図1は、本発明が適用される車両用駆動装置8を説明するための骨子図である。図1において、車両用駆動装置8は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン14と、そのエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達する車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)とから構成されている。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)内において、エンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸(例えばクランク軸)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機M1、動力分配機構として機能する第1遊星歯車装置20、減速装置として機能する第2遊星歯車装置22、および、駆動輪40(図5参照)に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を備えている。
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力がカウンタギヤ対32の一方を構成する動力伝達装置10の出力回転部材としての出力歯車24からカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図5参照)。このように、本実施例では、入力軸18とエンジン14とはダンパー16を介して作動的に連結されており、エンジン14の出力軸がエンジン14の出力回転部材であることはもちろんであるが、この入力軸18もエンジン14の出力回転部材に相当する。
入力軸18は、両端がボールベアリング26および28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、動力伝達装置10の各部例えば第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、ボールベアリング26、および28等に潤滑油が供給される。
第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間に連結された差動機構である。具体的に、第1遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1回転要素としての第1キャリヤCA1、第2回転要素としての第1サンギヤS1、および、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第3回転要素としての第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。なお、第1遊星歯車装置20は本発明の差動機構に対応する。
そして、第1遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的な動力分配機構であって、エンジン14の出力を第1電動機M1および出力歯車24に分配する。つまり、この第1遊星歯車装置20においては、第1キャリヤCA1は入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン14の出力が第1電動機M1および出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、第1遊星歯車装置20の差動状態が第1電動機M1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
第2遊星歯車装置22はシングルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車装置22は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、および、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備えている。なお、第1遊星歯車装置20のリングギヤR1および第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は一体化された複合歯車となっており、その外周部に出力歯車24が設けられている。
この第2遊星歯車装置22においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機M2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車24に連結されている。すなわち、第2電動機M2は出力歯車24と第1遊星歯車装置20のリングギヤR1とに第2遊星歯車装置22を介して連結されている。これにより、例えば発進時などは第2電動機M2が回転駆動することにより、第2サンギヤS2が回転させられ、第2遊星歯車装置22によって減速させられて出力歯車24に回転が伝達される。
本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は第1遊星歯車装置20の作動状態を制御するための差動用電動機として機能するので、反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備える。また、第2電動機M2は走行用電動機として機能し、車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。更に、第1電動機M1と第2電動機M2とは相互に電力授受可能に構成されている。
図2は、本実施例の車両用駆動装置8を制御するための制御装置である電子制御装置100に入力される信号及びその電子制御装置100から出力される信号を例示している。この電子制御装置100は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
電子制御装置100には、図2に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを表すエンジン回転速度センサからの信号、出力歯車24の回転速度NOUT(以下、「出力回転速度NOUT」という)に対応する車速Vを表す車速センサからの信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを表す信号、車両6の前後加速度Gを表す信号、各車輪(すなわち駆動輪40に従動輪を加えた各車輪)の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、「第1電動機回転速度NM1」という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、「第2電動機回転速度NM2」という)を表す信号、蓄電装置56の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、シフトレバー44の操作位置(操作ポジション)POPEを検出する為の位置センサであるレバー操作位置センサ48からの操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号、運転者により操作されて動力伝達装置10のシフトポジションPSHをパーキングポジション(Pポジション)以外の非PポジションからPポジションへ切り替える為のPスイッチ46におけるスイッチ操作を表すPスイッチ信号、アップシフト検出スイッチ80からのアップシフトパドル76Uが操作されたことを表す信号、ダウンシフト検出スイッチ82からのダウンシフトパドル76Dが操作されたことを表す信号等が、それぞれ供給される。なお、以下の説明において、アップシフトパドル76Uとダウンシフトパドル76Dとを特に区別しない場合には単にパドル76と呼ぶ。
