JP5386839B2 - 冶金用フェロコークスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、石炭と鉄鉱石との混合物を成型して乾留して製造する冶金用フェロコークスの製造方法に関する。
原料石炭に粉鉄鉱石を配合し、この混合物を通常の室炉式コークス炉で乾留してフェロコークスを製造する技術としては、(a)石炭と粉鉄鉱石との粉混合物を室炉式コークス炉に装入する方法、(b)石炭と鉄鉱石を冷間、すなわち室温で成型し、その成型物を室炉式コークス炉に装入する方法などが検討されてきた(例えば、非特許文献1参照。)。しかし通常の室炉式コークス炉は珪石煉瓦で構成されているので、鉄鉱石を装入した場合に鉄鉱石が珪石煉瓦の主成分であるシリカと反応し、低融点のファイヤライト(2FeO・SiO2)が生成して珪石煉瓦の損傷を招く。このため室炉式コークス炉でフェロコークスを製造する技術は、工業的には実施されていない。
上記問題を回避するため、乾留後のコークスに鉄含有物質を含浸させて高反応性コークス(フェロコークス)を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、コークス中に鉄含有物質を含浸させるのが困難であり、内部まで鉄の濃度を上昇させるには時間がかかり、生産性を大幅に低下させてしまう。またハンドリング時の衝撃で含浸させた鉄含有物がはがれ落ちてしまい、効果が低下する等の問題が残されている。
近年、室炉式コークス製造法に替わるコークス製造方法として、連続式成型コークス製造法が開発されている。連続式成型コークス法では、乾留炉として、珪石煉瓦ではなくシャモット煉瓦にて構成される竪型シャフト炉を用い、石炭を冷間で所定の大きさに成型後、シャフト炉に装入し、循環熱媒ガスを用いて加熱することにより成型炭を乾留し、成型コークスを製造する。資源埋蔵量が豊富で安価な非微粘結炭を多量に使用しても、通常の室炉式コークス炉と同等の強度を有するコークスが製造可能なことが確認されているが、使用する石炭の粘結性が高い場合にはシャフト炉内で成型炭が軟化融着し、シャフト炉操業が困難になると共に変形や割れ等のコークス品質低下を招く。
連続式コークス製造法でのシャフト炉内での融着抑制のために、石炭に鉄鉱石を全体量の15〜40%となるように添加し、冷間で成型物を製造し、シャフト炉に装入する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法では、鉄鉱石には粘結性がないので、冷間の状態で成型物を製造するために高価なバインダーを添加する必要がある。そこで、原料としての石炭と鉄鉱石あるいは鉄原料を、加熱した熱間の状態で塊成型物に成型する方法も提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
特開2004−315664号公報 特開平6−65579号公報 特開2004−217914号公報 特開2005−53982号公報 燃料協会 「コークス技術年報」1958年、p.38
しかしながら、上記特許文献2〜4において、石炭と、鉄鉱石あるいは鉄原料とでは、乾留時における熱的挙動が異なることから、乾留後の強度低下が大きいという問題が残されている。
鉄鉱石と炭材との成型物を乾留してフェロコークスを製造する際、還元率の上昇とともに炭材が鉱石の還元に使用されるため、フェロコークス中に欠陥構造が発生し強度低下が顕著となる。また、成型物の乾留中に成型物同士の融着を抑制する必要があるので、鉱石比率が50mass%以下のフェロコークスを製造する場合には炭材として難溶融性炭材を配合する必要が生じる。難溶融性炭材はフェロコークスの強度向上に寄与しないため、難溶融性炭材を用いる場合は特に、高い還元率を維持しながらフェロコークスの強度を確保するのは困難である。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、炭材と鉄鉱石とからなる成型物を乾留してフェロコークスを製造する際に、鉄鉱石の還元が進行してもフェロコークス強度の低下が抑制される、冶金用フェロコークスの製造方法を提供することにある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、フェロコークス強度向上に寄与しない難溶融性炭材表面に鉄鉱石を被覆させることにより、主に難溶融性炭材に鉄鉱石還元に伴う欠陥構造を発生させ、フェロコークス強度向上に寄与する軟化溶融を示す易溶融性炭材には欠陥構造を極力発生させないことにより高強度の冶金用フェロコークスを得るものである。
