JP5386254B2 - スポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子 - Google Patents

スポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子 Download PDF

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Description

本発明は、光通信などに使用され、スポットサイズ変換部を有する光学素子に関する。
近年、光通信においてコンテンツの伝送量の増加に伴う情報処理速度の上昇は、光情報処理技術の高速化の必要性を一層高めており、これにともない、高速に応答する光素子が必要とされている。ところで、光素子中の光導波路が複数の横モードを持つ場合、モードごとの伝搬速度の違いによって、光導波路中を進行する光パルスの時間幅が広がってしまう。これにより、前後の光パルスが時間軸上で重なってしまい、クロストークを生じてしまう。
従って、高速光通信で使用される光素子は、横モードが1つのみの単一モード光導波路を備えるように構成される。
ところで、光素子内では、シリコンをはじめ屈折率の高い材料が用いられることが多く、光素子が有する単一モード光導波路のモードフィールドは、概して非常に小さい。例えば、特許文献1に記載の波長分散補正素子の場合、光導波路の断面積は0.5μm×1.0μm程度である。一方、単一モード光ファイバーにおいて、コアの断面積は、64μm(=4.5×4.5×π)程度である。
つまり、光素子の有する単一モード光導波路のモードフィールドは、光ファイバーのコアの断面積に対して、およそ128分の1の大きさである。このため、光ファイバーと光素子の有する単一モード光導波路とを、ただ単に結合させた場合、光エネルギーは、結合部分において大きく減衰する。従って、光ファイバーと光素子の有する単一モード光導波路との光結合の効率を上げることは、複数の光素子が含まれる光通信システム全体の低損失化につながり、重要な課題となっている。
このような問題に対し、例えば特許文献2には、先端部分が逆テーパー形状になったSiNからなる高屈折率光伝送部と、当該高屈折率光伝送部を取り囲むSiONからなる低屈折率光伝送部を有するカッブリング部によって、光ファイバーからの光を有効に取り込む光伝送路に関する技術が開示されている。
このような構造によって、光ファイバー等から取り込んだ光を、伝播方向に沿って、光ファイバー内の大きなモードフィールドから、高い屈折率をもつSiN導波路内の小さなモードフィールドヘと変換することができ、光素子の有する単一モード光導波路と、光ファイバーとの光結合を低損失にすることができる。
特許文献3には、素子先端に向かって、コアの幅を細く、かつ厚みを薄くして途中で打ち切り、クラッドは素子先端に向かって幅を広げていく構造が開示されている。
特許文献4には、第1の光導波路とモードフィールドサイズ変換部と第2の光導波路から構成され、第1の光導波路のオーバークラッド層とモードフィールドサイズ変換部及び第2の光導波路のコアとを同時に作成し、オーバークラッド層とコアとを同時に作製し、コアの作製時にコアの光の進行方向に対して左右対称な2つの領域をエッチング領域としてコアの材料を除去し、それ以外の領域はコアの材料を削らずに残すようにした構造が開示されている。
特許文献5には、基板上にコア部とクラッド部を有する光導波路を設け、その一部に異なる偏波に対する光導波路の損失が同一となるような損失補償部を設けた構造が開示されている。
特許文献6には、異方性エッチングを使用することで、3次元テーパー型導波路を実現し、横方向だけでなく、縦方向にも断面形状が変化するため、偏波無依存の導波路が作成可能となる構造が開示されている。
特許第3917170号公報 特開2007−047694号公報 特開平6−67043号公報 特開2004−184986号公報 特開2000−241643号公報 特開2000−343543号公報
