JP5386807B2 - 電鉄用回生電力吸収装置 - Google Patents

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本発明は直流電化鉄道システムにおいて、車両制動時に発生する回生電力を吸収・処理する、饋電線側に設ける回生電力吸収装置に関するものである。
直流電化鉄道システムは、図3に示すように交流電源11から変圧器12を介し直流饋電用整流器13により交流から直流に変換して饋電線17に給電するという構成となっている。近年の車両は電動機駆動用にチョッパあるいはインバータの電力変換装置を用いているので回生制動時の電力を饋電線に戻す回生機能がある。しかし、直流饋電用整流器は逆阻止形のダイオードが使用されているので、回生電流を矢印Bと逆方向に流すことができない。
饋電線に回生動作をしている回生車両と、他に力行する力行車両が図3のようにいる場合で、力行電力が回生電力より大きい場合は、回生電力は全て矢印Aの方向に流れて力行車両で消費され、さらに不足分の電力は整流器より矢印Bの方向に供給されて電圧上昇は発生しない。逆に、図4に示すように、回生電力が力行電力を上回ると、上回った回生電力を饋電線側に流そうとするが、回生電力吸収装置16がないと、饋電線からみた整流器側の抵抗値は非常に大きいので、少しでも電流を流そうとすると整流器側電圧を上昇させ過電圧となるので饋電線へ回生電力を供給することができない。このため、回生電力を饋電線に戻そうとするシステムでは回生電力吸収装置16の設置が必要である。この電力吸収装置の一方法としては、回生電力を交流電源へ戻すことができる回生用インバータを設ける方法もあるが、非常に高価である。
他に、回生用インバータよりも簡単な構成として図5に示すように、回生電力を消費させる電力消費用抵抗器3とこの消費電力を連続的に可変させるチョッパ部2の組合せを複数台並列接続とした回生電力吸収装置が用いられる。回生電力吸収装置の動作開始電圧は、整流器からの電流が流れ込まないように、整流器側の発生電圧より若干上回るように設定される。
チョッパ部のスイッチング素子8が破損した時、図6に示すようにスイッチング素子8は短絡状態となって、常時、饋電線から電力消費用抵抗器に電流が流れ焼損する。この対策として破損したチョッパ部を装置から電気的に切離す必要があり、直流負荷開閉器を開放して、饋電線から装置全体を切離す。ヒューズ1はチョッパ部のスイッチング素子8と還流ダイオード10が破損した場合、健全なチョッパ部から電気的に切離すために設けられている。電力消費用抵抗器3のワット数は回生動作特有の間歇的な負荷パターン仕様から設計される。
特開平7−212914
回生電力吸収装置、図5において、スイッチング素子8が破損すると、常時、饋電線から電力消費用抵抗器3に電流が流れ、無駄な損失、抵抗の焼損が生じる。これを防ぐため、スイッチング素子の異常を検出して、19の直流負荷開閉器を開放し、饋電線から装置全体を電気的に切離し停止する。不具合部分の改修後に再運転となるが、装置の稼動率低下と、この装置の停止期間中は回生車両側で制動エネルギーを処理する責務が発生する。
回生電流は数秒から稀ではあるが最長で数分発生する。図7に示すようにヒューズは熱容量が小さいため短時間での大電流遮断には向いているが、回生電流のような長い通電時間では、ヒューズ溶断特性からヒューズに連続で流せる電流値と回生電流値とほぼ等しくなってしまう。このため、スイッチング素子破損時、不具合チョッパ部を健全なチョッパ部から切離すことができる適切なヒューズを選定することが困難という問題がある。
本発明が目的とするところは、不具合のチョッパ部を早期に健全なチョッパ部から切離し、不具合チョッパ部の回生電力吸収容量は低減するものの、装置を停止することなく、運転を継続させる回生電力吸収装置を提供することにある。
本発明の請求項1は、直流電化鉄道システムの饋電線に発生した回生電力を吸収する回生電力吸収装置であって、この回生電力吸収装置は、スイッチング素子と還流ダイオードを有するチョッパ部にそれぞれ電力消費用抵抗器を接続した複数のユニットで構成したものにおいて、
前記チョッパ部の還流ダイオードと逆並列に短絡用のスイッチング素子を接続し、且つ前記チョッパ部の入力側にそれぞれヒューズを接続し、前記ユニットの故障により電力消費用抵抗器に電流がながれたとき、若しくは電力消費用抵抗器に電圧が所定時間連続して印加されたとき前記短絡用のスイッチング素子をオン状態としてヒューズを溶断するよう構成したことを特徴としたものである。
本発明の請求項2は、前記短絡用のステッチング素子のオン信号は、前記電力消費用抵抗器に流れる電流、若しくは電圧の検出信号に基づくものであることを特徴としたものである。
以上のとおり、本発明によれば、回生電力の吸収、消費をする電力消費用抵抗器とチョッパ部とでユニットを構成し、このユニットを複数並列接続して回生電力吸収装置とし、ユニットに故障が発生したとき、当該故障ユニットのみを回生電力吸収装置から解列するものである。これにより、
不具合部分のユニットのみ回生電力吸収装置から切離すことで、不具合チョッパ台数分の回生電力吸収容量は低減するが、装置を停止させることなく運転を継続することができ、稼働率が上がること、また、車両側での回生制動時のエネルギー処理責務を軽減できる効果がある。
本発明は、回生電力の消費を、チョッパ部と抵抗で構成されたユニットの抵抗で行い、このユニットを複数並列接続して回生電力吸収装置とし、ユニットに故障が発生したとき、当該故障ユニットのみを回生電力吸収装置から解列するものである。
具体的に展開した実施例を以下に詳述する。
