溶媒として用いてもよい。重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cm2であり、特に1〜30kg/cm2程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
「転相乳化法」による具体的な方法は、特開平10−140065号公報に記載されている方法を参照できる。
なお、より具体的には、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
有機溶剤を除去して水系へと転相することで、アゾ顔料の粒子表面が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆アゾ顔料粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶剤は実質的に除去されていることが好ましい。ここでの有機溶剤の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。
尚、アゾ顔料分散体における分散粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定される。
本発明のインクジェット記録用水性インク(以下、単に「水性インク」ということがある)は、前記アゾ顔料分散体の少なくとも1種を含み、必要に応じて水溶性有機溶剤、界面活性剤、ならびに、防腐剤および防黴剤等のその他の成分を含んで構成することができる。
かかる構成であることにより、分散安定性、ろ過性、および吐出安定性に優れるインクジェット記録用水性インクとすることができる。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクは、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。ここで乾燥防止効果、湿潤効果は、ノズルのインク噴出口において水性インクが付着乾燥することによる目詰まりを防止する効果等を意味する。乾燥防止剤や湿潤剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。
また、浸透促進効果は、水性インクを紙へより良く浸透させる効果を意味する。
水溶性有機溶剤の例としては、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオール(多価アルコール類);エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
有機溶媒の水性インク中における含有量としては、1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクは、界面活性剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いられ、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、ベタイン系の界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、インクジェット法で良好に打滴するために、水性インクの表面張力を20〜60mN/mに調整できる量を含有するのが好ましい。中でも、界面活性剤の含有量は、表面張力を20〜45mN/mに調整できる量が好ましく、より好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
また両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどがある。
また界面活性剤のインクジェット記録用水性インク水性インク中における含有量は、特に制限はなく、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
中でも、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤を、水性インク中に0.1〜2.0質量%含むことが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクは、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、樹脂粒子又はポリマーラテックス、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の他の成分を含有してもよい。
アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子の添加量は、インクに対して、0.5〜20質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
また、ポリマー粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー微粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
さらに、防錆剤の添加量(C)を0.01質量%以上とすることで、インクジェット記録用装置を長期にわたって使用した場合に、ヘッドの金属部分、特にノズル先端付近の錆びの発生をより効果的に抑制できる。また0.2質量%以下とすることで、インク中における着色剤の安定性がより良好になり、長期保存性がより向上する。
また、金属イオン捕獲剤の添加量(B)を0.01質量%以上とすることで、微量の金属イオンが含まれる場合のあるウレタンフォームをインク室内部に持つインクカートリッジに、本発明の水性インクを充填して使用した際に、異物の発生等を効果的に抑制することができる。また、0.5質量%以下とすることで、インク中における着色剤の安定性がより良好になり、長期保存性がより向上する。
本発明におけるインクジェット記録用水性インクの表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性インクを25℃の条件下で測定されるものである。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、水性インクを20℃の条件下で測定されるものである。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、所望の記録媒体上に、記録しようとする画像情報にしたがってインクジェット法で吐出することにより画像を記録する記録形態(第1記録形態)に用いることができる。
この第1記録形態のほか、本発明の水性インクは、水性インクと混合したときに水性インク中の顔料等の粒子を凝集させる成分を含む水性液体組成物(凝集液)と共に用い、水性インクと水性液体組成物とを接触させて画像を記録する記録形態(第2記録形態)にも用いることができる。
以下、第2記録形態に用いる水性液体組成物について説明する。
水性液体組成物は、既述の水性インクと混合したときに、水性インク中の顔料を凝集させる凝集成分を少なくとも含んでなり、必要に応じて他の成分を用いて構成することができる。
水性液体組成物は、水性インク中の顔料等の粒子を凝集させる凝集成分の少なくとも1種を含有する。インクジェット法で吐出された前記水性インクと水性液体組成物とが混合することにより、水性インク中で安定的に分散している顔料等の凝集が促進される。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、前記水性インクのpH(25℃)が7.5以上であって、水性液体組成物のpH(25℃)が4以下である場合が好ましい。
前記多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)、の塩を挙げることができる。これら金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
顔料等を凝集させる凝集成分の水性液体組成物中における含有量としては、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%であり、更に好ましくは10〜20質量%の範囲である。
