以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係るシート給送装置を搭載した画像形成装置Aの構成及び画像形成動作について説明し、次にシート給送装置について説明する。
(第1実施形態)
<画像形成装置>
図1に示す様に、画像形成装置Aは記録媒体であるシートSを積載するシート積載部と、シートSにトナー像を転写する画像形成部と、画像形成部へシートSを供給するシート給送部と、シートSにトナー像を定着させる定着部と、を備える。
シート積載部は、画像形成装置A本体内部にシートSを収納するシート収納部2を有する。また、画像形成時に装置本体外側に設けられ、ユーザがトレイ100上にシートSを積載してシートSを給送させるシート給送装置としてのトレイ給送部1(手差しトレイ)を有する。
画像形成部は、画像形成装置A本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジ4、中間転写ユニット、レーザスキャナユニット9を備えている。プロセスカートリッジ4は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色毎に対応するプロセスカートリッジ4y、4m、4c、4kが一列に並列している。また、各プロセスカートリッジ4は像担持体である感光体ドラム5(5y、5m、5c、5k)、帯電ローラ6(6y、6m、6c、6k)、現像ローラ7(7y、7m、7c、7k)等を備える。
中間転写ユニットは、一次転写ローラ17(17y、17m、17c、17k)、中間転写ベルト11、駆動ローラ12、テンションローラ13、二次転写対向ローラ14a、クリーニング装置18を備えている。中間転写ベルト11は無端円筒状ベルトであり、駆動ローラ12、テンションローラ13、二次転写対向ローラ14aによって張架されている。
画像形成に際しては、制御部(不図示)がプリント信号を発すると、給送ローラ3又はピックアップローラ101によってシート積載部に積載収納されたシートSがシート搬送路に送り出される。その後、シートSは搬送ローラ8を介してレジストローラ10に送られる。ここで、シートSが1対のレジストローラ10から形成されるニップ部に突入するとき、レジストローラ10は停止している。そして、搬送ローラ8がこのニップ部にシートSを押し込むことで、搬送ローラ8とレジストローラ10との間でシートSに撓み、同時にシートSの先端が揃うように補正される。そして、シートSの先端がそろった後にレジストローラ10が回転してシートSが画像形成部に送り出される。
一方、画像形成部においては、まず感光体ドラム5が帯電ローラ6によって表面を帯電させられる。そしてレーザスキャナユニット9が、内部に備える不図示の光源からレーザ光を出射し、レーザ光を感光体ドラム5上に照射する。これにより感光体ドラム5の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像を現像ローラ7によって現像することにより感光体ドラム5上にトナー像が形成される。感光体ドラム5上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ17に転写バイアスが印加されることにより中間転写ベルト11にそれぞれ一次転写される。中間転写ベルト11は駆動ローラ12がモータ(不図示)などの駆動源から駆動力を受けることにより回転する。一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転により回転方向下流にある二次転写対向ローラ14aと二次転写ローラ14bとで形成される二次転写部に到達し、ここでトナー像がシートSに転写される。
トナー像が転写されたシートSは、定着器15に送られ、加熱、加圧されてトナー像がシートSに定着された後、排出ローラ16によって搬送されて排出部に排出される。
<シート給送装置>
次に、シート給送装置としてのトレイ給送部1の全体構成及び動作について説明する。
図2に示す様に、トレイ給送部1は、トレイ100に積載されたシートSを取り込むピックアップローラ101(給送回転体)を有する。また、ピックアップローラ101に取り込まれたシートSをシート搬送路に給送する給送ローラ102を有する。また、シートSの重送を避けるためにシート搬送方向と反対方向に回転して重なったシートSを分離させる分離ローラ103を有する。
トレイ100は、画像形成装置A本体に対して開閉可能に構成されている。ユーザは、トレイ100が開いた状態においてシートSをトレイ100に設置する。またトレイ100を閉じる際には、ピックアップローラ101等も画像形成装置A本体の内側に収容される。トレイ100を閉じた状態の構成については後述する。
給送ローラ102は、マルチフレーム(不図示)に支持された給送ローラ軸102aに回転可能に設けられる。また、給送ローラ軸102aには、ピックアップローラ101を支持する支持部材としての昇降プレート106も回動可能に設けられる。これにより、昇降プレート106の回動に伴って、ピックアップローラ101がシートSと当接する給送位置や、給送位置から離間した離間位置に移動する。なお、ピックアップローラ101は昇降プレート106が支持するピックアップローラ軸101aに回動可能に設けられている。
