JP5384239B2 - 調湿建材及びその記録方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インクにより表面に直接画像記録された調湿建材及びその記録方法に関する。
調湿建材とは、一般に住宅用建材として用いられているので、室内の湿度を調整することができる機能を備えている。例えば、室内の内壁に用いた場合、室内の湿度が高くなると湿気を吸収して湿度を下げるように作用し、室内が乾燥して湿度が低くなると湿気を放出して湿度を上げるように作用して、室内が快適な湿度に保たれるようになる。
調湿建材は、こうした調湿機能を発揮するために多孔質材料が使用されている。多孔質材料は、1〜数十ナノメートルのサイズの微細な細孔が表面全体に多数形成されており、形成された細孔の内部に空気中の水分子が吸収され又は内部から水分子が放出されることで、空気中の湿度の調整を行うことができるようになっている。そして、調湿建材の調湿機能は、形成された細孔の大きさや量及び細孔の連続性等によりその性能がどの程度か決まってくる。
調湿建材の調湿機能は、例えば、社団法人日本建材・住宅設備産業協会において調湿建材判定基準の中で規定されている。調湿建材判定基準では、調湿建材の調湿性として、吸放湿量(JIS A 1470−1;2002に準拠した方法で測定)及び平衡含水率(JIS A 1475;2004に準拠した方法で測定)が規定されている。
こうした調湿建材を内装材として用いる場合、調湿建材に対して柄模様や色彩等の意匠を施すことが求められている。しかしながら、調湿建材の表面全体に塗装や印刷を行うと調湿機能が大きく低下するため、調湿機能を確保しつつ意匠性を持たせた調湿建材の開発が要請されている。
意匠性を備えた調湿建材としては、例えば、特許文献1では、原料となるケイ酸カルシウム水和物の粉体に平均粒径0.1〜2.0μmの着色顔料を添加して板状に成形した調湿建材が記載されている。また、特許文献2では、調湿性を有する板状の仕上げ材の表面に薄紙及び化粧が施された不織布を積層し、仕上げ材以外の部分の透気度を3000秒/100cc以下とした化粧仕上げ材が記載されている。
特開2002−029804号公報 特開2003−074161号公報
特許文献1では、着色顔料を予め原料に混合して成形しているので、調湿機能は維持されるが、単調な着色や柄模様しか表現することができず、意匠性の点で課題がある。また、建材の内部まで顔料が含まれるようになるため大量の顔料を混合する必要があり、大量の顔料を添加することで建材の強度が低下するおそれがある。
特許文献2では、不織布に予め印刷等により彩色を施して仕上げ材に積層するので、直接印刷する場合に比べて仕上げ材に対する通気性が確保されるが、彩色のための印刷工程及び仕上げ材への積層工程が必要となって生産効率が悪いといった課題がある。また、仕上げ材の表面に凹凸模様が形成されている場合には、不織布の接着不良が生じやすくなり、また凹凸模様と彩色との間の位置合せを行わなければならず、生産工程が複雑になるおそれがある。
そこで、本発明は、調湿機能を維持しつつエネルギー反応硬化型インクを用いた画像記録を行うことで意匠性に富んだ調湿建材を提供することを目的とするものである。
本発明に係る調湿建材は、調湿機能を有するとともに表面粗さrが0.5μm〜1.9μmである基材の表面にエネルギー反応硬化型インクにより画像を記録した調湿建材であって、前記表面積に対する前記記録面積の比率である記録面積率Sが次の式を満たすことを特徴とする。
S≦(b−t)/x
ただし、tは記録後の調湿建材に要求される基準吸湿量[g/m2]であり、bは前記基材の吸湿量[g/m2]であり、xは前記基材の表面粗さr及び前記インクの付着量q[g/m2]から以下の式により求められる値である。
x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
ここで、ln(q)は、qの自然対数である。
さらに、上記の調湿建材において、インクは紫外線硬化型インクであることを特徴とする。
本発明に係る調湿建材の記録方法は、調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いてインクジェット記録手段により画像を記録する調湿建材の記録方法であって、表面粗さrが0.5μm〜1.9μmである前記基材に対して前記基材の表面積に対する前記画像の記録面積の比率である記録面積率Sが次の式を満たすように記録することを特徴とする。
S≦(b−t)/x
ただし、tは記録後の調湿建材に要求される基準吸湿量[g/m2]であり、bは前記基材の吸湿量[g/m2]であり、xは前記基材の表面粗さr及び前記インクの付着量q[g/m2]から以下の式により求められる値である。
x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
ここで、ln(q)は、qの自然対数である。
本発明は、上記の構成を有することで、調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いた画像を記録するようにしたので、基材表面に付着したインクにエネルギーを付与することでインクが短時間で硬化して調湿機能に与える影響を抑えることができる。