また、電子制御装置100からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図5参照)への制御信号例えばエンジン14の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、各電動機M1,M2の作動を指令する指令信号、車両走行に関わる車両情報を運転者に明示するために車内の運転者が視認し易い位置に設置された車両情報表示装置52に現在の車速Vを表示するための車速表示制御指令信号、上記車両情報表示装置52にシフトポジションPSHの切替状態を表示するためのシフトポジション表示制御指令信号、Pロックの作動中(パーキングロック状態、Pロック状態)すなわちシフトポジションPSHがPポジションにあることを点灯により明示する為のロック表示ランプとしてのPポジションインジケータランプ50を作動させてPロック状態を表示する為のパーキングロック表示制御指令信号等が、それぞれ出力される。なお、Pポジションインジケータランプ50は、前記車両情報表示装置52の作動(点灯/消灯)とは連動せずに作動させられる表示ランプであって、例えばPスイッチ46に設けられている。
図3は、動力伝達装置10において複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置(操作装置)としてのシフト操作装置42の一例を示す図である。このシフト操作装置42は、例えば運転席の近傍に配設され、複数の操作ポジションPOPEへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー44と、レバー操作位置センサ48(図2参照)とを備えている。また、本実施例のシフト操作装置42は、動力伝達装置10のシフトポジションPSHをパーキングポジション(Pポジション)としてパーキングロックする為のモーメンタリ式の操作子としてのPスイッチ46をシフトレバー44の近傍に別スイッチとして備えている。
シフトレバー44は、図3に示すように車両6の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つの操作ポジションPOPEであるR操作ポジション(R操作位置)、N操作ポジション(N操作位置)、D操作ポジション(D操作位置)と、それに平行に配列されたM操作ポジション(M操作位置)、S操作ポジション(S操作位置)とへそれぞれ操作されるようになっており、シフト操作装置42は、操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号を電子制御装置100へ出力する。また、シフトレバー44は、R操作ポジションとN操作ポジションとD操作ポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、M操作ポジションとS操作ポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、更に、N操作ポジションとM操作ポジションとの相互間で上記縦方向に直交する車両の横方向に操作可能とされている。
Pスイッチ46は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者等のユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号を電子制御装置100へ出力する。例えば動力伝達装置10のシフトポジションPSHが非PポジションにあるときにPスイッチ46が押されると、車両6が略停止しているなどの所定の条件が満たされていれば、電子制御装置100によりシフトポジションPSHがPポジションとされる。このPポジションは、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断され、且つ、よく知られたパーキングロック装置により駆動輪40の回転を機械的に阻止するパーキングロックが実行される駐車ポジションである。また、このPスイッチ46にはPポジションインジケータランプ50が内蔵されており、Pポジションインジケータランプ50はシフトポジションPSHがPポジションとされた場合に点灯される。
シフト操作装置42のM操作ポジションはシフトレバー44の初期位置(ホームポジション)であり、M操作ポジション以外の操作ポジションPOPE(R,N,D,S操作ポジション)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー44を解放すればすなわちシフトレバー44に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー44はM操作ポジションへ戻るようになっている。シフト操作装置42が各操作ポジションPOPEへシフト操作された際には、電子制御装置100により操作ポジションPOPEに対応したシフトレバー位置信号に基づいてそのシフト操作後の操作ポジションPOPEに対応したシフトポジションPSHに切り替えられると共に、現在のシフトポジションPSHすなわち動力伝達装置10のシフトポジションPSHの状態が車両情報表示装置52に表示される。
各シフトポジションPSHについて説明すると、シフトレバー44がR操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるRポジションは、車両を後進させる駆動力が駆動輪40に伝達される後進走行ポジションである。また、シフトレバー44がN操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるニュートラルポジション(Nポジション)は、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジションである。また、シフトレバー44がD操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるDポジションは、車両6を前進させる駆動力が駆動輪40に伝達される前進走行ポジションである。例えば、電子制御装置100は、シフトポジションPSHがPポジションであるときに、パーキングロックを解除する所定の操作ポジションPOPE(具体的には、R操作ポジション、N操作ポジション、又はD操作ポジション)へシフト操作されたと判断した場合には、ブレーキオン状態BONであるなどの所定の条件が満たされていれば、前記パーキングロック装置を作動させてパーキングロックを解除すると共に、上記シフト操作後の操作ポジションPOPEに対応したシフトポジションPSHへ切り換える。
また、シフトレバー44がS操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるSポジションは、Dポジションにおいて例えば第2電動機M2に回生トルクを発生させる回生制動などによりエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪40の回転を減速させる減速前進走行ポジション(エンジンブレーキレンジ)である。従って、電子制御装置100は、現在のシフトポジションPSHがDポジション以外のシフトポジションであるときにシフトレバー44がS操作ポジションへシフト操作されてもそのシフト操作を無効とし、DポジションであるときのみS操作ポジションへのシフト操作を有効とする。例えば、Pポジションであるときに運転者がS操作ポジションへシフト操作したとしてもシフトポジションPSHはPポジションのまま継続される。