導波路中を伝播する光は、電界の主成分が水平方向(ウエハの面に対して平行)の振動モード(TE−likeモード)と垂直方向(ウエハの面に対して垂直)の振動モード(TM−likeモード)に、多くの場合近似として分けて考えることができる。
垂直、水平方向で異なる構造をもつ光学素子においては、多かれ少なかれ、これらの異なる偏波に対して異なる光学特性を生じてしまう。本来、特に偏波を扱うことを目的としていない光学素子においては、その光学素子に入射する光に対し、偏波に関する制限を設けないために、偏波間での特性は同じである方が望ましく、この差を低減することが課題である。
逆テーパー構造を有するスポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子では、その製造上の制約からテーパー先端の幅が特定の値に制限される。特にコアとクラッドの比屈折率差の大きな材料で導波路が形成されている場合、TE−likeモードとTM−likeモードで結合効率の差が大きくなり、偏波依存損失を生じてしまう問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みなされたもので、第一の領域と第二の領域の間を光が伝搬する際に、それぞれ結合損失の異なる偏波間での結合損失差を少なくし、結合損失の偏波依存性の少ないスポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子を提供することを目的とする。
本発明の光学素子はスポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子において、前記スポットサイズ変換光導波路部が少なくとも2つの隣接する第一の領域と第二の領域からなり、素子内部側に位置する第一の領域は、素子先端側に位置する第二の領域の方向、即ち、素子先端方向に沿って幅が減少し、先端においてモードフィールドの偏波依存性を有する逆テーパー状の第一のコアが備えられ、前記第一のコアを含まない前記第二の領域は、前記第一の領域との接続面において対比すると、前記第一の領域の第一のコアと一のクラッドの少なくとも一方に対し、幅、又は高さ、又は材質が異なる構造とされ、TE−likeモードと、TM−likeモード各々の外部素子との結合効率のモード間の差が小さくなるように形成される断面が備えられ、前記第二の領域における前記断面の形状の幅又は高さが、光の導波方向に沿ってテーパー状に変化されてなることを特徴とする光学素子。
発明は、先に記載の光学素子において、前記第一の領域の、素子内部側に接続された第二の光学素子を有し、前記第二の領域は、TE−likeモードとTM−likeモード各々の外部素子との結合効率が、前記素子内部に接続された前記第二の光学素子の有する偏波依存性を打ち消す、又は低減するように形成される断面が備えられたことを特徴とする
本発明は、先のいずれかに記載の光学素子において、前記第二の領域の前記素子先端側と外部光学素子との組み合わせにおいて結合効率の偏波依存性を増減させる構造とされたことを特徴とする。
本発明は、先のいずれかに記載の光学素子において、前記第二の領域が、前記第一のクラッドと同じ材料により形成され、高さ方向の変化のない導波路構造で形成されたことを特徴とする。
本発明は、先のいずれかに記載の光学素子において、前記第一の領域は、前記第一のコアより高い屈折率を有する材料からなる、前記素子先端方向に対して垂直な面の断面積が前記素子先端方向に連続的に減少するよう形成された第三のコアを有し、更に、前記素子先端方向に対して垂直な面の断面積が一定となるよう形成される、前記第一のコアと連続する第四のコアを有し、前記第一の領域の前記第一のコア、又は前記第四のコアは、前記第三のコアの上層側に積層して形成されてなることを特徴とする。