調湿機能を有する基材の表面には、多数の微小な細孔が形成されており、これらの細孔により調湿作用が行われているが、表面にインクを付着させることで細孔にインクが浸透して調湿作用が損なわれてしまう。エネルギー反応硬化型インクを用いる場合、インクが速乾性であることから、基材表面にインクが留まった状態で硬化して細孔に対するインクの浸透を最小限に抑えることができ、インクが付着した表面部分の細孔は調湿作用が失われるものの表面部分より下方にはインクが浸透せずに調湿作用が失われることがない。
そして、エネルギー反応硬化型インクによる記録面積を基材の表面積の1/3以下とすることで、調湿建材としての調湿機能を維持しつつ様々な色彩や柄模様の意匠性に富んだ画像を記録することができる。
本発明に係る実施形態に関する概略断面図である。 基材の表面に画像を記録するインクジェット記録装置に関する概略構成図である。 基材に対する画像の記録処理に関するフローである。 実施例1の測定結果を示す表である。 実施例2の測定結果を示す表である。 実施例3の測定結果を示す表である。 記録面積率と吸湿量との間の関係を示すグラフである。 係数xとインクの付着量との間の関係を示すグラフである。 係数c及びdと表面粗さとの間の関係を示すグラフである。 比較例の測定結果を示す表である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明に係る実施形態に関する概略断面図である。調湿建材は、調湿機能を有する基材1の表面にエネルギー反応硬化型インクによる画像2が記録されている。
基材1としては、室内の湿度が高くなると湿気を吸収して湿度を下げるように作用し、室内が乾燥して湿度が低くなると湿気を放出して湿度を上げるように作用する吸放湿機能を有する無機粉体を含む成形体が画像記録を行う上で好ましく、無機粉体としては、ケイ酸質粉体、シリカゲル、珪藻土、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、セピオライト等が挙げられる。こうした無機粉体は、1〜数十ナノメートルのサイズの微小な細孔が表面全体に多数形成されており、細孔内に空気中の水分子を取り込んだり、細孔内から水分子を空気中に放出することで吸放湿作用が行われる。
エネルギー反応硬化型インクとしては、紫外線硬化型インク、電子線硬化型インクといったものが挙げられる。これらのインクは、基材表面に付着した直後にエネルギーを照射することで速やかに硬化させることができ、付着箇所からの滲みや基材1内への浸透を小さくすることが可能となる。
そのため、インクが付着した基材表面では細孔の吸放湿作用が失われるものの、基材内部へのインクの浸透が小さいため内部の細孔による吸放湿作用は保持される。したがって、画像2の記録面積を基材表面の1/3以下に設定しておけば、基材の調湿機能を維持しつつ意匠性に富んだ画像記録を行うことができる。
例えば、石目、木目、幾何模様を含む絵柄の意匠を記録しようとした場合、様々な色柄について実際に記録してみたところ、調湿性を有する平均的な調湿建材に対して記録面積率が1/3以下になるように柄模様を設定してエネルギー反応硬化型インクを付着させれば、調湿機能を維持しつつ意匠性に富んだ画像記録ができることを見出した。
紫外線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、光重合開始剤、さらに必要に応じて添加剤等を含む。電子線硬化型インクは、顔料、反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマー、さらに必要に応じて添加剤等を含む。顔料濃度は、インク100重量部中に0.5〜20重量部であることが好ましい。インクの顔料濃度が0.5重量部未満の場合には、着色が不十分となり、画像記録が困難になるおそれがあり、また、顔料濃度が20重量部を超える場合には、インクの粘度が高くなって画像記録を行う際の取扱いが難しくなる。
インクに用いる有機顔料としては、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾ類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、キノフタロン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などが、無機顔料としては金属の酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉等が挙げられ、これらを単独又は複数種類を混合して使用可能である。
