以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の定着装置の一実施形態を適用した画像形成装置を示す断面図である。この画像形成装置は、原稿の画像を読取る原稿読取り装置Bと、原稿読取り装置Bにより読取られた原稿の画像又は外部から受信した画像をカラーもしくは単色で記録用紙に記録形成する装置本体Aとを備えている。
原稿読取り装置Bでは、原稿が原稿セットトレイ41にセットされると、ピックアップローラ44が原稿表面に押し付けられて回転され、原稿がトレイ41から引き出され、原稿がサバキローラ45と分離パッド46間を通過して1枚ずつに分離されてから搬送経路47へと搬送される。
この搬送経路47では、原稿の先端がレジストローラ49に当接して、原稿の先端がレジストローラ49と平行に揃えられ、この後に原稿がレジストローラ49により搬送されて読取りガイド51と読取りガラス52間を通過する。このとき、第1走査部53の光源の光が読取りガラス52を介して原稿表面に照射され、その反射光が読取りガラス52を介して第1走査部53に入射し、この反射光が第1及び第2走査部53、54のミラーで反射されて結像レンズ55へと導かれ、結像レンズ55によって原稿の画像がCCD(Charge Coupled Device)56上に結像される。CCD56は、原稿の画像を読取り、原稿の画像を示す画像データを出力する。更に、原稿は、搬送ローラ57により搬送され、排紙ローラ58を介して排紙トレイ59に排出される。
また、原稿台ガラス61上に載置された原稿を読取ることができる。レジストローラ49、読取りガイド51、排紙トレイ59等とそれらよりも上側の部材とは、一体化されて、原稿読取り装置Bの背面側で開閉可能に枢支されたカバー体となっており、この上側のカバー体が開かれると、原稿台ガラス61が解放されて、原稿台ガラス61上に原稿を載置することができる。原稿が載置されて、カバー体が閉じられると、第1及び第2走査部53、54が副走査方向に移動されつつ、第1走査部53によって原稿台ガラス61上の原稿表面が露光され、第1及び第2走査部53、54によって原稿表面からの反射光が結像レンズ55へと導かれ、結像レンズ55によって原稿の画像がCCD56上に結像される。このとき、第1及び第2走査部53、54が相互に所定の速度関係を維持しつつ移動されて、原稿表面→第1及び第2走査部53、54→結像レンズ55→CCD56という反射光の光路の長さが変化しないように第1及び第2走査部53、54の位置関係が常に維持され、これによりCCD56上での原稿の画像のピントが常に正確に維持される。
こうして読取られた原稿の画像全体は、画像データとして画像形成装置の装置本体Aへと送受され、装置本体Aにおいて画像が記録用紙に記録される。
一方、画像形成装置の装置本体Aは、レーザ露光装置1、現像装置2、感光体ドラム3、帯電器5、クリーナ装置4、中間転写ベルト装置8、定着装置12、用紙搬送装置18、給紙トレイ10、及び排紙トレイ15等により構成されている。
画像形成装置において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、又は単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものである。従って、現像装置2(2a、2b、2c、2d)、感光体ドラム3(3a、3b、3c、3d)、帯電器5(5a、5b、5c、5d)、クリーナ装置4(4a、4b、4c、4d)は各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれaがブラックに、bがシアンに、cがマゼンタに、dがイエローに対応付けられて、4つの画像ステーションが構成されている。
感光体ドラム3は、装置本体Aのほぼ中央に配置されている。
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、接触型であるローラ型やブラシ型の帯電器のほか、チャージャー型の帯電器が用いられる。
レーザ露光装置1は、レーザダイオード及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)であり、帯電された感光体ドラム3表面を画像データに応じて露光して、その表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。
現像装置2は、感光体ドラム3上に形成された静電潜像を(K、C、M、Y)のトナーにより現像する。クリーナ装置4は、現像及び画像転写後に感光体ドラム3表面に残留したトナーを除去及び回収する。
感光体ドラム3の上方に配置されている中間転写ベルト装置8は、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ21、従動ローラ22、中間転写ローラ6(6a、6b、6c、6d)、及び中間転写ベルトクリーニング装置9を備えている。
中間転写ベルト駆動ローラ21、中間転写ローラ6、従動ローラ22等は、中間転写ベルト7を張架して支持し、中間転写ベルト7を矢印C方向に周回移動させる。
中間転写ローラ6は、中間転写ベルト7近傍に回転可能に支持され、中間転写ベルト7を介して感光体ドラム3に圧接され、感光体ドラム3のトナー像を中間転写ベルト7に転写するための転写バイアスを印加されている。