本実施例のシフト操作装置42では、シフトレバー44に作用する外力が無くなればM操作ポジションへ戻されるので、シフトレバー44の操作ポジションPOPEを視認しただけでは選択中のシフトポジションPSHを認識することは出来ない。そのため、運転者の見易い位置に車両情報表示装置52が設けられており、選択中のシフトポジションPSHがPポジションである場合も含めて車両情報表示装置52(図2参照)に表示されるようになっている。
選択中のシフトポジションPSHがDポジションである場合において、基本的には、車両6の走行モード(変速モード)は、車両6の走行状態に応じて自動的に第1遊星歯車装置20の差動状態およびエンジン回転速度Neが制御される自動変速モードであるが、エンジン回転速度Neの下限値であるエンジン下限回転速度NLeを乗員の手動操作に応じて段階的に変更する手動変速モード(シーケンシャルモード)に選択的に切り替えられる。この手動変速モードでは、上記エンジン下限回転速度NLeの制限によりエンジン回転速度Neが変化させられることによって、動力伝達装置10の仮想的な手動変速が実現される。その動力伝達装置10の仮想的な手動変速では、エンジン下限回転速度NLeを引き上げることがダウンシフトに相当し、エンジン下限回転速度NLeを引き下げることがアップシフトに相当する。上記手動変速モードに切り替えられると、例えば、手動変速モードであることと現在の仮想的な変速段とが、乗員(運転者)の見易い位置に表示される。
図4は、乗員(運転者)が車両6の進行方向を操縦するための操舵装置70を示す図であり、図4(a)は操舵装置70の正面図であり、図4(b)は操舵装置70の側面図である。操舵装置70は車両6に設けられており、車体に対し回転不可能に固定されたステアリングコラム72と、そのステアリングコラム72の乗員側に配置されステアリングコラム72に対して回転可能なステアリングホイール74とを備えている。乗員はステアリングホイール74を回転させることにより車両6の進行方向を操縦できる。
また、図4に示すように、乗員に操作される1対のパドルスイッチであるアップシフトパドル76U及びダウンシフトパドル76Dが、ステアリングホイール74の近傍であってステアリングコラム72に設けられている。アップシフトパドル76Uは、前記手動変速モードの選択時において、操作毎にエンジン下限回転速度NLeを引き下げるために乗員に操作される手動操作部材であり、ダウンシフトパドル76Dは、前記手動変速モードの選択時において、操作毎にエンジン下限回転速度NLeを引き上げるために乗員に操作される手動操作部材である。アップシフトパドル76Uおよびダウンシフトパドル76Dはそれぞれ、先端部を手前側(運転者側)に引くように操作することで、その先端部が基端部を支点にして回動し、その回動操作力が解除されるとスプリング等により自動的に元の位置へ復帰するように構成されている。なお、アップシフトパドル76Uの手前側への操作はアップシフト検出スイッチ80により検出され、また、ダウンシフトパドル76Dの手前側への操作はダウンシフト検出スイッチ82により検出される。
図5は、電子制御装置100に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5に示すように、電子制御装置100は、ハイブリッド制御部としてのハイブリッド制御手段102と、手動操作検出部としての手動操作検出手段104と、変速モード切替部としての変速モード切替手段106と、変速モード判断部としての変速モード判断手段110と、自動解除判断部としての自動解除判断手段112とを備えている。そして、ハイブリッド制御手段102は、手動変速モード制御部としての手動変速モード制御手段108を備えている。
図5において、ハイブリッド制御手段102は、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて、動力伝達装置10の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力Pe*を算出し、その目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度Neとエンジン14の出力トルクTe(エンジントルクTe)となるようにエンジン14を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。そして、それと共に、エンジン出力Peの目標値である上記目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、動力伝達装置10の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。なお、ハイブリッド制御手段102は、上記のように目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるようにエンジン14を制御するが、その詳細については後述する。
ハイブリッド制御手段102は、上記第1電動機M1の発電量を制御する際、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン14の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン14の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から出力歯車24へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン14の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。前記蓄電装置56は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであって、第1電動機M1及び第2電動機M2に電力を供給し且つそれらの各電動機M1,M2から電力の供給を受けることが可能な電気エネルギ源、すなわち、第1電動機M1と第2電動機M2とのそれぞれに対し電力授受可能な電気エネルギ源ある。
また、ハイブリッド制御手段102は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、動力伝達装置10の電気的CVT機能によって、例えば、第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度Neを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。つまり、ハイブリッド制御手段102は、第1遊星歯車装置20を介して入力軸18(すなわちエンジン14の出力軸)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸18に動力伝達可能な駆動装置として機能させることで、第1電動機M1にエンジン14を回転駆動させる。例えば、ハイブリッド制御手段102は車両走行中にエンジン回転速度Neを引き上げる場合には、車速V(駆動輪40)に拘束される出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
また、ハイブリッド制御手段102は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64によって電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン14の出力制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段102は、アクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、上記エンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段102による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段102は、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置56からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを車両6の駆動力源とするモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段102によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTe域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
