以下、本発明に係る自動変速機の油圧供給装置の具体的な構成について、実施形態毎に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4を参照しながら、第1実施形態に係る自動変速機の油圧供給装置10について説明する。
[全体構成]
図1に示すように、油圧供給装置10は、自動変速機の制御に用いられる油圧を生成する油圧供給源としての可変容量型のオイルポンプ20と、該オイルポンプ20の吐出圧をライン圧に調整するレギュレータバルブ40とを備えている。
[オイルポンプ]
オイルポンプ20は、以下に説明される構成部品を収容するハウジング22と、例えばエンジンのクランク軸(図示せず)によって回転駆動される駆動軸24と、駆動軸24に連結されたロータ26と、ロータ26の径方向外側に配置されたカムリング30と、ロータ26の外周面から径方向外側に突出して設けられ、カムリング30内に収容された複数のベーン34とを備えている。
ハウジング22は、オイルパン66からハウジング22内にオイルを取り込む吸入ポート22aと、オイルポンプ20によって昇圧されたオイルをハウジング22外へ吐出する吐出ポート22bとを備えている。
駆動軸24は、エンジンの駆動中において、図1の反時計回り方向に回転駆動される。ロータ26は、駆動軸24の軸心上に配置されており、この軸心周りに駆動軸24と共に回転するように設けられている。
カムリング30は、駆動軸24に平行な支軸31に回転可能に支持されている。カムリング30の外周面とハウジング22の内周面との間には、付勢手段としてのスプリング32が介装されている。カムリング30は、スプリング32によって、ロータ26の軸心に対して常に偏心されるように付勢されている。すなわち、スプリング32によるカムリング30への付勢方向は、ロータ26の軸心に対するカムリング30の偏心量を増大させる方向となっている。なお、カムリング30に付勢力を付与するスプリング32は、エンジン始動時のカムリング30の偏心量を確保できる程度の最低限の弾性力を有していればよい。
複数のベーン34は、周方向に相互に間隔を空けて、軸方向から見て放射状に配置されている。各ベーン34は、周方向の移動が規制された状態でロータ26に保持されており、これにより、ロータ26と共に駆動軸24の軸心周りに回転するようになっている。
また、各ベーン34は、径方向外側に向かって進退可能なようにロータ26に保持されている。ロータ26の回転中において、各ベーン34の径方向外側の端部は、カムリング30の内周面上を摺動するようになっている。
ロータ26の回転中には、ロータ26の外周面、カムリング30の内周面、及び、隣り合う一対のベーン34で囲まれたポンプ室35が形成される。ロータ26の軸心に対してカムリング30が偏心されていることから、ロータ26の外周面とカムリング30の内周面との間の径方向間隔は、周方向位置によって異なる。そのため、複数のポンプ室35間には容積差が存在し、各ポンプ室35の容積は、ロータ26の回転に応じて変化する。
オイルポンプ20の駆動中において、各ポンプ室35は、容積が比較的小さい状態のときに吸入ポート22aに連通し、その後、容積が一旦増大した後、減少している状態のときに吐出ポート22bに連通する。これにより、吸入ポート22aからポンプ室35に取り込まれたオイルは、オイルポンプ20の駆動によって昇圧された状態で吐出ポート22bから吐出される。
カムリング30の外周面とハウジング22の内周面との間には、オイルポンプ20の吐出容量を制御するためのフィードバック油圧がレギュレータバルブ40から供給される第1制御室36及び第2制御室38が設けられている。カムリング30を挟んで、スプリング32とは反対側に第1制御室36が配置され、スプリング32と同じ側に第2制御室38が配置されている。第1制御室36と第2制御室38は、互いに対向するように配置されている。第1制御室36と第2制御室38との間は、例えば樹脂製のシール部材37によって仕切られている。
第1制御室36には、オイルポンプ20の吐出容量を減少させるためのフィードバック油圧が供給され、第2制御室38には、オイルポンプ20の吐出容量を増大させるためのフィードバック油圧が供給される。
カムリング30は、第1制御室36の油圧と、第2制御室38の油圧及びスプリング32の付勢力との大小関係に応じて、第1制御室36側又は第2制御室38側に変位する。すなわち、ロータ26の軸心に対するカムリング30の偏心量は、第1制御室36の油圧と第2制御室38の油圧とのバランスによって決まる。
カムリング30が第2制御室38側に変位することでその偏心量が減少すると、ポンプ室35間の容積差が縮小されることで、オイルポンプ20の吐出容量が減少する。一方、カムリング30が第1制御室36側(スプリング32の付勢方向)に変位することでその偏心量が増大すると、ポンプ室35間の容積差が拡大されることで、オイルポンプ20の吐出容量が増大する。
このように、オイルポンプ20の吐出容量は、第1制御室36及び第2制御室38の油圧に応じて制御される。また、オイルポンプ20の吐出容量の増減に応じて吐出量が増減されることで、オイルポンプ20の吐出圧を調整可能となっている。
オイルポンプ20の吐出ポート22bは、メインライン51を介して、自動変速機の各摩擦締結要素(図示せず)へのオイルの給排を制御する所定の油圧回路2に接続されている。メインライン51には、アキュムレータ61が接続されており、これにより、メインライン51における油振の抑制が図られている。
メインライン51には、アキュムレータ61よりも下流側(油圧回路2側)部分において、オイルポンプ20の吐出圧をレギュレータバルブ40に導く第1サブライン52が接続されている。第1サブライン52は、その下流側(レギュレータバルブ40側)において、第1入力ライン53、第1制御ライン54、第2入力ライン55、及び第2制御ライン56に分岐されている。
[レギュレータバルブ]
レギュレータバルブ40は、軸方向に移動可能なスプール42と、軸方向の一方側(図1の右側)に向かってスプール42に付勢力を付与するリターンスプリング44とを備えている。
また、レギュレータバルブ40は、第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、第1入力ポートB1、第2入力ポートB2、第3入力ポートB3、第1出力ポートC1、第2出力ポートC2、第1ドレンポートD1、第2ドレンポートD2、及び第3ドレンポートD3を備えている。
第1制御ポートA1は第1制御ライン54に、第2制御ポートA2は第2制御ライン56に、第1入力ポートB1は後述の第1接続ライン84に、第2入力ポートB2は第1入力ライン53に、第3入力ポートB3は第2入力ライン55に、それぞれ接続されている。
第1制御ライン54にはオリフィス62が設けられている。これにより、第1制御ポートA1には、オリフィス62によって流量が制限されたオイルが供給されるようになっている。第1制御ポートA1には、オイルポンプ20の吐出圧(ライン圧)に応じた油圧が入力される。第1制御ポートA1に入力される油圧は、リターンスプリング44の弾性力とは反対側(図1の左側)に向かってスプール42を付勢する。
第2制御ライン56には、減圧弁63、第1制御弁64及びオリフィス65が設けられている。これにより、第2制御ライン56に入力された油圧は、減圧弁63によって減圧された後、第1制御弁64によって所定圧に制御される。第1制御弁64によって油圧制御されたオイルは、オリフィス65によって流量が制限されて第2制御ポートA2に供給される。第2制御ポートA2に入力される油圧は、リターンスプリング44の弾性力と同じ側(図1の右側)に向かってスプール42を付勢する。
第1制御弁64としては、例えばリニアソレノイドバルブ等の電磁弁が用いられる。第2制御ポートA2に入力される油圧は、第1制御弁64への制御信号によって、ライン圧の指令値に応じた所定圧になるように制御可能となっている。
第1出力ポートC1は、第1フィードバック油路としての第1フィードバックライン57を介して、オイルポンプ20の第1制御室36に接続されている。第1出力ポートC1は、スプール42の位置に応じて、第1入力ポートB1又は第2ドレンポートD2のいずれか一方に選択的に連通する。