中間転写ベルト7は、各感光体ドラム3a、3b、3c、3dに接触するように設けられており、各感光体ドラム3a、3b、3c、3d表面のトナー像を中間転写ベルト7に順次重ねて転写することによって、カラーのトナー像(各色のトナー像)を形成する。この転写ベルトは、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端ベルト状に形成されている。
感光体ドラム3から中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7裏面に圧接されている中間転写ローラ6によって行われる。中間転写ローラ6には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ6は、直径8〜10mmの金属(例えばステンレス)軸をベースとし、その表面は、導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等)により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、記録用紙に対して均一に高電圧を印加することができる。
上述の様に各感光体ドラム3a、3b、3c、3d表面のトナー像は、中間転写ベルト7で積層され、画像データによって示されるカラーのトナー像となる。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト7と共に搬送され、中間転写ベルト7と接触する2次転写装置11によって記録用紙上に転写される。
中間転写ベルト7と2次転写装置11の転写ローラ11aとは、相互に圧接されてニップ域を形成する。また、2次転写装置11の転写ローラ11aには、中間転写ベルト7上の各色のトナー像を記録用紙に転写させるための電圧(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。さらに、そのニップ域を定常的に得るために、2次転写装置11の転写ローラ11aもしくは中間転写ベルト駆動ローラ21の何れか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ、または発泡性樹脂ローラ等々)としている。
また、2次転写装置11によって中間転写ベルト7上のトナー像が記録用紙上に完全に転写されず、中間転写ベルト7上にトナーが残留することがあり、この残留トナーが次工程でトナーの混色を発生させる原因となる。このため、中間転写ベルトクリーニング装置9によって残留トナーを除去及び回収する。中間転写ベルトクリーニング装置9には、例えばクリーニング部材として中間転写ベルト7に接触するクリーニングブレードが備えられており、クリーニングブレードが接触する部位で、従動ローラ22により中間転写ベルト7裏側が支持されている。
給紙トレイ10は、記録用紙を格納しておくためのトレイであり、装置本体Aの画像形成部の下側に設けられている。また、画像形成部の上側に設けられている排紙トレイ15は、印刷済みの記録用紙をフェイスダウンで載置するためのトレイである。
また、装置本体Aには、給紙トレイ10の記録用紙を2次転写装置11や定着装置12を経由させて排紙トレイ15に送るための用紙搬送装置18が設けられている。この用紙搬送装置18は、Sの字形状の用紙搬送経路Sを有し、用紙搬送経路Sに沿って、ピックアップローラ16、レジストローラ14、定着装置12、各搬送ローラ13、及び排紙ローラ17等を配置したものである。
ピックアップローラ16は、給紙トレイ10の端部に設けられ、給紙トレイ10から記録用紙を1枚ずつ用紙搬送経路Sに供給する呼び込みローラである。各搬送ローラ13は、記録用紙の搬送を促進補助するための小型のローラであり、用紙搬送経路Sに沿って複数箇所に設けられている。
レジストローラ14は、搬送されて来た記録用紙を一旦停止させて、記録用紙の先端を揃え、中間転写ベルト7と2次転写装置11間のニップ域で中間転写ベルト7上のカラーのトナー像が記録用紙に転写されるように、感光体ドラム3及び中間転写ベルト7の回転にあわせて、記録用紙をタイミングよく搬送する。
定着装置12は、トナー像が転写された記録用紙を受け取り、この記録用紙を加熱ローラ31及び加圧ローラ32間のニップ域に挟み込んで搬送し、記録用紙を加熱及び加圧して、記録用紙上のトナー像を定着する。
各色のトナー像の定着後の記録用紙は、排紙ローラ17によって排紙トレイ15上に排出される。
尚、画像形成ステーションPaだけを用いて、モノクロ画像を形成し、モノクロ画像を中間転写ベルト装置8の中間転写ベルト7に転写することも可能である。このモノクロ画像も、カラー画像と同様に、中間転写ベルト7から記録用紙に転写され、記録用紙上に定着される。
また、記録用紙の表面だけではなく、両面の印字を行う場合は、記録用紙の表面の画像を定着装置12により定着した後に、記録用紙を用紙搬送経路Sの排紙ローラ17により搬送する途中で、排紙ローラ17を停止させてから逆回転させ、記録用紙を反転経路Srに通して、記録用紙の表裏を反転させ、記録用紙をレジストローラ14へと導き、記録用紙の表面と同様に、記録用紙の裏面に画像を記録して定着し、記録用紙を排紙トレイ15に排出する。
次に、本実施形態の定着装置12を詳しく説明する。この定着装置12では、図2に示す様に加熱ローラ31及び加圧ローラ32を相互に圧接させた状態でそれぞれ軸支して、加熱ローラ31と加圧ローラ32間に記録用紙を挟み込むニップ域Nを形成しており、加熱ローラ31を矢印方向に回転駆動し、加圧ローラ32を従動回転させつつ、記録用紙をニップ域Nに通して加熱及び加圧し、記録用紙上のトナー像を溶融、混合、圧接して熱定着させる。