また昇降プレート106は、マルチカム108の有する第1カム200により解除リンク109(リンク部材)を介して回動を制御される。このマルチカム108は、マルチカム軸108aに回動可能に設けられ、また第1カム200(第1カム部材)と第2カム300(第2カム部材)とが一体形成された構成である。従って、第1カム200と第2カム300とは一体的に回転する。なお、第1カム200と第2カム300とはコスト削減の観点から一体形成されることが望ましいが、これらが連動して回転する構成であれば別体として形成されていてもよい。
なお、給送ローラ軸102aと給送ローラ102とは不図示のカップリング部材により回転が同期される。また、ピックアップローラ101軸とピックアップローラ101も同様に回転が同期される。また、マルチカム108とマルチカム軸108aも同様に回転が同期される。
また、分離ローラ103は分離ローラホルダ107に支持された分離ローラ軸103aに回動可能に設けられる。この分離ローラホルダ107はマルチフレーム(不図示)に回転可能に設けられており、このマルチフレームと分離ローラホルダ107との間に設けられた加圧ばね112によって加圧されている。なお、分離ローラ軸103aは分離ローラホルダ107の回転止めにより回転が規制されている。また、分離ローラ軸103a上には、カップリング部材により回転同期されたトルクリミッタ104が設けられている。
<駆動部>
次にトレイ給送部1の駆動部の構成について説明する。トレイ給送部1の駆動部は、図2に示す様に、給送ギア111、カムギア110、モータ(不図示)などを有する。
給送ギア111(第1ギア)は、給送ローラ軸102a(第1の軸)の端部側に設けられ、駆動源としてのモータ(不図示)の駆動力を伝達する。モータの駆動力が給送ギア111を介して給送ローラ軸102aに伝達されると、この駆動力が駆動列117を介してピックアップローラ軸101aにも伝達される。従って、ピックアップローラ101は、給送ローラ102の回転と同期して回転することができる。
また、給送ローラ軸102aの下方にはマルチカム108の回転軸であるマルチカム軸108a(第2の軸)があり、このマルチカム軸108aの端部側には給送ギア111と噛み合う形でカムギア110(第2ギア)が取り付けられている。このため、モータから給送ギア111が駆動を受けて回転することで、カムギア110にも駆動が伝達されて回転する。
また、図3に示す様に、給送ギア111の中心には、給送ギア111と回転を同期するようにワンウェイクラッチ111OWが圧入されている。また、給送ギア111と噛み合うカムギア110の中心には、カムギア110と回転を同期するようにワンウェイクラッチ110OW圧入されている。
このワンウェイクラッチ111OW及びワンウェイクラッチ110OWは、下の表1に示す様に、給送ギア111が図3に示すWCC方向(第1の方向)に回転するときは回転駆動力を給送ローラ軸102aへと伝達する。一方でWC方向(第2の方向)に回転するときは回転駆動力を伝達せずに空転する。同様に、カムギア110がVCC方向(第1の方向)に回転するときは回転駆動力をマルチカム軸108aへと伝達し、VC方向(第2の方向)に回転するときは回転駆動力を伝達せずに空転する。
なお、ワンウェイクラッチの特性により、給送ローラ軸102aは給送ギア111の回転よりも速くWCC方向に回転することが可能であり、同様にマルチカム軸108aはカムギア110の回転よりも速くVCC方向に回転することができる。
<離間位置>
次に、給送ジョブが入力される前の状態であってトレイ給送部1がシート給送動作を行わない状態の構成や各部材に作用する力の関係ついて説明する。このとき、ピックアップローラ101はシートSと離間した離間位置にある。また、モータは駆動しておらず、さらに後述の通りマルチカム108を回転させるモーメントが発生していないため、マルチカム108は回転しない。
まず、昇降プレート106の回動を制御する第1カム200や解除リンク109などについて説明する。図4は図2に示すY断面の断面図である。図4に示す様に、マルチフレーム(不図示)に固定された壁面150と昇降プレート106との間にはローラ加圧ばね113が取り付けられており、ローラ加圧ばね113は昇降プレート106を矢印P方向に付勢する。これにより、給送ローラ軸102aを中心として昇降プレート106を矢印G方向に回転させるモーメントMGが発生する。
図5は図4のDT3領域の拡大図である。図5に示す様に、矢印G方向のモーメントMGが発生すると、このモーメントMGの作用により昇降プレート106に設けられた凸部106xを解除リンク109に設けられたプレート当接部109x側に移動させる矢印H方向の力FHが発生する。そして、力FHの作用により凸部106xがプレート当接部109xを押圧することで、解除リンク109の軸である解除リンク軸109aを中心とした矢印I方向のモーメントMIが発生する。そして、このモーメントMIの作用により解除リンク109が点Mを力点として第1カム200を矢印J方向に押圧する押圧力FJが発生する。