本発明は先のいずれかに記載の光学素子において、前記第一のコアの周囲に低屈折率光伝送部が形成され、該低屈折率光伝送部において前記第一のコアの上層側端部に所定の幅を有して存在するリッジ部が形成され、前記低屈折率光伝送部において前記第一のコアの幅方向両端部側に所定の幅を有して存在するスラブ部が形成され、前記低屈折率光伝送部において前記第一のコアの下層側端部に所定の幅を有して存在するトレンチ部が形成されるとともに、前記第二の領域に前記第一のコアに接続される偏波調整光伝送部が設けられ、該偏波調整光伝送部に、前記低屈折率光伝送部側のリッジ部に対応する偏波調整光伝送リッジ部と、前記低屈折率光伝送部側のスラブ部に対応する偏波調整光伝送スラブ部と、前記低屈折率光伝送部側のトレンチ部に対応する偏波調整光伝送トレンチ部の少なくとも1つが形成され、これらの偏波調整部光伝送部におけるリッジ部とスラブ部とトレンチ部の少なくとも1つが、前記第一の領域側よりも素子先端側の方が幅広に形成されてなることを特徴とする。
本発明によれば、光が第一の領域と第二の領域の間を伝搬する際に、異なる偏波それぞれの結合損失の異なる偏波間での差を少なくすることができるので、結合効率の偏波依存性の少ないスポットサイズ変換素子を提供することができる。
本発明によれば、光が第一の領域と第二の領域の間を伝播する際に、異なる偏波それぞれの結合損失に差が生じ、特定の結合効率の偏波依存性を持つ光学素子を提供することができる。これにより、本発明と接続する外部の光学素子が偏波依存性を持つ場合に、本発明の光学素子と組み合わせて偏波依存性を低減することができる。
本発明によれば、光が第一の領域と第二の領域の間を伝播する際に、異なる偏波それぞれの結合損失に差が生じ、もともと偏波依存性を有する第一の領域の素子内部側に接続された光学素子の偏波依存性を相殺して、偏波依存性の少ない光学素子を提供することができる。
本発明によれば、第二の領域の形状を光の進行方向において変化させることにより、外部の光学素子のスポットサイズと本発明の光学素子のスポットサイズを合わせることにより、両偏波に対してより高効率、かつ特定の結合効率の偏波依存性を持つ光学素子を提供することができる。
本発明によれば、第二の領域における光学素子との接続に対してさらに結合効率の偏波依存性を持たせることで、より大きな結合効率の偏波依存性を持つ光学素子を提供することができる。
本発明によれば、第二の領域を第一の領域のクラッドと同じ材質、かつ高さ方向の変化のない導波路とすることで、第一の領域と第二の領域を一括して形成することが可能であり、製造上容易な光学素子を提供することができる。
本発明によれば、素子先端方向に向かって、第一のコアにおける垂直方向の高さと、第三のコアと第四のコアから構成されるコアの垂直方向の高さを変化させることができ、実効屈折率の変化を緩やかにして、より高効率に、外部の光学素子に結合することができる。また、第三のコアと、第四のコア、及び第一のコアに異なる材料を用いることで、さらに実効屈折率の変化を緩やかにして、より高効率に、外部の光学素子に結合する光学素子を提供することができる。
本発明によれば、偏波調整部光伝送部におけるリッジ部とスラブ部とトレンチ部の少なくとも1つが、第一の領域側よりも素子先端側の方が幅広に形成されてなるようにして第一の領域の低屈折率光伝送部の形状を考慮した第二の領域の構造とすることにより、結合効率の偏波依存性を調整することができる。
図1は本発明に係る光学素子の第一実施形態を示す説明図。 図2は同実施形態の光学素子における素子の領域の単一モード導波路部分の断面図。 図3は同実施形態の光学素子の部分拡大図であり、図3(A)は図1に示す光学素子の素子領域及び第一の領域のxy面の断面図、図3(B)は図1に示す光学素子の高屈折率光伝送部の中央部における素子の領域及び第一の領域のzy面の断面図。 図4は図3のビーム集束部Dとビーム集束部Eの境界面における断面図。 図5は図3の単一モード導波路部における断面図。 図6は同実施形態の光学素子のリッジ部とスラブ部とトレンチ部を含めて示す断面図。 図7は同実施形態の光学素子の第二の領域における第一の領域側の断面図。 図8は同実施形態の光学素子の第二の領域における外部光学素子側の断面図。 図9は同実施形態の光学素子の第二の領域を上方より見た図。 図10は同実施形態の光学素子におけるTE−likeモードのモードフィールド形状の一例を示す図。 図11は同実施形態の光学素子におけるTM−likeモードのモードフィールド形状の一例を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