第1出力ポートC1が第1入力ポートB1に連通した状態において、第1入力ポートB1にオイルが供給されると、該オイルは、第1出力ポートC1から第1フィードバックライン57を経由してオイルポンプ20の第1制御室36にフィードバックされる。
第2ドレンポートD2は、第2ドレンライン60を介してオイルパン66に接続されている。第2ドレンポートD2と第1出力ポートC1が連通した状態において、第1フィードバックライン57のオイルは、第2ドレンライン60を経由してドレンされ得るようになっている。
第2出力ポートC2は、第2フィードバック油路としての第2フィードバックライン58を介して、オイルポンプ20の第2制御室38に接続されている。第2出力ポートC2は、スプール42の位置に応じて、第2入力ポートB2又は第3ドレンポートD3のいずれか一方に選択的に連通する。
第2出力ポートC2が第2入力ポートB2に連通した状態において、第2入力ポートB2にオイルが供給されると、該オイルは、第2出力ポートC2から第2フィードバックライン58を経由してオイルポンプ20の第2制御室38にフィードバックされる。
第3ドレンポートD3は、後述の第2接続ライン85及び第3ドレンライン86を介してオイルパン66に接続されている。第3ドレンポートD3と第2出力ポートC2が連通した状態において、第2フィードバックライン58のオイルは、第2接続ライン85及び第3ドレンライン86を経由してドレンされ得るようになっている。
第1ドレンポートD1は、第1ドレンライン59を介してオイルパン66に接続されている。第1ドレンポートD1は、第3入力ポートB3が開放された状態において該第3入力ポートB3に連通し、これにより、第1ドレンライン59を経由したドレンが可能となっている。
[切換機構]
油圧供給装置10は、オイルポンプ20の第1制御室36及び第2制御室38における給排油状態を、第1制御室36又は第2制御室38のいずれか一方に選択的に給油する第1状態と、第1制御室36からの排油状態及び第2制御室38への給油状態を維持する第2状態との間で切り換える切換機構68を更に備えている。
切換機構68は、レギュレータバルブ40に接続された切換バルブ70を有する。切換バルブ70は、軸方向に移動可能なスプール72と、軸方向の一方側(図1の左側)に向かってスプール72に付勢力を付与するリターンスプリング74とを備えている。
また、切換バルブ70は、制御ポートE1、入力ポートF1、出力ポートG1、ドレン入力ポートH1、第1ドレン出力ポートI1、及び第2ドレン出力ポートI2を備えている。
切換機構68は、オイルポンプ20の吐出圧を切換バルブ70に導く第2サブライン81を更に有する。第2サブライン81は、第1サブライン52から分岐されており、これにより、第2サブライン81の上流側(オイルポンプ20側)にライン圧が入力されるようになっている。ただし、第2サブライン81は、メインライン51から分岐されてもよい。第2サブライン81は、その下流側(切換バルブ70側)において、制御ライン82及び入力ライン83に分岐されている。
切換バルブ70の制御ポートE1は、制御ライン82の下流側に接続され、入力ポートF1は、入力ライン83の下流側に接続されている。出力ポートG1は、第1接続ライン84を介してレギュレータバルブ40の第1入力ポートB1に接続され、ドレン入力ポートH1は、第2接続ライン85を介してレギュレータバルブ40の第3ドレンポートD3に接続されている。第1ドレン出力ポートI1は、第3ドレンライン86を介してオイルパン66に接続され、第2ドレン出力ポートI2は、第4ドレンライン87を介してオイルパン66に接続されている。
切換機構68の制御ライン82には、第2制御弁88が設けられている。第2制御弁88としては、例えばオンオフソレノイドバルブ等の電磁弁が用いられる。第2制御弁88は、制御信号に応じて開閉される。第2制御弁88としては、例えば、非通電時に閉状態とされ通電時に開状態となるノーマルクローズタイプの電磁弁が用いられる。
第2制御弁88が閉状態であるとき、制御ポートE1には油圧が供給されず、切換バルブ70のスプール72は、リターンスプリング74の弾性力によって図1の左側に位置される。第2制御弁88が開状態とされると、制御ポートE1に油圧が入力されることで、切換バルブ70のスプール72は、リターンスプリング74の弾性力とは反対側(図1の右側)に向かって付勢されて、図1の右側に位置される。スプール72の軸方向位置は、専ら、制御ポートE1への油圧の入力の有無によって決まる。
切換バルブ70の出力ポートG1は、スプール72の位置に応じて、入力ポートF1又は第2ドレン出力ポートI2のいずれか一方に選択的に連通される。入力ポートF1と出力ポートG1が連通した状態では、切換機構68の入力ライン83から入力ポートF1に供給されたオイルが、出力ポートG1から第1接続ライン84を経由してレギュレータバルブ40の第1入力ポートB1に導かれる。出力ポートG1と第2ドレン出力ポートI2が連通した状態では、第1接続ライン84から第4ドレンライン87を経由したドレンが可能となっている。
切換バルブ70のドレン入力ポートH1は、スプール72の位置に応じて、入力ポートF1又は第1ドレン出力ポートI1のいずれか一方に選択的に連通される。ドレン入力ポートH1と第1ドレン出力ポートI1が連通した状態では、第2接続ライン85から第3ドレンライン86を経由したドレンが可能となっている。ドレン入力ポートH1と入力ポートF1が連通した状態では、入力ポートF1に入力されたライン圧が、第2接続ライン85を経由してレギュレータバルブ40の第3ドレンポートD3に供給され得る。
[ライン圧制御]
切換機構68において、第2制御弁88が閉じられ切換バルブ70の制御ポートE1への油圧供給が停止されることでスプール72が図1の左側に位置するとき、オイルポンプ20の第1制御室36及び第2制御室38の給排油状態は、図2及び図3に示す第1状態になる。
図2及び図3に示す第1状態において、上記の油圧供給装置10の各種構成要素は、第1ライン圧制御(吐出容量可変制御)を行うように機能する。第1ライン圧制御では、第1制御室36又は第2制御室38のいずれか一方にフィードバック油圧が供給され、いずれか他方から排油されることで、オイルポンプ20の吐出容量が変化し、これに応じてオイルポンプ20の吐出量が調整されることで、ライン圧が制御される。
一方、切換機構68において、第2制御弁88が開かれ制御ポートE1に油圧が供給されることでスプール72が図1の右側に位置するとき、オイルポンプ20の第1制御室36及び第2制御室38の給排油状態は、図4に示す第2状態になる。
図4に示す第2状態において、上記の油圧供給装置10の各種構成要素は、第2ライン圧制御(吐出容量固定制御)を行うように機能する。第2ライン圧制御では、オイルポンプ20の第2制御室38への給油状態と第1制御室36からの排油状態とが維持されることで、オイルポンプ20の吐出容量が固定されるとともに、オイルポンプ20から吐出されて油圧回路2に供給されることなくドレンされるオイルの流量が調整されることで、ライン圧が制御される。
このように、油圧供給装置10は、上記の第1ライン圧制御を担う各種構成要素からなる第1ライン圧制御手段と、上記の第2ライン圧制御を担う各種構成要素からなる第2ライン圧制御手段とを備えている。
[第1ライン圧制御]
図2及び図3を参照しながら、第1状態の油圧供給装置10において行われる第1ライン圧制御についてより具体的に説明する。
油圧供給装置10の第1状態において、切換機構68では、第2制御弁88への通電が停止され、閉状態の第2制御弁88によって切換バルブ70の制御ポートE1への油圧供給が遮断されている。この状態において、切換バルブ70では、スプール72が図の左側の位置に固定され、入力ポートF1は出力ポートG1に連通し、ドレン入力ポートH1は第1ドレン出力ポートI1に連通し、第2ドレン出力ポートI2は閉じられている。
これにより、入力ライン83と第1接続ライン84が接続されることで、入力ライン83及び第1接続ライン84を経由してレギュレータバルブ40の第1入力ポートB1に油圧が入力されるとともに、第2接続ライン85と第3ドレンライン86が接続されることで、レギュレータバルブ40の第3ドレンポートD3から第2接続ライン85及び第3ドレンライン86を経由したドレンが可能になる。