ここで、ピックアップローラ101が離間位置にあるとき、この押圧力FJはマルチカム軸108aの軸心方向を向いている。従って、第1カム200を回転させるモーメントは発生せず、第1カム200は停止状態にある。
次に、ブレーキレバー114と第2カム300との関係について説明する。図6は図2のX断面の断面図である。図6に示す様に、ブレーキレバー114(当接部材)には溝部115にマルチフレーム(不図示)に取り付けられた引張ばね116(バネ部材)が取り付けられている。ブレーキレバー114は、ブレーキレバー軸114aを中心に回動可能(移動可能)に支持されている。そしてこの引張ばね116の矢印T方向の張力FTにより、ブレーキレバー114にはブレーキレバー軸114aを中心に矢印K方向に回転するモーメントMKが発生する。そして、このモーメントMKの作用により、ブレーキレバー114は点Nを力点として第2カム300を矢印L方向に押圧する押圧力FLが発生する。この押圧力FLは、引張ばね116の弾性力に基づいてブレーキレバー114を介して第2カム300を付勢する付勢力とも考えることができる。
ここで、ピックアップローラ101が離間位置にあるとき、この押圧力FLはマルチカム軸108aの軸心方向に向いている。従って、第2カム300を回転させるモーメントは発生せず、第2カム200は停止状態にある。
以上が、ピックアップローラ101が退避位置にあるときの構成及び各部材に作用する力の関係である。すなわち、解除リンク109が第1カム200を押圧する押圧力FJ及びブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力FLはともに軸心方向を向いている。また、モータが駆動しておらず、各ギアは回転していない。従って、第1カム200及び第2カム300は停止状態にある。
<離間位置から給送位置への移動>
次に、給送ジョブが入力され、ピックアップローラ101が離間位置から給送位置に移動するときの動作について説明する。ここで給送位置とは、ピックアップローラ101がシートSに当接して給送動作を行うときの位置である。なお、トレイ給送部1は、シートセンサ(不図示)によりトレイ100上にシートSがあることが確認され、給送ジョブ指令を受けたときにピックアップローラ101が離間位置から給送位置に移動するように設定されている。
まず、給送ジョブの指令が入ると、モータ(不図示)から給送ギア111に対して駆動が伝達され、給送ギア111は図3に示す矢印WC方向に回転する。ここで、前述した通り、給送ギア111は矢印WC方向に回転するときは給送ローラ軸102aに駆動を伝達しないため、給送ローラ軸102aは回転しない。
一方、給送ギア111の矢印WC方向の回転により、給送ギア111と噛み合うカムギア110は矢印VCC方向に回転する。そして、前述した通りカムギア110が矢印VCC方向に回転するとマルチカム軸108aに駆動が伝達されるため、マルチカム軸108aも矢印VCC方向に回転する。そして、マルチカム軸108aの回転に伴ってマルチカム108が回転し、これにより第1カム200及び第2カム300も矢印VCC方向に回転する。
そして、図7に示す様に、第1カム200が矢印VCC方向に回転すると、カムの形状により解除リンク109が矢印I方向に回転する。そして、解除リンク109の回転に伴って、プレート当接部109xが凸部106xから離間する方向に移動する。プレート当接部109xが凸部106xから離間する方向に移動すると、凸部106xはモーメントMGの作用によりプレート当接部109xの移動に追随する。これにより、昇降プレート106が給送ローラ軸102aを中心に矢印G方向に回動し、ピックアップローラ101がトレイ100方向に下降する。
ここで、第1カム200が矢印VCC方向に回転するとき、プレート当接部109xと凸部106xとの当接点は、当接点Mの位置から当接点M´の位置に徐々に移動する。これに伴い、解除リンク109が第1カム200を押圧する方向は、矢印J方向(第1カム200の軸心方向)から、矢印J´方向に変化する。
このように解除リンク109が第1カム200を矢印J´方向に押圧すると、第1カムをVCC方向(第1の方向)に回転させる回転トルクTVCCが生じる。従って、第1カム200には、モータから駆動伝達手段としての給送ギア111及びカムギア110を介して伝達された駆動力に加えて、解除リンク109が第1カム200を押圧することで発生するVCC方向の回転トルクTVCCの両方が作用することになる。
このように第1カム200に対してモータから伝達された駆動力以外の回転トルクTVCCが作用すると、上述したワンウェイクラッチの特徴により、第1カム200はモータの駆動力に基づいて回転する回転速度よりも速くVCC方向に回転してしまう。従って、昇降プレート106が高速で下降してしまい、ピックアップローラ101がシートSに衝突して大きな衝突音を発生させてしまう。