本発明のインクジェット記録用水性インクは、上記の第1記録形態及び第2記録形態のいずれにも用いることができる。
第1記録形態では、所望の被記録媒体上に、既述の本発明の水性インクをインクジェット法により付与するインク付与工程を設けて記録する。
第2記録形態では、所望の被記録媒体上に、既述の本発明の水性インクをインクジェット法により付与するインク付与工程と、被記録媒体上に、水性インク中の顔料等の粒子を凝集させる成分を含む水性液体組成物を付与する凝集成分付与工程とを設け、水性インクと水性液体組成物とを接触させて画像を形成する。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
尚、前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
さらに前記凝集成分付与工程は、被記録媒体上に付与された前記水性液体組成物の溶媒の少なくとも一部を除去する工程を含むことが好ましい。
〜例示化合物(Pig.−1)の合成〜
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H), 4.15(s,3H), 3.81(s,3H)
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H), 4.95(brs,2H), 3.80(s,3H), 3.60(s,3H)
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d6-DMSO)7.82(s,1H), 7.55(s,2H), 5.96(s,1H), 4.12(s,4H)
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間攪拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、更に1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H-NMR(300MHz、d6-DMSO)8.73(s,1H), 7.97(s,1H), 6.88(s,4H), 5.35(s,2H), 1.22(s,18H)
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で攪拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分攪拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で攪拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間攪拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて攪拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間攪拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
尚、上記合成スキームと同様にして、例示化合物(Pig.−18)、例示化合物(Pig.−21)、および例示化合物(Pig.−33)を合成した。
〜樹脂分散剤P-1の合成〜
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート70g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート20gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=70/20/10)共重合体(樹脂分散剤P-1、水不溶性樹脂)96.5gを得た。
得られた樹脂分散剤P-1の組成は、1H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は43500であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
尚、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した。使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製)であった。
前記樹脂分散剤P−1の合成において、フェノキシエチルメタクリレート70g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート20gを、下記に示すようなモノマー組成の共重合体となるようにそれぞれ対応するモノマーの種類及び比率とし、対応する重量平均分子量(Mw)となるように条件を変更したこと以外は、樹脂分散剤P−1の合成とほぼ同様にして、樹脂分散剤P-2、P-3を合成した。
P−2:フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=50/39/11)、Mw48200、酸価71.7
P−3:フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=45/45/10)、Mw38900、酸価65.2
−例示化合物Pig.−1の磨砕処理−
以下の組成となるように、スーパーミキサーに粗アゾ顔料及び食塩を投入して混合した。スーパーミキサーを回転させながらジエチレングリコールを少しずつ添加して混合物(以下、「予備混合物」ということがある)を調製した。
〜微細化黄色顔料(Pig-Y1)の組成〜
・例示化合物(Pig.−1) ・・・ 100.0部
・食塩 ・・・1500.0部
(ナクルUM-5、ナイカイ塩業(株)製、粒子サイズ5μm)
・ジエチレングリコール ・・・300.0部
こうして得られた混練物1,000部を80℃に加温した純水5,000部へ投入してクリアミックスを用いて攪拌処理を行った後、濾過および十分に水洗をして食塩およびジエチレングリコールを除去し、固形分量が25%になるように調整した微細化黄色顔料のウエットケーキ(Pig−Y1、アゾ顔料磨砕物)を得た。
上記で得られたアゾ顔料磨砕物と、高分子分散剤として上記で得られた水不溶性樹脂P−1とを用い、以下の組成となるように各成分を混合し、ビーズミルで0.1mmφジルコニアビーズを用いて6時間分散した。続いて、得られた分散体を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.0質量%となるようにして、樹脂被覆イエロー顔料分散体としてアゾ顔料分散体Y1を調製した。
〜アゾ顔料分散体Y1の組成〜
・アゾ顔料磨砕物(Pig−Y1) ・・・ 40.0部
・水不溶性樹脂P−1(固形分) ・・・ 4.5部
・メチルエチルケトン ・・・ 15.5部
・1mol/L NaOH水溶液 ・・・ 33.3部
・イオン交換水 ・・・ 63.7部
次に、上記で得られたアゾ顔料分散体Y1を用い、以下の組成となるように各成分を混合して、インクジェット記録用水性インクを調製した。
<水性インクYI-1の組成>
・アゾ顔料分散体Y1 ・・・ 40.0部
・グリセリン ・・・ 15.0部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル ・・・ 10.0部
・プロキセルXL−2 ・・・ 0.05部
(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)
・ベンゾトリアゾール ・・・ 0.05部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・ 1.0部
・イオン交換水 ・・・ 33.9部
上記で得られたアゾ顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクについて、下記の測定および評価を行った。測定及び評価の結果を下記表1に示す。
