JP5385880B2 - 車両用可変容量型ポンプの制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、可変容量型ポンプにおいて、ポンプ容量制御の異常時に電動アクチュエータの通電を制限することが難しい状況においても、必要なポンプ容量を確保することを目的とする。
ポンプ容量制御の異常を診断する異常診断手段
異常診断手段によりポンプ容量制御の異常を検出したときに、電動アクチュエータへの通電を制限するように操作すると共に、ポンプから吐出される作動流体の供給対象の運動量を制限する第1フェールセーフ手段
第1フェールセーフ手段による前記供給対象の運転制限後に、必要なポンプ容量が確保されると判定したときは、前記供給対象の運動量の制限を緩和または中止する第2フェールセーフ手段
また、必要なポンプ容量が確保されると判定したときは、供給対象の運動量の制限を解除または緩和して供給対象の運転性を良好に維持することができる。
可変容量型のオイルポンプであるベーンポンプ1は、複数のベーン2付きのロータ3とカムリング4およびアダプタリング5からなるポンプカートリッジをポンプボディ6内に形成された収容空間6a内に配置したものであって、ロータ3を回転駆動するためのドライブシャフト7がポンプボディ6に回転自在に軸支され、図示外の車両のエンジンを駆動源としてドライブシャフト7が回転駆動されることとなる。なお、ロータ3はドライブシャフト7とともに図1において反時計方向に回転するようになっている。
カムリング4とロータ3との間には各ベーン2によって仕切られたポンプ室16が円周方向に複数形成されていて、ロータ3の回転に伴って各ポンプ室16がその容積を増減させながら周回移動し、リアボディ9内に形成した吸入側通路17を介してリザーバタンクTから作動油を吸入するとともに、フロントボディ8内に形成した吐出側通路18を介してCVT変速機構50に油圧を供給するようになっている。
一方、吐出側通路18は、フロントボディ8のうち収容空間6aに臨む面に開口する略三日月状のポンプ室側開口部18aと、ポンプボディ6の外部に開口する外側開口部18bと、を有する。ポンプ室側開口部18aは、収容空間6aのうち、ロータ3の回転に伴ってポンプ室16の容積が減少する吐出領域に開口している。
フロントボディ8のうち、収容空間6aの上方にはバルブ孔19が形成されていて、そのバルブ孔19と当該バルブ孔19に挿入された弁体としてのスプール20をもって制御弁21が構成されている。この制御弁21は、後述するように、吐出側通路18の途中に設けられたメータリング絞り18dの上、下流側の圧力差、およびソレノイド22によって付与される軸線方向の推力によって駆動され、両圧力室13,14内の油圧を制御するようになっている。ここで、ソレノイド22は、制御弁21駆動用の電動アクチュエータを構成する。
中圧室19bは、第1ランド部20aの一方側に形成され、吐出側通路18のうち当該吐出側通路18の途中に形成されたメータリング絞り18dの下流側の圧力が第1パイロット圧通路23によって導かれている。また、その中圧室19b内にリターンスプリング24が配設されていて、そのリターンスプリング24によってスプール20を他方側に付勢している。
低圧室19cは、両ランド部20a,20b間に形成され、吸入側通路17から分岐形成された吸入圧通路26によってポンプ吸入圧が導かれている。
そして、図1に示す状態、すなわち吐出側通路18のうちメータリング絞り18dの上、下流側の圧力差が小さく、リターンスプリング24の付勢力によってスプール20が他方側に位置する状態においては、低圧室19cが第1接続通路27を介して第1圧力室13に接続し、中圧室19bが第2接続通路28を介して第2圧力室14に接続するようになっていて、カムリング4がロータ3との偏心量が最大となる位置にある。
そして、ソレノイド22は、その通電量を大きくするほど、プッシュロッド30を一方側(図1で右方向)へ引き込む力が増大するように設定されている。したがって、ソレノイド22の通電量を増大すると、プッシュロッド30を一方側へ移動させる推力が増大してポンプ吐出量が減少し、ソレノイド22の通電量を減少すると、プッシュロッド30を一方側へ移動させる推力が減少し、相対的に他方側(図1で左方向)に移動させる推力が増大してポンプ吐出量が増大する。