以下に説明する実施形態は、フォトニック結晶層を含む光学素子に対して本願のスポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子を適用した場合の実施形態である。
図1は、本実施形態に係る光学素子の説明図であって、図1に示す実施形態の光学素子1は、単一モード導波路部から外部の光学素子に光を伝搬させる際のインターフェースとして結合効率の偏波依存性の低い光結合を提供するものである。
ここでは、スポットサイズ変換光導波路部のみで、偏波依存性を低減するように構成した例を示すが、これは一例であり、本発明においては、スポットサイズ変換光導波路部の偏波依存性を積極的に利用して、内部の素子の有する偏波依存性を補償するように、内部の素子の有する偏波依存性とは逆の偏波依存性を有するスポットサイズ変換光導波路部を作製することも可能である。また、本発明と接続する外部の光学素子が偏波依存性を有する場合に、外部の素子の有する偏波依存性を補償するように作製することも可能である。
図1に示すように、本実施形態における光学素子1は、素子内部に位置するシングルモード導波路部である素子の領域A、逆テーパー構造を有する第一の領域B、及び素子最先端部に位置し、偏波依存性を低減する目的で導波路構造として設計された第二の領域Cを主体として構成されている。ここで、逆テーパー構造とは、素子先端に向かって、コアの幅が漸次狭まっていく構造を示す。
次に、各領域A、B、Cについて、それらの概要を説明し、その後、本実施形態の詳細を図面に基づいて説明する。
素子の領域Aは、本発明において素子内部に位置し、素子内にて他の機能を有する部分から素子先端へ光を導波する役割を果たす。
他の機能とは、受発光器、干渉計等、光を用い、外部との接続を有する機能のことである。また、他の機能がこの素子の領域Aに含まれている場合も考えられる。本実施形態においては、他の機能として、分散補償機能が素子の領域Aに含まれている。また、特に本発明における素子の領域Aの導波路は低屈折率比である必要はなく、シリコンをはじめとする、高屈折率比の導波路においても、効果を発揮するものである。
第一の領域Bは、素子先端に向かって漸次コアの幅が狭くなる逆テーパー構造を有し、素子先端に向かってスポットサイズを漸次拡大する効果がある。逆テーパー構造は必ずしも一段である必要はなく、本実施例においては、二段の逆テーパー構造とされている。また、このテーパー構造の先端では、コアの水平および垂直方向の違いから、TE−likeモードおよびTM−likeモードにおいて、異なるモードフィールド形状を持つ。ここでモードフィールドとは、光を伝搬させた場合の断面における電磁界の強度分布を指す。
第二の領域Cは、第一の領域B及び外部の光学素子に対して、目的とする結合効率の偏波依存性を持つ。第二の領域Cの構造は、隣接する第一の領域Bの構造により特に制限される必要はなく、コア及びクラッドの材料、及び高さ、幅を適宜選択することで、それぞれの偏波のモードフィールドを調整し、目的の偏波依存性を持つ構造とすることができる。本実施形態においては、第一の領域B側と素子先端側で幅の異なる断面形状を持つテーパー状の構造とすることで、異なる偏波問の結合効率の調整を行っている。例えば、本実施形態においては、後述するように、第二の領域のトレンチ幅が、第一の領域側の断画では幅5μmで、外部光学素子接統側では14μmとなる設計例を例示することができるが、当該設計例に限られるものではなく、接続する外部の光学素子の構造や、各構成部材に用いる材料が有する屈折率、目的とする、異なる偏波問での結合効率の差に応じて最適な大きさに設定することができる。
以降、本発明に係る光学素子の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図2は、本発明の素子の領域Aにおける単一モード導波路部の断面図である。