インクに用いる反応性モノマーとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやそれらの変性体などの6官能アクリレート;ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレートなどの5官能アクリレート;ペンタジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの4官能アクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、グリセリルトリアクリレートなどの3官能アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートなどの2官能アクリレート;および、カプロラクトンアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールジアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸などの単官能アクリレートが挙げられる。特に、強じん性、柔軟性に優れる点で、2官能モノマーが好ましい。2官能モノマーの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族反応性モノマー、具体的には1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレートなどが好ましい。
反応性モノマーとしてはさらに、上記の反応性モノマーにリンやフッ素、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの官能基を付与した反応性モノマーが挙げられる。また、これらの反応性モノマーを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
反応性モノマーは、インク100重量部中に50〜85重量部含まれることが好ましい。50重量部未満の場合、インクの粘度が高くなって画像記録を行う上で取り扱いが難しくなり、85重量部を超えると硬化に必要な他の成分が不足し、硬化不良になるおそれがある。
インクに用いる反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、強じん性、柔軟性及び付着性に優れる点で、ウレタンアクリレートが好ましい。ウレタンアクリレートの中では、難黄変性である点で、炭化水素からなる脂肪族ウレタンアクリレートがさらに好ましい。
反応性オリゴマーは、インク100重量部中に1〜40重量部含まれることが好ましく、5〜40重量部がより好ましく、10〜30重量部がさらに好ましい。反応性オリゴマーが1〜40重量部の範囲であれば、インクの硬化した皮膜が、強じん性、柔軟性及び密着性の点でより優れたものとなる。
紫外線硬化型インクに用いる光重合開始剤としては、ベンゾイン類、ベンジルケタール類、アミノケトン類、チタノセン類、ビスイミダゾール類、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、高反応性であり、難黄変性である点で、ヒドロキシケトン類及びアシルホスフィンオキサイド類が好ましい。
光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型インク100重量部中1〜15重量部であることが好ましく、3〜10重量部であることがより好ましい。1重量部未満では重合が不完全で皮膜が未硬化となるおそれがあり、一方、15重量部を超えて添加しても、それ以上の硬化率及び硬化速度の向上が期待できず、コスト高となる。
インクには、必要に応じて、顔料を分散させる目的で分散剤を添加してもよい。分散剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤及び高分子系分散剤などが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに必要に応じて、インクには、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤、樹脂バインダー、樹脂エマルジョン、還元防止剤、レベリング剤、pH調整剤、顔料誘導体、重合禁止剤、紫外線吸収剤及び光安定剤等の添加剤を加えることもできる。
そして、インクは、上述した材料を混合し、さらにその混合物をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミルまたはビーズミルなどの分散機を使って分散させた後、濾過を行うことで得ることができる。分散機としては、短時間かつ大量に分散できることから、ビーズミルが好ましい。
エネルギー反応硬化型インクは、液体状態で記録を行うことから、公知のインクジェット記録装置、公知の印刷機等の液状インクを扱う装置により記録することができ、基材表面にインクを付着させた直後に紫外線等のエネルギーを照射する装置を併設しておけばよい。
図2は、基材1の表面に画像を記録するインクジェット記録装置の一例に関する概略構成図である。インクジェット記録装置は、基材1の表面に紫外線硬化型インクを吐出して画像を記録する記録ヘッド部10、記録ヘッド部10の下面に形成された吐出ノズルと対向する位置に基材1を搬送する搬送部20、及び、基材1の表面に記録されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射部30を備えている。
記録ヘッド部10は、基材1の副走査方向Y(搬送方向)に対して交差する画像形成領域の全幅にわたって主走査方向にノズルが複数形成されたラインヘッド(フルライン型インクジェット記録ヘッド)であり、副走査方向Yに沿って異なる色のインクを吐出するヘッドユニット10Y、10M、10C、10Kが配列されている。