一方、レギュレータバルブ40において、スプール42の軸方向位置は、実際のライン圧に応じた第1制御ポートA1への入力油圧と、第1制御弁64によって制御される第2制御ポートA2への入力油圧及びリターンスプリング44の弾性力とのバランスによって適宜調整される。
ライン圧が所定圧に制御されるとき、第1制御弁64の出力は一定圧に制御される。そのため、レギュレータバルブ40において、第2制御ポートA2には一定の油圧が入力されることから、スプール42の軸方向移動は、専ら、第1制御ポートA1に入力される油圧に応じて行われることになる。
第1制御ポートA1に入力される油圧は、オイルポンプ20の吐出圧の変動、すなわちライン圧の変動に応じて変動する。そのため、レギュレータバルブ40のスプール42は、ライン圧が上昇すると図の左方向に移動し、ライン圧が低下すると図の右方向に移動する。
このようなスプール42の軸方向移動に応じて、レギュレータバルブ40の第1出力ポートC1は、図2に示す第1入力ポートB1に連通した状態と、図3に示す第2ドレンポートD2に連通した状態との間で適宜切り換えられ、第2出力ポートC2は、図2に示す第3ドレンポートD3に連通した状態と、図3に示す第2入力ポートB2に連通した状態との間で適宜切り換えられる。
図2に示すように、第1入力ポートB1が第1出力ポートC1に連通し、第2出力ポートC2が第3ドレンポートD3に連通し、第2入力ポートB2及び第2ドレンポートD2が閉じられた状態では、切換バルブ70を経由して第1入力ポートB1に供給されたオイルが、第1出力ポートC1から第1フィードバックライン57を経由してオイルポンプ20の第1制御室36に導かれるとともに、第2制御室38から第2フィードバックライン58に排出されたオイルが、第2接続ライン85及び第3ドレンライン86を経由してドレンされる。
このとき、オイルポンプ20では、第1制御室36にフィードバック油圧が供給され、第2制御室38からオイルがドレンされることで、カムリング30の偏心量、ひいてはオイルポンプ20の吐出容量が減少する。
一方、図3に示すように、第2出力ポートC2が第2入力ポートB2に連通し、第1出力ポートC1が第2ドレンポートD2に連通し、第1入力ポートB1及び第3ドレンポートD3が閉じられた状態では、第1入力ライン53から第2入力ポートB2に供給されたオイルが、第2出力ポートC2から第2フィードバックライン58を経由してオイルポンプ20の第2制御室38に導かれるとともに、第1制御室36から排出されたオイルが、第2ドレンライン60を経由してドレンされる。
このとき、オイルポンプ20では、第2制御室38にフィードバック油圧が供給され、第1制御室36からオイルがドレンされることで、カムリング30の偏心量、ひいてはオイルポンプ20の吐出容量が増大する。
第1ライン圧制御が行われている状態において、ライン圧の異常上昇が生じたときは、レギュレータバルブ40の第3入力ポートB3が開放されて第1ドレンポートD1に連通される。これにより、余剰オイルが第2入力ライン55及び第1ドレンライン59を経由してドレンされることで、他のポート(第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、第1入力ポートB1、及び第2入力ポートB2)に過剰なオイルが流入することを規制でき、これにより、レギュレータバルブ40によるライン圧制御の信頼性が確保されている。
以上のように第1ライン圧制御が行われているときは、レギュレータバルブ40からのフィードバック油圧の供給先がオイルポンプの第1制御室36と第2制御室38との間で適宜切り換えられることによって、オイルポンプ20の吐出容量が適宜変化されることで、オイルポンプ20の吐出量が適宜調整されるため、オイルポンプ20から過剰量のオイルが吐出されることを抑制できる。
したがって、例えば、オイルの温度がある程度高くカムリング30に作用する粘性抵抗が小さいときなど、オイルポンプ20の第1制御室36又は第2制御室38への油圧供給に対するカムリング30の変位応答性が高く、オイルポンプ20の吐出容量を変化させる制御に関して十分な応答性が得られるときには、第1ライン圧制御を行うことで、オイルの浪費を抑制できる。これにより、オイルポンプ20の駆動損失が低減されることで、エンジンの燃費性能の向上に寄与することが可能になる。
[第2ライン圧制御]
図4を参照しながら、第2状態の油圧供給装置10において行われる第2ライン圧制御についてより具体的に説明する。
油圧供給装置10の第2状態において、切換機構68では、第2制御弁88に通電され、開状態の第2制御弁88を経由して切換バルブ70の制御ポートE1に油圧が供給されている。この状態において、切換バルブ70では、スプール72が図の右側の位置に固定され、入力ポートF1はドレン入力ポートH1に連通し、出力ポートG1は第2ドレン出力ポートI2に連通し、第1ドレン出力ポートI1は閉じられている。
これにより、入力ライン83と第2接続ライン85が接続されることで、入力ライン83及び第2接続ライン85を経由してレギュレータバルブ40の第3ドレンポートD3に油圧が入力されるとともに、第1接続ライン84と第4ドレンライン87が接続されることで、レギュレータバルブ40の第1入力ポートB1から第1接続ライン84及び第4ドレンライン87を経由したドレンが可能になる。
図4に示す第2状態において、レギュレータバルブ40の第1入力ポートB1への油圧供給は切換バルブ70によって遮断される。一方で、オイルポンプ20の第1制御室36に油圧供給するためには、第1入力ポートB1に油圧を供給する必要がある。
そのため、第2状態では、第1制御室36への油圧供給が常に規制され、専ら第2制御室38に油圧が供給されることになる。したがって、第2状態では、カムリング30の偏心量が最大になり、オイルポンプ20の吐出容量は最大量に固定される。
その結果、第1状態に比べて、オイルポンプ20の吐出圧は高くなる傾向があり、第1制御ポートA1への入力圧も高くなりやすい。そのため、第2状態において、レギュレータバルブ40のスプール42は、第1状態に比べて図の右側に寄った軸方向領域で、第1制御ポートA1への入力圧、すなわちオイルポンプ20の吐出圧に応じて軸方向移動を行う。
第2状態において、レギュレータバルブ40の第2出力ポートC2は、第3ドレンポートD3に連通される。これにより、切換バルブ70を経由して第2接続ライン85から第3ドレンポートD3に入力された油圧は、第2出力ポートC2から出力されて第2フィードバックライン58を経由してオイルポンプ20の第2制御室38に供給される。
また、第2状態において、レギュレータバルブ40の第1出力ポートC1は、第1入力ポートB1に連通される。これにより、オイルポンプ20の第1制御室36から排出されたオイルは、第1フィードバックライン57、第1接続ライン84、及び第4ドレンライン87を経由してドレンされる。
さらに、第2状態において、レギュレータバルブ40の第3入力ポートB3は、開放されて第1ドレンポートD1に連通した状態になり、これにより、第1ドレンライン59を経由したドレンが行われる。第3入力ポートB3の開度は、スプール42の変位に応じて、すなわちオイルポンプ20の吐出圧に応じて変動する。これにより、第1ドレンライン59を経由したドレン流量は、オイルポンプ20の吐出圧が高いほど多くなり、オイルポンプ20の吐出圧が低いほど少なくなる。
このように、第2ライン圧制御では、オイルポンプ20の吐出容量を最大量に固定させた状態で、第1ドレンライン59を経由したドレン流量を調整することで、ライン圧が制御される。そのため、例えば、冷間時において、オイルの温度が低くカムリング30に作用する粘性抵抗が高いときなど、フィードバック油圧に応じてオイルポンプ20の吐出容量を応答性よく変化させることができないときに、第2ライン圧制御を行うことによって、オイルポンプ20の吐出量を安定させることができる。
したがって、冷間時等、フィードバック油圧に対するオイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が低くなるときには、第2ライン圧制御を行うことで、オイルポンプ20の吐出圧の安定化、ひいてはライン圧の安定化を図ることができ、これにより、自動変速機の油圧制御の精度及び応答性を高めることができる。
[制御システム]
図5に示すように、上述した油圧供給装置10の動作に関連する各種制御は、制御装置100によって行われる。制御装置100は、例えばマイクロプロセッサを主要部として構成されている。