基板2は、例えば、屈折率が約3.4のシリコン等によって形成される。クラッド3は、本発明における第1の領域Bのクラッドと第2の領域Cのクラッドとして機能し、低屈折率光伝送部5より低い屈折率を有する材料、例えば、酸化シリコン(屈折率が約1.45)によって、図1、図3に示す如く基板2上に積層されて形成されている。基板2の底面側において、第一の領域Bの素子先端側の部分にはトレンチ溝2aが形成され、このトレンチ溝2aを埋めるようにして後述するクラッド3Bと低屈折率光伝送部5のトレンチ部5cが第二の領域Cの直前部分まで設けられている。
シリコン層4は、シリコン層4a及び4bとから成り、上記フォトニック結晶層7の母材であり、SiNなどからなる高屈折率光伝送部6より高い屈折率を有する材料、例えば、屈折率が約3.4のシリコン等によって形成される薄膜である。
ここで、図3を用いて、フォトニック結晶層7についてより具体的に説明する。図3(A)は、図1における光学素子1の素子の領域Aおよび第一の領域Bのxy面の断画図であって、後述する低屈折率光伝送部5のリッジ部5a及びスラブ部5bを省略して図示するものである。また、図3(B)は、図1における光学素子1の高届折率光伝送部6の中央部における素子の領域Aおよび第一の領域Bのzy面の断面図であり、図3(A)を用いて説明すると一点鎖線で図示するF−F部における断面図である。なお、図3(B)において、上記クラッド3のうち、本発明における第1のクラッドとして機能するクラッドをクラッド3Aとして図示し、本発明における第2のクラッドとして機能するクラッドをクラッド3Bとして図示することとする。
図3(B)に示す如く、フォトニック結晶層7は、本発明における第1のクラッドとしてのクラッド3A上に積層されている。フォトニック結晶層7は、第2の物質としてのシリコンによって形成された母材に面状に複数の孔を形成し、当該孔に母材の屈折率(誘電率)と異なる屈折率(誘電率)を有する第1の物質としてのシリコン酸化膜(SiO)等を充填することによって、シリコン酸化膜が所定のサイズと所定の配置間隔でシリコン中において面状に配して形成されたものである。そして、当該シリコンによる母材が、上記シリコン層4a及び4bと連続してクラッド3A上に形成されている。なお、上記面状とは、フォトニック結晶層7内に二次元方向に配列されている平面状等の形状を意味し、光パルスに対して波長分散変動を付与するフォトニック結晶としての効果を発揮させる場合には、フォトニック結晶層7が製造工程において曲面や平面と曲面とが組み合わされた形状となった場合に当該形状に沿った配列も含むものとする。なお、シリコンを母材とするフォトニック結晶層にかかる分散補償素子に関して特許出願(特願2004−315167号:特許第3917170号公報)において公開されている。
このようなフォトニック結晶層7の母材であるシリコンによって成形されたシリコン層4bが、本発明における第一の領域Bの逆テーパー構造の一部として機能し、光の進行方向に対して垂直な面の断面積(図1におけるxz平面)が、光の進行方向(図1におけるy方向)に連続的に緩やかに減少していく逆テーパー形状に(換言すれば、カップリング部のビーム集束部Dに突出して)形成され、本発明における第一の領域Bのテーパー部の一例として機能する。このテーパー構造のシリコン層4bを第三のコアと称することができる。
図を用いて具体的に説明すると、シリコン層4bは、図3に示すビーム収束部Dとビーム集束部Eの境界面における断面図である図4に記載の如く、当該境界面ではシリコン層4bの断面積が小さいが、図1及び図3(A)に記載の如く素子の領域A側に向いて徐々にその断面積が広くなり、最終的には、図3に示すカップリング部のビーム集束部Dと単一モード導波路部Gの境界面における断面図である図5に記載の如く、単一モード導波路部Gのフォトニック結晶層7に一体化されている。