記録ヘッド部10のインクの吐出方式としては、例えば、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式及びインクミスト方式等の連続方式、ステムメ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式及び静電吸引方式等のオン・デマンド方式といったものが挙げられる。また、上述した例では、ライン型の記録ヘッドで説明したが、シリアル型の記録ヘッドを用いてもよく、特に限定されない。
搬送部20は、一対の搬送ローラ21に張架された無端状の搬送ベルト22を備えており、搬送ローラ21を回転駆動することにより搬送ベルト22の記録ヘッド部10に対向する搬送面が副走査方向Yに移動する。
紫外線照射部30は、記録ヘッド部10から吐出された紫外線硬化型インクが基材1上に付着した後、直ちに紫外線ランプにより紫外線が照射できるように基材1の副走査方向Yの下流側に設置されている。紫外線照射部30の紫外線照射範囲は、記録ヘッド部10の記録領域の両端からさらに長く設定されており、紫外線照射範囲の副走査方向Yの幅は、搬送速度に応じ基材1上に付着したインクが紫外線照射範囲を通過する間に十分硬化するように設定されている。
紫外線照射部30の紫外線ランプの出力は、50〜280W/cmが好ましく、80〜200W/cmがより好ましい。紫外線ランプの出力が50W/cm未満であると、紫外線のピーク強度および積算光量不足によりインクが十分に硬化しない傾向にあり、280W/cmを超えると、基材1が紫外線ランプの熱により変形または溶融し、また、インクの硬化皮膜が劣化する傾向にある。
紫外線の照射時間は、0.1〜20秒が好ましく、0.5〜10秒がより好ましい。紫外線ランプの照射時間が20秒より長いと、基材が紫外線ランプの熱により変形または溶融し、また、インクの硬化皮膜が劣化する傾向があり、0.1秒より短いと、紫外線の積算光量不足となり、紫外線硬化型インクが十分に硬化しない傾向にある。
紫外線硬化型インクの粘度については、吐出時1〜20mPa・sであることが好ましく、2〜15mPa・sであることがより好ましい。粘度が1mPa・s未満であると、吐出量の調整が難しく、インクの吐出が不安定になるおそれがあり、20mPa・sを超えるとインクの吐出ができないおそれがある。
記録ヘッド部10に加熱装置を設けて、インクを加熱することによりインク粘度を低くして吐出してもよい。インクの加熱温度としては25〜150℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。インクの加熱温度は、インクに含まれる反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーの熱に対する硬化性を考慮して定められ、熱により硬化が開始する温度よりも低く設定する。
記録ヘッド部10からの吐出時における紫外線硬化型インクの表面張力は、15〜40dyne/cmであることが好ましく、20〜35dyne/cmであることがより好ましい。15dyne/cmより小さいと、濡れ性が良くなりすぎて画像が滲むおそれあり、また、記録ヘッド部10へのインクの供給が困難になる。40dyne/cmを超えると、基材上でインクがはじかれ、画像が不鮮明になるおそれがある。
画像記録を行う場合には、基材1を副走査方向Yへ連続搬送しながら画像信号に応答して記録ヘッド部10を駆動制御してインクを吐出することで画像記録を行い、紫外線照射部30において基材1表面に記録された画像に紫外線を照射してインクを硬化させ、基材1の表面に画像を記録した調湿建材を得る。
図3は、基材1に対する画像の記録処理に関するフローである。画像記録を行う前に基材1の表面粗さr[μm]及び調湿機能を示す吸湿量b[g/m2]を測定する(S100)。表面粗さrは、基材表面に対するインクの塗布量とともに調湿建材の調湿機能に影響を与えるパラメータである。表面粗さrは、例えば、表面粗さ測定器(東京精密株式会社製;サーフコム202B)により基材表面において無作為に30mm程度の断面曲線を測定し、測定された断面曲線に基づいて算術平均粗さ法により算出することができる。吸湿量bについては、例えば、JIS1470―1:2002(調湿建材の吸放湿性試験方法−第1部:湿度応答法)に従い測定すればよい。
次に、調湿建材として必要な基準吸湿量t[g/m2]を設定する(S101)。基準吸湿量tとしては、例えば、社団法人日本建材・住宅設備産業協会において規定されている調湿建材判定基準値を用いればよい。また、独自の基準吸湿量を設定してもかまわない。
次に、記録する画像データを読み出して画像データを記録した場合のインクの付着量qを算出する(S102)。インクの付着量qを算出する場合、まず、テスト記録を行う記録媒体の重量を測定しておき、記録率が100%となるように記録媒体に記録動作を行った後記録媒体の重量を測定して単位面積当りの重量増加分を算出する。次に、算出した重量増加分を単位面積当りのインク滴数で除算することでインク1滴当りの単位重量を算出する。そして、画像データに基づいて色毎のインク滴の総数を求め、算出したインク滴の単位重量にインク滴の総数を掛けることでインクの付着量qを算出することができる。なお、インクの付着量qは、次のステップS103でのテスト記録を行った基材を用いて増加重量分を算出するようにしてもよい。