制御装置100には、油圧回路2に供給されるライン圧を検出する油圧センサ101、車両の速度を検出する車速センサ102、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ103、及び、運転者によって選択されている自動変速機のレンジを検出するレンジセンサ104からの信号が入力される。
油圧センサ101は、例えばメインライン51に設けられるが、ライン圧を検出可能な別の油路部分に設けられてもよい。また、油圧センサ101は、必ずしも直接ライン圧を検出しなくてもよく、摩擦締結要素の油圧室に供給される油圧を検出して、該油圧と管路抵抗等とに基づく計算によって、ライン圧が間接的に検出されるようにしてもよい。
車速センサ102によって検出される車両の速度、及び、アクセル開度センサ103によって検出されるアクセル開度の情報は、前進走行レンジ(Dレンジ)が選択されているときの変速制御において、所定の変速マップに基づく目標変速段の決定に用いられる。
なお、上記のセンサ以外にも、積算走行距離計の回転センサ105、油圧供給装置10から油圧回路2に供給されるオイルの温度を検出する油温センサ106、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ、トルクコンバータのタービンの回転数を検出するタービン回転数センサ、エンジンを始動させるために運転者によって操作されるエンジンスイッチ等の各種機器からの信号が制御装置100に入力されるようにしてもよい。
回転センサ105は、車両のドライブシャフト又は自動変速機の出力軸等の回転数を検知するものであり、回転センサ105の出力値に基づいて車両の走行距離が算出される。油温センサ106は、例えば、自動変速機の上記オイルパン66内に配置され、該オイルパン66に貯留されたオイルの温度を検出する。
また、制御装置100は、各種入力信号に基づき、自動変速機の油圧制御に用いられる油圧制御ユニット110を制御する。油圧制御ユニット110は、上述した第1制御弁64及び第2制御弁88に加えて、自動変速機の摩擦締結要素への油圧供給の制御などに用いられる複数の制御弁120を備えている。油圧制御ユニット110の各制御弁64,88,120の動作は、制御装置100から入力された制御信号に基づいて制御される。
制御装置100による自動変速機の変速制御は、車両の運転状態などに応じて行われる。変速制御では、例えば、各摩擦締結要素の油圧室への油圧の給排が制御されることで、複数の摩擦締結要素が選択的に締結され、これにより、車両の運転状態などに応じた変速段が形成される。
また、本実施形態において、制御装置100は、各種入力信号に基づいて第1制御弁64及び第2制御弁88を制御することで、上述した油圧供給装置10の動作を制御する。より具体的に、制御装置100は、上述した第1ライン圧制御(図2及び図3参照)又は第2ライン圧制御(図4参照)のいずれか一方を選択して、該選択された制御態様に従って、オイルポンプ20から油圧回路2に供給されるライン圧(図1〜図4参照)を制御する。
制御装置100によるライン圧制御のために、上記の油圧センサ101は、自動変速機の変速中におけるライン圧の低下量が所定量以上となるライン圧急低下傾向の有無を検出する。
ここでいう「ライン圧急低下傾向」を有する状態は、変速制御の精度及び応答性に悪影響を及ぼす程度にライン圧が急低下する可能性があるが、ライン圧急低下傾向を検出した時点でのライン圧の低下量であれば変速制御の精度及び応答性に悪影響を及ぼさない状態を意味する。
また、ここでいう「所定量」は、変速中におけるライン圧の低下量が「所定量」に達したときに、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えたり、第1ライン圧制御を継続したりすると、変速制御の精度又は応答性に悪影響を及ぼすが、第2ライン圧制御を継続したり、第1ライン圧制御から第2ライン圧制御に切り換えたりした場合には、変速制御を正常に行うことができるような量に設定される。
制御装置100は、油圧センサ101によってライン圧急低下傾向が検出されたとき、第2ライン圧制御を選択して、ライン圧の制御を行う。また、ライン圧急低下傾向の検出に基づいて第2ライン圧制御が選択された後、所定の切換条件が成立したときは、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる。
なお、第1ライン圧制御及び第2ライン圧制御のいずれにおいても、ライン圧の大きさの制御は、上述したように、第1制御弁64(図1〜図4参照)の吐出圧を制御することで行われる。
[制御動作]
図6等に示すフローチャートを参照しながら、制御装置100によるライン圧制御の制御動作の具体例を説明する。なお、図6に示す制御動作は、オイルポンプ20が駆動されている間、すなわちエンジンが駆動されている間、繰り返し実行される。
先ず、ステップS1では、エンジンの駆動が開始されたときから所定時間が経過したか否かが判定される。
ステップS1の判定の結果、所定時間が経過していないときは、第2ライン圧制御(図4参照)が行われる(ステップS2)。このとき、オイルの温度が十分に上昇しておらず高粘度であることなどにより、オイルポンプ20のカムリング30に作用する粘性抵抗が大きく、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が低い状態である可能性があるが、オイルポンプ20の吐出容量を固定した第2ライン圧制御が行われることで、オイルポンプ20の吐出圧の安定化、ひいてはライン圧の安定化が図られる。
一方、ステップS1の判定の結果、所定時間が経過したときは、ステップS3において、自動変速機の変速が開始されたか否かが判定される。
ステップS3の判定の結果、変速が開始されていないときは、第1ライン圧制御(図2及び図3参照)が行われる(ステップS8)。このとき、オイルの温度はある程度上昇しており、変速によるライン圧の落ち込みが生じることもないため、フィードバック油圧に応じて吐出容量を変化させる第1ライン圧制御が行われても、オイルポンプ20によって安定したライン圧を生成することができるとともに、オイルの浪費が抑制されることで、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
一方、ステップS3の判定の結果、変速が開始されたときは、油圧センサ101によってライン圧が監視される(ステップS4)。ステップS4において、油圧センサ101によるライン圧の検出は、変速が開始されたときから所定の監視時間が経過すること、又は、変速が開始されたときからのライン圧の低下量が所定量に達することのうち、いずれか一方の条件が最初に成立するまで継続して行われる。
続くステップS5では、ステップS4におけるライン圧の監視結果に基づいて、変速が開始されたときからのライン圧の低下量が所定量以上であるか否か、すなわち、変速中におけるライン圧の状態がライン圧急低下傾向を有するか否かが判定される。
ステップS5の判定の結果、ライン圧急低下傾向がなければ、第1ライン圧制御(図2及び図3参照)が行われる(ステップS8)。このとき、フィードバック油圧に応じて吐出容量を変化させる第1ライン圧制御が行われても、変速制御に悪影響を及ぼす程度にライン圧が急低下する可能性が低いため、変速制御の精度及び応答性を良好に確保できるとともに、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
一方、ステップS5の判定の結果、ライン圧急低下傾向があれば、第2ライン圧制御(図4参照)が行われる(ステップS6)。これにより、オイルポンプ20の吐出容量が固定されることで、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が低いことに起因するオイルポンプ20の吐出圧低下を抑制できる。したがって、ライン圧の更なる低下が抑制され、ライン圧の急低下によって変速制御の精度及び応答性が悪化することを抑制できる。
ライン圧急低下傾向の検出に基づく第2ライン圧制御の選択(ステップS6)が行われているときは、ステップS7において、所定の切換条件が成立しているか否かを判定する切換条件判定制御が行われ、切換条件が成立すると、第1ライン圧制御(図2及び図3参照)に切り換えられる(ステップS8)。切換条件判定制御の具体例については、後に説明する。