なお、本実施形態とは逆に、特許文献1では、ソレノイド22への通電量を増大(減少)するとポンプ吐出量が増大(減少)するように、設定されている。特許文献1のように可変容量型ポンプをパワーステアリングのアシスト制御に適用する場合は、ソレノイドの故障時にソレノイドへの通電を遮断したときにポンプ吐出量を最小としてアシスト力が過大となることを抑制する要求があるためである。
ソレノイド22は、駆動回路32と電気的に接続され、駆動回路32はCVT−CU(CVTコントロールユニット)33からの指令に基づいてソレノイド22に給電するようになっている。駆動回路32はリレー31を介して電源34と接続されている。
ここで、ハーネス不良等により過電流が流れてリレー31(の接点)が電源34にショートするような故障(以下、リレーON固着故障という)時には、駆動回路32にリレーコイルを遮断する操作を行ってもリレー31の接点は遮断されず、ソレノイド22の過電流状態が維持されてしまうこととなる。この場合、ポンプからのオイル供給量が不足して潤滑不足あるいは冷却不足を生じることとなる。
具体的には、ECU(エンジンコントロールユニット)40のエンジン出力制限部40aが、CVT変速機構50を駆動するエンジンの出力を制限する制御を行う。
ステップS1では、電流センサ38の検出信号に基づいて、ソレノイド22に通電される実電流を読み込む。
ステップS2では、目標電流を加重平均演算などによってフィルタ処理(平滑化処理)する。フィルタ処理の理由については後述する。
ここで、目標電流がステップ的に変化した場合は、ソレノイドのインダクタンスにより、実電流が目標電流に収束するのに遅れ(時定数による位相ずれ)を生じるため、目標電流の変化直後は実電流との間に大きな偏差を生じる。したがって、目標電流をそのまま用いて上記判定を行うと過電流を生じていないのに生じていると誤判定することがある。
なお、目標電流をフィルタ処理する代わりに、目標電流の変化後、所定時間の経過を待って位相ずれが解消されてから判定を行う構成としてもよいが、フィルタ処理方式の方が、速やかに判定できる。
ステップS3で過電流を生じていると判定されたときは、ステップS4へ進んでフェールセーフフラグを1にセットした後、ステップS5へ進んでリレー31を遮断(リレーコイルへの通電を遮断)する操作を行う。
なお、エンジン出力の制限は、例えば、エンジントルクまたはエンジン回転数をそれぞれ設定した制限目標値に近づける制御とすればよい。該制限目標値は、例えば、制限目標回転数を図3で、ポンプ吐出量が可変容量域の最小値に達するときのポンプ回転数(エンジン回転数)であるクラッキング回転数に設定してもよい。あるいは、該クラッキング回転数に基づいて、それ以下のポンプ回転数等に設定してもよい。
ステップS7では、目標電流を0または微小電流値にセットし、リレーが遮断されない場合でもソレノイド22の通電量を十分小さくしてポンプ吐出量を十分に増大させるように制御する。
しかし、リレーON固着故障では無い場合やエンジン出力制限後、リレーが正常に遮断動作してソレノイド22への通電が遮断された場合、あるいは、リレーON固着故障は継続されていても、過電流状態が解消され実電流が目標電流に接近してポンプ吐出量を確保できる状態に復帰した場合は、エンジン出力を制限する必要はなく、良好な運転性を得るためには制限を解除または緩和することが好ましい。
すなわち、リレーON固着故障で、目標電流を0または微小電流値に制御しても過電流が解消されない場合は、次回以降のフローで、実電流とフィルタ処理後目標電流とを比較するステップS3の判定が再度YESとなり、引き続きステップS4以降へ進んで、エンジン出力制限が継続される。
また、エンジン出力制限中に、リレーON固着故障が解消されリレー遮断処理が正常に行われた場合も、上述のようにステップS3の判定がNOとなって、ステップS9へ進む。
なお、初回のフローでソレノイド22の通電を制限する処理を行った後、2回目以降のフローのステップS3で判定を行うときは、通電制限処理による実電流の変化が現れるまでの時間を経過した後で行うようにすると、判定精度が向上する。
そして、所定時間経過したと判定されたときは、ステップS11へ進んでエンジン出力制限を解除または緩和する処理を行う。