このため、回転トルクTVCCによって昇降プレート106が高速で下降することを防ぐ必要がある。そこで本実施形態に係るトレイ給送部1は、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧してVC方向(第2の方向)の回転トルクを付与することで、回転トルクTVCCを低減させて第1カム200の回転速度を減速させる。以下、これについて詳しく説明する。
まず図8に示す様に、モータの駆動力が伝達されてマルチカム軸108aが矢印VCC方向に回転すると、マルチカム軸108aと同期して回転する第2カム300が矢印VCC方向に回転する。この第2カム300の回転に伴って、第2カム300とブレーキレバー114との当接点は、当接点Nから当接点N´の位置に徐々に移動する。これに伴い、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する方向は、矢印L方向(第2カム300の軸心方向)から矢印L´方向へと変化する。
このようにブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´方向に押圧すると、マルチカム軸108aを中心とした矢印R方向の回転トルクTMRが発生する。この回転トルクTMRは、解除リンク109が第1カム200を押圧することにより発生する回転トルクTVCCとは反対方向の回転トルクである。従って、このように回転トルクTMRを発生させることにより、回転トルクTVCCが低減される。従って、第1カム200の回転速度が減少して昇降プレート106の下降速度が減少し、ピックアップローラ101とトレイ又はシートSとが衝突する際の衝突音を抑制することができる。
なお、ピックアップローラ101が給送位置から退避位置に移動する際に、ブレーキレバー114は第2カム300を矢印L´方向に常に押圧する必要はなく、一時的に押圧すれば上記の効果を得ることができる。また、ブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´方向に押圧するタイミングとしては、第1カム200が解除リンク109に押圧されて回転トルクTVCCが付与されたタイミング以後になるように第2カム300を形成するのが好ましい。
また、ブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´方向に押圧することにより、第1カム200の回転速度がモータの駆動力に基づく回転速度よりも速くならないように、回転トルクTVCCを減少させると好ましい。
次に、ピックアップローラ101とトレイ100上のシートSとが当接した後の動作について説明する。ピックアップローラ101とトレイ100上のシートSが当接した後であっても、マルチカム108が所定位置まできたことをマルチポジションセンサ(不図示)が検知するまでモータは駆動する。このため、マルチカム108が所定位置にくるまでマルチカム108は矢印VCC方向に回転する。
ここで、マルチカム108の回転に伴って第1カム200がさらにVCC方向に回転すると、プレート当接部109xがさらに凸部106xから離間する方向に移動する。一方、ピックアップローラ101がシートSに当接しているため昇降プレート106が回動せず、凸部106xはプレート当接部109x方向に移動しない。このため、図9に示す様に、凸部106xとプレート当接部109xとが完全に離間する。
なお、図10に示す様に、シート積載部にシートSが積載されていない場合であっても、ピックアップローラ101がトレイ100に当接するため昇降プレート106が回動せずに凸部106xはプレート当接部109x方向に移動できなくなる。従って、所定のタイミングで凸部106xとプレート当接部109xとは完全に離間する。
このように凸部106xとプレート当接部109xとが完全に離間すると、解除リンク109が第1カム200を押圧する押圧力FJは、解除リンク109の自重に基づくモーメントの作用による力となる。そして、この押圧力FJは、マルチカム108が所定位置に来てピックアップローラ101が給送位置にあることをマルチポジションセンサが検知したとき、第1カム200の軸心方向を向く。従って、ピックアップローラ101が給送位置にあるとき、第1カム200を回転させるモーメントは発生しない。
一方でブレーキレバー114については、マルチカム108の回転に伴って第2カム300がさらにVCC方向に回転すると、この回転に伴ってブレーキレバー114が上側に押し上げられる。これに伴い、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力FLの方向が徐々に変化する。そして、マルチカム108が所定位置に来てピックアップローラ101が給送位置にあることをマルチポジションセンサが検知したとき、図11に示す様に、この押圧力FLは軸心方向を向く。従って、ピックアップローラ101が給送位置にあるとき、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力によって第2カム300を回転させるモーメントは発生していない。