以上の制御動作によれば、変速中における実際のライン圧の落ち込みを検出して(ステップS4)、その落ち込みの程度に応じて、第1ライン圧制御(ステップS8)又は第2ライン圧制御(ステップS6)の選択が行われる(ステップS5)。
すなわち、ライン圧の落ち込みの程度が大きい場合には、第2ライン圧制御が選択されることでライン圧の低下の抑制が図られ、ライン圧の落ち込みの程度が小さい場合には、第1ライン圧制御が選択されることでオイルポンプ20の駆動損失の低減が図られる。したがって、変速制御の精度及び応答性の向上と、エンジンの燃費性能の向上との両立を図ることができる。
[切換条件判定制御]
以下、切換条件判定制御(図6のステップS7)の具体的な制御動作について、制御例毎に説明する。
[第1制御例]
図7に示すフローチャートを参照しながら、第1制御例に係る切換条件判定制御の制御動作について説明する。
先ず、ステップS11において、タイマーのカウントが開始される。具体的に、タイマーのカウントが開始されるタイミングは、図6のステップS5において、ライン圧急低下傾向があると判定されたときである。
続くステップS12では、タイマーの始動時からの経過時間tが所定時間t1未満であるか否かが判定される。所定時間t1は、次回の変速時にライン圧の落ち込みを監視するときにはライン圧急低下傾向が解消される可能性がある程度の時間に設定される。
ステップS12の判定の結果、所定時間t1が経過していなければ、ステップS13において、次の変速が開始されたか否かが判定される。ステップS13の判定の結果、次の変速が開始された場合は、ステップS14において、図6のステップS4と同様にライン圧の落ち込みが監視されるとともに、ステップS15において、図6のステップS5と同様にライン圧急低下傾向の有無が判定される。
ステップS15の判定の結果、ライン圧急低下傾向が検出されなければ、図7に示す切換条件判定制御が終了し、第1ライン圧制御が選択される(図6のステップS8)。すなわち、ライン圧急低下傾向の検出に基づいて第2ライン圧制御が選択された後、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消されていれば、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、オイルポンプ20の吐出容量を適宜変化させる第1ライン圧制御が行われても、変速中におけるライン圧の急低下が生じ難い状況になっているため、変速制御の精度及び応答性を良好に確保できる。
ステップS13の判定の結果、次の変速が開始されていない場合、及び、ステップS15の判定の結果、次の変速中においても再びライン圧急低下傾向が検出された場合、ステップS12に戻って、経過時間tの判定が行われる。
経過時間tが所定時間t1に達するか、又は、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消するまでは、ステップS12〜ステップS15の処理が繰り返し実行される。
次回の変速が行われる前、又は、次回以降の変速時にライン圧急低下傾向が解消される前にステップS12の判定が行われた結果、所定時間t1が経過すると、切換条件が成立したものとみなされる。これにより、図7に示す切換条件判定制御が終了し、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる(図6のステップS8)。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、所定時間t1が経過するまでの間にオイルの温度が十分に上昇することで、オイルポンプ20のカムリング30に作用する粘性抵抗が十分に低減していれば、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が良好に確保されるため、吐出容量が適宜変化される第1ライン圧制御を行いつつ、オイルポンプ20の吐出圧の低下を効果的に抑制可能である。
なお、所定時間t1が経過するまでのオイルの温度上昇が不十分である場合などには、図7に示す切換条件判定制御が終了した後、図6のステップS5において、次回の変速時のライン圧急低下傾向が検出される可能性があるが、この場合は、再び第2ライン圧制御に切り換えられることで(図6のステップS6)、当該変速中におけるライン圧の低下を抑制できる。
[第2制御例]
図8に示すフローチャートを参照しながら、第2制御例に係る切換条件判定制御の制御動作について説明する。
先ず、ステップS21において、自動変速機の次の変速が開始されたか否かが判定される。ステップS21の判定は、次の変速が開始されるまで繰り返し実行される。
ステップS21の判定の結果、次の変速が開始されると、続くステップS22において、変速回数nが1回分加算される。変速回数nは、図6のステップS5においてライン圧急低下傾向があると判定されたとき以降に行われた変速の回数である。
続くステップS23では、変速回数nが所定回数n1未満であるか否かが判定される。所定時間n1は、次回の変速時にライン圧の落ち込みを監視するときにはライン圧急低下傾向が解消される可能性がある程度の回数に設定される。
ステップS23の判定の結果、変速回数nが所定回数n1に達していなければ、ステップS24において、図6のステップS4と同様にライン圧の落ち込みが監視されるとともに、ステップS25において、図6のステップS5と同様にライン圧急低下傾向の有無が判定される。
ステップS25の判定の結果、ライン圧急低下傾向が検出されなければ、図8に示す切換条件判定制御が終了し、第1ライン圧制御が選択される(図6のステップS8)。すなわち、ライン圧急低下傾向の検出に基づいて第2ライン圧制御が選択された後、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消されていれば、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、オイルポンプ20の吐出容量を適宜変化させる第1ライン圧制御が行われても、変速中におけるライン圧の急低下が生じ難い状況になっているため、変速制御の精度及び応答性を良好に確保できる。
ステップS25の判定の結果、再びライン圧急低下傾向が検出された場合、ステップS21に戻って、ステップS21〜ステップS23の処理が再び実行される。また、ステップS23において変速回数nが所定回数n1に達するか、又は、ステップS25においてライン圧急低下傾向が解消するまでは、ステップS21〜ステップS25の処理が繰り返し実行される。
変速時のライン圧急低下傾向が解消される前にステップS23の判定が行われた結果、変速回数nが所定回数n1に達すると、切換条件が成立したものとみなされる。これにより、図8に示す切換条件判定制御が終了し、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる(図6のステップS8)。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、変速回数nが所定回数n1に達するまでの間にオイルの温度が十分に上昇することで、オイルポンプ20のカムリング30に作用する粘性抵抗が十分に低減していれば、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が良好に確保されるため、吐出容量が適宜変化される第1ライン圧制御を行いつつ、オイルポンプ20の吐出圧の低下を効果的に抑制可能である。
なお、変速回数nが所定回数n1に達するまでのオイルの温度上昇が不十分である場合などには、図8に示す切換条件判定制御が終了した後、図6のステップS5において、次回の変速時のライン圧急低下傾向が検出される可能性があるが、この場合は、再び第2ライン圧制御に切り換えられることで(図6のステップS6)、当該変速中におけるライン圧の低下を抑制できる。
[第3制御例]
図9に示すフローチャートを参照しながら、第3制御例に係る切換条件判定制御の制御動作について説明する。
先ず、ステップS31において、上記の積算走行距離計の計測値に基づいて、車両の積算走行距離の初期値D0が読み込まれる。この初期値D0は、図6のステップS5においてライン圧急低下傾向があると判定されたときの積算走行距離である。