また、高屈折率光伝送部6は、フォトニック結晶層7の上からシリコン層4bの素子先端側部分まで延在されてその幅を均等にした基部(第四のコアと称する)6Aと、この基部6Aの先端部から先窄まり状とされたテーパー部(第一のコアと称する)6Bとを具備して構成されている。この高屈折率光伝送部6の周囲には、以下に説明するリッジ部5a、スラブ部5b及びトレンチ部5cを有する低屈折率光伝送部5が形成されている。高屈折率光伝送部6は例えば屈折率2.0の窒化シリコン(SiN)などの高屈折率材料からなる。
低屈折率光伝送部5は、高屈折率光伝送部6と共に本発明における光伝送部として機能し、上記高屈折率光伝送部6より低い屈折率を有する材料、例えば屈折率が約1.5に調整された酸窒化シリコンによって形成され、カップリング部のビーム集束部Eにおいて高屈折率光伝送部6の周囲に配され、且つ当該高屈折率光伝送部6に対して図6に示す如く水平方向(図1におけるx方向)及び垂直方向(図1におけるz方向〉に突出する部分であるリッジ部5a、スラブ部5b及びトレンチ部5cを有するように形成されている。そして、当該トレンチ部5cは、本発明における第1のクラッドとしてのクラッド3(図3(B)においてクラッド3Bとして図示する。)上に積層されている。
また、高屈折率光伝送部6に対して垂直2方向(図1におけるz方向)に突出する部分であるリッジ部5a及びトレンチ部5cが、それぞれ所定の幅を有しで光の閉じ込めを行なうための光の閉じ込め部として機能するよう構成されている。
次に、図7は第二の領域Cにおける第一の領域B側の断面図を表し、図8は第二の領域Cにおける外部の光学素子側の断面図を表す。第二の領域Cの偏波調整光伝送部20は、素子の領域A、第一の領域Bとの共通の基板2の上に存在し、例えば酸窒化シリコンからなる。
この酸窒化シリコンによる偏波調整光伝送部20は、偏波調整光伝送リッジ部20a、偏波調整光伝送スラブ部20b、偏波調整光伝送トレンチ部20cを有するように形成され、第一の領域Bにおける低屈折率光伝送部5と同様に、偏波調整光伝送リッジ部20a、偏波調整光伝送トレンチ部20cが、それぞれ所定の幅を有して光の閉じ込めを行なうための光の閉じ込め部として機能するよう構成されている。
この実施形態において、第二領域Cの第一の領域B側と、外部光学素子側では、偏波調整光伝送リッジ部20aおよび、偏波調整光伝送トレンチ部20cの幅が異なっており、第二の頷域Cにおいて連続的に変化するテーパー構造となっている。第二の領域Cを、上方より見た状態を図9に示す。即ち、偏波調整光伝送リッジ部20aおよび偏波調整光伝送トレンチ部20cの幅は、第一の領域Bに近い側よりも、素子先端側(外部素子側)に近い方が幅が大きくなるようなテーパー構造とされている。
図7と図8にも示す如く、偏波調整光伝送リッジ部20aの幅は、それがテーパーを有しているために断面とした位置により異なっている。そして、第二の領域Cにおける偏波調整光伝送スラブ部20bの下側には、前記した偏波調整光伝送リッジ部20aと同じように連続的に変化するテーパー構造の偏波調整光伝送トレンチ部20cが形成されており、その下には同じテーパー構造の第3のクラッド3Cが形成され、これらは対応するテーパー構造のトレンチ溝2bの中に収容された構造とされている。即ち、素子の領域Aと第1の領域Bの基板2に対応するように第2の領域Cに設けられている基板2Aの部分に平面視テーパー構造のトレンチ溝2bが形成され、このトレンチ溝2bを埋めるように偏波調整光伝送トレンチ部20cと第3のクラッド3Cが形成され、それらがいずれも平面視した状態で偏波調整光伝送リッジ部20aと同じ傾斜率のテーパー構造とされている。
このテーパー構造は、テーパー構造の中でのTE−likeモード、TM−likeモードの損失が十分減少するほどの長さとする。例えば、本実施形態では、この長さを300μmとすることで、TE−likeモードとTM−likeモードの損失を十分に減少させることができるが、テーパー構造の長さはこの限りではなく、断面の構造、材料によって適宜決められるものである。
次に、第二の領域Cにおける、異なる偏波間の結合効率を調整する構造と方法について説明する。