マルチカム108が所定位置まできたことをマルチポジションセンサ(不図示)が検知し、ピックアップローラ101が給送位置にくるとモータの駆動が停止される。従って、マルチカム軸108aのNCC方向への回転も停止する。
<給送動作>
次に、トレイ給送部1が行うシートSの給送動作について説明する。
まず、マルチカム108が所定位置まできたことをマルチポジションセンサが検知し、ピックアップローラ101が給送位置に来たことが検知されると、モータが一度停止した後に先程までとは逆方向に駆動し始める。これにより、給送ギア111を介して給送ローラ軸102aに図12に示す矢印WCC方向の駆動力が伝達され、給送ローラ軸102aがWCC方向に回転し始める。また、給送ローラ軸102aの回転駆動が駆動列117及びピックアップローラ軸101aを介してピックアップローラ101に伝達され、ピックアップローラ101が矢印WCC方向に回転する。これにより、トレイ100の最上部にあるシートSがピックアップローラ101に取り込まれ、給送ローラ102を介してシート搬送路に給送される。
なお、給送ギア111が矢印WCC方向に回転すると、カムギア110はその反対方向であるVC方向に回転する。前述の通りカムギア110がVC方向するとき、ワンウェイクラッチの作用によりマルチカム軸108aには駆動が伝達されない。従って、給送動作中にマルチカム108が回転することなく、昇降プレート106が昇降することはない。
なお、給送動作中においては、ローラ加圧ばね113による矢印P方向の付勢力はシートSを押圧する力として作用する。
<給送位置から離間位置への移動>
次に、ピックアップローラ101が給送位置から離間位置に移動するときの動作について説明する。給送動作が終了すると、まずモータが給送動作中とは反対方向への駆動を開始し、給送ギア111に対して図3に示す矢印WC方向の回転力が伝達される。これにより、前述の通りカムギア110を介してマルチカム軸108aに駆動が伝達され、マルチカム軸108aが図3に示すVCC方向に回転する。一方で、前述の通り給送ギア111は空転するため、給送ローラ軸102aにはモータからの駆動が伝達されない。
次に、マルチカム軸108aがVCC方向に回転することで、第1カム200がこの回転と同期してVCC方向に回転する。第1カム200がVCC方向に回転すると、図13に示す様に、解除リンク109が押し上げられながら矢印O方向に回転し始める。これにより、給送動作中に離間していたプレート当接部109xと凸部106xとが徐々に接近して再び当接する。
第1カム200がさらに回転すると、プレート当接部109xが凸部106xを押圧して昇降プレート106が図13に示す矢印V方向に回転する。これにより、昇降プレート106が上昇してピックアップローラ101が離間位置に移動する。
一方、第2カム300については、マルチカム軸108aが矢印VCC方向に回転すると、第2カム300がこの回転と同期して矢印VCC方向に回転する。第2カム300が矢印VCC方向に回転すると、図14に示す様に、第2カム300とブレーキレバー114との当接点がカムの形状に基づいて変化する。これに伴い、第2カム300を軸心方向に押圧していたブレーキレバー114は、第2カム300を矢印L´´方向に押圧し始める。
このようにブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´´方向に押圧すると、第2カム300には矢印W方向の回転トルクTWが付加される。この回転トルクTWはモータからの駆動伝達によりマルチカム108が回転するVCC方向と同方向のトルクである。従って、ピックアップローラ101が給送位置から離間位置に戻る際に必要な駆動力がアシストされ、昇降プレート106を上昇させるのに必要なモータからの駆動力を低減させることができる。
なお、ピックアップローラ101が給送位置に移動するとき、前述の通り第2カム300によりブレーキレバー114が押し上げられる。従って、引っ張りばね116の張力FTは、ピックアップローラ101が離間位置にあるときよりも給送位置にあるときの方が大きくなる。このため、ブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´´方向に押圧する力も大きくなり、回転トルクTWが大きくなる。従って、昇降プレート106を上昇させるのに必要なモータからの駆動力を低減させる効果が向上する。
また、ピックアップローラ101が離間位置から給送位置に移動する際に、ブレーキレバー114は第2カム300を矢印L´´方向に常に押圧する必要はなく、一時的に押圧すれば上記の効果を得ることができる。また、ブレーキレバー114が第2カム300を矢印L´´方向に押圧し始めるタイミングとしては、昇降プレート106が回動を開始したタイミング以後とするとより好ましい。これにより、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する際に、凸部106xとプレート当接部109xとが強く衝突することを防止でき、騒音を抑制できる。