ハイブリッド制御手段102は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、動力伝達装置10の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段102は、EV走行時には、エンジン14の運転を単に停止させるのではなく、エンジン14の回転も停止させる。
また、ハイブリッド制御手段102は、車両停止中やEV走行中にエンジン14の始動を行うエンジン始動制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段102は、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち、第1電動機M1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度Neを完爆可能な所定回転速度Ne’以上に引き上げると共に、所定回転速度Ne’以上にて例えばアイドル回転速度以上の自律回転可能なエンジン回転速度Neにて燃料噴射装置66により燃料を供給(噴射)し点火装置68により点火してエンジン14を始動する。
また、ハイブリッド制御手段102は、エンジン14を駆動力源とするエンジン走行中には、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪40にトルクを付与することにより、エンジン14の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
また、ハイブリッド制御手段102は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、動力伝達装置10がトルクの伝達を不能な状態すなわち動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ第2電動機M2を無負荷状態として動力伝達装置10からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段102は、電動機M1、M2を無負荷状態とすることにより動力伝達装置10をニュートラル状態とすることが可能である。
また、ハイブリッド制御手段102は、アクセルオフの車両減速走行時や制動時には車両の運動エネルギ、すなわち、駆動輪40から第2電動機M2の側へ伝達される逆駆動力により、第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その第2電動機M2の発電による電気エネルギをインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する所謂回生制動を実行する回生ブレーキ制御手段として機能する。
ハイブリッド制御手段102が、目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるようにエンジン14を制御することを前述したが、このエンジン制御について以下に詳述する。本実施例では、ハイブリッド制御手段102は、走行中のエンジン動作の基準となる基準動作曲線LEFを予め記憶している。図6は、エンジン14の基準動作曲線LEFの一例を示した図である。例えば、基準動作曲線LEFは、運転性能と燃費性能とを両立するように実験的に予め設定された最適燃費率曲線である。ハイブリッド制御手段102は、エンジン制御においてエンジン駆動制御部すなわちエンジン駆動制御手段として機能して、エンジン14の動作点PEG(エンジン動作点PEG)が基準動作曲線LEFに沿うように目標エンジン出力Pe*に基づいて目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*を決定し、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをそれぞれ、その決定した目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とに一致させるようにエンジン14を動作させる。例えば、ハイブリッド制御手段102が基準動作曲線LEFから目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とを決定する際には、目標エンジン出力Pe*を示す点を連ねた等パワー曲線と基準動作曲線LEFとの交点が目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とを示すことになる。
本実施例では、動力伝達装置10のシフトポジションPSHがDポジションである場合の走行モードには自動変速モードと手動変速モードとがあり、ハイブリッド制御手段102は何れの走行モードでも上述のように基準動作曲線LEFに沿ってエンジン14を作動させるが、上記手動変速モードではエンジン下限回転速度NLeが設定される一方で、上記自動変速モードではエンジン下限回転速度NLeが解除される。次に、その手動変速モードでのエンジン制御について説明する。
手動操作検出手段104は、アップシフトパドル76Uおよびダウンシフトパドル76Dが操作されたことをアップシフト検出スイッチ80及びダウンシフト検出スイッチ82の検出信号からそれぞれ検出し、アップシフトパドル76Uおよびダウンシフトパドル76Dの各々が操作されたか否かを判断する。そのパドル76の操作には、パドル76が長押しされる長押操作と、その長押操作に該当しない操作すなわちパドル76が瞬間的に操作される瞬時操作とがある。そこで、手動操作検出手段104は、操作者の意思に合致して可及的に早く上記長押操作を判別できるように予め実験的に設定された長押判定時間を予め記憶している。そして、手動操作検出手段104は、パドル76の操作があった際には、パドル76の操作がその長押判定時間以上にわたって継続した場合には前記長押操作であると判断し、その一方で、パドル76の操作が上記長押判定時間の経過前に解除された場合には前記瞬時操作であると判断する。
変速モード切替手段106は、動力伝達装置10のシフトポジションPSHがDポジションである場合において、車両6の走行モードを前記自動変速モードと前記手動変速モードとに選択的に切り替える。例えば、変速モード切替手段106は、Dポジションの自動変速モードにおいて、自動変速モードを手動変速モードに切り替える予め定められた手動変速モード選択操作が乗員によってなされた場合には、走行モードを手動変速モードに切り替える。その手動変速モード選択操作に特に限定はないが、本実施例の手動変速モード選択操作は、Dポジションの自動変速モードにおいてアップシフトパドル76Uまたはダウンシフトパドル76Dが操作されることであり、変速モード切替手段106は、手動操作検出手段104の判断に基づいて手動変速モード選択操作の有無を判断する。上記手動変速モード選択操作は本発明の手動設定操作に対応する。