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)炭材と鉄鉱石とからなる成型物を乾留してフェロコークスを製造する方法であって、前記炭材がギーセラープラストメータで測定される最高流動度が2ddpm未満である難溶融性炭材と最高流動度が2ddpm以上の易溶融性炭材とからなり、前記難溶融性炭材の表面を前記鉄鉱石で被覆し、該被覆された難溶融性炭材と前記易溶融性炭材とを混合して成型物を製造することを特徴とする冶金用フェロコークスの製造方法。
(2)難溶融性炭材と鉄鉱石とバインダーとをミキサーに投入して攪拌し、前記難溶融性炭材の表面を前記鉄鉱石で被覆し、さらに前記ミキサーに易溶融性炭材とバインダーとを投入して攪拌して成型物を製造することを特徴とする(1)に記載の冶金用フェロコークスの製造方法。
(3)難溶融性炭材と鉄鉱石とバインダーとを混練機で混練して前記難溶融性炭材の表面を前記鉄鉱石で被覆し、該被覆された難溶融性炭材と易溶融性炭材とバインダーとをミキサーに投入して攪拌して成型物を製造することを特徴とする(1)に記載の冶金用フェロコークスの製造方法。
本発明によれば、難溶融性炭材を用いてフェロコークスを製造する場合であっても、高強度のフェロコークスが得られる。
これにより、フェロコークスを高炉で使用した場合に、CO2ガスとの反応より発生する粉の発生を抑制し、フェロコークス使用による圧力損失の上昇を抑制しつつ、フェロコークスとCO2ガスとの反応速度の増大により熱保存帯温度を低下させることができ、高炉の還元材比を低減することが可能となる。
本発明は、炭材と鉄鉱石とからなる成型物を乾留してフェロコークスを製造する方法であって、炭材が難溶融性炭材と易溶融性炭材とからなり、鉄鉱石が難溶融性炭材を被覆した状態で易溶融性炭材と混合して成型物を成型して乾留して冶金用フェロコークスを製造する。難溶融性炭材表面を鉄鉱石で被覆した状態とすることにより、鉄鉱石の還元により生成する欠陥構造は難溶融性炭材の周辺に発生し、フェロコークス強度を発現させる軟化溶融を示す易溶融性炭材内部には欠陥構造を発生させないフェロコークスとなる。これによりフェロコークス内の鉄鉱石の還元が進行してもフェロコークスの強度低下が抑制可能である。
なお、難溶融性炭材とは、ギーセラープラストメータで測定される最高流動度(MF)が2ddpm未満である石炭等の炭材であり、易溶融性炭材とは最高流動度(MF)が2ddpm以上の難溶融性炭材よりも溶融しやすい石炭等の炭材である。
難溶融性炭材の表面を鉄鉱石で被覆してフェロコークスを製造するには、以下のa)、b)ような方法を用いることができる。鉄鉱石で被覆された難溶融性炭材と、易溶融性炭材とを混合して混練した混練物を成型工程で成型し、得られた成型物を乾留してフェロコークスを製造する
a)、まず、難溶融性炭材と鉄鉱石と少量のバインダーとを予め高速攪拌型ミキサーに投入して攪拌し、鉄鉱石を難溶融性炭材表面に被覆する。さらに易溶融性炭材とバインダーとを高速攪拌型ミキサーに投入して攪拌して混練し、混練物を得る。
b)、まず、ニーダーやロールミルのような混練機を用いて難溶融性炭材と鉄鉱石と少量のバインダーを混練して鉄鉱石を難溶融性炭材表面に被覆してから、易溶融性炭材とバインダーとともに高速攪拌ミキサーに投入して攪拌して混練し、混練物を得る。
混練物はダブルロール成型機のような成型機を用いて成型し、成型物を製造する。
図1に鉄鉱石を難溶融性炭材表面に被覆し易溶融性炭材とバインダーとともに混合して成型物を製造する本発明の一実施形態であるフロー図を示す。
難溶融性炭材1と微粉鉄鉱石2とは、バインダー3とともにニーダー4等を用いて混練することで難溶融性炭材1の表面に微粉鉄鉱石2を被覆した粒子群を製造する。この粒子群と易溶融性炭材5、さらにバインダー6を高速攪拌ミキサー7に投入し攪拌する。以上が混練工程である。混練工程で得られた攪拌物を成型工程で成型する。例えば高圧成型機8を用いて成型し、成型物9を得る。この成型物9を乾留してフェロコークスを得る。