図15は、ピックアップローラ101が給送位置と離間位置との間を移動するときのマルチカム108に作用する矢印VCC方向(図7参照)のトルクの推移を示したグラフである。本グラフにおいて、横軸には時間を、縦軸にはトルク量を示す。また、グラフ中の実線はブレーキレバー114を備えた本実施形態に係る画像形成装置Aのトルクの推移を示し、破線はブレーキレバー114を有しない比較例に係る画像形成装置のトルクの推移を示す。
まずグラフのA時点はピックアップローラ101が退避位置から給送位置に移動する際のトルクの推移である。このとき、本実施形態に係る画像形成装置Aは、解除リンク109が第1カム200を押圧することで生じる回転トルクTVCCが、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧することで生じるモーメントMRの作用により低減される。従って、マルチカム108に作用するトルクは、モータから伝達されたトルクを加えても比較的小さい値に抑制される。一方、比較例に係る画像形成装置はブレーキレバー114を有しないため、解除リンク109が第1カム200を押圧することにより生じる回転トルクTVCCは低減されず大きな値になる。
次にグラフのB時点はピックアップローラ101が給送位置から退避位置に移動する際のトルクの推移である。このとき、本実施形態に係る画像形成装置Aはブレーキレバー114を有するため、モータから伝達された駆動力に基づく回転方向VCCと同じ方向に回転トルクTWが付加される。このため、マルチカム108に作用するトルクは大きくなる。一方、比較例に係る画像形成装置はブレーキレバー114を有しないため、モータから伝達された駆動力に基づく回転方向VCCと同じ方向にトルクが付加されない。従って、マルチカム108に作用するトルクは小さくなる。
以上のトルクの推移からも、本実施形態に係る画像形成装置Aは、ピックアップローラ101が離間位置から給送位置に移動する際に昇降プレート106の回転が減速され、ピックアップローラ101とシートSとの衝突音が抑制されることがわかった。また、ピックアップローラ101が給送位置から離間位置に移動する際に必要な駆動力であってモータから伝達される駆動力を減少させることができることがわかった。
<トレイが閉じた状態でのトレイ給送部の動作>
上述したピックアップローラ101の移動等のトレイ給送部1の動作は、トレイ100が開いた状態が前提となっている。しかしトレイ100が閉じた状態において、第1カム200を回転させて位相を変位させる場合がある。
このようにトレイ100が閉じた状態で第1カム200の位相を変位させるのは、例えば次のような場合である。すなわち、トレイ100が閉じた状態において、第1カム200の位相がピックアップローラ101を給送位置に位置させる位相である場合、昇降プレート106の凸部106xと解除リンク109のプレート当接部109xとが離間した状態にある。この状態でユーザがトレイ100を開くと、昇降プレート106は加圧ばね113の付勢力により給送ローラ軸102aを中心にWCC方向へ回転する。そして昇降プレート106の凸部106xがプレート当接部109xに近接してピックアップローラ101は給送位置へ移動する。この場合、ピックアップローラ101が邪魔になって、ユーザがシートSをトレイ100にセットすることができない。そこでトレイ100が閉じた状態において、第1カム200の位相をピックアップローラ101を給送位置に位置させる位相から離間位置に位置させる位相に変位させる。
以下、トレイ100が閉じた状態でマルチカム108が回転するときのトレイ給送部1の動作について説明する。なお、以下の説明において、第1カム200がピックアップローラ101を給送位置に位置させる位相を第1の位相といい、離間位置に位置させる位相を第2の位相という。第1カム200は、回転して第1の位相と第2の位相とに変位可能な部材である。
まずピックアップローラ101が給送位置にある状態でトレイ100を閉じたときのトレイ給送部1の構成について説明する。
図16は、ピックアップローラ101が給送位置にある状態でトレイ100を閉じたときのトレイ給送部1の構成を示す模式図である。図16に示す様に、ピックアップローラ101が給送位置にある状態でトレイ100を閉じると、トレイ100とピックアップローラ101又は昇降プレート106が当接し、昇降プレート106が給送ローラ軸102aを中心にWC方向へ回転する。これによりピックアップローラ101は上方へと移動する。
なお、トレイ100が閉じた状態では、解除リンク109のプレート当接部109xの移動軌跡が昇降プレート106の凸部106xと干渉しない位置にある。これはトレイ100が閉じた状態では、第1カム200がいかなる位相であっても、第1カム200を回転させて第2の位相へと変位させることができるようにするためである。またトレイ100が閉じた状態では、ピックアップローラ101はトレイ100に移動を規制されている。