まず、第一の領域Bにおいて、第二の領域Cとの接続面の断面図について、この断面図が光の進行方向に対して変化しないとしたときの、TE−1ikeモードおよびTM−likeモードのモードフィールド形状を図10と図11に示す。これらの図によれば、TE−IikeモードとTM−likeモードでモードの広がりが異なる。つまり、素子の領域Aを通り、十分長い第一の領域Bを伝播して第一の領域端に達した光は、このモードフィールド形状に近い形状を有する。一方、本実施形態の光学素子1では、シングルモード光ファイバ(SMF)との接続を想定している。SMFはその断面が円形のため、理想的にはTE−likeモード、TM−likeモードは同じ形状のモードフィールド形状を持つ。
本発明では、第二の領域Cにおいて、異なる偏波間の結合効率を調整するため、第一の領域Bとの断面において、第一の領域のモードフィールド形状を考慮した構造を形成する。例えば、本実施形態においては、TE−likeモードとTM−likeモードの結合効率を近づけることを目的に、第二の領域Cにおいて、偏波調整光伝送部トレンチ部20c、および偏波調整光伝送部リッジ部20aの幅を5μmとしている。また、TE−likeモードの結合効率を高くしようと考えれば、偏波調整光伝送部トレンチ部20cおよび、偏波調整光伝送部リッジ部20aの幅を5μmより大きくすることで、実現できる。このように、第二の領域Cにおいて、第一の領域Bの形状を考慮した構造にすることより、光結合効率の偏波依存性を調整することができる。
一方、第二の領域Cにおける光学素子側は、シングルモードファイバのモードフィールド分布に合わせ、光結合効率の高い結合を提供する。これにより、第一の領域Bの先端側に達した光は、TE−likeモードとTM−1ikeモード間に特定の結合効率の差を生じて第二の領域Cに侵入する。そして、第二の領域Cにおいては、十分に長いテーパー形状のため、少ない損失で第二の領域Cの先端に達し、外部光学素子へ侵入する。
このように、第二の領域Cの形状を、例えば、上述の如く偏波調整光伝送部リッジ部20aの幅と、偏波調整光伝送部トレンチ部20cの幅を変化させることで、特定の結合効率の偏波依存性をもつ素子を実現することができる。このことは、例えば素子内に位置する他の機能素子(第二の光学素子)が偏波依存性を持つ場合に、その偏波依存性と逆になるよう第二の領域Cの形状を調整することで、デバイス全体としての偏波依存性を低減することを可能とする。
なお、図6、図7、図8中に、外部に接続する光学素子としてコア径8μm、クラッド径125μm.比屈折率差0.34%のシングルモードファイバを想定した場合の、高効率での光結合を可能とする各構成部材の設計例(各部の寸法)を示す。
しかし、本発明における各構成部材のサイズおよび各構成部材間のサイズ比等は当該設計例に限られるものではなく、接続する外部の光学素子の構造や、各構成部材に用いる材料が有する屈折率に応じて最適な種類、大きさに設定することができるのは勿論である。
「本実施形態における計算例」
本発明によれば、結合効率の偏波依存性を低減したスポットサイズ変換素子を提供することができる。本実施形態で先に説明した構造による光学素子1と、従来技術による光学素子における、各偏波の結合効率の計算例を示す。
ここで従来技術による光学素子とは、本実施形態における光学素子1における素子の領域Aおよび、第一の領域Bと同じ領域をそれぞれ有し、更に第二の領域Cが図10に示す断面により構成される光学素子である。図10に示す断面構造は、図6に示す第一の領域Bの一部から、高屈折率光伝送部6の部分を低屈折率光伝送部5と同じ材料により満たした構造を有する。この構造の導波路長は、製造時の切断を考慮して50μmとした。
この例について、Eigenmode Expansion Methodに基づくシミュレーション結果は以下の通りである。
「結合効率」
本実施例:TE−likeモード:79.3%、TM−likeモード:77.3%、
従来技術:TE−likeモード:82.1%、TM−llkeモード:69.9%、
これらの値の比較から、本発明により、結合効率の差に変化を生じていることが分かる。さらに、導波路幅を変えることでこの関係は変わり、結合効率の偏波依存性を増減させた構造を作製することが可能である。