なお、ステップS3で過電流判定用に用いられる所定値は、簡易的には固定値に設定してよい。一方、運転状態に基づく要求ポンプ吐出量に応じて可変に設定してもよい。例えば、要求ポンプ吐出量が増大するほど、所定値を小さく設定する。このように所定値を設定すれば、実電流で定まる実ポンプ吐出量が運転状態に応じた要求ポンプ吐出量に近づくと、ステップS3の判定がNOとなってエンジン出力制限を解除または緩和する制御が行われる。したがって、エンジン出力を実ポンプ吐出量に応じた値に調整することができ、潤滑,冷却性能を満たしつつエンジン出力を高めることができる。ただし、例えば、電流が中間値(中間のポンプ吐出量)で固定されたときに、エンジン出力制限を解除または緩和した状態でエンジン出力が急激に増大した場合など過渡状態では、ポンプ吐出量が不足することが考えられる。そこで、このような過渡状態でも速やかにエンジン出力が制限されるように、ステップS3の所定値を、要求ポンプ吐出量に対して余裕を持たせた値(ポンプ吐出量増大側の小さめの電流値)に設定するのが好ましい。
また、エンジン出力制限の解除または緩和についても、出力制限状態から徐々に解除する、すなわち、出力を漸増させて急激な運転状態変化を抑制するようにしてもよい。さらに、完全に制限を解除せず、ステップS6で制限された出力の制限量に対し、所定割合(<1)だけ制限を解除、つまり制限を緩和する構成としてもよい。
なお、潤滑用と冷却用のオイル供給を、併用して制御する他、これらを独立して又は切り換えて制御するものに適用できることも勿論である。
また、上記実施形態では、過電流検出時にソレノイド22への通電を遮断してポンプ吐出量を最大限増大するようにしたが、ソレノイド22への通電を遮断せず、通電を行いつつ制限する構成としてもよい。例えば、ポンプ最大吐出量がフェールセーフ時の要求吐出量に比較して十分大きく設定されているような場合は、ソレノイド22の目標電流をフェールセーフ時の要求吐出量相当の値に設定して通電制御してもよい。なお、かかる制御を行っても過電流を解消できない場合があるので、エンジン出力制限を併用する。
このようにすれば、必要時以外のポンプ吐出量増大による燃費の悪化、エンジン出力制限による運転性悪化を抑制できる。
また、上述したように、可変容量型ポンプをエンジンのウォータポンプとして冷却水供給に使用するものにも適用でき、同様の効果を得られる。すなわち、ポンプ容量制御の異常検出時に、冷却水供給量を増大する制御を行いつつ、エンジン出力を制限して要求冷却量を減少して冷却性能を確保でき、必要なポンプ容量が確保されると判定したときは、エンジン制限を解除または緩和して運転性を良好に維持することができる。
前記異常診断手段は、ポンプ容量制御の異常の有無を、前記電動アクチュエータの目標電流と実電流との比較によって判定する。
かかる構成とすれば、電動アクチュエータの通電量の異常によって、ポンプ容量制御の異常の有無を、容易にかつ適確に診断できる。
前記異常診断手段は、ポンプ容量制御の異常の有無を、前記電動アクチュエータの目標電流をフィルタ処理した値と実電流との比較によって判定する。
かかる構成とすれば、電動アクチュエータがソレノイドで構成され、実電流が目標電流に収束するのに遅れ(時定数による位相ずれ)を生じる場合でも、フィルタ処理後の目標電流に変化の遅れを持たせることにより、誤判定を抑制することができる。
32…駆動回路、33…CVT−CU(CVTコントロールユニット)、33a…フェール判定部、33b…目標電流演算部、34…電源、35…ポンプ回転数センサ、37…電流センサ、39…警告表示部、40…ECU(エンジンコントロールユニット)、40a…エンジン出力制限部
Claims (3)
- ポンプ本体に付属する制御弁を駆動する電動アクチュエータへの通電量を制御して、ポンプ容量を可変制御する車両用の可変容量型ポンプの制御装置であって、
前記ポンプ容量制御の異常を診断する異常診断手段と、
前記異常診断手段により前記ポンプ容量制御の異常を検出したときに、前記電動アクチュエータへの通電を制限する操作を行うと共に、前記ポンプ本体から吐出される作動流体の供給対象の運動量を制限する第1フェールセーフ手段と、
前記第1フェールセーフ手段による前記供給対象の運転制限後に、必要なポンプ容量が確保されると判定したときは、前記供給対象の運転の制限を解除または緩和する第2フェールセーフ手段と、
を含んで構成したことを特徴とする可変容量型ポンプの制御装置。 - 前記電動アクチュエータは、通電量の減少に応じて前記ポンプ本体からの吐出量が増大する特性に設定されている請求項1に記載の可変容量型ポンプの制御装置。
- 前記作動流体は、オイル又は冷却水である請求項1または請求項2に記載の可変容量型ポンプの制御装置。
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