なお、インクジェット記録装置による記録動作においては、一般にインクの付着量は0.5g〜40g/m2の範囲に設定することが好ましい。インクの付着量は40g/m2あれば通常の意匠表現には十分であり、それ以上の付与はインクの無駄となるためである。インクに含まれる樹脂成分は光沢が出やすいため、インクの付着量を制限するようにしてもよい。光沢を抑えた模様を提供する際は、10g/m2以下に設定することが好ましい。
次に、記録する画像データにより基材1に対してテスト記録を行い(S103)、基材1の表面に記録された画像をスキャナ等の画像読取装置により読み取り、記録面積率Sを算出する(S104)。記録面積率Sは、少なくとも1種類のインクが付着している記録面積の基材全体の表面積に対する比率である。記録面積率の算出方法としては、読み取られたイメージデータを記録部分及び未記録部分に区分し、イメージデータをモノクロ2値化処理した後、記録部分の画素数をカウントする。そして、カウントした画素数を基材全体の表面積に相当する画素数で除算して記録面積率Sを算出する。
次に、算出された記録面積率Sが以下の式を満たすか否かチェックする(S105)。S≦(b−t)/x
ただし、tは記録後の調湿建材に要求される基準吸湿量[g/m2]であり、bは基材の吸湿量[g/m2]であり、xは基材の表面粗さr(0.5μm〜1.9μm)及びインクの付着量q[g/m2]から以下の式により求められる値である。
x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
数値xを求める式は、後述するように実際に画像記録を行った調湿建材に関する実績データに基づいて設定される。ここで、ln(q)は、qの自然対数である。
記録面積率Sが上記の式を満たさない場合には、画像データの記録画素を間引く処理等の修正処理を行って記録面積が小さくなるように処理する(S106)。そして、ステップS102に戻り、修正した画像データに基づいてインクの付着量qを再計算する。そして、再度記録面積率を算出して上記の式を満たすか否かチェックする。以上のような画像データの修正処理を繰り返して記録面積率Sが上記の式を満たすようになった場合に、基材に対して画像データの記録処理を行い、画像記録した調湿建材を製造する。
なお、記録面積率Sの下限については、記録画像が柄や模様として認知し得る程度であることが必要であり、具体的には1%以上であることが求められる。
以上のように基材表面に対する記録面積率を設定してエネルギー反応硬化型インクにより画像記録を行うことで、調湿機能を維持しつつ意匠性に富んだ調湿建材を得ることができる。
基材として市販の3種類の調湿建材を用い、紫外線硬化型インクとして以下の原材料を混合してろ過し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各カラーインクを作製した。
<イエローインク>
(1)顔料分散液(顔料分20%) 10重量部
顔料:PV FAST YELLOW H2G、クラリアントジャパン株式会社製
分散媒:SR238F、サートマージャパン株式会社製
(2)反応性オリゴマー 25重量部
CN985B88、サートマージャパン株式会社製
(3)反応性モノマー 57重量部
SR238F、サートマージャパン株式会社製
(4)光重合開始剤 5重量部
イルガキュア184、チバジャパン株式会社製
(5)光重合開始剤 3重量部
イルガキュア819、チバジャパン株式会社製
<マゼンタインク>
顔料のみを変更し、イエローインクと同様な処方にてインクを作製した。
顔料:INKJET RED E5B02、クラリアントジャパン株式会社製
<シアンインク>
顔料のみを変更し、イエローインクと同様な処方にてインクを作製した。
顔料:HOSTAPERM BLUE P−BFS、クラリアントジャパン株式会社製
<ブラックインク>
顔料のみを変更し、イエローインクと同様な処方にてインクを作製した。
顔料:NIPEX35、デグサジャパン株式会社製
作製したカラーインクの物性は以下の通りであった。
<粘度>
イエロー = 8.5mPa・s/60℃
マゼンタ = 8.4mPa・s/60℃
シアン = 8.2mPa・s/60℃
ブラック = 8.7mPa・s/60℃
<表面張力>
イエロー = 32.2dyne/cm・60℃
マゼンタ = 32.4dyne/cm・60℃
シアン = 32.2dyne/cm・60℃
ブラック = 32.3dyne/cm・60℃
図2に示すインクジェット記録装置に作製した紫外線硬化型インクを供給し、インクを60℃に加熱した状態で吐出して基材に画像を記録した。紫外線照射部において使用する紫外線ランプは、メタルハライドランプを使用した。紫外線ランプに印加する電圧は120W/cmで、照射位置は、基材表面から10cmの高さに設定した。
<実施例1>