続くステップS32では、上記の積算走行距離計の計測値に基づいて、現時点での車両の積算走行距離Dが読み込まれ、続くステップS33では、ステップS32で読み込まれた現在の積算走行距離Dと、ステップS31で読み込まれた積算走行距離の初期値D0とに基づいて、変速中のライン圧急低下傾向が検出されたときからの車両走行距離(D−D0)が、所定距離D1未満であるか否かが判定される。
所定距離D1は、次回の変速時にライン圧の落ち込みを監視するときにはライン圧急低下傾向が解消される可能性がある程度の距離に設定される。
ステップS33の判定の結果、車両走行距離(D−D0)が所定距離D1に達していなければ、ステップS34において、次の変速が開始されたか否かが判定される。ステップS34の判定の結果、次の変速が開始された場合は、ステップS35において、図6のステップS4と同様にライン圧の落ち込みが監視されるとともに、ステップS36において、図6のステップS5と同様にライン圧急低下傾向の有無が判定される。
ステップS36の判定の結果、ライン圧急低下傾向が検出されなければ、図9に示す切換条件判定制御が終了し、第1ライン圧制御が選択される(図6のステップS8)。すなわち、ライン圧急低下傾向の検出に基づいて第2ライン圧制御が選択された後、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消されていれば、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、オイルポンプ20の吐出容量を適宜変化させる第1ライン圧制御が行われても、変速中におけるライン圧の急低下が生じ難い状況になっているため、変速制御の精度及び応答性を良好に確保できる。
ステップS34の判定の結果、次の変速が開始されていない場合、及び、ステップS36の判定の結果、次の変速中においても再びライン圧急低下傾向が検出された場合、ステップS32に戻って、現時点での積算走行距離Dが更新され、次のステップS33において、車両走行距離(D−D0)の判定が再び行われる。
車両走行距離(D−D0)が所定距離D1に達するか、又は、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消するまでは、ステップS32〜ステップS36の処理が繰り返し実行される。
次回の変速が行われる前、又は、次回以降の変速時にライン圧急低下傾向が解消される前にステップS33の判定が行われた結果、車両走行距離(D−D0)が所定距離D1に達すると、切換条件が成立したものとみなされる。これにより、図9に示す切換条件判定制御が終了し、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる(図6のステップS8)。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、車両走行距離(D−D0)が所定距離D1に達するまでの間にオイルの温度が十分に上昇することで、オイルポンプ20のカムリング30に作用する粘性抵抗が十分に低減していれば、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が良好に確保されるため、吐出容量が適宜変化される第1ライン圧制御を行いつつ、オイルポンプ20の吐出圧の低下を効果的に抑制可能である。
なお、車両走行距離(D−D0)が所定距離D1に達するまでのオイルの温度上昇が不十分である場合などには、図9に示す切換条件判定制御が終了した後、図6のステップS5において、次回の変速時のライン圧急低下傾向が検出される可能性があるが、この場合は、再び第2ライン圧制御に切り換えられることで(図6のステップS6)、当該変速中におけるライン圧の低下を抑制できる。
[第4制御例]
図10に示すフローチャートを参照しながら、第4制御例に係る切換条件判定制御の制御動作について説明する。
先ず、ステップS41において、上記の油温センサ106(図5参照)の検出値に基づいて、オイルの温度の初期値T0が読み込まれる。この初期値T0は、図6のステップS5においてライン圧急低下傾向があると判定されたときのオイルの温度である。
続くステップS42では、油温センサ106(図5参照)の検出値に基づいて、現時点でのオイルの温度Tが読み込まれ、続くステップS43では、ステップS42で読み込まれた現在のオイルの温度Tと、ステップS41で読み込まれた初期値T0とに基づいて、変速中のライン圧急低下傾向が検出されたときからのオイルの上昇温度(T−T0)が、所定量T1未満であるか否かが判定される。
所定量T1は、次回の変速時にライン圧の落ち込みを監視するときにはライン圧急低下傾向が解消される可能性がある程度の上昇量に設定される。
ステップS43の判定の結果、上昇温度(T−T0)が所定量T1に達していなければ、ステップS44において、次の変速が開始されたか否かが判定される。ステップS44の判定の結果、次の変速が開始された場合は、ステップS45において、図6のステップS4と同様にライン圧の落ち込みが監視されるとともに、ステップS46において、図6のステップS5と同様にライン圧急低下傾向の有無が判定される。
ステップS46の判定の結果、ライン圧急低下傾向が検出されなければ、図10に示す切換条件判定制御が終了し、第1ライン圧制御が選択される(図6のステップS8)。すなわち、ライン圧急低下傾向の検出に基づいて第2ライン圧制御が選択された後、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消されていれば、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、オイルポンプ20の吐出容量を適宜変化させる第1ライン圧制御が行われても、変速中におけるライン圧の急低下が生じ難い状況になっているため、変速制御の精度及び応答性を良好に確保できる。
ステップS44の判定の結果、次の変速が開始されていない場合、及び、ステップS46の判定の結果、次の変速中においても再びライン圧急低下傾向が検出された場合、ステップS42に戻って、現時点でのオイルの温度Tが更新され、次のステップS43において、上昇温度(T−T0)の判定が再び行われる。
上昇温度(T−T0)が所定量T1に達するか、又は、次回以降の変速時においてライン圧急低下傾向が解消するまでは、ステップS42〜ステップS46の処理が繰り返し実行される。
次回の変速が行われる前、又は、次回以降の変速時にライン圧急低下傾向が解消される前にステップS43の判定が行われた結果、上昇温度(T−T0)が所定量T1に達すると、切換条件が成立したものとみなされる。これにより、図10に示す切換条件判定制御が終了し、第2ライン圧制御から第1ライン圧制御に切り換えられる(図6のステップS8)。これにより、オイルポンプ20の駆動損失の低減、ひいてはエンジンの燃費性能の向上を図ることができる。
このとき、オイルの温度が十分に上昇していることで、オイルポンプ20のカムリング30に作用する粘性抵抗が十分に低減していれば、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が良好に確保されるため、吐出容量が適宜変化される第1ライン圧制御を行いつつ、オイルポンプ20の吐出圧の低下を効果的に抑制可能である。
なお、オイルポンプ20の吐出容量制御の応答性が不十分である場合には、図10に示す切換条件判定制御が終了した後、図6のステップS5において、次回の変速時のライン圧急低下傾向が検出される可能性があるが、この場合は、再び第2ライン圧制御に切り換えられることで(図6のステップS6)、当該変速中におけるライン圧の低下を抑制できる。
[第2実施形態]
図11〜図14を参照しながら、第2実施形態に係る自動変速機の油圧供給装置210について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成については、説明を省略するとともに、図11〜図14において同一の符号を付している。
[全体構成]
図11に示すように、油圧供給装置210は、自動変速機の制御に用いられる油圧を生成する油圧供給源としての可変容量型のオイルポンプ220と、該オイルポンプ220の吐出圧をライン圧に調整するレギュレータバルブ240とを備えている。
[オイルポンプ]