得られたアゾ顔料分散体について、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により体積平均粒径(Mv)を測定した。測定は、アゾ顔料分散体(Pig−Y1) 30μlに対してイオン交換水10mlを加えて測定用サンプル液を調製し、これを25℃に調温して行い、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
AA ・・・ Mvが80nm未満であった。
A ・・・ Mvが80nm以上、100nm未満であった。
B ・・・ Mvが100nm以上、120nm未満であった。
C ・・・ Mvが120nm以上であった。
得られたアゾ顔料分散体15mlについて、25mmφ孔径3μmメンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)社製)を用い、0.03MPaの減圧下でろ過し、下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
AA ・・・ ろ過に要した時間が10秒未満であった。
A ・・・ ろ過に要した時間が10秒以上30秒未満であった。
B ・・・ ろ過に要した時間が30秒以上1分未満であった
C ・・・ ろ過に要した時間が1分以上であった。
上記で得られたインクジェット記録用水性インクY1を、PET製容器に密栓し60℃恒温槽中で7日間保存した。
記録媒体として富士フイルム社製「画彩写真仕上げPro」を用い、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意した。60℃恒温槽中で7日間保存して得た水性インクを装填し、ヘッドから30分間吐出した後、メンテナンス作業として、15KPaの圧力で10秒間加圧した後にクリーンワイパーFF−390c((株)クラレ製)でワイプを行ない、その後さらに5分間吐出を継続し、5分経過後に富士フイルム社製「画彩写真仕上げPro」上にベタ印画画像(5cm×5cm)及び細線印画した画像(5cm×5cm)を形成した。目視により画像を観察して、下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A ・・・ 白抜けの発生等による画像故障はみられなかった。
B ・・・ 白抜けの発生等の画像故障が多く、実用上問題があるレベル。
上記吐出安定性評価と同様に、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意した。これに、上記で得られたインクジェット記録用水性インクを60℃恒温槽中で7日間保存して得た水性インクを装填し、FX−L紙(富士ゼロックス(株)製)にベタ画像を印画した。ベタ画像の印画面を外側に向けて文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ、別の白紙のFX−L紙上で3往復擦った(荷重260kg/m2に相当)。擦った後の印画面を目視により観察し、予め定めておいた限度見本に照合して、下記評価基準に従って、目視による官能評価を行った。
〜評価基準〜
AA ・・・ 傷がつかなかった。
A ・・・ わずかに(2箇所以下)傷がついた。
B ・・・ 3〜10箇所の傷がついたが、実用上の許容レベルだった。
C ・・・ 11箇所以上の傷がつき、実用上問題があるレベルだった。
実施例1において、アゾ顔料として例示化合物(Pig.−1)の代わりに下記表1に示したアゾ顔料をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、アゾ顔料分散体およびインクジェット記録用水性インクを調製し、同様に評価した。
実施例1において、高分子分散剤として、水不溶性樹脂P−1の代わりに下記表1に示した水不溶性樹脂をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、アゾ顔料分散体およびインクジェット記録用水性インクを調製し、同様に評価した。
−アゾ顔料分散体Y7の調製−
以下の組成となるように各成分を混合し、ビーズミルで0.1mmφジルコニアビーズを用いて6時間分散した。アゾ顔料濃度が10.0質量%となるように濃度を調整してアゾ顔料分散体を調製した。
〜アゾ顔料分散体Y7の組成〜
・アゾ顔料磨砕物(Pig−Y1) ・・・ 40.0部
・Disperbyk187 ・・・ 5.0部
(ビックケミー・ジャパン(株)製、水溶性高分子分散剤(多官能ポリマー)、不揮発分70%)
・イオン交換水 ・・・ 55.0部
実施例1において、アゾ顔料分散体Y1の代わりに上記で得られたアゾ顔料分散体Y7を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用水性インクを調製し、同様にして評価した。
実施例1のアゾ顔料分散体の調製において、アゾ顔料磨砕物の代わりに、合成例1で得られたアゾ顔料(例示化合物Pig.−1)をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして、アゾ顔料分散体を調製した。また、これを用いてインクジェット記録用水性インクを調製し、同様にして評価を行なった。
比較例1において、アゾ顔料として例示化合物(Pig.−1)の代わりに下記表1に示したアゾ顔料をそれぞれ用いた以外は比較例1と同様にして、アゾ顔料分散体、インクジェット記録用水性インクを調製し、同様にして評価を行なった。
実施例7のアゾ顔料分散体の調製において、アゾ顔料磨砕物の代わりに合成例1で得られたアゾ顔料(例示化合物Pig.−1)をそのまま用いた以外は、実施例7と同様にして、アゾ顔料分散体を調製した。また、これを用いてインクジェット記録用水性インクを調製し、同様にして評価を行なった。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種と、水溶性無機塩と、水溶性有機溶剤とを含む混合物を混練する磨砕工程を備えるアゾ顔料磨砕物の製造方法。
(一般式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y 2 は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアルキルチオ基を表し、R 11 、R 12 は、それぞれ独立に水素原子、総炭素数1〜8のアシルアミノ基、総炭素数1〜12のアルキル基、総炭素数6〜18のアリール基、または総炭素数4〜12のヘテロ環基を表し、G1、G2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、W1、W2はそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す) - 前記一般式(1)中のW1、W2は、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基、または総炭素数3以下のアルキルアミノ基である請求項1に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法。
- 前記一般式(1)中のG1、G2は、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である請求項1または請求項2に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法。
- 前記一般式(1)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに1項に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアゾ顔料磨砕物の製造方法で製造されたアゾ顔料磨砕物と、水不溶性樹脂と、水性媒体とを含むアゾ顔料分散体。
- 前記水不溶性樹脂は、下記一般式(2)で表される構造単位を含む請求項5に記載のアゾ顔料分散体。
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、Arは置換または無置換の芳香族基を表す。nは1〜6の整数を表わす) - 請求項5または請求項6に記載のアゾ顔料分散体を含むインクジェット記録用水性インク。
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