その一方で、変速モード切替手段106は、Dポジションの手動変速モードにおいて、手動変速モードを自動変速モードに切り替える予め定められた自動変速モード選択操作が乗員によってなされた場合には、走行モードを自動変速モードに切り替える。その自動変速モード選択操作に特に限定はないが、本実施例の自動変速モード選択操作は、Dポジションの手動変速モードにおいてアップシフトパドル76Uが長押操作されることと、シフトレバー44がD操作ポジションに操作されることとの何れかがなされることであり、変速モード切替手段106は、手動操作検出手段104の判断に基づいてアップシフトパドル76Uの長押操作の有無を判断する。上記自動変速モード選択操作は、言い換えれば手動変速モード解除操作であり、本発明の手動解除操作に対応する。
更に、変速モード切替手段106は、Dポジションの手動変速モードにおいて、前記自動変速モード選択操作がなされなくても前記走行モードを自動変速モードに自動的に切り替えることがある。具体的に、変速モード切替手段106は、予め定められた手動変速モード解除条件が成立した場合に、走行モードを自動変速モードに切り替える。その手動変速モード解除条件は、乗員が手動変速モードを継続する意思を喪失したと推定される場合に成立するように定められておれば特に限定はないが、本実施例では、上記手動変速モード解除条件は、アップシフトパドル76U及びダウンシフトパドル76Dの何れも操作されず且つアクセル開度Accが予め定められたアクセル開度判定値LAcc以上である走行状態が、予め定められた判定時間TIMERL以上継続した場合に成立する。例えば、上記アクセル開度判定値LAccは乗員がエンジンブレーキ(逆駆動力の発生)を必要としていないことを判断できるように実験的に定められており、また、判定時間TIMERLは、乗員が手動変速モードを継続する意思を喪失したことが推定できるように実験的に定められている。上記手動変速モード解除条件は本発明の自動解除条件に対応する。
ハイブリッド制御手段102は、変速モード切替手段106が設定した車両6の走行モードに従ってエンジン14を作動させる。具体的には、ハイブリッド制御手段102は、前述したように基準動作曲線LEFに沿ってエンジン14を作動させるが、ハイブリッド制御手段102が備える手動変速モード制御手段108は、変速モード切替手段106が前記走行モードを自動変速モードから手動変速モードに切り替えた場合には、前記エンジン下限回転速度NLeを設定すると共に、基準動作曲線LEFよりも優先して、第1遊星歯車装置20の差動状態およびスロットル弁開度θTHを制御することによりエンジン回転速度Neをエンジン下限回転速度NLe以上に維持する。その一方で、手動変速モード制御手段108は、変速モード切替手段106が前記走行モードを手動変速モードから自動変速モードに切り替えた場合には、上記エンジン下限回転速度NLeの設定を解除する。すなわち、上記手動変速モードとはエンジン下限回転速度NLeが設定されている走行状態であり、上記自動変速モードとはエンジン下限回転速度NLeが設定されていない走行状態である。
また、変速モード切替手段106が前記走行モードを自動変速モードから手動変速モードに切り替えた場合に、手動変速モード制御手段108は、上述したようにエンジン下限回転速度NLeを設定するが、詳細には、エンジン回転速度Neを逐次検出しており、その手動変速モードへの切替前すなわち前記手動変速モード選択操作前のエンジン回転速度Ne以上にエンジン下限回転速度NLeを設定する。また、前記手動変速モード中には、ダウンシフトパドル76Dが前記瞬時操作される毎に動力伝達装置10の前記仮想的な変速段が低車速側に変更される一方で、アップシフトパドル76Uが前記瞬時操作される毎に上記仮想的な変速段が高車速側に変更されるが、手動変速モード制御手段108は、上記仮想的な変速段の変更すなわち仮想的な変速に合わせて2つの手動変速時制御を行う。第1の手動変速時制御は、エンジン下限回転速度NLeをパドル76が操作される毎に段階的に変更することである。例えば、第1の手動変速時制御を行うため、図7に示すように、手動変速モード時の仮想的な変速段が低車速側であるほど或いは車速Vが高いほどエンジン下限回転速度NLeが高く設定される関係すなわちエンジン下限回転速度マップが予め設定されている。そして、手動変速モード制御手段108は、第1の手動変速時制御では、図7のエンジン下限回転速度マップから車速Vに基づきエンジン下限回転速度NLeを設定する。図7においてS1〜S5は上記仮想的な変速段をそれぞれ示しており、例えばS1は仮想的な変速段の第1速(最も低車速側の変速段)でありS5は第5速(最も高車速側の変速段)である。例えば図7において車速VがV1である場合にエンジン下限回転速度NLeは、仮想的な第3速ではNLe3に設定され、仮想的な第2速ではNLe2(>NLe3)に設定され、仮想的な第1速ではNLe1(>NLe2)に設定される。すなわち、手動変速モード制御手段108は、ダウンシフトパドル76Dが前記瞬時操作される毎にエンジン下限回転速度NLeを段階的に引き上げる一方で、アップシフトパドル76Uが前記瞬時操作される毎にエンジン下限回転速度NLeを段階的に引き下げる。そして、手動変速モード制御手段108は、前述したように自動変速モードから手動変速モードへの切替えの際にその切替前のエンジン回転速度Ne以上にエンジン下限回転速度NLeを設定するので、例えばその切替えの際には、図7のエンジン下限回転速度マップから車速Vに基づき、エンジン下限回転速度NLeが上記切替前のエンジン回転速度Ne以上となる仮想的な変速段のうち最も高車速側の変速段が選択される。
また、前記2つの手動変速時制御のうちの第2の手動変速時制御は、エンジン14の無負荷運転状態すなわちアクセル開度Accが零であるアクセルオフの走行状態に駆動輪40を制動する方向に発生させる逆駆動力すなわちエンジンブレーキ力を、パドル76が操作される毎に段階的に変更することである。例えば、手動変速モード制御手段108は、上記第2の手動変速時制御では、アクセルオフの走行状態において、第1遊星歯車装置20の差動状態を制御し第2電動機M2を回生作動させることによって上記エンジンブレーキ力を図8に従って発生させる。図8は、上記エンジンブレーキ力と車速Vとの予め設定された関係であるエンジンブレーキ力マップを示しており、図8の横軸には車速Vが表され縦軸にはエンジンブレーキ力とは正負が逆である駆動力が表されており、図8中のS1〜S5は図7と同じ意味でありDは自動変速モード時を示している。そのエンジンブレーキ力マップでは、上記エンジンブレーキ力は、手動変速モード時の仮想的な変速段が低車速側であるほど或いは車速Vが高いほど大きく設定される。従って図8から判るように、手動変速モード制御手段108は、例えば車速Vが変わらなければ、アクセルオフの走行状態でダウンシフトパドル76Dが前記瞬時操作される毎に上記エンジンブレーキ力を段階的に引き上げる一方で、アップシフトパドル76Uが前記瞬時操作される毎に上記エンジンブレーキ力を段階的に引き下げる。
ところで、前述したように、手動変速モード制御手段108は、変速モード切替手段106が前記走行モードを手動変速モードから自動変速モードに切り替えた場合にはエンジン下限回転速度NLeの設定を解除するが、手動変速モード中にはエンジン回転速度Neをエンジン下限回転速度NLe未満に低下しないように制限しているので、エンジン回転速度Neは上記エンジン下限回転速度NLeの設定解除に伴い低下することがある。例えば図7から判るように、手動変速モードの解除前に選択されていた仮想的な変速段が低車速側であるほど、エンジン下限回転速度NLeの設定解除に伴うエンジン回転速度Neの低下は発生し易い。そのエンジン回転速度Neの低下の際の駆動力変化について図9を用いて説明する。