次に、トレイ100を閉じた状態で、第1カム200が回転して第1の位相から第2の位相に変位するときのトレイ給送部1の動作について説明する。
まず第1カム200の動作について説明する。第1カム200は、不図示のモータの回転駆動力が伝達されることで矢印VCC方向に回転して、第1の位相から第2の位相に変位する。このとき、上述した通り、昇降プレート106の凸部106xと解除リンク109のプレート当接部109xとが離間しているため、第1カム200にかかる負荷は、第1カム200の回転による摺動負荷のみである。つまりトレイ100が閉じた状態で第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位するとき、トレイ100が開いた通常の状態よりも昇降プレート106による第1カム200に対する負荷が弱い状態で第1カム200が回転する。
次に、第2カム300の動作について説明する。なお、第1カム200と第2カム300はマルチカム108として一体成形されているため、第2カム300は第1カム200と一体的に回転する。
図17は、トレイ100が閉じた状態で第1カム200が回転して第1の位相から第2の位相に変位するときの、第2カム300とブレーキレバー114との関係を示す模式図である。図17に示す様に、第2カム300が回転すると、ブレーキレバー114が第2カム300に当接する点が点Z1からZ2に移動する。これにより第2カム300には、ブレーキレバー114による矢印Z2´方向の押圧力がかかる。この矢印Z2´方向の押圧力は、第2カム300を矢印VCC方向に回転させる回転トルクとなる。
これによりマルチカム108には、不図示のモータの回転駆動力に基づく矢印VCC方向の回転トルクと、ブレーキレバー114の矢印Z2´方向の押圧力に基づく矢印VCC方向の回転トルクが付与される。ここでワンウェイクラッチ110OXの作用により、マルチカム軸108aは、カムギア110の回転よりも速く矢印VCC方向に回転することができる。従って、ブレーキレバー114の押圧力に基づいて矢印VCC方向の回転トルクが付与されると、マルチカム108はモータの回転駆動力に基づく回転速度よりも速く回転する。
図18は、第2カム300が図17の状態からさらに回転したときの、第2カム300とブレーキレバー114との関係を示す模式図である。図18に示す様に、第2カム300がさらに回転すると、第2カム300が不図示のモータの回転駆動力に基づく回転速度よりも速く回転した状態で、第2カム300に形成された突起部300aとブレーキレバー114とが当接する。
図19は、第2カム300の突起部300aとブレーキレバー114との当接部分の拡大図である。図19に示す様に、ブレーキレバー114が突起部300aと点Z4で当接するとき、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力は矢印Z4´方向となる。この矢印Z4´方向の押圧力は、第2カム300を矢印VC方向に回転させる回転トルクとなる。このようにブレーキレバー114が第2カム300の突起部300aの点Z3から点Z5に亘る領域に当接した状態では、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力は、第2カム300を矢印VC方向に回転させる回転トルクとなる。
このように第2カム300を矢印VC方向に回転させる回転トルクが付与されると、マルチカム108のVCC方向の回転トルクが減少する。これによりマルチカム108の回転速度が減速し、第1カム200や第2カム300の回転速度が減速する。このようにしてマルチカム108は、ブレーキレバー114が第2カム300の突起部300aを通過した以降は、不図示のモータの回転駆動力に基づく回転速度に戻る。
その後、マルチカム108が所定位置に来たことを不図示のマルチポジションセンサが検知すると、モータの駆動が停止してマルチカム108の回転も停止する。具体的には、第1カム200の第2の位相のうち、ピックアップローラ101を給送位置から最も離間した位置に位置させるときの位相となったことをマルチポジションセンサが検知すると、駆動源の駆動が停止してマルチカム108の回転も停止する。つまり第2カム300の突起部300aがブレーキレバー114と当接するときの位相は、第1カム300における第1の位相と、第2の位相のうちピックアップローラ101を給送位置から最も離間した位置に位置させるときの位相との間の位相である。またマルチポジションセンサは、第1カム200の位相を検知する位相検知手段であり、マルチポジションセンサによる位相の検知結果に基づいて不図示の制御部(制御手段)はモータの駆動を停止させる。
このようにマルチカム108を減速させることで、マルチカム108を停止させる際にマルチカム108が回転し過ぎることを抑制して、マルチカム108を本来の位置で停止させることができる。従って、トレイ給送部1がシートSの給送を待機する待機時の位置精度を維持することができる。