加熱ローラ31は、芯金の外表面に弾性層を設け、この弾性層の外表面に離型層を形成してなる3層構造のローラである。芯金には、例えば鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属或いはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴムが用いられ、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。
加熱ローラ31内部(芯金の内部)には、該ローラ31を加熱する熱源のヒータランプ(ハロゲンランプ)33が設けられている。
加圧ローラ32も、加熱ローラ31と同様に、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属或いはそれらの合金等よりなる芯金、この芯金表面のシリコンゴム等の弾性層、更にその上のPFAやPTFE等の離型層からなる3層構造のローラである。
ここで、加熱ローラ31と加圧ローラ32間のニップ域の幅を確保するべく、各ローラ31、32間の圧接圧力が大きく設定されているため、定着装置12が非使用状態にあり、各ローラ31、32の停止状態が長時間継続すると、各ローラ31、32の弾性層が変形したままとなって元の形状に戻らず、各ローラ31、32の弾性層に凹みが形成されることがある。
このため、加熱ローラ31と加圧ローラ32の停止時には、各ローラ31、32を離間させて、各ローラ31、32の弾性層が変形したままで放置されないようにしている。
図3及び図4は、定着装置12における各ローラ31、32を接離するための構成を示す断面図である。図3と図4ではそれぞれの断面位置が異なり、図4の構成が図3の構成の外側に位置する。
まず、図3において、加熱ローラ31の軸31aは、定着装置12の本体フレーム(図示せず)で軸支されて、この軸支位置が固定されている。また、加圧ローラ32の軸32aは、変位フレーム71で軸支されている。変位フレーム71は、定着装置12の本体フレーム側で支持された軸71aを有し、この軸71a周りで回転移動可能である。変位フレーム71の左上端のピン72と本体フレームのピン73には圧接用コイルバネ74両端のフック74aがそれぞれ引っ掛けられ、圧接用コイルバネ74により変位フレーム71のピン72が本体フレーム側に引き付けられ、変位フレーム71が軸71aを中心に時計回りに付勢されて、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接されている。
変位フレーム71の左側端にはコロ75が設けられている。また、定着装置12の本体フレーム側で軸76aが軸支されており、この軸76aが本体フレーム外側の変位フレーム71の開口部(図示せず)を通って突出し、この突出した軸76aの部分に圧力解除カム(偏芯カム)76が固定されている。先に述べたように圧接用コイルバネ74により変位フレーム71が本体フレーム側に引き付けられて、コロ75が圧力解除カム76に圧接される。
圧力解除カム76の軸76aには、ワンウェイクラッチ77が設けられ、このワンウェイクラッチ77が圧力解除カム76の外側に並設され、このワンウェイクラッチ77に揺動レバー78が接続固定されている。ワンウェイクラッチ77は、揺動レバー78と圧力解除カム76の軸76a間に介在しており、揺動レバー78の時計回りの回転のみがワンウェイクラッチ77を介して圧力解除カム76の軸76aに伝達され、揺動レバー78が反時計回りに回転したときには、ワンウェイクラッチ77が空転して、この反時計周りの回転が圧力解除カム76の軸76aに伝達されない。
揺動レバー78は、バネ(図示せず)により圧力解除カム76の軸76aを中心にして反時計回りに付勢されている。
定着装置12の本体フレーム側には、揺動用カム(偏芯カム)81並びに揺動用ギヤ82に共通の軸83が軸支されている。揺動用ギヤ82は、加熱ローラ31の軸31aに固定された駆動ギヤ84に歯合しており、加熱ローラ31が回転駆動されると、駆動ギヤ84が回転して、揺動用ギヤ82及び揺動用カム81が回転する。
図4において、くの字型の制御レバー91は、定着装置12の本体フレーム側の軸91aで回転自在に軸支されており、制御レバー91の一端裏側にピン91bが内側に向いて突設され、このピン91bが揺動レバー78右側の枠部78a内に差し込まれている。枠部78aは、リブで縁取られており、このリブに制御レバー91一端裏側のピン91bが引っ掛かるようになっている。
制御レバー91中央には一対の挟持部91cが突設されており、プランジャー92先端を上方から見ると、これらの挟持部91c間にプランジャー92のくびれ部92aが挟み込まれるようになっている。このプランジャー92は、ソレノイド93中央の孔に挿入されており、ソレノイド93の消勢状態では、バネ(図示せず)によりプランジャー92が上方に付勢されてソレノイド93から突出し、またソレノイド93の付勢状態では、プランジャー92がソレノイド93内側に引き込まれる。
図4では、ソレノイド93が消勢され、プランジャー92がソレノイド93から突出し、プランジャー92のくびれ部92aを挟み込む制御レバー91の挟持部91cが押し上げられて、制御レバー91が軸91aを中心にして時計回りに回転し、制御レバー91の一端裏側のピン91bが下方に移動している。このとき、ピン91bは、揺動レバー78右側の枠部78aのリブに引っ掛かって、揺動レバー78右側を押し下げ、揺動レバー78のバネ(図示せず)による反時計回りの付勢力に抗して揺動レバー78を時計回りに回転させる。これにより、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面から離間される。