市販の調湿建材A(表面粗さ1.1μm、基材の調湿性能46.2g/m2)を用い、作製した紫外線硬化型インクにより基材表面に4種類の画像(インクの付着量がそれぞれ10g/m2、20g/m2、40g/m2、60g/m2となるように設定)を記録した。画像記録した調湿建材Aについて、JIS1470―1:2002に準拠した試験方法で中湿条件における吸湿量を測定した。測定結果を図4に示す。
<実施例2>
市販の調湿建材B(表面粗さ1.8μm、基材の調湿性能32.7g/m2)を用い、作製した紫外線硬化型インクにより基材表面に4種類の画像(インクの付着量がそれぞれ10g/m2、20g/m2、40g/m2、60g/m2となるように設定)を記録した。画像記録した調湿建材Bについて、JIS1470―1:2002に準拠した試験方法で中湿条件における吸湿量を測定した。測定結果を図5に示す。
<実施例3>
市販の調湿建材C(表面粗さ0.7μm、基材の調湿性能31.7g/m2)を用い、作製した紫外線硬化型インクにより基材表面に4種類の画像(インクの付着量がそれぞれ10g/m2、20g/m2、40g/m2、60g/m2となるように設定)を記録した。画像記録した調湿建材Cについて、JIS1470―1:2002に準拠した試験方法で中湿条件における吸湿量を測定した。測定結果を図6に示す。
<比較例>
実施例3と同様の調湿建材C、同等の塗布量水準において、記録面積を増加させて画像記録を行った。画像記録した調湿建材Cについて、JIS1470―1:2002に準拠した試験方法で中湿条件における吸湿量を測定した。測定結果を図10に示す。
実施例1から3の測定結果では、いずれの場合も記録後の吸湿量が基準吸湿量よりも大きくなり、調湿機能が維持されていることがわかる。これらの測定結果に基づいて、記録面積率と吸湿量との間の相関関係をみると、例えば実施例1の場合図7に示すようになる。図7に示すグラフから、記録後の吸湿量y、記録面積率S及び基材の吸湿量bの間の関係を以下の近似式で表すことができる。
y=b−Sx
実施例2及び3についても同様の近似式で表すことができる。ここで、xはインクの付着量に関係する係数である。
近似式の係数xとインクの付着量qとの間の関係は、図8に示すグラフのようになる。図8に示すグラフから、係数xと付着量qとの間の関係を以下の近似式で表すことができる。
x=c・ln(q)+d
ここで、c及びdは表面粗さに関係する係数であり、ln(q)はqの自然対数である。
係数c及びdと表面粗さrとの間の関係は、図9に示すグラフのようになる。図9に示すグラフから、係数c及びdと表面粗さrとの間の関係を以下の近似式で表すことができる。
c=0.081
d=−0.161・r+0.15
以上の分析に基づけば、記録後に基準吸湿量t以上の調湿機能を維持するためには、記録面積率Sを以下の式を満たすように設定すればよい。
S≦(b−t)/x
ここで、x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
以上説明したように、基材の表面粗さ及び吸湿量、基準吸湿量並びにインク付着量に基づいて記録面積率を設定することで、調湿機能を維持しつつ紫外線硬化型インクにより意匠性に富んだ調湿建材を得ることができる。また、比較例では、上述した式を満たさない記録面積率により画像記録を行っており、いずれの場合も記録後の吸湿量が基準吸湿量よりも小さくなって調湿機能が維持されてないことがわかる。
1 基材
2 画像
10 記録ヘッド部
20 搬送部
30 紫外線照射部

Claims (3)

  1. 調湿機能を有するとともに表面粗さrが0.5μm〜1.9μmである基材の表面にエネルギー反応硬化型インクにより画像を記録した調湿建材であって、表面積に対する記録面積の比率である記録面積率Sが次の式を満たすことを特徴とする調湿建材。
    S≦(b−t)/x
    ただし、tは記録後の調湿建材に要求される基準吸湿量[g/m 2 ]であり、bは前記基材の吸湿量[g/m 2 ]であり、xは前記基材の表面粗さr及び前記インクの付着量q[g/m 2 ]から以下の式により求められる値である。
    x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
  2. 前記エネルギー反応硬化型インクは、紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項1に記載の調湿建材。
  3. 調湿機能を有する基材の表面にエネルギー反応硬化型インクを用いてインクジェット記録手段により画像を記録する調湿建材の記録方法であって、表面粗さrが0.5μm〜1.9μmである前記基材に対して前記基材の表面積に対する前記画像の記録面積の比率である記録面積率Sが次の式を満たすように記録することを特徴とする調湿建材の記録方法。
    S≦(b−t)/x
    ただし、tは記録後の調湿建材に要求される基準吸湿量[g/m 2 ]であり、bは前記基材の吸湿量[g/m 2 ]であり、xは前記基材の表面粗さr及び前記インクの付着量q[g/m 2 ]から以下の式により求められる値である。
    x=0.081・ln(q)−0.161・r+0.15
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