図9は、そのエンジン下限回転速度NLeの設定解除時における第1遊星歯車装置20の差動状態を説明するための共線図である。図9の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に、第1電動機M1と一体的に回転する第1サンギヤS1、エンジン14と一体的に回転する第1キャリヤCA1、出力歯車24と一体的に回転する第1リングギヤR1のそれぞれの相対回転速度を示すものである。図9に示すように、エンジントルクTeは、それに対抗する第1電動機M1の出力トルクTM1(以下、第1電動機トルクTM1という)が発生させられることによって出力歯車24に伝達される。この出力歯車24に伝達されるトルクを直行トルクTepという。直行トルクTepと第2電動機M2の出力トルクTM2(以下、第2電動機トルクTM2という)とが併せられて駆動輪40に伝達されることにより駆動力が発生する。また、直行トルクTepは下記式(1)により算出される。下記式(1)において、IM1は第1電動機M1の慣性モーメントであり、ωM1は第1電動機M1の角速度であり、dωM1/dtは第1電動機M1の角加速度すなわち回転速度変化であり、ρは第1遊星歯車装置20のギヤ比であり、そのギヤ比ρは第1リングギヤR1の歯数をZR1とし第1サンギヤS1の歯数をZS1とすれば下記式(2)で算出される。
Tep=−1/ρ×(TM1−IM1×dωM1/dt) ・・・(1)
ρ=ZS1/ZR1 ・・・(2)
エンジン回転速度Neがエンジン下限回転速度NLeの設定解除に伴い低下した場合には、図9から判るように、出力歯車24の回転速度は車速Vに拘束されているためエンジン回転速度Neの低下と共に第1電動機回転速度NM1すなわち上記角速度ωM1も低下する。そして、そのときのエンジン回転速度Ne変化が急速であるほど上記式(1)のdωM1/dtは負方向に一時的にその絶対値が大きくなるので、上記式(1)から判るように、直行トルクTepがそのエンジン回転速度Ne変化に伴い一時的に落ち込む。すなわち、駆動力は直行トルクTepに基づいているので、上記エンジン下限回転速度NLeの設定解除時にエンジン回転速度Neの低下が急であれば、駆動力が一時的に落ち込む駆動力抜けが発生する。また、前述したように、乗員による前記自動変速モード選択操作がなされることなくエンジン下限回転速度NLeの設定が自動的に解除されることがあるので、そのようにエンジン下限回転速度NLeの設定が自動的に解除され上記駆動力抜けが発生すれば、乗員はその駆動力抜けに対し違和感を覚える可能性がある。そこで、本実施例では、エンジン下限回転速度NLeの設定解除時に、上記駆動力抜けに起因した乗員の違和感を抑える制御機能が備えられており、それについて以下に説明する。
変速モード判断手段110は、動力伝達装置10のシフトポジションPSHがDポジションである場合において、車両6の走行モードが前記手動変速モードであるか否かを判断する。具体的には、変速モード切替手段106が手動変速モードを選択すれば上記走行モードが前記手動変速モードであると判断し、変速モード切替手段106が自動変速モードを選択すれば前記自動変速モードであると判断する。
自動解除判断手段112は、変速モード判断手段110が前記走行モードが手動変速モードであることを肯定する判断を否定する判断に切り替えた場合において、変速モード切替手段106による手動変速モードから自動変速モードへの切替えすなわち手動変速モードの解除が自動的なものであるのか否かを判断する。具体的には、前記手動変速モード解除条件が成立したことによる手動変速モードの解除は、手動変速モードの自動的な解除である。一方で、前記自動変速モード選択操作がなされたことによる手動変速モードの解除は、手動変速モードの自動的な解除ではなく手動解除である。
手動変速モード制御手段108は、前述したように、変速モード切替手段106が前記走行モードを手動変速モードから自動変速モードに切り替えた場合にエンジン下限回転速度NLeの設定を解除するが、その際、上記自動解除判断手段112の判断を加味してエンジン制御を行う。具体的に言えば、手動変速モード制御手段108は、自動解除判断手段112が手動変速モードの解除が自動的なものであると判断した場合には、上記エンジン下限回転速度NLeの設定解除に伴いエンジン回転速度Neを低下させる際に、エンジン回転速度Neを予め定められたエンジン回転速度変化勾配ΔNeよりも緩やかに低下させる回転速度緩変化処理(回転速度緩変化制御)を実行する。すなわち、エンジン下限回転速度NLeの設定を解除しエンジン回転速度Neを低下させる場合には上記回転速度緩変化処理を実行する。一方で、手動変速モード制御手段108は、自動解除判断手段112が手動変速モードの解除が自動的なものであると判断しなかった場合すなわち前記手動解除の場合には、上記回転速度緩変化処理を実行しても差し支えないが、本実施例ではその回転速度緩変化処理を実行せずに直ちにエンジン回転速度Neを低下させる。
このようにエンジン下限回転速度NLeの設定解除方法には2種類あり、手動変速モード制御手段108は、エンジン下限回転速度NLeの設定解除の際には、前記手動変速モード解除操作(自動変速モード選択操作)がなされた場合にエンジン下限回転速度NLeの設定を解除しエンジン回転速度Neを直ちに低下させる手動解除制御を実行する一方で、上記手動変速モード解除操作がなされず且つ前記手動変速モード解除条件が成立した場合にエンジン下限回転速度NLeの設定を解除すると共に前記回転速度緩変化処理を実行する自動解除制御を実行すると言える。
なお、上記回転速度緩変化処理における前記エンジン回転速度変化勾配ΔNeは、前記駆動力抜けを乗員に感じさせずにエンジン回転速度Neを低下させることができるように実験的に定められており、更に、上記手動解除制御時と比較してエンジン回転速度Neを緩やかに低下させることができるように定められている。そのエンジン回転速度変化勾配ΔNeは、エンジン回転速度Neの単位時間当たりの低下量で定められている。また、上記回転速度緩変化処理を図10により説明できる。
図10は、エンジン下限回転速度NLeの設定解除に伴いエンジン回転速度Neがそのエンジン下限回転速度NLeから自動変速モード時の目標エンジン回転速度Ne*であるNe1*にまで低下させられる場合を例として、前記自動解除制御時に実行される上記回転速度緩変化処理を説明するためのタイムチャートである。図10のt1時点は手動変速モードから自動変速モードへの自動的な切替時すなわちエンジン下限回転速度NLeの自動的な設定解除時であり、t2時点は前記自動解除制御における前記回転速度緩変化処理の終了時である。仮に手動変速モード制御手段108が前記手動解除制御を実行するとすれば、t1時点から目標エンジン回転速度Ne*がNe1*とされるので、手動変速モード制御手段108は、t1時点までエンジン下限回転速度NLeに維持していたエンジン回転速度Neを、図10に破線で示すようにt1時点以後直ちにその目標エンジン回転速度Ne1*に向けて低下させる。しかし、手動変速モード制御手段108は、前記自動解除制御時にはt1時点からt2時点にかけて前記回転速度緩変化処理を実行し、目標エンジン回転速度Ne*はt2時点でNe1*に至るので、図10に実線で示すように、エンジン回転速度Neはt1時点からt2時点にかけてエンジン下限回転速度NLeから上記目標エンジン回転速度Ne1*に向けてゆっくりと低下し、それにより、前記式(1)における第1電動機M1の角加速度dωM1/dtの絶対値が一時的に大きくなることが抑制される。この図10のt1時点とt2時点との間の実線で示されるエンジン回転速度Ne変化と破線で示されるエンジン回転速度Ne変化とを比較すれば判るように、前記回転速度緩変化処理は、前記手動解除制御時と比較してエンジン回転速度Neを緩やかに低下させるものである。
図11は、電子制御装置100の制御作動の要部、すなわち、動力伝達装置10のシフトポジションPSHがDポジションであるときにエンジン下限回転速度NLeが設定され或いはその設定が解除される制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。例えば、図11のフローチャートはシフトポジションPSHがDポジションであるときに実行される。