このように揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面から離間した状態では、定着装置12の加熱ローラ31が回転駆動されて、駆動ギヤ84が回転し、揺動用ギヤ82及び揺動用カム81が回転しても、揺動レバー78の停止した状態が維持される。
また、図5に示すようにソレノイド93が付勢され、プランジャー92がソレノイド93内側に引き込まれると、プランジャー92のくびれ部92aを挟み込む制御レバー91の挟持部91cが引き下げられて、制御レバー91が軸91aを中心にして反時計回りに回転し、制御レバー91の一端裏側のピン91bが上昇する。これにより、揺動レバー78右側の枠部78aのリブ内周がピン91bに突き当たるまでの範囲で、揺動レバー78が時計回り及び反時計周りに回転可能になる。
このとき、バネ(図示せず)の付勢力により揺動レバー78が圧力解除カム76の軸76aを中心にして反時計回りに回転し、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面に当接する。
この状態で、加熱ローラ31が回転駆動されて、駆動ギヤ84が回転し、揺動用ギヤ82及び揺動用カム81が回転すると、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面に追従して上下移動し、揺動レバー78が揺動する。
更に、図6に示すように圧力解除カム76の軸76aには、角度検出用カム94が設けられ、この角度検出用カム94がワンウェイクラッチ77及び揺動レバー78の外側に並設されている。この角度検出用カム94は、圧力解除カム76並びにその軸76aと共に回転し、その回転を圧力制御センサ95により検出される。
圧力制御センサ95は、角度検出用カム94の回転により変位する検出部材96を有し、この検出部材96の変位を検出する。
角度検出用カム94は、円板の一部に切欠部94aを形成したものである。また、圧力制御センサ95の検出部材96は、軸96aにより回転自在に軸支されたものであって、軸96aを中心とする扇形の摺接部96bと、軸96aを中心とする円弧壁部96cとを有している。図6に示すように圧力解除カム76の短径側の周面がコロ75と対向したときに、角度検出用カム94の切欠部94aが下方に向き、角度検出用カム94の周面が検出部材96の摺接部96bを押し上げ、検出部材96の円弧壁部96cが圧力制御センサ95の発光素子95aと受光素子95b間まで移動して、発光素子95aと受光素子95b間が遮断される。また、図7に示すように圧力解除カム76の長径側の周面がコロ75に圧接されたときに、角度検出用カム94が180°回転して、角度検出用カム94の切欠部94aが上方に向き、検出部材96の摺接部96bが切欠部94aに移動して、検出部材96が軸96a周りで回転し、検出部材96の円弧壁部96cが発光素子95aと受光素子95b間から外れて、発光素子95aと受光素子95b間が開放される。従って、受光素子95bの受光出力に基づいて、角度検出用カム94及び圧力解除カム76の回転を検出することができる。
図8に示すように加圧ローラ32の両側に本体フレーム79a、79bが配置され、これらの本体フレーム79a、79bにより加熱ローラ31の軸31a(図3に示す)の両端が軸支されている。また、一方の本体フレーム79a外側に変位フレーム71が配置され、他方の本体フレーム79b外側にも変位フレーム71が配置され、加圧ローラ32の軸32aの両端が各本体フレーム79a、79b外側に突出してそれぞれの変位フレーム71で軸支され、それぞれの圧接用コイルバネ74(図3に示す)により各変位フレーム71が付勢されて、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接される。
また、本体フレーム79b及びその変位フレーム71側にも、圧力解除カム76、及び圧力解除カム76に圧接するコロ75が設けられている。両側の圧力解除カム76の軸76aは、1本の共通のものであり、本体フレーム79a側で軸76aが回転されたならば、両側の圧力解除カム76が回転する。
更に、本体フレーム79b内側には、逆転阻止用のワンウェイクラッチ97が固定され、逆転阻止用のワンウェイクラッチ97に圧力解除カム76の軸76aが通されている。この逆転阻止用のワンウェイクラッチ97は、本体フレーム79a側のワンウェイクラッチ77が時計回りの回転を軸76aに伝達するときに空転して、軸76aの時計回りの回転を可能にし、本体フレーム79a側のワンウェイクラッチ77の反時計周りの空転に引き摺られて軸76aが回転しようとするときに、軸76aの反時計回りの回転を禁止する。従って、本体フレーム79a側のワンウェイクラッチ77と本体フレーム79b内側の逆転阻止用のワンウェイクラッチ97とでは、回転を伝達する方向及び空転する方向が逆になっている。
さて、このような定着装置12において、定着動作が行われるときには、図4に示すようにソレノイド93が消勢され、プランジャー92がソレノイド93から突出し、プランジャー92が制御レバー91の挟持部91cを押し上げて、制御レバー91の一端裏側のピン91bが下方に移動し、このピン91bにより揺動レバー78が時計回りに回転され、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面から離間される。