オイルポンプ220は、第1実施形態のオイルポンプ20(図1参照)と同様のハウジング22、駆動軸24、ロータ26、カムリング30、複数のベーン34、及び複数のポンプ室35を備えている。また、カムリング30の外周面とハウジング22の内周面との間には、付勢手段としてのスプリング232が介装されている。カムリング30は、スプリング232によって、ロータ26の軸心に対して常に偏心されるように付勢されている。
カムリング30の外周面とハウジング22の内周面との間には、オイルポンプ220の吐出容量を制御するための油圧が供給される制御室236が設けられている。第2実施形態のオイルポンプ220には、第1実施形態とは異なり、制御室236が1つのみ設けられている。制御室236は、カムリング30を挟んで、スプリング232とは反対側に配置されている。
また、カムリング30の外周面とハウジング22の内周面との間には、制御室236に対向する対向室238が設けられている。対向室238内には、上記のスプリング232が配置されている。制御室236と対向室238との間は、例えば樹脂製のシール部材237によって仕切られている。なお、対向室238には、対向室238に流入したオイルをドレンするための排油路258が接続されている。
制御室236に供給される油圧が上昇されると、カムリング30は、スプリング232の付勢力に抗して対向室238側に変位し、これにより、ロータ26の軸心に対するカムリング30の偏心量が減少する。
一方、制御室236に供給される油圧が減少されると、カムリング30は、スプリング232の付勢方向に変位し、これにより、ロータ26の軸心に対するカムリング30の偏心量が増大する。
カムリング30の偏心量が増大すると、ポンプ室35間の容積差が拡大され、これにより、オイルポンプ220の吐出容量が上昇する。逆に、カムリング30の偏心量が減少すると、ポンプ室35間の容積差が縮小されることで、オイルポンプ220の吐出容量が低下する。
このように、第2実施形態のオイルポンプ220の制御室は、吐出容量を減少させるためのフィードバック油圧が供給される制御室236のみであり、該制御室236の油圧が上昇することで吐出容量が低下し、制御室236の油圧が低下することで吐出容量が上昇する。そのため、1つの制御室236の油圧を制御するだけで、オイルポンプ220の吐出容量を制御でき、これにより、該吐出容量の制御に関する応答性の向上を図ることができるとともに、油路構成の簡素化を図ることができる。
第1実施形態と同様、オイルポンプ220の吐出ポート22bは、メインライン51を介して、自動変速機の各摩擦締結要素(図示せず)へのオイルの給排を制御する所定の油圧回路2に接続されており、メインライン51には、オイルポンプ220の吐出圧をレギュレータバルブ240に導くサブライン252が接続されている。
サブライン252は、第1実施形態の第1サブライン52と同様、その下流側(レギュレータバルブ240側)において、第1入力ライン53、第1制御ライン54、第2入力ライン55、及び第2制御ライン56に分岐されている。
[レギュレータバルブ]
レギュレータバルブ240は、軸方向に移動可能なスプール242と、軸方向の一方側(図11の右側)に向かってスプール242に付勢力を付与するリターンスプリング244とを備えている。
また、レギュレータバルブ240は、第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、フィードバック用入力ポートB1、ドレン用入力ポートB3、出力ポートC1、第1ドレンポートD1、及び第2ドレンポートD2を備えている。
第2実施形態のレギュレータバルブ240における第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、フィードバック用入力ポートB1、ドレン用入力ポートB3、出力ポートC1、第1ドレンポートD1、及び第2ドレンポートD2は、それぞれ、第1実施形態のレギュレータバルブ40(図1参照)における第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、第1入力ポートB1、第3入力ポートB3、第1出力ポートC1、第1ドレンポートD1、及び第2ドレンポートD2に相当するポートである。
レギュレータバルブ240には、第1実施形態の第2入力ポートB2、第2出力ポートC2、及び第3ドレンポートD3(図1参照)に相当するポートが設けられていない。これにより、第1実施形態に比べて、ポートの個数が削減されているとともに、スプール242が長さ方向にコンパクト化されている。そのため、第1実施形態に比べて、スプール242の摺動に関する応答性の向上を図ることができる。
第1実施形態と同様、第1制御ポートA1は第1制御ライン54に、第2制御ポートA2は第2制御ライン56に、ドレン用入力ポートB3は第2入力ライン55に、それぞれ接続されている。また、第1実施形態と同様、第1ドレンポートD1は第1ドレンライン59を介して、第2ドレンポートD2は第2ドレンライン60を介して、それぞれオイルパン66に接続されている。
第1制御ポートA1には、オイルポンプ220の吐出圧(ライン圧)に応じた油圧が入力される。第1制御ポートA1に入力される油圧は、リターンスプリング244の弾性力とは反対側(図11の左側)に向かってスプール242を付勢する。なお、第1制御ポートA1には、オリフィス62によって流量が制限されたオイルが供給される。
第2制御ライン56には、第1実施形態と同様の減圧弁63、第1制御弁64及びオリフィス65が設けられている。第2制御ポートA2には、ライン圧の指令値に応じて第1制御弁64によって制御された油圧が入力される。第2制御ポートA2に入力される油圧は、リターンスプリング244の弾性力と同じ側(図11の右側)に向かってスプール242を付勢する。なお、第2制御ポートA2には、オリフィス65によって流量が制限されたオイルが供給される。
出力ポートC1は、制御室236へフィードバック油圧を導くフィードバック油路としてのフィードバックライン257を介して、オイルポンプ220の制御室236に接続されている。出力ポートC1は、スプール242の位置に応じて、フィードバック用入力ポートB1又は第2ドレンポートD2のいずれか一方に選択的に連通する。
フィードバック用入力ポートB1は、第1入力ライン53に接続されている。また、第1入力ライン53には、第1実施形態とは異なり、フィードバックライン257を開閉する開閉手段としての第2制御弁270が設けられている。
第2制御弁270としては、例えばオンオフソレノイドバルブ等の電磁弁が用いられる。第2制御弁270は、制御信号に応じて開閉される。第2制御弁270としては、例えば、非通電時に開状態とされ通電時に閉状態となるノーマルオープンタイプの電磁弁が用いられる。
出力ポートC1がフィードバック用入力ポートB1に連通し、第2制御弁270が開かれた状態において、第1入力ライン53から第1入力ポートB1にオイルが供給されると、該オイルは、出力ポートC1からフィードバックライン257を経由してオイルポンプ220の制御室236にフィードバックされる。
一方、出力ポートC1が第2ドレンポートD2に連通した状態では、フィードバックライン257のオイルが第2ドレンライン60を経由してドレンされ得るようになっている。
第1ドレンポートD1は、ドレン用入力ポートB3が開放された状態において該ドレン用入力ポートB3に連通し、これにより、第1ドレンライン59を経由したドレンが可能となっている。
レギュレータバルブ240において、スプール242の軸方向位置は、実際のライン圧に応じた第1制御ポートA1への入力油圧と、第1制御弁64によって制御される第2制御ポートA2への入力油圧及びリターンスプリング244の弾性力とのバランスによって適宜調整される。
第1制御ポートA1に入力される油圧は、オイルポンプ220の吐出圧の変動、すなわちライン圧の変動に応じて変動する。そのため、レギュレータバルブ240のスプール242は、ライン圧が上昇すると図の左方向に移動し、ライン圧が低下すると図の右方向に移動する。
[ライン圧制御]
上記の第2制御弁270が開かれた状態において、オイルポンプ220の制御室236の給排油状態は、図12及び図13に示す第1状態になる。第1状態において、油圧供給装置210の各種構成要素は、第1ライン圧制御(吐出容量可変制御)を行うように機能する。