先ず、変速モード判断手段110に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、車両6の走行モードが前記手動変速モードすなわちシーケンシャルモードであるか否かが判断される。変速モード切替手段106が手動変速モードを選択すれば上記走行モードは手動変速モードであると判断され、変速モード切替手段106が自動変速モードを選択すれば自動変速モードであると判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、上記走行モードが手動変速モードである場合には、SA2に移る。一方、このSA1の判断が否定された場合には、SA3に移る。
手動変速モード制御手段108に対応するSA2においては、エンジン下限回転速度NLeが設定される。また、そのエンジン下限回転速度NLeは、ダウンシフトパドル76Dが前記瞬時操作される毎に段階的に引き上げられる一方で、アップシフトパドル76Uが前記瞬時操作される毎に段階的に引き下げられる。
自動解除判断手段112に対応するSA3においては、変速モード切替手段106による手動変速モードの解除が自動的なものであるのか否か、すなわち、手動変速モードが自動的に解除されたか否かが判断される。その自動的に解除される手動変速モードは、シフトポジションPSHがDポジションであるときにパドル76の操作に応じて動力伝達装置10の仮想的な手動変速を行う走行モードであるので、図11に示すようにDパドルと呼んでもよい。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、上記手動変速モードが自動的に解除された場合には、SA4に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合には、SA5に移る。
手動変速モード制御手段108に対応するSA4においては、エンジン下限回転速度NLeの設定が解除され、それと共に、エンジン回転速度Neを低下させる際に前記回転速度緩変化処理が実行される。そして、その回転速度緩変化処理の実行終了後には、エンジン下限回転速度NLeが設定されていない走行状態が継続する。
手動変速モード制御手段108に対応するSA5においては、エンジン下限回転速度NLeの設定が解除され、上記回転速度緩変化処理が実行されることなく直ちにエンジン回転速度Neが低下させられる。その後、エンジン下限回転速度NLeが設定されていない走行状態が継続する。
本実施例によれば、手動変速モード制御手段108は、乗員による所定の前記手動変速モード選択操作(手動設定操作)がなされた場合に、エンジン下限回転速度NLeを設定する。そして、手動変速モード制御手段108は、エンジン下限回転速度NLeの設定を解除しエンジン回転速度Neを低下させる場合には、エンジン回転速度Neを予め定められたエンジン回転速度変化勾配ΔNeよりも緩やかに低下させる前記回転速度緩変化処理を実行する。従って、エンジン下限回転速度NLeの設定解除時においてエンジン回転速度Neの変化が緩やかにされるので、その分、第1電動機M1の回転速度変化も緩やかになる。すなわち、前記回転速度緩変化処理が実行されない場合と比較して、第1電動機M1の回転加速度(前記式(1)のdωM1/dtに相当)に応じて発生するイナーシャが零に近付くので、前記駆動力抜けを抑制することが可能である。そして、その駆動力抜けに起因した違和感を乗員に与える可能性が低減される。
また、本実施例によれば、(a)前記手動操作部材であるアップシフトパドル76U及びダウンシフトパドル76Dが操舵装置70に設けられており、(b)変速モード制御手段108は、エンジン下限回転速度NLeが設定されている走行状態すなわち手動変速モードでは、アップシフトパドル76Uまたはダウンシフトパドル76Dが前記瞬時操作される毎にエンジン下限回転速度NLeを段階的に変更し、(c)例えば、前記手動変速モード選択操作(手動設定操作)とは、Dポジションの自動変速モードにおいてアップシフトパドル76Uまたはダウンシフトパドル76Dが乗員に操作されることである。従って、乗員は、既に設定されているエンジン下限回転速度NLeを切り替えるための操作、すなわち動力伝達装置10の仮想的な手動変速を行う乗員による操作と同様にして、前記手動変速モード選択操作を行うことができるので、別個の操作を必要とせず、簡便にその手動変速モード選択操作を行うことが可能である。また、アップシフトパドル76U及びダウンシフトパドル76Dは操舵装置70に設けられているので、乗員(運転者)は、エンジン下限回転速度NLeの設定および切替えを、車両6の進行方向の操縦をしながら容易に行うことが可能である。
また、本実施例によれば、前記手動解除制御は、前記手動変速モード解除操作(手動解除操作)がなされた場合にエンジン下限回転速度NLeの設定を解除しエンジン回転速度Neを直ちに低下させるものである。一方で、前記自動解除制御は、上記手動変速モード解除操作がなされず且つ前記手動変速モード解除条件(自動解除条件)が成立した場合にエンジン下限回転速度NLeの設定を解除すると共に前記回転速度緩変化処理を実行するものである。そして、上記自動解除制御時において行われる上記回転速度緩変化処理は、上記手動解除制御時と比較してエンジン回転速度Neを緩やかに低下させるものである。ここで、上記手動解除制御時には乗員による手動変速モード解除操作が伴っているので、乗員は、前記駆動力抜けが発生したとしてもそれを自らの操作に起因したものと認識し違和感を覚えない。その一方で、上記自動解除制御時には自動的にエンジン下限回転速度NLeの設定が解除されるので、乗員は、前記駆動力抜けが発生すればそれに対して違和感を覚え易い。また、燃費向上の観点からはエンジン回転速度Neを高める必要が無くなれば早期にエンジン下限回転速度NLeの制限を外してエンジン回転速度Neを低下させるのが好ましい。従って、上記手動解除制御時には、エンジン回転速度は、上記自動解除制御時と比較して早期に低下させられるので、乗員に違和感を与えることを回避しつつ車両の燃費向上を図ることが可能である。また、上記自動解除制御時には、エンジン回転速度Neを低下させる際に前記回転速度緩変化処理が実行されるので、前記駆動力抜けが抑制される。
また、本実施例によれば、前記手動変速モード解除条件(自動解除条件)は、アップシフトパドル76U及びダウンシフトパドル76Dの何れも操作されず且つアクセル開度Accが予め定められたアクセル開度判定値LAcc以上である走行状態が、予め定められた判定時間TIMERL以上継続した場合に成立する。従って、乗員が前記手動変速モード選択操作をした後にエンジン下限回転速度NLeの設定を継続する意思すなわち前記手動変速モードを継続する意思を喪失したと推定される場合に上記手動変速モード解除条件が成立するようにできるので、乗員の意思に即してエンジン下限回転速度NLeの設定を自動的に解除することが可能である。
また、本実施例によれば、手動変速モード制御手段108は、乗員による前記手動変速モード選択操作がなされた場合に、その手動変速モード選択操作前のエンジン回転速度Ne以上にエンジン下限回転速度NLeを設定する。従って、乗員はその手動変速モード選択操作によりエンジン回転速度Neをその操作前に対して直ちに高めることができるので、アクセル踏込時の加速応答性を迅速に向上させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の実施例において、エンジン回転速度変化勾配ΔNeは、エンジン回転速度Neの単位時間当たりの低下量で定められているが、エンジン回転速度Neを低下させる前記回転速度緩変化処理の実行時間、具体的に示せば図10のタイムチャートにおけるt1時点からt2時点までの経過時間で定められていても差し支えない。