また、図3に示すように圧力解除カム76の短径側の周面が変位フレーム71のコロ75に対向し、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接している。
この状態で、定着装置12の加熱ローラ31が回転駆動されて、加圧ローラ32が従動回転し、記録用紙が各ローラ31、32間のニップ域Nに通されて加熱及び加圧される。
このとき、加熱ローラ31と共に駆動ギヤ84が回転し、揺動用ギヤ82及び揺動用カム81が回転するものの、揺動レバー78が揺動用カム81の周面から離間しているので、揺動レバー78の停止した状態が維持される。このため、後で述べるような各ローラ31、32の接離動作が行われることはない。
従って、ソレノイド93が消勢され、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面から離間された状態で、加熱ローラ31が回転駆動されると、各ローラ31、32による記録用紙の定着を行うことができる。
次に、定着動作が行われないときには、図5に示すようにソレノイド93が付勢され、プランジャー92がソレノイド93内側に引き込まれ、制御レバー91が軸91aを中心にして反時計回りに回転し、制御レバー91の一端裏側のピン91bが上昇して、揺動レバー78が時計回り及び反時計周りに回転可能になり、バネ(図示せず)の付勢力により揺動レバー78が反時計回りに回転して、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面に当接される。
この状態で、定着装置12の加熱ローラ31が回転駆動されると、駆動ギヤ84が回転して、揺動用ギヤ82及び揺動用カム81が回転し、揺動用カム81の周面に当接した揺動レバー78右側の摺接縁78bが上下に往復移動し、揺動レバー78が圧力解除カム76の軸76aを中心にして時計回り及び反時計回りに繰り返し往復回転する。
このとき、揺動レバー78の時計周りの回転のみがワンウェイクラッチ77を介して圧力解除カム76の軸76aに伝達され、圧力解除カム76の軸76aには時計周りの回転が間欠的に伝達される。これにより、図9(a)に示すように圧力解除カム76が時計回りに間欠的に回転して行く。
また、揺動レバー78が反時計回りに回転して、ワンウェイクラッチ77が空転するときには、図8の本体フレーム79b側の逆転阻止用のワンウェイクラッチ97により圧力解除カム76の軸76aの反時計周りの回転が禁止されるので、ワンウェイクラッチ77の反時計回りの回転に引き摺られて圧力解除カム76の軸76aが反時計周りに回転することがなく、圧力解除カム76が時計回りに間欠的に確実に回転して行く。
そして、図9(b)に示すように圧力解除カム76が時計回りに略180°回転すると、圧力解除カム76の長径側の周面が変位フレーム71のコロ75を突き放して、変位フレーム71がその軸71aを中心に反時計回りに回転移動して、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間する。
このようにソレノイド93が付勢され、揺動レバー78右側の摺接縁78bが揺動用カム81の周面に当接した状態で、定着装置12の加熱ローラ31が回転駆動されると、揺動レバー78が揺動し、揺動レバー78の時計周りの回転のみがワンウェイクラッチ77を介して圧力解除カム76の軸76aに伝達され、圧力解除カム76が時計周りに間欠的に回転し、圧力解除カム76の長径側の周面が変位フレーム71のコロ75を突き放して、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間する。これにより、各ローラ31、32の弾性層の変形が防止される。
一方、図3に示すように圧力解除カム76の短径側の周面が変位フレーム71のコロ75に対向し、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接しているときには、図6に示すように角度検出用カム94の切欠部94aが下方に向き、角度検出用カム94の周面が検出部材96の摺接部96bを押し上げるので、検出部材96の円弧壁部96cが圧力制御センサ95の発光素子95aと受光素子95b間まで移動して、発光素子95aと受光素子95b間が遮断される。
また、図9(b)に示すように圧力解除カム76の長径側の周面が変位フレーム71のコロ75を突き放して、変位フレーム71がその軸71aを中心に反時計回りに回転移動して、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間しているときには、図7に示すように角度検出用カム94も180°回転して、角度検出用カム94の切欠部94aが上方に向き、検出部材96の摺接部96bが切欠部94aに移動して、検出部材96が軸96a周りで回転し、検出部材96の円弧壁部96cが発光素子95aと受光素子95b間から外れて、発光素子95aと受光素子95b間が開放される。
従って、圧力制御センサ95の受光素子95bの受光出力に基づいて、角度検出用カム94及び圧力解除カム76の回転角度を検出し、この回転角度から加圧ローラ32が加熱ローラ31に接触しているか否かを判定することができる。
更に、そのような判定結果に基づき各ローラ31、32の接離動作を制御することが可能である。