図1は、本発明の実施例を示す構成図である。1はヒューズ、2はチョッパ部で,このチョッパ部2は、スイッチング素子8と還流ダイオード10と、この還流ダイオード10とは逆並列接続された短絡用のスイッチング素子9よりなっている。3は回生電力を消費させる電力消費用抵抗器で、これらチョッパ部2、及び電力消費用抵抗器3によりユニットが構成され、このユニットを、例えば、図5で示すように複数個並列接続して回生電力吸収装置が構成される。なお、短絡用のスイッチング素子9としては、ここではトランジスタやIGBT、及びサイリスタ等の半導体素子が使用される。
4はスイッチング素子8が破損したことを検出する素子異常検出部で、スイッチング素子8の短絡故障により電力消費用抵抗器3に流れる電流が予め定められた連続時間以上流れたことを検出して短絡用スイッチング素子9へオン信号を出力する。6は電圧検出部で、検出した電圧信号を回生電圧制御部5に出力する。回生電圧制御部5では検出電圧値に応じてスイッチング素子8の導通率を制御し、電力消費用抵抗器3で電力を消費させる。7はLCフィルタで、リアクトルLとコンデンサCとで構成されている。
次に動作を説明する。電圧検出部6により饋電線電圧を検出し回生電圧制御部5に電圧信号を出力する。回生電圧制御部5では、饋電線電圧が予め設定された動作開始電圧以上になった時、饋電線電圧を一定にするようにチョッパ部2のスイッチング素子8をオン、オフ動作をさせ、回生電力を電力消費用抵抗器3で消費させる。
何らかの理由によりスイッチング素子8に短絡故障が発生すると、スイッチング素子8のオフ信号時にも電力消費用抵抗器3に電流が流れ、この電流は素子異常検出部4で検出して短絡用スイッチング素子9をオンさせる。その結果、饋電線、ヒューズ1、破損したスイッチング素子8、短絡用スイッチング素子9、及びレール経由での短絡回路を形成し、ヒューズ1に短絡電流を通電させ溶断させる。これにより、破損したチョッパ部を有するユニットが回生電力吸収装置から電気的に切離される。
図1では、素子異常検出回路4に入力する信号としては電力消費用抵抗器3に流れる電流を検出しているが、この他、電力消費用抵抗器3の両端電圧からでも検出できる。これは、スイッチング素子8の破損時には素子が短絡するので電力消費用抵抗器3には電圧が連続して印加されることに基づく。すなわち、通常の回生電力吸収動作時には電力消費用抵抗器3に印加される電圧は、5〜10秒程度の短時間であるのに対し、スイッチング素子8の破損時には、5〜10秒以上継続して電圧が印加される。したがって、印加される電圧を監視することによりスイッチング素子8の異常が検出できる。
図2は、本発明の他の実施例を示す構成図で、図1と同じ部分若しくは相当する部位に同符号を付してその説明を省略する。図2において、図1と相違する点は、チョッパ部2‘では短絡用スイッチング素子が無いことと、電力消費用抵抗器3’は自己断線機能を有していることである。
一般に、車両の回生はブレーキをかけたときの10秒間程度の発生であり、そのブレーキも3ないし4分で1回程度の短時間で、且つ間歇的である。この現実を踏まえて電力消費用抵抗器3’の抵抗値を短時間定格で設計し、且つ定格を超えたときには自己断線するよう形成される。そのために、電力消費用抵抗器3’は
抵抗体またはリード線の一部を電気的に開放するように欠損させ、その部分に低融点合金が装填されているもので、抵抗器が過負荷になった時、抵抗体の自己発熱により低融点合金が溶融し脱落して、断線状態となるような抵抗器である。
動作としては、スイッチング素子8が破損して短絡状態となったときには、ヒューズ1、スイッチング素子8、及び電力消費用抵抗器3’の回路に連続の電流が流れ、電力消費用抵抗器3’は過負荷状態となり断線する。このことにより、破損したチョッパ部を有するユニットが回生電力吸収装置から電気的に切離される。
本発明の実施例を示す構成図 本発明の他の実施例を示す構成図 直流電化鉄道システムの構成図 回生電力吸収装置を適用した構成図 チョッパ部4並列時の回生電力吸収装置の構成図 チョッパ部のトランジスタ破損時の状態図 回生電流とヒューズ溶断特性図
符号の説明
1… ヒューズ
2… チョッパ部
3(3’)… 電力消費用抵抗器
4… 素子異常検出部
5… 回生電圧制御部
6… 電圧検出部
7… LCフィルタ
8… スイッチング素子
9… スイッチング素子
10… 還流ダイオード
11… 交流電源
12… 変圧器
13… 整流器
14… 回生車両
15… 力行車両
16… 回生電力吸収装置
17… 饋電線
18… レール
19… 直流負荷開閉器

Claims (2)

  1. 直流電化鉄道システムの饋電線に発生した回生電力を吸収する回生電力吸収装置であって、この回生電力吸収装置は、スイッチング素子と還流ダイオードを有するチョッパ部にそれぞれ電力消費用抵抗器を接続した複数のユニットで構成したものにおいて、
    前記チョッパ部の還流ダイオードと逆並列に短絡用のスイッチング素子を接続し、且つ前記チョッパ部の入力側にそれぞれヒューズを接続し、前記ユニットの故障により電力消費用抵抗器に電流がながれたとき、若しくは電力消費用抵抗器に電圧が所定時間連続して印加されたとき前記短絡用のスイッチング素子をオン状態としてヒューズを溶断するよう構成したことを特徴とした電鉄用回生電力吸収装置。
  2. 前記短絡用のステッチング素子のオン信号は、前記電力消費用抵抗器に流れる電流、若しくは電圧の検出信号に基づくものであることを特徴とした請求項1記載の電鉄用回生電力吸収装置。
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