また、前述の実施例の図4では、アップシフトパドル76及びダウンシフトパドル78がステアリングコラム72に設けられているが、パドル型の手動操作部材である必要はなく、例えば、アップシフトパドル76及びダウンシフトパドル78に替えて、アップシフトパドル76に相当するアップシフトボタンとダウンシフトパドル78に相当するダウンシフトボタンとがステアリングホイール74に設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例では、前記手動変速モードにおいてエンジン下限回転速度NLeが設定される一方で、その手動変速モードから前記自動変速モードへの切替えによってエンジン下限回転速度NLeの設定が解除されるが、前記走行モード(変速モード)とは関係なく上記エンジン下限回転速度NLeが設定される場合があってもよい。更に、その走行モードとは関係なく上記エンジン下限回転速度NLeが設定された場合においてそのエンジン下限回転速度NLeの設定が解除される際に、前記回転速度緩変化処理が実行されることがあっても差し支えない。
また、前述の実施例において、手動変速モード選択操作は、Dポジションの自動変速モードにおいてアップシフトパドル76Uまたはダウンシフトパドル76Dが操作されることであるが、その操作に置き換えて或いはその操作の他に、それらパドル76以外の操作が上記手動変速モード選択操作であっても差し支えない。例えば、前記走行モードを切り替えるために乗員に押される押ボタンスイッチが、乗員である運転者が操作し易い位置に設けられており、その押ボタンスイッチの操作毎に上記走行モードが前記自動変速モードと前記手動変速モードとに交互に切り替えられ、手動変速モード選択操作は、Dポジションの自動変速モードにおいて上記押ボタンスイッチが押されることであっても差し支えない。
また、前述の実施例において、前記手動変速モードでエンジン下限回転速度NLeは、パドル76が前記瞬時操作される毎に段階的に変更されるが、そのエンジン下限回転速度NLeの設定後にそれが変更されることは、前記回転速度緩変化処理の効果を得る上で必須ではない。
また、前述の実施例の第1遊星歯車装置20において、第1キャリヤCA1はエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されているが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン14、第1電動機M1、出力歯車24は、それぞれ第1遊星歯車装置20の3つの回転要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第2遊星歯車装置22は出力歯車24と第2電動機M2との間に介装されているが、第2遊星歯車装置22が無く第2電動機M2が出力歯車24に直接連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は第1遊星歯車装置20のリングギヤR1に対し一体的に連結されているが、上記リングギヤR2の連結先は、上記リングギヤR1に限定されるものではなく、例えば第1遊星歯車装置20の第1キャリヤCA1に連結されていても差し支えない。また、上記リングギヤR2は、上記リングギヤR1ではなく第1遊星歯車装置20と駆動輪40との間の動力伝達経路のどこかに連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第2電動機M2は、車両用駆動装置8に備えられており、第2遊星歯車装置22等を介して前輪である駆動輪40に動力伝達可能に連結されているが、第2電動機M2が車両用駆動装置8に備えられていない車両構成も考え得る。例えば、車両用駆動装置8とは別個に第2電動機M2が設けられており、その第2電動機M2が後輪に動力伝達可能に連結されている車両構成も考え得る。
また、前述の実施例において、車両用駆動装置8は第2電動機M2と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部に第2遊星歯車装置22を備えているが、その第2遊星歯車装置22は、遊星歯車装置ではない1対の歯車から構成された歯車装置に置き換えられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、出力歯車24と駆動輪40との間の動力伝達経路に変速機は設けられていないが、その動力伝達経路に、手動変速機もしくは自動変速機が設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、変速モード切替手段106が前記走行モードを自動変速モードから手動変速モードに切り替えた場合に、手動変速モード制御手段108は、その手動変速モードへの切替前のエンジン回転速度Ne以上にエンジン下限回転速度NLeを設定するが、その手動変速モードへの切替え直後のエンジン下限回転速度NLeはその切替前のエンジン回転速度Ne以上でなくても差し支えない。例えば、自動変速モードから手動変速モードへの切替後に最初に選択される仮想的な変速段が予め一定の変速段に定められており、手動変速モードへの切替え直後のエンジン下限回転速度NLeは、図7のエンジン下限回転速度マップから車速Vに基づき設定されても差し支えない。
また前述の実施例においては、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、第1遊星歯車装置20はその変速比が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであるが、例えば第1遊星歯車装置20の変速比を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであってもよい。
また、前述の実施例の動力伝達装置10においてエンジン14はダンパー16を介して入力軸18に連結されているが、そのエンジン14と入力軸18の間にクラッチ等の動力断続装置が介装されていても差し支えない。
また、前述の実施例の図1において、第1電動機M1と第1サンギヤS1との間、及び、第2電動機M2と出力歯車24との間には上記動力断続装置は介装されていないが、それらの何れか一方又は両方において上記動力断続装置が介装されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第1遊星歯車装置20および第2遊星歯車装置22は何れもシングルプラネタリであるが、それらの一方または両方がダブルプラネタリであっても差し支えない。
また前述の実施例においては、第1遊星歯車装置20を構成する第1キャリヤ(第1回転要素)CA1にはエンジン14が動力伝達可能に連結され、第1サンギヤ(第2回転要素)S1には第1電動機M1が動力伝達可能に連結され、第1リングギヤ(第3回転要素)R1には駆動輪40への動力伝達経路が連結されているが、例えば、第1遊星歯車装置20が2つの遊星歯車装置に置き換えられて、その2つの遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、電動機、駆動輪が動力伝達可能に連結されており、その遊星歯車装置の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により有段変速と無段変速とに切換可能な構成であってもよい。
また、前述の実施例の第2電動機M2はエンジン14から駆動輪40までの動力伝達経路の一部を構成する出力歯車24に第2遊星歯車装置22を介して連結されているが、第2電動機M2がその出力歯車24に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して第1遊星歯車装置20にも連結可能とされており、第1電動機M1の代わりに第2電動機M2によって第1遊星歯車装置20の差動状態を制御可能とする動力伝達装置10の構成であってもよい。