なお、ブレーキレバー114が第2カム300を押圧する押圧力は、引張ばね116がその弾性力に基づいてブレーキレバー114を介して第2カム300を付勢する付勢力とも考えることができる。つまりブレーキレバー114と引張ばね116は、第2カム300を付勢する付勢手段である。
また付勢手段である両部材は、第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する際に、ブレーキレバー114と第2カム300の突起部300aが当接する位相までは第2カム300を付勢して矢印VCC方向の回転トルクを付与する。またブレーキレバー114と第2カム300の突起部300aが接触する位相から、第1カム200がさらに矢印VCC方向に回転する際に、第2カム300に矢印VC方向の回転トルクを付与する。換言すれば、第2カム300は、第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する際、ブレーキレバー114と第2カム300の突起部300aが接触する位相になるまでは、上記付勢力を矢印VCC方向の回転トルクとする形状を成す。また第2カム300の突起部300aがブレーキレバー114と接触する位相から、第1カム200がさらに矢印VCC方向に回転する際には、上記付勢力を矢印VC方向の回転トルクとする形状を成す。なお、第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する際に、第2カム300に付与される上記付勢力には、第1カム200が第2の位相から第1の位相に変位する際のブレーキレバー114の移動に伴って引張ばね116に蓄えられる弾性力が含まれる。
図20は、マルチカム108の位相と回転速度との関係を示すグラフである。本グラフにおいて、実線は第2カム300に突起部300aを有する本実施形態の構成を示し、破線は第2カム300に突起部300aを有しない比較例の構成を示す。
図20に示す様に、トレイ100を閉じた状態で第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する場合、比較例の構成では、第2カム300に突起部300aがないため、マルチカム108には矢印VC方向の回転トルクが付与されない。従って、マルチカム108はモータの回転駆動力に基づく回転速度よりも速く回転する。
この場合、マルチポジションセンサ(不図示)により第1カム200の第1の位相を検知して駆動源の駆動を停止させた場合でも、マルチカム108は回転し過ぎて本来の位置を超えた位置で停止してしまう。この場合、ピックアップローラ101とトレイ100との隙間が本来よりも減少してトレイ100にシートSを載置しにくくなる。
これに対して本実施形態の構成では、第2カム300の突起部300aにより、ブレーキレバー114の押圧力はマルチカム108の回転速度を減速させる方向の回転トルクとされる。このため、マルチカム108の回転速度は駆動源の駆動力に基づく回転速度に戻る。従って、マルチカム108を本来の位置で停止させることができ、トレイ給送部1が給送を待機する待機時の位置精度を維持することができる。
なお、例えばトレイ100の開閉を検知する開閉センサを設けて、トレイ100が開いた状態でのみマルチカム108の回転動作を行う構成とする。これによりトレイ100が閉じた状態で第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する際に、ブレーキレバー114の付勢力によりマルチカム108の回転速度が過剰に速くなる現象を抑制することができる。しかし本実施形態の構成によれば、新たにセンサを設けることなく、安価な構成で、ブレーキレバー114によりマルチカム108の回転速度が過剰に速くなる現象を抑制することができる。
また第1カム200が第1の位相から第2の位相に変位する際に、ブレーキレバー114の押圧力によりマルチカム108の回転速度が過剰に速くなる現象は、トレイ100が閉じた状態でマルチカム108が回転する場合以外にも起こり得る。すなわち、例えばユーザによりピックアップローラ101が手で持ち上げられた場合など、昇降プレート106の第1カム200に対する負荷が通常より弱い状態で第1カム200が回転する場合であればこのような現象が起こり得る。このため、手差しトレイ方式のシート給送装置だけでなく、画像形成装置A内部にシートを積載する給紙カセット方式のシート給送装置に上記構成を適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
また本実施形態では、シート給送装置を搭載する装置として画像形成装置Aを例示したものの、本発明はこれに限られない。すなわち、給送されたシートの画像情報を電気信号として読み取る画像読取部(画像読取手段)を有し、本発明に係るシート給送装置を備える画像読取装置であっても、本発明の効果を得ることができる。