図12及び図13に示すように、第1ライン圧制御では、オイルポンプ220の制御室236への油圧の給排が行われることでオイルポンプ220の吐出容量が変化し、これに応じてオイルポンプ220の吐出量が調整されることで、ライン圧が制御される。
一方、第2制御弁270が閉じられた状態において、オイルポンプ220の制御室236の給排油状態は、図14に示す第2状態になる。第2状態において、油圧供給装置210の各種構成要素は、第2ライン圧制御(吐出容量固定制御)を行うように機能する。
図14に示すように、第2ライン圧制御では、オイルポンプ220の制御室236への給油が規制されることで、オイルポンプ220の吐出容量が固定されるとともに、オイルポンプ220から吐出されて油圧回路2に供給されることなくドレンされるオイルの流量が調整されることで、ライン圧が制御される。
このように、油圧供給装置210は、上記の第1ライン圧制御を担う各種構成要素からなる第1ライン圧制御手段と、上記の第2ライン圧制御を担う各種構成要素からなる第2ライン圧制御手段とを備えている。また、第2制御弁270は、制御室236の給排油状態を第1状態と第2状態との間で切り換える切換機構として機能する。
[第1ライン圧制御]
図12及び図13を参照しながら、第2実施形態における第1ライン圧制御についてより具体的に説明する。
第1ライン圧制御が行われているとき、レギュレータバルブ240の出力ポートC1は、スプール242の軸方向移動に応じて、図12に示すフィードバック用入力ポートB1に連通した状態と、図13に示す第2ドレンポートD2に連通した状態との間で適宜切り換えられる。
図12に示すように、フィードバック用入力ポートB1が出力ポートC1に連通し、第2ドレンポートD2が閉じられた状態では、フィードバック用入力ポートB1に供給されたオイルが、出力ポートC1からフィードバックライン257を経由してオイルポンプ220の制御室236に導かれる。これにより、制御室236にフィードバック油圧が供給されると、カムリング30の偏心量、ひいてはオイルポンプ220の吐出容量が減少する。
一方、図13に示すように、フィードバック用入力ポートB1が閉じられた状態では、フィードバック用入力ポートB1からフィードバックライン257への油圧供給、ひいては制御室236への油圧供給が停止される。これにより、制御室236の油圧が低下することで、カムリング30の偏心量、ひいてはオイルポンプ220の吐出容量が増大する。
このとき、出力ポートC1は第2ドレンポートD2に連通した状態となっているため、制御室236からフィードバックライン257へ排出されたオイルは、フィードバックライン257及び第2ドレンライン60を経由してドレンされる。これにより、制御室236からのスムーズな排油が促される。
なお、第1ライン圧制御が行われている状態において、ライン圧の異常上昇が生じたときは、レギュレータバルブ240のドレン用入力ポートB3が開放されて第1ドレンポートD1に連通される。これにより、余剰オイルが第2入力ライン55及び第1ドレンライン59を経由してドレンされることで、他のポート(第1制御ポートA1、第2制御ポートA2、及びフィードバック用入力ポートB1)に過剰なオイルが流入することを規制でき、これにより、レギュレータバルブ240によるライン圧制御の信頼性が確保されている。
以上のように第1ライン圧制御が行われているときは、オイルポンプ220の吐出圧に応じて、制御室236に供給されるフィードバック油圧を変化させることによって、オイルポンプ220の吐出容量が適宜変化されることで、オイルポンプ220の吐出量が適宜調整されるため、オイルポンプ220から過剰量のオイルが吐出されることを抑制できる。
したがって、例えば、オイルの温度がある程度高くカムリング30に作用する粘性抵抗が小さいときなど、制御室236への油圧供給に対するカムリング30の変位応答性が高く、オイルポンプ220の吐出容量を変化させる制御に関して十分な応答性が得られるときには、第1ライン圧制御を行うことで、オイルの浪費を抑制できる。これにより、オイルポンプ220の駆動損失が低減されることで、エンジンの燃費性能の向上に寄与することが可能になる。
[第2ライン圧制御]
図14を参照しながら、第2実施形態における第2ライン圧制御についてより具体的に説明する。
第2ライン圧制御が行われているとき、レギュレータバルブ240のフィードバック用入力ポートB1への油圧供給は第2制御弁270によって遮断され、制御室236への油圧供給が常に規制されることになる。したがって、カムリング30の偏心量が最大になり、オイルポンプ220の吐出容量は最大量に固定される。
その結果、第1ライン圧制御が行われているときに比べて、オイルポンプ220の吐出圧は高くなる傾向があり、第1制御ポートA1への入力圧も高くなりやすい。そのため、図14に示す第2状態において、レギュレータバルブ240のスプール242は、図12及び図13に示す第1状態に比べて図の右側に寄った軸方向領域で、第1制御ポートA1への入力圧、すなわちオイルポンプ220の吐出圧に応じて軸方向移動を行う。
第2状態において、レギュレータバルブ240のドレン用入力ポートB3は、開放されて第1ドレンポートD1に連通した状態になり、これにより、第1ドレンライン59を経由したドレンが行われる。ドレン用入力ポートB3の開度は、スプール242の変位に応じて、すなわちオイルポンプ220の吐出圧に応じて変動する。これにより、第1ドレンライン59を経由したドレン流量は、オイルポンプ220の吐出圧が高いほど多くなり、オイルポンプ220の吐出圧が低いほど少なくなる。
このように、第2ライン圧制御では、オイルポンプ220の吐出容量を最大量に固定させた状態で、第1ドレンライン59を経由したドレン流量を調整することで、ライン圧が制御される。そのため、例えば、冷間時において、オイルの温度が低くカムリング30に作用する粘性抵抗が高いときなど、フィードバック油圧に応じてオイルポンプ220の吐出容量を応答性よく変化させることができないときに、第2ライン圧制御を行うことによって、オイルポンプ220の吐出量を安定させることができる。
したがって、冷間時等、フィードバック油圧に対するオイルポンプ220の吐出容量制御の応答性が低くなるときには、第2ライン圧制御を行うことで、オイルポンプ220の吐出圧の安定化、ひいてはライン圧の安定化を図ることができ、これにより、自動変速機の油圧制御の精度及び応答性を高めることができる。
以上で説明した第2実施形態に係る油圧供給装置210の動作は、第1実施形態で説明した制御装置100によって同様に制御される。この制御では、第1実施形態の第2制御弁88に代えて、第2実施形態の第2制御弁270の開閉動作が制御されることで、第1ライン圧制御と第2ライン圧制御との間の選択が適宜行われながら、ライン圧の制御が行われる。これにより、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、切換条件判定制御の具体的制御動作として、上記の第1制御例〜第4制御例(図7〜図10参照)を例示したが、これらの制御例は例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば上記の第1制御例〜第4制御例では、切換条件を構成するパラメータとして、ライン圧急低下傾向が検出されたときからの経過時間、変速回数、車両走行距離、又は油温上昇量が用いられる例を説明したが、切換条件を構成するパラメータはこれらに限定されるものでない。また、切換条件は、複数のパラメータで構成されてもよく、この場合、複数のパラメータのうちいずれか1つのパラメータが最初に所定値に達したときに、切換条件が成立したものとみなせばよい。
また、上述の第2実施形態において、フィードバックライン257を開閉する開閉手段は、スプールバルブと該スプールバルブのスプール位置を制御する制御弁とを組み合わせた構成であってもよい。この場合、フィードバック用入力ポートB1に供給されるオイル流量を確保しやすくなる。
さらに、上述の第1及び第2実施形態では、ベーンタイプの可変容量型オイルポンプを備えた油圧供給装置を例に挙げて本発明を説明したが、本発明において、可変容量型オイルポンプの種類や具体的構成は、該オイルポンプの制御室に供給される油圧に応じて吐出容量が変化するように構成されたものであれば、特に限定されるものでない。