A…素子の領域(単一モード導波路部)、B…第一の領域、C…第二の領域、D、E…ビーム集束部、1…光学素子、2、2A…基板、2a、2b…トレンチ溝、3…クラッド、3A…第1のクラッド、3B…第2のクラッド、3C…第3のクラッド、4…シリコン層、4a…シリコン層、4b…シリコン層(第三のコア)5…低屈折率光伝送部、5a…リッジ部、5b…スラブ部、5c…トレンチ部、6…高屈折率光伝送部(第一のコア)、6A…基部コア(第四のコア)、7…フォトニック結晶層、20…偏波調整光伝送部、20a…偏波調整光伝送部リッジ部、21b…偏波調整光伝送部スラブ部、21c…偏波調整光伝送部トレンチ部。

Claims (5)

  1. スポットサイズ変換光導波路部を有する光学素子において、前記スポットサイズ変換光導波路部が少なくとも2つの隣接する第一の領域と第二の領域からなり、
    素子内部側に位置する第一の領域は、素子先端側に位置する第二の領域の方向、即ち、素子先端方向に沿って幅が減少し、先端においてモードフィールドの偏波依存性を有する逆テーパー状の第一のコアが備えられ、
    前記第一の領域の、素子内部側に接続された第二の光学素子を有し、
    前記第一のコアを含まない前記第二の領域は、前記第一の領域との接続面において対比すると、前記第一の領域の第一のコアと第一のクラッドの少なくとも一方に対し、幅、又は高さ、又は材質が異なる構造とされ、TE−likeモードと、TM−likeモード各々の外部素子との結合効率が、前記素子内部に接続された前記第二の光学素子の有する偏波依存性を打ち消す、又は低減するように形成される断面が備えられ、
    前記第二の領域における前記断面の形状の幅又は高さが、光の導波方向に沿ってテーパー状に変化されてなることを特徴とする光学素子。
  2. 請求項1に記載の光学素子において、前記第二の領域の前記素子先端側と外部光学素子との組み合わせにおいて結合効率の偏波依存性を増減させる構造が備えられたことを特徴とする光学素子。
  3. 請求項1又は2のいずれかに記載の光学素子において、前記第二の領域が、前記第一のクラッドと同じ材料により形成され、高さ方向の変化のない導波路構造に形成されたことを特徴とする光学素子。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の光学素子において、前記第一の領域は、前記第一のコアより高い屈折率を有する材料からなる、前記素子先端方向に対して垂直な面の断面積が前記素子先端方向に連続的に減少するよう形成された第三のコアを有し、更に、前記素子先端方向に対して垂直な面の断面積が一定となるよう形成される、前記第一のコアと連続する第四のコアを有し、前記第一の領域の前記第一のコア、又は前記第四のコアは、前記第三のコアの上層側に積層して形成されてなることを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の光学素子において、前記第一のコアの周囲に低屈折率光伝送部が形成され、該低屈折率光伝送部において前記第一のコアの上層側端部に所定の幅を有して存在するリッジ部が形成され、前記低屈折率光伝送部において前記第一のコアの幅方向両端部側に所定の幅を有して存在するスラブ部が形成され、前記低屈折率光伝送部において前記第一のコアの下層側端部に所定の幅を有して存在するトレンチ部が形成されるとともに、
    前記第二の領域に前記第一のコアに接続される偏波調整光伝送部が設けられ、該偏波調整光伝送部に、前記低屈折率光伝送部側のリッジ部に対応する偏波調整光伝送リッジ部と、前記低屈折率光伝送部側のスラブ部に対応する偏波調整光伝送スラブ部と、前記低屈折率光伝送部側のトレンチ部に対応する偏波調整光伝送トレンチ部の少なくとも1つが形成され、これらの偏波調整部光伝送部におけるリッジ部とスラブ部とトレンチ部の少なくとも1つが、前記第一の領域側よりも素子先端側の方が幅広に形成されてなることを特徴とする光学素子。
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