例えば、圧力制御センサ95の受光素子95bの受光出力に基づいて加圧ローラ32が加熱ローラ31に接触していることを判定した後に、ソレノイド93を付勢して、揺動レバー78右側の摺接縁78bを揺動用カム81の周面に当接させた状態で、定着装置12の加熱ローラ31を回転駆動して、揺動用カム81を回転させ、揺動レバー78を揺動させて、圧力解除カム76を時計回りに間欠的に回転させる。そして、圧力解除カム76の長径側の周面が変位フレーム71のコロ75を突き放して、圧力制御センサ95の受光素子95bの受光出力に基づいて加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間したと判定されるまで、圧力解除カム76を回転させる。これにより、各ローラ31、32間を離間させることができる。
また、定着動作を再開するときには、ソレノイド93を付勢して、揺動レバー78右側の摺接縁78bを揺動用カム81の周面に当接させた状態で、定着装置12の加熱ローラ31を回転駆動して、揺動用カム81を回転させ、揺動レバー78を揺動させて、圧力解除カム76の時計回りの間欠的な回転を再開する。そして、圧力解除カム76の短径側の周面が変位フレーム71のコロ75に対向して、圧力制御センサ95の受光素子95bの受光出力に基づいて加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接したと判定されるまで、圧力解除カム76を回転させる。この後、ソレノイド93を消勢して、揺動レバー78を揺動用カム81から離間させればよい。
ところで、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間しているときには圧接用コイルバネ74が伸長して、その付勢力が増大している。また、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接しているときには、圧接用コイルバネ74が縮小して、その付勢力が減少している。そして、各ローラ31、32が離間状態から圧接状態に移行するときには、伸長していた圧接用コイルバネ74が縮小して、加圧ローラ32が加速され、また圧力解除カム76も加速される。
このような各ローラ31、32が離間状態から圧接状態に移行するときの加圧ローラ32や圧力解除カム76の加速動作を放置しておくと、異常音、振動、衝撃、部品の破損等が発生する。
そこで、本実施形態の定着装置12では、図6乃至図8に示すように圧力解除カム76の軸76aに固定された角度検出用カム94と定着装置12の本体フレームの不動箇所Gとの間に制動用コイルスプリング101を架け渡し、各ローラ31、32が離間状態から圧接状態に移行するときに、この制動用コイルスプリング101の張力により角度検出用カム94の加速動作を制動し、この角度検出用カム94と同軸の圧力解除カム76の加速動作も制動している。更に、圧力解除カム76の加速動作の制動により、圧力解除カム76の回転角度に応じて変位する加圧ローラ32の加速動作も制動している。この結果、異常音、振動、衝撃、部品の破損等が防止される。
また、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接する方向に変位しているときには、制動用コイルスプリング101が伸長して、制動用コイルスプリング101の張力が増大し、制動用コイルスプリング101による制動力が増大するようにし、また各ローラ31、32が離間しようとするときには、制動用コイルスプリング101が縮小して、制動用コイルスプリング101の張力が減少もしくは0となり、制動用コイルスプリング101による制動力が減少もしくは0となるようにしている。このため、各ローラ31、32が離間しようとするとき、つまり加圧ローラ32や圧力解除カム76の制動が必要でないときには、制動用コイルスプリング101による制動が無駄になされることがなく、圧力解除カム76を回転駆動するための駆動力が無駄に増大せずに済む。
図6乃至図8に示すように角度検出用カム94は、圧力解除カム76の外側に配置されて、圧力解除カム76の軸76aに固定されており、軸76aから離間した角度検出用カム94の箇所に制動用コイルスプリング101の一端を係止している。この制動用コイルスプリング101の一端が係止される角度検出用カム94の箇所は、圧力解除カム76の位相と関連付けられて決定されている。
具体的には、図10(a)に示すように圧力解除カム76の回転角度が180°となって、圧力解除カム76の最も長径側の周面部分が変位フレーム71のコロ75を突き放し、加圧ローラ32が加熱ローラ31から最も離間しているときに角度検出用カム94の最下点(下死点)となるような箇所に、制動用コイルスプリング101の一端を係止している。この箇所は、圧力解除カム76の最も長径側の周面部分から見ると、圧力解除カム76の回転方向Dとは逆方向に90°だけ離れている。このとき、制動用コイルスプリング101が最も縮小し、その張力が0となる。
図10(b)に示すように圧力解除カム76が回転方向Dに回転して、その回転角度が360°(0°)に達すると、圧力解除カム76の最も短径側の周面部分が変位フレーム71のコロ75に当接して、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接した状態となる。この図10(b)の状態では、制動用コイルスプリング101の一端が係止されている角度検出用カム94の箇所が最上点(上死点)に達する。