図2に、従来の製造方法で製造されたフェロコークスと、本発明方法で製造されたフェロコークスとの比較を示す。フェロコークスの製造において、鉄鉱石の配合率が50mass%以下の場合、成型物を乾留すると成型物同士の融着が起こる恐れが高いため、炭材には易溶融性炭材として粘結炭や微粘炭の他に非粘炭を代表とする難溶融性炭材を配合する必要があり、通常フェロコークス中の炭材と鉄鉱石(金属鉄)の配置は図2(a)のようになる。フェロコークスの強度向上には、易溶融性炭材5が寄与し、成型物同士の融着防止には難溶融性炭材1が寄与する。鉄鉱石の還元が進行して金属鉄となると、金属鉄周辺に多くの欠陥が生成し、フェロコークス強度の低下を招くと考えられる。そこで、図2(b)に示すように鉄鉱石2を難溶融性炭材1周辺に配置させることで、鉄鉱石2の還元に伴う欠陥構造の生成を難溶融性炭材1周辺にとどめることが可能であり、易溶融性炭材5には還元に伴う欠陥の発生は起きにくいと考えられる。このように考えると、図2(b)のフェロコークスでは鉱石の還元に伴うフェロコークスの強度低下は減じられると推察される。
鉄鉱石を難溶融性炭材表面に被覆して易溶融性炭材と混合して製造した場合(難溶融性炭材表面に被覆:図2(b)の場合)と、難溶融性炭材、易溶融性炭材および鉄鉱石を単純に混合して製造した場合(単純混合:図2(a)の場合)の、フェロコークス強度と還元率との比較を行った。
原料石炭には平均最大反射率が0.7%の微粘炭(石炭1)と、平均最大反射率が1.7%の非粘炭(石炭2)を50mass%ずつ配合した配合炭を用いた。石炭1が易溶融性炭材であり、石炭2が難溶融性炭材に相当する。鉄鉱石は粒径100ミクロン以下に粉砕したカラジャス鉱石を用い、30mass%配合とした。鉄鉱石の性状を表1に、石炭の性状を表2に示す。
Figure 0005386839
Figure 0005386839
「単純混合」のフェロコークスは、石炭、鉄鉱石、石炭系軟ピッチ(バインダー)をミキサーで単純に混合し、ロール成型機で成型して6ccの大きさの成型物とし、乾留温度900で2時間乾留して製造した。
「難溶融性炭材表面に被覆」のフェロコークスは、難溶融性炭材と鉄鉱石とを高速攪拌型ミキサーで混合し、石炭系軟ピッチを添加してさらに混合した。その後易溶融性炭材と石炭系軟ピッチを添加してさらに混合した。そして得られた混合物をロール成型機で成型して6ccの大きさの成型物とし、乾留温度900で2時間乾留して製造した。
フェロコークスの強度と還元率の測定結果を図3に示す。
「難溶融性炭材表面に被覆」のフェロコークスは、「単純混合」のフェロコークスに比較して、鉱石還元率は2%低下したものの、フェロコークス強度は4ポイント上昇した。
以上のように、従来の「単純混合」で製造したフェロコークスと比較して、本発明方法で製造したフェロコークスは、高強度を有するものであった。
本発明の一実施形態を示すフロー図。 フェロコークス中の炭材と鉄鉱石の配置を示す模式図。(a)従来のフェエロコークス(単純混合)、(b)鉄鉱石を難溶融性炭材周辺に配置(難溶融性炭材に被覆) 「単純混合」と「難溶融性炭材に被覆」のフェロコークス強度と還元率を比較したグラフ。
符号の説明
1 難溶融性炭材
2 鉄鉱石
3 バインダー
4 ニーダー
5 易溶融性炭材
6 バインダー
7 高速攪拌ミキサー
8 高圧成型機
9 成型物

Claims (2)

  1. 炭材と鉄鉱石とからなる成型物を乾留してフェロコークスを製造する方法であって、
    前記炭材がギーセラープラストメータで測定される最高流動度が2ddpm未満である難溶融性炭材と最高流動度が2ddpm以上の易溶融性炭材とからなり、
    難溶融性炭材と鉄鉱石とバインダーとをミキサーに投入し、攪拌して前記難溶融性炭材の表面を前記鉄鉱石で被覆し、
    さらに前記ミキサーに易溶融性炭材とバインダーとを投入し、攪拌して成型物を製造することを特徴とする冶金用フェロコークスの製造方法。
  2. 炭材と鉄鉱石とからなる成型物を乾留してフェロコークスを製造する方法であって、
    前記炭材がギーセラープラストメータで測定される最高流動度が2ddpm未満である難溶融性炭材と最高流動度が2ddpm以上の易溶融性炭材とからなり、
    難溶融性炭材と鉄鉱石とバインダーとを混練機で混練して前記難溶融性炭材の表面を前記鉄鉱石で被覆し、
    該被覆された難溶融性炭材と易溶融性炭材とバインダーとをミキサーに投入し攪拌して成型物を製造することを特徴とする冶金用フェロコークスの製造方法。
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