図10(a)から図10(b)へと遷移するときに、制動用コイルスプリング101の一端が係止されている角度検出用カム94の箇所が最下点から最上点へと移動して行き、制動用コイルスプリング101が徐々に伸長して、その張力が徐々に増大し、この制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76を回転方向Dとは逆方向に回転させるように作用する。すなわち、制動用コイルスプリング101の張力は、先に述べたような各ローラ31、32が離間状態から圧接状態に移行するときの圧接用コイルバネ74の縮小に伴う圧力解除カム76の加速動作を制動するように作用する。
尚、図10(b)の状態で制動用コイルスプリング101が最大限に弾性変形しないように、制動用コイルスプリング101の変形量に余裕を持たせておく。また、制動用コイルスプリング101を圧力解除カム76の軸76aの一端側だけに設けているが、この軸76aの他端に圧力解除カム76と同様の円板状部材を設け、この円板状部材と定着装置12の本体フレームの不動箇所間にも制動用コイルスプリングを設けてもよい。これにより、2本の制動用コイルスプリングにより圧力解除カム76の加速動作を制動することができ、制動力を増大させることができる。
次に、図11(a)〜(c)及び図12を参照しつつ、制動用コイルスプリング101の作用効果を詳しく説明する。図11(a)〜(c)は、圧力解除カム76の回転角度が0°から180°まで変化する様子を示している。また、図12は、圧力解除カム76の回転角度が0°から360°(0°)まで変化するときの圧力解除カム76の回転負荷を示すグラフである。
図12のグラフにおいては、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接する方向に変位するとき及び各ローラ31、32が圧接しているときの圧力解除カム76の回転角度範囲0°〜90°、195°〜360°を第1位相範囲とし、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間する方向に変位するとき及び各ローラ31、32が離間しているときの圧力解除カム76の回転角度範囲90°〜195°を第2位相範囲とする。
ここで、図11(a)の状態は、図10(b)の状態に対応しており、圧力解除カム76の回転角度が360°(0°)(第1位相範囲に入る)である。また、図11(b)の状態は、圧力解除カム76の回転角度が90°(第1位相範囲に入る)以下の状態である。図11(a)及び(b)に示すように圧力解除カム76の回転角度が0°〜90°(第1位相範囲に入る)のときには、圧力解除カム76の短径側の周面部分が変位フレーム71のコロ75に当接するので、コロ75が変位せず、各ローラ31、32の圧接状態が維持される。また、制動用コイルスプリング101の一端が係止されている角度検出用カム94の箇所が最上点(上死点)付近にあり、制動用コイルスプリング101が伸長し、その張力により圧力解除カム76の加速動作が制動される。
次に、圧力解除カム76の回転角度が90°〜165°(第2位相範囲に入る)になると、圧力解除カム76の登りカム面が変位フレーム71のコロ75に圧接してコロ75を突き放し、加圧ローラ32が加熱ローラ31から離間して行き、圧接用コイルバネ74が伸長して、その付勢力が増大して行く。
このため、圧力解除カム76の登りカム面に対するコロ75の圧接圧力が高くなって行き、図12のグラフに示すように圧力解除カム76の回転負荷が徐々に高くなり、圧力解除カム76の回転角度が165°になったときに圧力解除カム76の回転負荷が最大値T2となる。
ただし、制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76を回転方向Dに付勢するため、この制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76の回転負荷を増大させることはない。
引き続いて、図11(c)に示すように圧力解除カム76の回転角度が165°〜195°(第2位相範囲に入る)では、圧力解除カム76の周面によるコロ75の突き放し量(変位量)が変化せず、各ローラ31、32間の離間距離が一定に維持される。従って、圧接用コイルバネ74の長さも一定に維持され、その付勢力も変化しない。
また、ワンウェイクラッチ97により圧力解除カム76の軸76aの逆回転が阻止されていることもあって、図12のグラフに示すように圧力解除カム76の回転負荷が低下して値T1に維持される。このときの圧力解除カム76の回転負荷T1は、ギアや軸受け等の摩擦を原因とする機械損失である。
また、制動用コイルスプリング101が最も縮小し、その張力が0となっているので、この制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76の回転負荷の原因になることはない。
尚、圧力解除カム76の回転角度が180°のときに、圧力解除カム76の最も長径の周面部分が変位フレーム71のコロ75に対向するのが理想的であるが、圧力解除カム76の停止位置がピンポイントになることから、圧力解除カム76の回転角度の停止位置の誤差等を考慮すると、実現困難である。このため、各ローラ31、32を一定距離だけ離間させるための圧力解除カム76の回転角度幅180°±15°を設定している。従って、圧力解除カム76の最も長径の周面付近がコロ75に対してフラットに作用し、コロ75を一定距離だけ突き放す。
次に、圧力解除カム76の回転角度が195°〜360°(0°)(第1位相範囲に入る)になると、圧力解除カム76の下りカム面が変位フレーム71のコロ75に当接して、加圧ローラ32が加熱ローラ31に接近して行き、圧接用コイルバネ74が縮小して、その付勢力が減少して行く。そして、加圧ローラ32が加速され、また圧力解除カム76も加速される。
ところが、図10(b)及び図11(a)に示すように制動用コイルスプリング101が伸長し、その張力が増大するので、この張力により圧力解除カム76の加速動作が制動される。このため、異常音、振動、衝撃、部品の破損等が発生せずに済む。
このとき、図12のグラフに示すように圧力解除カム76の回転負荷が0である。また、制動用コイルスプリング101は、圧力解除カム76の加速動作を制動するだけであるから、この制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76の回転負荷の原因になることはない。
このような圧力解除カム76の回転負荷や制動用コイルスプリング101の張力の変化を整理して、次の表(1)に示す。
この表1からも明らかなように第1位相範囲では制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76の加速動作を制動し、第2位相範囲では制動用コイルスプリング101の張力が生じないか殆ど生じず、この張力が無駄な負荷もしくは無駄な駆動力の原因になることはない。
次に、比較例を挙げて、本実施形態の定着装置12の優れた点をより明確に説明する。図13は、比較例の定着装置を概略的に示す斜視図である。
この比較例の定着装置では、本実施形態の定着装置12における制動用コイルスプリング101を省略し、この代わりに、圧力解除カム76の軸76aにトルクリミッタ111を設けている。
このトルクリミッタ111は、圧力解除カム76の軸76aに作用したトルクが一定値以上となったときに軸76aの回転を可能するもので、回転する軸76aに負荷を与えて、圧力解除カム76の加速動作を制動する。
図14は、比較例の定着装置における圧力解除カム76の回転角度が0°から360°(0°)までの変化したときの圧力解除カム76の回転負荷を示すグラフである。
図14のグラフから明らかなように、圧力解除カム76の回転角度が0°〜90°(第1位相範囲に入る)→90°〜165°(第2位相範囲に入る)→165°〜195°(第2位相範囲に入る)→195°〜360°(0°)(第1位相範囲に入る)と変化して行く過程で、圧力解除カム76の回転負荷が、本実施形態の定着装置12における圧力解除カム76の回転負荷と同様に増減している。すなわち、0°〜90°では圧力解除カム76の回転負荷が一定となり、90°〜165°では圧力解除カム76の回転負荷が増大して、165°で圧力解除カム76の回転負荷が最大となり、165°〜195°では圧力解除カム76の回転負荷が機械損失分まで低下し、195°〜360°(0°)では圧力解除カム76の回転負荷が再び一定となる。
ただし、トルクリミッタ111が設けられていることから、圧力解除カム76の軸76aを回転させるには、軸76aに一定値以上のトルクを常にかける必要があり、このため圧力解除カム76の回転負荷にそのトルク分の一定負荷Tが常に含まれている。
このトルクリミッタ111による一定負荷Tは、195°〜360°(0°)において圧力解除カム76の加速動作を制動するのに役立つが、他の0°〜90°、90°〜165°、165°〜195°においては全く無駄な負荷となり、無駄な駆動力の原因となっている。
このような比較例の定着装置における圧力解除カム76の回転負荷の変化を整理して、次の表(2)に示す。
これに対して本実施形態の定着装置12では、0°〜90°、195°〜360°(0°)において制動用コイルスプリング101の張力が圧力解除カム76の加速動作を制動するのに役立ち、他の90°〜165°、165°〜195°において制動用コイルスプリング101の張力が生じないか殆ど生じないので、この張力が無駄な負荷もしくは無駄な駆動力の原因になることはない。
また、本実施形態の定着装置12では、圧力解除カム76の軸76aに固定された角度検出用カム94と定着装置12の本体フレームの不動箇所Gとの間に制動用コイルスプリング101を架け渡すという簡単な構成であり、部品点数が少なくて済み、無駄な摩擦を生じることもなく、耐久性の点でも優れている。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと解される。
例えば、上記実施形態では、制動用コイルスプリング101の張力により角度検出用カム94の回転を制動しているが、スプリングの押圧力により角度検出用カム94の回転を制動することも可能である。この場合は、図10(a)に示すように圧力解除カム76の回転角度が180°となって、加圧ローラ32が加熱ローラ31から最も離間しているときに、スプリングが伸び切って、スプリングの押圧力が0となり、図10(b)に示すように圧力解除カム76の回転角度が360°(0°)に達して、加圧ローラ32が加熱ローラ31に圧接したときに、スプリングが縮小して、スプリングの押圧力が最大となり、かつスプリングの押圧力が圧力解除カム76を回転方向Dとは逆方向に回転させるような箇所に作用するようにする。また、コイルスプリングの代わりに、他の種類のスプリングを利用してもよい。
更に、各ローラ31、32を完全に離間させる必要はなく、各ローラ31、32の弾性層に凹みが形成されない程度に加圧ローラ32を加熱ローラ32から離れる方向に変位させるだけでも構わない。
また、無端状の定着ベルトを加熱ローラ等に張架し、この加熱ローラを定着ベルトを介して加圧ローラ32を圧接して、定着ベルトと加圧ローラ32間にニップ域を形成し、このニップ域に記録用紙を挟み込んで搬送する定着装置においても、本発明を適用することができる。